JP4903316B2 - ミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電気的な制御により糸張力を変更可能なミシンの糸調子装置として、1組の調子皿等からなる糸調子器と、この糸調子器を駆動するソレノイドとを備えたものがある。
ソレノイドは一般的には通電量が一定であっても可動部のストロークにより推力が変化し、糸の太さによって糸張力が変化してしまい、安定した糸張力が得られなかった。そこで、推力がストロークによらない特定のストローク区間を有するソレノイドで糸調子器の駆動を行って、この欠点を解消した糸調子装置が用いられていた。
また、上記したソレノイドの他に、パルスモータ、ボイスコイルモータ、ヒステリシスブレーキ等を駆動源として用いて糸張力を変更可能とした糸調子装置も知られている。さらに、糸調子装置が与える糸張力をミシン駆動中に種々変更し、縫製中に糸に適正な張力が付与されるように構成したミシンも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような特定ストローク区間を有するソレノイドを糸調子器の駆動に利用したとしても、安定して糸張力を制御することができないことが分かった。この問題について、図15(a)、(b)に基づいて説明する。図15(a)、(b)は、糸調子器駆動用のソレノイドについて、前記特定ストローク区間における通電電流と糸張力との関係を示すグラフである。
図15(a)から分かるように、同じ電流を印加しても、電流の上昇時より下降時の方が発揮される糸張力が高い。つまり、同じ糸張力を得るべく所定の電流をソレノイドに印加しても、上昇してその電流値としたか、あるいは下降したかにより差異が出てしまう。この差異は、ヒステリシス損等のソレノイド自身の本質的な特性によるものと考えられる。
【0004】
このような現象が生じると作業者が意図する糸張力が得られない。具体的には図15(b)に示すように、作業者が設定した所定の糸張力を得るために電流値Xを印加した場合でも、上昇させたか下降させたかによって実際の糸張力がYg分異なってしまっていた。
このような上昇時と下降時の差異により作業者が意図する糸張力が得られず期待した仕上がりにならないことがあり、しかもこの差異は一定ではなくばらつきがあることから、糸締りが一定しないなど縫いの品質について再現性がないという課題があった。
【0005】
また、このような糸張力を変更可能とした糸調子装置を備えた従来のミシンは、非縫製中の張力に対しては考慮されていなかった。すなわち、糸切り後も糸の繰り出しを可能とする縫製中の糸張力が維持されており、作業者が縫製後の布を針下から取り出す際に、糸切り手段により布下で切断され布に貫通した上糸が布との摩擦抵抗によりミシン針の目穴から引き出されて、針先に残る上糸の長さ(糸残り長さ)が長くなってしまい、次の縫製の開始時に布下に上糸が絡まる鳥の巣が発生するという問題があった。
【0006】
また、布のセット位置と縫製開始位置が異なっており、セット位置にて布押さえによって保持された布を布搬送手段によりミシン針に対して離れる方向に移動することによって縫製開始位置に搬送し、縫製開始位置において縫製を開始する構成のミシンにおいては、セット位置で布をセットするとき針先に連なる上糸の端部が布押さえと布の間に挟まれることがあり、上糸に付与されている張力が高い場合は、布搬送手段により縫製開始位置に布および上糸の端部を押さえた布押さえが移動される際に上糸が引っ張られて針折れや糸切れ等の不具合が発生するという問題があった。
【0007】
また、この不具合は、針先からの糸残り長さが長いほど上糸の端部が布押さえに挟まれる可能性が高くなるため、糸切り後に布の取り出しによって上糸が引き出されることも要因となっていた。
【0008】
本発明の課題は、糸に与える張力を電気的に変化させる上糸調子装置を備えたミシンにおいて、布の取り出し時に上糸が引き出されて糸残り長さが長くなるのを防止し、鳥の巣、糸切れ、針折れ等の不具合の発生を防いで、縫い品質及び縫製効率の向上を図ることにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項記載の発明は、例えば、図2、図3に示すように、
上下動されるミシン針(6)と、
糸切り手段と、
前記ミシン針に連なる上糸に与える張力を電気的に変化させる上糸調子装置(上糸調子装置10)とを備えたミシンにおいて、
糸切り後、少なくとも、前記糸切り手段により切断された上糸の端部が、布の移動により布上に引き出されるまでは、縫製時よりも高い張力を上糸に与え前記布の移動によるミシン針からの上糸の引き出しを阻止可能にするように前記上糸調子装置を制御する制御手段(制御装置50)を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項記載の発明によれば、糸切り後、少なくとも、前記糸切り手段により切断された上糸の端部が、布の移動により布上に引き出されるまでは、縫製時よりも高い張力を上糸に与えることが可能となる。
したがって、縫製時に上糸に付与されていた張力が低い場合でも、糸切り後に作業者が布を引き出す際に、布に貫通した上糸の端部が布上に引き出されるまで針糸が針の目穴から引き出されないような張力を与えることができ、針先に残る糸残り長さが長くなることにより発生する鳥の巣、糸切れ、針折れ等の不具合の発生を防いで、縫い品質の向上及び縫製効率低下の防止を図ることができる。
【0020】
請求項記載の発明は、請求項記載のミシンにおいて、該ミシンが下糸調子装置(下糸調子装置20)を備え、糸切り後縫製時よりも高い張力を上糸に与える制御を、上糸調子装置に対してのみ行う制御手段(制御装置50)を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項記載の発明によれば、上糸調子装置に加えて下糸調子装置を備えるミシンにおいても請求項記載の発明と同様な効果を得ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。
図1、図2において、ミシン1は、鳩目穴形状のボタン穴(図6参照)の周りにかがり縫いを施すサイクルミシン(鳩目穴かがりミシン)であり、ベッド部2と、ベッド部上に設けられた縦胴部3と、縦胴部3からベッド部2に平行するように延出するアーム部4とからなる。
【0025】
ミシン1には、各種スイッチやボタン及び表示窓を有する表示・操作パネル5が設けられている。作業者は、この表示・操作パネル5を介して特定の縫製パターンを選んだり所定のパラメーターについて値を設定したりといた指示を行うとともに、表示された内容を見て設定内容や縫製状況を確認できる。
また、図2に示すように、ミシン1にはスタートスイッチ7が設けられており、このスタートスイッチ7を1回操作することで、ミシンモータ60が作動しミシン針6の動作(縫製)が開始し、再度操作することでミシンモータ60が停止するようになっている。
【0026】
また、ミシン1には、図1、図2に示すように、制御手段として制御装置50が設けられている。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51と、該CPU51に接続されているROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53と、各種ドライバから構成される。
ROM52には、制御プログラムや制御データ、及び鳩目穴かがり縫いに関する縫製データ等が格納されている。
【0027】
また、制御装置50には、針上検知センサ57、針下検知センサ58及び針振り位置センサ59が接続されている。これら針上検知センサ57及び針下検知センサ58は、ミシン針6の上下動における移動位置を検出し、位置に対応する信号をCPU51に出力する。また、針振り位置センサ59は、針振りモータ61を駆動源として行われるミシン針6の左右方向の揺動運動における位置を検出し、揺動位置に対応する信号をCPU51に対して出力する。
さらに、制御装置50は、ミシンモータ60を駆動するミシンモータドライバ54、針振りモータ61を駆動する針振りモータドライバ62、上糸調子装置10を駆動するATドライバ55、下糸調子装置20を駆動するATドライバ56等の各種ドライバを備える。
【0028】
また、ベッド部2には、X軸パルスモータ11及びY軸パルスモータ13が設けられ、この両パルスモータを駆動源としてベッド部2の上面に戴置された布をミシン針6の上下動と直交する方向に送る布搬送手段としての布送り装置(図示せず)と、同じくベッド部2に設けられ布押さえソレノイド15を駆動源として上下動され下降位置に置いて戴置された布を押さえるとともに、布搬送手段に連結されて前記直交方向に移動される布押さえ手段としての布押さえ装置(図示せず)が設けられている。さらに、ベッド部2には、糸切りソレノイド17を駆動源として、縫製終了後に上糸及び下糸を布下で切断する糸切り装置(図示せず)が設けられている。
【0029】
また、制御装置50には、X軸パルスモータ11、Y軸パルスモータ13、布押さえソレノイド15、糸切りソレノイド17をそれぞれ駆動するためのX軸モータドライバ12、Y軸モータドライバ14、布押さえドライバ16、糸切りドライバ18が設けられている。
【0030】
CPU51は、ROM52に記憶されている制御プログラムや制御データに基づいて、RAM53を作業領域として、表示・操作パネル5、スタートスイッチ7から入力する各種指示に対応する信号や、針上検知センサ57、針下検知センサ58、針振り位置センサ59からの検出信号を受け、上記各種ドライバを介し、ミシンモータ60、針振りモータ61、上糸調子装置10、下糸調子装置20、布送り装置、布押さえ装置、糸切り装置などの駆動制御を行う。
【0031】
ミシン1には、糸調子装置として、ミシン針6に連なる上糸用の上糸調子装置10と下糸用の下糸調子装置20が設けられ、上糸調子装置10はアーム部4に設けられ、下糸調子装置20は、ベッド部2内に設けられている(図10)。
図3には、下糸調子装置20の構成を示した。
下糸調子装置20は、糸調子軸21、可動皿22aと固定皿22bとからなる調子皿(糸調子器)22、ベース板23、糸調子軸ナット24、座金25、27とこれらの間に設けられた調子バネ26、ソレノイド30とから主に構成される。
下糸調子装置20は、可動皿22aと固定皿22b間に下糸を挟んだ状態で、ソレノイド30の推力により糸調子軸21を駆動し、糸調子軸21とベース板23により、可動皿22aと固定皿22b間の下糸を挟む力を連続的に変化させて糸張力を変更する、動的な糸調子(アクティブテンション)である。
【0032】
下糸調子装置20は、図1あるいは図10に示すようにベース部2内に取り付けられる。下糸調子装置20においては、ベース部2の一部であるフレーム2aに対して、ベース部材23のネジ孔23a、23aを介して、止めネジ28、29を通し、さらに止めネジ28、29の先端をソレノイド30のネジ孔30a、30aに回し入れることによって、前記フレーム2aを挟むようにしてベース部材23とソレノイド30とを一体的に固定するようになっている。
【0033】
糸調子軸21は、ネジ部21aが、調子皿22、ベース板23、糸調子軸ナット24、座金25、調子バネ26、座金27を挿通した状態でソレノイド30のプランジャ(可動部)31のネジ孔31aに螺合することによって取り付けられている。糸調子軸21とプランジャ31の固定位置は、糸調子軸ナット24の締め付けにより適宜調整できる。
調子バネ26は、糸に所定の張力を掛けている状態から糸張力を下げる場合に、ソレノイド30による推力が下がったにも関わらず糸調子軸21の軸周りにかかる摩擦力により糸調子軸21が戻らないという事態を防ぐために設けられている。よって、調子バネ26は、座金25、27間を押し広げるような方向、つまり糸調子軸21がソレノイド30から離れる方向に付勢するものである。
【0034】
図4、図5において、ソレノイド30は、機枠32、コイル用フレーム33、コイル34、プランジャ31、および磁性部材35等から構成される。プランジャ31は、軸方向に移動可能でかつ回転不能に軸受け32a、32bに支持されている。プランジャ31に固着された磁性部材35は、円筒形状でその一部に軸心からの径を変える段部35aが形成されている。そして、この形状により、次ぎに述べるように、プランジャ31の推力がストロークによらない特定ストローク区間が得られる。
【0035】
このソレノイド30は、通電電流が一定のとき、ストローク−推力で図5のヒステリシスカーブに示す特性が得られる。すなわち、推力がプランジャ31のストロークによらない特定ストローク区間Wが得られる。この区間であれば、プランジャ31のストロークをS、プランジャ31の推力をF、ソレノイド30に印加される電気量をC、ストロークと推力の微少変化量をそれぞれΔS、ΔFとした場合、C=一定のときにΔF/ΔS≒0である。
【0036】
下糸調子装置20では、この特定ストローク区間Wのみを利用して下糸に張力を与えるものである。つまり、調子皿22に作用できる状態のプランジャ31のストローク区間が、前記特定ストローク区間Wに含まれるように、ナット24の締結位置が設定される。ここで、プランジャ31が調子皿22に作用する状態とは、可動皿22aと固定皿22bが下糸のない状態で十分に当接した状態から、下糸が可動皿22aと固定皿22b間に挟まれた状態までのことを指す。
糸調子器22に作用するプランジャのストロークを、特定ストローク区間Wに設定するには、例えば、ナット24をゆるめた状態で、ソレノイド30の後方に突出したプランジャ31の先端31aの突出量W’(図4)を計測しながら、固定皿22bがベース部材23に当接する状態で糸調子軸21をドライバ等で回転させ、その突出量W’が図5の「Z」の値から範囲Wに対応する位置にもっていき、その位置でナット24を締めて糸調子軸21とプランジャ31を固定することで達成される。
【0037】
また、ソレノイド30に出力される通電電流が大きくなるに連れて、推力が大きくなる。ソレノイド30は、コイル33に通電することで糸調子軸21を引き込む(糸に張力を与える)方向に取り付けられ、通電電流の増大にしたがって糸調子軸21により与えられる糸張力が大きくなる。すなわち、下糸調子装置20では、通電電流を変えることによってのみ糸張力が変わるようになっており、制御装置50の指示信号によりATドライバ56を介して電流値は制御される。
【0038】
なお、図3〜図5に基づいて下糸調子装置20について説明したが、上糸調子装置10については、使用される部位が異なる他は下糸調子装置20と全く同一の構成であるので、詳細の説明を省略する。
【0039】
ミシン1によって縫製される鳩目穴かがり縫いは、例えば図6(a)に示す形状であり、その縫目は、流れ閂右、直線部右、鳩目部右下、鳩目部、鳩目部左下、直線部左、流れ閂左の各部からなり、流れ閂右、直線部右…の順で縫製していく。これら7カ所についてそれぞれ糸張力を設定することが可能であり、前記表示・操作パネル5を介して作業者が所望の糸張力を設定する。
ROM52内の縫製データには、図6(b)に示すように、各部ごとに縫製時の針落ち回数と上糸及び下糸の張力を決めるパターンデータが含まれ、作業者が設定したデータはこのパターンデータに格納される。
制御装置50は、このようなパターンデータにしたがってATドライバ55、56を介してソレノイドに印加する電流を連続的に変えるように制御する。具体的には、流れ閂右の縫製時には上糸張力がa1、下糸張力がb1となるように所定大きさの電流を印加し、N1回ミシン針60を駆動し、次いで直線部右の縫製時には上糸張力がa2、下糸張力がb2となるように電流値を変えN2回ミシン針6を駆動するようになっている。
【0040】
ところで、前記ソレノイド30の前記特定ストローク区間内において所定の電流値に設定する場合、その電流を上昇させることでその電流値に達したか、下降させることで達したかによって推力に差異が現れ、図15(a)に示したような現象が生じる。このような現象により糸張力が不安定になることを防ぐために、制御装置50は、ソレノイド30について図7、図8に示すような制御を行うようになっている。
図8において、曲線u2は電流を上昇しながら所定の電流値を印加した際の糸張力であり、曲線d2は電流を下降させながら所定の電流値を印加した際の糸張力である。
ここでは制御装置50は、糸張力と電流値の対応関係について、曲線u2に従ってソレノイド30を制御するものとし、糸張力を上げる場合には、変更前に印加している電流値から、目標とする糸張力に対応する電流値まで直接上昇させる。
【0041】
一方、糸張力を下げる場合には、図7に示すように、変更前の電流値P1から目標とする糸張力よりも低い糸張力に対応する電流値(図8のS1よりも低い電流値)R1まで下げてしまい、そこから目標とする糸張力に対応する電流値Q1まで上げるように制御する。
この制御を図8を用いて説明する。図8で目標とする糸張力をM1とする。糸張力を下げる際に図7のように制御することで、設定される糸張力は曲線d2よりも曲線u2に近い、曲線u’2にしたがって決まる。このように一旦下げてから上げることで、目標とする糸張力M1にほとんど同じ糸張力M2が得られるようになる。
仮に、変更前の電流値P1から直接電流値Q1まで下げたとすると、曲線d2に従って糸張力が下がり、目標の糸張力M1よりもかなり大きな糸張力M3となってしまい、所望の糸張力が得られない。
【0042】
さらに、制御装置50は、図7、図8のように電流値P1から電流値R1まで下げるときのタイミングについて、縫製中は鳩目穴かがり縫いの特定のタイミングにおいてのみ行うようになっている。以下、このタイミングの制御について詳細に説明する。
図6(a)に示すように、鳩目穴かがり縫いの縫目は、流れ閂右から順に縫い進め最後は流れ閂左で終了する。ここで鳩目穴かがり縫いJにおいて、鳩目穴H側を内側とし、鳩目穴かがり縫いJの外回りを外側とする。
【0043】
ミシン1では、ミシン針6と、図9に示すルーパー装置40との協働により縫目が形成されるようになっている。
ルーパー装置40は、ベット部2に設けられており、右ルーパー41と右スプレッダー42、左ルーパー43と左スプレッダー43とを備えている。右ルーパー41には、例えば図11(b)に示すように、切り欠き41aが形成され、該切り欠き41aで上糸を引っ掛ける。右スプレッダー42は右ルーパー41に対して閉じた状態から開くことで、上糸のループを形成するものである。
左ルーパー43には、例えば図11(d)に示すように、挿通孔43aが形成され、該挿通孔43aに下糸を通した状態で保持する。左スプレッダー44は、左ルーパー43に対して閉じた状態から開くことで、下糸のループを形成するものである。
【0044】
ルーパー装置40の下方には、図10に示すルーパー駆動機構40aが設けられている。ルーパー駆動機構40aはスプレッダー駆動軸45と、ルーパー駆動軸46とを備え、ルーパー駆動軸46はスプレッダー駆動軸45に対して摺動自在である。スプレッダー駆動軸45とルーパー駆動軸46は、それぞれ図示しない機構により上下に駆動され、スプレッダー駆動軸45が上方に移動することで右スプレッダー42、左スプレッダー43の一方が開くように構成されている。また、ルーパー駆動軸46の上下動に連れて、ルーパー装置40全体が左右に往復運動(図9中の矢印方向)するようになっている。
【0045】
また、前述のように鳩目穴H周りを1回転するように縫製するために、ミシン1では、布送り装置(図示せず)により布を一定方向に送るとともに、ミシン針6及びルーパ装置40を軸方向を中心に回転運動させる。
図10に示すように、ルーパー駆動機構40a上には、前記ルーパー駆動軸46の同軸を中心とするようにギア48が取り付けられており、このギア48にタイミングベルト47が掛けられている。タイミングベルト47は、図示しないモータにより回転するように構成され、タイミングベルト47が回転するとギア48を介してルーパー駆動機構40aと共にルーパー装置40が回転する。さらに、タイミングベルト47の回転は、ミシン針6の図示しない回転機構に伝達するようになっており、ルーパー装置40の回転と同期して同じ方向にミシン針6も回転するようになっている。
この回転機構により、ルーパー装置40と共にミシン針6を回転させながら前記鳩目部部分を縫うようになっている。
【0046】
なお、下糸調子装置20は図10に示す位置に設けられているが、図示しない糸供給源から導かれた下糸T2は、調子皿22に挟持された状態で、前記スプレッダー駆動軸45、ルーパー駆動軸46、ギア48等の内部を通って、図9の点線で示すようにルーパー装置40の左方に引き出され、左ルーパー43の前記挿通孔43aに通されている。
【0047】
ミシン針6は、前述のように左右に針振り運動を行うことで、縫目の内側(鳩目穴H側)と外側に針落ちするようになっている。なお、ミシン針6が内側に位置するとき内針、外側に位置するときは外針とも言う。また、ミシン針6の上下動における最上点を上死点、最下点を下死点という。
ミシン針6は、縫目形成時、針振り運動及び上下運動により、内針上死点→内針下死点→外針上死点→外針下死点→内針上死点を1サイクルとする繰り返し運動を行う。
このミシン針6の動きは、360゜を1サイクルとする繰り返し波形を有する動きに模式化してとらえることもでき、その移動位置を、内針上死点0゜→内針下死点90゜→外針上死点180゜→外針下死点270゜→内針上死点360゜と表現することができる。この移動位置は、前記センサ57、58、59(図2)からの検出信号に基づいて検出することができる。
制御装置50は、前述のソレノイド30に印加する電流値を下げる処理を、ミシン針6が外針下死点から内針上死点の間で行うようになっている。
【0048】
このタイミングで電流を下げるのは次ぎの理由による。図11、図12には、かがり縫い時のミシン針6、ルーパー41、43、スプレッダー42、44の動きを、縫目の形成の様子とともに示した。図11、図12では、ミシン針6の動きを前述のように1サイクルを360゜とし、ミシン針6が内針上死点(0゜)から動き始めて、60゜、75゜、100゜、130゜、240゜、260゜、290゜、325゜の移動位置に達したときの様子を順に示している。なお、これら移動位置はおよその値である。
また図11、図12の各図において、左側が前記内側、右側が前記外側であり、T1が上糸、T2が下糸である。さらに、図11、図12では、各ルーパー41、43に対して、スプレッダー42、44は上方向に開くように示しているが、実際には、ほぼ水平方向(紙面に垂直な面)に開くようになっている。
【0049】
まず、1サイクルの最後の時(図12(c)、(d)参照)、右ルーパー41は、外側においてミシン針6に通っている上糸T1を切り欠き41aによって引っ掛け、ルーパー装置40の揺動により内側に向かって移動する。このとき右スプレッダー42が大きく開く。これにより、図11(a)に示すように、上糸T1は内側においてループAを形成する。この状態のときに、ミシン針6は、内針上死点(0゜)から下降しており、移動位置60゜で、右ルーパー41と右スプレッダー42によって形成された上糸T1のループAの中に入りこんで、さらに下降する。
ミシン針6の移動位置75゜の時、図11(b)に示すように、前記ループAはミシン針6の周囲に巻き付くように掛かり、一方右ルーパー41と右スプレッダー42は外側に移動していく。
【0050】
この右ルーパー41等の移動とともに、左ルーパー43と左スプレッダー44も下糸T2を引っ張りながら外側に移動してくる。またミシン針6は内針下死点(90゜)に達すると上昇に転じ、外針上死点に向かって斜め上方向に上昇し始めると、図11(c)(移動位置100゜)に示すように、ミシン針6の針穴6aに通されている上糸T1にたるみ部taが形成される。このたるみ部ta内に、外側方向へ移動中の左ルーパー43と左スプレッダー44が入り始める。
ミシン針6は上昇し続け、一方、左スプレッダー44は移動しながら開いていき、たるみ部taは、図11(d)のように、ループBを形成する。
【0051】
ミシン針6は外針上死点(180゜)に達したあと、下降し始め、移動位置240゜で図12(a)に示すように、外側に達した左ルーパー43と左スプレッダー44との間で広げられている下糸T2のループC内に入り込む。
次いで、移動位置260゜において、図12(b)に示すように、左ルーパー43等は内側に戻り始めるが、ミシン針6は下降途中であり、下糸T2のループCはミシン針6に巻き付き、前記ループBはループCに掛けられた状態になる。
【0052】
ミシン針6が外針下死点(270゜)に達した後、内針上死点に向かって斜め上方に移動し始めると、移動位置290゜において図12(c)に示すように、上糸T1のたるみ部tbが形成される。左ルーパー43等の内側への移動と共に右ルーパー41と右スプレッダー42も内側に移動し始め、たるみ部tbを切り欠き41aで引っ掛け始める。
ミシン針6の移動位置325゜の時(図12(d))、右スプレッダー42は、右ルーパー41とともに内側に移動しながら開いていき、再び前述のループA同様のループDを形成し始め、1サイクルが終了する。
【0053】
上記1サイクル中、内針下死点(90゜)から外針下死点(270゜)の間(図11(c)、(d)、図12(a)、(b))は、左ルーパー43と左スプレッダー44により下糸T2が内側から外側に引き出され、ループを形成するので、下糸T2はかなり消費される。
一方、内針上死点(0゜)から内針下死点(90゜)の間(図11(a)、(b))と、外針下死点(270゜)から内針上死点(360゜=0゜)の間(図12(c)、(d))は、あまり下糸T2は引き出されない。
【0054】
さらに、内針上死点から内針下死点の間と、外針下死点から内針上死点の間とを比較すると、下糸T2が図9に示したようにルーパー装置40の左側から左ルーパー43に通されているので、ルーパー装置40全体が左から右(内側から外側)に揺動する内針上死点から内針下死点間は下糸T2はルーパー装置40の動きに連れてわずかながら引き出される。しかし、右から左(外側から内側)へ揺動する外針下死点から内針上死点間では、下糸T2を右側に引っ張る力はなくほとんど引き出されず消費されない。
下糸T2が多く消費されているときに、ソレノイド30に印加する電流値を下げると、糸張力に影響し所定の糸張力に設定できない可能性がある。そこで、制御装置50は、縫製中、下糸T2の消費量が最も少ないとき、つまりミシン針6が外側下死点から内針上死点の間にあるときに、電流値を下げるという制御処理を行うようになっている。
【0055】
次ぎに下糸調子装置20の制御を図13により説明する。
ステップS12において、スタートスイッチ7がONになったか否かを判定し、
ステップS12でONであると判定するとステップS13に移行し、ミシンモータ60等の各駆動源が作動し始めミシン1が起動し、図6に示す鳩目穴かがり縫いが開始する。
ステップS14に移行し、ミシン針6が外針の下死点に達したか否かを判定し、達したと判定すればステップS15に移行し、達していないと判定すればステップS14の判定を繰り返す。
ステップS15においては、糸張力を変更するか否か、つまりソレノイド30に印加する電流の変更命令があるか否か判定する。変更命令がなければ、ステップS21に移行する。変更命令があれば、ステップS16に移行する。
【0056】
ステップS16では、電流値を上げるのか下げるのか判定する。電流を上げる(糸張力を上げる)場合には、ステップS18に移行し、目標とする糸張力に対応する電流値まで上げ、ステップS21に移行する。ステップS16で下げると判定すれば、ステップS17に移行する。
ステップS17では、目標値よりも低い糸張力に対応する電流値まで下げ、ステップS19に移行する。ステップS19では、ミシン針6が内針上死点に達したか否か判定する。達していなければステップS19の判定を繰り返し、達していればステップS20に移行する。次いで、ステップS20で、目標とする糸張力に対応する電流値まで上げる処理を行い、ステップS21に移行する。
ステップS21では、糸切り装置による糸切りを行うか否かを判定し、糸切りしないと判定すれば、ステップS14に戻り以後のステップを繰り返す。糸切りすると判定すれば、ステップS22に移行し糸切り装置を駆動して糸切りを行い、ステップS23においてミシン1を停止させる。
【0057】
以上の本発明のミシンの下糸調子装置20によれば、糸張力を上げる場合には、ソレノイド30に対して目標値に対応する電流値まで上げる。一方、下げる場合には、図7に示したように、目標値よりも低い糸張力に対応する電流値にまで下げて、その後目標値に対応する電流値にまで上げる。ソレノイド30が本質的にヒステリシスによる電流上昇時と下降時の推力の差異を有していても、糸張力を上げるときも下げるときも、電流値を上げることで目標とする電流値に設定するので、このような「差異」の影響はほとんどなく、1つの電流値を印加することでほぼ一定の糸張力を得ることができる。
したがって、糸張力変更前の値に関係なく、表示・操作パネル5を介して設定した糸張力と、実際の糸張力がほぼ一致し、安定した糸張力制御が可能となり、縫い品質が安定し、再現性が向上する。
【0058】
また、図11、図12で示したように、縫製中については電流値を一旦下げるという制御は、下糸T2が最も消費されない時、すなわちミシン針6の移動位置が外針下死点から内針上死点の間にあるときに行う。下糸T2が多く消費される時に電流値を下げると、糸張力に影響を及ぼし所定の糸張力に設定できない可能性もあるが、本実施の形態のように電流値を下げる区間を限定することでこのような悪影響を防ぎ、確実に所定の糸張力に設定できる。
【0059】
加えて、糸調子に用いられるソレノイドは、一般に駆動力が大きいものほどヒステリシス損も大きくなる。従来であれば高い糸張力が得らえるソレノイドを用いると、電流の上昇時・下降時の差異が大きくなってしまい、実用的ではなかった。しかし、本発明によれば、このヒステリシスの影響を回避できるので、駆動力の高いソレノイドを使用でき、多様な縫製に対応できるようになる。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、具体的な形状・構造その他について適宜変更可能である。
例えば、上記とは逆に、図14に示すように逆の制御を行ってもよい。図14(b)において、曲線d3が電流値を下げる場合、曲線u3が電流値を上げる場合である。
図14(a)に示すように、糸張力を上げる場合、変更前の電流値R2から、目標値よりも高い糸張力に対応する電流値(図14(b)のS2より高い電流値)P2に上げ、次いで目標値に対応する電流値Q2に下げるように制御しても、上記と同様の効果が得られる。
つまり、制御装置50は、糸張力と電流値との対応を図14(b)の曲線d3に従うものとし、糸張力を下げるときは、目標値M4に対応する電流値Q2まで直接下げる。そして、糸張力を上げるときは、目標とする糸張力よりも高い糸張力に対応する電流値P2まで上げてから、目標値に対応する電流値Q2まで下げることで、糸張力は曲線d3にほぼ近い曲線d’3に従って下がり、糸張力を上げるときも下げるときも一定の電流値に対してほぼ一定の糸張力を得ることができる。
【0061】
次に、本発明の第2の実施の形態を、図16及び図17に基づいて説明する。
ステップS1において、スタートスイッチ7がONになったか否かを判定し、ステップS1でONであると判定するとステップS2に移行し、縫製開始前の上糸張力の設定値(例えばa8)を読み込む。この設定値a8は、上糸が引き出されるのに十分な低い値(張力0でも良い)が予め記憶手段(例えばROM52)に記憶されており、ステップS2の処理は、CPU51がこの設定値を読み込むことにより行われる。なお、この設定値a8を表示・操作パネル5により設定可能としても良い。
【0062】
次いで、ステップS3に移行し、設定値(a8)の張力に対応する電流が上糸調子装置10のソレノイド30に印加され、上糸調子装置10が上糸に与える糸張力が上糸が引き出されるのに十分低い値(a8)に保たれる。この制御は、設定値a8が十分に低い張力であるため、それまでソレノイド30に印加されていた電流値より下げる必要がある。従って、ソレノイド30のヒステリシスを補正する場合は、ステップS2で読み込まれた設定値(a8)よりも低い糸張力を上糸に与える電流を一旦ソレノイド30に印加し、続いて、目標値、すなわち設定値(a8)の糸張力を上糸に与える目標の電流を上糸調子装置10のソレノイド30に印加することにより行われる。
【0063】
そして、ステップS4に移行して、作業者によって布セット位置にセットされた布を押さえるために布押さえ装置が作動して、布押さえが下降する。続いて、ステップS5に移行して、セットされた布の縫製開始位置がミシン針下に来るように、ミシン針6の上下動を停止させたまま布送り装置が作動して布を押さえた布押さえをミシン針下より離れる方向に空送りさせて移動させる。このとき、ステップS4の布押さえの下降時にミシン針に連なる上糸の端部が布押さえと布に挟まれていれば、布および上糸の端部を押さえた布押さえの移動にともなってミシン針より上糸が引っ張られることになるが、本発明においては、ステップS3で上糸の張力が十分低くなっているため、引っ張られた分、上糸が針先より引き出され、従来発生していた針折れや糸切れを防ぐことができる。
【0064】
さらに、ステップS6に移行して縫製中の上糸調子装置10の制御が行われる。この制御は、縫製時の上糸の張力として設定されている図6(b)の糸張力a1〜a7に基づいて、第1の実施の形態の図13で示したステップS13〜ステップS21と同様な制御が上糸調子装置10に対して行われる。次いで、ステップS7に移行し、糸切り装置が駆動され布下で上下糸が切断される。
【0065】
糸切りが終了すると、ステップS8に移行して、ミシンモータ60が停止され、ミシンが停止する。そして、ステップS9に移行して、糸切り後におけるミシン停止中にミシン針6に連なる上糸に付与される張力の設定値が読み込まれる。この設定値は、糸切り後、作業者による布の取り出しにともなって布に刺さっている上糸の端部が布上に引き出されるまでは、ミシン針6からの上糸の引き出しを阻止可能とするように縫製時よりも高い張力を上糸に与える設定値(例えばa9)として予め記憶手段(例えばROM52)に記憶されており、ステップS9の処理は、CPU51がこの設定値を読み込むことにより行われる。なお、この設定値a9を表示・操作パネル5により設定可能としても良い。
【0066】
次いで、ステップS10に移行して、目標の糸張力、すなわちステップS9で読み込まれた設定値a9の張力に対応する目標の電流がソレノイド30に印加されて、上糸に目標の糸張力が付与されて、処理が終了する。なお、このときのソレノイド30に対する電流の印加は、設定値a9が縫製中の糸張力よりも高く設定されており、常に縫製時よりも高い電流を流すため、ヒステリシスによる誤差を考慮して上昇、下降の判断を行う必要はなく、即電流を目標の電流に上昇させている。
【0067】
この後、作業者により、縫製が終了した布の取り出しが行われるが、既にステップS10でミシン針6からの上糸の引き出しを阻止可能にする張力が上糸に与えられているため、ミシン針6からの上糸の引き出しを防止することができ、縫い始めの鳥の巣の発生を防ぐことができる。また、、針先に残る糸残り長さが長くなることに帰因して、布セットのため布押さえが下降したときに上糸の端部が布押さえに挟まれて発生する針折れや糸抜け発生するを防止できる。
【0068】
なお、ステップS10で与えた張力は、次の縫製のために、作業者により再度スタートスイッチ7が操作されるまで維持する構成としても良いが、布の取り出しが完了するであろう所定時間だけ維持するようにして、その後は、開放あるいは、縫製開始前の張力a8をスタートスイッチ7が操作される前に予め与えたおいても良い。あるいは、布の取り出しを検知するセンサを設けて、センサにより布の取り出しが検知されるまで、ステップS10で与えた張力を維持する構成としても良い。
【0069】
次に、図17のタイムチャートに基づいて、図16で示した制御を行った場合の上糸に与えられる張力の変化を説明する。
【0070】
まず、時刻t1でスタートスイッチ7がONされると、上糸が引き出されるのに十分な低い張力a8が上糸に与えられる。なお、このa8の値は、0でも良い。この張力a8は、布が縫製開始位置に移動されて縫製が開始されるt2の時刻まで維持される。そのため、ミシン針の針先に連なる上糸の端部が布押さえに挟まれて移動されても、上糸が引き出され、針折れや糸切れが防止できる。
【0071】
そして、時刻t2で縫製が開始されると、縫製時の上糸の張力として設定されている図6(b)に示した糸張力a1〜a7の張力が与えられ、縫製が行われる。さらに、縫製が完了し、時刻t3において糸切りが完了すると、糸切り後、作業者による布の取り出しにともなってミシン針6から上糸が引き出されるのを阻止するための縫製時よりも高い張力a9が上糸に与えられる。この場合、従来は一点差線で示すように、糸切り完了後も縫製終了時の張力が維持されたままであるので、上糸が針先から引き出されることがあるが、本発明の場合は、上糸の引き出しを阻止可能とする強い張力(a9)が与えられるので、上糸の引き出しが確実に防止される。
【0072】
そして、時刻t4において、再度スタートスイッチ7が操作されることにより、上糸にa8の張力が与えられる。この場合も従来は、一点差線で示すように縫製終了時の張力が維持されたままであるので、針折れや糸切れが発生する場合があるが、本発明の場合はそのような不具合の発生を確実に防止することができる。
なお時刻t1および時刻t4では、ソレノイド30のヒステリシスを補正する場合は、一旦糸張力をa8より下げる制御を行っているが、図17では、図の簡略化のためその変化は省略した。
【0073】
また、図16のフローチャートに示した上糸調子装置の制御は、上記第2の実施の形態では、糸調子装置の駆動源として糸に与える張力を変化させるソレノイドを用いた例を示しているが、上記ソレノイドに限らず、張力を電気的に変化させることが可能な駆動源であれば、パルスモータや、ボイスコイルモータ、ヒステリシスモータ等を使用しても良いことは勿論である。
【0074】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態は、本発明を鳩目穴かがりミシンに適用した例を示したが、鳩目穴かがりミシンに限らず、各種ミシンに適用可能である。
【0079】
【発明の効果】
請求項に記載の発明によれば、糸切り後、少なくとも、糸切り手段により切断された上糸の端部が、布の移動により布上に引き出されるまでは、縫製時よりも高い張力を上糸に与え布の移動によるミシン針からの上糸の引き出しを阻止可能とするように上糸調子装置を制御する。
したがって、縫製時に糸に付与されていた張力が低い場合でも、糸切り後に作業者が布を引き出す際に針糸が針の目穴から引き出されないような張力を与えることができ、針先に残る糸残り長さが長くなることにより発生する鳥の巣、糸切れ、針折れ等の不具合の発生を防いで、縫い品質の向上及び縫製効率低下の防止を図ることができる。
【0080】
請求項記載の発明によれば、上糸調子装置に加えて下糸調子装置を備えるミシンにおいても糸切り後縫製時よりも高い張力を糸に与える制御を、上糸調子装置に対してのみ行うので、請求項記載の発明と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の糸調子装置が適用されるミシンを模式的に示す図である。
【図2】図1のミシンの概略構成を示すブロック図である。
【図3】下糸調子装置の構成を示す分解斜視図である。
【図4】下糸調子装置のソレノイドを示す断面図である。
【図5】図4のソレノイドのストローク対推力を示すグラフ図である。
【図6】(a)は鳩目穴かがり縫いの形状と各部の名称を示し、(b)は(a)の縫目を形成するときに用いるパターンデータを示す図である。
【図7】制御装置によって行われる糸張力を下げるときの制御方法のイメージを示す図である。
【図8】ソレノイドに印加する電流値に対する糸張力の関係を示すグラフである。
【図9】ルーパー装置を示す平面図である。
【図10】ルーパー駆動機構を示す斜視図である。
【図11】縫製時のミシン針と左右のルーパーとスプレッダーの動きを順を追って説明する図である。
【図12】縫製時のミシン針と左右のルーパーとスプレッダーの動きを順を追って説明する図である。
【図13】本発明の下糸調子装置の制御を示すフローチャートである。
【図14】本発明の電流制御の他の例を説明する図であり、(a)は制御方法のイメージを示し、(b)は電流値に対する糸張力の関係を示すグラフである。
【図15】糸調子装置に用いられるソレノイド特有の性質を説明する図であり、(a)および(b)は電流値に対する糸張力の関係を示すグラフである。
【図16】本発明の上糸調子装置の制御を示すフローチャートである。
【図17】本発明の上糸調子装置によって、上糸に与えられる張力の変化を示す示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 ミシン
5 表示・操作パネル
6 ミシン針
7 スタートスイッチ
10 上糸調子装置
20 下糸調子装置
21 糸調子軸
22 調子皿(糸調子器)
23 ベース板
24 糸調子軸ナット
26 調子バネ
30 ソレノイド
31 プランジャ(可動部)
40 ルーパー装置
41 右ルーパー
42 右スプレッダー
43 左ルーパー
44 左スプレッダー
50 制御装置(制御手段)
T1 上糸
T2 下糸

Claims (2)

  1. 上下動されるミシン針と、
    前記ミシン針に連なる糸を布下で切断する糸切り手段と、
    前記ミシン針に連なる上糸に与える張力を電気的に変化させる上糸調子装置とを備えたミシンにおいて、
    糸切り後、少なくとも、前記糸切り手段により切断された上糸の端部が、布の移動により布上に引き出されるまでは、縫製時よりも高い張力を上糸に与え前記布の移動によるミシン針からの上糸の引き出しを阻止可能にするように前記糸調子装置を制御する制御手段を備えることを特徴とするミシン。
  2. 前記ミシンが下糸調子装置を備え、前記糸切り後縫製時よりも高い張力を糸に与える制御を、上糸調子装置に対してのみ行う制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載のミシン。
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