本発明の導光板の射出圧縮成形金型について、図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の断面図であって型締後、射出開始前の状態を示す図である。図2は、本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の断面図であって射出時にキャビティ内の容積が拡大された状態を示す図である。図3は、本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の断面図であってキャビティ内の樹脂を圧縮後にゲートカットされた状態を示す図である。図4は、本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型の要部拡大断面図であってキャビティ内の樹脂が圧縮後にゲートカットされた状態を示す図である。図5は、固定金型におけるランナ形成部付近の拡大正面図である。図6は、本実施形態の導光板の射出圧縮成形方法を示すチャート図である。
本実施形態の導光板の射出圧縮成形金型11は、対角寸法3インチ、板厚0.4mmの携帯電話用サイドライト型導光板を射出圧縮成形により成形する金型である。(以下携帯電話用サイドライト型導光板については、単に導光板と略す。)射出圧縮成形は、成形開始時から成形終了時までの間に可動金型12と固定金型13の距離が可変となるものである。従って型閉後の停止位置において溶融樹脂を射出後に可動金型をそのまま前進させ圧縮する射出プレスと呼ばれるタイプも射出圧縮成形に含まれるものとする。これら射出圧縮成形では、成形完了時に比較して、射出開始前または射出開始後にキャビティが僅かに開いた状態であるので高速射出能力を有する射出装置が必要なく、溶融樹脂を比較的低速・低圧で射出することができる。また射出開始後に可動金型を型締方向に移動させて溶融樹脂に圧縮を加えることから、キャビティのゲート部から遠い位置において溶融樹脂の流れを早くしたり、微細な転写を良好に行うことができるという利点がある。更にはゲートを切断した後については、通常の射出成形金型では、射出装置から保圧を及ぼすことはできないが、射出圧縮成形の場合は、キャビティ内の溶融樹脂を圧縮して冷却固化による収縮に対応することができる。このような射出圧縮成形は、特に出光面等の面積と比較して板厚が薄い導光板の成形を行う際に特に有利である。
図1ないし図4は、本発明の射出圧縮成形金型11の断面である。射出圧縮成形金型11は、第1の金型である可動金型12と第2の金型である固定金型13とからなり、型合わせされた両金型12,13の間には容積および厚さが可変のキャビティ14が形成されるようになっている。図示しない射出圧縮成形機の可動盤に取付けられる可動金型12には、金型本体部15とコア部16と可動枠部19等が設けられている。金型本体部15の固定金型側の面における略中央には、コア部16が固着されている。コア部16の固定金型13と対向する面は、鏡面からなり出光面を形成するキャビティ形成面16aとなっており、導光板Pの形状に略一致した突起部等を含む略四角形をしている。またコア部16の内部には、前記キャビティ形成面16aと平行に複数本の冷却媒体流路17が形成されている。なおコア部のキャビティ形成面を形成する部分と他の部分は、別体のブロックからなるものでもよい。またキャビティ形成面16aは鏡面の例を示したが、グルーブや粗面加工等がなされたものでもよい。
前記金型本体部15の固定金型側の面における上下4箇所には、凹部が形成され、該凹部内にはバネ18が前記固定金型側に向けて取付けられている。そして前記バネ18の前記固定金型側は、前記コア部16の周囲を囲むよう配設された可動枠部19に当接されている。従って換言すれば可動枠部19によって形成された空洞部の中にコア部16が配設されている。そして可動枠部19全体が前記バネ18により金型本体部15およびコア部16に対して型開閉方向に移動可能となっている。そして可動枠部19の固定金型13と対向する面は当接面19aとなっている。また可動枠部19のゲートと反対側には入光面P4を形成するための入光面形成ブロック20が着脱自在に配設されている。なお図1は、可動金型12に型締力が及ぼされて前記バネ18が収縮した状態であり、図2は、射出時にコア部16が後退してキャビティ14の容積が拡大した状態を示す図であるが実際より誇張して記載してある。
金型本体部15の可動盤側には、断熱板21が取付けられ、内部の空間および孔にはエジェクタ装置のエジェクタプレート22を介して前後進される突き出しピン23が配設されている。突き出しピン23は、金型本体部15とコア部16の内部に亘って形成された孔内に配設され、その先端はランナ形成面32に臨み、スプルP1とランナP2が保持しやすいよう断面Z字状に食い込み部23aが設けている。突き出しピン23を駆動するのは、図示しない可動盤内または可動盤から型締装置側に配設されたエジェクタ駆動装置である。
また金型本体部15の内部にはゲートカッタ部材24が配設されるための孔25および空間部26が形成されている。一方金型本体部15の孔25内にはガイドピン27が配設されている。ガイドピン27は円筒状部材の周囲の面には転動するボール28が形成されたボールガイドからなる。そして前記ガイドピン27のボール28が、孔25内に当接状態に設けられ、ガイドピン27の前後進時には、ボール28が転動してガイドピン27を保芯しながら移動されるようになっている。そして金型本体部15の空間部26内には前記ガイドピン27が固定された円盤状のプレート29が配設されている。そして前記プレート29における固定盤側中央にはゲートカッタ部材24が可動盤側から挿入され係合されている。ゲートカッタ部材24は、長方形の薄板からなり、コア部16の断面矩形の孔31内に前後進移動可能に配設されている。前記ゲートカッタ部材24の前面はゲート形成面24aであり、そのキャビティ側(図中上側)の角部が溶融状態のゲートを切断するためのゲートカッタ24bとなっている。そして図4に示されるように、前記ゲートカッタ部材24におけるキャビティ側の側面24cの一部は、ゲートカット後にキャビティ形成面を構成する。またゲートカッタ部材24の基部24dは円柱形をしており、前記基部24dの周囲にはプレート29およびゲートカッタ部材24を可動盤側に付勢するようにバネ30が前記空間部26内に配設されている。本実施形態では前記ゲートカッタ部材24は、ロックウエルCスケール硬度が55〜65HRCのハイス鋼等の硬質金属部材を使用している。またゲートカッタ部材24の寸法は、溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅が10〜20mm、溶融樹脂の流動方向の厚みが1.2〜2.0mm程度とすることが、本実施形態の大きさの導光板を成形する場合に望ましい。
またゲートカッタ部材24を駆動するのは、図示しない可動盤内または可動盤から型締装置側に配設されたゲートカッタ駆動装置である。ゲートカッタ駆動装置は、サーボバルブにより制御される油圧シリンダ、またはサーボモータとボールネジ機構が用いられる。サーボバルブにより制御される油圧シリンダの場合は、速度制御または圧力制御によりゲートカッタ部材24の前進時のクローズドループ制御を行う。またゲートカッタ駆動装置をサーボモータとする場合は、ゲートカッタ部材24の位置制御または速度制御が行われる。またゲートカッタ部材の前進停止位置は、可動金型内にストッパブロックまたはシムを配設し、そのストッパブロック等を厚さの異なるストッパブロック等に交換することにより調整してもよい。
またコア部16において、後述する固定金型13のスプルブッシュ44やインサートブロック43と対向する面は、ランナ形成面32となっている。そして前記ランナ形成面32とキャビティ形成面16aの間に、ゲートカッタ部材24が進退する矩形の孔31が形成され、前記孔31とゲートカッタ部材24との間隙は、いずれも樹脂が入り込まない間隔に形成されている。またランナ形成面32については、ゲートカッタ部材24から突き出しピン23側に隣接する部分に、凸部32aが形成され、スプルブッシュ44と対向し突き出しピン23が臨む部分が凹部32bとなっている。そしてゲートカッタ部材24のゲート形成面24aは突出時以外は、前記凸部32aよりも低い位置(可動盤側)に位置している。その理由は射出時に、射出装置のノズルの通路先端で固まった樹脂が、コールドスラグウエル状となっている凹部32bによって受け止められることによりキャビティ14へ流入しないためと、射出圧がゲートカッタ部材24の前面にかかり過ぎ、孔31との間にバリ等が発生することを防止するためである。なおランナとゲートは直線的にキャビティに接続されるものでもよい。
また突き出しピン23の周囲でありゲートカッタ部材24の近傍には冷却媒体流路33が形成されている。そして離型時に吹出されるエア通路34が、コア部16と可動枠部19の間に形成されている。なおエア通路は、ゲートカッタ部材24と孔31の間にも設けてもよい。
次に固定金型13について説明すると、図1〜図5に示されるように、図示しない射出圧縮成形機の固定盤に取付けられる固定金型13には、金型本体部41、キャビティ形成ブロック42、インサートブロック43、スプルブッシュ44、ゲートカッタ部材45、当接ブロック46等から形成されている。そして金型本体部41の固定盤側には、断熱板47が取付けられるとともに、図示しない射出装置のノズルが挿入される穴48が形成され、その周囲にはロケートリング49が取付けられている。金型本体部41の可動金型側にはキャビティ形成ブロック42が取付けられ、該キャビティ形成ブロック42の可動金型12と対向する面は、キャビティ形成面のうちの主要部形成面42aとなっている。本実施形態においてこの主要部形成面42aは、反射面P5を形成する部分であり、微細なドットが刻設されている。またキャビティ形成ブロック42の内部には、前記キャビティ形成面の主要部形成面42aと平行に、冷却媒体流路50が複数形成されている。またキャビティ形成ブロック42およびインサートブロック43と、当接ブロック46との間には離型時にエアを噴出するためのエア通路53が形成されている。
更に金型本体部41には、キャビティ形成ブロック42とともにインサートブロック43が配設されている。インサートブロック43は、その中央部に可動盤側に向けて拡径された孔が設けられたスプルブッシュ44が配設されている。そしてスプルブッシュ44の周囲にはスプルP1およびランナP2を冷却する冷却媒体流路51が形成されている。また図4および図5に示されるように、スプルブッシュ44の先端44aからキャビティ形成面に向けて、インサートブロック43の可動金型12と対向する面には、ランナ形成面54が形成されている。そして前記ランナ形成面54は当接ブロック46の当接面46aに溝状に一段低い位置(固定盤側の位置)に形成され、図5に示される当接ブロック46のランナ形成面46bと共に固定金型13側のランナP2を形成する面を構成する。そしてランナ形成面54の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅は、スプルブッシュ44に隣接する部分からキャビティ14に向けて徐々に広くなっている。そしてランナ形成面54についても可動金型12のランナ形成面32と等間隔を保つように、凹部32bに対向して凸部54aが形成され、凸部32aに対向して凹部54bが形成されている。
そしてランナ形成面54の凹部54bの部分は、ゲート形成面52へ連続する同一面で接続されている。従ってランナP2とゲートP3やその形成面に明確な区別がある訳ではない。前記連続する同一面のうち図5において一点鎖線で表わされる可動金型12のゲートカッタ部材24のゲート形成面24aと対向する部分が、固定金型ゲート形成面52を形成する部分となる。また当接ブロック46のランナ形成面46bに連続してゲート形成面46cが形成されている。そして前記ゲート形成面52は、後述するキャビティ形成面の主要部形成面42aおよびゲートカッタ部材45や、前記凸部54aに対して一段低い位置(固定盤側の位置)に設けられている。そしてゲート形成面52の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅は、スプルP1の直径よりも幅広に設けられている。従って本実施形態のゲートP3は、フィルムゲートの一種であって、導光板の側面(入光面P4とは反対側の側面)の長さの1/2〜1/4程度の長さ(幅)となっている。なお可動金型12のランナ形成面32の側を凹状に形成するか、可動金型12と固定金型13のランナ形成面32,54をそれぞれ一部づつ凹状としてもよい。
そしてインサートブロック43のランナ形成面54に接続されるゲート形成面52と、キャビティ形成ブロック42のキャビティ形成面の主要部形成面42aとの間には、ゲートカッタ部材45が固定されている。ゲートカッタ部材45は、ロックウエルCスケール硬度が55〜63HRCの合金工具鋼(SKD鋼)等の硬質金属部材からなる長方形の薄板であり、キャビティ形成面の主要部形成面42aを形成する部材よりも前記硬度が高い金属が使用されている。そしてゲートカッタ部材45の溶融樹脂の流動方向と直交する方向の幅は、ゲート形成面52と同じか僅かに幅広に形成されている。またゲートカッタ部材45の厚みは、0.4〜0.8mm程度である。そしてゲートカッタ部材45の前面45aは、キャビティ形成面16aと対向しており、キャビティ形成面の一部となっている。またゲートカッタ部材45のゲート部側の角部が刃であるゲートカッタ45bを形成している。またゲート部側の面45cは可動金型12のゲートカッタ部材24が前進時に僅かな間隔を隔てて対向する面となっている。従って本実施形態のゲート形成面24a,52の距離は、固定金型13と可動金型12のキャビティ14の距離と同様に可動金型12の進退により可変であり、更にはゲートカッタ部材24の前後進によっても可変である。
次に図6のチャート図により、本実施形態の射出圧縮成形金型11による射出圧縮成形方法について説明する。そして本実施形態では対角寸法3インチ、板厚0.4mmの導光板を4秒の成形サイクル時間で成形している。その内訳は、型開閉時間(取出時間、中間時間含む)1.35秒、射出時間0.05秒、保圧時間0.4秒、冷却時間2.2秒(実質的に冷却は射出開始から始まっている)である。このため本実施形態では、可動金型12のキャビティ形成面16aを冷却する冷却媒体流路17、突き出しピン23およびランナ形成面32近傍を冷却する冷却媒体流路33、固定金型13のキャビティ形成面の主要部形成面42aを冷却する冷却媒体流路50、スプルブッシュ44近傍およびランナ形成面54近傍を冷却する冷却媒体流路51へ、温調器により成形される樹脂であるポリカーボネートのガラス転移温度Tgより40〜70℃低い、80〜120℃程度に温度制御された冷却媒体(冷却水)を流している。
また射出装置の前部ゾーン(最もノズルに近いゾーン)は310℃に温度設定され、ポリカーボネートの溶融樹脂が計量されている。なおポリカーボネートを用いた場合の前記射出装置の前部ゾーンの温度設定は、300〜350℃に温度設定されることが望ましい。そして図示しない型締装置が作動され、固定盤に取付けられた固定金型13に対して可動盤に取付けられた可動金型12を当接させることにより型閉が行われる。この型閉の際の可動金型12のコア部16と可動枠部19の関係は、図2の状態に近い。次に型締力を50〜200kNに上昇させて型締を行う。そのことにより図1に示されるように、バネ18の弾発力に打ち勝って可動金型12の金型本体部15と可動枠部19とが当接され、コア部16に対して可動枠部19が最後退した位置となる。そして固定金型13と可動金型12との間には、厚さ可変のゲートを含むランナ、および該ランナに接続された厚さ可変のキャビティ14が形成される。この際、キャビティ14内のエアは吸引することがキャビティ14内の溶融樹脂流動の点から望ましい。
次に所定の遅延時間が経過すると、図示しない射出装置のノズルからスプルブッシュ44を介して100〜200mm/secの射出速度により溶融樹脂を射出する。可動盤および可動金型12の金型本体部15およびコア部16は、射出時の圧力により、再び図2に示される位置に後退される。そのことにより可動金型12の可動枠部19は、コア部16よりも相対的に前方位置となり、固定金型13のキャビティ形成面の主要部形成面42a等と可動金型12のキャビティ形成面16aとの間隔は、図1に示される最初に型締力が及ぼされた位置と比較して最大50〜200μmほど広がる。また同様に固定金型13と可動金型12間の距離が広がることによりゲート形成面52とゲート形成面24aの間隔が前記の50〜200μmだけ開き、ゲートP3の断面積が大きくなったキャビティ14に溶融樹脂を射出することができ、溶融樹脂の流動損失を少なくすることができる。またその結果、溶融樹脂を比較的低速・低圧で射出することができることから、特に導光板のゲート近傍に内部応力が発生することがないという利点がある。
そして射出装置によりスクリュ位置が所定の保圧切換位置に到達すると、射出制御から保圧制御に切換えられる。保圧制御に切替えられた後も型締装置側では高型締力による型締が行われているから、該高型締力により、上記の射出の際に型開した距離、またはその距離よりも少ない距離だけ型締方向に可動金型12が移動される。または射出開始時の可動金型12の位置が完全に型締された位置よりも開き気味の場合は、型開量(位置)よりも型締量(位置)の方が前進される場合もある。その後保圧制御に切換してから一定時間後、または保圧切換と同時に、型締力を減少させる。本実施形態では、型締力の低下と同時に、図示しないゲートカッタ部材駆動装置により、可動金型12のゲートカッタ部材24を0.45〜0.8mm前進させ、ゲートP3の切断を行う。この際、可動金型12のゲートカッタ部材24の刃であるゲートカッタ24bと固定金型13のゲートカッタ部材45の刃であるゲートカッタ45bの間でゲートP3の切断が行われる。そしてゲートカッタ部材24の側面24cとゲートカッタ部材45の側面45cとの間にはカジリが生じない僅かな間隙が形成される。また本実施形態では固定金型13のインサートブロック43が当接ブロック46に対して凹状に設けられる形で、ゲート形成面52が当接面46aよりも一段深く形成されているが、そのゲート形成面46cとゲートカッタ部材24との間もバリがほとんど生じず、またカジリも生じない僅かな間隙となっている。本実施形態において、ゲートカッタ部材45、ゲートカッタ部材24の間にカジリを生じることがないのは、ゲートカッタ部材24がボールガイドにより保芯され、前進時にも先端側でブレを生じない精度が保たれていることが上げられる。またゲートカッタ部材24とゲートカッタ部材45は硬度が高いが金属化学的に類似していない金属を使用しているので、金属間の直接接触による凝着を小さく押えることができるので、カジリが生じることが少ない。そして万一修復が必要なほどのカジリを生じたとしても、薄板状のカッタ部材のみを交換すればよいので、特許文献2〜4のものと比較して交換コストが廉価で済むという利点がある。
なおゲートカットの際、ゲートP3の溶融樹脂は完全に固化した状態でないことは言うまでもない。なおゲートカッタ部材24の前進速度は一段であっても、高速、低速の2段になるように制御してもよい。またゲートカッタ部材24の前進は、型締装置の駆動による可動金型12の前進中(前進開始〜前進完了まで)に行われるので、ゲートP3の部分は最も広がっていたときよりも狭くなっており、ゲートカッタ部材24の前進距離は短くて済む。また固定金型13に対するゲートカッタ部材24の前進速度はより増速されたものとなる。そしてその傾向は射出プレス成形の方がより顕著である。
そしてゲートカッタ部材24によりゲートP3の切断が行われた後は、ゲートカッタ部材24は前進位置に保持される。そのことにより射出装置側からキャビティ14内の溶融樹脂へは完全に保圧が及ばなくなるが、型締装置の駆動によって可動金型12が前進されることによりキャビティ14内の溶融樹脂の圧縮を行うことができるので、冷却による収縮があっても、ヒケが発生せず、良好な転写成形ができる。そしてその間に射出装置の側では次の成形に使用する溶融樹脂の計量が行われる。そして所定時間が経過すると可動金型12の可動枠部19とコア部16の間のエア通路34,53等からキャビティ14へ離型用エアを及ぼす。次に型締装置を作動させ圧抜、型開を順に行う。その際、導光板と、スプルP1およびランナP2はそれぞれ可動金型12側に保持された状態で取出される。なお成形された導光板については、固定金型13によって形成される反射面P5側の端部にゲートカッタ部材45の前面45aと主要部形成面42aとの間の痕跡が僅かに残る場合があるが、主要部形成面42a以外の面は、反射面P5を形成しないので問題ない。
また型開途中から図示しない取出用ロボットが作動され、可動金型12が型開完了位置に停止するとほぼ同時にエジェクタ装置の突き出しピン23の前進が行なわれる。本実施形態に使用される取出用ロボットは、スプルP1およびランナP2の把持と、導光板の吸着が別個に保持可能となっている。なお前記取出時に、ゲートカッタ部材24は前進位置で停止した状態であり、導光板と、スプルP1およびランナP2が可動金型12から落下しないように保持する役割の一端を担っている。そしてエジェクタ装置の突き出しピン23およびゲートカッタ部材24の後退により、前記取出用ロボットが導光板とスプルP1およびランナP2を完全に保持し、取出がなされる。なお本実施形態の導光板のゲートP3は、入光面P4になる部分ではないので、このまま仕上げ処理しないでも導光板として使用することができる。またスプルP1およびランナP2は別途リサイクルして利用することも可能である。
次に図7〜図9に示される別の実施形態の導光板の射出圧縮成形金型61について説明する。この別の実施形態の例は、金型におけるキャビティの数を2に増やしたことに伴う変更であり、技術思想自体は、図1等の例と同じである。またキャビティの数は複数であれば個数は問わない。従って図1等と同一部分は同一符号で表わし、説明を大幅に省略し、相違点を中心に説明する。
別の実施形態の射出圧縮成形金型61は、第1の金型である可動金型12と第2の金型である固定金型13とからなり、型合わせされた両金型12,13の間には容積および厚さが可変のキャビティ14が形成されるようになっている。可動金型12は、金型本体部15とコア部16と可動枠部19等が設けられ、コア部16と可動枠部19が型開閉方向に相対的に位置変更可能となっている。そしてコア部16には2面のキャビティ形成面16a,16aが形成されている。そして金型本体部15およびコア部16の中央には、固定金型13のスプルブッシュ44に対向する位置にエジェクタ装置の突き出しピン23が配設されている。そして前記突き出しピン23の周辺部から各キャビティ形成面16aに向けてそれぞれランナ形成面32が形成されている。
射出圧縮成形金型61が図1等の射出圧縮成形金型11と相違する点は、可動金型12のゲートカット機構の部分である。金型本体部15またはコア部16に複数配設された孔25内にボールガイドからなるガイドピン27が配設されている。そして空間部63については、エジェクタ装置の突き出しピン23の周囲を取囲むように形成され、内部にドーナツ円盤状のプレート64が配設されている。そして前記プレート64はコア部16内に複数形成された穴65内に配設されたバネ66により可動盤側に向けて付勢されている。そして前記プレート64のバネ66の部分よりも外側には、細長い薄板状のゲートカッタ部材24が2本取付けられ、前記ゲートカッタ部材24は、孔31内を前後進移動可能となっている。なおゲートカッタ部材24における先端側のゲートカッタ24bの形状やゲートP3の形状は図1等と同じであるので説明を省略する。このようなゲートカッタ部材24を用いる場合、複数本のガイドピン27によりガイドされるので、より一層、ゲートカッタ部材24の前進時のブレを防止することができる。
また第2の金型である固定金型13は、金型本体部41、2面のキャビティ形成ブロック42、インサートブロック43、スプルブッシュ44、ゲートカッタ部材45、当接ブロック46等から構成されている。そして前記スプルブッシュ44からランナ形成面54を介してキャビティ形成面42aに到る間に、キャビティ形成面42aに隣接してゲートカッタ部材45の刃であるゲートカッタ45bが配設されている。
導光板の射出圧縮成形金型による成形についても図6の例と手順等は同じである。キャビティ14内に溶融樹脂が射出された後、保圧制御に移行し、その途中でゲートを形成する溶融樹脂が未だ冷却固化しないうちにゲートカッタ部材24,24を前進させ、ゲートカッタ部材45,45との間でゲートP3の切断を行う。そしてその後、型締装置を更に駆動してキャビティ14,14内の溶融樹脂に圧縮を加える。そして成形完了後は、図示しない取出機により2枚の導光板を吸着するとともに、スプルP1およびランナP2をチャックにより把持して取出しを行う。
次に図10ないし図12に示される別の実施形態の導光板の射出圧縮成形金型81について、図1等と同一部分は同一符号で表わし、相違点を中心に説明する。更に別の実施形態の射出圧縮成形金型81は、第1の金型である可動金型12と第2の金型である固定金型13とからなり、型合わせされた両金型12,13の間には容積および厚さが可変のキャビティ14が形成されるようになっている。可動金型12は、金型本体部15とコア部16と可動枠部19等が設けられ、コア部16と可動枠部19が型開閉方向に相対的に位置変更可能となっている。図10等に示される更に別の実施形態では、ランナ形成面32を形成するブロックは、可動枠部19と一体に設けられている点が図1等に示される実施形態と相違している。なお図10等に示される更に別の実施形態は、キャビティ14が複数でもよく、可動枠部19に対してランナ形成面32を形成するブロックを別ブロックとしてもよい。いずれにしてもランナ形成面32を形成するブロックは可動枠部19と同様にバネ18によりコア部16に対して相対的に移動可能となっている。
この図10等に示される更に別の実施形態では、ランナ形成面32の形状は先の図1等に示される実施形態と同様となっている。そしてコア部16と可動枠部19の間には、図示しない駆動装置により進退移動可能なゲートカッタ部材24が設けられている。ゲートカッタ部材24は、金型本体部15内の空間部26内に配設されたプレート29に係合されている。ゲートカッタ部材24の形状等は、図1等の実施形態と同じである。ゲートカッタ部材24の基部の周囲にはプレート29およびゲートカッタ部材24を可動盤側に向けて付勢されるようにバネ30が配設されている。従ってゲートカッタ部材24は、金型本体部15およびコア部16側に配設され、ゲートカッタ部材24の後退時には、その前面であるゲート形成面24aがコア部16のキャビティ形成面16aと同じ面(おなじ高さ)となるように調整されている。また前記プレート29には転動するボール28によりガイドされたガイドピン27が接続され、前記ガイドピン27の後端面は、駆動装置にプレート板等を介して接続される駆動ロッド59の前端面に、僅かな間隙を隔てて対持している。その理由は、停止時に駆動ロッド59の後退位置の微調整を行うことにより、ゲートカッタ部材24の前進位置を微調整を可能にするためである。なお前記バネ30は、コア部16や可動枠部19に設けてもよいが、いずれにしても可動盤側に向けてゲートカッタ部材24が付勢されてゲートカッタ部材24の後退位置がキャビティ形成面16aど同一面となるようにされるものが望ましい。図10等に示される更に別の実施形態では、固定金型13は、図1等に示される実施形態と略同じであるから説明を省略する。
次に図10等に示される更に別の実施形態の成形時の作動について説明する。図10等に示される更に別の実施形態は、成形時における可動金型12のランナ形成面32と固定金型13のランナ形成面54の間隔が、当接面19aと当接面46aが当接されてから射出を経てゲートカットされる間、常に同一間隔となっている(射出によるランナ形成面32の意図しない僅かな後退を除く)点が、図1等に示される実施形態とは相違している。従ってランナP2の断面積は、射出後も変化しない。しかしゲートカッタ部材24の作動は、図1等に示される実施形態と略同じである。即ち図11に示されるように、射出圧縮成形の際に、射出開始中のゲートカッタ部材24のゲート形成面24aと固定金型13のゲート形成面52の距離(ゲートP3の間隔)は、図12に示されるキャビティ14内の溶融樹脂が圧縮後の前記距離(ゲートP3の間隔)に対して一旦広がる。従って射出中の溶融樹脂がゲートP3部分で受けるストレスを少なくしてキャビティ14内に充填できる。またゲートカッタ部材24の前進は、型締装置の駆動による可動金型12の前進中に行われるので、ゲートP3の部分は最も広がっていたときよりも狭くなっており、型内におけるゲートカット時のゲートカッタ部材24の前進距離が短くて済む。また固定金型13に対するゲートカッタ部材24の相対的な前進速度は、可動金型12が停止している場合よりも増速されたものとなる。
また図10等に示される更に別の実施形態の導光板の射出圧縮成形金型81は、板厚が薄い導光板(0.2〜0.5mm)を射出プレス成形により成形する場合にも用いられる。射出プレス成形の際は、射出開始時に可動枠部19に対してコア部16が後退した位置に停止されており、ゲートP3とキャビティ14の間隔が広くなっている。その状態から射出を開始し、保圧切換直前(または保圧切換と同時か保圧切換の直後)のタイミングで型締を開始する。そして前記型締により、可動枠部19に対してコア部16が相対的に前進され、キャビティ14内の溶融樹脂が圧縮される。そして保圧切換と略同時にゲートカッタ部材24を前進させてゲートP3のゲートカットを行なう。従ってゲートP3の厚みが薄くなった状態でゲートカットされるので、ゲートカッタ部材24の前進距離が短くてよい。また型締装置の駆動によるコア部16の前進と並行してゲートカッタ部材24も前進されるので、固定金型13に対するゲートカッタ部材24の前進速度は増速される。なお上記の射出圧縮成形の場合よりも射出プレス成形の場合の方が前記ゲートカッタ部材24の前進速度は顕著に増速される。
次に本発明により成形された導光板Pを用いた表示装置101について説明する。前記の射出圧縮成形(射出プレス成形を含む)により成形された導光板Pは、アニーリング、検査等の工程を経てから出荷され、通常は別の工場で表示装置101に組込まれる。図13は、携帯電話の液晶表示装置の概略を模式的に示した断面図である。サイドライト型の表示装置101に取付けられた導光板Pの入光面P4の側方には、光源102が前記入光面P4と平行に設けられている。光源102としては、冷陰極蛍光ランプ(CFL)、発光ダイオード(LED)などが挙げられる。そして表示装置101の裏面側には導光板Pの反射面P5に対向して反射シート103が配設されている。また表示装置101の表面側には導光板Pの出光面P6に対向して拡散シート104、プリズムシート105等が配設され、その上部には偏光板、ガラス板、液晶層等からなる液晶パネル106が配設されている。従って導光板Pの入光面P4から入光した光が液晶パネル106に輝度ムラなく導光されるようになっている。
表示装置101への導光板Pの取付けは、図示しない導光板Pのミミ部が表示装置101内に固定される。そして前記導光板Pの配設、固定方法は、前記光源102とは異なる側(図13の例では反対側)にゲートカットされた側面P7が位置するように配設されている。即ち表示装置101において、光源102とは異なる側(反対側)に、導光板Pのゲートカットされた側面P7を持ってくることにより、光源102から液晶パネル106への導光に影響を与えることがない。よって前記導光板Pの側面P7は、型内でゲートカットされた状態のままでゲート仕上げを行う必要がない。表示装置101は、携帯電話用に限らずパソコン等に使用されるものでもよく、液晶パネル以外にプラズマパネル等の画像表示パネルであってもよい。
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。本実施形態では対角寸法3インチの携帯電話用の導光板の射出圧縮成形金型について説明したが、導光板のサイズや形状を選ばない。従って板厚が均厚な導光板でも、板厚が入光面側から他側に向けて薄くなる楔型導光板であってもよく、楔型の場合も入光面以外の部分にゲートが形成される。
上記実施形態では固定のゲートカッタが設けられる一方の金型は、固定金型であり、可動のゲートカッタが設けられる他方の金型が可動金型の例で説明したが、反対でもよい。即ち、固定金型に可動ゲートカッタを配設し、可動金型に固定ゲートカッタを配設してもよい。そして導光板の取出も可動金型に保持されるものが一般的ではあるが、固定金型側に保持されるものでもよい。また本実施形態では水平方向に型開閉が行われる射出成形機に取付けられる射出圧縮成形金型について説明したが、垂直方向に型開閉が行われるものでもよい。
上記実施形態ではコア部16に対して可動枠部19が相対的に位置変更可能な平当金型と呼ばれるタイプについて説明したが、一方の金型の凸部が他方の金型の凹部内に嵌合され、その間に容積可変のキャビティが形成されるインロー金型と呼ばれるタイプについても本発明を適用することができる。
またゲート部分の形状については、一方の金型のゲート形成面に対して他方の金型のゲートカッタ部が前進してゲートを押し潰すような形で近接させ切断状態となすものでもよい。その場合は、一方の金型のゲート形成面がキャビティ形成面に隣接するゲートカッタを構成する。なおゲートカッタ部材の前面は平坦な面でなく、ゲートカッタが鋭角なものでもよい。更には一方の金型におけるゲート形成面の高さとキャビティ形成面の高さが射出時に同一または段差がほとんど無く、他方の金型のゲートカッタの前進により、一方の金型のゲート形成面(例えばスプルブッシュ等)が後退してゲートカットされるものでもよい。その場合はキャビティ形成面の端部の角がキャビティ形成面に隣接するゲートカッタを構成する。また溶融樹脂がキャビティへ流動されるゲートの部分の断面積が変更されるものであれば、可動金型のキャビティ形成面とランナ形成面が一体に設けられたものでないタイプでもよい。
また本実施形態は、本実施形態の導光板Pは、板厚が0.4mmであるので射出圧縮成形方法が用いられるが、板厚が0.2〜0.4mm程度の場合は射出プレス方法を行うことも考えられる。射出プレスは、型閉位置において既にキャビティの間隔が広げられているので、板厚が極めて薄いものでも比較的低速・低圧で射出することができ、射出後に可動金型をそのまま前進させ圧縮を行う。またその際の型締速度は高速であることが望ましい。
更に成形に使用される樹脂については、ポリカーボネートの例について記載したが、光学性能に優れる樹脂なら他の樹脂でもよく、例としては、メタクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂などが上げられる。そして樹脂により溶融樹脂の温度およびガラス転移温度が相違するから、ゲートカットのタイミング、冷却媒体の温度、および成形サイクル時間等も相違することは言うまでもない。