JP4898165B2 - オオバギ抽出物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、抗酸化作用、抗菌作用、抗腫瘍作用などの有用な作用を発揮するオオバギ抽出物を製造する方法に関する。
非特許文献1には、マハング(オオバギ)の落葉のアレロパシー成分を明らかにするために、その標本をメタノールで抽出して分画した研究結果が報告されている。その結果、既知の(−)−ニンファエオール−Cとともに、新規化合物のタナリフラバノンA及びBを単離して分子構造を解明した。さらに、2種の新規フラバノンは、200ppmにおいてレタス幼根の成長を阻害した。
特許文献1には、沖縄産プロポリス原体をエタノール抽出した後、各種カラムクロマトグラフィーを用いて精製したフラバノン化合物が開示されている。フラバノン化合物としては、ニムフェオール−A,B,C(nymphaeol-A,B,C)が挙げられる。これらのフラバノン化合物は、抗酸化作用、抗菌作用、抗腫瘍作用などの有用な作用を発揮するため、抗酸化剤、抗菌剤、抗腫瘍剤などとして利用される。
特開2005−29778号公報 M.H.Tseng, C.H.Chou, Y.M.Chen and Y.H.Kuo、マハング落葉由来のアレロパシー作用を有するプレニルフラバノン類(Allelopathic prenylflavanones from the fallen leaves of Macaranga tanarius)、J.Nat.Prod., 64, 827-828, 2001.
本発明者らは、鋭意研究の結果、非特許文献1に開示されているようなメタノール抽出法で抽出される抽出物よりも、オオバギ由来の有用な成分を高い濃度で含有するオオバギ抽出物を製造することに成功した。そして、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明の目的とするところは、オオバギ由来の有用な成分を高い濃度で含有するオオバギ抽出物を容易に製造することが可能なオオバギ抽出物の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、オオバギを水抽出した後の固形分を有機溶媒抽出することによりニムフェオール−Cを主成分として含有するオオバギ抽出物を得ることを要旨とする。
請求項2に記載のオオバギ抽出物の製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記水抽出では90℃以上の水が用いられることを要旨とする。
請求項3に記載のオオバギ抽出物の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記有機溶媒抽出では低級アルコールを主成分とする抽出溶媒が用いられることを要旨とする。
本発明によれば、オオバギ由来の有用な成分を高い濃度で含有するオオバギ抽出物を容易に製造することが可能なオオバギ抽出物の製造方法を提供することができる。
以下、本発明のオオバギ抽出物の製造方法を具体化した一実施形態について説明する。
本実施形態のオオバギ抽出物の製造方法は、オオバギを水抽出した後の固形分を有機溶媒抽出する工程を備えている。この製造方法で得られるオオバギ抽出物は、抗酸化作用、抗菌作用、抗腫瘍作用などの有用な作用を発揮する。本実施形態のオオバギ抽出物の製造方法は、上述したような有用な作用を発揮するオオバギ由来の有用な成分を高い濃度(純度)で含有するオオバギ抽出物を容易かつ大量に得ることを可能にする。
オオバギ抽出物には、少なくともニムフェオール−B(nymphaeol-B;5,7,3',4'-tetrahydroxy-2'-geranylflavanone)及びニムフェオール−C(nymphaeol-C;5,7,3',4'-tetrahydroxy-6-(3''',3'''-dimethylallyl)-2'-geranylflavanone)が含有されている。さらに、このオオバギ抽出物には、プロポリンA(propolin A;5,7,3',4'-tetrahydroxy-2'-(7''-hydroxy-3'',7''-dimethyl-oct-2''-enyl)-flavanone)及び/又はニムフェオール−A(nymphaeol-A;5,7,3',4'-tetrahydroxy-6-geranylflavanone)が含有されていることが好ましい。
これらのニムフェオール−A,B,C及びプロポリンAはいずれも、オオバギ抽出物中の主要な成分であるが、オオバギ抽出物中のその他の微量成分にも、上述したような有用な作用を発揮し得る可能性がある。その他の微量成分としては、5,7,3',4'-tetrahydroxy-5'-(7''-hydroxy-3'',7''-dimethyl-oct-2''-enyl)-flavanone、5,7,3',4'-tetrahydroxy-6-(7''-hydroxy-3'',7''-dimethyl-oct-2''-enyl)-flavanone、5,7,4'-trihydroxy-3'-(7''-hydroxy-3'',7''-dimetyl-oct-2''-enyl)-flavanone、イソニムフェオール−B(isonymphaeol-B;5,7,3',4'-tetrahydroxy-5'-geranylflavanone)、5,7,4'-trihydroxy-3'-geranylflavanoneなどが挙げられる。
オオバギ(大葉木)は、マカランガ・タナリウス(Macaranga tanarius)とも呼ばれ、トウダイグサ科オオバギ属に属する常緑広葉樹(雌雄異株)であり、沖縄、台湾、中国南部、マレー半島、フィリピン、マレーシア、インドネシア、タイなどの東南アジア、オーストラリア北部などに生育している。
オオバギ抽出物を製造するための原料としては、オオバギの各器官やそれらの構成成分が用いられる。このような原料としては、単独の器官又は構成成分を用いてもよく、或いは二種以上の器官や構成成分を混合して用いてもよい。原料には葉身及び/又は茎の先端部が含まれていることが好ましい。茎の先端部は、茎の成長点及び葉芽を含んでおり、葉身に比べて柔らかい。このような原料中には、上記ニムフェオール−A,B,CやプロポリンAのようなフラバノン化合物を主体とするオオバギ由来の有用な成分と、それ以外の夾雑物とが含有されている。
原料は、採取したままの状態、採取後に破砕若しくはすり潰した状態、採取・乾燥後に破砕若しくはすり潰した状態、又は、採取後に破砕若しくはすり潰しさらに乾燥させた状態で水抽出に供され得る。原料の破砕は、カッターや裁断機、クラッシャーなどを用いて行うことができる。破砕した後の原料は、三角形状や四角形状などの多角形状を始めとしてどのような形状であっても構わない。なお、原料を多角形状に破砕する場合、1辺が1cm程度であることが好ましい。また、原料をすり潰す場合には、ニーダーもしくは乳鉢を用いて行なうことができる。ちなみに、粉砕機や磨砕機で微粉砕された状態の原料を水抽出(熱水抽出)すると、オオバギ由来の有用な成分が水(熱水)中に溶出して損失するおそれがあることから、このような場合には、粉砕や磨砕する工程を実施せず、水抽出に供されることが好ましい。
水抽出は、原料中に含まれる前記夾雑物を減少させるとともに、引き続き実施される有機溶媒抽出の抽出率を高めるために行われる。その結果、製造後のオオバギ抽出物中に含まれるオオバギ由来の有用な成分の濃度を飛躍的に高めることが可能になる。水抽出は、具体的には、原料を水に浸漬させて撹拌(ニーダー、プロペラ等による攪拌)又は放置することにより行われる。この水抽出では、オオバギ由来の有用な成分を固形分(残渣)側に残したまま、夾雑物の多くを水側に移行させるため、夾雑物は水抽出物として水中(水抽出液中)に存在する。
水抽出に用いられる水の温度は、水の凝固点(常温で0℃)と沸点(常温で100℃)との間であれば特に限定されないが、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上であることが望ましい。水の温度が90℃未満の場合、夾雑物の多くを水側に十分に移行させるために多くの時間が必要となる。また、この水抽出は、原料を浸漬させた状態の水の凝固点と沸点との間の任意の温度(例えば常温)で実施可能であるが、夾雑物を迅速に水側に移行させるために、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上の温度で実施することが望ましい。即ち、水抽出では、水に浸漬させた原料を、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上に継続的に維持する温度の水で攪拌または放置することにより実施されることが望ましく、更に煮出すことにより実施されることが特に望ましい。煮出す場合、時間は長いほど、より多くの夾雑物を水側に移行させることができる。
この水抽出では、前記夾雑物を十分に水側に移行させた後に固液分離が行われる。固液分離は、メッシュでの分離、フィルター分離、膜分離、遠心分離などの公知の分離方法によって、水と固形分(残渣)とを分離する。この固液分離によって分離された固形分は、引き続き有機溶媒抽出に供される。なお、オオバギ由来の有用な成分をより多く抽出・回収するために、有機溶媒抽出する前に固液分離によって分離された固形分を粉砕若しくは摩砕することが望ましい。粉砕若しくは摩砕工程を実施する場合には、ミキサーやグラインダー、ミルなどを用いて行うことができる。熱水抽出した後に粉砕若しくは摩砕工程を実施すると、原料が水分を含んでいるため粉砕若しくは摩砕しやすく、効率的により細かくできる利点もある。
有機溶媒抽出は、有機溶媒を主成分とする抽出溶媒中に、前記水抽出後の固形分(残渣)を浸漬させて撹拌又は放置することにより行われる。その結果、抽出溶媒中にオオバギ抽出物が溶解されてなる抽出液が得られる。
抽出溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサンなどの有機溶媒を主成分とする溶媒が用いられる。なお、有機溶媒を主成分とする溶媒とは、抽出溶媒中に占める前記有機溶媒(単独及び二種以上の組合せのいずれでもよい)の配合量が体積比で40%以上である溶媒を指し、好ましくは45%以上である溶媒を指し、より好ましくは50%以上である溶媒を指し、特に好ましくは60%以上である溶媒を指す。なお、前記有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ちなみに、抽出溶媒中に二種以上の前記有機溶媒が含有されている場合、それら複数の有機溶媒の配合量の総和が、抽出溶媒全体に対して40%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上であればよい。
抽出溶媒中に配合可能な有機溶媒以外の溶媒としては、水が挙げられる。また、抽出溶媒中には、有機塩、無機塩、緩衝剤、乳化剤、デキストリンなどの溶質が含有されていても構わない。前記溶質としては、水に対するオオバギ抽出物の溶解度を高めるために、乳化剤又は環状デキストリンが好適に使用される。なお、これら溶質は水への溶解性は優れているものの、有機溶媒への溶解度が低いものもあることから、オオバギ由来の有用な成分の溶解度を高めるために抽出溶媒に溶質を添加するような場合、抽出溶媒が蒸発し水の構成比率が高まった段階、即ち後述する固液分離後の濃縮段階で、これら溶質を添加する方法が望ましい。抽出溶媒としては、抽出率を高めるために、好ましくは低級アルコール又は含水低級アルコールが用いられ、より好ましくはメタノール、含水メタノール、エタノール及び含水エタノールから選ばれる少なくとも一種が用いられ、さらに好ましくはメタノール及び/又はエタノールが用いられ、特に好ましくはメタノールが用いられる。
この有機溶媒抽出では、オオバギ抽出物を抽出溶媒中に移行させた後に固液分離が行われる。固液分離は、膜分離や遠心分離などの公知の分離方法によって、抽出溶媒(抽出液)と固形分(残渣)とを分離する。固液分離によって抽出溶媒から分離された固形分は、別の抽出溶媒(第1回目の抽出溶媒と同一の組成及び異なる組成のいずれでもよい)によって再び有機溶媒抽出することも可能である。固液分離後に得られる抽出液(オオバギ抽出物を含む溶液)は、水に対する溶解性が低く、水中では沈澱などが生じやすいため、乳化剤や環状デキストリンなどを含む水中で保存することが好ましい。また、この抽出液は、必要に応じて濃縮及び乾燥することも可能である。
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態のオオバギ抽出物の製造方法は、オオバギの器官又は構成成分からなる原料を水抽出した後に得られる固形分を有機溶媒抽出する工程を備えている。水抽出は、原料中に含まれる夾雑物を減少させるとともに、引き続き実施される有機溶媒抽出の抽出率を高めるため、製造後のオオバギ抽出物に含まれるオオバギ由来の有用な成分の濃度を飛躍的に高めることを可能にする。従って、本実施形態の製造方法によれば、オオバギ由来の有用な成分を高い濃度で含有するオオバギ抽出物を容易に製造することが可能となる。さらに、本実施形態の製造方法では、水抽出時に安価な水が用いられるため、オオバギ抽出物の製造コストを容易に低減させることも可能となる。
・ 水抽出で90℃以上の水を用いることによって、原料中に含まれる夾雑物を効率よく水側に移行させることができるため、水抽出後の固形分に含まれるオオバギ由来の有用な成分の含量を飛躍的に高めることが可能となる。その結果、有機溶媒抽出の抽出率を容易に高めることができるため、オオバギ由来の有用な成分の回収が容易になる。さらに、水抽出を90℃以上の温度で実施する場合には、夾雑物を迅速に水側に移行させることが可能となるため、水抽出の時間を短縮することが容易になる。
・ 有機溶媒抽出で低級アルコールを主成分とする抽出溶媒を用いることによって、オオバギ由来の有用な成分の抽出率を容易に高めることが可能となる。特に、アルコール濃度が60%以上のエタノールを抽出溶媒として用いる場合には、飲食品への配合が容易なオオバギ抽出物を大量かつ安価に製造することが容易となる。
<予備検討1>
(オオバギのエタノール抽出物の調製)
オオバギの乾燥葉を細かく刻んだ後に乳鉢ですり潰した。すり潰された乾燥葉10gに対して100mlの100%エタノールを加えた後、約1週間室温(25℃)暗所で放置することにより有機溶媒抽出を行った。続いて、ろ過により固液分離を行って有機溶媒抽出液を得た後、該有機溶媒抽出液を乾固することにより、オオバギのエタノール抽出物を得た。このエタノール抽出物を下記Photo Diode Array-HPLC(HPLC条件1)で分析したときのクロマトグラム及び該クロマトグラム上の主要なピークを構成する化合物を図1(a)に示す。
HPLC条件1
PDA−HPLC:多波長検出器付高速液体クロマトグラフィー
HPLC:JASCO GULLIVER SERIE(日本分光)
Program soft:BORWIN−PDA
HPLC pump:PU−1580
GRADIENT unit:LG−1580−02
Degasser:DG−1580−53
Multiwavelength detector :MD−1510
カラム : Shiseido Capcell Pak ODS UG-120 (4.6×250mm)
溶媒 : A:水(2%酢酸)、B:アセトニトリル(2%酢酸)
溶出条件: 0-60min(グラジエント溶出;A:B=80:20→A:B=20:80)
流速 : 1ml/min
PDA検出 : UV 200−600nm
UV検出 : UV280nm
注入量 : 10μl
温度 : 30℃
(オオバギの80%エタノール抽出物の調製)
オオバギの乾燥葉を1辺が1cm程度の正方形状になるように細かく刻んだ後に乳鉢ですり潰した。すり潰された乾燥葉10gに対して500mlの80%含水エタノールを加えた後、1晩室温(25℃)暗所で放置することにより有機溶媒抽出を行った。続いて、ろ過により固液分離を行って有機溶媒抽出液を得た後、該有機溶媒抽出液を乾固することにより、オオバギの80%エタノール抽出物2.9gを得た。この80%エタノール抽出物を下記HPLC条件2で分析したときのクロマトグラムを図1(b)に示す。その結果、図1(b)に示すクロマトグラムのピーク面積より算出すると、ニムフェオール−A,B,Cの合計は、80%エタノール抽出物に含まれる全固形分の40%であったことが確認された。よって、便宜的にニムフェオール−A,B,Cをオオバギ由来の有用な成分であるとすれば、80%エタノール抽出物に含まれる該成分の純度(濃度)は40%となる。
HPLC条件2
システム: PDA−HPLCシステム(島津製作所)、LC10ADvpシリーズ、UV;SPD−10Avp、PDA;SPD−M10Avp
カラム : Luna C18 (2.0×250mm)(島津GLC)
溶媒 : A:水(5%酢酸)、B:アセトニトリル(5%酢酸)
溶出条件: 0-20min(グラジエント溶出;A:B=80:20→A:B=30:70)
20-50min(グラジエント溶出;A:B=30:70→A:B= 0:100)
50-60min(A:B= 0:100)
60-75min(A:B=80: 20)
流速 : 0.2ml/min
PDA検出:UV190−370nm
UV検出: UV287nm
注入量 : 20μl
温度 : 40℃
(オオバギの水抽出物の調製)
オオバギの乾燥葉を1辺が1cm程度の正方形状になるように細かく刻んだ後に乳鉢ですり潰した。すり潰された乾燥葉10gに対して500mlの熱水(90℃以上)を加えた後、1晩室温(25℃)暗所で放置することにより水抽出を行った。続いて、ろ過により固液分離を行って水抽出液を得た後、該水抽出液を乾固することにより、オオバギの水抽出物を得た。この水抽出物を上記HPLC条件2で分析したときのクロマトグラムを図1(c)に示す。その結果、水抽出しただけでは、オオバギ由来の有用な成分は全く検出されなかった。
<予備検討2>
沖縄県で採集して冷凍したオオバギの生葉を解凍し、はさみで細かくカットした。カットした葉0.2〜0.3gと、溶媒10mlとをチューブ内に入れ、室温で2週間浸漬させて溶媒抽出を行った後、フィルターろ過してろ液を採取した。前記溶媒は、下記表1に示す溶媒をそれぞれ用いた。なお、表1に示す溶媒は、例えば左最上段ではメタノール:水=100:0の溶媒、右最下段では酢酸エチル:メタノール=30:70の混合溶媒を用いたことを意味する。
得られたろ液をそれぞれ上記HPLC条件2でHPLC分析した。各ろ液についてクロマトグラムを得た後、各クロマトグラム上でニムフェオール−B(nymB)及びニムフェオール−C(nymC)のピーク高さをそれぞれ測定した。溶媒抽出に用いたオオバギの生葉1mgあたりの各ピーク高さを表1に示す。また、同表にはnymB及びnymCのピーク高さの合計も示す。
Figure 0004898165
上記予備検討1において、ニムフェオール−Aの含有量(抽出量)は、ニムフェオール−B,Cよりも極端に少なかったため、本予備検討2ではニムフェオール−B,Cのピーク高さについてのみ調べた。その結果、表1より、抽出溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチルの順に好ましく、DMSO、メタノール及びエタノールが特に好ましいことが示された。ただし、DMSOは取り扱い性などの点からあまり実用的でないため、メタノールやエタノールなどの低級アルコールが好ましいと言える。
低級アルコール又は含水低級アルコールを抽出溶媒として用いる場合、アルコール濃度が高い程、抽出率が高まることも示された。ちなみに、30%以下の含水メタノールではほとんど抽出されず、30%以下の含水エタノールでは抽出率が低かったため、含水アルコールを抽出溶媒として用いる場合、アルコール濃度が40%以上であることが好ましいと考えられる。また、メタノールとエタノールとの混合溶媒を用いるよりも、メタノール単独又は60%以上の含水メタノールを用いる方が抽出率を高めることができることも示された。
<オオバギ抽出物の製造>
飲食品に配合容易なオオバギ抽出物を大量に製造する方法について検討した。なお、検討作業の簡素化を図るために、オオバギ抽出物中における含有量の高い主要な成分であるニムフェオール−A,B,Cに着目した。また、データは示さないが、本発明者らの予備試験により、オオバギの葉にオオバギ由来の有用な成分が多く含まれていることが確認されている。
(実施例)
オオバギの生葉を沖縄県で採集して冷凍した。冷凍されたオオバギの葉392.4gを解凍し、水洗後に一辺2〜3cmの四角形状にカットした。次に、20倍量の精製水を加え、90℃以上の温度で20分間水抽出を行った。続いて、メッシュろ過により固液分離を行って、水抽出液及び固形分をそれぞれ分離した。次に、水抽出後の固形分(オオバギの葉)に20倍量のエタノールを加え、室温で42時間有機溶媒抽出を行い、メッシュろ過により固液分離を行って、オオバギ抽出物(一次抽出物)を得た。得られた一次抽出物をエバポレーターで濃縮後に凍結乾燥した。
次に、前記一次抽出物を回収した後の固形分(オオバギの葉)をミキサーで粉砕した後、1000mlのエタノールを加え、室温で24時間有機溶媒抽出を行い、メッシュろ過により固液分離を行って、オオバギ抽出物(二次抽出物)を得た。得られた二次抽出物をエバポレーターで濃縮後に凍結乾燥した。以上の工程で得られたオオバギの水抽出液、一次抽出物及び二次抽出物をそれぞれ上記HPLC条件2でHPLC分析した。結果を図2(a)〜(c)に示す。
(比較例)
オオバギの生葉を沖縄県で採集して冷凍した。冷凍されたオオバギの葉100gを解凍し、水洗後に一辺2〜3cmの四角形状にカットした。次に、20倍量のエタノールを加え、室温で42時間有機溶媒抽出を行い、メッシュろ過により固液分離を行って、オオバギのエタノール抽出物を得た。得られたエタノール抽出物をエバポレーターで濃縮した。得られたエタノール抽出物を上記HPLC条件2でHPLC分析した。その結果、データは示さないが、比較例のエタノール抽出物に含まれるニムフェオール−A,B,Cの含有率の合計(純度)は41.3%であった。
<結果の考察>
図2(a)に示すように、オオバギの水抽出液中にはニムフェオール−A,B,Cが検出されなかった。また、この水抽出液には、比較例のエタノール抽出物のクロマトグラム(図示略)において早い時期に溶出されたピークが多量に検出された。図2(b)に示すように、一次抽出物には、高い純度のニムフェオール−A,B,Cが含まれていた。ちなみに、一次抽出物中のニムフェオール−A,B,Cの純度(クロマトグラムのピーク面積から算出)は70.3%、収率は2.9%であった。図2(c)に示すように、二次抽出物では、一次抽出物と比較して、純度は比較的高かったが、期待されるほどニムフェオール−A,B,Cが多く含まれてはいなかった(収率0.22%)。
従って、オオバギ由来の有用な成分を抽出する場合、水抽出を行った後の固形分を使用して有機溶媒抽出を行うことにより、夾雑物が容易に減少するとともに、有用な成分を高い純度で含有するオオバギ抽出物が抽出されやすいことが示された。また、有機溶媒抽出は、製造コストを抑えるためには1回実施することが好ましく、オオバギ由来の有用な成分をより多く得るためには2回実施することも可能であることが示された。ちなみに、一次抽出物と二次抽出物とを合わせた場合の収率は3.13%であった。
(茶飲料での抗菌効果の検討)
ブレンド緑茶を熱水抽出することにより、タンニン量12.5mg/100mlの緑茶の熱水抽出液(緑茶飲料)を調製した。調製された緑茶飲料に前記オオバギの一次抽出物(純度70%)をそれぞれ下記表2に示す濃度となるように添加し、それぞれの調合液のタンニン量が12.5mg/100mlになるように調整した後、350mlのペットボトル(PET)に充填し、同表に示す濃度の菌をそれぞれ接種した。また、菌種を接種していないコントロール(未接種)も準備した。これらのペットボトルを保持殺菌(ホットパック)した後に冷却し、35℃で4週間保存した後、各ペットボトル内の緑茶飲料のpHを測定した。また、一部のペットボトルについては、緑茶飲料0.1mlを寒天プレート上に接種して菌数をカウントした。結果を下記表2に示す。なお、B.coagulans及び芽胞菌ブレンド(B.coagulansを主体とした8種の芽胞菌からなる混合物)については、それぞれ2本のペットボトルについて行った試験の結果を示す。
Figure 0004898165
表2より、オオバギ抽出物(一次抽出物)を緑茶飲料などの飲食品に添加することにより、B.coagulansを主体とする芽胞菌の増殖を抑えて、高い抗菌活性を発揮することが確認された。即ち、オオバギ抽出物は、飲食品に添加するための保存料として利用可能であることが示された。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ オオバギ抽出物を抗酸化剤や抗菌剤などとして利用してもよい。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記水抽出は90℃以上の温度で実施される請求項2に記載のオオバギ抽出物の製造方法。
・ 前記低級アルコールはメタノール及び/又はエタノールである請求項3に記載のオオバギ抽出物の製造方法。
・ 前記水抽出は、オオバギの葉身又は茎の先端部を含む原料を用いて行われる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオオバギ抽出物の製造方法。
・ 前記オオバギ抽出物にはニムフェオール−B及びニムフェオール−Cが含有されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオオバギ抽出物の製造方法。前記オオバギ抽出物にはプロポリンA及び/又はニムフェオール−Aが含有されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のオオバギ抽出物の製造方法。
(a)は実施例の予備検討1で調製したオオバギのエタノール抽出物をPDA−HPLC分析したときのクロマトグラム、(b)は同じくオオバギの80%エタノール抽出物を分析したときのクロマトグラム、(c)は同じくオオバギの熱水抽出物を分析したときのクロマトグラム。 (a)は、実施例のオオバギ抽出物の製造において、オオバギの水抽出液をHPLC分析したときのクロマトグラム、(b)は同じく一次抽出物をHPLC分析したときのクロマトグラム、(c)は同じく二次抽出物をHPLC分析したときのクロマトグラム。

Claims (3)

  1. オバギを水抽出した後の固形分を有機溶媒抽出することによりニムフェオール−Cを主成分として含有するオオバギ抽出物を得ることを特徴とするオオバギ抽出物の製造方法。
  2. 前記水抽出では90℃以上の水が用いられることを特徴とする請求項1に記載のオオバギ抽出物の製造方法。
  3. 前記有機溶媒抽出では低級アルコールを主成分とする抽出溶媒が用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のオオバギ抽出物の製造方法。
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