JP4895938B2 - 電界放出型電子銃およびそれを用いた電子線応用装置 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維状炭素物質が接合材により導電性基材に固定された構造を有する電界放出型電子銃、およびそれを用いた電子線応用装置に係る。特に、電界放出型電子銃の繊維状炭素物質と導電性基材との接合部の耐熱性を向上させることに関する。
最近、陰極部先端に単一のカーボンナノ材料からなる先端部材を固着した電界放射電子源が提案されている。特開2005−100885号公報(特許文献1)には、陰極部材と先端部材との接触位置に炭素あるいは炭素化合物を堆積させ、カーボンナノ材料を陰極部材に固着させ、さらに、固着部を覆うように白金の導電層を形成し、接合状態の再現性および安定性を改善することが提案されている。また、特開2006−31976号公報(特許文献2)には、特許文献1に記載の接合法に加え、陰極部材に平坦面を設け、平坦面で接合することにより、接合時に発生する応力を低減させるとともに、陰極部材に対するカーボンナノ材料の取付け位置精度を向上させることが提案されている。
特開2005−100885号公報 特開2006−31976号公報
電界放出型電子銃より真空中で電子を電界放出させる前に、最低一度は、電子放出部位に吸着したガスを加熱により除去する必要がある(以下、この加熱による吸着ガス除去操作を加熱フラッシングという。)。
しかしながら、引用文献1,2に記載された電界放出型電子銃では、加熱によりカーボンナノ材料と陰極部材との固着部を覆っている白金の導電層が、カーボンナノ材料表面を拡散してしまい、カーボンナノ材料と陰極部材との接合強度が低下してしまう。
そこで本発明の目的は、電子放出部位と導電性基材とを接合材で接合された構造を有する電界放出型電子銃であって、加熱フラッシングを行うに十分な接合部の耐熱性を有する電界放出型電子銃を提供することにある。また、当該電子銃を用いた電子線応用装置を提供することにある。
上記課題は、特許請求の範囲に記載された発明により解決される。具体的には、繊維状炭素物質と、前記繊維状炭素物質を支持する導電性基材と、前記繊維状炭素物質を加熱する加熱装置と、前記繊維状炭素物質より電子を電界放出させる引出装置と、放出された電子を加速させる加速装置と、を有する電界放出型電子銃であって、前記繊維状炭素物質と前記基材との接触部分の少なくとも一部を覆う導電性の第一の被覆層と、第一の被覆層の繊維状炭素物質の先端側を覆う炭素から構成される第二の被覆層を有することを特徴とする。このように第二の被覆層を配置することで、第一の被覆層を形成する物質が拡散し、繊維状炭素物質が炭化物となり、繊維状炭素物質が折れたり、電子線を放出されたときに切れたりすることが少なくなる。なお、第二の被覆層は、電子放出部位にかからないように形成する必要がある。電子放出部位に被覆層が形成されることで、放出される電子線が不安定になるためである。さらに、第二の被覆層は、第一の被覆層全体を覆うように形成されることで第一の被覆層の材料の拡散を防止でき、高い導通を維持できるため好ましい。
さらに、第一の被覆層は、炭素との炭化物または固溶体を形成する物質を含有することが好ましい。繊維状炭素物質との濡れ性が良く、導電性を高くすることが出来る。例えば、タングステン,チタン,ニオブ,モリブデン,ハフニウム,ジルコニウム,白金を第一の被覆層として用いることが好ましい。また、第二の被覆層は、炭素を主成分(炭化物またはグラファイト、もしくはこれらを含有する物質)とする。上記第一の被覆層を形成する材料が流出する場合に、炭化物または固溶体を形成して流出を抑制できるためである。
第一の被覆層と第二の被覆層は、加熱フラッシングにより、もしくは加熱処理により両被覆層の界面で反応し、金属炭化物層または固溶体層を生成する。例えば、第一の被覆層をタングステンとすると、約1000℃で加熱することにより炭化物を生成する。炭化物層の少なくとも一部に結晶質の炭化物を含むことが好ましい。
また、他の本発明は、上記電子銃を用いた電子線応用装置である。例えば、電界放出型電子銃と、前記電界放出型電子銃より放出された電子線が照射される位置に形成された試料ステージと、前記電界放出型電子銃より放出され、試料に照射されて得られる電子線を検出する電子線検出器を有する電界放出型電子顕微鏡や、電界放出型電子銃,試料ステージと、前記電子線と試料ステージとの相対位置を制御する走査機構とを有することを特徴とする電子線描画装置が挙げられる。
上記構成によれば、加熱フラッシングでも劣化しにくい接合部を有する電界放出型電子銃を提供することができるとともに、高安定なエミッション電流が得られる電子線応用装置を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
電界を付与することにより電子を放出させる電界放出型電子銃は、電子線を放出する部位を有する繊維状炭素物質と、繊維状炭素物質を固定しながら電気的導通をとる導電性基材と、前記繊維状炭素物質と対となる電極となり電子を電界放出させる引出装置とを備える。繊維状炭素物質を例示すると、カーボンナノチューブや、カーボンファイバーである。適宜炭素以外の元素を添加したものでも使用できる。これらの炭素物質を使用すると、電子線の引出し電圧を低くできる。電子銃を応用する電子線応用装置としては、電子顕微鏡,電子線描画装置,X線発生源等の用途がある。
本発明では、繊維状炭素物質を導電性基材に固定する際、平面または曲面を有する導電性基材の表面と、繊維状炭素物質との接触範囲のうち、少なくとも一部に接着材として導電性の被覆層を形成する。被覆層の材質としては、炭素と反応し炭化物または固溶体を形成する高融点材料が好ましい。繊維状炭素物質と濡れ性が良いためである。タングステン,チタン,ニオブ,モリブデン,ハフニウム,ジルコニウム,白金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
しかし、被覆層は、被覆層を構成する材料が、熱をかけると繊維状炭素物質の表面を拡散するとともに、繊維状炭素物質と炭化物または固溶体を形成するという性質を有するため、繊維状炭素物質が損傷するという問題が生じる。例えば、電子放出部位である繊維状炭素物質に吸着しているガスを加熱フラッシングにより除去する工程で、繊維状炭素物質が細くなり導通が悪くなったり、繊維状炭素物質が折れたりする場合がある。
図1は、被覆層の材料としてタングステンを用いて、カーボンナノチューブを導電性基材に固着させた電子源における真空中での加熱(840℃×5時間)前後の導電性基材先端部のSEM写真である。タングステンよりなる基材の先端部をFIB加工により削り、平面部を形成した後にカーボンナノチューブ太さに合った溝を形成し、カーボンナノチューブを載せてタングステンで被覆・固定した。溝がカーボンナノチューブに比して太すぎると、カーボンナノチューブが溝の中で転がるので、位置の調節が難しい。また、接着時に溝が埋まりにくい。
図1(a)が加熱前、図1(b)が加熱後である。加熱により、カーボンナノチューブが損傷し、カーボンナノチューブが折れていることがわかる。被覆層を形成したタングステンが、加熱に伴いカーボンナノチューブ上・導電性基材上を拡散し、カーボンナノチューブの表面と反応して炭化タングステン(WC)を生成することによりカーボンナノチューブが細くなっている。その結果、加熱中にカーボンナノチューブが折れたり、もしくはその後電界をかけて電子線を放出させる際にカーボンナノチューブが切断される。
繊維状炭素物質を導電性基材に固定する際、平面または曲面を有する導電性基材の表面と、繊維状炭素物質との接触範囲のうち、少なくとも一部に接着材として導電性の被覆層を形成する。上記のような問題を解決する第一の手法は、カーボンナノチューブのような繊維状の炭素物質と、導電性の基材との接着層として、炭素と反応し炭化物または固溶体を形成する高融点材料からなる第一の導電性被覆層と、第一の導電性被覆層の材料の繊維状炭素物質における拡散を抑制するための第二の被覆層を設けることにある。第二の被覆層は、前記導電性基材からの繊維状炭素物質の突出部分を取囲むように設け、炭素を主成分として構成される。図2に、本発明の電子銃の繊維状炭素物質周辺の模式図(電界放出型電子源の先端部分の側面図および平面図)を示す。繊維状炭素物質の先端部分は、電子放出部位となるため被覆はされていないほうが好ましい。
前記繊維状炭素物質とは、カーボンナノチューブ(CNT)あるいはそれに類似した炭素繊維である。導電性基材の素材は、導電性,熱伝導性に優れ、高融点の金属あるいはグラファイトが好ましく、金属としては、タングステン,モリブデン,チタン,白金、あるいはそれらを含有する合金が挙げられる。第一の被覆層の材質としては、炭素と反応し炭化物または固溶体を形成する高融点材料が好ましい。繊維状炭素物質と濡れ性が良いためである。第一の導電性被覆層の材質としては、タングステン,チタン,ニオブ,モリブデン,ハフニウム,ジルコニウム,白金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。第二の被覆層としては、第一の導電性被覆材料と炭化物または固溶体を形成する炭素材料、もしくは炭素材料とその他の物質の混合物がよい。炭素材料とは、非晶質炭素物質,グラファイト等、炭素を主成分とする物質である。
次に、前記導電性被覆層を形成する方法の例を説明する。被覆層として、ガスを電子ビームで分解した分解生成物を使用できる。電子顕微鏡の試料室内に被覆層の原料ガスを導入し、被覆箇所に電子線を照射することにより、短時間で十分な厚さの被覆層を形成することができる。ガスを分解させるのに用いる粒子線としては前記繊維状炭素物質に損傷を与えない5〜100keVの電子線が好ましい。従って、原料ガスとしては、5〜100keVの電子線で分解するもので、かつ100℃以下で気化するものが好ましい。第一の被覆層を形成するための原料ガスとしては、W(CO)6,Ti(I−OC37)4,Ti(OiC37)2,Ti〔N(CH3)24,Ti〔N(C25)24,Nb(OiC37)2,Mo(CO)6,Hf(OCH3)4,Zr(C11192)4,Zr(OtC49),Zr(OiC37)(C11192)3,Pt(C5425)(CH3)などの有機金属ガスやフッ化タングステンガス等が好適である。
原料ガスとしては、FIB等で通常使用されているガリウムイオンビーム等の高エネルギー重イオンビームでしか分解しないガスは使用困難である。これは、ガリウムイオンがカーボンナノチューブに照射されてしまうと、繊維状炭素物質自体が一瞬で損傷を受けてしまい、破断や照射欠陥が生じてしまうからである。
第二の被覆層は、第一の被覆層と同様にガスの分解によって形成することができる。第二の被覆層を形成するための原料ガスとしては、ピレン(C1610),フェナトレン(C1410)等の炭化水素系物質が好適である。
また、上記の問題を解決する第二の手法は、炭化物を接着材として被覆層を形成することにある。炭化物としては、たとえば、炭化タングステン(WC),炭化チタン(TiC),炭化ニオブ(NbC),炭化モリブデン(MoC),炭化ハフニウム(HfC),炭化ジルコニウム(ZrC)がある。炭化物を被覆層とすることで、繊維状炭素物質上の拡散や、更なる炭化物の形成という問題が低減される。図3に、本発明の電子銃の繊維状炭素物質周辺の模式図(電界放出型電子源の先端部分の側面図)を示す。また、上記の問題を解決しうる他の手法として、炭化物の替わりに、もしくは併用してグラファイトを用いて被覆層を形成することにある。
上記本発明の電界放出型電子銃を用いた電子線応用装置としては、走査型電子顕微鏡(SEM),透過型電子顕微鏡や、これらを用いた測長SEMなどの電子顕微鏡応用装置,電子線描画装置などが挙げられる。電子顕微鏡は、電子銃と、電子銃より得られる電子線を試料上で走査するコイル等の電子線走査手段と、観察対象となる試料を保持する試料ステージと、前記試料に照射された電子線を検出する電子線検出器とを有する。また、測長SEMは、上記のような電子顕微鏡の観察機能に加えてもしくは換えて、電子線検出器より得られる情報を元に試料の寸法を計測する試料測長機能を設けたものである。電子線描画装置も、基本的に電子顕微鏡と同様の構成を有しており、レンズによって集束された電子線を動かし、微細なデバイスのパターンを形成するものである。上記本発明の電子銃を用いることで、耐久性の高いこれらの電子線応用装置を提供でき、電子源交換の頻度を少なくすることが可能である。
以下、実施例を用いて本発明の詳細を説明する。
本実施例は、上述の第一の手法により、二層の被覆材を有する電子源を用いた電界放出型電子銃を形成した例である。図4は、本実施例の電界放出型電子銃の概略構成図である。電子銃は単一の繊維状炭素物質が接合された導電性基材1と、それを支持する導電性フィラメント2と、それらを支持する絶縁性の電極支持台3および電極4から構成される電界放出型電子源5と、電子を電界放出させる引出電極6と、電子を加速させる加速電極7と、該引出電極に電圧を印加する引出電極電源8と、該加速電極に電圧を印加する加速電極電源9と、該電子源を加熱する加熱電源10から構成される。なお、引出電極や加速電極の形状,構成は、繊維状炭素繊維の特性を十分引出せる形態であれば、特にこれに限定されるものではない。
本実施例に係る電界放出型電子源5の先端部分について、図2を用いて説明する。図2の電子源は、先端部に平坦面11bが形成された針状の導電性基材11aと繊維状炭素物質12aを有し、導電性基材と繊維状炭素物質は少なくとも一部が第一の導電性被覆層13で固定されている。
さらに、第一の導電性被覆層を覆うように第二の被覆層14が形成されている。第二の被覆層は、第一の導電性被覆層の他、第一の導電性被覆層で覆われていない導電性基材,繊維状炭素物質を覆うように設けられている。このように、導電性基材11aからの繊維状炭素物質の突出部分を、繊維状炭素物質を太くするように取囲んで設けることにより、第一の被覆層材料の繊維状炭素物質への拡散および繊維状炭素物質との反応を抑制できる。ただし、電子放出部位である繊維状炭素物質の先端部分は、被覆層を設けると引出し電圧の増加やエミッション電流の不安定化を招く恐れがあるため、繊維状炭素物質が露出した状態とされている。第二の被覆層は、第一の導電性被覆材料の繊維状炭素物質の先端方向への拡散を抑制させるため、導電性基材からの突出部分を取囲むように被覆する。第二の被覆層も繊維状炭素物質の先端部に付着しないよう形成する。
本実施例は、導電性基材はタングステンをFIBで加工したものである。先端には平面部分を有する切り欠きを設けている。その平面部分にカーボンナノチューブを載せ、タングステンよりなる第一の被覆層を形成した。第一の被覆層の先端側は、基材の先端部分までかからないようにすることで、応力を集中しにくくした。第一の被覆層の基材側は、カーボンナノチューブの端部を覆う程度まで被覆した。第二の被覆層は、カーボンナノチューブを一周するように基材の先端部分を覆って形成した。
図5は導電性基材および第一の導電性被覆層の材質をタングステンにし、第二の被覆層として炭素材料を用いた電子源の導電性基材先端部のSEM写真である。(a)は加熱前、(b)は900℃,30時間で加熱した後である。加熱後も繊維状炭素物質に損傷は認められなかった。また、加熱後の電子源から電界放出させても繊維状炭素物質,接合部とも損傷することはなかった。加熱後の被覆層は、見た目にはほとんど変化していなかった。ただし一部が炭化物に変化していた。タングステンと炭素材料が相互に拡散し、炭化物が形成されたものと考えられる。
本実施例は、上述の第二の手法により、炭化物の被覆材を有する電子源を用い、電界放出型電子銃を形成した例である。本実施例の電界放出型電子銃における電子源の主要部分について、図3を用いて説明する。電子源は先端部に平坦面が形成された針状の導電性基材と、繊維状炭素物質と、炭化物を含有する被覆層15で構成されている。被覆層は、繊維状炭素物質と導電性基材との接触部分に設けられ、また繊維状炭素物質の導電性基材からの突出部分を取囲むように設けられている。繊維状炭素物質の先端部分は被覆層で覆われず、露出している。
このように、炭化物を含有する物質を被覆することにより、被覆層の繊維状炭素物質への拡散を抑制することができる。被覆層を形成する方法としては、実施例1に記載したように、炭化物を形成する金属等よりなる第一の導電性被覆層の上に、炭素材料を被覆した後、両者が炭化物を形成する温度で加熱,保持すれば良い。第一の導電性被覆層に用いられる金属をすべて炭化物とするため、炭素材料を金属の当量よりも多く用いることが好ましい。
また、被覆層の少なくとも一部が結晶質であることが好ましい。結晶質とすることで、被覆層の昇華が防止される。被覆層が完全な非晶質であると、真空度が10-8Pa台の超高真空中で加熱フラッシングする際、被覆層が加熱中に揮発してしまう場合がある。被覆層が減少したり、なくなったりすると、繊維状炭素物質と導電性基材との接合強度が低下し、繊維状炭素物質が脱落したり、揮発した被覆層で電子銃室内が汚染され電子銃室内の真空度が低下したりする問題が生じる。
なお、実施例1のような二層の被覆層を形成した場合には、界面部分で拡散が生じ、炭化物が生成する。所定温度で加熱保持することにより、炭化物の量を増やすことが可能である。例えば、タングステンを被覆材とすると、カーボンナノチューブと800℃程度で炭化物(WC)を形成する。通常、炭化タングステンと炭素が共存する温度は1000℃以上であるが、電子線により生成するタングステンの被覆層やカーボンナノチューブがナノメートルレベルの形状を有する物質となっているため、低温で炭化物が生成すると思われる。
また、炭化物は、1000℃程度で加熱することにより結晶化する。さらに、2000℃以上とすると、第二の被覆層を構成する炭素物質も結晶化が進行する。結晶化した被覆層は昇華しにくく、また被覆層の基板上、繊維状炭素物質上の導電性が向上するため好ましい。
本実施例は、被覆材をグラファイトで構成した例である。グラファイトを用いる場合には、被覆層は一層にできる。グラファイトは、導電性かつ結晶質の物質である。非結晶カーボンを繊維状炭素物質と導電性基材との接触部位の少なくとも一部に形成し、窒素ガス,アルゴンガスなどの不活性ガス中で、約2000℃以上で加熱,保持するとグラファイトで構成される被覆層を形成することができる。この場合、被覆材を繊維状炭素物質の導電性基材からの突出部分を取囲むように設ける必要はない。なお、真空中では、非晶質カーボンが昇華してしまうためグラファイトを設けることが困難である。被覆層をグラファイトにすることにより、繊維状炭素物質への影響は少ない。また、導電性にも優れた被覆層とすることができる。
さらに、導電性基材もグラファイトを用いることが好ましい。被覆層および導電性基材をグラファイトにすることにより、被覆層の繊維状炭素物質および導電性基材への拡散を完全に防止することができる。
(電子ビーム応用装置への適用例1:SEM)
本実施例は、実施例1の電界放出型電子銃を走査型電子顕微鏡に用いた例である。図6に本発明の電界放出型電子銃を用いた走査型電子顕微鏡(SEM)の全体構成図を示す。走査型電子顕微鏡は、電子銃16から放出される電子線に沿って、アライメントコイル17,コンデンサレンズ18,非点補正コイル19,偏向・走査コイル20,対物レンズ21,対物レンズ絞り22が配置されている。試料23は、試料ステージ24に設置され、電子線が照射されるようになっている。試料室内の側壁部には二次電子検出器25が設けられている。また、試料室は排気系26によって高真空に保持されるようになっている。電子銃から放出された電子線は陽極で加速され、電子レンズによって集束されて試料上の微小領域に照射される。この照射領域を二次元走査し、試料から放出される二次電子,反射電子等を二次電子検出器25により検出し、その検出信号量の違いを基に拡大像を形成する。
実施例1の電子銃では、加熱フラッシングが電子源に損傷を与えることがなく、走査型電子顕微鏡に適用することにより、十分な加熱フラッシングにより高安定なエミッション電流が得られる走査型電子顕微鏡を実現することが可能となる。
また、電界放出型電子銃を搭載する電子顕微鏡の構成は図6で示したものに限定されることはなく、電界放出型電子銃の特性が十分引出せる構成であれば従来公知の構成を採用できる。さらに、基本構成が電子顕微鏡と同様の電子光学系を有する電子線応用装置、例えば半導体プロセスにおける微細加工パターンの観察や寸法測長を行う測長SEMにも適用でき、同様の効果が得られる。
(電子ビーム応用装置への適用例2:電子線描画装置)
本実施例は、実施例2の電界放出型電子銃を用いた電子線描画装置の例である。
図7は本実施例の電子線描画装置の全体構成図である。図7の電子光学系の基本構成は前記した図6の走査型電子顕微鏡とほぼ同様である。電子銃16から電界放射により得られた電子ビームをコンデンサレンズ18で絞り、対物レンズ21で試料上に絞込み、ナノメータオーダーのビームスポットを得る。この時、試料への電子ビーム照射のON/OFFを制御するブランキング電極27の中心は、コンデンサレンズで作られるクロスオーバ点に一致した方が良い。電子線描画は、電子ビームをブランキング電極でON/OFFしながら、偏向・走査コイル20により試料上で電子ビームを偏向,走査させながら照射することで実施される。
電子線描画装置は、電子線に感応するレジストを塗布した試料基板に電子ビームを照射し、各種回路パターンを形成するものであるが、各種回路パターンの高精細化に伴い、電子線プローブ径の極細化が求められている。
従来は、タングステンフィラメントやLaB6からなる熱電子放出型電子源が使用されてきたが、これらの電子銃はビーム電流を多くとれる利点があるものの、絶対的なエミッタ先端半径の大きさに起因する非点収差が大きく、20nm以下の描画を行うことができない。そのため、最近、単結晶タングステン電子源から構成される電界放出型電子銃を使用するようになったが、ビーム電流の少なさとビーム電流の不安定さのため、確実な描画を行うことができなかった。本発明の電子銃を適用することにより、前記課題を解決できる。
タングステンを被覆材料として用いて、カーボンナノチューブを導電性基材先端部に固着させた電子源のSEM写真((a)加熱前、(b)加熱後)である。 本発明に係わる電界放出型電子源の先端部分の第一実施形態の概略構成図((a)側面図、(b)平面図)である。 本発明の電界放出型電子銃における電子源の主要部分の第二実施形態の側面図である。 本発明の電界放出型電子銃の概略構成図。 タングステンを被覆材料として用いて、カーボンナノチューブを導電性基材先端部に固着させ、第二の被覆層として炭素材料を配置した電子源のSEM写真((a)加熱前、(b)加熱後)である。 本実施例に係る電子銃を用いた走査型電子顕微鏡(SEM)の全体構成図。 本実施例に係る電子源を用いた本実施例に係る電子銃を用いた電子線描画装置の全体構成図。
符号の説明
1 繊維状炭素物質が接合された導電性基材
2 導電性フィラメント
3 電極支持台
4 電極
5 電界放出型電子源
6 引出電極
7 加速電極
8 引出電極電源
9 加速電極電源
10 加熱電源
11a 針状の導電性基材
11b 針状の導電性基材の先端部に形成された平坦面
12a 繊維状炭素物質
12b 繊維状炭素物質の先端部分
13 第一の導電性被覆層
14 第二の被覆層
15 炭化物を含有する物質からなる被覆層
16 電子銃
17 アライメントコイル
18 コンデンサレンズ
19 非点補正コイル
20 偏向・走査コイル
21 対物レンズ
22 対物レンズ絞り
23 試料
24 試料ステージ
25 二次電子検出器
26 排気系
27 ブランキング電極

Claims (7)

  1. 繊維状炭素物質と、前記繊維状炭素物質を支持する導電性基材と、前記繊維状炭素物質を加熱する加熱装置と、前記繊維状炭素物質より電子を電界放出させる引出装置と、前記繊維状炭素物質より放出された電子を加速させる加速装置とを有する電界放出型電子銃であって、
    前記繊維状炭素物質は前記導電性基材に被覆層により固定されており、前記被覆層は、少なくとも前記繊維状炭素物質と前記導電性基材との接触部分に設けられ、導電性を有する金属よりなる第一の被覆層と、前記第一の被覆層を覆って設けられ、炭素を含有する物質よりなる第二の被覆層とを有し、
    前記第二の被覆層は、前記繊維状炭素物質の前記導電性基材からの突出部分の周囲に設けられており、前記繊維状炭素物質の電子放出部位は被覆層を形成されず露出していることを特徴とする電界放出型電子銃。
  2. 請求項1に記載された電界放出型電子銃であって、
    前記第一の被覆層は、前記第二の被覆層で全て覆われていることを特徴とする電界放出型電子銃。
  3. 請求項1または2に記載された電界放出型電子銃であって、
    前記第一の被覆層は、炭素と炭化物または固溶体を形成する物質よりなり、前記第二の被覆層は、炭素よりなることを特徴とする電界放出型電子銃。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載された電界放出型電子銃であって、
    前記第一の被覆層は、タングステン,チタン,ニオブ,モリブデン,ハフニウム,ジルコニウム,白金の少なくともいずれかを含むことを特徴とする電界放出型電子銃。
  5. 請求項1ないしのいずれかに記載された電界放出型電子銃と、前記電界放出型電子銃より放出された電子線が照射される位置に形成された試料ステージと、前記電界放出型電子銃より放出され、試料に照射されて得られる電子線を検出する電子線検出器とを有することを特徴とする電界放出型電子顕微鏡。
  6. 請求項に記載された電界放出型電子顕微鏡であって、
    前記電子線検出器は試料より発生する二次電子を検出する二次電子線検出器であり、前記二次電子線検出器より得られる情報により試料の寸法を計測することを特徴とする電界放出型電子顕微鏡。
  7. 請求項1ないしのいずれかに記載された電界放出型電子銃と、前記電界放出型電子銃より放出された電子線が照射される位置に形成された試料ステージと、電子線をON/OFFしながら、試料上で電子線を偏向,走査する機構と、を有することを特徴とする電子線描画装置。
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