JP4890847B2 - ミシンの中押さえ装置 - Google Patents
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Description
この中押さえ装置は通常、針が布から上昇する際に中押さえにより布を下方に押さえ付け、針が布から完全に上昇した後は中押さえが針と共に上昇するようになっている。そして、この中押さえは、縫製時において針と同期して往復上下動を行う中押さえ使用位置と、縫製後に上記中押さえ使用位置P4(図10参照)よりも上方の退避高さ位置P5(図11参照)とに移動することが可能となっている。また、中押さえには、上記中押さえ使用位置において中押さえを常時下方に付勢する押圧ばねが設けられている。このような中押さえ装置として、中押さえを上下動させる揺動体の揺動支点を変位させて、針板からの中押さえ高さを調節可能としたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに近年では、上記揺動体の一端を下方に付勢する引っ張りばねを設け、該揺動体の他端部すなわち上記揺動支点を上方に付勢してミシンフレームの内部に当接させたミシンの中押さえ装置が開発されている。この中押さえ装置によれば、引っ張りばねにより揺動支点の位置決めを行うと供に、中押さえに対して所定量以上の上昇移動力が作用した場合には、上記位置決めを解除して装置に働く負荷を逃がし(吸収し)、上軸等の変形や中押さえの破損を防止するようになっている。
<中押さえ装置の全体構成>
図1〜図3に示すように、本実施形態たるミシンの中押さえ装置1は、縫製時に布地を針板に押さえ付ける中押さえ29と、主軸の回転により上下する縫い針に合せてこの中押さえを上下動させる中押さえ上下動機構M1と、中押さえを縫製終了後に退避高さ位置に上昇させる中押さえ退避機構M2と、を備えている。
中押さえ上下動機構M1は、先端に縫い針が設けられた針棒を上下方向に駆動させる上軸2に設けられている(図2参照)。上軸2には偏心カム3が固定され、この偏心カム3には接続リンク4が連結されている。接続リンク4には揺動軸抱き5が連結され、揺動軸抱き5には揺動軸6の一端部が連結されている。
揺動軸6の他端部には中押さえの上下方向D1の移動量を調節する中押さえ調節腕7の基端部が固定されている(図3参照)。中押さえ調節腕7には溝カム7aが形成されている。この溝カム7aは弧状の長孔になっており、この溝カム7aの所望の位置で第1リンク8の一端部とが調節ナット9と段ねじ10により軸支されている。この軸支位置は、溝カム7aに沿って調節可能となっている。
このように構成することで、通常の縫製時に中押さえ29が上下動を行う際には、引っ張りばね16の弾性力により第2リンク11の一端部が規制部材19に押し当てられた状態を維持する。そして、中押さえ29が、予定された下死点位置まで下降できないような障害、例えば、布の段差等に押し当てられた場合等には、引っ張りばね16の弾性力に抗して位置決めリンク13が回動を行い、第2リンク11の一端部の支点が引っ張りばね16に抗して下降することで中押さえ29を上方に逃がすことが可能となっている。これにより、中押さえ29の破損が防止される。
第4リンク22の他端部には、リンク中継板25が段ねじ26により連結されている。リンク中継板25には中押さえ棒抱き27が固定されており、中押さえ棒抱き27には上下方向に延びる中押さえ棒28が保持されている。中押さえ棒28の下端部には、縫製時に布地を針板に押さえ付ける中押さえ29が取り付けられている。中押さえ棒28の上端部には押圧ばね30が設けられており、ボルト31及びナット32により中押さえ棒抱き27に取り付けられている。
押圧ばね30は、中押さえ29が縫製時に縫い針と同期して上下動を行う際に、該中押さえ29を下方に付勢する。
角駒33は、段ねじ23と、第3リンク20と第4リンク22の連結部P3との隙間を埋めるスペーサの役割を果たしており、各リンクのがたつきを防ぎ、各部材を円滑に駆動させる機能を備えている。
モータ42は、パルスモータが採用されており、正逆方向に回動自在であると供に、その回動量及び駆動のタイミングが図示しない制御部により制御可能となっている。
位置決めリンク13の一端部は、ミシン面部側に向かって略コ字状に折り返されており、折り返された先端部にはばね掛13aが形成されている。本実施形態における位置決めリンク13は、その一端のばね掛け13aが、当該位置決めリンク13の回動中心である段ねじ14付近まで折り返されており、回動中心からばね掛け13aまでの距離が短くなるように形成されている。
ばね掛け13aには引っ張りばね16の一端(上端)が連結されており、引っ張りばね16の他端(下端)は後述する中押さえ上げ部材46の先端に形成されたばね掛け部46aに連結されている。
引っ張りばね16は、中押さえ上げ部材46の先端を下方位置に維持することで、ばね掛13aが取り付けられた位置決めリンク13の一端部を下方に引き下げるように付勢している。すなわち、引っ張りばね16は、中押さえ揺動部材としての第2リンク11における第3リンク20との接続部位P1が上方に移動した際に、接続部位P1を下方に向けて付勢する第1の付勢手段として機能する。
かさ歯車41には、かさ歯車43が歯合されており、モータ42の駆動を可変軸39の軸方向と直交する方向D4に出力することができるようになっている。かさ歯車43の後端にはベアリング44、中押さえ昇降カム45等が同軸上に連結されている。
かかる中押さえ昇降カム45は、その溝がカム部となっており、当該中押さえ昇降カム45の回動範囲の半分は、回動中心から溝までの距離がほぼ同一の円弧状に形成され(以下、維持部45aという。)、残る半分は、回動中心から溝までの距離が、維持部45aにおける回動中心から溝までの距離よりも大きく、かつ、滑らかに変化する形状(以下、変化部45bという。)となっている。
また、上記溝部すなわち維持部45a及び変化部45bは、その溝巾がコロ47の外径とほぼ同程度でわずかに広く形成されている。
本実施形態における中押さえ昇降カム45は溝カムであり、この溝カムの内側にはコロ47を介して押さえ上げ部材46の一端部が係合しているので、中押さえ昇降カム45が回転を行わない限りは中押さえ上げ部材46は揺動を行うことがなく、一定の状態を維持することが可能となっている。
本実施形態では、上記中押さえ昇降カム45、中押さえ上げ部材46及びコロ47により、中押さえ退避機構M2が構成されている。
さらに、本実施形態における中押さえ上げ部材46は、その他端部が折曲されており、折曲部の先端にはばね掛け部46a(緩め手段)が設けられている。このばね掛49には引っ張りばね16の一端部(下端部)が架けられている。(図1及び図3参照)。
さらに、本実施形態たる中押さえ装置1は、退避高さ位置P5に上昇した際の引っ張りばね16の長さが、中押さえ使用位置P4に位置するときの引っ張りばね16の長さよりも短くなるように緩め手段を備えている。
すなわち、中押さえ29が中押さえ使用位置P4に位置する際には、第2リンク11の揺動支点を固定するために位置決めリンク13の一端側には所定の付勢力が作用する状態となっているため、引っ張りばね16は自然長(L=L0)よりも伸びた状態(L=L1)となるように構成されている。
次に、上記構成を有する中押さえ装置1の動作について説明する。
上軸モータ(図示略)を駆動させて偏心カム3を回動させると、接続リンク4の先端は上軸2の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動し、接続リンク4に連結された揺動軸抱き5も同方向に揺動する。揺動軸抱き5が揺動することにより、揺動軸6も揺動するため、第1リンク8の一端部が揺動支点となって第1リンク8の他端部が揺動軸6の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動する。第1リンク8の他端部の揺動に伴い、第2リンク11の他端部は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に揺動し、第2リンク11の他端部に連結された第3リンク20及び第4リンク22は、その直列方向(上下方向)D2に揺動する。第3リンク20及び第4リンク22の揺動に伴い、第4リンク22に連結された中押さえ棒28は上下方向D1に沿って下方に移動するため、中押さえ29も上下方向に移動する。
次に、上記構成を有する中押さえ装置1による中押さえ使用位置P4の調節動作について説明する。
モータ42の駆動は、かさ歯車41、ベアリング40を介して可動軸39に伝達され、可動軸39は回動を始める。可動軸39の回動により、偏心カム38も回動し、移動リンク36は、可動軸39の軸線に略直交する方向(第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3)に揺動する。移動リンク36の揺動により、案内部材34は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に対して横切る方向D3に揺動する。
次に、縫製終了後に中押さえ29を退避高さ位置P5に移動させるときの動作について説明する。
本実施形態において、上述した中押さえ使用位置P4の調節は、各リンク比を調節してモータ42を0°〜180°の範囲内で回動させることにより行い、中押さえ29の退避は、モータ42を180°〜360°の範囲内で回動させることにより行う。
すなわち、中押さえ使用位置P4の調節の際には、モータ42を0°〜180°の範囲内で回動させると、コロ47が中押さえ昇降カム45の維持部45aに沿って案内され(図4参照)、中押さえ29を退避させる際には、モータ42を180°〜360°の範囲内で回動させると、コロ47が中押さえ昇降カム45の変化部45bに沿って案内される(図5及び図6参照)。
一方で、中押さえ29が退避高さ位置P5に上昇した際には、引っ張りばね16の下端部が中押さえ上げ部材46のばね掛け部46aと供に上昇して、退避高さ位置P5における中押さえ上げ部材46の先端部の高さに保持され位置決めされる。
このとき、引っ張りばね16は、その上端もまた上方に移動され、当該引っ張りばね16の上端に連結された位置決めリンク13の他端部の固定(位置決め)が解除される。
従って、引っ張りばね16は、その長さが自然長(L=L0)となり、中押さえ使用位置P4に位置するときよりも短くなる(図8参照)。
本実施形態たるミシンの中押さえ装置1によれば、引っ張りばね16の下端を中押さえと共に上昇させる構成としたことで、中押さえ29を退避高さ位置P5に上昇する際のモータ42に必要となる出力を従来よりも遥かに小さくすることができる。これにより、モータ42の小型化及び軽量化等を図り、これに伴い、中押さえ退避機構M2の小型化、低コスト化及び当該上昇時における動作速度の向上を図ることができる。
また、引っ張りばね16の伸び、すなわち、縫製動作全体における引っ張りばね16の物理的なストロークが小さくて済むため、引っ張りばね16の可動領域が占めるスペースの小型化を図ることができ、ミシンの中押さえ装置1の小スペース化を図ることができる。また、引っ張りばね16の伸縮量(ストローク)が小さくなる結果として、当該引っ張りばね16の信頼性を容易に向上することが可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、例えば、本実施形態では、引っ張りばね16の下端を中押さえ上げ部材46の先端に連結することにより、中押さえ29を中押さえ退避高さP5に上昇させる際には中押さえ上げ部材46及び中押さえ昇降カム45を介してモータ42により引っ張りばね16の下端を上昇させる構成としているが、例えば、引っ張りばね16の下端を昇降するための独立したモータ等を設けて昇降させてもよい。
また、本実施形態では、中押さえ上げ部材46の先端を折曲形状としてその先端にばね掛け部46aを設け、当該ばね掛け部46aに直接引っ張りばね16の下端を連結する構成としているが、例えば、図9に示すように、引っ張りばね16の下端と中押さえ上げ部材46の先端部(他端部)とを、種々のリンク部材を介して連結する構成としてもよい。
また、本実施形態では、中押さえ昇降カム45として溝カムを用いる構成としているが、この中押さえ昇降カム45として外周カムを採用し、コロ47を外周カム47の周面に押し付ける強力な補助ばね等を設けても良い。この場合、補助カムの弾性力を引っ張りばね16の弾性力よりも強力なものとすることが望ましい。
また、略コ字状に折り返された位置決めリンク13の一端部は、ばね掛け13aが当該位置決めリンク13の回動中心に近接する位置まで折り返した形状となっているが、引っ張りばね16の強度及びモータ42の出力等に応じて、回動中心からの距離を変更してもよい。
2 上軸
3 偏心カム
4 接続リンク
5 揺動軸抱き
6 揺動軸
7 中押さえ調節腕
7a 溝カム
8 第1リンク
11 第2リンク(中押さえ揺動部材)
13 位置決めリンク
13a ばね掛け
15 ミシンフレーム(ミシン筐体)
15a ばね掛け
16 引っ張りばね(付勢手段)
19 規制部材
20 第3リンク
22 第4リンク
24 中押さえリンク部材
25 リンク中継板
27 中押さえ棒抱き
28 中押さえ棒
29 中押さえ
30 押圧ばね
33 角駒
34 案内部材
34a 長孔
34t、55t 案内部材の上端部
36 移動リンク
38 偏心カム
39 可変軸
41,43 かさ歯車
42 モータ(駆動手段)
45 中押さえ昇降カム
45a 維持部
45b 変化部
46 中押さえ上げ部材
46a ばね掛け部(緩め手段)
47 コロ
48 ピン
D1 中押さえの上下方向
D2 第3リンク20と第4リンク22の直列方向
D3 第3リンク20と第4リンク22の直列方向に対して横切る方向
D4 可変軸39の軸方向と直交する方向
L 接続部間の距離
M1 中押さえ上下動機構
M2 中押さえ退避機構(中押さえ昇降カム45、中押さえ上げ部材46、コロ47)
P1,P2 接続部(接続部位)
P3 連結部
P4 中押さえ使用位置
P5 退避高さ位置
Claims (3)
- 縫製時に布地を針板に押さえ付ける中押さえと、
主軸の回転により上下する針に合せてこの中押さえを上下動させる中押さえ上下動機構と、
前記中押さえを縫製終了後に退避高さ位置に上昇させる中押さえ退避機構と、
を備えるミシンの中押さえ装置において、
前記中押さえ上下動機構は、
前記主軸による揺動動作により前記中押さえに上下動動作を伝達する中押さえ揺動部材と、
前記中押さえ揺動部材の揺動支点を弾性力により定位置に保持する付勢手段とを有し、
前記中押さえ退避機構は、
前記中押さえを前記退避高さ位置に上昇させる際に、前記中押さえと共に前記付勢手段の連結端部の一端を弾性力が減少する方向に移動させる緩め手段を備えることを特徴とするミシンの中押さえ装置。 - 前記付勢手段は、その上端部が前記中押さえ揺動部材側に連結された引っ張りばねであり、
前記中押さえ退避機構は、軸を支点に回動自在に支持された中押さえ上げ部材と該中押さえ上げ部材の一端部を上下に移動可能なカム部材とを有し、
前記緩め手段は、前記中押さえ上げ部材の他端部が前記引っ張りばねの下端部に連結されてなることを特徴とする請求項1に記載のミシンの中押さえ装置。 - 前記カム部材は、その軸方向端面に溝を有する溝カムであり、
前記中押さえ上げ部材は、その一端部が前記溝に係合されることで前記溝カムの回動に応じてその他端部の上下位置が位置決め可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のミシンの中押さえ装置。
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