JP3730301B2 - 針揺動装置を備えたミシンの糸通し装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、針揺動装置を備えたミシンに適用される糸通し装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ミシン針の針孔に糸を通す作業は難しいことから、この糸通し作業を自動的に行う装置の提案が種々なされており、例えば特開平1−113092号公報、特開平3−128091号公報、特開平3−133485号公報等に記載の装置が知られている。これら公報においては、該糸通し装置を、針揺動装置を備えたミシンに対して適用する具体的な記載はなされていないが、例えば特開平3−128091号公報記載の糸通し装置を、針揺動装置を備えたミシンに対して適用することが考えられる。
【0003】
この特開平3−128091号公報記載の糸通し装置の概要を簡略化して示したのが図11である。この糸通し装置においては、駆動源としてのアクチュエータ100を駆動することによって動力伝達機構としてのピニオン101、ラック102を介して移動台104を降下させ、この移動台104の突起部104aを作動杆105に当接させて降下させ、この作動杆105の降下によって糸通し軸106を降下させた後に回動させ、糸通しフック107をミシン針の針孔に貫入させて該糸通しフック107に糸を引っ掛け、そうしたら今度はアクチュエータ100を上記とは逆方向に駆動することによって移動台104を上昇させ、この移動台104の上昇によって糸通し軸106を上記とは逆方向に回動させて当該糸通しフック107を針孔から引き出して該糸通しフック107に引っ掛けられた糸を一緒に引き出し、その後さらに移動台104を元の位置まで上昇させ、移動台104の突起部104aを作動杆105から離間させることによってバネ103の付勢力に従って作動杆105を元の位置まで上昇させるようになっている。すなわち、糸通し作業を自動的に行い得るようになっている。
【0004】
そして、上記提案装置にあっては、針棒を上下方向摺動可能に支持する針棒支枠に対して上記糸通し軸106を回動可能且つ上下方向に摺動可能に支持させていることから、この針棒支枠を公知のミシンの針揺動装置によって揺動させるようにすれば、糸通し軸106、糸通しフック107及び作動杆105も針棒と共に揺動することになる。
【0005】
ここで、上記移動台104は作動杆105に対して別体に設けられて該移動台104と作動杆105とは離間状態にあることから、移動台104及びこの移動台104を支承する案内棒108を、揺動する作動杆105に干渉しない位置に離間配置しておけば、糸通し時(作動杆105等の揺動停止時)には上述した糸通し動作を達成できるというのはいうまでもなく、縫製時には作動杆105を移動台104及び案内棒108に干渉させずに縫製を行うことができる。すなわち、上記特開平3−128091号公報記載の糸通し装置を、針揺動装置を備えたミシンに対しても適用できることになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記装置においては、揺動側(糸通し軸106、糸通しフック107、作動杆105)と固定側(アクチュエータ100、ピニオン101、ラック102、移動台104、案内棒108)とを離間する構成が必要とされ、例えばラック102を直接作動杆105に固定する構成を採用できないことから、移動台104、案内棒108等が必要となり、部品点数が多くなるといった問題があった。
【0007】
また、糸通し後の作動杆105の引き上げを、アクチュエータ100の動力ではなくバネ103の付勢力(機構的な力よりかなり弱い)により行うようにしていることから、作動杆105と糸通し軸106をかなり高精度に仕上げて嵌合しないと上記引き上げ動作が良好に行われず、また摺動部に多少の塵芥の付着があっても上記引き上げ動作が良好に行わないといった問題があった。
【0008】
そこで、これら問題点が生じないように、上記針棒支枠にアクチュエータ100を搭載し、ラック102を直接作動杆105に固定する構成も考えられるが、揺動部分の重量が重くなって針揺動装置の針振りモータの大型化が必要となり、製品コストが高くなると共に騒音が大きくなるといった問題が生じることから採用できない。
【0009】
そこで本発明は、糸通し装置の構成部品が低減されて低コスト化が図られると共に、作動杆の上昇動作が良好に行われて信頼性が向上され、しかも針揺動装置の駆動源がそのままにされて高コスト化及び騒音の増大が避けられる針揺動装置を備えたミシンの糸通し装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の針揺動装置を備えたミシンの糸通し装置は、針棒を揺動させる針揺動装置を備えたミシンに対して付設される糸通し装置であって、上下動可能に支承され下端にミシン針を支持した前記針棒に対して平行に配置されると共に、回動可能且つ上下動可能に支承された糸通し軸と、この糸通し軸に設けられ軸線方向における所定位置で該糸通し軸の回動に連動して動作することによって前記ミシン針の針孔に対して進入・後退可能な糸通しフックと、前記糸通し軸に係合すると共に上下動可能に支承された作動杆と、をして、前記作動杆を降下することによって前記糸通し軸を降下させた後にさらに回動させて前記糸通しフックを前記針孔に対して進入させる一方で、前記作動杆を上昇することによって前記糸通し軸を前記とは逆方向に回動させて前記糸通しフックを前記針孔に対して後退させ、この糸通しフックの前記針孔に対する進入・後退動作によって、針孔を挟んだ糸通しフックとは反対側に配置された糸供給源からの糸を捕捉させて糸通しを可能としたミシンの糸通し装置において、前記作動杆を上昇・降下させるための駆動源と、この駆動源の動力を伝達する駆動源側の動力伝達機構と、この駆動源側の動力伝達機構からの動力を伝達可能に前記作動杆に設けられた作動杆側の動力伝達機構と、を備え、前記糸通し軸、糸通しフック及び作動杆を前記針棒と共に揺動可能とすると共に、前記針揺動装置による針棒の縫製揺動範囲外の揺動位置である糸通し実行位置に該針棒が位置した時に、前記両動力伝達機構が連結されることを特徴としている。
【0011】
このように構成された本発明の針揺動装置を備えたミシンの糸通し装置によれば、糸通し軸、糸通しフック及び作動杆が針棒と共に揺動可能にされ、縫製時には針棒が所定の揺動範囲内に揺動され、作動杆に設けられた作動杆側の動力伝達機構が駆動源側の動力伝達機構に干渉することなく縫製がなされ、糸通し時には針棒が上記所定の揺動範囲外の揺動位置である糸通し実行位置に揺動され、この糸通し実行位置に該針棒が位置されると、駆動源側の動力伝達機構と作動杆側の動力伝達機構とが連結され、駆動源の動力が両動力伝達機構を介して作動杆に伝達されて該作動杆が降下、上昇されて糸通しがなされる。このように、作動杆に作動杆側の動力伝達機構が設けられることから、従来技術で説明した糸通し装置を構成する移動台、案内棒等の部品が不要にされると共に、糸通し後の作動杆の引き上げが、付勢力より強力な駆動源の動力によってなされることから、当該作動杆の上昇動作が良好になされ、しかも針棒支枠に上記駆動源が搭載されないことから、針揺動装置の駆動源の大型化が必要とされない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態におけるミシンの糸通し装置を表した正面図であり、糸通し及び針棒糸案内に対する糸掛けを行う前の状態を表している。そして、本実施形態の糸通し装置は針揺動装置を備えたミシンに適用されている。
【0013】
図1において、符号1はミシン機枠に支持された針棒揺動台を示しており、この針棒揺動台1には、下端にミシン針6が針止め4によって固定された針棒2が上下動可能に支持されていると共に、針棒2に対して平行に配置された糸通し軸7が上下動可能且つ回転可能に支持されている。この針棒揺動台1にはまた、針棒揺動杆17が枢着されており、この針棒揺動杆17は、上記針棒2の上下運動に同期して駆動される図示を省略した公知の針振りモータによって、図示左右方向に往復運動される構成になされている。従って、上記針棒揺動台1は、針棒2の上下運動に同期して支点1bを中心として図示左右方向に揺動し、ミシン針6は、上下運動と揺動運動とが合成された楕円運動をするようになっている。
【0014】
糸通し軸7の上側には、軸線方向(上下方向)に直交する方向に貫通しその両端部8a,8bが外方に突出するピン8が挿入固定されており、下側には、糸掛け板支持台13が上下方向の移動が規制された状態で回転可能に支持されている。この糸掛け板支持台13には、外方に突出するピン13a(図3参照)が植設されている。
【0015】
上記糸通し軸7には、略中空円筒状の作動杆10が上下動可能に挿入されている。この作動杆10は、ミシン機枠との間に配設されたバネ14によって上方に付勢されており、図示を省略した回転止めによってその回転が規制された状態となっている。該作動杆10の上端部と上述したピン8との間にはバネ9が設けられており、当該バネ9の付勢力によってピン8、すなわち糸通し軸7は図示下方に付勢された状態となっている。
【0016】
作動杆10の外周面の上部と下部には、図3に示されるように、外周に沿って円弧状に上下方向に延びるカム溝10a,10bがそれぞれ形成されている。上部のカム溝10aは、図3における左側から右側に向かって下がる傾斜溝になされており、当該カム溝10aに上記ピン8の一方の端部8bが遊嵌配置されている。下部のカム溝10bは、カム溝10aとは逆に図3における左側から右側に向かって上がる傾斜溝になされており、当該カム溝10bに上記ピン13aが遊嵌配置されている。そして、上記バネ9によって糸通し軸7が下方に付勢されている状態で、上記ピン8の一方の端部8aがカム溝10aの下端に位置して当該下端を押圧し、上記ピン13aがカム溝10bの下端に位置して当該下端を押圧する構成になされている。
【0017】
そして、作動杆10の図1における背面には、図1及び図3に示されるように、作動杆側の動力伝達機構としての例えばラック10cが上下方向に延在するように固定されている。
【0018】
上記糸通し軸7の下端には糸通しフック台11が固定されている。この糸通しフック台11には、後述の所定位置で糸通し軸7と共に糸通しフック台11が図4における時計方向に回動した時にミシン針6の針孔6aに対して進入可能な糸通しフック11b及びこの糸通しフック11bの両脇に平行に配置され糸の誘い込みが可能なフックガイド11a,11cがそれぞれ固定されている(図4及び図6参照)。
【0019】
そして、糸通し軸7に固定された上記ピン8の他方の端部8bは、糸通し軸7を降下させた時に、針棒2に固定された位置決め板3に突き当たるようになされており(この時の各部材の上下方向の位置を所定位置と称す)、この時上記糸通しフック11bと針孔6aとの高さが同じ高さとなるように、位置決め板3の上下方向の位置決めがなされている。
【0020】
また、上記糸掛け板支持台13の糸通し軸7を間に挟んだ上記糸通しフック11b側とは反対側の側部(ピン13aの植設面の裏面)には、糸掛け部材としての糸掛け板12が配置されている。この糸掛け板12は、図1における左右方向に延びる形状をなす側板12gを備えており、該側板12gに植設されると共にその先端部が糸掛け板支持台13に挿入されたピン12bによって、糸掛け板支持台13に対して回転可能に支持された状態となっている(図1及び図4参照)。
【0021】
糸掛け板12の側板12gの図1における右端部には、針棒揺動台1の該糸掛け板12に対する対向面1aに当接するカム面12aが形成されている。側板12gの上記カム面12aより図1における左側には、図1における右から左に順に糸を係止可能なフック形状の糸係止部12c,12dが上記ピン12bの向かう方向とは逆方向に向かう(図1における紙面からこちら側に向かう)ようにそれぞれ突設されている。これら糸係止部12c,12dは、針棒2の軸心と糸通し軸7の軸心とを結ぶ仮想線に平行となるように配置されている。
【0022】
側板12gの図1における左端部には、図4に示されるように、上記ピン12bの向かう方向とは逆方向に向かう下板12jが固定されている。この下板12jの先端部には円弧状をなす第1の円弧板12iが固定されており、この第1の円弧板12iの先端部には糸を保持可能な糸保持部12eが形成されている。この糸保持部12eは、上記糸係止部12c,12dより図1におけるさらに手前側に位置しており、上記糸係止部12c,12dより図1における若干下方に位置している。下板12jの先端部と基部との間には、円弧状をなす第2の円弧板12hが固定されており、この第2の円弧板12hの先端部には糸を保持可能な糸保持部12fが形成されている。この糸保持部12fは、上記糸保持部12eの図1における紙面向こう側に位置し、上記糸係止部12c,12dより図1における手前側且つ上記糸係止部12c,12dより図1における若干上方に位置している(図1及び図4参照)。
【0023】
上記糸掛け板12には図示を省略したバネが係合しており、該糸掛け板12は、このバネによって上述したピン12bを支点として図1における反時計方向に付勢された状態となっている。しかしながら、上記糸掛け板12のカム面12aが針棒揺動台1の対向面1aに当接していることから、該糸掛け板12の回転は規制された状態となっている。
【0024】
従って、糸掛け板12が糸通し軸7と共に降下すると、カム面12aの対向面1aに対する当接がなされなくなり、当該糸掛け板12はピン12bを支点として図1における反時計方向に回転し、図示を省略した回転止めによって、図2に示されるように、直立した状態でその回転が停止されるようになっている。
【0025】
そして、糸通し軸7をさらに降下させて上記ピン8の一方の突出端部8aが針棒2に固定された位置決め板3に突き当たった時に、糸保持部12e,12fと針孔6aとの高さが同じ高さとなるように、糸掛け板支持台13の糸通し軸7に対する上下方向の位置決めがなされている。
【0026】
また、糸掛け板12をこの位置、すなわち所定位置で糸掛け板支持台13と共に図4における反時計方向に回動した時に、図7に示されるように、第1の円弧板12iと第2の円弧板12hとの間に上述した糸通しフック11b及びフックガイド11a,11cが位置すると共に糸保持部12e,12fがミシン針6より図7における上方に位置するように、各位置関係の設定がなされている。
【0027】
この時、針棒糸案内5の糸導入端部5aより上方側に上記糸係止部12cが位置すると共に下方側に上記糸係止部12dが位置し、糸係止部12c,12dの回動軌跡の糸通し軸7側の範囲(正確には糸係止部12c,12d間に掛け渡された糸M2の回転軌跡Nの糸通し軸7側の範囲L)に、針棒糸案内5の糸導入端部5aが位置するように、各位置関係の設定がなされている(図9参照)。
【0028】
ところで、針棒2は、上述したように針振りモータによって揺動するが、縫製時には、図10に示されるように、所定範囲X(左基線と右基線との間の範囲)を揺動し、糸通し時には、当該所定範囲X外の揺動位置である糸通し実行位置(本実施形態においては左基線よりさらに図示左側の位置)Yまで揺動しその後停止する構成になされている。
【0029】
そして、針棒2が糸通し実行位置Yに位置して停止した時に、上記ラック10cに、駆動源側の動力伝達機構としての例えばピニオン16が噛み合う構成になされている。このピニオン16は、ミシン機枠に固定された駆動源としての例えばモータ(以降糸通しモータと記す)15のその出力軸15aに固定されている。
【0030】
次に、このように構成された糸通し装置の動作について説明する。ミシンの電源投入後、縫製開始前に糸通しを行うにあたって、先ずオペレーターは図示を省略した糸供給源からの糸Mを、糸係止部12c,12d、糸把持部12e,12fの順に掛け渡しこれらの間に掛け渡された糸が概ね緊張するようにセットする。このセットする順は逆であっても勿論構わない。この時、糸掛け板12は、図1に示したように、直立しておらず、糸係止部12c,12d、糸把持部12e,12fが針棒2、針棒揺動台1から離間していることから、糸Mのセット作業が極めて行いやすくなされるようになっている。
【0031】
次いで、図示を省略した糸通しスイッチをオペレーターがオンしたら、針棒2が最上位置に位置するように上軸が駆動されると共に、針振りモータが駆動される。この針振りモータの駆動によって、針棒2、糸通し軸7、作動杆10が1bを支点として図1に示される位置から揺動し、該針棒2が糸通し実行位置Yまで揺動したら針振りモータの駆動が停止される。この時、上述したピニオン16とラック10cとは噛み合い状態となる。
【0032】
そして、針振りモータが停止したら、上記糸通しモータ15を駆動してその出力軸15aを図2における時計方向に回転する。すると、この動力は、ピニオン16、ラック10cを介して作動杆10に伝達され、当該作動杆10はバネ14の付勢力に抗して降下する。
【0033】
そして、このようにして作動杆10を降下させると、この作動杆10と一体に糸通し軸7も降下し、この降下に伴ってカム面12aの対向面1aに対する当接がなされなくなって、糸掛け板12はピン12bを支点として図2における反時計方向(図1におけるP方向)に回転し直立した後停止する。
【0034】
次いで、糸通しモータ15によってさらに作動杆10を降下させると、図2に示されるように、ピン8の他方の端部8bが位置決め板3に突き当たり、糸通し軸7の下方への移動が停止する。この時、糸掛け板12と糸通しフック台11は、図4に示される位置関係にある。ここで、説明の都合上、糸供給源からの糸Mの端部側であって糸把持部12e,12f間に掛け渡されている糸をM1、この糸把持部12e,12f間に掛け渡されている糸M1の上流側(糸供給源側)であって糸係止部12c,12dによって糸通し軸7側に指向されると共に当該糸係止部12c,12d間に掛け渡されている糸をM2とする。
【0035】
次いで、糸通しモータ15によってさらに作動杆10を降下させると、図5に示されるように、作動杆10のみが降下しつつバネ9が圧縮される。この時、作動杆10は回転できないことから、糸通し軸7におけるピン8の一方の端部8aが、降下する作動杆10のカム溝10a内を移動し、糸通し軸7と共に糸通しフック台11及び糸通しフック11b、フックガイド11a,11cが、図4における時計方向(図3における矢印Q方向)に回転する。さらにこの時、糸掛け板支持台13のピン13aが、降下する作動杆10のカム溝10b内を移動し、糸掛け板支持台13と共に糸掛け板12が、上記糸通しフック台11とは逆方向、すなわち図4における反時計方向に回転する。
【0036】
そして、このようにして糸掛け板12が回転すると、糸係止部12c,12dは、針棒糸案内5の糸導入端部5aを上下方向から見て横切る回転軌跡を描き、これら糸係止部12c,12d間に掛け渡されている糸M2は、図9に示されるように、針棒糸案内5の先端側部分に沿って移動した後、当該針棒糸案内5の糸導入端部5aを乗り越えて該糸導入端部5aにおける糸の移動方向に対する裏側に進入する(図8及び図9参照)。この裏側に進入した後の糸をM’として示す。
【0037】
また、このようにして糸掛け板12が回転すると、糸把持部12e,12f間に掛け渡されている糸M1は、図7に示されるように、ミシン針6に当接して屈曲され糸M1の緊張がさらに増大する。
【0038】
この時、糸通しフック11bは、ミシン針6に当接し針孔6の向こう側(図6における左側;針孔6を挟んだ糸通しフック11bとは反対側)で緊張している糸M1に向かう途中にあり(図6参照)、その後針孔6aに進入し、その先端部にて当該糸M1が捕捉される(図7参照)。ここで、糸M1は、上述のように、ミシン針6に当接して屈曲している、すなわち確実に針孔6を挟んだ糸通しフック11bとは反対側で緊張した状態にあることから、確実に糸通しフック11bによって捕捉がなされることになる。
【0039】
そうしたら、上述した糸通しモータ15の出力軸15aを上記とは逆の方向、すなわち図5における反時計方向に回転する。すると、この動力は、ピニオン16、ラック10cを介して作動杆10に伝達され、当該作動杆10は上昇する。すると、糸掛け板12が上記とは反対方向に回転して図4に示した位置に戻る。この時、糸係止部12c,12dの形状は、当該糸係止部12c,12dが上記とは反対方向に移動すると糸M2に対して拘束力がなくなるフック形状をなしており、針棒糸案内5は、上述したように、糸M2の回転軌跡に交差し糸導入端部5aの裏側に進入していた糸M2が戻れない形状を有していることから、該糸導入端部5aの裏側に進入していた糸M2はその位置に残され、針棒糸案内5に対する糸掛けが達成される。
【0040】
また、上述のように糸通しモータ15によって作動杆10を上昇させると、糸通しフック11b、フックガイド11a,11cが上記とは反対方向に回転して図4に示した位置に戻る。この時、糸通しフック11bによって捕捉されている糸M1は当該糸通しフック11bと共に針孔6aを通過する。ここで、上記糸保持部12e,12fの糸M1に対する拘束力は、糸通しフック11bが糸M1を捕捉して後退する力に対して弱いため、当該糸M1は糸保持部12e,12fから離脱し糸通しフック11bに捕捉されたまま針孔6aの反対側に引っ張られ、糸通しが達成される。
【0041】
そして、糸通しモータ15によってさらに作動杆10を上昇させると、該作動杆10と共に糸通し軸7が上昇し、図1に示した初期位置に戻ることになる。このように作動杆10の上昇を、バネの付勢力に比して極めて強い糸通しモータ15の駆動力によって行うようにしていることから、当該作動杆10の上昇は良好に行われる。
【0042】
斯くの如く糸通し及び針棒糸案内5に対する糸掛けが完了したら、上記針振りモータが駆動され、針棒2、糸通し軸7、作動杆10が図1に示した位置に戻り、縫製開始待ちとなる。そして、縫製時には、針棒2は上記揺動範囲Xを揺動し、ラック10cとピニオン16とが干渉せずに縫製がなされる。
【0043】
このように、本実施形態においては、糸通し軸7、糸通しフック11b及び作動杆10を針棒2と共に揺動可能とし、縫製時には針棒2を所定の揺動範囲内Xに揺動して、ラック10cをピニオン16に干渉させずに縫製を行い、糸通し時には針棒2を上記所定の揺動範囲外の揺動位置である糸通し実行位置Yに揺動して位置させ、この糸通し実行位置Yに針棒2が位置した時にラック10cとピニオン16とを噛み合わせ、糸通しモータ15の動力をピニオン16、ラック10cを介して作動杆10に伝達して該作動杆10を降下、上昇させて糸通しを行い得るように構成しているので、ラック10cを作動杆10に直接設けることができ、従来技術で説明した糸通し装置を構成する移動台104、案内棒108等の部品を不要にできるようになっていると共に、糸通し後の作動杆10の引き上げを、バネの付勢力より強力な糸通しモータ15の動力で行うことができ、該作動杆10の上昇動作を良好に行うことができるようになっており、しかも針棒支枠への上記糸通しモータ15の搭載を回避でき、針揺動装置の針振りモータの大型化を不必要とすることが可能となっている。
【0044】
また、本実施形態においては、以下の効果もある。すなわち、糸通し軸7の回動に連動した糸掛け板12の回動によって、糸掛け板12に掛け渡された端部側の糸M1をミシン針6の針孔6aを挟んだ糸通しフック11bとは反対側に配置して所定の糸通し動作を行い得ると共に、糸掛け板12により糸通し軸7側に指向されている上流側の糸M2を移動してその回転軌跡Nの糸通し軸7側の範囲Lに、針棒糸案内5の糸導入端部5aを配置することによって、当該上流側の糸M2を糸導入端部5aに対して乗り越えさせて該糸導入端部5aにおける糸の移動方向に対する裏側に進入させて針棒糸案内5に対する糸掛けを行い得るように構成しているので、糸通し及び針棒糸案内に対する糸掛けを同時に行うことができるようになっている。
【0045】
また、オペレーターによる糸掛け板12の糸係止部12c,12d、糸把持部12e,12fに対する糸Mのセット時に、当該糸係止部12c,12d、糸把持部12e,12fが針棒2、針棒揺動台1に対して離間するように構成しているので、当該糸Mのセット時に、該針棒2、針棒揺動台1が邪魔にならず、糸Mのセットを容易に行うことができるようになっている。
【0046】
また、糸M1がミシン針6に当接し屈曲することによって針孔6を挟んで糸通しフック11bの反対側で確実に緊張した状態となるように構成しているので、確実に糸通しフック11bによる捕捉が行われ、糸通しを確実に行うことができるようになっている。因に、糸M1が針孔6を挟んだ糸通しフック11bの反対側で弛んでいると、糸通しフック11bによる捕捉が良好になされなくなる。
【0047】
また、糸掛け板12が、ピン13a及びカム溝10b等によって糸通し軸7を中心として回転し、この回転によって糸M1を針孔6を挟んだ糸通しフック11bの反対側に張り渡すように構成しているので、例えば特開平3−133485号公報記載の糸通し装置のような複雑なリンク機構を用いて糸Mを針孔6を挟んだ糸通しフック11bの反対側に張り渡すものに比して、構造を簡素化できるようになっている。
【0048】
また、糸通し時以外の通常時には、上記作動杆10を、図1に示されるように、バネ14によって吊架し、糸通しモータ15の電源をオフし得るように構成しているので、装置の省電力化及び糸通しモータ15の耐久性の向上を図ることが可能となっている。
【0049】
なお、糸通しモータ15によって作動杆10を降下・上昇させて糸通し装置の組立調整(位置調整)をする場合には、当該モータ15を一々駆動しながら調整をしなくてはならず、調整が煩雑となることから、手動による作動杆10の降下・上昇が望まれ、また糸通しモータ15が故障した場合には、手動による作動杆10の降下・上昇が必要となるが、このような場合には、針棒2を図1に示した位置(正確には針棒2の揺動範囲内であってラック10c、ピニオン16が干渉しない位置)に位置させた後に、手動操作を行うようにすれば良い。そして、このような手動操作にあっては、ラック10c、ピニオン16が噛み合っておらず、糸通しモータ15の出力軸15aを強引に回転させなくても良いことから、オペレーターにかかる負荷は非常に軽くなっている。
【0050】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもなく、例えば上記実施形態においては、糸通しと共に針棒糸案内5に対する糸掛けができるようになっているが、糸掛けを行う構成に関しては必ずしも必要ない。また、糸通し軸、作動杆等の構成に関しては、例えば特開平3−128091号明細書に記載の糸通し軸、作動杆等を用いることも可能である。
【0051】
また、上記実施形態においては、作動杆10を上昇・降下させるための駆動源を糸通しモータ15としているが、これに限定されるものではなく、例えばエアーシリンダ等のアクチュエータに代えることも可能である。また、駆動源側の動力伝達機構をピニオン16とし、作動杆側の動力伝達機構をラック10cとしているが、勿論これらに限定されるものではない。
【0052】
また、上記実施形態においては、駆動源(糸通しモータ)15及び駆動源側の動力伝達機構(ピニオン)16を、縫製時における針棒の揺動範囲外に固定するようにしているが、これに代えて、駆動源15及び駆動源側の動力伝達機構16を、他の移動手段によって移動可能とし、糸通し時に、駆動源側の動力伝達機構16を作動杆側の動力伝達機構(ラック)10cと連結するようにしても良い。すなわち、縫製時に、駆動源15及び駆動源側の動力伝達機構16を針棒の揺動範囲外に位置させておいて、糸通し時になったら、針棒を例えば図10に示した左基線に停止させ、この時駆動源15及び駆動源側の動力伝達機構16を移動させて作動杆側の動力伝達機構10cと連結するようにしても、上記実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0053】
さらにまた、上記実施形態においては、糸通し実行位置Yを、図10に示される左基線よりさらに図示左側の位置としているが、右基線よりさらに図示右側の位置とすることも可能である。
【0054】
なお、糸通し実行位置Yを、図10に示される左基線または右基線に一致させる、すなわち針棒2を左基線または右基線に位置した時に停止させ、この時駆動源側の動力伝達機構と作動杆側の動力伝達機構とが連結される構成も考えられるが、このように構成した場合には、縫製時に駆動源側の動力伝達機構と作動杆側の動力伝達機構とが衝突し、騒音が発生すると共に両動力伝達機構の破損を招来することから、採用できない。
【0055】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明における針揺動装置を備えたミシンの糸通し装置によれば、糸通し軸、糸通しフック及び作動杆を針棒と共に揺動可能とし、縫製時には針棒を所定の揺動範囲内に揺動して、作動杆に設けられた作動杆側の動力伝達機構を駆動源側の動力伝達機構に干渉させずに縫製を行い、糸通し時には針棒を上記所定の揺動範囲外の揺動位置である糸通し実行位置に揺動して、この糸通し実行位置に針棒が位置した時に、駆動源側の動力伝達機構と作動杆側の動力伝達機構とを連結し、駆動源の動力を両動力伝達機構を介して作動杆に伝達して該作動杆を降下、上昇させて糸通しを行い得るように構成したものであるから、作動杆に作動杆側の動力伝達機構を設けることができ、従来技術で説明した糸通し装置を構成する移動台、案内棒等の部品が不要となって低コスト化が可能になると共に、糸通し後の作動杆の引き上げを、付勢力より強力な駆動源の動力で行うことができ、当該作動杆の上昇動作を良好に行って信頼性の向上が可能となり、しかも針棒支枠への上記駆動源の搭載を回避でき、針揺動装置の駆動源の大型化が不必要となって高コスト化及び騒音増大の回避が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるミシンの糸通し装置を表した正面図である。
【図2】図1に示した針棒を糸通し実行位置に揺動し作動杆を駆動源の動力によって所定位置まで降下させた状態を表した正面図である。
【図3】図2中のA−A矢視に対応する側面図である。
【図4】図2中のB矢視に対応する平面図である。
【図5】図2に示した糸通し装置の作動杆を駆動源の動力によってさらに降下させた状態を表した正面図である。
【図6】図5中のC−C矢視に対応する側面図である。
【図7】図5に示した糸通し装置の作動杆を駆動源の動力によって最大に降下させた時の図5中のD矢視に対応する平面図である。
【図8】図5に示した糸通し装置の作動杆を駆動源の動力によって最大に降下させた時の図5中のE矢視に対応する平面図である。
【図9】糸通し装置の糸掛け動作を表した模式平面説明図である。
【図10】針棒の縫製時における揺動範囲及び糸通し実行位置を表した模式説明図である。
【図11】特開平3−128091号公報記載の糸通し装置の概要を簡略化して表した 概略構成図である。
【符号の説明】
2 針棒
6 ミシン針
6a 針孔
7 糸通し軸
10 作動杆
10c 作動杆側の動力伝達機構
11b 糸通しフック
15 駆動源
16 駆動源側の動力伝達機構
17 針揺動装置
M1 糸
X 縫製時における針棒の揺動範囲
Y 糸通し実行位置
【発明の属する技術分野】
本発明は、針揺動装置を備えたミシンに適用される糸通し装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ミシン針の針孔に糸を通す作業は難しいことから、この糸通し作業を自動的に行う装置の提案が種々なされており、例えば特開平1−113092号公報、特開平3−128091号公報、特開平3−133485号公報等に記載の装置が知られている。これら公報においては、該糸通し装置を、針揺動装置を備えたミシンに対して適用する具体的な記載はなされていないが、例えば特開平3−128091号公報記載の糸通し装置を、針揺動装置を備えたミシンに対して適用することが考えられる。
【0003】
この特開平3−128091号公報記載の糸通し装置の概要を簡略化して示したのが図11である。この糸通し装置においては、駆動源としてのアクチュエータ100を駆動することによって動力伝達機構としてのピニオン101、ラック102を介して移動台104を降下させ、この移動台104の突起部104aを作動杆105に当接させて降下させ、この作動杆105の降下によって糸通し軸106を降下させた後に回動させ、糸通しフック107をミシン針の針孔に貫入させて該糸通しフック107に糸を引っ掛け、そうしたら今度はアクチュエータ100を上記とは逆方向に駆動することによって移動台104を上昇させ、この移動台104の上昇によって糸通し軸106を上記とは逆方向に回動させて当該糸通しフック107を針孔から引き出して該糸通しフック107に引っ掛けられた糸を一緒に引き出し、その後さらに移動台104を元の位置まで上昇させ、移動台104の突起部104aを作動杆105から離間させることによってバネ103の付勢力に従って作動杆105を元の位置まで上昇させるようになっている。すなわち、糸通し作業を自動的に行い得るようになっている。
【0004】
そして、上記提案装置にあっては、針棒を上下方向摺動可能に支持する針棒支枠に対して上記糸通し軸106を回動可能且つ上下方向に摺動可能に支持させていることから、この針棒支枠を公知のミシンの針揺動装置によって揺動させるようにすれば、糸通し軸106、糸通しフック107及び作動杆105も針棒と共に揺動することになる。
【0005】
ここで、上記移動台104は作動杆105に対して別体に設けられて該移動台104と作動杆105とは離間状態にあることから、移動台104及びこの移動台104を支承する案内棒108を、揺動する作動杆105に干渉しない位置に離間配置しておけば、糸通し時(作動杆105等の揺動停止時)には上述した糸通し動作を達成できるというのはいうまでもなく、縫製時には作動杆105を移動台104及び案内棒108に干渉させずに縫製を行うことができる。すなわち、上記特開平3−128091号公報記載の糸通し装置を、針揺動装置を備えたミシンに対しても適用できることになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記装置においては、揺動側(糸通し軸106、糸通しフック107、作動杆105)と固定側(アクチュエータ100、ピニオン101、ラック102、移動台104、案内棒108)とを離間する構成が必要とされ、例えばラック102を直接作動杆105に固定する構成を採用できないことから、移動台104、案内棒108等が必要となり、部品点数が多くなるといった問題があった。
【0007】
また、糸通し後の作動杆105の引き上げを、アクチュエータ100の動力ではなくバネ103の付勢力(機構的な力よりかなり弱い)により行うようにしていることから、作動杆105と糸通し軸106をかなり高精度に仕上げて嵌合しないと上記引き上げ動作が良好に行われず、また摺動部に多少の塵芥の付着があっても上記引き上げ動作が良好に行わないといった問題があった。
【0008】
そこで、これら問題点が生じないように、上記針棒支枠にアクチュエータ100を搭載し、ラック102を直接作動杆105に固定する構成も考えられるが、揺動部分の重量が重くなって針揺動装置の針振りモータの大型化が必要となり、製品コストが高くなると共に騒音が大きくなるといった問題が生じることから採用できない。
【0009】
そこで本発明は、糸通し装置の構成部品が低減されて低コスト化が図られると共に、作動杆の上昇動作が良好に行われて信頼性が向上され、しかも針揺動装置の駆動源がそのままにされて高コスト化及び騒音の増大が避けられる針揺動装置を備えたミシンの糸通し装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の針揺動装置を備えたミシンの糸通し装置は、針棒を揺動させる針揺動装置を備えたミシンに対して付設される糸通し装置であって、上下動可能に支承され下端にミシン針を支持した前記針棒に対して平行に配置されると共に、回動可能且つ上下動可能に支承された糸通し軸と、この糸通し軸に設けられ軸線方向における所定位置で該糸通し軸の回動に連動して動作することによって前記ミシン針の針孔に対して進入・後退可能な糸通しフックと、前記糸通し軸に係合すると共に上下動可能に支承された作動杆と、をして、前記作動杆を降下することによって前記糸通し軸を降下させた後にさらに回動させて前記糸通しフックを前記針孔に対して進入させる一方で、前記作動杆を上昇することによって前記糸通し軸を前記とは逆方向に回動させて前記糸通しフックを前記針孔に対して後退させ、この糸通しフックの前記針孔に対する進入・後退動作によって、針孔を挟んだ糸通しフックとは反対側に配置された糸供給源からの糸を捕捉させて糸通しを可能としたミシンの糸通し装置において、前記作動杆を上昇・降下させるための駆動源と、この駆動源の動力を伝達する駆動源側の動力伝達機構と、この駆動源側の動力伝達機構からの動力を伝達可能に前記作動杆に設けられた作動杆側の動力伝達機構と、を備え、前記糸通し軸、糸通しフック及び作動杆を前記針棒と共に揺動可能とすると共に、前記針揺動装置による針棒の縫製揺動範囲外の揺動位置である糸通し実行位置に該針棒が位置した時に、前記両動力伝達機構が連結されることを特徴としている。
【0011】
このように構成された本発明の針揺動装置を備えたミシンの糸通し装置によれば、糸通し軸、糸通しフック及び作動杆が針棒と共に揺動可能にされ、縫製時には針棒が所定の揺動範囲内に揺動され、作動杆に設けられた作動杆側の動力伝達機構が駆動源側の動力伝達機構に干渉することなく縫製がなされ、糸通し時には針棒が上記所定の揺動範囲外の揺動位置である糸通し実行位置に揺動され、この糸通し実行位置に該針棒が位置されると、駆動源側の動力伝達機構と作動杆側の動力伝達機構とが連結され、駆動源の動力が両動力伝達機構を介して作動杆に伝達されて該作動杆が降下、上昇されて糸通しがなされる。このように、作動杆に作動杆側の動力伝達機構が設けられることから、従来技術で説明した糸通し装置を構成する移動台、案内棒等の部品が不要にされると共に、糸通し後の作動杆の引き上げが、付勢力より強力な駆動源の動力によってなされることから、当該作動杆の上昇動作が良好になされ、しかも針棒支枠に上記駆動源が搭載されないことから、針揺動装置の駆動源の大型化が必要とされない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態におけるミシンの糸通し装置を表した正面図であり、糸通し及び針棒糸案内に対する糸掛けを行う前の状態を表している。そして、本実施形態の糸通し装置は針揺動装置を備えたミシンに適用されている。
【0013】
図1において、符号1はミシン機枠に支持された針棒揺動台を示しており、この針棒揺動台1には、下端にミシン針6が針止め4によって固定された針棒2が上下動可能に支持されていると共に、針棒2に対して平行に配置された糸通し軸7が上下動可能且つ回転可能に支持されている。この針棒揺動台1にはまた、針棒揺動杆17が枢着されており、この針棒揺動杆17は、上記針棒2の上下運動に同期して駆動される図示を省略した公知の針振りモータによって、図示左右方向に往復運動される構成になされている。従って、上記針棒揺動台1は、針棒2の上下運動に同期して支点1bを中心として図示左右方向に揺動し、ミシン針6は、上下運動と揺動運動とが合成された楕円運動をするようになっている。
【0014】
糸通し軸7の上側には、軸線方向(上下方向)に直交する方向に貫通しその両端部8a,8bが外方に突出するピン8が挿入固定されており、下側には、糸掛け板支持台13が上下方向の移動が規制された状態で回転可能に支持されている。この糸掛け板支持台13には、外方に突出するピン13a(図3参照)が植設されている。
【0015】
上記糸通し軸7には、略中空円筒状の作動杆10が上下動可能に挿入されている。この作動杆10は、ミシン機枠との間に配設されたバネ14によって上方に付勢されており、図示を省略した回転止めによってその回転が規制された状態となっている。該作動杆10の上端部と上述したピン8との間にはバネ9が設けられており、当該バネ9の付勢力によってピン8、すなわち糸通し軸7は図示下方に付勢された状態となっている。
【0016】
作動杆10の外周面の上部と下部には、図3に示されるように、外周に沿って円弧状に上下方向に延びるカム溝10a,10bがそれぞれ形成されている。上部のカム溝10aは、図3における左側から右側に向かって下がる傾斜溝になされており、当該カム溝10aに上記ピン8の一方の端部8bが遊嵌配置されている。下部のカム溝10bは、カム溝10aとは逆に図3における左側から右側に向かって上がる傾斜溝になされており、当該カム溝10bに上記ピン13aが遊嵌配置されている。そして、上記バネ9によって糸通し軸7が下方に付勢されている状態で、上記ピン8の一方の端部8aがカム溝10aの下端に位置して当該下端を押圧し、上記ピン13aがカム溝10bの下端に位置して当該下端を押圧する構成になされている。
【0017】
そして、作動杆10の図1における背面には、図1及び図3に示されるように、作動杆側の動力伝達機構としての例えばラック10cが上下方向に延在するように固定されている。
【0018】
上記糸通し軸7の下端には糸通しフック台11が固定されている。この糸通しフック台11には、後述の所定位置で糸通し軸7と共に糸通しフック台11が図4における時計方向に回動した時にミシン針6の針孔6aに対して進入可能な糸通しフック11b及びこの糸通しフック11bの両脇に平行に配置され糸の誘い込みが可能なフックガイド11a,11cがそれぞれ固定されている(図4及び図6参照)。
【0019】
そして、糸通し軸7に固定された上記ピン8の他方の端部8bは、糸通し軸7を降下させた時に、針棒2に固定された位置決め板3に突き当たるようになされており(この時の各部材の上下方向の位置を所定位置と称す)、この時上記糸通しフック11bと針孔6aとの高さが同じ高さとなるように、位置決め板3の上下方向の位置決めがなされている。
【0020】
また、上記糸掛け板支持台13の糸通し軸7を間に挟んだ上記糸通しフック11b側とは反対側の側部(ピン13aの植設面の裏面)には、糸掛け部材としての糸掛け板12が配置されている。この糸掛け板12は、図1における左右方向に延びる形状をなす側板12gを備えており、該側板12gに植設されると共にその先端部が糸掛け板支持台13に挿入されたピン12bによって、糸掛け板支持台13に対して回転可能に支持された状態となっている(図1及び図4参照)。
【0021】
糸掛け板12の側板12gの図1における右端部には、針棒揺動台1の該糸掛け板12に対する対向面1aに当接するカム面12aが形成されている。側板12gの上記カム面12aより図1における左側には、図1における右から左に順に糸を係止可能なフック形状の糸係止部12c,12dが上記ピン12bの向かう方向とは逆方向に向かう(図1における紙面からこちら側に向かう)ようにそれぞれ突設されている。これら糸係止部12c,12dは、針棒2の軸心と糸通し軸7の軸心とを結ぶ仮想線に平行となるように配置されている。
【0022】
側板12gの図1における左端部には、図4に示されるように、上記ピン12bの向かう方向とは逆方向に向かう下板12jが固定されている。この下板12jの先端部には円弧状をなす第1の円弧板12iが固定されており、この第1の円弧板12iの先端部には糸を保持可能な糸保持部12eが形成されている。この糸保持部12eは、上記糸係止部12c,12dより図1におけるさらに手前側に位置しており、上記糸係止部12c,12dより図1における若干下方に位置している。下板12jの先端部と基部との間には、円弧状をなす第2の円弧板12hが固定されており、この第2の円弧板12hの先端部には糸を保持可能な糸保持部12fが形成されている。この糸保持部12fは、上記糸保持部12eの図1における紙面向こう側に位置し、上記糸係止部12c,12dより図1における手前側且つ上記糸係止部12c,12dより図1における若干上方に位置している(図1及び図4参照)。
【0023】
上記糸掛け板12には図示を省略したバネが係合しており、該糸掛け板12は、このバネによって上述したピン12bを支点として図1における反時計方向に付勢された状態となっている。しかしながら、上記糸掛け板12のカム面12aが針棒揺動台1の対向面1aに当接していることから、該糸掛け板12の回転は規制された状態となっている。
【0024】
従って、糸掛け板12が糸通し軸7と共に降下すると、カム面12aの対向面1aに対する当接がなされなくなり、当該糸掛け板12はピン12bを支点として図1における反時計方向に回転し、図示を省略した回転止めによって、図2に示されるように、直立した状態でその回転が停止されるようになっている。
【0025】
そして、糸通し軸7をさらに降下させて上記ピン8の一方の突出端部8aが針棒2に固定された位置決め板3に突き当たった時に、糸保持部12e,12fと針孔6aとの高さが同じ高さとなるように、糸掛け板支持台13の糸通し軸7に対する上下方向の位置決めがなされている。
【0026】
また、糸掛け板12をこの位置、すなわち所定位置で糸掛け板支持台13と共に図4における反時計方向に回動した時に、図7に示されるように、第1の円弧板12iと第2の円弧板12hとの間に上述した糸通しフック11b及びフックガイド11a,11cが位置すると共に糸保持部12e,12fがミシン針6より図7における上方に位置するように、各位置関係の設定がなされている。
【0027】
この時、針棒糸案内5の糸導入端部5aより上方側に上記糸係止部12cが位置すると共に下方側に上記糸係止部12dが位置し、糸係止部12c,12dの回動軌跡の糸通し軸7側の範囲(正確には糸係止部12c,12d間に掛け渡された糸M2の回転軌跡Nの糸通し軸7側の範囲L)に、針棒糸案内5の糸導入端部5aが位置するように、各位置関係の設定がなされている(図9参照)。
【0028】
ところで、針棒2は、上述したように針振りモータによって揺動するが、縫製時には、図10に示されるように、所定範囲X(左基線と右基線との間の範囲)を揺動し、糸通し時には、当該所定範囲X外の揺動位置である糸通し実行位置(本実施形態においては左基線よりさらに図示左側の位置)Yまで揺動しその後停止する構成になされている。
【0029】
そして、針棒2が糸通し実行位置Yに位置して停止した時に、上記ラック10cに、駆動源側の動力伝達機構としての例えばピニオン16が噛み合う構成になされている。このピニオン16は、ミシン機枠に固定された駆動源としての例えばモータ(以降糸通しモータと記す)15のその出力軸15aに固定されている。
【0030】
次に、このように構成された糸通し装置の動作について説明する。ミシンの電源投入後、縫製開始前に糸通しを行うにあたって、先ずオペレーターは図示を省略した糸供給源からの糸Mを、糸係止部12c,12d、糸把持部12e,12fの順に掛け渡しこれらの間に掛け渡された糸が概ね緊張するようにセットする。このセットする順は逆であっても勿論構わない。この時、糸掛け板12は、図1に示したように、直立しておらず、糸係止部12c,12d、糸把持部12e,12fが針棒2、針棒揺動台1から離間していることから、糸Mのセット作業が極めて行いやすくなされるようになっている。
【0031】
次いで、図示を省略した糸通しスイッチをオペレーターがオンしたら、針棒2が最上位置に位置するように上軸が駆動されると共に、針振りモータが駆動される。この針振りモータの駆動によって、針棒2、糸通し軸7、作動杆10が1bを支点として図1に示される位置から揺動し、該針棒2が糸通し実行位置Yまで揺動したら針振りモータの駆動が停止される。この時、上述したピニオン16とラック10cとは噛み合い状態となる。
【0032】
そして、針振りモータが停止したら、上記糸通しモータ15を駆動してその出力軸15aを図2における時計方向に回転する。すると、この動力は、ピニオン16、ラック10cを介して作動杆10に伝達され、当該作動杆10はバネ14の付勢力に抗して降下する。
【0033】
そして、このようにして作動杆10を降下させると、この作動杆10と一体に糸通し軸7も降下し、この降下に伴ってカム面12aの対向面1aに対する当接がなされなくなって、糸掛け板12はピン12bを支点として図2における反時計方向(図1におけるP方向)に回転し直立した後停止する。
【0034】
次いで、糸通しモータ15によってさらに作動杆10を降下させると、図2に示されるように、ピン8の他方の端部8bが位置決め板3に突き当たり、糸通し軸7の下方への移動が停止する。この時、糸掛け板12と糸通しフック台11は、図4に示される位置関係にある。ここで、説明の都合上、糸供給源からの糸Mの端部側であって糸把持部12e,12f間に掛け渡されている糸をM1、この糸把持部12e,12f間に掛け渡されている糸M1の上流側(糸供給源側)であって糸係止部12c,12dによって糸通し軸7側に指向されると共に当該糸係止部12c,12d間に掛け渡されている糸をM2とする。
【0035】
次いで、糸通しモータ15によってさらに作動杆10を降下させると、図5に示されるように、作動杆10のみが降下しつつバネ9が圧縮される。この時、作動杆10は回転できないことから、糸通し軸7におけるピン8の一方の端部8aが、降下する作動杆10のカム溝10a内を移動し、糸通し軸7と共に糸通しフック台11及び糸通しフック11b、フックガイド11a,11cが、図4における時計方向(図3における矢印Q方向)に回転する。さらにこの時、糸掛け板支持台13のピン13aが、降下する作動杆10のカム溝10b内を移動し、糸掛け板支持台13と共に糸掛け板12が、上記糸通しフック台11とは逆方向、すなわち図4における反時計方向に回転する。
【0036】
そして、このようにして糸掛け板12が回転すると、糸係止部12c,12dは、針棒糸案内5の糸導入端部5aを上下方向から見て横切る回転軌跡を描き、これら糸係止部12c,12d間に掛け渡されている糸M2は、図9に示されるように、針棒糸案内5の先端側部分に沿って移動した後、当該針棒糸案内5の糸導入端部5aを乗り越えて該糸導入端部5aにおける糸の移動方向に対する裏側に進入する(図8及び図9参照)。この裏側に進入した後の糸をM’として示す。
【0037】
また、このようにして糸掛け板12が回転すると、糸把持部12e,12f間に掛け渡されている糸M1は、図7に示されるように、ミシン針6に当接して屈曲され糸M1の緊張がさらに増大する。
【0038】
この時、糸通しフック11bは、ミシン針6に当接し針孔6の向こう側(図6における左側;針孔6を挟んだ糸通しフック11bとは反対側)で緊張している糸M1に向かう途中にあり(図6参照)、その後針孔6aに進入し、その先端部にて当該糸M1が捕捉される(図7参照)。ここで、糸M1は、上述のように、ミシン針6に当接して屈曲している、すなわち確実に針孔6を挟んだ糸通しフック11bとは反対側で緊張した状態にあることから、確実に糸通しフック11bによって捕捉がなされることになる。
【0039】
そうしたら、上述した糸通しモータ15の出力軸15aを上記とは逆の方向、すなわち図5における反時計方向に回転する。すると、この動力は、ピニオン16、ラック10cを介して作動杆10に伝達され、当該作動杆10は上昇する。すると、糸掛け板12が上記とは反対方向に回転して図4に示した位置に戻る。この時、糸係止部12c,12dの形状は、当該糸係止部12c,12dが上記とは反対方向に移動すると糸M2に対して拘束力がなくなるフック形状をなしており、針棒糸案内5は、上述したように、糸M2の回転軌跡に交差し糸導入端部5aの裏側に進入していた糸M2が戻れない形状を有していることから、該糸導入端部5aの裏側に進入していた糸M2はその位置に残され、針棒糸案内5に対する糸掛けが達成される。
【0040】
また、上述のように糸通しモータ15によって作動杆10を上昇させると、糸通しフック11b、フックガイド11a,11cが上記とは反対方向に回転して図4に示した位置に戻る。この時、糸通しフック11bによって捕捉されている糸M1は当該糸通しフック11bと共に針孔6aを通過する。ここで、上記糸保持部12e,12fの糸M1に対する拘束力は、糸通しフック11bが糸M1を捕捉して後退する力に対して弱いため、当該糸M1は糸保持部12e,12fから離脱し糸通しフック11bに捕捉されたまま針孔6aの反対側に引っ張られ、糸通しが達成される。
【0041】
そして、糸通しモータ15によってさらに作動杆10を上昇させると、該作動杆10と共に糸通し軸7が上昇し、図1に示した初期位置に戻ることになる。このように作動杆10の上昇を、バネの付勢力に比して極めて強い糸通しモータ15の駆動力によって行うようにしていることから、当該作動杆10の上昇は良好に行われる。
【0042】
斯くの如く糸通し及び針棒糸案内5に対する糸掛けが完了したら、上記針振りモータが駆動され、針棒2、糸通し軸7、作動杆10が図1に示した位置に戻り、縫製開始待ちとなる。そして、縫製時には、針棒2は上記揺動範囲Xを揺動し、ラック10cとピニオン16とが干渉せずに縫製がなされる。
【0043】
このように、本実施形態においては、糸通し軸7、糸通しフック11b及び作動杆10を針棒2と共に揺動可能とし、縫製時には針棒2を所定の揺動範囲内Xに揺動して、ラック10cをピニオン16に干渉させずに縫製を行い、糸通し時には針棒2を上記所定の揺動範囲外の揺動位置である糸通し実行位置Yに揺動して位置させ、この糸通し実行位置Yに針棒2が位置した時にラック10cとピニオン16とを噛み合わせ、糸通しモータ15の動力をピニオン16、ラック10cを介して作動杆10に伝達して該作動杆10を降下、上昇させて糸通しを行い得るように構成しているので、ラック10cを作動杆10に直接設けることができ、従来技術で説明した糸通し装置を構成する移動台104、案内棒108等の部品を不要にできるようになっていると共に、糸通し後の作動杆10の引き上げを、バネの付勢力より強力な糸通しモータ15の動力で行うことができ、該作動杆10の上昇動作を良好に行うことができるようになっており、しかも針棒支枠への上記糸通しモータ15の搭載を回避でき、針揺動装置の針振りモータの大型化を不必要とすることが可能となっている。
【0044】
また、本実施形態においては、以下の効果もある。すなわち、糸通し軸7の回動に連動した糸掛け板12の回動によって、糸掛け板12に掛け渡された端部側の糸M1をミシン針6の針孔6aを挟んだ糸通しフック11bとは反対側に配置して所定の糸通し動作を行い得ると共に、糸掛け板12により糸通し軸7側に指向されている上流側の糸M2を移動してその回転軌跡Nの糸通し軸7側の範囲Lに、針棒糸案内5の糸導入端部5aを配置することによって、当該上流側の糸M2を糸導入端部5aに対して乗り越えさせて該糸導入端部5aにおける糸の移動方向に対する裏側に進入させて針棒糸案内5に対する糸掛けを行い得るように構成しているので、糸通し及び針棒糸案内に対する糸掛けを同時に行うことができるようになっている。
【0045】
また、オペレーターによる糸掛け板12の糸係止部12c,12d、糸把持部12e,12fに対する糸Mのセット時に、当該糸係止部12c,12d、糸把持部12e,12fが針棒2、針棒揺動台1に対して離間するように構成しているので、当該糸Mのセット時に、該針棒2、針棒揺動台1が邪魔にならず、糸Mのセットを容易に行うことができるようになっている。
【0046】
また、糸M1がミシン針6に当接し屈曲することによって針孔6を挟んで糸通しフック11bの反対側で確実に緊張した状態となるように構成しているので、確実に糸通しフック11bによる捕捉が行われ、糸通しを確実に行うことができるようになっている。因に、糸M1が針孔6を挟んだ糸通しフック11bの反対側で弛んでいると、糸通しフック11bによる捕捉が良好になされなくなる。
【0047】
また、糸掛け板12が、ピン13a及びカム溝10b等によって糸通し軸7を中心として回転し、この回転によって糸M1を針孔6を挟んだ糸通しフック11bの反対側に張り渡すように構成しているので、例えば特開平3−133485号公報記載の糸通し装置のような複雑なリンク機構を用いて糸Mを針孔6を挟んだ糸通しフック11bの反対側に張り渡すものに比して、構造を簡素化できるようになっている。
【0048】
また、糸通し時以外の通常時には、上記作動杆10を、図1に示されるように、バネ14によって吊架し、糸通しモータ15の電源をオフし得るように構成しているので、装置の省電力化及び糸通しモータ15の耐久性の向上を図ることが可能となっている。
【0049】
なお、糸通しモータ15によって作動杆10を降下・上昇させて糸通し装置の組立調整(位置調整)をする場合には、当該モータ15を一々駆動しながら調整をしなくてはならず、調整が煩雑となることから、手動による作動杆10の降下・上昇が望まれ、また糸通しモータ15が故障した場合には、手動による作動杆10の降下・上昇が必要となるが、このような場合には、針棒2を図1に示した位置(正確には針棒2の揺動範囲内であってラック10c、ピニオン16が干渉しない位置)に位置させた後に、手動操作を行うようにすれば良い。そして、このような手動操作にあっては、ラック10c、ピニオン16が噛み合っておらず、糸通しモータ15の出力軸15aを強引に回転させなくても良いことから、オペレーターにかかる負荷は非常に軽くなっている。
【0050】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもなく、例えば上記実施形態においては、糸通しと共に針棒糸案内5に対する糸掛けができるようになっているが、糸掛けを行う構成に関しては必ずしも必要ない。また、糸通し軸、作動杆等の構成に関しては、例えば特開平3−128091号明細書に記載の糸通し軸、作動杆等を用いることも可能である。
【0051】
また、上記実施形態においては、作動杆10を上昇・降下させるための駆動源を糸通しモータ15としているが、これに限定されるものではなく、例えばエアーシリンダ等のアクチュエータに代えることも可能である。また、駆動源側の動力伝達機構をピニオン16とし、作動杆側の動力伝達機構をラック10cとしているが、勿論これらに限定されるものではない。
【0052】
また、上記実施形態においては、駆動源(糸通しモータ)15及び駆動源側の動力伝達機構(ピニオン)16を、縫製時における針棒の揺動範囲外に固定するようにしているが、これに代えて、駆動源15及び駆動源側の動力伝達機構16を、他の移動手段によって移動可能とし、糸通し時に、駆動源側の動力伝達機構16を作動杆側の動力伝達機構(ラック)10cと連結するようにしても良い。すなわち、縫製時に、駆動源15及び駆動源側の動力伝達機構16を針棒の揺動範囲外に位置させておいて、糸通し時になったら、針棒を例えば図10に示した左基線に停止させ、この時駆動源15及び駆動源側の動力伝達機構16を移動させて作動杆側の動力伝達機構10cと連結するようにしても、上記実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0053】
さらにまた、上記実施形態においては、糸通し実行位置Yを、図10に示される左基線よりさらに図示左側の位置としているが、右基線よりさらに図示右側の位置とすることも可能である。
【0054】
なお、糸通し実行位置Yを、図10に示される左基線または右基線に一致させる、すなわち針棒2を左基線または右基線に位置した時に停止させ、この時駆動源側の動力伝達機構と作動杆側の動力伝達機構とが連結される構成も考えられるが、このように構成した場合には、縫製時に駆動源側の動力伝達機構と作動杆側の動力伝達機構とが衝突し、騒音が発生すると共に両動力伝達機構の破損を招来することから、採用できない。
【0055】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明における針揺動装置を備えたミシンの糸通し装置によれば、糸通し軸、糸通しフック及び作動杆を針棒と共に揺動可能とし、縫製時には針棒を所定の揺動範囲内に揺動して、作動杆に設けられた作動杆側の動力伝達機構を駆動源側の動力伝達機構に干渉させずに縫製を行い、糸通し時には針棒を上記所定の揺動範囲外の揺動位置である糸通し実行位置に揺動して、この糸通し実行位置に針棒が位置した時に、駆動源側の動力伝達機構と作動杆側の動力伝達機構とを連結し、駆動源の動力を両動力伝達機構を介して作動杆に伝達して該作動杆を降下、上昇させて糸通しを行い得るように構成したものであるから、作動杆に作動杆側の動力伝達機構を設けることができ、従来技術で説明した糸通し装置を構成する移動台、案内棒等の部品が不要となって低コスト化が可能になると共に、糸通し後の作動杆の引き上げを、付勢力より強力な駆動源の動力で行うことができ、当該作動杆の上昇動作を良好に行って信頼性の向上が可能となり、しかも針棒支枠への上記駆動源の搭載を回避でき、針揺動装置の駆動源の大型化が不必要となって高コスト化及び騒音増大の回避が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるミシンの糸通し装置を表した正面図である。
【図2】図1に示した針棒を糸通し実行位置に揺動し作動杆を駆動源の動力によって所定位置まで降下させた状態を表した正面図である。
【図3】図2中のA−A矢視に対応する側面図である。
【図4】図2中のB矢視に対応する平面図である。
【図5】図2に示した糸通し装置の作動杆を駆動源の動力によってさらに降下させた状態を表した正面図である。
【図6】図5中のC−C矢視に対応する側面図である。
【図7】図5に示した糸通し装置の作動杆を駆動源の動力によって最大に降下させた時の図5中のD矢視に対応する平面図である。
【図8】図5に示した糸通し装置の作動杆を駆動源の動力によって最大に降下させた時の図5中のE矢視に対応する平面図である。
【図9】糸通し装置の糸掛け動作を表した模式平面説明図である。
【図10】針棒の縫製時における揺動範囲及び糸通し実行位置を表した模式説明図である。
【図11】特開平3−128091号公報記載の糸通し装置の概要を簡略化して表した 概略構成図である。
【符号の説明】
2 針棒
6 ミシン針
6a 針孔
7 糸通し軸
10 作動杆
10c 作動杆側の動力伝達機構
11b 糸通しフック
15 駆動源
16 駆動源側の動力伝達機構
17 針揺動装置
M1 糸
X 縫製時における針棒の揺動範囲
Y 糸通し実行位置
Claims (1)
- 針棒を揺動させる針揺動装置を備えたミシンに対して付設される糸通し装置であって、
上下動可能に支承され下端にミシン針を支持した前記針棒に対して平行に配置されると共に、回動可能且つ上下動可能に支承された糸通し軸と、この糸通し軸に設けられ軸線方向における所定位置で該糸通し軸の回動に連動して動作することによって前記ミシン針の針孔に対して進入・後退可能な糸通しフックと、前記糸通し軸に係合すると共に上下動可能に支承された作動杆と、をして、前記作動杆を降下することによって前記糸通し軸を降下させた後にさらに回動させて前記糸通しフックを前記針孔に対して進入させる一方で、前記作動杆を上昇することによって前記糸通し軸を前記とは逆方向に回動させて前記糸通しフックを前記針孔に対して後退させ、この糸通しフックの前記針孔に対する進入・後退動作によって、針孔を挟んだ糸通しフックとは反対側に配置された糸供給源からの糸を捕捉させて糸通しを可能としたミシンの糸通し装置において、
前記作動杆を上昇・降下させるための駆動源と、
この駆動源の動力を伝達する駆動源側の動力伝達機構と、
この駆動源側の動力伝達機構からの動力を伝達可能に前記作動杆に設けられた作動杆側の動力伝達機構と、を備え、
前記糸通し軸、糸通しフック及び作動杆を前記針棒と共に揺動可能とすると共に、
前記針揺動装置による針棒の縫製揺動範囲外の揺動位置である糸通し実行位置に該針棒が位置した時に、前記両動力伝達機構が連結されることを特徴とする針揺動装置を備えたミシンの糸通し装置。
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- 1996-01-18 JP JP02480196A patent/JP3730301B2/ja not_active Expired - Fee Related
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