JP4890395B2 - ブランク分離装置及びブランクの分離吸着移送方法 - Google Patents
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Description
現在普及しているブランク分離装置のブランク分離方法は、永久磁石や電磁石等の金属を磁化させる磁力発生手段を、スタック側面に当接させてブランク(通常、鉄板)を磁化させることにより、ブランク間に斥力を発生させ、ブランクとブランクとの間に間隙を形成するというものである(特許文献1参照)。
そのため、昇降リフトによりスタックをある一定の高さ押し上げて、吸着パットの吸着可能な範囲に位置決めする。
その後、ブランクが一定枚数、吸着移送されて、また移送手段の吸着パットが効かなくなる。
例えば、昇降リフトは、移送手段が厚さ1mmのブランクを10枚移送させた後に、スタックを20mm持ち上げるというような間歇的な動きを繰り返す。
このとき、スタックの側面から突出したブランクがたまたま存在する場合(ロットの違いによりこのようなブランクが現出する場合がある)、そのブランクにより磁力発生手段が無理やり押し上げられ、そのことによって磁力発生手段を支える基幹部が破損するという場合がある。
昇降リフトに載置されるスタックは、通常、ほぼ同じ位置に整然と揃えられた状態にあるので、その側面は面一になっている。
しかし、何らかの原因で端部がスタックの側面から大きく突出した突ブランクを有するスタックが昇降リフトに希に載置される場合がある。
基幹部が破損すると、ブランク分離装置が正常に働かなくなり、ダブルブランクが発生するため、プレスラインの稼働を停止せざる得なくなる。
すなわち、磁力発生手段がスタックの側面から突出した突ブランクに持ち上げられても、磁力発生手段を支持する基幹部が破損しないブランク分離装置、及びブランクの分離吸着移送方法を提供することを目的とする。
なお、「突ブランク」とは端部がスタックの側面から大きく突出した状態にあるブランクのことをいう。
すなわち第1の移動手段41により磁力発生手段1を退避移動させる際の短い移動を正確に行うことができ、また第2の移動手段42により、ロット替えによるスタックWの寸法に対応するために敏速に大きな移動量を確保でき、結果的にプレス装置の生産効率を低下させない。
本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態のブランク分離装置全体を模式的(側面図)に示す説明図であり、(A)は複数枚のブランクwが積層されてなるスタックWを載置する前の状態、(B)はスタックWを載置した状態を示す。
図1に示されている本実施形態のブランク分離装置Aは、プレスラインの一構成要素であるプレス装置に、鋼板w(以下、「ブランク」という)を一定の時間間隔で供給するディスタックフィーダに備えられるものである。
ブランクw間に斥力が発生すると、上側のブランクwは浮き上がり、ブランクwとブランクwとの間に間隙が形成される。
ブランクw間に間隙が形成されることにより、吸着チャックを有する移送手段により取り上げた際、ダブルブランクすることが極力防止される。
また、永久磁石11の下方前面の角は傾斜状に切り欠かれている。角11Aが傾斜状に切り欠かれることで、後述するように、磁力発生手段1は枢軸Pを支点としてスタックWに邪魔されることなく傾動可能(すなわち回動可能)になる。
そして、ブランクwを確実に磁化するために、磁力発生手段1(厳密には永久磁石11)はスタックWの側面に当接するように配設される。
すなわち、永久磁石11はスタックWとの当接面11Aを有している。
磁力発生手段1は枢軸Pを支点として傾動する際に、スタックWに邪魔されることを防止するために、前述したように下方が傾斜状に切り欠かれている。
具体的には、永久磁石11の枢軸Pの高さ位置より切り欠き部Tの上端が上になるようにすることが好ましい。
そのため、磁力発生手段1が傾動(すなわち枢軸Pを支点として回動)する際に、永久磁石11の切り欠き部Tが逃がし部として機能し、磁力発生手段1はスタックWに邪魔されることなく上方に傾動することができる。
なお昇降リフト5の上昇ピッチよりも切り欠き部Tの高さを小さくする。
本実施形態の傾斜検知手段3の場合、その設定角度は昇降リフト5の間欠的な上昇ピッチに対応させて決定する。
この設定角度以上に磁力発生手段1が傾斜した時点で傾斜検知手段3は信号を発する。
また、傾斜検知手段3は、磁力発生手段1が傾斜した状態から水平状態へと戻った際にも信号を発する。
本実施形態のブランク分離装置Aにおいては、傾斜検知手段3として高周波磁界を利用した渦電流式の変位センサや近接センサが用いられており、傾斜検知手段3は磁力発生手段1に生じる渦電流の大きさの変化を常時監視することによって、磁力発生手段1の傾斜度合いを判断している。
第1の移動手段41は、傾斜状態の磁力発生手段1を退避移動させて、水平状態に戻すために使われ、第2の移動手段42は磁力発生手段1をロット替えによるブランクwの長さに対応させるために使用され、それぞれその役割を分担している。
なお、プレス装置の生産効率を低下させないために、第1の移動手段41は磁力発生手段1を退避移動させる際の短い移動を正確に行うことが求められる。
そのため、第1の移動手段41には精密な駆動を行える短ストロークのエアシリンダが使用される。
また第2の移動手段42は、ロット替えによるスタックWの寸法に対応するために、敏速に大きな移動量を確保できるエアシリンダが使用される。
第1或いは第2の移動手段としては、エアシリンダの他、油圧シリンダも採用可能である。
そのため、移送手段がブランクwの移送を繰り返して、吸着保持可能領域内にあるブランクが取り出されて無くなってしまうと、それ以上のブランクの移送が行えなくなる。
そのような事態を回避するために、昇降リフト5は吸着保持可能領域内に入っているブランクwが全て移送された時点で上昇し、吸着保持可能領域外にあったブランクwを、吸着保持可能領域内に位置決めする。
こうすることにより、常に、吸着保持可能領域内にブランクが入った状態が作り出される。
この分離吸着移送方法は、間隙形成工程、傾斜工程、傾斜状態解消工程、及び押し戻し工程の四つの工程を備え、これらの工程がこの順序で繰り返し行われる。
図2は、間隙形成工程を説明する説明図、図3は、傾斜工程を説明する説明図、図4は、傾斜状態解消工程を説明する説明図、図5は、押し戻し工程を説明する説明図である。
図2に示すように、間隙形成工程S1はスタックWに磁力発生手段1を当接させて、スタックWの最上部に位置するブランクw1と、ブランクw1の直下に位置するブランクw2との間に間隙Lを形成する工程である。
そして間隙Lが形成された後、ブランクw1は、図示しない吸着チャックを備えた移送手段6によって取り上げられ図示しないプレス装置へと移送される。
先ず、下死点に位置する昇降リフト5に図示しない載置手段を使ってスタックWを載置する。
スタックWが昇降リフト5に載置されると、スタックWの側面が磁力発生手段1に当接し、ブランクw1の下面と、ブランクw2の上面とが同極に磁化される。
その結果、両ブランク間に斥力が発生し、その斥力によってブランクw1がブランクw2から浮き上がり、間隙Lが形成される(図2(A)参照)。
この場合、通常、2〜3枚のブランクw間に間隙Lが生じた状態となっている。
この状態で、ブランクw1から所定の枚数のブランクwが移送手段6の吸着保持可能領域内へ位置決めされたことになる。
以下、移送手段6は、吸着保持可能領域内に入っているブランクwの移送を順次繰り返す。
なお、磁力発生手段1は一定の上下長さを持つ当接面11Aを有しているため、昇降リフト5の上昇中もブランクw1及びブランクw2は磁力発生手段1に当接した状態にあり、間隙Lが形成された状態が維持される。
このように、移送手段6によるブランクwの移送と、昇降リフト5の間欠的上昇とが繰り返され、ブランクwが無くなった時点で、昇降リフト5が一旦、下降して、新たなロットのスタックWが載置される。
この新たなスタックWが載置された後の動作は、上述した通りである。
以上が間隙形成工程S1の内容である。
全てのブランクwの端部の位置が揃ってスタックWの側面が面一となっている場合は、適正な間隙形成工程S1が行われ続けるが、突ブランクwdを有するスタックWが昇降リフトに載置された場合には、傾斜工程S2が行われる。
傾斜工程S2について、より詳しく述べると次の通りである。
先ず、図3(A)に示すように、突ブランクwdを有するスタックWが昇降リフト5に載置されているとする。
そして昇降リフト5が上昇する際、突ブランクwdの端部が磁力発生手段1の底(傾斜面)に当接する(図3(B)参照)。
そのため、磁力発生手段1は、枢軸Pを起点として仰角方向に傾斜する。
すなわち、磁力発生手段1は水平状態から傾斜状態となる。
磁力発生手段1が傾斜すると、磁力発生手段1の一部が、基幹部2の上側に取り付けられた傾斜検知手段3から離間するため、磁力発生手段1の傾斜角度に比例してその部分に発生する渦電流が減少していく。
渦電流の大きさが設定されていた値を超えると、傾斜検知手段3は図示しない制御部に対して信号を送る。
以上が傾斜工程S2である。
傾斜工程S2が完了すると、次に傾斜状態解消工程S3が遂行される。
傾斜状態解消工程S3は、傾斜状態にある磁力発生手段1を突ブランクwdの上から退避させて、水平状態へと戻す工程である。
傾斜検知手段3からの信号を受けた制御部は、図4(A)に示す傾斜状態から、第1の移動手段41を駆動させて、磁力発生手段1がスタックWから離間する方向に基幹部2を後退させる。
また一方で制御部は移送手段6を制御し、保持したブランクをプレス装置に移送させた後、スタックWの上方で一時的に待機させる。
このとき、磁力発生手段1に発生する渦電流の大きさは、磁力発生手段1が水平状態から傾斜状態へと変化したときとは逆に減少し、渦電流が所定の値を下回ると、傾斜検知手段3は制御部に対して信号を再度送る。
以上が傾斜状態解消工程S3である。
傾斜状態解消工程S3が完了し、磁力発生手段1が傾斜状態から水平状態へと戻ると、次に押し戻し工程S4が遂行される。
押し戻し工程S4は、水平状態に戻った磁力発生手段1が、再度スタックWに当接し、突ブランクwdを押し戻す工程である。
押し戻し工程S4についてより詳しく述べると次の通りである。
制御部は傾斜検知手段3から二度目の信号を受信すると、第1の移動手段41の駆動を一旦停止させた後、直ちに第1の移動手段41をそれまでとは逆方向に駆動させる。
これにより、図5(A)に示す水平状態から、磁力発生手段1は前方に移動し突ブランクwdに当接する(図5(B)参照)。
磁力発生手段1の当接面11Aが再びスタックWの側面に当接することで突ブランクwdはスタックWに揃えられる。
すなわちスタックWの側面は面一となる。
ここで制御部は第1の移動手段41の駆動を停止させる。
以上が押し戻し工程S4である。
押し戻し工程S4が完了すると、再び間隙形成工程S1が開始され、以降、間隙形成工程S1から押し戻し工程S4までが繰り返し行われる。
なお、押し戻し工程S4が行われると、先述したように、突ブランクwdの端部はその他のブランクwの端部の位置と同じ位置に揃う(図5(C)参照)。
従って、一度傾斜状態解消工程S3及び押し戻し工程S4が行われると、そのスタックWを構成する全てのブランクwが移送されるまでの間は、磁力発生手段1は再度傾斜状態になることがない。
例えば、本実施形態では磁力発生手段1を1つの場合で説明したが、通常、磁力発生手段1は、スタックWの側面に沿って複数個、配設される。
また本実施形態の磁力発生手段1では永久磁石を用いたが、電磁石等のように磁界を発生させるものであれば、その種類は限定されない。
また、移送手段として、吸着チャックを備えた例で説明したが、ブランクw1を保持して移送できるものであれば採用可能である。
11・・・永久磁石
11A・・・当接面
12・・・ホルダー
2・・・基幹部
3・・・傾斜検知手段
4・・・移動手段
41・・・第1の移動手段
42・・・第2の移動手段
5・・・昇降リフト
6・・・移送手段
A・・・ブランク分離装置
L・・・間隙
P・・・枢軸
T・・・切り欠き部
w・・・ブランク
w1・・・スタックの最上部に位置するブランク
w2・・・ブランクw1の直下に位置するブランク
wd・・・突ブランク
W・・・スタック
Claims (8)
- 複数のブランクが積層されてなるスタックを昇降させる昇降リフトと、
スタックの側面に当接して、最上部に位置するブランクとその直下に位置するブランクとの間に分離のための間隙を形成する磁力発生手段と、
該磁力発生手段を上方に傾動可能に支持する基幹部と、
前記磁力発生手段の傾斜状態を検知する傾斜検知手段と、
前記磁力発生手段を前記スタックの側面に対して垂直な軸方向に退避移動させる移動手段と、を備えることを特徴とするブランク分離装置。 - 前記傾斜検知手段が、前記磁力発生手段が水平状態から傾斜状態へと変化したこと、及び前記磁力発生手段が傾斜状態から水平状態へと変化したことを検知するものであることを特徴とする請求項1記載のブランク分離装置。
- 前記移動手段が、第1の移動手段と該第1の移動手段より後方に配置された第2の移動手段とからなることを特徴とする請求項1記載のブランク分離装置。
- 前記第1の移動手段が前記磁力発生手段を退避移動させるためのエアシリンダであることを特徴とする請求項3記載のブランク分離装置。
- 前記第2の移動手段が前記磁力発生手段をブランクの寸法に対応させるためのエアシリンダであることを特徴とする請求項3記載のブランク分離装置。
- 前記移動手段の駆動状態を制御する制御部を更に備え、
該制御部は前記スタックから突出した突ブランクによって、前記磁力発生手段が水平状態から傾斜状態へと変化させられた場合には、磁力発生手段をスタックから退避させるように前記移動手段を駆動させ、
前記磁力発生手段が傾斜状態から水平状態へと変化した場合には、磁力発生手段をスタックに当接させるように前記移動手段を駆動させることを特徴とする請求項1記載のブランク分離装置。 - 磁力発生手段は枢軸を支点として傾動する際に、スタックに邪魔されることを防止するために下方が傾斜状に切り欠かれていることを特徴とする請求項1記載のブランク分離装置。
- 磁力発生手段を用いることにより、複数枚のブランクが積層されてなるスタックの最上部に位置するブランクと該ブランクの直下に位置するブランクとの間に間隙を形成し、スタックの最上部に位置するブランクの分離吸着移送方法であって、
スタックに磁力発生手段を当接させて、最上部に位置するブランクと、その直下に位置するブランクとの間に間隙を形成する間隙形成工程、
前記スタックの側面から突出する突ブランクが上昇することによって、水平状態の磁力発生手段が持ち上げられて傾斜状態へと変化する傾斜工程、
傾斜状態の磁力発生手段を突ブランクの上から退避させて、水平状態へと戻す傾斜状態解消工程、
水平状態に戻った磁力発生手段を、再度スタックに当接させて突ブランクを押し戻す押し戻し工程とを有するブランクの分離吸着移送方法。
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