JP4889850B2 - 硬化性樹脂、感光性樹脂組成物及び硬化塗膜の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性樹脂及び感光性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、プリント配線板ソルダーレジスト、高密度多層板層間絶縁膜、半導体パッケージ用ソルダーレジスト等の電子材料分野に用いられる、硬化性樹脂及び感光性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリント配線板製造における永久マスクレジストは、熱あるいは紫外線硬化型レジストインキをスクリーン印刷する方法で製造されてきたが、現在は生産性の面からアルカリ現像型の液状ソルダーフォトレジストへと移行している。例えば、特公平1−54390号公報には、ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸との反応物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる光硬化性樹脂、光重合開始剤、希釈剤及び、エポキシ化合物からなる弱アルカリ水溶液で現像可能な液状レジストインキ組成物が提案され、現在主流となっている。
【0003】
しかしながら、この組成物では弱アルカリ水溶液で現像を行うために酸価を高くする必要があり、そのためにインキ配合したものを基板に塗布した後の溶剤の乾燥工程において、乾燥時間を短くしなければならなかったり、乾燥から露光して現像するという一連の工程において乾燥後長時間放置することによって塗膜の未露光部が速やかに除去できなくなるなどの問題点があった。さらにその硬化した後の硬化物においても無電解金メッキ耐性などが不十分であるという問題点が残されていた。
また、近年電子機器の小型化、軽量化、高性能化に伴い、半導体の高密度実装のために、半導体パッケージの小型化、多ピン化が進んでおり、ソルダーレジストを施したプリント配線板と封止材料を用いたICパッケージの導入が急速に進められている。その具体的な方法の一例であるBGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)等のICパッケージにおいては、高信頼性の点から特に長期信頼性試験である、加圧下での水蒸気に対するパッケージの樹脂被膜の耐性の程度を示す尺度である、いわゆる耐PCT(プレッシャークッカー)性が求められている。しかしながら従来の酸価の高いアルカリ現像型ソルダーレジストでは、耐PCT性が劣り、ソルダーレジスト皮膜の剥離が発生するなどの問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、プリント配線板のソルダーレジスト等への利用において、酸価が比較的低いにもかかわらず弱アルカリ性の水溶液での現像性に優れ、かつ、インキ配合したものを基板に塗布した後の溶剤の乾燥工程において、乾燥時間を特に短くする必要もなく、乾燥後長時間放置した場合に塗膜の未露光部の除去性が悪くなるという従来の樹脂の問題点を解決し、さらに硬化後の塗膜の特に、無電解金メッキ耐性及び耐PCT性に優れる光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの従来の技術の課題を解決するために、フェノール樹脂を骨格とし、これに1級の水酸基と反応性官能基を導入して得られる反応物に、更に官能基としてカルボキシル基を導入した硬化性樹脂を開発し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、フェノール樹脂(a)の水酸基に、分子中にラジカル重合性不飽和基と1つのエポキシ基を有する化合物(b)及び分子中にアルコール性水酸基と1つのエポキシ基を有する化合物(c)を反応させて得られる反応物(以下「反応物I」という)中の水酸基に、更に飽和及び/または不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる硬化性樹脂(以下、「硬化性樹脂X」という)である。
【0007】
また、本発明は、フェノール樹脂(a)の水酸基に、分子中にラジカル重合性不飽和基と1つのエポキシ基を有する化合物(b)及び分子中にアルコール性水酸基と1つのエポキシ基を有する化合物(c)を反応させて得られる反応物I中の水酸基に、飽和及び/または不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて硬化性樹脂(以下「反応物II」という)を得て、更にこの反応物IIのカルボキシル基1当量に対し、分子中にラジカル重合性不飽和基と1つのエポキシ基を有する化合物(b)を0.1〜0.7モルとなる割合で反応させて得られる硬化性樹脂(以下「硬化性樹脂Y」という)である。
【0008】
また、本発明は、(A)前記硬化性樹脂X及び/または硬化性樹脂Y、(B)エポキシ樹脂、(C)光重合開始剤、及び(D)希釈剤としての重合性不飽和化合物及び/または溶剤を含有する感光性樹脂組成物である。
【0009】
また、本発明は、硬化性樹脂XまたはYにおいて、フェノール樹脂(a)のフェノール性水酸基1当量に対して、化合物(b)及び(c)を全体で0.8〜1.2モル、且つそのうち化合物(c)を0.05〜0.5モルとなる割合で反応させることを特徴とする硬化性樹脂である。
また、本発明は、反応物Iの水酸基1当量に対し、飽和及び/または不飽和多塩基酸無水物(d)を0.05〜0.7モルとなる割合で反応させて得られる硬化性樹脂である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
まず、本発明の硬化性樹脂XまたはYは、骨格樹脂としてフェノール樹脂を使用する。このフェノール樹脂(a)は、レゾール系、ノボラック系、クレゾール系等の全てのフェノール樹脂を使用することができる。また、多官能フェノール化合物をエポキシ化合物で変性したエポキシ変性タイプやブタジエン(共)重合体にフェノール類を付加させたフェノール類付加ブタジエン(共)重合体、フェノール類とジシクロペンタジエンとの重合樹脂なども使用することが出来る。
【0011】
本発明の硬化性樹脂XまたはYに使用する、分子中にラジカル重合性不飽和基と1つのエポキシ基を有する化合物(b)としては、ラジカル重合性二重結合と1つのエポキシ基を有する種々の公知のものを使用することができる。その代表的なものとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、商品名:デナコールEX−145(ナガセ化成(株)製)、商品名:サイクロマーA200、M100(ダイセル化学工業(株)製)のような脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に原料が安価であることからグリシジルメタクリレートが好ましい。
【0012】
本発明の硬化性樹脂XまたはYに使用する、分子中にアルコール性水酸基と1つのエポキシ基を有する化合物(c)は、分子中にアルコール性水酸基と1つのエポキシ基を有する化合物であれば、公知の種々のものを使用することができ、例えばグリシドール等が挙げられる。
硬化性樹脂XまたはYにおいて、化合物(b)及び化合物(c)の反応量は、フェノール樹脂(a)のフェノール性水酸基1当量に対して、化合物(b)及び(c)を全体で0.8〜1.2モル反応させ、且つこのうちの化合物(c)を0.05〜0.5モルとなる割合で反応させることが望ましい。この際、化合物(c)の反応量が、フェノール性水酸基1当量に対して0.5モルを越えると樹脂の耐水性が低下し、PCT耐性に問題を生じるため好ましくない。
【0013】
硬化性樹脂XまたはYにおいて、フェノール樹脂と化合物(a)及び(b)の反応時に溶剤を使用する。使用する溶剤としては公知のものが使用でき、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤等の有機溶剤類を挙げることが出来る。また、カルビトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレートトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの反応性単量体類を使用することも可能である。
【0014】
また、フェノール樹脂と化合物(a)及び(b)の反応を促進するために触媒を用いることが好ましく、この場合のエポキシ基とフェノール性水酸基との反応触媒としては公知のものが使用できる。このような触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等を挙げることができる。このような触媒の使用量は、反応原料混合物に対して、好ましくは0.01から1重量%である。反応温度は、好ましくは60〜150℃である。また、反応時間は、好ましくは5〜60時間である。このようにして、反応物Iを得ることが出来る。
【0015】
硬化性樹脂XまたはYにおいては、このようにして得た反応物Iの水酸基に、更に飽和または不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させる。このような飽和または不飽和多塩基酸無水物(d)としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラハイドロ無水フタル酸、ヘキサハイドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラハイドロ無水フタル酸、メチルテトラハイドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の2塩基酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物が挙げられ、とくにテトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、ヘキサハイドロ無水フタル酸の使用が好ましい。
【0016】
硬化性樹脂Xの場合には、前記反応物I中の水酸基1当量に対して飽和または不飽和多塩基酸無水物(d)を0.05〜0.7モルとなる割合で反応させることによって硬化性樹脂X、または反応物IIが得られる。
硬化性樹脂Yの場合には、前記反応物II中のカルボキシル基1当量に対し、分子中にラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物(b)を0.1〜0.7モルとなる割合で反応させることによって硬化性樹脂Yが得られる。
このようにして得られた本発明の硬化性樹脂Xは、フェノール樹脂(a)を骨格とし、このフェノールの水酸基に、化合物(b)と(c)が反応して枝状に付加し(反応物I)、この反応物Iの化合物(c)に由来する側鎖末端の一級のアルコール性水酸基の一部または全てに更に飽和または不飽和多塩基酸無水物(d)が反応して、その末端にカルボキシル基を有する構造の硬化性樹脂である。また、本発明の硬化性樹脂Yは、上記の末端にカルボキシル基を有する構造の重合体樹脂に、その末端カルボキシル基1当量に対して更に0.1〜0.7モルの割合で化合物(b)を反応させて得られる硬化性樹脂である。
【0017】
一般的に、前記の飽和または不飽和多塩基酸無水物(d)の反応量は、反応物I中の水酸基1当量に対して0.05〜0.7モル、好ましくは0.1〜0.6モルとなるようにすることが好ましい。飽和または不飽和多塩基酸無水物の付加量が0.05モル未満であると、酸性基の割合が少ないためアルカリに対する溶解性が悪く、十分なアルカリ現像性が得られず、0.7モルを超えると、硬化塗膜の電気特性が低下してしまう。
また、本発明の硬化性樹脂X及びYにおいては、飽和または不飽和多塩基酸無水物(d)は、化合物(c)に由来する一級の水酸基に優先的に付加し、カルボキシル基の位置が分子の末端に配置するので比較的低い酸価でも優れたアルカリ現像性を発揮する。飽和または不飽和多塩基酸無水物(d)のモル数が化合物(c)の1級の水酸基のモル数以下でも十分なアルカリ現像性を示す。
前記反応物Iと飽和または不飽和多塩基酸無水物(d)の反応温度は150℃以下で、80〜130℃が好ましく、反応時間は、1〜10時間である。
【0018】
前記本発明の硬化性樹脂Yは、高感度化のために酸無水物付加後の硬化性樹脂Xのカルボキシル基の一部に更に分子中にラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物(b)を反応させて感度アップさせるものである。ソルダーレジストインキを塗布後乾燥した後に、希アルカリで現像可能な時間(現像管理幅)を十分に確保する場合には、水溶性モノエポキシ化合物を反応させることが特に有効である。水溶性モノエポキシ化合物としては、例えば、商品名SY−GTA80(坂本薬品工業(株) 製)等が挙げられる。
【0019】
硬化性樹脂Xのカルボキシル基に、分子中にラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物(b)を反応させる場合は、硬化性樹脂Xを得る場合のエポキシ基とフェノール性水酸基との反応と同様の条件で行う。分子中にラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物(b)の導入量は、硬化性樹脂Xのカルボキシル基1当量に対し0.1〜0.7モルとなる割合、好ましくは0.2から0.5モルとなる割合で反応させることが望ましい。分子中にラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物(b)の導入量が0.1モルよりも少ない場合は高感度化が出来ず、0.7モルよりも多い場合は希アルカリ現像性が低下する。
【0020】
本発明は、更に(A)上記の硬化性樹脂X及び/または硬化性樹脂Y、(B)エポキシ樹脂、(C)光重合開始剤、及び(D)希釈剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂X及び/または硬化性樹脂Yの量は、両者の合計で感光性樹脂組成物中の10〜80重量%が好ましく、特に15〜60重量部が好ましい。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物に使用する(B)エポキシ樹脂としては、例えば1分子中にエポキシ基を1個以上有するものであって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール−クレゾールノボラック共縮合型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、あるいはそれらのハロゲン化エポキシ化合物、トリフェニロールメタン型エポキシ樹脂、アルキル置換トリフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の多官能フェノールにエピクロルヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂、多官能ヒドロキシナフタレン類にエピクロルヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂、シリコーン変成エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変成エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと一級または二級アミンとの反応によって得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート等の複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらエポキシ樹脂の1種もしくは2種以上を併用しても良い。
また、Tgを確保した上で靭性を向上させる目的からイソシアネート変性エポキシ樹脂の使用や難燃性付与の観点からリン含有エポキシ樹脂などを使用することも有効である。
【0022】
前記エポキシ樹脂(B)は、密着性、耐熱性、耐メッキ性等のソルダーレジストとしての諸特性を向上させるために、熱硬化成分として組成物中に配合され、プリント配線板等の製造に際して稀アルカリ水溶液で現像した後、加熱により樹脂を硬化させて、よりすぐれた配線板への密着性、耐熱性、耐メッキ性等を付与する。
【0023】
エポキシ樹脂(B)は、単独または2種以上の混合物として用いられ、本発明の感光性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の量は、組成物中の1〜50重量%、好ましくは3〜45重量%である。
【0024】
前記熱硬化成分としてのエポキシ樹脂(B)を使用する場合には、密着性、耐薬品、耐熱性等の特性をより一層向上するためにエポキシ硬化剤を併用することが望ましい。このようなエポキシ樹脂硬化剤としては、イミダゾール誘導体、フェノール誘導体、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド誘導体、ヒドラジド誘導体、アミン類、酸無水物等が挙げられる。上記硬化剤は1種類または2種類以上混合して使用する。上記硬化剤の使用量は当該エポキシ樹脂のエポキシ基に対し硬化剤の活性水素量が0.5から1.2当量になる割合が好ましい。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物に使用する(C)光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ベンゾフェノン類等が挙げられ、例えば、ベンゾイン類では、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等の誘導体、アセトフェノン類では、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等の誘導体、アントラキノン類では、2-メチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン等の誘導体、チオキサントン類では、チオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン等の誘導体、ベンゾフェノン類では、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’―ジクロロベンゾフェノン、N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン等の誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等があり、単独あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、光重合開始剤(C)は、三級アミン類のような公知の光増感剤を併用しても良い。具体的には、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアミノ酸安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート等が挙げられる。
【0026】
上記の光重合開始剤(C)は、1種類または2種類以上混合して、また更に公知の光増感剤を併用して使用する。光重合開始剤(C)の使用割合は、感光性樹脂組成物中の0.5〜20重量%、好ましくは1.0〜15重量%である。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物には(D)希釈剤として重合性不飽和化合物および/または溶剤を使用する。(D)希釈剤として重合性不飽和化合物および/または溶剤は、活性エネルギー光線に対する硬化性および/または感光性樹脂組成物をレジストインキとして使用する場合の塗工性を向上させる目的で使用するものである。
【0028】
このような重合性不飽和化合物としては、活性エネルギー光線硬化性のあるモノマー類が好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート,2-ヒドロキシプロピルアクリレート,N-ピロリドン,N-アクリロイルモルフォリン,N,N-ジメチルアクリルアミド,N,N-ジエチルアクリルアミド,N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート,N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート,メトキシポリエチレングリコールアクリレート,エトキシポリエチレングリコールアクリレート,メラミンアクリレート,フェノキシエチルアクリレート,フェノキシプロピルアクリレート,エチレングリコールジアクリレート,ジプロピレングリコールジアクリレート,ポリジプロピレングリコールジアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,ペンタエリスリトールトリアクリレート,ペンタエリスリトールテトラアクリレート,ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,グリセリンジアクリレート,イソボロニルアクリレート,ジシクロペンテニツオキシエチルアクリレートおよびこれらに対応する各種メタクリレートが挙げられる。これら重合性不飽和化合物の1種もしくは2種以上を併用しても良い。
【0029】
一方溶剤としては、メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン類,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素,エチルセロソルブ,ブチルセロソルブ,カルビトール,ブチルカルビトール等のカルビトール類,酢酸エチル,酢酸ブチル,セロソルブアセテート,ブチルセロソルブアセテート,エチルカルビトールアセテート等が挙げられる。これらの溶剤は1種もしくは2種以上を併用しても良い。
【0030】
希釈剤(D)として使用する重合性不飽和化合物または溶剤は、単独または2種類以上の混合物として用いられる。そして、重合性不飽和化合物および/または溶剤の使用量は、前記硬化性樹脂X及び/またはYの100重量部に対して、10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部である。中でも重合性不飽和化合物は活性エネルギー光線に対する樹脂の硬化性の付与にも寄与するものであり、その使用量が、10重量部未満では、光感度が低くなりすぎ、一方200重量部を超えると感光性樹脂組成物をレジストインキとして使用する場合に粘度が低くなりすぎ、硬化塗膜としての特性が不十分になる。従って、上記のような量の重合性不飽和化合物に溶剤を加えて液状組成物として、例えば良好な塗工性と硬化塗膜特性が得られるように調製する。
【0031】
この他、本発明の感光性樹脂組成物を液状レジストインキとして使用する場合には、さらに必要に応じて、シリカ,炭酸カルシウム,硫酸バリウム,クレー,タルク等の無機充填剤、フタロシアニングリーン,フタロシアニンブルー,酸化チタン,カーボンブラック等の着色顔料、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤の他、ハイドロキノン,レゾルシノール,カテコール,ピロガノール,ハイドロキノンモノメチルエーテル,t-ブチルカテコール,フェノチアジン等の重合防止剤を使用しても良い。
【0032】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記の各配合成分を、好ましくは前記の割合で配合し、3本のロールミル等で均一に混合することにより得られる。
また、本発明の感光性樹脂組成物は液状の組成物であり、例えば、次のようにして硬化することによって、硬化物が得られる。即ち、プリント配線板にスクリーン印刷法、スプレー法、ロールコーター法、静電塗装法、カーテンコート法などの方法によって10〜160μmの膜厚で本発明の組成物を塗布し、塗膜を60〜110℃で乾燥させ、次いでネガフィルムをこの塗膜に直接接触させ(または接触しない状態で塗膜の上に置き)、次いで紫外線を照射して組成物を露光させ、未露光部分を希アルカリ水溶液で溶解除去して現像した後、更に諸物性の向上のために紫外線の照射および/または加熱(例えば、100〜200℃で、0.5〜1.0時間)によって十分な硬化を行ない硬化塗膜が得られる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例、比較例により本発明を詳細にするが、各例中の「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て重量基準である。本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
合成例1(硬化性樹脂Xの合成例):
クレゾール型フェノール樹脂〔ショウノールCRG−951、昭和高分子(株)社製、水酸基当量118、軟化点96℃〕118部(1.0当量)、カルビトールアセテート102.7部を仕込み、95℃に加熱し、上記混合物が均一に溶解したことを確認後、グリシジルメタクリレート99.4部(0.7モル)、メチルハイドロキノン0.03部、トリエチルアミン0.68部を仕込み、120℃に加熱し約2時間反応させ、GPC測定により予め作成した検量線を用いて反応率を求めたところグリシジルメタクリレートの反応率は100モル%であった。次に、グリシドール22.2部(0.3モル)を反応系内に投入し、引き続き120℃で2時間反応を続けたところグリシドールの反応率は98モル%で反応を終了し、反応物Iを得た。
続いてこの反応物Iに、テトラヒドロ無水フタル酸45.6部(0.3モル)を仕込み、100℃で約3時間反応させIRにて酸無水物の吸収の消失を確認し、固形分酸価59mgKOH/g、固形分濃度73.5%の本発明の硬化性樹脂Xを得た。
【0035】
合成例2(硬化性樹脂Yの合成例):
クレゾール型フェノール樹脂〔ショウノールCRG−951、昭和高分子(株)社製、水酸基当量118、軟化点96℃〕118部(1.0当量)、カルビトールアセテート121.7部を仕込み、95℃に加熱し、上記混合物が均一に溶解したことを確認後、グリシジルメタクリレート71部(0.5モル)、メチルハイドロキノン0.02部、トリエチルアミン0.68部を仕込み、120℃に加熱し約2時間反応させ、GPC測定により予め作成した検量線を用いて反応率を求めたところグリシジルメタクリレートの反応率は100モル%であった。続いて、グリシドール37部(0.5モル)を反応系内に投入し、引き続き120℃で2時間反応を続けたところグリシドールの反応率は98モル%で反応を終了し、反応物Iを得た。
次に、この反応物Iに、テトラヒドロ無水フタル酸91.2部(0.6モル)を仕込み、100℃で約3時間反応させ、IRにて酸無水物の吸収消失確認して反応物IIを得た。この反応物IIに、グリシジルメタクリレート21.3部(0.15モル)、デナコールEX−145(ナガセ化成(株)製、エポキシ当量:416)62.4g(0.15モル)、メチルハイドロキノン0.025部を反応系内に投入し、引き続き120℃で反応を続けたところグリシジルメタクリレートの反応率は98モル%で反応を終了した。固形分酸価42mgKOH/g、固形分濃度76.7%の硬化性樹脂Yを得た。
【0036】
比較合成例1(硬化性樹脂Zの合成例):
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔エポトートYDCN−704、東都化成(株)社製、エポキシ当量210、軟化点90℃〕210部(1.0当量)、アクリル酸72部(1モル)、メチルハイドロキノン0.28部、カルビトールアセテート232.6部を仕込み、95℃に加熱し、上記混合物が均一に溶解したことを確認後、トリフェニルホスフィン1.4部を仕込み、100℃に加熱し、約30時間反応させ、酸価0.5mgKOH/gの反応物を得た。これに、テトラヒドロ無水フタル酸66.9部(0.44モル)を仕込み、90℃に加熱し約6時間反応させIRにて酸無水物の吸収の消失を確認し、固形分酸価70mgKOH/g、固形分濃度60%の比較品の硬化性樹脂Zを得た。
【0037】
実施例1乃至3および比較例1:
前記の合成例および比較合成例より得られた感光性樹脂及び重合体を用い、表1に示す配合比率に従って、3本ロールミルにて混練し、本発明の実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を調製した。次いでこれらの感光性樹脂組成物を予め脱脂を行なったプリント回路基板に、乾燥膜厚で30から40μmになるようにスクリーン印刷法により塗布し、80℃で20分間予備乾燥後、室温まで冷却し乾燥塗膜を得た。この塗膜にレジストパターンを有するネガフィルムを密着させ、紫外線露光装置を用いて、350mJ/cm2露光し、ネガフィルムをはずした後、1%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スプレー圧2.0kgf/cm2で60秒間現像し、未露光部分を溶解除去した。その後、熱風乾燥機を用い、150℃で30分間加熱硬化を行い、レジストパターンを有する硬化物被膜を調製した。
【0038】
【表1】
【0039】
*1:1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート〔日産化学(株)製〕
*2:イルガキュア907、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)
フェニル〕−2−モルホリノプロパノン−1〔チバ・ガイギー社製〕
*3:カヤキュアDETX−S、2,4−ジエチルチオキサントン
〔日本化薬(株)製〕
*4:ライトアクリレートTMP−A、トリメチロールプロパントリ
アクリレート〔共栄社化学(株)製〕
*5:アエロジル300、〔日本アエロジル(株)製〕
【0040】
上記のようにして得た硬化被膜を有する本発明及び比較品の各試験片を用いて、下記に示す試験方法に従って、現像性、密着性、半田耐熱性、無電解金メッキ耐性、耐PCT性、可撓性試験を行い、塗膜の各種物性評価を行った。これらの試験の評価結果を表2及び表3に示す。
但し、現像性は80℃の予備乾燥時間を20分以外に種々変えた塗膜を供試体として評価した。
【0041】
1)現像性
予備乾燥時間を20分、40分、60分、80分、100分とした各乾燥塗膜について、1%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スプレー圧2.0kgf/cm2で60秒間現像を行い、現像後の塗膜の有無を観察し、以下の基準で評価した。
○:現像後に完全に塗膜が除去され、完全に現像できたもの。
×:現像後に少しでも除去されない塗膜が残り、現像が不完全なもの。
【0042】
2)密着性
JIS D 0202の試験方法に従って、各試験片の硬化膜に碁盤目状にクロスカットを入れ、次いでセロハンテープによるによるピーリングテストを行い、テスト後の剥れの状態を目視判定した。評価は、以下の基準で行った。
○:全く剥がれの無いもの。
△:クロスカット部が少し剥がれたもの。
×:塗膜に剥がれがあるもの。
【0043】
3)半田耐熱性
JIS C 6481の試験方法に従って、各試験片を260℃の半田浴に10秒間、3回浸漬を行ない、取り出した後、外観の変化を観察した。評価は、以下の基準で行った。
○:硬化膜の外観に変化がないもの。
△:硬化膜に変色が認められたもの。
×:硬化膜の浮き、剥れ、半田潜りがあったもの。
【0044】
4)無電解金メッキ耐性
試験片の前処理として、各試験片について、30℃の酸性脱脂液に浸漬→浸漬水洗→ソフトエッチング処理→浸漬水洗→触媒の付与(30℃のニッケルメッキ触媒液に7分間浸漬)→浸漬水洗工程を行なった。次に無電解ニッケルメッキ工程として、各試験片をニッケルメッキ液(85℃、PH=4.6)に20分間浸漬→1分間酸浸漬(室温で10vol%硫酸水溶液)→浸漬水洗を行ない、最後に無電解金メッキ工程として各試験片を金メッキ液(95℃、PH=6、シアン化金カリウム3vol%水溶液)に10分間浸漬→浸漬水洗→60℃の温水で浸漬湯洗→十分に水洗後→水を良く切る→乾燥の工程で無電解金メッキを行ない、それらの試験片について外観の変化の観察及びセロハンテープを用いたピーリング試験を行ない塗膜を評価した。評価は、以下の基準で行った。
○:外観変化もなく、レジストの剥離も全くないもの。
△:外観の変化はないが、レジストの剥離がわずかに見られるもの。
×:レジストの浮きやメッキ潜りが見られ、ピーリング試験でレジストの剥がれが大きいもの。
【0045】
5)PCT試験
各試験片を121℃、2atm、飽和蒸気雰囲気下で100時間放置した後の塗膜の外観を目視で判断した。評価は、以下の基準で行った。
○:塗膜にふくれ、剥れがないもの。
×:ふくれ、剥れのあるもの。
【0046】
6)可撓性試験
JIS K5400に準じて、JIS B7729A法に規定するエリクセン試験機を用いて、前記の各感光性樹脂組成物をボンデ鋼板上に塗布→乾燥→露光→現像→加熱して試験片を調製した。得られた各試験片について裏面から剛球を押し出して、試験片を変形させた時に塗膜の割れおよび剥れを生じるまでの押し出し距離を測定した。評価は、以下の基準で行った。
○:剛球を押し出した距離が4mm以上で塗膜の割れおよび剥がれが生じなかったもの。
△:剛球を押し出した距離が2mm以上4mm未満までで塗膜の割れおよび剥がれが生じなかったもの。
×:剛球を押し出した距離が2mm未満で塗膜の割れおよび剥がれが生じたもの。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表2及び表3の評価結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物は、従来公知のエポキシ系の感光性樹脂組成物に比べて、アルカリ現像性に優れ、その硬化物は密着性、半田耐熱性、無電解金メッキ耐性、耐PCT性、可撓性に優れている。
【0050】
【発明の効果】
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像性に優れ、且つ硬化後の塗膜は、密着性、半田耐熱性、無電解金メッキ耐性、耐PCT性、可撓性に優れプリント配線基板用のソルダーレジストインクとして好適に用いられる。
Claims (8)
- フェノール樹脂(a)の水酸基に、分子中にラジカル重合性不飽和基と1つのエポキシ基を有する化合物(b)及び分子中にアルコール性水酸基と1つのエポキシ基を有する化合物(c)を反応させて得られる硬化性樹脂(反応物I)中の水酸基に、更に飽和及び/または不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる硬化性樹脂。
- フェノール樹脂(a)の水酸基に、分子中にラジカル重合性不飽和基と1つのエポキシ基を有する化合物(b)及び分子中にアルコール性水酸基と1つのエポキシ基を有する化合物(c)を反応させて得られる硬化性樹脂(反応物I)中の水酸基に、飽和及び/または不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて硬化性樹脂(反応物II)を得て、更にこの硬化性樹脂(反応物II)のカルボキシル基1当量に対し、分子中にラジカル重合性不飽和基と1つのエポキシ基を有する化合物(b)を0.1〜0.7モルとなる割合で反応させることを特徴とする硬化性樹脂。
- フェノール樹脂(a)のフェノール性水酸基1当量に対して、化合物(b)及び化合物(c)を全体で0.8〜1.2モルとなる割合で、且つこのうち化合物(c)を0.05〜0.5モルとなる割合で反応させることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂。
- 反応物Iの水酸基1当量に対し、飽和及び/または不飽和多塩基酸無水物(d)を0.05〜0.7モルとなる割合で反応させることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂。
- (A)請求項1及び/または請求項2の硬化性樹脂、
(B)エポキシ樹脂、
(C)光重合開始剤、及び
(D)希釈剤
を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。 - 希釈剤が、重合性不飽和化合物及び/または溶剤であることを特徴とする請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
- (A)硬化性樹脂が組成物の10〜80重量%、
(B)エポキシ樹脂が組成物の1〜50重量%、
(C)光重合開始剤が組成物の0.5〜20重量%、及び
(D)希釈剤が硬化性樹脂100重量部に対して10〜200重量部、
であることを特徴とする請求項5または6に記載の感光性樹脂組成物。 - 請求項5〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物をプリント配線板に塗布して塗膜を形成し、露光し、現像した後、紫外線の照射及び/または加熱によって硬化させることを特徴とする硬化塗膜の形成方法。
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