ところで、緑化しようとする屋上等のスペースは、その形状が多種多様であり、その中で最大限のスペースを有効に利用し緑化したいが、前記特許文献3に記載の見切り材、保水プレート、これらを使用したシステム庭園(花壇)を使用すると、保水プレートおよび見切り材が固定された寸法内でしか使用することができず、任意な部分でカットして使用すると両者を嵌合させる部分は失われて結合することができない。
また、特許文献1に記載の中空ブロックは凸部と凹部からなる嵌合手段により連結されるが、連結の方向が、土壌の充填による土圧を受ける方向と一致するため、嵌合部分が抜けやすいという問題点がある。嵌合部分の抜け止めのためボルト等で固定すると、中空ブロックは比較的薄いプラスチックであるため土圧により撓んでしまうという問題点もあった。さらに、特許文献2の連結後に植物栽培用外囲ブロック上に、例えば人が乗ると、下側のベースブロックが潰れて変形するという問題点もあった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ベースとなる保水排水基盤材と見切り材との固定状態が強固で、設置後に見切り材上に人が乗っても保水排水基盤材が潰れて連結の外れる虞の少ない緑化構造物を提供することにある。
前記目的を達成すべく、本発明に係る人工地盤上での緑化方法は、人工地盤上に保水用凹部を有する保水排水基盤材と、該保水排水基盤材の外周を囲む見切り材とを用いて植物を植栽する緑化方法であって、保水排水基盤材を緑化しようとするスペースに合わせて連結し、連結された外周部に位置する保水排水基盤材の外周辺に沿って上方に突出する見切り材を、その底面の一部が人工地盤上に対接し、他部が保水排水基盤上に位置するように固定して該保水排水基盤材の外周を囲み、保水排水基盤材と見切り材により画成された空間内で植物を植栽することを特徴としている。
前記のごとく構成された本発明の人工地盤上での緑化方法は、植物を植栽しようとするスペースに合わせて保水排水基盤材を水平方向に連結し、外周部に位置する保水排水基盤材の外周辺に沿って上方に突出する見切り材を、その底面の一部が人工地盤上に対接し、他部が保水排水基盤上に位置するように固定されて一体化し、見切り材は保水排水基盤材に対して片乗り構造となって囲んでいるため、見切り材上に人が乗っても見切り材が変形しにくく、見切り材が外れることが防止される。
また、見切り材を連結するとき、外周部に位置する保水排水基盤材を、前記スペースに合わせて外周辺に沿って平行に切断することが好ましい。このように構成すると、植物を植栽しようとするスペースに合わせて保水排水基盤材を連結し、スペース内に納まるように保水排水基盤材を縦横方向に切断し、切断した保水排水基盤材の外周辺に沿わせて見切り材を固定することで、保水排水基盤材の外周を見切り材で囲った緑化構造物のベースとなる部分を形成することができ、このベース部分により画成された空間内で植物を植栽することができる。
また、本発明に係る人工地盤上での緑化方法の好ましい具体的な態様としては、前記見切り材は、前記他部の下面に係合突部が形成され、該係合突部は、保水排水基盤材の保水用凹部に嵌合することによって固定されることを特徴としている。保水用凹部に直接嵌合してもよく、保水用凹部から突設した突起部同士の間に嵌合してもよい。この構成によれば、人工地盤上に載置された保水排水基盤材の保水用凹部に、見切り材の底面他部の下面に形成された係合突部を嵌合させるだけで、両者を容易に連結して固定することができ、固定状態が安定すると共に施工時間を短縮することができる。
さらに、本発明に係る人工地盤上での緑化方法の好ましい具体的な他の態様としては、前記見切り材の上部に嵩上げ材を連結し、見切り材および嵩上げ材は、互いに連通する上下方向に貫通する孔を有しており、該貫通孔に上下方向に貫通する連結具を挿入して結合することを特徴としている。この構成によれば、見切り材の上部に嵩上げ材が連結されているが、上下方向に連通する貫通孔を通して、例えば軸状の連結具を挿入することで結合状態をより強固にすることができ、人が踏んで見切り材に大きな荷重が作用した場合でも、結合状態が外れることを防止できる。
また、本発明に係る緑化構造物は、人工地盤上に連結配置され上面に保水用凹部を有する多数の保水排水基盤材と、該保水排水基盤材のうち外周部に位置する保水排水基盤材の外周辺に沿って上方に突出するように立ち上げられ、その底面の一部が人工地盤上に対接し、他部が保水排水基盤上に位置するように固定された見切り材とを備え、保水排水基盤材と見切り材により画成された空間内で植物を植栽することを特徴としている。
前記のように構成された緑化構造物は、人工地盤上に載置されて連結された保水排水基盤材の外周部に沿って見切り材を突出状態に立ち上げ、この見切り材は底面の一部が人工地盤上に対接し、底面の他部は保水排水基盤材上に位置して固定されるため、固定状態が安定して予期しない力が作用しても離脱することがない。また、緑化される部分が見切り材で外周を囲まれるため、植物等が外側にはみ出ることが防止されて輪郭が整然として見栄えが向上する。
本発明に係る緑化構造物の好ましい具体的な態様としては、前記見切り材は、保水排水基盤上に位置する底面の他部に係合突部が形成され、該係合突部が保水排水基盤材上の保水用凹部に嵌合して固定されることを特徴とする。この構成によれば、見切り材が保水排水基盤材の保水用凹部に嵌合して固定され、固定状態が安定して離脱が防止される。また、固定作業が容易で施工時間を短縮できる。
また、前記見切り材は上部に連結部を備えており、該連結部を用いて見切り材の上部に嵩上げ材を連結することが好ましく、見切り材は、上下方向に貫通する連結孔を備え、前記嵩上げ材は前記連結孔と連通する貫通孔を備え、連結孔と貫通孔とに連続して連結具を挿入することで、見切り材と嵩上げ材とを結合すると好適である。このように構成すると、緑化構造物の土壌の量を容易に増やすことができ、大きな樹木等の植物を容易に植栽することができる。そして、嵩上げ材と見切り材との結合状態を、連結具を挿入して強固にすることができる。
保水排水基盤材、見切り材および嵩上げ材は、発泡樹脂材で形成されることが好ましく、特に発泡ポリスチレン樹脂が好適である。この構成によれば、軽量な保水排水基盤材、見切り材および嵩上げ材を用いて、強度に優れ、施工が容易な緑化構造物を作製することができる。
さらに、前記の緑化構造物において、連結された保水排水基盤材および見切り材で画成された空間の中間部に、嵩上げ材を、その下面に形成された係合突部を前記保水用凹部に嵌合させて固定し、画成された空間を分割することができる。このように構成すると、分割された空間ごとに例えば異なる植物を植え付けることができ、趣向の異なる緑化構造物を作製できる。
本発明に係る保水排水基盤材と見切り材との結合構造は、人工地盤上に植栽する緑化方法で使用する保水排水基盤材と、該保水排水基盤材の外周に連結される見切り材との結合構造であって、保水排水基盤材は、下方に人工地盤の表面に対接する対接突部が形成されると共に、上方に保水用凹部と、この保水用凹部内に所定のピッチで連続して突設された突起部とが形成され、見切り材は、前記表面に対接する設置面と、保水排水基盤材の上方に位置する係合面とを備えており、該係合面には前記突起部同士の間に嵌合する連結突部が下方に向けて突設されていることを特徴とする。
前記のように構成された保水排水基盤材と見切り材との結合構造は、人工地盤上での緑化を、簡単な施工で達成できるため、施工時間を短縮できる。また、保水排水基盤材と見切り材との固定状態が安定しており、外力が加わっても離脱することを防止できる。さらに、外周が見切り材で囲まれており、植物の根がはみ出ることが防止され、緑化構造物の見栄えを向上できる。
本発明によれば、人工地盤上での緑化構造物において、多数の保水排水基盤材を連結し、連結された保水排水基盤材の外周辺に沿って上方に突出する見切り材を固定して、保水排水基盤材の外周を囲んでいるため、外周部に植え付けられた植物が周囲に広がることがなく、輪郭部を整然と区切ることができる。また、見切り材は保水排水基盤材上と人工地盤上の両方に対接して固定されるため、見切り材の上に人が乗ってもずれることがなく、変形して外れることも防止できる。
本発明の緑化構造物は、見切り材の上部に嵩上げ材を連結し、画成された内部空間の容積を増やして大きい樹木等の植物を安定して植生することができる。画成された空間の嵩上げ材で分割することで、異なる種類の植物等を植え付けることができるので、趣向の異なる緑化構造物を作製することができる。
以下、本発明に係る人工地盤上での緑化方法の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る緑化方法で使用する保水排水基盤材の平面図、右側面図、正面図A−A線、B−B線、C−C線に沿う断面図、図2は、図1の保水排水基盤材の背面図、図3は、保水排水基盤材の上方および下方から見た斜視図、図4は見切り材の上方および下方から見た斜視図、図5は見切り材の平面図、右側面図、正面図、D−D線断面図、図6は保水排水基盤材と見切り材との嵌合状態を示す斜視図、図7はコーナー型見切り材の上方および下方から見た斜視図、図8はコーナー型見切り材の平面図、右側面図、正面図、E−E線断面図、図9は嵩上げ材の上方および下方から見た斜視図、図10は嵩上げ材の正面図、F−F線断面図である。
先ず、本実施形態で使用する保水排水基盤材について、図1〜3に基づいて詳細に説明する。保水排水基盤材10は全体が発泡樹脂材で形成され、例えば発泡ポリスチレンの一体成形品である。保水排水基盤材10は、平面視で正方形状をしており、1辺の有効長さLが例えば30cm程度、あるいは50cm程度の正方形で形成されている。ここでいう有効長さとは、保水排水基盤材10を水平方向に順次並べて連結したときに、連結部分等の突出部を除いて増やすことができる実質的な長さLのことをいう。
保水排水基盤材10はベースとなる正方形の板材の上方に外周を囲む外周壁部11が形成されており、その内部が保水用凹部12となっている。保水用凹部12内には円柱状の突起部13が所定のピッチで縦横に配列されている。本実施形態では突起部13は外周壁部11に接するものを含めて64個形成され、外周壁部11と突起部13とは同じ高さに設定されている。この構成により、保水排水基盤材10の上面に後述する透水性シートを載置したとき、この透水性シートが平坦となるように形成されている。保水排水基盤材10は保水用凹部12内に所定量の水を確保できると共に、外周壁部11以上の給水があると溢れ出て排水する機能を有しており、この実施形態で植栽される植物に水を供給するものである。
保水用凹部12内に配列された円柱状の突起部13は、保水排水基盤材10の1辺の有効長さをLとすると、L/8のピッチP1で縦横に配列されており、外周辺と外側に位置する突起部との間隔はP1/2(=L/16)に設定されている。すなわち、Lを30cmとすると、外周辺と外側に位置する突起部との間隔は18.75mmに設定され、突起部同士の縦横のピッチPが37.5mmに設定されている。円柱状の突起部は上端の直径が22mm程度で、下端の直径が24mm程度の抜き勾配が付けられた略円柱状をしている。外周に位置する突起部13は外周壁部11と一体化した状態で接続している。したがって、保水用凹部12に貯留される実質的な保水量は、保水用凹部12の容積から突起部13の体積を引いた値となる。
このように、外周壁部11で囲まれた内部に多数の円柱状の突起部13が突出して配列され、突起部の周囲の窪みが保水用凹部12となっている。保水用凹部12の底面には中央部に向けて僅かな勾配が付けられ、中心の大きい半径の中央凹部14が最下面となっている。また、保水用凹部12には、中央凹部14に向かって横方向と、縦方向に4つの丘状部12aが形成されている。保水用凹部12の外周の深さは10〜12mm程度であり、中央凹部14の深さは18〜20mm程度に設定されている。中央凹部14には多孔質セラミック製の導水用材15が配置される。導水用材15の高さは突起部13の高さと略同じ高さとなることが好ましい。4つの丘状部12aは、保水排水基盤材10の曲げ強度向上に効果がある。
保水排水基盤材10の下面には、これを載置する人工地盤1等の載置面(表面)と対接する対接突部16が突設されている。この対接突部は底面視で正方形の形状をしており、縦横で同じピッチで突設されている。この対接突部16により、保水排水基盤材10は人工地盤1上に載置されたときに隙間が形成され、保水用凹部12から溢れた水、雨水、散水が人工地盤の水勾配に沿って排水できるように構成されている。
保水排水基盤材10の外周には連結部17が形成されている。連結部はアリ突部17aと、アリ溝部17bが交互に形成され、隣接して載置される保水排水基盤材10のアリ溝部とアリ突部が相互に嵌合可能な形状となっている。図1において、上方と右方のアリ突部およびアリ溝部はベースとなる正方形部分から突出しており、下方と左方のアリ突部およびアリ溝部は正方形部分の下面側に形成されている。
つぎに、前記の保水排水基盤材10に、一部が載置された状態で連結固定される見切り材20について、図4〜6を参照して説明する。見切り材20は、縦横に連結された多数の保水排水基盤材10の外周辺に沿って固定され保水排水基盤材の外周を囲み、画成された空間内で植物を植栽するものである。すなわち、保水排水基盤材の上に載置、投入される土壌の外部への流出を防止する機能と、植え付けられた植物の根が外部へ延出するのを防止する機能を有し、保水排水基盤材10と同様に発泡ポリスチレン等の発泡樹脂材から形成されている。
見切り材20は底面のおよそ半分(底面の一部)が設置される人工地盤1の表面に対接する設置面21となっており、残りの半分(底面の他部)は保水排水基盤材10の上部に位置し、設置面21より上方に位置する係合面22となっている。見切り材20は平面視において、長手方向に直角な両端面20a,20a間の縦寸法はLに設定され、横寸法はL/2に設定されている。見切り材20の上部には8個の円形穴の連結凹部23が陥没して形成されている。この連結凹部23は、L/4のピッチP2で形成され、外周辺からの距離はP2/2(=L/8)に設定されている。連結凹部23の直径は30mm程度に設定されている。
この係合面22の下面には保水排水基盤材10の保水用凹部12に嵌合する円柱状の係合突部24が形成されている。この係合突部24は係合面22の下側に4個形成され、そのピッチP2は前記のL/4に設定され、外周辺からの距離はP2/2(=L/8)に設定されている。また、係合面22と設置面21とをつなぐ垂直面25から係合突部24までの距離はP2/2(=L/8)に設定されている。係合突部24の直径は30mm程度に設定されている。したがって、保水排水基盤材10の外周が垂直面25に対接する状態で、1つの係合突部24は図10、図13cに示されるように、保水用凹部12内の4つの突起部13の間に圧入状態で嵌合し、保持される構成となっている。見切り材20には下方に開口する2つの円柱状の肉盗み穴が形成されている。
見切り材20の上面に形成された連結凹部23の軸心を通るように連結孔26が形成されており、この連結孔は見切り材20を上下方向に貫通している。この結果、連結孔26は係合面22に形成された係合突部24の軸心を貫通して下方に開口する。見切り材20の係合面22側の外周垂直面は傾斜面で連続する凹面27となっており、保水排水基盤材10の上部に透水性シート3を敷いたときにこの凹面27内に入り込むように構成されている。見切り材20の設置面21には、2つの排水溝部28が形成されている。この見切り材20は自由に切断することができ、長手方向に直角に連結凹部23,23の中間で切断することが好ましい。
前記した見切り材20と略同形状のコーナー型見切り材20Aは、保水排水基盤材10のコーナー部に対応して連結固定されるものであり、図7,8に示されるように底面の設置面21がL字状に直角に形成されており、凹面27aは長手方向に略半分程度形成されて残りの半分は平坦面20bとなっている。そして、この平坦面20bに他の見切り材20の端面20aが接合することで、見切り材20とコーナー型見切り材20Aとが保水排水基盤材10のコーナー部から隙間の無い状態で立ち上げられるように構成される。コーナー型見切り材20Aも、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂材から形成され、底面の一部である設置面21が人工地盤1に対接し、底面の残りの部分は保水排水基盤材10の上に載置される係合面22であり、3つの係合突部24が保水用凹部12内の4つの突起部13の間に嵌合して固定される形状となっている。コーナー型見切り材20Aにも、2つの円柱状の肉盗み穴が形成されている。
つぎに、見切り材20,20Aの上部に連結される嵩上げ材30について、図9,10を参照して説明する。嵩上げ材30は全体が発泡樹脂材で形成され、例えば発泡ポリスチレンの一体成形品である。嵩上げ材30は、1つの機能として、見切り材20の上部に必要な数だけ連結して保水排水基盤材10の外周辺からの立ち上がり量を増やして、画成される空間の容積を増やし、例えば後工程で投入される土壌の量を増やして、大きい植物を植栽することができるものである。また、もう1つの機能として、連結された保水排水基盤材10,10…の中間部の上部に連結して画成された空間を分割して仕切り材としての機能をさせることができるものである。嵩上げ材30にも下方開口の2つの肉盗み穴が形成されている。
嵩上げ材30は平面視で長手方向の寸法がLに設定され、幅はL/2に設定されている。嵩上げ材30の上面には見切り材20,20Aと同様な連結凹部31が8個所に形成され、ピッチP2はL/4で、外周辺からの距離P2/2(=L/8)は連結凹部23と同様に設定されており、見切り材20,20Aの上部に必要な数だけ積み重ねることができる形状となっている。下面には見切り材20,20Aの連結凹部23に嵌合する円柱状の連結凸部32が8個形成されている。連結凸部32は連結凹部23と同じピッチで突出形成され、外径は連結凹部23の内径より僅かに大きく設定され、嵌合時には圧入状態となる。
前記の如く構成された本実施形態の保水排水基盤材10,10…と、見切り材20,20Aとを用いた緑化構造物の組立て動作について、図11〜16を参照して以下に説明する。なお、保水排水基盤材10、見切り材20、コーナー型見切り材20A、および嵩上げ材30は1つのみを詳細に図示し、残りは省略している。屋上やバルコニー等の人工地盤1上の緑化しようとするスペース上に、先ず、図16に示すように根留めシート2を敷設する。この根留めシート2は、例えばポリエチレンフィルムと発泡ポリエチレンシートをラミネートしたものを使用し、後工程で土壌に植栽される植物の根が貫通するのを防止し、根が人工地盤1の目地等の隙間に進入するのを防止するものである。なお、根留めシート2は必ずしも必要でなく、人工地盤1上に直接、保水排水基盤材10,10…を載置し、連結してもよい。
この根留めシート2の上部に保水排水基盤材10,10…を載置し、図11に示すように水平方向に連結して配置する。外周の連結部17のアリ突部17aをアリ溝部17bに嵌合させて、縦横方向に順次連結し、緑化しようとするスペースを保水排水基盤材10,10…で覆う。保水排水基盤材10,10…は下面の対接突部16が人工地盤1の表面に根留めシート2を挟んで対接し、排水空間が形成される。したがって、降雨時に排水は、この空間を利用して人工地盤1の排水勾配に沿って流れ、見切り材20の排水溝部28を通して排水されため、溜まり水による水の腐敗等を防止できる。
緑化しようとするスペースの人工地盤1上に保水排水基盤材10を、縦方向と横方向に連結して載置したあと、外周部に位置する保水排水基盤材10から突出している連結部17を切断する。連結部17はベースとなる正方形部からアリ突部17aと、アリ溝部17bとを形成する発泡ポリスチレン樹脂部分が突出しているので、この突出部分を切断線29aに沿ってカッター等を用いて切断し、外周面を平坦とする。この切断は、正方形部の2辺に沿わせてカッターを移動するだけの操作で容易に切断できる。突出している連結部17を切断して平坦とすることで、見切り材20,20Aを連結できる状態となる。また、連結部17が下方に隠れている2辺では、そのままの状態で見切り材20,20Aを連結できる。保水排水基盤材10は発泡樹脂製で、外周辺に沿って平行にカッター等を用いて自由に切断することができる。
このあと、連結された保水排水基盤材10の外周辺に沿って見切り材20、コーナー型見切り材20A、および必要に応じて嵩上げ材30を固定する。図13に示すように、見切り材20の垂直面25を保水排水基盤材10の外周辺に対接させ、係合面22を保水排水基盤材10の上部に位置させ、上方から押圧すると、見切り材20,20Aの係合面の下面から突出する円柱状の1つの係合突部24が保水排水基盤材10の上面から突出する4つの円柱状の突起部13に囲まれた凹部に嵌合し垂直方向に連結され、見切り材20では合計4個の係合突部24が突起部13の間に挟まれて保持され、コーナー型見切り材20Aでは合計3個の係合突部24が突起部13の間に挟まれて保持されるため、強固に固定される。
そして、見切り材20、コーナー型見切り材20Aを連結された保水排水基盤材10,10…の全ての外周辺に固定すると、保水排水基盤材は外周が見切り材で囲まれ、保水排水基盤材の上部には植物を植栽する空間である凹部が形成される。2種類の見切り材20,20Aの設置面21は人工地盤1の根留めシート2上に対接する。見切り材20,20Aも、端面に平行に自由に切断することができるため、保水排水基盤材10の縦寸法、横寸法に合わせて切断することができる。
このように、保水排水基盤材10に片側が乗せられた状態で見切り材20,20Aが固定され、保水排水基盤材10の突起部13の間に見切り材20,20Aの係合突部24が嵌合するため固定状態が安定し、見切り材の上部に人が乗っても固定状態が離脱する虞が少ない。また、後工程で、保水排水基盤材10,10…の上部に土壌が投入されたとき、片乗り構造で見切り材20や、コーナー型見切り材20Aが安定しているため、土圧で見切り材が外れる虞が少ない。
ついで、見切り材20,20Aの上部に嵩上げ材30が積み重ねられて連結される。見切り材20や、コーナー型見切り材20Aの上部に形成された8個の連結凹部23内に嵩上げ材30の連結凸部32が圧入状態に嵌合し、強固に連結することができるため外力が加わっても離脱しにくい。このように連結されると、見切り材の連結孔26と嵩上げ材30の貫通孔33とは連通し、両方の孔を貫通するように軸状の連結具35を挿入することができる。
連結具35は連結孔26および貫通孔33が断面円形の場合は円柱状のものが好ましく、角孔の場合は角柱状が好ましい。連結具35はどのような材料で形成してもよく、合成樹脂製、金属棒等、適宜のものを使用でき、必要に応じて接着剤で固定してもよく、圧入状態で挿入してもよい。また、連結具35の長さは、2つの連結孔と貫通孔の接合部分で挿入されていれば短くてもよい。連結具35を挿入することで、見切り材20,20Aと嵩上げ材30との結合は強固となり離脱が防止される。嵩上げ材30は必要な高さだけ積み重ねることができる。嵩上げ材30を複数段積み重ねるときには、連結具35は全てに連通するように長いものを使用することが好ましい。
緑化しようとするスペース上に、連結された正方形状の保水排水基盤材10,10…が合致しない場合は、図14に示すようにスペースに合わせて保水排水基盤材10を水平方向の切断線29b、あるいは垂直方向の切断線29cに沿って切断し、保水排水基盤材10Aとすることで所望のスペースに合わせることができる。保水排水基盤材10を切断するときは、保水排水基盤材の上面から突出する突起部13同士の中間を外周辺に沿って平行に切断する。平行に並んでいる2列の突起部13の中心で切断すれば、どこの中心で切断しても上部に見切り材20,20Aを嵌合させて固定することができる。このため縦方向、横方向に自由に切断することができ、緑化したいスペースに確実に合致させることができる。
この場合は、積み重ねられる見切り材20,20Aは図15に示すように切断され、連結された保水排水基盤材10,10…の外周辺に沿って、一部が保水排水基盤材上に乗った状態で固定される。すなわち、見切り材20,20Aは、切断された保水排水基盤材10Aに合わせて長尺方向に直角に切断され、見切り材20は見切り材20Bのように短くされ、コーナー型見切り材20Aはコーナー型見切り材20Cのように短くされる。このように、保水排水基盤材10や見切り材20、コーナー型見切り材20Aを、緑化したいスペースに合わせて自由に切断して任意の面積に設定することができる。
緑化しようとするスペース上に保水排水基盤材10,10…を水平方向に連結して載置し、保水排水基盤材の外周辺に沿って見切り材20、コーナー型見切り材20Aを立ち上げて固定し外周を囲んだあと、中央凹部14に導水用材15を配置し、保水排水基盤材10,10…の上部を覆うように透水性シート3を敷設して、例えば釘等で保水排水基盤材や見切り材に固定する。透水性シート3は、この上に後工程で投入する土壌4の流出を防止し、透水力が十分にあり目詰まりしにくい不織布等が好ましい。なお、透水性シートは接着剤等により固定することもできる。
この透水性シート3は土壌4に植栽された植物の根が成長して絡み付くものが好ましい。透水性シートの材料としては、織布、不織布、樹脂繊維による網状物、複数の穴を配列した樹脂シート、金網のようなものが好適であるが、不織布は特に好ましい。透水性があって、植物の根と一体化するものが好ましい。透水性シート3は見切り材20,20Aの部分を立ち上げて凹面27に沿わせると、後工程で土壌を投入するとき透水性シートの裏側に土壌が進入せず作業が容易となる。透水性シート3は立ち上げ部分を釘等で見切り材に固定すると好ましい。
透水性シート3の上部に土壌4を載置、投入すると、透水性シート3は土壌4の重さで導水用材15の上面と密着する。土壌4の投入は、保水排水基盤材の外周が見切り材で囲まれているため容易に行える。土壌4に植物5を植栽し、土壌4の表面に必要に応じて表層材6を載置する。表層材6は土壌4の最上層に敷設することにより、土壌の飛散、流出を防ぐものであり、乾燥防止、雑草抑制の他、微生物の活動を活性化させるものである。なお、植物を植栽するとき、透水性シート3は必要であるが、表層材6は必ずしも必要でない。
前記した作業、すなわち、保水排水基盤材10を人工地盤1上に連結し、外周辺に沿って見切り材20,20Aを連結固定し、透水性シート3を敷いてから土壌4を投入し、植物5を植栽して表層材6で覆うことにより、図16に示す緑化構造物が完成する。土壌4としては土を使用してもよく、ポリスチレンフォームのリサイクル品を粉砕した人工土壌、クリンカーアッシュ、パーライト等を使用することもできる。
図示していない散水装置で供給された水を保水排水基盤材10,10…は保水用凹部12に貯留して保水する。そして、保水排水基盤材10の保水用凹部12内に貯留された水は、中央凹部14内に配置された多孔質の導水用材15を毛細管現象で上昇し、透水性シート3および土壌4に徐々に供給され、土壌4の乾燥を防止し、植え付けられた植物の根から吸収されて生育に用いられる。このため、多量の水で植物の根が常時浸され根腐れすることが防止される。保水用凹部12内の水は中心に向かう勾配により中央凹部14に集められ、多孔質の導水用材15を通して上昇して植物の根に吸収されるため、確実に植物に供給される。
導水用材として多孔質セラミック製の導水用材15の例を示したが、紐、スポンジ、発泡性合成樹脂、織布、不織布等を使用し、水の表面張力を利用して透水性シート3に水を供給するものでもよい。透水性シート3は、植物の根が絡み付いて一体化する機能を有すると共に、土壌4が保水排水基盤材10の保水用凹部12内に入り込むのを防止して、透水性シート3と保水用凹部12の水との間に空間を確保する機能を有する。これにより、植物5の根の呼吸は確保されて好ましい。また、透水性シート3は保水用凹部12内の水が湿気となって植物5の根に効果的に到達するのを助けると共に、雨水や植物への散水が土壌4内に過剰に滞留するのを防止する機能をも有する。
このように、本実施形態の緑化構造物は、多数の保水排水基盤材10,10…を水平方向に連結し、連結された保水排水基盤材の外周辺に沿って上方に突出する見切り材20やコーナー型見切り材20Aを固定しているため、外周部に植え付けられた植物5が周囲に広がることがなく、輪郭部を整然と区切ることができる。また、植物5が成長しても、見切り材で周囲を囲まれているため、根が外部に露出して美観を損ねることが少なく、見栄えを向上させることができる。さらに、保水排水基盤材10,10…と見切り材20,20Aとの固定状態が安定して強固なため、外力が加わっても変形して外れることを防止できる。
つぎに、本発明の他の実施形態を図17,18に基づき詳細に説明する。図17は本発明に係る人工地盤上で緑化する緑化構造物の他の実施形態の平面図、図18は図17のG−G線端面図である。なお、この実施形態は前記した実施形態に対し、見切り材で囲まれて画成された空間内を、嵩上げ材で分割することを特徴とする。そして、他の実質的に同等の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
この実施形態では、連結された保水排水基盤材10,10…で画成された空間の中間部に、嵩上げ材30A,30Bを、その下面に形成された連結凸部32を保水排水基盤材10の保水用凹部12に嵌合させて固定し、画成された空間を分割して、2つの空間S1,S2としている。このように画成された空間を複数に分割することで、それぞれの空間に異なる種類の植物を植栽する等の変更が可能となり、趣向の異なる緑化構造物とすることができる。嵩上げ材30Aは、見切り材20,20Aの上部に積み重ねられる嵩上げ材30と同一のものであり、嵩上げ材30Bは嵩上げ材30Aを長手方向と直角に切断して短く形成したものである。
嵩上げ材30Aの下面から突出する1つの連結凸部32は、保水排水基盤材10の保水用凹部12内に突設された4つの突起部13の間に嵌合して保持され、合計8個の連結凸部32が突起部13の間に嵌合して保持されるため、嵩上げ材30A,30Bは保水排水基盤材10の上部に安定して連結される。空間を分割して仕切るとき、投入される土壌の量により仕切り材として機能する嵩上げ材の高さが必要な場合は、複数段に積み重ねることができる。これにより、植栽される植物や投入される土壌を確実に仕切ることができる。積み重ねられた嵩上げ材30A,30Bも、連結凹部31内に形成された貫通孔33を通して連結具35を挿入して、見切り材との結合状態を強固にでき、見切り材20,20Aや嵩上げ材30,30A,30Bに思わぬ力が加わっても保水排水基盤材10からの離脱が防止できる。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、保水排水基盤材10の形状は正方形を基本とした例を示したが、長方形を基本とした形状でもよく、保水排水基盤材同士を連結できる形状であればどのような形状でもよい。保水排水基盤材は水平方向に連結する例を示したが、緩やかな傾斜面に沿って連結することもできる。
また、保水排水基盤材10は、保水用凹部12を有していればどのような形状であってもよい。保水排水基盤材10は軽量性や断熱性の点から樹脂発泡体の一体成形品、特に成形性や強度の点から発泡ポリスチレンの成形品が好適であるが、設置の対象となる人工地盤が重量の制限を受けない場所であるときには、非発泡の合成樹脂、コンクリートや気泡モルタル等で製造したものでもよい。
見切り材20,20Aと嵩上げ材30との結合状態を強固にするため、見切り材に形成した連結孔26と嵩上げ材30に形成した貫通孔33とは、連結凹部23と連結凹部31の中心に形成した例を示したが、これに限られるものでない。すなわち、見切り材20,20Aの平坦部に連結孔を上下方向に形成し、この連結孔に連通するように嵩上げ材30の平坦部に貫通孔を形成してもよい。また、連結孔26はそれぞれの角部の4個の連結凹部に対して形成する例を示したが、8個の連結凹部全てに対応して形成してもよく、個数はいくつでもよい。
保水排水基盤材に、片乗り状態で固定される見切り材は、コーナー型見切り材と共に角部で直角に接合する例を示したが、直角に接合することに限られるものでない。例えば、コーナー部に位置する保水排水基盤材を面取りするように45度の方向で切断し、45度の傾斜辺に合わせて、図示していない45度コーナー型の見切り材を用いて接合するように構成してもよい。また、45度の傾斜辺に合わせて、図示していないアール型の見切り材を用いて円弧による接合で構成してもよい。さらに、出隅コーナー部に限らす、入隅コーナー部に対しても、同様に面取り、あるいはアール取りしてもよい。このように、見切り材は水平方向に連結された保水排水基盤材の外周辺に沿って上方に立ち上がるように突出すれば、形状は問わない。
保水排水基盤材と見切り材により画成された空間内で植物を植栽する例として、透水性シートと、土壌と、表層材を使用する例を示したが、他の方法で植物を植栽してもよい。例えば、土壌を使用せず、透水性シートと植物の生育に必要な養分等を含有させた植生シートを使用し、植物の根で透水性シートと植生シートを一体化させて、植物を育成させるようにしてもよい。
1:人工地盤、2:根留めシート、3:透水性シート、4:土壌、5:植物、6:表層材、10:保水排水基盤材、11:外周壁部、12:保水用凹部、13:突起部、14:中央凹部、15:導水用材、17:連結部、17a:アリ突部、17b:アリ溝部、20,20B:見切り材、20A,20C:コーナー型見切り材、21:設置面、22:係合面、23:連結凹部、24:係合突部、26:連結孔、30,30A,30B:嵩上げ材、31:連結凹部、32:連結凸部、33:貫通孔、35:連結具