JP4888157B2 - 多層シート材、コンクリート用防食板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、特許文献1に示す防食パネルには、次の問題点があった。
(1)防食パネルを連続成形ラインで製造する場合、ポリマーセメント層は硬化に時間がかかるので、あらかじめ基材層にポリマーセメントを塗布・硬化させた前段積層材を事前に作ってロール状にしておくことが必要であるが、ポリマーセメント層は或る程度の硬さを持っているので、あまり小径には巻けず、大径のロール状としなければならず、大きいスペースを必要とする。また、その前段積層材を引き出し、走行させながらその片面にFRP層を連続成形してゆく際、ポリマーセメント層に欠けが生じて粉塵を生じやすく、このため、作業環境を悪化させる恐れがあり、粉塵対策が必要となる。
(2)防食パネルの梱包・輸送時や施工時にも、ポリマーセメント層に欠けが発生して粉塵が発生することがあり、運搬性や作業環境性が悪い。
(3)また、この防食パネルはポリマーセメント層が風化するとコンクリートとの接着性に問題が発生する場合がある。
(1)防食層である耐食性シートに孔が開いている為、孔の部分は接着剤と不織布だけで構成されており、防食保護膜が形成されていない事になるので、防食性に劣る。
(2)耐食性シートと不織布の接合を施工現場で接着剤により行う為、接着剤の塗布むらや塗布不足等による接着不良箇所が発生し、竣工後に未接着箇所の膨れや剥離が発生する。
(3)軟質な耐食性シートを面状ファスナ等で型枠に仮止めするので、面状ファスナ等を固定した部分だけ防食層の表面に段差が出来てしまうので仕上がりが悪く、段差部分は通水抵抗が異なるので、通水時に応力が発生し、膨れや剥離が発生する原因となる。
(4)耐食性シートと不織布の接合を施工現場で接着剤により行う為、接着剤が不織布に浸み込み過ぎて、コンクリート構築物との接合面まで浸み出してしまい、コンクリート構築物と不織布との充分な接着力が得られない。
(1)コンクリート製構造物に対する接着性は熱可塑性樹脂繊維製の織編物のアンカー効果で得ているが、モルタルに対するアンカー効果を持つ素材に織編物を使った場合では、織編物の織目や編目にセメントの粒子が入り込み難い。その為、ポリマーセメントなどの様に特殊な配合のセメントを使わないとコンクリート構築物に対して充分な接着力が得られない。
(2)また、上記のモルタルに対するアンカー効果を持つ素材では、コンクリート接合面に対するせん断方向へのアンカー効果や、コンクリート接合面の変位に対する緩衝性に劣るため、コンクリート構築物に亀裂や変形などの変位が発生すると、防食パネルがコンクリート構築物から剥離してしまう。
(3)繊維補強されたポリオレフィン系樹脂からなる芯材は、補強用短繊維と粉体のマトリックス樹脂(熱可塑性樹脂)を湿式抄紙法で原料シートに抄造し、該原料シートをマトリックス樹脂が溶融する温度で熱プレスする事で芯材を融着して形態を維持している。この方法では、粉体のマトリックス樹脂を完全に溶融させられないので、成形された芯材には気密性や防水性が得られない。その為、芯材の表面に厚さ0.1〜1.5mmの耐食性樹脂フィルムを融着させる事で気密性や防水性を得ている。しかし、通水面側の防食層に用いるには、耐食性樹脂フィルムが薄過ぎて耐久性に欠ける。
(4)また、上記の芯材では、防食パネルの表面に補強用短繊維の目(段差)が出る為、平滑性が得られず、通水抵抗になるだけでなく、該通水抵抗によってコンクリート接合面から剥離する方向に力が働くので、剥離しやすく、耐久性に劣る。
また、本発明のコンクリート用防食板の製造方法は、第1不織布層、第2不織布層の少なくとも一方が、ニードルパンチ加工により起毛され、直径が0.15mmφ以上のニードルパンチ孔が開いている短繊維不織布で構成されている、前記第1不織布層と第2不織布層の間にコンクリートに対するバリヤー効果を有する無孔のフィルム層を介在させて積層し、一体化させて多層シート材を得る工程と、該多層シート材の、前記ニードルパンチ孔が開いている不織布層とは反対側の不織布層の表面にFRP層を成形する工程を有するという構成としたものである。
(1)多層シート材の作成
図1に示す第1不織布層2として、目付70g/m2 のビニロン繊維製不織布を、第2不織布層3として目付30g/m2 のビニロン繊維製不織布を用意した。
第1不織布層2用の目付70g/m2のビニロン繊維製不織布には、密度60個/cm2 のニードルパンチ加工を施 し、直径が0.23mmφのニードルパンチ孔5を設けると同時に、不織布の構成繊維6を不織布表面に引き出して起毛させた。
次いで、ホモタイプのPBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)を材料に用いてTダイ法で厚さ0.2mmのフィルム層4を成形する工程で、押し出した未硬化状態のフィルムの両面に前記で作成した2種類の不織布を積層し、圧着することにより、フィルム層4の作成と、そのフィルム層4と両側の不織布層2、3の一体化を同時に行い、図1に示す形態の多層シート材1を作成した。
図5に示すFRPの連続成形ラインにおいて、ライン速度 0.85m/minで走行する ポリエチレンテレフタレート製の第1のキャリアフィルム11(ユニチカ株式会社製、厚さ25μm)上に未硬化の不飽和ポリエステル樹脂液(大日本インキ工業株式会社製)及びガラス繊維(日東紡績株式会社製、平均直径0.02mm、平均長さ50mmのガラス繊維のマット)を供給し、ガラス繊維混合不飽和ポリエステル樹脂液層13A(厚さ2〜3mm程度)を形成した。次に、多層シート材1を第1のキャリアフィルム11上のガラス繊維混合不飽和ポリエステル樹脂液層13A上に、ニードルパンチ加工を施していない第2不織布層3がガラス繊維混合不飽和ポリエステル樹脂液層13Aと接するように重ね合わせ、更にその上に第2のキャリアフィルム21(ユニチカ株式会社製、厚さ25μm)をかぶせた後、上下のスクイズローラ18の間に送って挟み込み、密着させると共にガラス繊維混合不飽和ポリエステル樹脂液層13Aを脱泡させ、厚さを約2.6mmに調整した後、150°Cに設定している硬化炉19内に送り込み、炉内を30分間走行させることで、不飽和ポリエステル樹脂液13Aを加熱、硬化させ、一体化した積層体とした。走行して硬化炉19から出てきた積層体から第1及び第2のキャリアフィルム11、21を剥がして巻き取り、積層体をカッターによって約1.8mの長さにカットし、幅900mm×長さ1800mmのコンクリート用防食板7(図4参照)を作成した。
上記で作成したコンクリート用防食板7を幅100mm×長さ400mmにカットしたものを型枠にコンクリート用防食板7の不織布面がコンクリートと接触するように載置して、コンクリートを厚さ100mm、打設し、1週間水中養生してコンクリート用防食板とコンクリートを接合した曲げ破壊試験体を得た。
(1)FRP板
FRP板として、厚さ2mmのガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂板(日東紡績株式会社製)を用意し、幅100mm×長さ400mmにカットした。
(2)コンクリートブロック
幅100mm×長さ400mmの型枠に、コンクリートを厚さ100mm、打設し、1週間水中養生してコンクリートブロックを作成した。
(3)試験体
前記で作成したコンクリートブロックの片面にセメントとポリアクリル酸エステル共重合体エマルジョンの混合体(固形分の混合比 1:0.5)を約1mmの厚さに塗布したものに 、前記のFRP板を圧着し、3日間大気養生することで比較例1の曲げ破壊試験体を得た。
(1)不織布貼りFRP板
FRP板として、厚さ2mmのガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂板(日東紡績株式会社製FRP板)、エポキシ系接着剤、目付150g/m2のポリエステル繊維製スパンボンド不織布を用意した。
FRP板の一方の面にエポキシ系接着剤を0.5mmの厚さで塗布したものに、スパンボンド不織布を圧着し、1日間大気養生して不織布貼りFRP板を得た。
不織布貼りFRP板を幅100mm×長さ400mmにカットした。
(3)試験体
前記の不織布貼りFRP板を型枠に不織布面がコンクリートと接触するように載置して、コンクリートを厚さ100mm、打設し、1週間水中養生して比較例2の曲げ破壊試験体を得た。
図7(A)に示すように、試験体41(又は41A)を、間隔をあけて配置されている一対の支持体42(支持体42の間隔:320mm)に、コンクリート側を上にして乗せ、上面の中央に圧縮子43によって垂直荷重Fを加え、曲げ破壊試験を行った。
この曲げ破壊試験において、比較例1で作成した試験体では、その試験体を一対の支持体42上に乗せた時点でコンクリートブロックとFRP板が完全に剥離してしまった。
比較例1は、外観上、FRP板とコンクリートブロックの間の密着性は良好に見えるが、試験体を支持体42の上に配置した時点でFRP板とコンクリートブロックが完全に剥離してしまったので、FRP板とコンクリートブロックの間の緩衝性が全く無く、耐衝撃性が無いことが確認された。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
実施例1で作成した多層シート材をコンクリートのアルカリ性を想定した強アルカリ性水溶液である水素イオン濃度がpH12の水酸化ナトリウム水溶液に30日間浸漬し、その後、取り出して状態を確認したが、外観や柔軟性に変化は見られなかった。これにより、多層シート材が十分な耐アルカリ性を備えていることが確認できた。
2 第1不織布層
3 第2不織布層
4 フィルム層
5 ニードルパンチ孔
6 繊維
7 コンクリート用防食板
8 FRP層
11 第1のキャリアフィルム
12 樹脂タンク
13 熱硬化性樹脂
13A 強化繊維混合熱硬化性樹脂液層
14 ドクターナイフ
16 強化繊維
17 含浸ローラ
18 スクイズローラ
19 硬化炉
21 第2のキャリアフィルム
23、24 ロール
25 カッター
31 型枠
32 両面テープまたは面状ファスナ
34 コンクリート
41、41A 試験体
42 支持体
43 圧縮子
45 コンクリート
46 FRP板
Claims (5)
- 第1不織布層と第2不織布層の間にコンクリートに対するバリヤー効果を有する無孔のフィルム層を介在させて積層されている多層シート材であって、前記第1不織布層、第2不織布層の少なくとも一方が、ニードルパンチ加工により起毛され、直径が0.15mmφ以上のニードルパンチ孔が開いている短繊維不織布で構成されていることを特徴とする多層シート材。
- 前記第1不織布層、第2不織布層の少なくとも一方が、熱可塑性樹脂繊維で構成されていることを特徴とする請求項1記載の多層シート材。
- 前記コンクリートに対するバリヤー効果を有するフィルム層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載の多層シート材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の多層シート材の、前記ニードルパンチ孔が開いている不織布層とは反対側の不織布層の表面にFRP層が接合して設けられていることを特徴とするコンクリート用防食板。
- 第1不織布層、第2不織布層の少なくとも一方が、ニードルパンチ加工により起毛され、直径が0.15mmφ以上のニードルパンチ孔が開いている短繊維不織布で構成されている、前記第1不織布層と第2不織布層の間にコンクリートに対するバリヤー効果を有する無孔のフィルム層を介在させて積層し、一体化させて多層シート材を得る工程と、該多層シート材の、前記ニードルパンチ孔が開いている不織布層とは反対側の不織布層の表面にFRP層を成形する工程を有することを特徴とするコンクリート用防食板の製造方法。
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