JP4888157B2 - 多層シート材、コンクリート用防食板及びその製造方法 - Google Patents

多層シート材、コンクリート用防食板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリート製構造物の補修、再生、防水、防食用などの用途に適したコンクリート用防食板及びそれに用いるのに好適な多層シート材に関し、特に、コンクリートに対するアンカー効果とバリヤー効果を有する、繊維強化熱可塑性樹脂(FRPと略称する)製のコンクリート用防食板及びそれに用いるのに好適な多層シート材に関する。
特開2005−48367号公報 特開平02−248530号公報 特開2003−166299号公報
従来より、下水道施設、共同溝、貯留槽、橋梁、臨海構造物などのような、厳しい環境条件下で使用されるコンクリート製構造物は、該表面が、通水による侵食や、下水や廃水などの酸性液体や海水などの接水によって腐食されることを防止したり、コンクリート躯体への浸水を防止するなどの目的で、コンクリート用防食板やコンクリート用防食シートをコンクリート製構造物の接水面に取り付けることにより、防食被覆層を形成することが知られている。これらの防食板や防食シートには、コンクリートに対する充分な接着力と、流す液体に対する耐食性(耐酸性)、コンクリートに対する耐食性(耐アルカリ性)を有し、優れた耐久性を維持できる特性が求められており、これらの特性を得るために様々な提案がされている。
例えば、特開2005−48367号公報(特許文献1)には、シート状基材の一方の面にポリマーセメント層を、他方の面に繊維強化熱硬化性樹脂層(FRP層)を備えたFRPコンクリート防食パネルが提案されている。この防食パネルでは、通水や接水に対する防食性はFRP層が受け持ち、コンクリート製構造物に対する接着性はポリマーセメント層が受け持ち、シート状基材が両者を媒介する構成を採用している。
また、特開平02−248530号公報(特許文献2)には、孔を有する耐食性シートの内面に接着剤で不織布を固定したものの外側を型枠の内側へ面状ファスナ等で仮着し、次いで型枠の内部にコンクリートを流し込んで固化させ、最後に外側の型枠を取り外すことで防食被覆層を形成するコンクリート構築物の保護膜形成方法が提案されている。この公報に記載の方法で形成された防食被覆層では、通水や接水に対する防食性は孔を有する耐食性シートが受け持ち、コンクリート製構造物に対する接着性は不織布が受け持ち、接着剤が両者を媒介する構成を採用している。
更に、特開2003−166299号公報(特許文献3)には、両面耐食性樹脂フィルム貼りの繊維補強熱可塑性樹脂板の表面に熱可塑性樹脂繊維製の織編物やメッシュ状物または三次元織物をホットメルト・フィルム(熱融着型接着剤)で貼付けた防食パネルが提案されている。この防食パネルでは、通水や接水に対する防食性は両面耐食性樹脂フィルム貼りの繊維補強熱可塑性樹脂板が受け持ち、コンクリート製構造物に対する接着性は熱可塑性樹脂繊維製の織編物が受け持ち、ホットメルト接着剤が両者を媒介する構成を採用している。
しかしながら、これらにはいずれも問題点があった。
すなわち、特許文献1に示す防食パネルには、次の問題点があった。
(1)防食パネルを連続成形ラインで製造する場合、ポリマーセメント層は硬化に時間がかかるので、あらかじめ基材層にポリマーセメントを塗布・硬化させた前段積層材を事前に作ってロール状にしておくことが必要であるが、ポリマーセメント層は或る程度の硬さを持っているので、あまり小径には巻けず、大径のロール状としなければならず、大きいスペースを必要とする。また、その前段積層材を引き出し、走行させながらその片面にFRP層を連続成形してゆく際、ポリマーセメント層に欠けが生じて粉塵を生じやすく、このため、作業環境を悪化させる恐れがあり、粉塵対策が必要となる。
(2)防食パネルの梱包・輸送時や施工時にも、ポリマーセメント層に欠けが発生して粉塵が発生することがあり、運搬性や作業環境性が悪い。
(3)また、この防食パネルはポリマーセメント層が風化するとコンクリートとの接着性に問題が発生する場合がある。
特許文献2に示すコンクリート構築物の保護膜形成方法及びそれによって形成した保護膜には、次の問題があった。
(1)防食層である耐食性シートに孔が開いている為、孔の部分は接着剤と不織布だけで構成されており、防食保護膜が形成されていない事になるので、防食性に劣る。
(2)耐食性シートと不織布の接合を施工現場で接着剤により行う為、接着剤の塗布むらや塗布不足等による接着不良箇所が発生し、竣工後に未接着箇所の膨れや剥離が発生する。
(3)軟質な耐食性シートを面状ファスナ等で型枠に仮止めするので、面状ファスナ等を固定した部分だけ防食層の表面に段差が出来てしまうので仕上がりが悪く、段差部分は通水抵抗が異なるので、通水時に応力が発生し、膨れや剥離が発生する原因となる。
(4)耐食性シートと不織布の接合を施工現場で接着剤により行う為、接着剤が不織布に浸み込み過ぎて、コンクリート構築物との接合面まで浸み出してしまい、コンクリート構築物と不織布との充分な接着力が得られない。
特許文献3に示す防食パネルには、次の問題があった。
(1)コンクリート製構造物に対する接着性は熱可塑性樹脂繊維製の織編物のアンカー効果で得ているが、モルタルに対するアンカー効果を持つ素材に織編物を使った場合では、織編物の織目や編目にセメントの粒子が入り込み難い。その為、ポリマーセメントなどの様に特殊な配合のセメントを使わないとコンクリート構築物に対して充分な接着力が得られない。
(2)また、上記のモルタルに対するアンカー効果を持つ素材では、コンクリート接合面に対するせん断方向へのアンカー効果や、コンクリート接合面の変位に対する緩衝性に劣るため、コンクリート構築物に亀裂や変形などの変位が発生すると、防食パネルがコンクリート構築物から剥離してしまう。
(3)繊維補強されたポリオレフィン系樹脂からなる芯材は、補強用短繊維と粉体のマトリックス樹脂(熱可塑性樹脂)を湿式抄紙法で原料シートに抄造し、該原料シートをマトリックス樹脂が溶融する温度で熱プレスする事で芯材を融着して形態を維持している。この方法では、粉体のマトリックス樹脂を完全に溶融させられないので、成形された芯材には気密性や防水性が得られない。その為、芯材の表面に厚さ0.1〜1.5mmの耐食性樹脂フィルムを融着させる事で気密性や防水性を得ている。しかし、通水面側の防食層に用いるには、耐食性樹脂フィルムが薄過ぎて耐久性に欠ける。
(4)また、上記の芯材では、防食パネルの表面に補強用短繊維の目(段差)が出る為、平滑性が得られず、通水抵抗になるだけでなく、該通水抵抗によってコンクリート接合面から剥離する方向に力が働くので、剥離しやすく、耐久性に劣る。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、コンクリートに対するアンカー効果に優れた多層シート材であって、コンクリートとは反対側に配置するFRP層などの表面層に対するアンカー効果にも優れ、更に、コンクリート表面に取り付けて用いる際には表面層をコンクリートに起因するアルカリ性水溶液等による腐食に対して防御するバリヤー効果(コンクリートに対するバリヤー効果という)及びコンクリート接合面の変位に対する緩衝性に優れ、しかも、FRP製のコンクリート用防食板の連続成形に用いるのに好適な多層シート材を提供することを課題とする。
また、本発明は、コンクリートに対するバリヤー効果、アンカー効果に優れ、コンクリート接合面の変位に対する緩衝性にも優れ、更に、表面平滑性に優れ且つ表面に接触する汚水、廃水、海水等に対する防食性にも優れ、軽量、高剛性で、欠け・割れ・粉塵等の発生も無く、取扱性の良好なFRP製のコンクリート用防食板並びにその製造方法を提供することも課題とする。
本発明の多層シート材は、上記課題を解決するため、第1不織布層と第2不織布層の間にコンクリートに対するバリヤー効果を有する無孔のフィルム層を介在させて積層した構成とし、しかも、前記第1不織布層、第2不織布層の少なくとも一方を、ニードルパンチ加工により起毛され、直径が0.15mmφ以上のニードルパンチ孔が開いている短繊維不織布で構成したものである。前記第1不織布層と第2不織布層のうち、前記ニードルパンチ孔が開いている不織布層は、コンクリートに対するアンカー効果を発揮し、他方はFRP層などの表面層に対するアンカー効果を発揮させるために設けている。また、中央の無孔のフィルム層は、コンクリート構築物からのアルカリ性の侵入水などによって表面層が腐食、劣化することを防止するため、及び第1不織布層と第2不織布層を互いに分離し、例えば、一方の不織布層に表面層を形成するための樹脂を含浸させた際にその樹脂が他方の不織布層に侵入して、他方の不織布層のアンカー効果を低下させるということを防止するために設けている。
ここで、前記第1不織布層、第2不織布層の少なくとも一方を、熱可塑性樹脂繊維で構成することが好ましい。
また、前記コンクリートに対するバリヤー効果を有するフィルム層はポリオレフィン樹脂で構成することが好ましい。
本発明のコンクリート用防食板は、上記した多層シート材の、前記ニードルパンチ孔が開いている不織布層とは反対側の不織布層の表面にFRP層を接合して設けるという構成としたものである。
また、本発明のコンクリート用防食板の製造方法は、第1不織布層、第2不織布層の少なくとも一方が、ニードルパンチ加工により起毛され、直径が0.15mmφ以上のニードルパンチ孔が開いている短繊維不織布で構成されている、前記第1不織布層と第2不織布層の間にコンクリートに対するバリヤー効果を有する無孔のフィルム層を介在させて積層し、一体化させて多層シート材を得る工程と、該多層シート材の、前記ニードルパンチ孔が開いている不織布層とは反対側の不織布層の表面にFRP層を成形する工程を有するという構成としたものである。
本発明の多層シート材は、片面に第1不織布層を、反対側の面に第2不織布層を備えているので、あらかじめ一方の不織布層を利用してFRP層などの表面層を積層しておくことでコンクリート用の表面板(例えばコンクリート用防食板)を形成することができ、その表面板を他方の不織布層を利用してコンクリートに取り付けることで、その表面板を不織布層によるアンカー効果により大きい接着力で取り付けることができる。この際、FRP層などの表面層を、ニードルパンチ孔を開けている不織布層とは反対側の不織布層の表面に形成しておくことにより、コンクリートに接合される側の不織布層は、ニードルパンチ加工により起毛されると共に、直径が0.15mmφ以上のニードルパンチ孔が開いた状態となっており、起毛によるアンカー効果並びにニードルパンチ孔を流路として打設したコンクリートが不織布層の奥まで入り込むことによる大きなアンカー効果を得ることができる。使用中は、多層シート材の中央に配しているフィルム層がコンクリートに対するバリヤー効果を発揮するので、コンクリートに起因するアルカリ性水溶液が多層シート材との接合面に滲み出してきても、表面層にまで浸透して表面層を劣化させるということはなく、このため表面層の材質としては耐アルカリ性を考慮する必要がなく、材料選択の自由度が大きくなる。更に、第1不織布層と第2不織布層とはフィルム層で分離されているので、一方の不織布層に樹脂を含浸させて表面層を形成した際に、その樹脂が他方の不織布層に侵入して空隙を無くしてしまうということがなく、他方の不織布層のコンクリートに対するアンカー効果を低下させることがない。更に、第1不織布層と第2不織布層の間にフィルム層を介在させているので、一方の不織布層に樹脂を含浸させ、他方の不織布層にコンクリートを打設した時に、樹脂やコンクリートは、必ずしも両側の不織布層の全域に浸透してすべての空隙を塞いでしまうということはなく、中央のフィルム層の近傍領域には、かなりの空隙が残り、その部分の不織布層は柔軟性を残している。このため、コンクリート接合面の変位に対する優れた緩衝性を備えている。なお、本発明の多層シート材の使用方法としては、あらかじめ片面に表面層を形成した後、コンクリートに取り付ける場合に限らず、先に多層シート材をコンクリートに取り付け、その後、壁紙等の表面材を取り付けるようにしてもよい。
本発明の多層シート材は、前記したように、その片面に予めFRP層を積層することで、コンクリート用防食板を製造することができる。その製造に当たっては、多層シート材を走行させながらその片面にFRP層を連続的に成形する連続成形法を用いることができ、生産性良くコンクリート用防食板を製造できる。その際、多層シート材には、特許文献1に記載している前段積層材に設けているようなポリマーセメント層を設けていないので、ポリマーセメント層が欠けて粉塵を発生し、作業環境を悪化させるということがない。
本発明のコンクリート用防食板は、前記した多層シート材の片面にFRP層を積層し、その反対側(コンクリートに接合する側)の不織布層は、ニードルパンチ加工により起毛され、直径が0.15mmφ以上のニードルパンチ孔が開いた構成としているので、コンクリートに対して優れたアンカー効果を発揮して取り付けることができ、しかも、前記した多層シート材の特性に加えて、FRP層による寸法安定性、防水性、耐酸防食性、表面平滑性等を備えており、コンクリート用防食板の両表面に必要とされる防食性を有している。そのため、長期間にわたって優れた防食効果を発揮できる耐久性が得られる。本発明のコンクリート用防食板は、FRP層の使用により必要な強度を確保しながら薄手とすることができ、従って、高剛性にもかかわらず軽量とでき、運搬時やコンクリート構築物へ取付ける際に取扱性が良い。また、薄手とすることで適度な柔軟性も確保でき、コンクリート接合面が曲面を有する場合にも取付けることができる。
更に、本発明のコンクリート用防食板は、前記した多層シート材の片面にFRP層を形成した構成であるので、FRPの連続成形法によって製造することができ、安定した品質のコンクリート用防食板を効率よく安価に製造できる。
本発明の多層シート材は、前記したように、第1不織布層と第2不織布層の間にコンクリートに対するバリヤー効果を有する無孔のフィルム層を介在させて積層した構成としたものである。この多層シート材は、一方の側をコンクリートに接合して用いるが、以下の説明では便宜上、第1不織布層をコンクリート側とするものとする。
第1不織布層及び第2不織布層の構成繊維には、天然繊維、化学繊維、合成繊維、無機繊維などの繊維が単独もしくは、混合体の状態で用いられる。具体的には、ビニロン、ポリアミド、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリクラール、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、アラミド(芳香族ナイロン)、ノボロイド(フェノール系)、炭素繊維、フッ素繊維、綿、麻などの繊維が用いられる。特に耐薬品性、耐久性、耐熱性、防虫・防カビ性、品質安定性、安価性などの点から、ビニロン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂繊維が好ましく用いられる。また、コンクリート側に配置する第1不織布層の構成繊維には、セメントやコンクリートに起因するアルカリ性水溶液に対して耐アルカリ性を有し、またコンクリートとなじみやすい材料として、特にビニロンが好ましく用いられる。
この多層シート材を、FRPの連続成形法でコンクリート用防食板を成形するために用いる場合には、前記熱可塑性樹脂繊維には、FRPの連続成形法で熱硬化性樹脂を硬化させる為の硬化炉を通過させても軟化して変形したり、溶融、変質しない耐熱性と安定性が求められるので、軟化点もしくは融点が160℃以上のものを用いることが好ましい。
第1不織布層及び第2不織布層を構成する繊維に熱可塑性樹脂繊維を用いる場合は、ホットメルトタイプの熱可塑性樹脂繊維と、非ホットメルトタイプの熱可塑性樹脂繊維、もしくは、その他の繊維を混合して構成しても良い。また、芯鞘構造で鞘部にホットメルトタイプの熱可塑性樹脂、芯部に非ホットメルトタイプの熱可塑性樹脂、もしくは、その他の材料を用いた芯鞘構造繊維を単独、もしくは、非ホットメルトタイプの熱可塑性樹脂繊維と混合して構成したものであってもよい。このように構成した不織布は、ホットメルトタイプの熱可塑性樹脂繊維が軟化または溶融する温度まで加熱することで、軟化または溶融したホットメルトタイプの熱可塑性樹脂繊維が接着剤の働きをして、不織布層を構成する繊維どうしが融着し、形状が崩れ難くなるので不織布層の保形性が向上する。また、保形性の観点から、予め繊維どうしが融着されているスパンボンド不織布を不織布層に用いることもできる。
第1不織布層、第2不織布層に用いる不織布の目付は、20〜150g/m2 の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、30〜80g/m2 の範囲であることが好ましい。不織布の目付が20g/m2 より小さいと、マトリックス樹脂やセメントが浸み込み過ぎて、不織布層の緩衝性が不足する問題が発生し、不織布の目付が150g/m2 より大きいと、不織布層が厚くなり過ぎて、緩衝性が有り過ぎになるのでコンクリート用防食板の継目部分の防水性が低下する問題が有る。
両面の不織布層のうち、少なくともコンクリート側に位置させる第1不織布層は、ニードルパンチ加工によって起毛され、ニードルパンチ孔が開いている短繊維不織布で構成しておくことが好ましい。このように構成することで、ニードルパンチ孔から不織布層の表面に引き出された不織布層を構成する繊維や、ニードルパンチ孔によってコンクリートとの接触面積が大きくなり、不織布層にコンクリートが浸み込みやすくなるので、アンカー効果を高める事ができ、コンクリートに対して大きな接着力を得ることができる。
前記ニードルパンチ加工は、ニードルパンチ孔の直径が0.15mmφ以上となるように行う。ニードルパンチ孔の密度40〜90個/cm2 とすることが好ましい。ニードルパンチ孔の直径が0.15mmφより小さいと、ニードルパンチ孔にセメントが浸み込み難いので、充分な接着力(アンカー効果)が得られない。また、ニードルパンチ孔の密度は、40個/cm2 より小さいと、不織布層内へのセメントの浸み込み量が少なくて充分な接着力(アンカー効果)が得られず、90個/cm2 より大きいとコンクリート接合面の変位に対する緩衝性が不足する。
コンクリート側とは反対側に配置される第2不織布層は、ニードルパンチ加工によって起毛され、ニードルパンチ孔が開いている短繊維不織布で構成しても良いし、ニードルパンチ加工されていない短繊維不織布、長繊維不織布、或いはスパンボンド不織布で構成してもよい。
コンクリートに対するバリヤー効果を有する無孔のフィルム層は、セメントやコンクリートに起因するアルカリ性水溶液に対して耐アルカリ性を有する材料で構成され、多層シート材の一方の面に滲み出してきたアルカリ性水溶液を遮断して、他方の面に浸透することを防止する機能、すなわち、コンクリートに対するバリヤー効果を有する。このような効果を発揮するフィルム層を形成する材料としては、ポリオレフィン樹脂が適している。具体的な材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、それらの共重合体などを用いることができるが、さらに好ましくは、強度、耐熱性、熱性形成、安価性の点から、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましく用いられる。該ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、ホモタイプ、ソフトタイプのいずれも用いることができる。
本発明の多層シート材は、前記第1不織布層と第2不織布層の間に前記コンクリートに対するバリヤー効果を有するフィルム層を介在させて積層し、一体化されている。この一体化の方法には、種々な方法を採用しうるが、押出成形法が適している。押出成形法は、前記フィルム層を押出成形する際に、押し出された未硬化状態のフィルム層の両面に前記第1不織布層と第2不織布層を積層し、全体を加圧、冷却することにより、フィルム層の成形と不織布層との一体化(接着)を同時に行う方法である。この押出成形法は、フィルム層と不織布層の間の大きい接着力を得ることができるにもかかわらず、別途接着剤を必要としないので成形効率が良く、安価に安定した多層シート材を成形することができ、しかも、前記第1不織布層と第2不織布層には、フィルム層を形成する樹脂材料があまり入り込まないので、第1不織布層と第2不織布層の空隙率をあまり低下させず、コンクリートやFRP樹脂に対する優れたアンカー効果を確保できるといった効果を有している。前記押出成形法としては、Tダイ法、多層(積層)成形法などを用いることができる。
他の好ましい一体化方法としては、ドライラミネート法を挙げることができる。ドライラミネート法は、あらかじめフィルム層を形成するフィルムの両面に接着剤を塗布しておき、そのフィルムの両面に第1不織布層と第2不織布層を積層し、全体を加圧することにより、フィルム層両面に第1不織布層と第2不織布層を接着し、一体化する方法である。この一体化方法は別途接着剤(接着用のホットメルト樹脂層)を必要とするが、使用する接着剤の特性によってフィルム層の性能を変えることができるので、例えば、フィルム層表面の耐アルカリ性を増強させたり、耐アルカリ性以外の機能を付加させたり、各種の表面改質を行ったりするという目的に適している。また、ホットメルト樹脂層形成前のフィルム層表面に表面処理を行っておくこともできるので、フィルム層構成材料の特性に他の機能を付加させることができる。該表面処理としては、例えば、プライマーを塗布したり、コロナ放電処理やプラズマ放電処理を施したりすることを例示でき、これによってフィルム層表面のぬれを改善して親和性を付加し、前記不織布層とフィルム層との接着力を向上させることができる。ドライラミネート法によっても、前記第1不織布層と第2不織布層には、接着用の樹脂があまり入り込まないので、第1不織布層と第2不織布層の空隙率をあまり低下させず、コンクリートやFRP樹脂に対する優れたアンカー効果を確保できる。
次に、第1不織布層と第2不織布層のアンカー効果について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る多層シート材1の一部断面を、厚みを誇張して示す概略断面図、図2は本発明の他の実施の形態に係る多層シート材1Aの一部断面を、厚みを誇張して示す概略断面図、図3は多層シート材1表面のニードルパンチ加工による起毛状態を誇張して示す概略斜視図である。図1に示す多層シート材1は、第1不織布層2と第2不織布層3の間にフィルム層4を介在させて積層し、一体化された構造を有しており、第1不織布層2にはニードルパンチ加工が施され、不織布層を貫通する複数のニードルパンチ孔5が形成され、かつ不織布層の表面に繊維6が起毛されている。図2に示す多層シート材1Aでは、第1不織布層2及び第2不織布層3Aのそれぞれにニードルパンチ加工が施され、不織布層を貫通する複数のニードルパンチ孔5が形成され、かつ不織布層の表面に繊維6が起毛されている。
ところで、第1不織布層2はコンクリートと接合されるので、コンクリートに対して大きな接着力が必要となる。しかし、不織布層を構成する材料に熱可塑性樹脂を用いた場合、熱可塑性樹脂自体は、コンクリートや石膏などに代表される水硬性もしくは水和性硬化物とは、ぬれや親和性が悪いので、両者の接合面を平面で構成した場合には、接着力が得られない。ところが、ぬれや親和性が悪い熱可塑性樹脂でも、繊維化して不織布に加工することで、不規則に絡み合った不織布を構成する繊維同士の間にできる空隙に前記水硬性もしくは水和性硬化物が入り込んで、その状態で硬化することにより、機械的な引っ掛かりが生じるので接着力を得ることができる。すなわち、難接着性のコンクリートの中に入り込んだ不織布の構成繊維がアンカー(機械的な引っ掛かり)となり、コンクリートに対して大きな接着力(アンカー効果)を得ることができる。
このアンカー効果は、前記熱可塑性樹脂と水硬性もしくは水和性硬化物との接着以外にも得ることができる。例えば、不織布層とフイルム層、不織布層とFRP層などの接合にもフィルム層やFRP層の成形過程において、未硬化状態のフィルム層やFRP層の構成樹脂が不織布層の空隙に入り込んでから、その状態で硬化することにより、前記と同様にアンカー効果を得ることができる。
更に、図示の実施の形態に示すように、コンクリートと接合する面の第1不織布層2にニードルパンチ加工を施し、不織布層を貫通する複数のニードルパンチ孔5を設け、同時に不織布層の構成繊維の一部6をコンクリートと接合する面に引き出して、起毛させることで、より大きなアンカー効果を得ることができる。すなわち、この構成とすることにより、打設したコンクリートがニードルパンチ孔5を流路として、不織布層の奥まで入り込み、起毛した不織布構成繊維6がコンクリートに深く入り込むことで、不織布層にコンクリートが入り込んでいる層の厚さを大きくできるため、より大きなアンカー効果を得ることができる。また、ニードルパンチ孔5は、打設したコンクリートが不織布層の空隙に入り込む際に、不織布層内の空気を排出するための脱気流路としても機能するので、ニードルパンチ孔5を設けたことによって、より確実に不織布層内の空隙にコンクリートを入り込ますことができる。
本発明のコンクリート用防食板は、前記した多層シート材の、ニードルパンチ孔が開いている不織布層とは反対側の不織布層の表面にFRP層を接合して設けたことを特徴としている。すなわち、図1に示すように第1不織布層2のみにニードルパンチ孔5を開けている多層シート材1では、ニードルパンチ孔を開けていない第2不織布層3の表面にFRP層を接合して設け、図2に示すように、第1不織布層2、第2不織布層3の両方にニードルパンチ孔5を開けている多層シート材1Aでは、いずれか一方の不織布層の表面にFRP層を接合して設けることを特徴としている。以下、説明の便宜上、第2不織布層側にFRP層を設けるものとする。多層シート材に対するFRP層の接合は、多層シート材の表面でFRP層を成形することで行うことができる。すなわち、FRP層を形成するマトリックス樹脂の一部を多層シート材表面の第2不織布層に含浸させ、硬化させることで、マトリックス樹脂と第2不織布層の繊維との接着及び第2不織布層によるアンカー効果によって多層シート材とFRP層を強固に接着できる。
図4は、本発明の実施の形態に係るコンクリート用防食板7の一部断面を厚みを誇張して示す概略断面図である。この実施の形態に係るコンクリート用防食板7は、図1に示す多層シート材1の第二不織布層3にFRP層8を積層、一体化したものである。このように、多層シート材1にFRP層8を設けることで、剛性、温度変化に対する寸法安定性、防水性、耐酸防食性などの諸所のFRPの特性に、耐アルカリ防食性、バリヤー効果、アンカー効果などの前記多層シート材の特性を付与したコンクリート用防食板7が得られる。すなわち、本発明のコンクリート用防食板は、前記した多層シート材にFRP層を積層、一体化し、且つコンクリート接合面側はニードルパンチ加工により起毛され、ニードルパンチ孔5が開けられた第1不織布層2としたことにより、そのコンクリート用防食板のコンクリート接合面側には多層シート材による優れた特性、例えば、コンクリートに対するアンカー効果、耐アルカリ防食性、緩衝性等を、汚水、廃水、海水などの接水面側にはFRP層による優れた特性、例えば、防水性、耐酸防食性、寸法安定性、剛性、表面平滑性等を付与することができ、従って、コンクリート用防食板の両表面に必要とされる耐食性を付与することができる。また、多層シート材とFRP層の両機能により、防食性が向上するので、防食板の長期的な耐久性を向上できる。
本発明のコンクリート用防食板には、コンクリートに対するバリヤー効果を有する多層シート材を採用しているので、表面側に位置するFRP層の材料には、耐アルカリ性を考慮する必要はなく、接触する汚水、廃水、海水等に対して要求される防食特性(通常、耐酸性)を考慮して選定すればよい。このため、FRP層の材料の選択肢が広い。FRP層の材料としては、コンクリートの表面に防食被覆層を形成する際に通常用いる材料を適宜使用できる。例えば、補強繊維としては、ガラス繊維、水酸化アルミニウム繊維、カーボン繊維等の無機繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の有機繊維等を用いることができ、また、マトリックス樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等を挙げることができる。不飽和ポリエステル樹脂を用いる場合、そのタイプはオルソ系、イソ系、軟質系等、いずれでもよく、使用場所に応じて適宜選定すれば良い。また、必要に応じ、樹脂中に適当なフィラーや着色剤を混入したり、表面にゲルコート層を設けてもよい。但し、本発明のコンクリート用防食板は、前記多層シート材のバリヤー効果により、FRP層には、特に優れた耐アルカリ防食性が必要とされないため、前記マトリックス樹脂の選択にあたっては、特に耐酸防食性に優れているものを選択すればよいので、通常のコンクリート用FRPライニングよりも、用途に応じて幅広いマトリックス樹脂の選択ができる。
本発明のコンクリート用防食板に設けるFRP層の厚さは、コンクリート管内面やボックスカルバート内面などの、あまり過酷でない条件下で使用する場合には1.5〜3mm程度に、護岸のように過酷な使用場所では3〜6mm程度に選定することが好ましい。このような厚さで構成することにより、軽量で曲面にも施工できる柔軟性を備えた取扱性の良い、且つ耐食性、耐久性に優れたコンクリート用防食板が得られる。
また、本発明のコンクリート用防食板は、前記多層シート材を用いたことでコンクリート接合面の変位に対する優れた緩衝性を備えている。すなわち、コンクリート表面に取り付けた後のコンクリート用防食板は、コンクリート側に位置する第1不織布層のアンカー効果でコンクリートに十分な接着力で接着しており、多層シート材とFRP層とは第1不織布層とFRP層のマトリックス樹脂との接着及びアンカー効果により十分な接着力で接着しているが、多層シート材の不織布層内の空隙の全てに、打設されたコンクリートやFRP層を構成するマトリックス樹脂が浸み込んでいる訳ではなく、特に中央のフィルム層の近傍には空隙が多く残されており、多層シート材には柔軟性が残されている。このため、柔軟性、引張り強さ、曲げ強さなどに優れた不織布層内の熱可塑性樹脂繊維が、コンクリート用防食板の施工後にコンクリートに発生した亀裂や、コンクリート接合面の不陸、流下物の衝突などのような、コンクリート接合面の変位を吸収し、追従することで優れた緩衝性を発揮する。そのため、コンクリート用防食板の剥離や膨れ、亀裂発生等を防止することができる。該緩衝性は、特にコンクリート用防食板とコンクリートの接合面に対するせん断方向に対して効果を発揮する。
前記コンクリート用防食板は薄手なので、高剛性にもかかわらず軽量に仕上げることができる。さらに、多層シート材に緩衝性が有るので耐衝撃性もあり、運搬時やコンクリート構築物へ取付ける際に取扱性が良く、薄手なので適度な柔軟性も備えており、コンクリート接合面が曲面を有する場合にも取付けることができる。
本発明のコンクリート用防食板は、多層シート材の片面でFRP層を成形することで製造できる。FRP層の成形には、ハンドレイアップ法などによるバッチ成形、連続成形法のいずれを用いても良い。連続成形法は生産性が良く且つ一定品質のものを製造できる。バッチ成形では、連続成形法によるものよりも複雑で立体的な曲面のコンクリート用防食板を成形することができる。
以下、連続成形法によりコンクリート用防食板を製造する方法を、図5を参照して説明する。多層シート材1は、予め前記の製造方法(Tダイ法などの押出成形法やドライラミネート法など)で作成してロール状に巻いて準備しておく。
図5に示すように、第1のキャリアフィルム11を所定の走行経路に沿って走行させておく。走行中の第1のキャリアフィルム11の上に、樹脂タンク12から液状の未硬化の熱硬化性樹脂13を一定量連続供給し、ドクターナイフ14でキャリアフィルム11上の樹脂13の厚さを一定に調整する。次いで、キャリアフィルム11上の樹脂13の上に強化繊維16を連続的に供給してゆく。このようにして、強化繊維16をキャリアフィルム11上の未硬化の熱硬化性樹脂13の上に連続的に供給することで、その強化繊維16に熱硬化性樹脂13が含浸し、キャリアフィルム11上に未硬化の強化繊維混合熱硬化性樹脂液層13Aが形成される。なお、必要に応じ、前記強化繊維混合熱硬化性樹脂液層13A内の強化繊維に対する樹脂液の含浸を確実にするため適当な含浸ローラを設けるとか、熱硬化性樹脂液を新たに供給する等の変更を加えても良い。
一方、あらかじめ準備していた多層シート材のロール(図示せず)から多層シート材1を引き出し、それをキャリアフィルム11上の強化繊維混合熱硬化性樹脂液層13A上に重ねてゆき、含浸ローラ17で押し付けて行く。この際、多層シート材1は、ニードルパンチ孔が開いている不織布層を上にして、従って、その反対側の不織布層がキャリアフィルム11上の強化繊維混合熱硬化性樹脂液層13A上に接触するように供給される。次いで、第2のキャリアフィルム21を、強化繊維混合熱硬化性樹脂液層13A上に重ねられた多層シート材1の上にかぶせ、上下のキャリアフィルム11、21及びそれに挟まれた強化繊維混合熱硬化性樹脂液層13Aと多層シート材1を上下のスクイズローラ18の間に送り込んで加圧し、未硬化の強化繊維混合熱硬化性樹脂液層を脱泡させると共に全体の厚さを所望の値に調整する。次いで、その強化繊維混合熱硬化性樹脂液層13Aと多層シート材1との積層体を、通常、80〜150℃に昇温させた硬化炉19に送り込み、硬化に要するに十分な時間通過させ、熱硬化性樹脂を硬化させる。これにより、強化繊維混合熱硬化性樹脂液層13Aが硬化してFRP層になると共に多層シート材1に接合し、完全に一体化した積層体が連続的に成形されてゆく。その後、その積層体からその両面に付着している第1及び第2のキャリアフィルム11、21を剥がしてロール22、23に巻き取り、次いで前記積層体をカッター24で所望の寸法にカットする。これにより、コンクリート用防食板7が形成される。以上のようにして、所望長さのコンクリート用防食板7を連続成形方法によって低コストで製造できる。
次に、前記した構成のコンクリート用防食板の施工方法を、図4に示すコンクリート用防食板7を例にとって説明する。図6に示すように、コンクリート用防食板7を、コンクリートを流し込むための型枠31内に配置し、両面テープや面状ファスナ32などを用いて型枠31内に仮止めしてから、その型枠内にコンクリート34を流し込む。これにより、流し込まれたコンクリート34が多層シート材7のコンクリート接合面側の第1不織布層2内の空隙に入り込んで固化する。このため、第1不織布層1の繊維がコンクリート内に確実に埋め込まれ、FRP層8が基材シート材1を介してコンクリート表面に強固に固定された状態となり、コンクリート用防食板7が剥離することがほとんどなく長期間に渡ってFRP層8による防食効果を発揮させることができる。なお、本発明のコンクリート防食板の使用対象とするコンクリートは、セメントに砂と骨材とを混合した狭い意味でのコンクリートに限らず、モルタル、樹脂モルタル等のセメント製品をも含むものとする。
以上に、本発明の多層シート材を、FRP層と一体化してコンクリート用防食板として用いる場合を説明したが、本発明の多層シート材はこの用途に限定されるものではなく、FRP層以外の防食材や装飾用のシート材等を積層、一体化して表面層とした表面材として用いることもできる。更に、本発明の多層シート材は、コンクリートに対する接着力が優れているので、コンクリートに対する接着力が要求される諸所の用途に使用することができる。特に、コンクリートに対する接着性が得られない素材をコンクリートに接合する為の媒体として使用する用途に適している。例えば、防水シート、防食シート、コンクリート用捨型枠、コンクリート壁用内外装用化粧板などに積層することで、コンクリートに対する接着力を高めることができる。
また、前記多層シート材は、塗布型防食被覆工法にも使用することができる。これによって、従来の塗布型防食被覆工法よりもコンクリートに対して高い接着力が得られ、コンクリート接合面の変位に対する緩衝性に優れた防食被覆を形成することができる。
下記の実施例1、比較例1、2の試験体を作成し、図7(A)に示した2点支持による曲げ破壊試験を実施した。また、実施例1に用いた多層シート材についての耐アルカリ性の確認試験も行った。
〔実施例1〕
(1)多層シート材の作成
図1に示す第1不織布層2として、目付70g/m2 のビニロン繊維製不織布を、第2不織布層3として目付30g/m2 のビニロン繊維製不織布を用意した。
第1不織布層2用の目付70g/m2のビニロン繊維製不織布には、密度60個/cm2 のニードルパンチ加工を施 し、直径が0.23mmφのニードルパンチ孔5を設けると同時に、不織布の構成繊維6を不織布表面に引き出して起毛させた。
次いで、ホモタイプのPBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)を材料に用いてTダイ法で厚さ0.2mmのフィルム層4を成形する工程で、押し出した未硬化状態のフィルムの両面に前記で作成した2種類の不織布を積層し、圧着することにより、フィルム層4の作成と、そのフィルム層4と両側の不織布層2、3の一体化を同時に行い、図1に示す形態の多層シート材1を作成した。
(2)コンクリート用防食板の作成
図5に示すFRPの連続成形ラインにおいて、ライン速度 0.85m/minで走行する ポリエチレンテレフタレート製の第1のキャリアフィルム11(ユニチカ株式会社製、厚さ25μm)上に未硬化の不飽和ポリエステル樹脂液(大日本インキ工業株式会社製)及びガラス繊維(日東紡績株式会社製、平均直径0.02mm、平均長さ50mmのガラス繊維のマット)を供給し、ガラス繊維混合不飽和ポリエステル樹脂液層13A(厚さ2〜3mm程度)を形成した。次に、多層シート材1を第1のキャリアフィルム11上のガラス繊維混合不飽和ポリエステル樹脂液層13A上に、ニードルパンチ加工を施していない第2不織布層3がガラス繊維混合不飽和ポリエステル樹脂液層13Aと接するように重ね合わせ、更にその上に第2のキャリアフィルム21(ユニチカ株式会社製、厚さ25μm)をかぶせた後、上下のスクイズローラ18の間に送って挟み込み、密着させると共にガラス繊維混合不飽和ポリエステル樹脂液層13Aを脱泡させ、厚さを約2.6mmに調整した後、150°Cに設定している硬化炉19内に送り込み、炉内を30分間走行させることで、不飽和ポリエステル樹脂液13Aを加熱、硬化させ、一体化した積層体とした。走行して硬化炉19から出てきた積層体から第1及び第2のキャリアフィルム11、21を剥がして巻き取り、積層体をカッターによって約1.8mの長さにカットし、幅900mm×長さ1800mmのコンクリート用防食板7(図4参照)を作成した。
作成したコンクリート用防食板7の表面を目視検査したところ、多層シート材表面を構成する不織布繊維の状態に、溶融や軟化による変形は確認されなかった。従って、ここで用いた多層シート材は、FRPの連続成形ラインにて多層シート材とFRP層の一体化を行う際の加熱に対する十分な耐熱性を備えていることが確認された。
(3)試験体
上記で作成したコンクリート用防食板7を幅100mm×長さ400mmにカットしたものを型枠にコンクリート用防食板7の不織布面がコンクリートと接触するように載置して、コンクリートを厚さ100mm、打設し、1週間水中養生してコンクリート用防食板とコンクリートを接合した曲げ破壊試験体を得た。
〔比較例1〕
(1)FRP板
FRP板として、厚さ2mmのガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂板(日東紡績株式会社製)を用意し、幅100mm×長さ400mmにカットした。
(2)コンクリートブロック
幅100mm×長さ400mmの型枠に、コンクリートを厚さ100mm、打設し、1週間水中養生してコンクリートブロックを作成した。
(3)試験体
前記で作成したコンクリートブロックの片面にセメントとポリアクリル酸エステル共重合体エマルジョンの混合体(固形分の混合比 1:0.5)を約1mmの厚さに塗布したものに 、前記のFRP板を圧着し、3日間大気養生することで比較例1の曲げ破壊試験体を得た。
〔比較例2〕
(1)不織布貼りFRP板
FRP板として、厚さ2mmのガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂板(日東紡績株式会社製FRP板)、エポキシ系接着剤、目付150g/m2のポリエステル繊維製スパンボンド不織布を用意した。
FRP板の一方の面にエポキシ系接着剤を0.5mmの厚さで塗布したものに、スパンボンド不織布を圧着し、1日間大気養生して不織布貼りFRP板を得た。
不織布貼りFRP板を幅100mm×長さ400mmにカットした。
(3)試験体
前記の不織布貼りFRP板を型枠に不織布面がコンクリートと接触するように載置して、コンクリートを厚さ100mm、打設し、1週間水中養生して比較例2の曲げ破壊試験体を得た。
〔曲げ破壊試験結果〕
図7(A)に示すように、試験体41(又は41A)を、間隔をあけて配置されている一対の支持体42(支持体42の間隔:320mm)に、コンクリート側を上にして乗せ、上面の中央に圧縮子43によって垂直荷重Fを加え、曲げ破壊試験を行った。
この曲げ破壊試験において、比較例1で作成した試験体では、その試験体を一対の支持体42上に乗せた時点でコンクリートブロックとFRP板が完全に剥離してしまった。
次に比較例2で作成した試験体では、図7(B)に示したように、その試験体41Aに圧縮子43によって荷重Fを加え、その荷重Fを増加させて行くにつれて試験体41Aは湾曲してゆき、荷重Fが5.5N/mm2 に達した時点で、同図のB部(試験体41Aの端部)でコンクリート45からFRP板46の剥離が始まった。そして、更に荷重Fを増加させてゆくと、剥離が中央に向かって進行してゆき、剥離が同図のA部(試験体41Aの中央部)を超え、荷重Fが10N/mm2 に達した時点で、コンクリート45の中央部に下面側から縦方向の亀裂が生じた。なお、剥離したFRP板46には亀裂は生じなかった。
一方、実施例1の試験体では、図7(C)に示したように、その試験体41に圧縮子43によって荷重Fを加え、その荷重Fを増加させて行くにつれて試験体41は湾曲してゆくが、同図B部(曲げ破壊試験体の両端部)におけるコンクリート45とコンクリート用防食板7との剥離は見られず、荷重Fが20N/mm2 に達した時点で、コンクリート45とコンクリート用防食板7が接合されたままの状態で、コンクリート45とコンクリート用防食板7の両者のA部(曲げ破壊試験体の中央部)に亀裂を生じた。
〔評価〕
比較例1は、外観上、FRP板とコンクリートブロックの間の密着性は良好に見えるが、試験体を支持体42の上に配置した時点でFRP板とコンクリートブロックが完全に剥離してしまったので、FRP板とコンクリートブロックの間の緩衝性が全く無く、耐衝撃性が無いことが確認された。
比較例2は、前記せん断力により、試験体の片方の端部から中央部を越えた位置にかけてコンクリートと不織布貼りFRP板の接合面に剥離が見られ、コンクリートに対する接着力や接合面の変位に対する緩衝性が不充分であることが確認された。
一方、実施例1に示した試験体41には、剥離が見られず、実施例1で用いた多層シート材によって、コンクリートに対する大きな接着力とコンクリート接合面の変位に対する優れた緩衝性を有していることが確認された。
これらの結果をまとめて、表1に示す。
Figure 0004888157


〔耐アルカリ性試験〕
実施例1で作成した多層シート材をコンクリートのアルカリ性を想定した強アルカリ性水溶液である水素イオン濃度がpH12の水酸化ナトリウム水溶液に30日間浸漬し、その後、取り出して状態を確認したが、外観や柔軟性に変化は見られなかった。これにより、多層シート材が十分な耐アルカリ性を備えていることが確認できた。
本発明の一実施の形態に係る多層シート材の概略断面図 本発明の他の実施の形態の多層シート材の概略断面図 本発明の多層シート材表面のニードルパンチ加工による起毛状態を示す概略斜視図 本発明の一実施の形態に係るコンクリート用防食板の概略断面図 連続成形法によってコンクリート用防食板を製造する工程を示す模式図 図4に示すコンクリート用防食板を施工する際の概略断面図 曲げ強度試験を説明するもので、(A)曲げ強度試験前の状態を示す概略側面図、(B)は比較例2の試験体の曲げ強度試験中の状態を示す概略側面図、(C)は実施例1の試験体の曲げ強度試験中の状態を示す概略側面図
符号の説明
1 多層シート材
2 第1不織布層
3 第2不織布層
4 フィルム層
5 ニードルパンチ孔
6 繊維
7 コンクリート用防食板
8 FRP層
11 第1のキャリアフィルム
12 樹脂タンク
13 熱硬化性樹脂
13A 強化繊維混合熱硬化性樹脂液層
14 ドクターナイフ
16 強化繊維
17 含浸ローラ
18 スクイズローラ
19 硬化炉
21 第2のキャリアフィルム
23、24 ロール
25 カッター
31 型枠
32 両面テープまたは面状ファスナ
34 コンクリート
41、41A 試験体
42 支持体
43 圧縮子
45 コンクリート
46 FRP板

Claims (5)

  1. 第1不織布層と第2不織布層の間にコンクリートに対するバリヤー効果を有する無孔のフィルム層を介在させて積層されている多層シート材であって、前記第1不織布層、第2不織布層の少なくとも一方が、ニードルパンチ加工により起毛され、直径が0.15mmφ以上のニードルパンチ孔が開いている短繊維不織布で構成されていることを特徴とする多層シート材。
  2. 前記第1不織布層、第2不織布層の少なくとも一方が、熱可塑性樹脂繊維で構成されていることを特徴とする請求項1記載の多層シート材。
  3. 前記コンクリートに対するバリヤー効果を有するフィルム層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載の多層シート材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の多層シート材の、前記ニードルパンチ孔が開いている不織布層とは反対側の不織布層の表面にFRP層が接合して設けられていることを特徴とするコンクリート用防食板
  5. 第1不織布層、第2不織布層の少なくとも一方が、ニードルパンチ加工により起毛され、直径が0.15mmφ以上のニードルパンチ孔が開いている短繊維不織布で構成されている、前記第1不織布層と第2不織布層の間にコンクリートに対するバリヤー効果を有する無孔のフィルム層を介在させて積層し、一体化させて多層シート材を得る工程と、該多層シート材の、前記ニードルパンチ孔が開いている不織布層とは反対側の不織布層の表面にFRP層を成形する工程を有することを特徴とするコンクリート用防食板の製造方法。
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