JP3723169B2 - 植毛シートとセメント系材料の防水接合構造 - Google Patents

植毛シートとセメント系材料の防水接合構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート躯体の後貼り防水工法に適した防水構造であって、植毛シートとセメント系材料の防水接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物のコンクリート壁面や床面の防水には、従来、コンクリート躯体表面に樹脂系塗料を塗布する方法が多く用いられてきた。しかし、コンクリート躯体は正常な施工であっても経時劣化によりひび割れ(亀裂)を生じることがある。その場合は通常、塗膜も一緒に破れるため、防水効果は失われる。防水効果を復元するには亀裂部のシールや再塗装など、煩雑な補修作業を必要とする。
【0003】
このようなコンクリート躯体の亀裂に対処しうる外防水工法として、下記特許文献1には、コンクリート躯体外壁面に合成樹脂フィルムに合成樹脂繊維を植毛した下地シートを貼設し、その上に仕上材を塗布する外壁外防水工法が開示されている。これによると、下地シートは、その植毛繊維がアンカーとなってコンクリート躯体表面に貼り付き、コンクリート躯体にひび割れが発生した場合にこのアンカーが伸びることにより、下地シートの表面にはひび割れが発生せず、その上のセメント層や塗膜には影響を与えないという。
【0004】
また、下記特許文献2には、コンクリートの防食ライニング構造として、コンクリート側から「抗菌性モルタル層」,「樹脂フィルムの両面に植毛を施した植毛シート層」,「抗菌性モルタル層」の積層構造を有するものが記載されている。これによると、植毛シートの植毛繊維がモルタルに絡むことによって植毛シートとモルタルが接合し、コンクリート側のモルタル層の割れは、外側のモルタル層に伝播しないという。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−159221号公報(特許請求の範囲,段落0017〜0019,0024)
【特許文献2】
特開2002−240187号公報(特許請求の範囲,段落0037〜0039)
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の方法では、長さ0.3〜3.0mmの短繊維を静電気植毛機等を用いて接着剤で樹脂フィルムに植毛した下地シートを使用することが記載されており、それ以外の種類の植毛シートについては記載がない。このような毛足の短い短繊維を接着した植毛シートを用いた場合、コンクリート躯体の亀裂の幅が非常に小さい場合には表面塗膜への亀裂の伝播は抑えられ、かつシートの破損も生じないことから防水効果も失われない。
【0006】
しかし、亀裂の幅が、その隙間を目視できるほど大きくなった場合、特許文献1の技術では亀裂周辺でアンカー効果を担っている多くの短繊維はすぐに引っ張り応力を負担した状態となって伸び、樹脂シートには亀裂両側のコンクリートから大きな張力がかかってシートが破れる恐れがある。同時に塗膜にも亀裂が及ぶ。そうなるともはや防水効果を有しない。この張力を緩和するには、低応力でも容易に破断する強度の小さい短繊維を用いる手法が考えられる。しかし、その手法は、本来的にコンクリート壁との接合強度を高く維持できないため、採用し難い。
【0007】
一方、特許文献2には、植毛シートに使用する短繊維の長さについては記載がなく、また、「非アンカー層」(後述)の存在についても記載がない。したがって、この文献記載の技術も幅が例えば1mm以上と大きくなった亀裂に対して防水性を維持し得る保証はない。
【0008】
なお、上記のような「幅(開口部)」のあるコンクリート亀裂は、例えば、地下外壁や調整池ピットなど土壌に接するように打設されたコンクリート躯体において時々経験されるものである。これは、土壌からの大きな圧力や地盤変動などにより、コンクリート躯体が厚さ方向に変位することによって生じることが多く、通常、コンクリート躯体の「膨れ」が生じた箇所に見られる。
【0009】
本発明は、コンクリート躯体に非透水性の植毛シートを貼り付ける「後貼り防水工法」に好適に適用できる技術であって、施工後、セメント系材料に「幅」のある大きな亀裂が生じたときにも防水性を維持できる耐久性の高い「植毛シートとセメント系材料の防水接合構造」を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは種々検討の結果、上記目的の防水接合構造を実現するうえで、以下の点が極めて重要であることを知った。
・毛足の長い短繊維を植え付けた植毛シートを用いること。
・植毛シートとセメント系材料の接合界面に、短繊維がセメント系材料に拘束されておらず、かつ、その短繊維は引っ張り応力を受けたときに動ける状態になっている「非アンカー層」を介在させること。
本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0011】
すなわち、上記目的を達成するために、請求項1の発明は、高分子樹脂からなるスパンボンド不織布に直径 10 40 μ m ,長さ 10 100mm の高分子樹脂短繊維を1m 2 あたり 250 万〜 500 万本の割合でニードルパンチ法で植え付けたウエブシートの、スパンボンド側の面を非透水性からなる芯材フィルムの表面に熱接着してなる植毛シートと、セメント系材料とが接合した防水構造であって、植毛シート側から順に、
(A) 樹脂のみからなり非透水性を有する「樹脂層」
(B) 植毛シートの短繊維がセメント系材料に拘束されず、かつ、引張応力を受けたときに動ける状態で存在している「非アンカー層」
(C) 植毛シートの短繊維がセメント系材料に拘束されている「アンカー層」
(D) セメント系材料のみからなる「セメント層」
を形成している植毛シートとセメント系材料の防水接合構造である。
【0013】
請求項の発明では、さらに、植毛シートを以下のものに限定した防水接合構造を提供する。
ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に、直径10〜40μm,長さ10〜100mmのポリプロピレン短繊維を1m2あたり250万〜500万本の割合でニードルパンチ法により植え付けたウエブシートの、スパンボンド側の面を非透水性の高密度ポリエチレンからなる芯材フィルムの表面に熱接着してなる植毛シート。
【0014】
請求項の発明は、上記発明において、植毛シートと接合するセメント系材料が、ポルトランドセメントと硅砂を主成分とし、メチルセルロースおよびアクリル樹脂を含有するものである点を規定したものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明では、非透水性の植毛シートとして、毛足の長い短繊維を植毛したものを用いる。ただし、単に毛足が長ければ良いというわけではない。セメント系材料と接合したときに「アンカー層」とともに「非アンカー層」が形成されるものでなければ、セメント系材料の大きな亀裂によってもたらされる歪み量を当該接合構造によって吸収することができない。
非アンカー層は、短繊維がセメント硬化マトリクスに取り囲まれずに存在することによって形成される。そのためには、植毛シート自体が、その構造上、短繊維の間にセメント粒子の進入する余地がほとんどないような領域を有している必要がある。
【0016】
短繊維の間にセメント粒子の進入する余地がほとんどない状態として、次の2つの形態が考えられる。
[1] 短繊維の密度が非常に高いこと。
[2] 短繊維どうしはある程度隙間をもって存在しているが、その短繊維の隙間を何か別の物体で埋めること。ただし、短繊維は引張応力を受けたときその物体内部から破断せずに大部分が抜け出せる状態になっていること。
【0017】
上記[1]の状態を植毛シートの一部領域に作ることは必ずしも容易ではない。しかし、[2]の状態は、例えば、短繊維の間をスパンボンド不織布で埋めることによって実現できることかわかった。スパンボンド不織布は長繊維を重ね合わせて熱接着などにより固定した隙間のある不織布であり、種々の用途において広く使用されている。このスパンボンド不織布に毛足の長い短繊維の束をニードルパンチ法で均一に植え付けたウエブシートを用意し、このウエブシートのスパンボンド側の面を非透水性の芯材フィルムに貼り合わせてラミネートすると、最表面には「アンカー層」の形成に必要な隙間のある短繊維群を有し、かつ、その下には「非アンカー層」の形成を可能にする「短繊維がスパンボンド不織布に埋もれた層」を有する植毛シートが得られる。ここで、ウエブシートはニードルパンチ法で作られたものであるから、「短繊維がスパンボンド不織布に埋もれた層」において、短繊維はスパンボンド不織布に固着されていない。
【0018】
使用する短繊維は、直径が小さすぎると繊維強度が不十分となり、植毛シートをセメント系材料表面に貼付したときズレや脱落を招く恐れがある。一方、直径があまり大きくても強度的メリットはほとんどなく、樹脂の使用量が増えて不経済となる。また、長さが短すぎるとニードルパンチ法が適用し難くなるとともに、「非アンカー層」においてセメント系材料の亀裂部周辺で繊維の伸び代が十分確保できず、「幅」のある大きな亀裂に対処できなくなる。ただし、あまり長くても大きなメリットは得られず、不経済となる。発明者らが種々検討した結果、使用する短繊維の太さは直径10〜40μm,長さは10〜100mmの範囲が望ましいことがわかった。太さについては15〜30μmがより好ましい。長さについては20〜80mmがより好ましく、30〜70mmが一層好ましい。
【0019】
植毛される短繊維の本数は、少なすぎるとアンカー効果が薄れ、多すぎると不経済となる。検討の結果、1m2あたり250万〜500万本の割合で植毛されていることが望ましい。
【0020】
短繊維およびスパンボンドの材質はポリプロピレンとし、芯材シートの材質は高密度ポリエチレンとすることが望ましい。高密度ポリエチレンは非透水性に優れているので芯材シートに適している。また、ウエブシートと芯材シートをラミネートするとき、ポリプロピレンより融点の低い高密度ポリエチレンの芯材シートを可塑的状態まで加熱しておき、その両面にポリプロピレンのウエブシートを連続的に圧着すれば、より融点の高いポリプロピレンの短繊維はほとんど変形せずに熱接着によるラミネートが達成される。このとき、可塑的状態の高密度ポリエチレンは一部スパンボンド不織布の隙間に入り込み、その部分において短繊維も一部高密度ポリエチレンと接着してしまうことが起こりうる。しかし、発明者らの研究の結果、そのような接着部は少なく、またその接着部においても高密度ポリエチレンとの接触面積が少ない場合が多いため、全体として拘束力は弱いことが確かめられた。したがって、短繊維は引張応力を受けたときスパンボンドの内部から破断せずに大部分が抜け出せる状態になっているのである。
【0021】
図1に、本発明に使用可能な植毛シートの表面を見た電子顕微鏡写真(SEM像)の一例を示す。このシートは、ポリプロピレン長繊維を使用したスパンボンド不織布(約15g/m2)に、直径約18μm,長さ50mmのポリプロピレン短繊維を1m2あたり約315万本の割合でニードルパンチ法により植え付けたウエブシートを用意し、これを非透水性の高密度ポリエチレンからなる芯材フィルム(厚さ0.1mm)の表面(両面)に熱接着した植毛シートである。ウエブシートと芯材フィルムの接合は、ホッパー内で240〜250℃に加熱された高密度ポリエチレンをインペラー押出機で0.1mm厚に押し出して芯材フィルムを形成し、これが冷えて硬化しないうちにその両面に前記ウエブシートをラミネーターを用いて連続的に転圧することにより行った。その際、ウエブシートのスパンボンド側を芯材フィルムと接合させた。
図1から、短繊維は互いに絡み合っており、短繊維の間には空隙があることがわかる。セメント系材料と接合したとき、この空隙にセメント硬化マトリクスが入り込んで「アンカー層」を形成する。
【0022】
図2は、図1と同じ植毛シートの断面を見た電子顕微鏡写真(SEM像)である。写真の下には当該シートの断面構造について各部のおおよその範囲を示してある。芯材フィルムに由来する「芯材部」の両側にはウエブシートのスパンボンド側の一部が熱接着した領域「熱接着部」が見られる。「芯材部」と「熱接着部」からなる部分は樹脂がほぼ隙間なく高密度に存在し、植毛シートの防水性を担う。本明細書ではこれを「植毛シート基部」と呼ぶ。「植毛シート基部」の外側にはスパンボンドを構成する長繊維の束がその形を残しながら存在している領域がある。この長繊維束の間には、短繊維の全長の一部が埋もれているので、この領域を「長繊維束+短繊維部」と呼ぶ。
【0023】
当該植毛シートとセメント系材料を接合したとき、「植毛シート基部」は非透水性を有する「樹脂層」を形成する。
「長繊維束+短繊維部」には樹脂繊維がかなり高密度に存在するので、セメント粒子は進入しにくく、進入してもその量は少ない。このため、「長繊維束+短繊維部」の中では短繊維がセメント硬化マトリクスに取り囲まれずに存在する状態が実現される。しかも、短繊維は周囲の長繊維束の間に埋まっているが、固着されているわけではないので、引張応力を受けたときには動くことができる。つまり、植毛シートの「長繊維束+短繊維部」はセメント系材料を接合したときに「非アンカー層」を形成するのである。
「長繊維束+短繊維部」の外側には短繊維が空隙を有しながら存在し、この部分が「アンカー層」となる。
【0024】
図3は、図1と同じ植毛シートの表面を部分的に拡大して見た電子顕微鏡写真(SEM像)である。これは、ラミネート加工時の圧着によって可塑的状態になった芯材フィルムの樹脂がスパンボンドの間に進入し、短繊維の一部に接着した箇所を見たものである。短繊維は可塑的状態となった樹脂との接触点においても変形しておらず、その接触面積も小さいことから、接着力は弱いと考えられる。
【0025】
図4には、このような植毛シートとセメント系材料からなる本発明の接合構造の断面において、セメント系材料に「幅」のある大きな亀裂が生じたときの状態を模式的に示す。この接合構造において、植毛シート基部3は「樹脂層」を形成している。短繊維1は一部が長繊維束+短繊維部4の中に植え込まれた状態で存在し、その部分は「非アンカー層」を形成している。短繊維1の残部はセメント系材料2を構成するセメント硬化マトリクスに取り囲まれて拘束され「アンカー層」を形成している。なお、この図では短繊維1の一端が長繊維束+短繊維部4の中に存在し、他端がセメント系材料2の中に存在するように模式的に示されているが、実際には短繊維1は10〜100mmと長いものであるため、1本の短繊維は全長のうち途中の何箇所かの部分が長繊維束+短繊維部4の中に埋もれた状態となり、残部がセメント系材料2に拘束された状態となって存在する。
【0026】
セメント系材料2に亀裂5が生じ、その亀裂が拡大して「幅」を有する大きな亀裂に進展するとき、亀裂5の両側のセメント系材料2は図4に矢印で示した方向に変位する。このとき短繊維1は、アンカー層において亀裂5の部分で破断する。しかし、非アンカー層においては、短繊維1はセメント系材料2に拘束されておらず、しかも、長繊維束の間に埋もれる形で存在しており引張応力を受けたときに動ける状態になっている。このため、セメント系材料2が矢印方向に変位すると、非アンカー層中の短繊維1はセメント系材料2の変位方向に引っ張られ、その変位に追随して動く。その際、短繊維1は、その破断応力に比べかなり小さい引張応力で動くことができるので、セメント系材料2の変位によって樹脂層とアンカー層の間に生じる応力は大幅に緩和される。つまり、非アンカー層の介在によって、亀裂5が例えば1mm以上といった「幅」を形成するに至った場合でも樹脂層にはそれが破れるような大きな局所的応力は伝わらない。したがって、セメント系材料2の大きな変位量は、亀裂5の周辺をカバーする樹脂層自体の弾性によって吸収され、樹脂層は破れずに耐えることができるので、防水性が維持されるのである。また、特に樹脂層を挟んで植毛シート反対側の面にもこれと同様の接合構造を介してセメント系材料を接合させることにより、樹脂層の局部的な伸びはさらに抑えられ、亀裂5の幅が例えば3mm以上と非常に大きくなった場合にも樹脂層は破れずに耐えることができる。その際、反対側のセメント系材料への亀裂の伝播も防止される。
【0027】
比較のため、図5には、毛足の短い植毛シートとセメント系材料からなる従来の接合構造において、セメント系材料に亀裂が生じたときの短繊維の状態を模式的に表した断面図を示す。この場合、非アンカー層は存在しない。短繊維1は、樹脂/セメント界面6を挟んで、樹脂層側では植毛シート基部3に固着しており、アンカー層側ではセメント系材料2に拘束されている。
【0028】
セメント系材料2に亀裂5が生じ、図5に白抜き矢印で示した方向に変位が起こったとき、短繊維1は樹脂/セメント界面6の両側でそれぞれ固定されているので、当該界面6において短繊維1には大きな引張応力がかかる。この応力に起因して、樹脂層には図5に黒の矢印で示した方向に局所的に大きな張力が生じる。セメント系材料2の変位量は界面6における短繊維1の伸び量と、樹脂層の弾性によってある程度吸収される。しかし、亀裂5の幅が大きくなると、樹脂層は上記の局所的な大きな張力による歪みが弾性限度を超え、破れるに至る。
【0029】
なお、界面6において短繊維1が早期に破断すれば樹脂層とアンカー層の間の応力は緩和される。そのためには、短繊維1を破断強度の低い繊維で構成したり、樹脂層を硬く伸びにくい材質の樹脂で構成したりすればよい。しかし、界面6で短繊維1が破断してしまうということは、その部分で樹脂とセメントは結合していない状態になることを意味する。これは、建築物の外壁などにおいてセメント系材料の剥離・脱落を招きやすい状態をつくることになり、安全面からも望ましいとは言えない。この点、本発明の接合構造では樹脂とセメントは短繊維で結合した状態が維持されるので、セメント系材料の剥離・脱落は極めて起こりにくい。
【0030】
本発明の接合構造に適用されるセメント系材料としては、コンクリート躯体を構成するコンクリートそのものや、コンクリートの上に塗布されたモルタルなど、種々のものが対象となる。ただし、当該接合構造を形成するにはセメント系材料がまだ固まっていないうちに植毛シートとそのセメント系材料を貼り合わせる必要がある。
【0031】
既に固まったコンクリート構造物等の表面に後から非透水性植毛シートを貼り付けることにより防水処理を行ういわゆる「後貼り工法」を採用する場合は、そのコンクリート構造物等の表面にボンド材となるセメント系材料を塗布し、そのボンド材が固まらないうちにその上に本発明で規定する植毛シートを貼付すればよい。植毛シートをボンド材表面に軽く押し当ててシワを伸ばすようにすれば、後貼り工法によって本発明の接合構造が容易に形成できる。有機溶剤を用いた接着剤は一切不要である。本発明で規定する植毛を両面に施した植毛シートを使用すれば、さらにその上にセメント系材料を塗布し、必要に応じて塗料や耐候性モルタルで表面仕上げを行うことができる。
【0032】
ボンド材としては、ポルトランドセメントと硅砂を主成分とし、メチルセルロースおよびアクリル樹脂を含有するものが好適に使用できる。
【0033】
【実施例】
〔実施例1〕
本発明の防水接合構造において、「非アンカー層」の存在を確かめる簡単な実験を行った。
下記の組成を有するボンド材を水/セメント比36.7%で混練し、これを100×300×40(mm)のコンクリートブロックの広面に約2.5mm厚に塗布した。
<ボンド材組成>
ポルトランドセメント1号:13.63kg
石灰石 : 0.28kg
硅砂4号 : 3.50kg
硅砂5号 : 7.50kg
メチルセルロース : 0.05kg
アクリル樹脂 : 0.05kg
このボンド材がまだ固まらないうちに、図1で示したのと同じ植毛シートをボンド材表面に軽く押し当て、シワを伸ばす要領で貼付した。
【0034】
このまま4週間放置してボンド材が完全に固まった状態において、貼付した植毛シートを強い力で機械的にボンド材の層から剥ぎ取った。その結果、剥ぎ取った植毛シート側のほとんどの領域にはボンド材を構成するセメント系材料は全く付いていなかった。これに対し、ボンド材側の表面は植毛シートからむしり取られた短繊維で覆われていた。このことは、前記した「アンカー層」と「樹脂層」の間に、植毛シートの短繊維がセメント系材料に拘束されず、かつ、引張応力を受けたときに動ける状態で存在している層、すなわち「非アンカー層」が存在していたことを意味する。なお、剥ぎ取った植毛シート側のごく一部に粉状のセメント系材料が付いていたが、これは、アンカー層部分のセメント系材料が剥ぎ取り時に部分的に崩壊し、植毛シート側に付いたものと考えられる。
【0035】
〔実施例2〕
植毛シートの両面に本発明の接合構造によりセメント系材料を接合させ、一方のセメント系材料に約3mmの幅を有する大きな亀裂を作り、その亀裂部分で反対側のセメント系材料に亀裂が伝播しないかどうかを調べた(亀裂伝播試験)。
図6(a)に示すように、厚さ40mm,幅100mmのコンクリートブロック10aと10bをそれぞれの端面同士が当たるように突き合わせて保持し、これらのコンクリートブロックの広面に実施例1と同様のセメント系材料からなるボンド材12aを厚さ約2.5mmに塗布し、このボンド材がまだ固まらないうちに、図1で示したのと同じ植毛シート13をボンド材表面に軽く押し当て、シワを伸ばす要領で貼付した。さらにその上に上記と同様のボンド材12bを厚さ約3mmに塗布した。
【0036】
この状態で4週間保持した後、ボンド材12a,12bが完全に固まった状態において、図6(b)に示す矢印方向にコンクリートブロック10aおよび10bを引っ張り、その間隔を3mmにした。このとき、コンクリートブロック10aと10bの間の亀裂がボンド材12aに伝播し、ボンド材12aにも幅約3mmの亀裂14が生じた。しかしながら、植毛シート13を挟んで反対側のボンド材12bには亀裂は生じていなかった。このことは、本発明の接合構造は、セメント系材料に生じた「幅」のある大きな亀裂の歪みを吸収する性質を有し、植毛シートを挟んで反対側のセメント系材料への亀裂伝播を防ぐ能力が極めて高いことを意味する。
なお、図6中、ボンド材および植毛シートの厚さはコンクリートブロックの厚さ(40mm)に比べ誇張して示してある。
【0037】
〔実施例3〕
コンクリート製調整池造成中に、地盤変動等の原因で底部コンクリートに亀裂が生じた際、本発明の接合構造にて植毛シートを敷設した部分において防水性が維持できた事例を紹介する。
図7に示すように、底部が10m×10m、上部の開口部が18m×18m、深さが4mのコンクリート製調整池の造成において、コンクリート20を打設後、固まってから、その表面に実施例1で用いたのと同様のボンド材12を厚さ約2.5mmに塗布し、ボンド材12がまだ固まらないうちに、図1に示した植毛シート13をボンド材12の表面に軽く押し当て、シワを伸ばす要領で貼付した。実際は、その上にさらにボンド材を塗布した後、アクリル系樹脂塗装を行う予定であったが、工事の都合により、植毛シート13を貼設したままの状態で幾日か放置しておいた。すると、ボンド材12が固まった後において、底部コンクリート(およびボンド材)に多数の亀裂5が生じていた。亀裂5の発生状況は植毛シート13の上から透かして観察することができ、亀裂5の幅は最大で4mm程度にも達していた。底部コンクリートは一部隆起している部分も見られたため、亀裂発生の原因は地盤変動であると考えられた。
【0038】
亀裂5には土壌21から水が侵入しており、亀裂5の周囲には最大数cmの幅で水がボンド材12と植毛シート13の間に浸透している様子が観察された。しかしながら、植毛シート13の上部は完全に乾燥しており、亀裂5からの水漏れは防止された。このことは、本発明の接合構造は、セメント系材料に「幅」のある大きな亀裂が生じた場合にも優れた防水性能を維持することを意味する。調整池の場合だと、逆に調整池中の有害物質が土壌中へ流出することを防止する上で大きな効果があると言える。
【0039】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の接合構造によれば、セメント系材料に「幅」のある大きな亀裂が生じた場合にも、その歪みを吸収することができ、防水性能が維持されるとともに、植毛シートを挟んで反対側のセメント系材料への亀裂伝播が防止される。これは、「非アンカー層」の存在によって実現されるものであり、毛足の短い短繊維を接着剤で植毛した植毛シートを使用していた従来の接合構造においては実現できなかったものである。したがって、本発明は、防水性が要求されるコンクリート躯体等の防水工法において、従来よりも信頼性を大幅に向上させることができ、特に、施工の容易な「後貼り防水工法」の普及に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用可能な植毛シートの表面を見た電子顕微鏡写真(SEM像)である。
【図2】図1と同じ植毛シートの断面を見た電子顕微鏡写真(SEM像)である。
【図3】図1と同じ植毛シートの表面を部分的に拡大して見た電子顕微鏡写真(SEM像)である。
【図4】本発明の例である防水接合構造においてセメント系材料に「幅」のある大きな亀裂が生じたときの状態を模式的に表した当該防水接合構造の断面図である。
【図5】毛足の短い植毛シートとセメント系材料からなる接合構造においてセメント系材料に亀裂が生じたときの状態を模式的に表した当該接合構造の断面図である。
【図6】亀裂伝播試験の試料を模式的に示した断面図。(a)は亀裂形成前、(b)は亀裂形成後。
【図7】造成中の調整池の形状を模式的に示した断面図である。(b)は(a)の破線円部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 短繊維
2 セメント系材料
3 植毛シート基部
4 長繊維束+短繊維部
5 亀裂
6 樹脂/セメント界面
10a,10b コンクリートブロック
11 コンクリートブロックの端面突き合わせ部
12,12a,12b ボンド材
13 植毛シート
14 「幅」のある亀裂
20 コンクリート
21 土壌

Claims (3)

  1. 高分子樹脂からなるスパンボンド不織布に直径10〜40μm,長さ10〜100mmの高分子樹脂短繊維を1m2あたり250万〜500万本の割合でニードルパンチ法で植え付けたウエブシートの、スパンボンド側の面を非透水性樹脂からなる芯材フィルムの表面に熱接着してなる植毛シートと、セメント系材料とが接合した防水構造であって、植毛シート側から順に、
    (A) 樹脂のみからなり非透水性を有する「樹脂層」
    (B) 植毛シートの短繊維がセメント系材料に拘束されず、かつ、引張応力を受けたときに動ける状態で存在している「非アンカー層」
    (C) 植毛シートの短繊維がセメント系材料に拘束されている「アンカー層」
    (D) セメント系材料のみからなる「セメント層」
    を形成している植毛シートとセメント系材料の防水接合構造。
  2. ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に、直径10〜40μm,長さ10〜100mmのポリプロピレン短繊維を1m2あたり250万〜500万本の割合でニードルパンチ法により植え付けたウエブシートの、スパンボンド側の面を非透水性の高密度ポリエチレンからなる芯材フィルムの表面に熱接着してなる植毛シートと、セメント系材料とが接合した防水構造であって、植毛シート側から順に、
    (A) 樹脂のみからなり非透水性を有する「樹脂層」
    (B) 植毛シートの短繊維がセメント系材料に拘束されず、かつ、引張応力を受けたときに動ける状態で存在している「非アンカー層」
    (C) 植毛シートの短繊維がセメント系材料に拘束されている「アンカー層」
    (D) セメント系材料のみからなる「セメント層」
    を形成している植毛シートとセメント系材料の防水接合構造。
  3. 植毛シートと接合するセメント系材料が、ポルトランドセメントと硅砂を主成分とし、メチルセルロースおよびアクリル樹脂を含有するものである請求項1または2に記載の防水接合構造。
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