JP4887550B2 - 排ガス浄化材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンから排出される排ガス中に含まれるパティキュレート(固体状炭素微粒子、液体あるいは固体状の高分子量炭化水素微粒子)を燃焼して排ガスを浄化する排ガス浄化材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンからの排ガスに含まれるパティキュレートは、その粒子径がほぼ1μm以下で大気中に浮遊しやすく、呼吸時に人体に取り込まれやすい。また、このパティキュレートは発ガン性物質も含んでいることから、ディーゼルエンジンからのパティキュレートの排出に関する規制が強化されつつある。
【0003】
排ガスからのパティキュレートを除去する方法の一つとして、耐熱性の3次元構造体からなる排ガス浄化材でパティキュレートを捕集した後、バーナーやヒーター等の加熱手段で排ガス浄化材を加熱して、パティキュレートを燃焼し、炭酸ガスに変えて放出する方法がある。また、前述の排ガス浄化材に金属酸化物等からなる排ガス浄化用触媒を担持させた排ガス浄化材は、捕集したパティキュレートを排ガス浄化用触媒の触媒作用によって、より低温で燃焼させることができる。
【0004】
このような排ガス浄化用触媒を担持した排ガス浄化材を用いて、パティキュレートを排ガス温度で燃焼することができれば、加熱手段を排ガス浄化装置内に配設する必要がなくなるので、排ガス浄化装置の構成を簡単にすることができる。
【0005】
しかしながら、現状では排ガス浄化用触媒を担持した排ガス浄化材であっても、排ガス温度でパティキュレートを十分に燃焼させることは困難であり、加熱手段との併用が不可欠となっている。したがって、より低温でパティキュレートを燃焼できる高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を担持した排ガス浄化材の開発が望まれている。
【0006】
従来の排ガス浄化用触媒としては、これまでにCuやV等の金属酸化物を用いたものが比較的高い活性を有することが知られている。例えば、特開昭58−143840号公報(以下、イ号公報と略称する)には、CuとVを含む複合金属酸化物からなる排ガス浄化用触媒が開示されている。また、特開昭58−174236号公報(以下、ロ号公報と略称する)には、Cu、V、Mo等の金属酸化物にアルカリ金属を添加した排ガス浄化用触媒が開示されている。また、特公平4−42063公報(以下、ハ号公報と略称する)には、Cu、Mn、Mo等の金属酸化物にアルカリ金属の酸化物と貴金属を添加した排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化材は以下のような課題を有していた。
【0008】
1)イ号公報およびロ号公報に記載の排ガス浄化用触媒及びこれを担持した排ガス浄化材は、排ガス浄化用触媒の触媒活性が、低温でパティキュレートを十分に燃焼できるほど高くないため、排ガス浄化材に捕集されたパティキュレーを排ガス温度で燃焼させることができない。
【0009】
2)ハ号公報に記載の排ガス浄化用触媒は、貴金属塩(塩化白金、等)と遷移金属塩(硝酸銅等)を同時に無機質基盤(チタニアシリカ等)に担持させた構成を有している。この場合、遷移金属塩と貴金属塩の両者は機能が異なる触媒であるため、混在させることにより個々の触媒機能が十分に発揮されないという問題があった。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、パティキュレート燃焼に際して高い触媒活性を有し、排ガス浄化率の高い排ガス浄化材を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記従来の課題を解決するために、本発明の排ガス浄化材は、貴金属を無機酸化物に担持させて形成された貴金属触媒層を有し、排ガス流路の上流側に設けられた3次元構造体と、前記第1の3次元構造体の下流側に設けられた遷移金属触媒層を有する第2の3次元構造体とを備えた構成を有している。
【0012】
この構成により、パティキュレート燃焼に際して高い触媒活性を有し、排ガス浄化率の高い排ガス浄化材を提供することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の排ガス浄化材は、貴金属を無機酸化物に担持させて形成された貴金属触媒層を有し、排ガス流路の上流側に設けられた3次元構造体(a)と、前記3次元構造体(a)の下流側に設けられた遷移金属触媒層を有する3次元構造体(b)とを備え、前記上流側に配置される3次元構造体(a)がフロースルータイプのハニカム状のフィルタであり、かつ前記下流側に配置される3次元構造体(b)がウォールスルータイプのハニカム状のフィルタであり、前記貴金属触媒層が、Pt、Pd、Rh、Ruから選ばれる1種以上の貴金属を含み、前記遷移金属触媒層が、遷移金属の酸化物と1種以上のアルカリ金属硫酸塩とを有し、前記遷移金属の酸化物が、Cu、Vから選ばれる1種以上の酸化物を含む構成を有している。
【0014】
これによって、以下の作用を有する。
【0015】
(1)それぞれ触媒特性の異なる貴金属触媒層と、遷移金属触媒層とを分離して別々の構造体上に形成させることで、触媒同士の反応を抑制して、それぞれの触媒特性を十分に発揮させることができる。
【0016】
(2)貴金属を含む貴金属触媒層と、遷移金属触媒層とを分離して別々の構造体上に置くことで貴金属の必要量を少なくして低いコストで排ガス浄化材を製造することができる。
【0017】
(3)各触媒層を分離して設けているために、遷移金属と貴金属との反応などによる触媒組成の変化を抑制して、触媒活性の劣化を防いで耐用性を高めることができる。
【0018】
(4)上流側の貴金属触媒層によりパティキュレート中のカーボン成分以外の成分を浄化し、下流側に配置した遷移金属触媒層の遷移金属によりパティキュレート中のカーボン成分を浄化することができるため、それぞれ最適条件の異なる浄化反応を独立に制御して浄化処理を効率的に行わせることができる。
【0019】
ここで、3次元構造体(a)としては、フロースルータイプのセラミックハニカム、フロースルータイプのメタルハニカム等のタイプのものが挙げられるが、そのなかではフロースルータイプのセラミックハニカムが好適に使用される。セラミックハニカムの材質としては、コージェライト、チタン酸アルミニウム、ムライト、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、炭化珪素等の耐熱性の高いセラミックスが挙げられる。
【0020】
3次元構造体(b)としては、ウォールスルータイプのセラミックハニカムが好適に使用される。セラミックハニカムの材質としては、コージェライト、チタン酸アルミニウム、ムライト、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、炭化珪素等が挙げられる。
【0021】
貴金属触媒層に用いられる耐熱性の無機酸化物としては、γ−アルミナ等の活性アルミナ、α−アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、炭化珪素、もしくはこれらの複合酸化物である、シリカ−アルミナ、アルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、チタニア−ジルコニア等、またはこれらの混合物が挙げられるが、好ましくは活性アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、シリカ−アルミナまたはこれらの混合物がよい。
【0022】
遷移金属層は遷移金属を含むものであり、遷移金属としては、Cu、Vが該当し、これらの酸化物や複合酸化物を単独で、若しくは、遷移金属を、γ−アルミナ等の活性アルミナ、α−アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、炭化珪素、もしくはこれらの複合酸化物に担持させ状態で用いることができる。また、これらに加えてアルカリ金属塩を添加することもできる。
【0023】
(5)上流側の3次構造体(a)をフロースルータイプのフィルタあるいは発泡体にすることで、パティキュレート中のカーボン成分を上流側のフィルタに捕集させることなく下流側のフィルタに送ることができる。
【0024】
(6)カーボン成分が上流側のフィルタに捕捉されることなく下流側へ送られるので、上流側の貴金属触媒では、パティキュレート中のカーボン成分以外の排ガス成分を浄化することができる。
【0025】
(7)カーボン成分のみを下流側へ送ることで下流側の遷移金属の酸化物+アルカリ金属の硫酸塩触媒によるパティキュレート中のカーボン成分を効率よく燃焼させるための触媒としての機能を十分に発揮させることができる。
【0026】
(8)貴金属が、Pt、Pd、Rh、Ruから選ばれる1種以上の貴金属を含むので、貴金属触媒によるパティキュレート中カーボン成分以外の排ガスの浄化を効率的かつ安定的に発揮させることができる。
【0027】
(9)貴金属が、Ptを含む場合には、パティキュレート中のカーボン成分以外の排ガスの浄化を最も効率的かつ安定的に行うことができる。
【0028】
(10)遷移金属層に備えられたアルカリ金属硫酸塩が、遷移金属層の焼結温度を低下させるため、遷移金属層の焼結性が高められて遷移金属を3次元構造体上に安定に被覆させることができ、使用時における耐久性を高めることができる。
【0029】
(11)貴金属触媒と、遷移金属酸化物及びアルカリ金属硫酸塩からなる触媒とを分離して別々の3次元構造体上に担持させることで、触媒同士の反応を抑制して、それぞれの触媒特性を十分に発揮させることができる。
【0030】
(12)遷移金属の酸化物及びアルカリ金属の硫酸塩を含む触媒層と貴金属を含む触媒層を分離して設けているために、遷移金属の酸化物あるいはアルカリ金属の硫酸塩と貴金属との反応などによる触媒組成の変化を防いで、排ガス浄化材の耐用性を高めることができる。
【0031】
(13)下流側に配置した遷移金属の酸化物とアルカリ金属の硫酸塩を含む触媒により、遷移金属酸化物とアルカリ金属硫酸塩との触媒相乗効果を有効に発揮させパティキュレートの酸化反応をより迅速に行わせることができ、パティキュレート中のカーボン成分をさらに効率的に酸化させることができる。
【0032】
アルカリ金属の硫酸塩としては硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ルビジウム、硫酸セシウムおよびこれらの混合物等が挙げられる。
【0033】
(14)遷移金属の酸化物がCu、Vから選ばれる1種以上の酸化物を含むので、エンジンの種類や、排ガス温度等の使用条件に応じてこれらの中から適宜、選択してパティキュレートの燃焼に高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を提供することができる。
【0034】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排ガス浄化材であって、前記遷移金属触媒層が、無機酸化物に担持させた遷移金属の酸化物と1種以上のアルカリ金属硫酸塩とを備えた構成を有している。
【0035】
この構成によって、請求項1の作用に加え、(1)遷移金属酸化物とアルカリ金属硫酸塩を無機酸化物に担持する事で遷移金属酸化物とアルカリ金属硫酸塩の必要量を少なくして低いコストで製造することができるという作用を有する。
【0036】
遷移金属触媒層に用いられる触媒の担持体となる無機酸化物としては、γ−アルミナ等の活性アルミナ、α−アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、炭化珪素、もしくはこれらの複合酸化物である、シリカ−アルミナ、アルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、チタニア−ジルコニア等、またはこれらの混合物が挙げられるが、好ましくは活性アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、シリカ−アルミナまたはこれらの混合物がよい。
【0037】
請求項3に記載の排ガス浄化材は、請求項1または2において、前記貴金属触媒層の無機酸化物が、Ta2O5、Nb2O5、WO3、SnO2、SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2の内の1種以上を含有して構成されている。
【0038】
この構成によって、請求項1または2の作用の他、以下の作用が得られる。
【0039】
(1)貴金属を担持させる担体としてTa2O5、Nb2O5、WO3、SnO2、SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2から選ばれる1種以上の無機酸化物を用いると貴金属触媒の表面積が大きくなり、パティキュレートとの接点が増加するので、貴金属触媒による排ガス中のパティキュレートの酸化性能を最も効率的かつ安定的に発揮させることができる。
【0040】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排ガス浄化材であって、前記遷移金属触媒層が、CuとVの複合酸化物を含んで構成されている。
【0041】
この構成によって、請求項1乃至3のいずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
【0042】
(1)遷移金属層の酸化物がCuとVの複合酸化物を含むので、パティキュレートの燃焼に際して高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を提供できる。
【0043】
請求項5に記載の排ガス浄化材は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記遷移金属触媒層が、Cu5V2O10、CuV2O6、Cu3V2O8から選ばれる1種以上の複合酸化物を含んで構成されている。
【0044】
これによって、請求項1乃至4のいずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
【0045】
(1)遷移金属層の複合酸化物がCu5V2O10、CuV2O6、Cu3V2O8から選ばれる1種以上の複合酸化物を含むので、パティキュレートの燃焼に際してさらに高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を提供することができる。
【0046】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の排ガス浄化材であって、前記遷移金属触媒層が、硫酸セシウムを含んで構成されている。
【0047】
この構成によって、請求項1乃至5のいずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
【0048】
(1)アルカリ金属硫酸塩が硫酸セシウムを含むので、遷移金属触媒層を3次元構造体に形成させる場合の焼結温度を低下させ、パティキュレートの燃焼に際して高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を安価に製造することができる。
【0049】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排ガス浄化材であって、前記遷移金属触媒層のアルカリ金属硫酸塩が、硫酸セシウムと硫酸カリウムの混合物であるように構成されている。
【0050】
この構成によって、請求項1乃至6のいずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
【0051】
(1)アルカリ金属硫酸塩が硫酸セシウムと硫酸カリウムの混合物を含むので、パティキュレートの燃焼に際してさらに高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を提供することができる。
【0052】
(実施の形態1)図1は実施の形態1の排ガス浄化材の構成図である。
【0053】
図1において、1は排ガス浄化材、2は貴金属触媒層を有する3次元構造体、3は遷移金属触媒層を有する3次元構造体であって2は3の上流側に設けられる。
【0054】
以上のように構成された排ガス浄化材の動作について以下に説明する。
【0055】
排ガスは排ガス浄化材1の上流側(排ガス流入側)に備えられた排ガス流路が多数形成されたフロースルータイプのフィルタからなる3次元構造体から入り、その表面に形成された貴金属を無機酸化物に担持させた貴金属触媒を含む貴金属触媒層によって、排ガス中の未燃焼物の燃焼が促進される。
【0056】
次に、排ガスが下流側(排ガス流出側)に備えられた排ガス流路が多数形成されたウォールスルータイプのフィルタからなる3次元構造体に入り、その表面に形成された排ガス中の未燃焼物の燃焼を促進させる触媒としての遷移金属の酸化物とアルカリ金属の硫酸塩とを含む遷移金属触媒層を通って排出される。
【0057】
実施の形態1の排ガス浄化材1は以上のように構成されているので以下の作用を有する。
【0058】
(1)それぞれ触媒特性の異なる貴金属触媒層と、遷移金属触媒層とを分離して別々の構造体上に形成させることで、触媒同士の反応を抑制して、それぞれの触媒特性を十分に発揮させることができる。
【0059】
(2)貴金属を含む貴金属触媒層を分離して別々の構造体上に置くことで貴金属の必要量を少なくして低いコストで排ガス浄化材を製造することができる。
【0060】
(3)遷移金属層がアルカリ金属硫酸塩を有しているので、焼結温度を低下させて遷移金属を3次元構造体上に安定に被覆させることができ、使用時における耐久性を高めることができる。
【0061】
(実施の形態2)本発明の実施の形態2における排ガス浄化材は、上流側(排ガス流入側)に排ガス流路が多数形成されたフロースルータイプのフィルタからなる3次元構造体と、その表面に形成される排ガス中の未燃焼物の燃焼を促進させる触媒としての貴金属を無機酸化物に担持させた貴金属触媒を含む貴金属触媒層とを有し、下流側(排ガス流出側)に排ガス流路が多数形成されたウォールスルータイプのフィルタからなる3次元構造体と、その表面に形成される排ガス中の未燃焼物の燃焼を促進させる触媒として無機酸化物に担持させた遷移金属の酸化物とアルカリ金属の硫酸塩とを含む遷移金属触媒層を有している。なお、実施の形態2の排ガス浄化材は実施の形態1の排ガス浄化材における遷移金属触媒層の構成を変えたものであり、全体構成は図1に示すものとほぼ同じである。
【0062】
実施の形態2の排ガス浄化材は以上のように構成されているので以下の作用を有する。
【0063】
(1)遷移金属の酸化物とアルカリ金属の硫酸塩とを無機酸化物に担持させているので、基板となる3次元構造体と遷移金属が接触するのを防止することができると共に、遷移金属を安定に保持させることができる。
【0064】
(2)触媒特性の異なる貴金属触媒層と、遷移金属触媒層とを分離して別々の構造体上に形成させることで、触媒同士の反応を抑制して、それぞれの触媒特性を十分に発揮させることができる。
【0065】
(3)貴金属を含む貴金属触媒層を分離して別々の構造体上に置くことで貴金属の必要量を少なくして低いコストで排ガス浄化材を製造することができる。
【0066】
(参考の形態1)図2は実施の形態3の排ガス浄化材の構成図である。
【0067】
図2において、4は貴金属触媒層とその下流側に設けられた遷移金属触媒層とを有する3次元構造体である。
【0068】
本発明の実施の形態3における排ガス浄化材は、図2に示すように1つのウォールスルータイプのフィルタからなる3次元構造体と、その上流側(排ガス流入側)の表面に形成される排ガス中の未燃焼物の燃焼を促進させる触媒として貴金属を無機酸化物に担持させた貴金属触媒を含む被覆層とを有し、下流側(排ガス流出側)の表面に形成される排ガス中の未燃焼物の燃焼を促進させる触媒として遷移金属の酸化物とアルカリ金属の硫酸塩とを含む被覆層を有した排ガス浄化材で構成されている。
【0069】
参考の形態1の排ガス浄化材は以上のように構成されているので、必要なフィルタを一つに集合させることでフィルタ保持材を少なくして、低コストでその製造を行うことができると共に、触媒特性の異なる貴金属触媒層と、遷移金属触媒層とを分離して別々の構造体上に形成させることで、触媒同士の反応を抑制して、それぞれの触媒特性を有効に発揮させることができる。
【0070】
(参考の形態2)本発明の参考の形態2における排ガス浄化材は、ウォールスルータイプのフィルタからなる3次元構造体と、その上流側の表面に形成される排ガス中の未燃焼物の燃焼を促進させる触媒として貴金属を無機酸化物に担持させた貴金属触媒を含む貴金属触媒層とを有し、下流側の表面に形成される排ガス中の未燃焼物の燃焼を促進させる触媒として無機酸化物に担持させた遷移金属の酸化物とアルカリ金属の硫酸塩を含む遷移金属触媒層を有した排ガス浄化材で構成されている。なお、参考の形態2の排ガス浄化材は参考の形態1の排ガス浄化材における遷移金属触媒層の構成を変えたものであり、全体構成は図2に示すものとほぼ同様である。
【0071】
参考の形態2の排ガス浄化材は以上のように構成されているので、遷移金属の酸化物とアルカリ金属の硫酸塩とを無機酸化物に担持させ、基板となる3次元構造体と遷移金属が接触するのを防止することができると共に、触媒特性の異なる貴金属触媒層と遷移金属触媒層とを分離して別々の構造体上に形成させることで、貴金属と遷移金属の同士の反応も抑制して、それぞれの触媒特性を十分に発揮させることができる。
【0072】
【実施例】
以下、前記実施の形態をさらに具体化した実施例について説明する。
【0073】
(実施例1)γ−アルミナ粉末(住友化学工業製)6000gと白金の塩としてテトラミンジクロロ白金(添川理化学製)217gを精製水30000gに加えて十分攪拌した後、コールドエバポレーターにて減圧乾燥し、得られた粉末を電気炉にて600℃、5hr焼成を行い、γ−アルミナに担持された白金触媒を得た。白金は金属としてアルミナに対して2重量パーセント担持されている。この得られた触媒と、分散剤としてPOIZ−532A(花王製)と、をそれぞれ1428g、1680gを精製水6000gに加えて、十分に攪拌して、実施例1のγ−アルミナに担持させた白金触媒のスラリーを得た。
【0074】
(実施例2)遷移金属の酸化物の塩として硫酸銅五水和物150.71gと酸化硫酸バナジウム39.34gと、アルカリ金属の硫酸塩としての硫酸セシウム109.21gとをそれぞれ精製水2000gに溶かし十分攪拌して、実施例2の触媒溶液を得た。
【0075】
(実施例3)チタニア粉末(石原産業製)420gと遷移金属の酸化物の塩として硫酸銅五水和物150.71gと酸化硫酸バナジウム39.34gをそれぞれ1300gの精製水に溶かし十分攪拌した後、コールドエバポレーターにて減圧乾燥し、得られた粉末を電気炉にて900℃、5hr焼成を行い、チタニアに担持された銅−バナジウム複合金属酸化物触媒を得た。この得られた触媒16.338gと、硫酸セシウム0.5gと、分散剤として主成分がポリカルボン酸型高分子界面活性剤であるPOIZ−532A(花王製)16.8gとを精製水60gに加えて、十分攪拌して、実施例3のチタニア担持の銅−バナジウム金属酸化物+硫酸セシウム触媒のスラリー触媒溶液を得た。
【0076】
(実施例4)耐熱性の3次元構造体として、フロースルータイプのコージェライトフィルタ(NGK製 5.66インチ、100セル/インチ)を2セル×5セル×15mmに切り出しこれに実施例1で得られたスラリー溶液に含浸させ、余分な溶液をエアーガンにて取り除いた後、液体窒素を用いて付着した触媒溶液を凍結させた。次に、このフィルタを真空凍結乾燥装置(共和真空製)内に設置し、凍結した触媒溶液の水分を昇華させた後、フィルタを電気炉内にて600℃で5時間熱処理することにより、均一にアルミナ担持の白金触媒を担持した。
【0077】
以上の工程で排ガス浄化材を製造し、これを実施例4とした。
【0078】
(実施例5)耐熱性の3次元構造体として、ウォールスルータイプのコージェライトフィルタ(NGK製 5.66インチ、100セル/インチ)を2セル×5セル×15mmに切り出しこれに実施例2で得られた触媒溶液に含浸させ、余分な溶液をエアーガンにて取り除いた後、液体窒素を用いて付着した触媒溶液を凍結させた。次に、このフィルタを真空凍結乾燥装置(共和真空製)内に設置し、凍結した触媒溶液の水分を昇華させた後、フィルタを電気炉内にて900℃で5時間熱処理することにより、均一に銅とバナジウムの複合金属酸化物と硫酸セシウムを担持した。
【0079】
以上の工程で排ガス浄化材を製造し、これを実施例5とした。
【0080】
(実施例6)耐熱性の3次元構造体として、ウォールスルータイプのコージェライトフィルタ(NGK製 5.66インチ、100セル/インチ)を2セル×5セル×15mmに切り出しこれに実施例3で得られたスラリー溶液に含浸させ、余分な溶液をエアーガンにて取り除いた後、液体窒素を用いて付着した触媒溶液を凍結させた。次に、このフィルタを真空凍結乾燥装置(共和真空製)内に設置し、凍結した触媒溶液の水分を昇華させた後、フィルタを電気炉内にて600℃で5時間熱処理することにより、均一にチタニア担持の銅とバナジウムの複合金属酸化物と、硫酸セシウムを担持した。
【0081】
以上の工程で排ガス浄化材を製造し、これを実施例6とした。
【0082】
(比較例1)耐熱性の3次元構造体として、フロースルータイプのコージェライトフィルタ(NGK製 5.66インチ、100セル/インチ)を2セル×5セル×15mmに切り出し電気炉内にて600℃で5時間熱処理した。
【0083】
以上の工程で排ガス浄化材を製造し、これを比較例1とした。
【0084】
(比較例2)耐熱性の3次元構造体として、ウォールスルータイプのコージェライトフィルタ(NGK製 5.66インチ、100セル/インチ)を2セル×5セル×15mmに切り出しこれに実施例2で得られた触媒溶液に含浸させ、余分な溶液をエアーガンにて取り除いた後、液体窒素を用いて付着した触媒溶液を凍結させた。次に、このフィルタを真空凍結乾燥装置(共和真空製)内に設置し、凍結した触媒溶液の水分を昇華させた後、フィルタを電気炉内にて900℃で5時間熱処理することにより、均一に銅とバナジウムの複合金属酸化物と硫酸セシウムを担持した。
【0085】
さらに、実施例1で得られたスラリー溶液に含浸させ、余分な溶液をエアーガンにて取り除いた後、液体窒素を用いて付着した触媒溶液を凍結させた。次に、このフィルタを真空凍結乾燥装置(共和真空製)内に設置し、凍結した触媒溶液の水分を昇華させた後、フィルタを電気炉内にて600℃で5時間熱処理することにより、均一にアルミナ担持の白金触媒を担持した。以上の工程で排ガス浄化材を製造し、これを比較例2とした。
【0086】
(実施例7〜10)実施例4と同じ方法で、ただし貴金属として白金の代わりに(表2)に示した貴金属を担持して排ガス浄化材を製造し、これを実施例7〜10とした。
【0087】
(比較例3)実施例4と同じ方法で、ただし貴金属として白金の代わりに(表2)に示した貴金属を担持して排ガス浄化材を製造し、これを比較例3とした。
【0088】
(実施例11〜17)実施例4と同じ方法で、ただし白金を担持させるアルミナの代わりに(表3)に示した無機酸化物に担持して排ガス浄化材を製造し、これを実施例12〜17とした。
【0089】
(比較例4)実施例4と同じ方法で、ただし実施例1で得られた白金を担持させたアルミナスラリーの代わりに白金溶液を含浸させ、余分な溶液をエアーガンにて取り除いた後、液体窒素を用いて付着した触媒溶液を凍結させた。次に、このフィルタを真空凍結乾燥装置(共和真空製)内に設置し、凍結した触媒溶液の水分を昇華させた後、フィルタを電気炉内にて600℃で5時間熱処理することにより、均一に白金触媒を担持した。これを第4比較例とした。
【0090】
(実施例18、参考例19〜20、実施例21、参考例22〜23)実施例5と同じ方法で、ただし銅とバナジウムの複合金属酸化物の代わりに(表4)に示した金属酸化物を担持して排ガス浄化材を製造し、これを実施例18、参考例19〜20、実施例21、参考例22〜23とした。
【0091】
(比較例5)実施例5と同じ方法で、ただし銅とバナジウムの複合金属酸化物の代わりに(表4)に示した金属酸化物を担持して排ガス浄化材を製造し、これを比較例5とした。
【0092】
(実施例24〜25)実施例5と同じ方法で、ただし銅とバナジウムの複合金属酸化物の代わりに(表5)に示した金属酸化物を担持して排ガス浄化材を製造し、これを実施例24、25とした。
【0093】
(実施例26、参考例27〜28、実施例29、参考例30〜31)実施例6と同じ方法で、ただし銅とバナジウムの複合金属酸化物の代わりに(表6)に示した金属酸化物を担持して排ガス浄化材を製造し、これを実施例26、参考例27〜28、実施例29、参考例30〜31とした。
【0094】
(比較例6)実施例6と同じ方法で、ただし銅とバナジウムの複合金属酸化物の代わりに(表6)に示した金属酸化物を担持して排ガス浄化材を製造し、これを比較例6とした。
【0095】
(実施例32〜33)実施例6と同じ方法で、ただし銅とバナジウムの複合金属酸化物の代わりに(表7)に示した金属酸化物を担持して排ガス浄化材を製造し、これを実施例32、33とした。
【0096】
(実施例34〜38)実施例5と同じ方法で、ただしアルカリ金属の硫酸塩として硫酸セシウムの代わりに(表8)に示したアルカリ金属の硫酸塩を担持して排ガス浄化材を製造し、これを実施例34〜38とした。
【0097】
(比較例7)実施例5と同じ方法で、ただしアルカリ金属の硫酸塩として硫酸セシウムの代わりに(表8)に示したアルカリ土類金属の硫酸塩を担持して排ガス浄化材を製造し、これを比較例7とした。
【0098】
(実施例39〜43)実施例6と同じ方法で、ただしアルカリ金属の硫酸塩として硫酸セシウムの代わりに(表9)に示したアルカリ金属の硫酸塩を担持して排ガス浄化材を製造し、これを実施例39〜43とした。
【0099】
(比較例8)実施例6と同じ方法で、ただしアルカリ金属の硫酸塩として硫酸セシウムの代わりに(表9)に示したアルカリ土類金属の硫酸塩を担持して排ガス浄化材を製造し、これを比較例8とした。
【0100】
(実施例44)耐熱性の3次元構造体として、フロースルータイプのコージェライトフィルタ(NGK製 5.66インチ、100セル/インチ)に実施例1で得られたスラリー溶液に含浸させ、余分な溶液をエアーガンにて取り除いた後、液体窒素を用いて付着した触媒溶液を凍結させた。次に、このフィルタを真空凍結乾燥装置(共和真空製)内に設置し、凍結した触媒溶液の水分を昇華させた後、フィルタを電気炉内にて600℃で5時間熱処理することにより、均一にアルミナ担持の白金触媒を担持した。
【0101】
以上の工程で排ガス浄化材を製造し、これを実施例44とした。
【0102】
(実施例45)耐熱性の3次元構造体として、ウォールスルータイプのコージェライトフィルタ(NGK製 5.66インチ、100セル/インチ)に実施例2で得られた触媒溶液に含浸させ、余分な溶液をエアーガンにて取り除いた後、液体窒素を用いて付着した触媒溶液を凍結させた。次に、このフィルタを真空凍結乾燥装置(共和真空製)内に設置し、凍結した触媒溶液の水分を昇華させた後、フィルタを電気炉内にて900℃で5時間熱処理することにより、均一に銅とバナジウムの複合金属酸化物と硫酸セシウムを担持した。
【0103】
以上の工程で排ガス浄化材を製造し、これを実施例45とした。
【0104】
(参考例46)耐熱性の3次元構造体として、ウォールスルータイプのコージェライトフィルタ(NGK製 5.66インチ、100セル/インチ)の上流側の半分に実施例1で得られたスラリー溶液に含浸させ、余分な溶液をエアーガンにて取り除いた後、液体窒素を用いて付着した触媒溶液を凍結させた。次に、このフィルタを真空凍結乾燥装置(共和真空製)内に設置し、凍結した触媒溶液の水分を昇華させた後、フィルタを電気炉内にて600℃で5時間熱処理することにより、均一にアルミナ担持の白金触媒を担持した。つぎに、この耐熱性の3次元構造体の下流側の半分に実施例3で得られたスラリー溶液に含浸させ、余分な溶液をエアーガンにて取り除いた後、液体窒素を用いて付着した触媒溶液を凍結させた。次に、このフィルタを真空凍結乾燥装置(共和真空製)内に設置し、凍結した触媒溶液の水分を昇華させた後、フィルタを電気炉内にて600℃で5時間熱処理することにより、均一にチタニア担持の銅とバナジウムの複合金属酸化物と、硫酸セシウムを担持した。
【0105】
以上の工程で排ガス浄化材を製造し、これを参考例46とした。
【0106】
(比較例9)実施例44と同じ方法で、耐熱性の3次元構造体として、フロースルータイプのコージェライトフィルタの代わりにウォールスルータイプのコージェライトフィルタを用いて排ガス浄化材を製造し、これを比較例9とした。
【0107】
(比較例10)実施例45と同じ方法で、耐熱性の3次元構造体として、ウォールスルータイプのコージェライトフィルタの代わりにフロースルータイプのコージェライトフィルタを用いて排ガス浄化材を製造し、これを比較例10とした。
【0108】
(比較例11)実施例46と同じ方法で、耐熱性の3次元構造体として、ウォールスルータイプのコージェライトフィルタの代わりにフロースルータイプのコージェライトフィルタを用いて排ガス浄化材を製造し、これを比較例11とした。
【0109】
(評価例1)第4実施例、第6実施例、第1比較例〜第2比較例において得られた排ガス浄化材について、以下のようなパティキュレートの燃焼実験を行った。
【0110】
前記各実施例および比較例で得られた排ガス浄化材の1つに模擬パティキュレート(ナカライ製のカーボンにエイコサンとドコサンをそれぞれ5重量%加えたもの)の粉末をフィルタ表面に担持させて、内径12mmの石英ガラス製反応管内に充填した。
【0111】
さらに、前記各実施例で得られた排ガス浄化材の1つを上記の浄化材の上流側に充填した。
【0112】
反応管内に5vol%の酸素と50ppmのSO2を含む窒素ガスからなる試験ガスを流量500cc/分で通気しながら、反応管の外周部に配設した管状電気炉にて反応管内を定速で昇温し、この時のガス流出側の位置に配設された炭酸ガスセンサーにより試験ガス中の炭酸ガス濃度を検出し、1%のパティキュレートが燃焼した際の温度(以下、1%燃焼温度と略称する。)を決定した。充填させたパティキュレートのカーボン量(既知量)と発生したCO+CO2量(測定値)から燃焼率を計算した。上記燃焼試験における各排ガス浄化材の1%燃焼温度を(表1)に示した。
【0113】
【表1】
【0114】
(表1)から明らかなように、同じ種類の触媒組成を用いた場合、第4実施例と第6実施例から得られる、白金を担持した排ガス浄化材を上流側、金属酸化物+硫酸セシウムを担持した排ガス浄化材を下流側にしたほうが第1〜2比較例によって得られる、1つのフィルタに白金、金属酸化物および硫酸セシウムを担持した場合よりも低温でパティキュレートを燃焼できることがわかった。
【0115】
(評価例2)実施例4、実施例6〜10、比較例3において得られた排ガス浄化材について、(評価例1)と同様なパティキュレートの燃焼実験を行った。上記燃焼試験における各排ガス浄化材の1%燃焼温度を(表2)に示した。
【0116】
【表2】
【0117】
(表2)から明らかなように、同じ構造の排ガス浄化材を用いた場合、上流側に置く排ガス浄化材に担持させる貴金属としてPt、Pd、Rh、Ruから選ばれるものが活性がよく、少なくとも白金を含むことでより低温でパティキュレートを燃焼できることがわかった。
【0118】
(評価例3)実施例4、実施例6、実施例11〜17、比較例4において得られた排ガス浄化材について、(評価例1)と同様なパティキュレートの燃焼実験を行った。上記燃焼試験における各排ガス浄化材の1%燃焼温度を(表3)に示した。
【0119】
【表3】
【0120】
(表3)から明らかなように、同じ構造の排ガス浄化材を用いた場合、上流側に置く排ガス浄化材に担持させるPtを無機酸化物に担持させた状態の排ガス浄化材のほうがより低温度でパティキュレートを燃焼できることがわかった。また、直接フィルタに白金を担持した場合は必要な白金量が多くなりコストアップにもなる。
【0121】
(評価例4)実施例4、5、実施例18、参考例19〜20、実施例21〜22、参考例23、比較例5において得られた排ガス浄化材について、(評価例1)と同様なパティキュレートの燃焼実験を行った。上記燃焼試験における各排ガス浄化材の1%燃焼温度を(表4)に示した。
【0122】
【表4】
【0123】
(表4)から明らかなように、同じ構造の排ガス浄化材を用いた場合、下流側に置く排ガス浄化材に担持させる金属酸化物としてCu、Mn、Co、V、Mo、Wから選ばれるものが活性がよく、CuとVを含むものが特に活性がより低温でパティキュレートを燃焼できることがわかった。
【0124】
(評価例5)実施例4、5、実施例24、25において得られた排ガス浄化材について、(評価例1)と同様なパティキュレートの燃焼実験を行った。上記燃焼試験における各排ガス浄化材の1%燃焼温度を(表5)に示した。
【0125】
【表5】
【0126】
(表5)から明らかなように、同じ構造の排ガス浄化材を用いた場合、下流側に置く排ガス浄化材に担持させる金属酸化物としてCuとVの複合金属酸化物でCu5V2O10、CuV2O6、Cu3V2O8がより低温でパティキュレートを燃焼できることがわかった。
【0127】
(評価例6)実施例4、6、実施例26、参考例27〜28、実施例29、参考例30〜31、比較例6において得られた排ガス浄化材について、(評価例1)と同様なパティキュレートの燃焼実験を行った。上記燃焼試験における各排ガス浄化材の1%燃焼温度を(表6)に示した。
【0128】
【表6】
【0129】
(表6)から明らかなように、同じ構造の排ガス浄化材を用いた場合、下流側に置く排ガス浄化材に担持させる金属酸化物としてCu、Mn、Co、V、Mo、Wから選ばれるものが活性がよく、CuとVを含むものが特に活性がより低温でパティキュレートを燃焼できることがわかった。
【0130】
(評価例7)実施例4、6、実施例32、33において得られた排ガス浄化材について、(評価例1)と同様なパティキュレートの燃焼実験を行った。上記燃焼試験における各排ガス浄化材の1%燃焼温度を(表7)に示した。
【0131】
【表7】
【0132】
(表7)から明らかなように、同じ構造の排ガス浄化材を用いた場合、下流側に置く排ガス浄化材に担持させる金属酸化物としてCuとVの複合金属酸化物でCu5V2O10、CuV2O6、Cu3V2O8がより低温でパティキュレートを燃焼できることがわかった。
【0133】
(評価例8)実施例4、5、実施例34〜38、比較例7において得られた排ガス浄化材について、(評価例1)と同様なパティキュレートの燃焼実験を行った。上記燃焼試験における各排ガス浄化材の1%燃焼温度を(表8)に示した。
【0134】
【表8】
【0135】
(表8)から明らかなように、同じ構造の排ガス浄化材を用いた場合、下流側に置く排ガス浄化材に担持させる触媒としてはアルカリ金属の硫酸塩が良く、アルカリ金属の硫酸塩としては硫酸セシウムが最も活性が良く、とくに硫酸セシウムと硫酸カリウムの混合物が特に低温でパティキュレートを燃焼できることがわかった。
【0136】
(評価例9)実施例4、6実施例、実施例39〜43、比較例8において得られた排ガス浄化材について、(評価例1)と同様なパティキュレートの燃焼実験を行った。上記燃焼試験における各排ガス浄化材の1%燃焼温度を(表9)に示した。
【0137】
【表9】
【0138】
(表9)から明らかなように、同じ構造の排ガス浄化材を用いた場合、下流側に置く排ガス浄化材に担持させる触媒としてはアルカリ金属の硫酸塩が良く、アルカリ金属の硫酸塩としては硫酸セシウムが最も活性が良く、特に硫酸セシウムと硫酸カリウムの混合物が低温でパティキュレートを燃焼できることがわかった。
【0139】
(評価例10)実施例44〜45、比較例9、10において得られた排ガス浄化材について、以下のような排ガス浄化実験を行った。
【0140】
実施例44および比較例9で得られた貴金属を担持した排ガス浄化材を排気量3431ccのディーゼルエンジンの排気系の上流側に設置し、ディーゼルエンジンを1500rpm、トルク21kgmの条件で1時間作動させた。ディーゼルエンジンを作動させている間に、排ガス浄化体によって排ガス中のパティキュレートを捕集し、パティキュレートを燃焼させながら、排ガス流出側の下流に設置されたスモークメーターにより排ガス中に含まれるパティキュレートの量を測定し排ガスの捕集率を測定した。また、流入側の排ガス浄化体の上流側に設置された圧力センサにより排ガス管内の圧力を測定して、大気圧との差圧を求め、フィルタに捕集されたパティキュレート量を算出して排ガスの燃焼率を求めた。尚、上記排ガス浄化試験においては、電気ヒータ等の加熱手段による排ガス又は排ガス体の加熱は行わず、パティキュレートの燃焼酸化は、排ガス温度で行った。上記燃焼試験における各排ガス浄化材のパティキュレートの捕集率と燃焼率を(表10)に示した。
【0141】
【表10】
【0142】
(表10)から明らかなように同じ種類の触媒組成を用いた場合、実施例44と実施例45から得られる、排ガス浄化材を用いた場合、比較例9および比較例10の排ガス浄化材を用いた場合に比べ排ガス中のパティキュレートの捕集率が高く、かつ、捕集されたパティキュレートの燃焼率も高いことがわかった。よって上流側の貴金属を担持させる耐熱性の3次元構造体としてはフロースルータイプのフィルタを、下流側の遷移金属酸化物+アルカリ金属の硫酸塩を担持させる耐熱性の3次元構造体としてはウォールスルータイプのフィルタが好ましいことがわかった。
【0143】
(評価例11)参考例46、比較例11において得られた排ガス浄化材について、(評価例10)と同様な排ガス浄化実験を行った。上記燃焼試験における各排ガス浄化材のパティキュレートの捕集率と燃焼率を(表11)に示した。
【0144】
【表11】
【0145】
(表11)から明らかなように同じ種類の触媒組成を用いた場合、第46実施例から得られる、排ガス浄化材を用いた場合第11比較例の排ガス浄化材を用いた場合に比べ排ガス中のパティキュレートの捕集率が高く、かつ、捕集されたパティキュレートの燃焼率も高いことがわかった。よって上流側に貴金属を担持さ、下流側に遷移金属酸化物+アルカリ金属の硫酸塩を担持させるための耐熱性の3次元構造体としてはウォールスルータイプのフィルタが好ましいことがわかった。
【0146】
【発明の効果】
請求項1に記載の排ガス浄化材によれば、これにより以下の効果を有する。
【0147】
(1)それぞれ触媒特性の異なる貴金属触媒層と、遷移金属触媒層とを分離して別々の構造体上に形成させることで、触媒同士の反応を抑制して、それぞれの触媒特性を十分に発揮させることができる。
【0148】
(2)貴金属を含む貴金属触媒層と、遷移金属触媒層とを分離して別々の構造体上に置くことで貴金属の必要量を少なくして低いコストで排ガス浄化材を製造することができる。
【0149】
(3)各触媒層を分離して設けているために、遷移金属と貴金属との反応などによる触媒組成の変化を抑制して、触媒活性の劣化を防いで耐用性を高めることができる。
【0150】
(4)上流側の貴金属触媒層によりパティキュレート中のカーボン成分以外の成分を浄化し、下流側に配置した遷移金属触媒層の遷移金属によりパティキュレート中のカーボン成分を浄化することができるため、それぞれ最適条件の異なる浄化反応を独立に制御して浄化処理を効率的に行わせることができる。
【0151】
(5)上流側の3次構造体(a)をフロースルータイプのフィルタあるいは発泡体にすることで、パティキュレート中のカーボン成分を上流側のフィルタに捕集させることなく下流側のフィルタに送ることができる。
【0152】
(6)カーボン成分が上流側のフィルタに捕捉されることなく下流側へ送られるので、上流側の貴金属触媒では、パティキュレート中のカーボン成分以外の排ガス成分を浄化することができる。
【0153】
(7)カーボン成分のみを下流側へ送ることで下流側の遷移金属の酸化物+アルカリ金属の硫酸塩触媒によるパティキュレート中のカーボン成分を効率よく燃焼させるための触媒として機能を十分に発揮させることができる。
【0154】
(8)貴金属が、Pt、Pd、Rh、Ruから選ばれる1種以上の貴金属を含むので、貴金属触媒によるパティキュレート中カーボン成分以外の排ガスの浄化を効率的かつ安定的に発揮させることができる。
【0155】
(9)貴金属が、Ptを含ませるようにした場合には、パティキュレート中のカーボン成分以外の排ガスの浄化を最も効率的かつ安定的に行うことができる。
【0156】
(10)アルカリ金属硫酸塩が硫酸セシウムを含むので、遷移金属触媒層を3次元構造体に形成させる場合の焼結温度を低下させ、パティキュレートの燃焼に際して高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を安価に製造することができる。
【0157】
請求項2に記載の排ガス浄化材によれば、これによって、請求項1の効果に加えて以下の効果を有する。
【0158】
(1)遷移金属酸化物とアルカリ金属硫酸塩を無機酸化物に担持する事で遷移金属酸化物とアルカリ金属硫酸塩の必要量を少なくして低いコストで製造することができるという効果を有する。
【0162】
請求項3に記載の排ガス浄化材によれば、これによって、請求項1の効果の他、以下の効果が得られる。
【0163】
(1)貴金属を担持させる担体としてTa 2 O 5 、Nb 2 O 5 、WO 3 、SnO 2 、SiO 2 、TiO 2 、Al 2 O 3 、ZrO 2 から選ばれる1種以上の無機酸化物を用いると貴金属触媒の表面積を大きくして、パティキュレートとの接点が増加するので、貴金属触媒による排ガス中のパティキュレートの酸化性能を最も効率的かつ安定的に発揮させることができる。
【0164】
請求項4に記載の排ガス浄化材によれば、これによって、請求項1乃至3のいずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
【0165】
(1)遷移金属層の酸化物がCuとVの複合酸化物を含むので、パティキュレートの燃焼に際して高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を提供できる。
【0166】
請求項5に記載の排ガス浄化材によれば、これによって、請求項1乃至4のいずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
【0167】
(1)遷移金属層の酸化物がCu 5 V 2 O 10 、CuV 2 O 6 、Cu 3 V 2 O 8 から選ばれる1種以上の複合酸化物を含むので、パティキュレートの燃焼に際してさらに高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を提供することができる。
【0168】
請求項6に記載の排ガス浄化材によれば、これによって、請求項1乃至5のいずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
【0169】
(1)遷移金属触媒層が硫酸セシウムを含むので、遷移金属触媒層を3次元構造体に形成させる場合の焼結温度を低下させ、パティキュレートの燃焼に際して高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を安価に製造することができる。
【0170】
請求項7に記載の排ガス浄化材によれば、これによって、請求項1乃至6のいずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
【0171】
(1)アルカリ金属硫酸塩が硫酸セシウムと硫酸カリウムの混合物を含むので、パティキュレートの燃焼に際してさらに高い触媒活性を有する排ガス浄化用触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の排ガス浄化材の構成図
【図2】参考の形態1の排ガス浄化材の構成図
【符号の説明】
1 排ガス浄化材
2 貴金属触媒層を有する3次元構造体
3 遷移金属触媒層を有する3次元構造体
4 貴金属触媒層とその下流側に設けられた遷移金属触媒層とを有する3次元構造体
Claims (7)
- 排ガス流路の上流側に設けられ、貴金属を無機酸化物に担持させて形成された貴金属触媒層を有する3次元構造体(a)と、
前記3次元構造体(a)の下流側に設けられた遷移金属触媒層を有し排ガス中に含まれるパティキュレート中のカーボン成分を捕集する3次元構造体(b)とを備え、前記上流側に配置される3次元構造体(a)がフロースルータイプのハニカム状のフィルタであり、かつ前記下流側に配置される3次元構造体(b)がウォールスルータイプのハニカム状のフィルタであり、前記貴金属触媒層が、Pt、Pd、Rh、Ruから選ばれる1種以上の貴金属を含み、前記遷移金属触媒層が、遷移金属の酸化物と1種以上のアルカリ金属硫酸塩とを有し、前記遷移金属の酸化物が、Cu、Vから選ばれる1種以上の酸化物を含むことを特徴とする排ガス浄化材。 - 前記遷移金属触媒層が、無機酸化物に担持させた遷移金属の酸化物と1種以上のアルカリ金属硫酸塩とを有していることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化材。
- 前記貴金属触媒層の無機酸化物が、Ta2O5、Nb2O5、WO3、SnO2、SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2の内の1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス浄化材。
- 前記遷移金属の酸化物が、CuとVの複合酸化物を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の排ガス浄化材。
- 前記遷移金属の酸化物が、Cu5V2O10、CuV2O6、Cu3V2O8の内の1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至4の内のいずれか1項に記載の排ガス浄化材。
- 前記遷移金属触媒層が、硫酸セシウムを含むことを特徴とする請求項1乃至5の内のいずれか1項に記載の排ガス浄化材。
- 前記遷移金属触媒層のアルカリ金属硫酸塩が、硫酸セシウムと硫酸カリウムの混合物であることを特徴とする請求項1乃至6の内のいずれか1項に記載の排ガス浄化材。
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