JP4885991B2 - トンネルの覆工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道、道路あるいは水路等の各種用途に用いられるトンネルの内面を覆工する技術に関する。
従来より、鉄道、道路あるいは水路等の各種用途に用いられるトンネルの内面を覆工する方法として、地山やトンネルの口径等に応じた種々の方法が提案されている。即ち、地山が軟弱である場合には、強度の高い鋼製セグメント等をトンネル内部で組み立ててトンネルの内面を覆工することが多い。一方、TBM(トンネル掘削機)により掘削され比較的小径の山岳トンネル等においては、地山が強固であることから、鋼製セグメントのような強度の高い部材は不要であることが多い。このような場合には、例えば、図25に示すように、TBM100により掘削されたトンネルT内において複数の鋼製リング102を間隔を隔てて組み立てて、鋼製リング102と地山との間に矢板103を差し込んでトンネルTの内面を覆工することが広く行われている。
また、支保工無しでは少々強度不足であるが、図25のような鋼製リング102及び矢板103からなる構造ほどの高い強度が不要である場合には、透水性を有するホース又はチューブをトンネル内面に沿ってリング状あるいはスパイラル状に配置し、チューブ等にモルタル等の流動性を有する固化材を注入した後に、この固化材を固化させてトンネル内壁を支持する、簡易なトンネルの覆工方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。さらに、トンネル内に透水性の袋体を配置するとともに鋼製の内型枠等により袋体を支持した状態で、この袋体内にコンクリート等を注入して覆工体を形成して、トンネルの内面を覆工する方法も提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
特開2002−38890号公報 特開昭59−228597号公報 特許第2784511号公報 特許第2784512号公報
前記特許文献1,2に記載されたトンネルの覆工方法において使用されるチューブやホースは、一般的に、ある程度の保形性を有する。そのため、このようなチューブ等に固化材を注入したときのチューブ等の断面形状の変化は小さく、その断面形状が略円形状に保持されることになるため、固化材注入後のチューブ等とトンネル内面との接触面積は小さくなる。従って、チューブ等とトンネル内面との密着性が悪く、地山の変形等に起因してチューブ等がトンネルの長手方向にずれることがある。また、特に地山が強固な場合などに、チューブ数を少なくするために間隔を大きく空けてチューブ等を配置している場合には、一旦、チューブ等がトンネル長手方向にずれてしまうと、複数のチューブ等が将棋倒しのように一度に倒れてしまう虞があり、トンネルの内壁を安定的に支持することが困難である。
前記特許文献3,4に記載されたトンネルの覆工方法においては、コンクリート等が袋詰された覆工体をトンネル内面に沿わせて支持するための堅固な型枠等が必要になり、このような型枠等の組み立て及び解体に工数がかかるため、施工性が悪い。
本発明の目的は、簡易にトンネルを覆工でき、さらに、トンネルの内面に沿って配置された支保としてのトンネル支持体がトンネルの長手方向にずれるのを防止してトンネルの内壁を安定的に支持することが可能なトンネルの覆工技術を提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
第1の発明のトンネルの覆工方法は、所定の長さを有する帯状の袋体であって、その背面部と内面部とが袋体の長さ方向に直接接合されることにより前記長さ方向に平行に形成された複数の仕切部とこれら複数の仕切部により仕切られて前記長さ方向に延びる複数の固化材注入部とを有する袋体を、前記背面部がトンネル内面に沿うように配置する第1工程と、前記複数の固化材注入部の内部に流動性固化材を注入しつつ、前記複数の固化材注入部をトンネル内面に密着させる第2工程と、前記固化材注入部内の流動性固化材を固化させる第3工程と、を有することを特徴とするものである。
このトンネルの覆工方法においては、固化材注入部において注入され硬化した流動性固化材が拘束されることになり、袋体に曲げ荷重が作用したときでも、内部で硬化した流動性固化材の変形を極力抑えることができるため、袋体とその内部の固化材とで構成されたトンネル支持体の耐力が高まる。さらに、従来のリング状のチューブ等(例えば、特許文献2参照)においてはチューブ等を1つずつトンネル内に搬入する必要があるのに対して、このような複数の固化材注入部を有する袋体では、一度に複数の固化材注入部をトンネル内に配置することができるため、搬入作業が容易になる。
第2の発明のトンネルの覆工方法は、前記第1の発明において、前記袋体は、袋体の幅方向に延び前記複数の固化材注入部に夫々連通する連通部を有することを特徴とするものである。従って、連通部を介して全ての固化材注入部に一度に固化材を充填することが可能になり、注入作業を効率よく行うことができる。また、この連通部は、トンネル長手方向に略平行な、袋体の幅方向に延びている。従って、連通部に注入された流動性固化材が固化した状態では、連通部により複数のリング状の固化材注入部がトンネル長手方向に支持された構成となる。そのため、地山が変形したときでも、複数のリング状の固化材注入部がトンネル長手方向に将棋倒しのように変形してしまうのを防止できる。さらに、固化材注入部が密着していない部分の地山の荷重を、連通部を介して各固化材注入部に分散して作用させることができる。
第3の発明のトンネルの覆工方法は、前記第1又は第2の発明において、流動性固化材が注入された袋体が、その長さ方向に垂直な断面形状が幅方向に扁平な状態でトンネル内面に密着することを特徴とするものである。このように、流動性固化材が注入された袋体が幅方向に扁平な状態でトンネル内面に密着するため、この袋体によりトンネル内壁が安定的に支持される。
第4の発明のトンネルの覆工方法は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記袋体の長さはトンネル内面の周方向長さと略等しく、前記第1工程において、袋体がトンネル内面に沿ってリング状に配置されることを特徴とするものである。従って、トンネル長手方向に並んだリング状の袋体によりトンネル内壁を確実に支持することができる。
第5の発明のトンネルの覆工方法は、前記第4の発明において、トンネル内で袋体の両端部を接合して又は突き合わせて袋体をリング状に形成することを特徴とするものである。掘削中のトンネル内部には、TBMの動力供給ケーブル等、種々のケーブル類や装置が存在することも多いが、これらのケーブル類はトンネル内面に沿う袋体の内側に配置されなければならない。そこで、袋体をトンネル内に搬入してから、トンネル内部で袋体の両端部を接合し、又は、突き合わせるようにすれば、ケーブル等を袋体の内側に配置してから袋体をリング状に形成してトンネル内面に沿わせることが容易になる。
第6の発明のトンネルの覆工方法は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記袋体の長さはトンネル内面の周方向長さよりも長く、前記第1工程において、袋体がトンネル内面に沿ってスパイラル状に配置されることを特徴とするものである。従って、スパイラル状に配置された袋体によりトンネル内壁を確実に支持できるようになる。
第7の発明のトンネルの覆工方法は、前記第1〜第6の何れかの発明において、前記袋体は、継ぎ目のない筒状の織物であることを特徴とするものである。従って、袋体の引張強度が高くなり、袋体への流動性固化材の注入時に袋体が破断して固化材が流出するのを防止できる。また、引張強度の高い織物により内部の固化材の表面が強化されるため、袋体とその内部の固化材で構成される強度の高いトンネル支持体によりトンネル内壁を確実に支持することができる。さらには、袋体を保形性を有さない織物とすることにより、袋体内に流動性固化材を注入してトンネル内面に密着させたときに袋体が幅方向に広がりやすくなるため、袋体とトンネル内面との接触面積を大きくすることができる。
第8の発明のトンネルの覆工方法は、前記第1〜第7の何れかの発明において、前記袋体の長さ方向の糸量が、幅方向の糸量の1/2以上であることを特徴とするものである。従来からトンネルの覆工に用いられている、モルタル等の流動性固化材が注入されるチューブやホースにおいては、固化材注入時の耐圧性を確保するために、チューブ等の径方向の引張強度が長さ方向に対して2:1となっていることが多い。しかし、本発明においては、袋体の長さ方向の糸量が幅方向の糸量の1/2以上とすることで、袋体の長さ方向の引張強度が高まり、袋体とその内部の固化材で構成されるトンネル支持体の強度をさらに増大させることができる。
第9の発明のトンネルの覆工方法は、前記第1〜第8の何れかの発明において、袋体は、トンネル内面に密着する背面部の長さ方向の伸度が、トンネル内面に密着しない内面部の長さ方向の伸度よりも高いことを特徴とするものである。例えば、袋体をトンネルの内面に沿ってリング状に配置した場合には、本来は、内面部の周長はπ×Dとなり、一方、背面部の周長はπ×(D+2d)となるが(D:袋体の内径、d:袋体の厚さ、実施形態中の図15参照)、実際の袋体の背面部と内面部の長さ方向の寸法が同じであると、袋体の内面部に折れ曲がり(キンク)が生じてしまう(実施形態中の図16参照)。しかし、背面部の長さ方向の伸度を内面部よりも高くし、袋体がトンネル内に配置された際の内面部の周長基準で袋体の寸法を設定することにより、袋体内に流動性固化材を注入したときに背面部が内面部よりも伸びるため、内面部にキンクが生じるのを防止することができる。
第10の発明のトンネルの覆工方法は、前記第1〜第9の何れかの発明において、前記第1工程において、前記袋体を、内部に流体が充填された支持バッグの外面部に装着して、袋体と支持バッグをトンネル内に搬入して支持バッグにより袋体を内側から支持させ、前記第2工程において、袋体内に流動性固化材を注入して袋体をトンネル内面に密着させることを特徴とするものである。
第1工程において、支持バッグに袋体を装着して、袋体と支持バッグを一度にトンネル内へ搬入できるため、搬入作業が容易である。また、第2工程において、支持バッグにより袋体を内側から支持した状態で、袋体内に流動性固化材を注入するため、流動性固化材が固化するまでの間、支持バッグにより袋体がトンネル内面に密着した状態を保持することができる。さらに、支持バッグにより袋体の内面部が押圧されるため、袋体内に流動性固化材を注入したときに、袋体の内面部が内側に膨らんでしまうのを防止できる。
また、第11の発明のトンネルの覆工方法は、前記第1〜第10の何れかの発明において、前記固化材注入部は、前記内面部の幅が前記背面部の幅よりも長く、前記第2工程において、前記複数の固化材注入部に加えて前記仕切部が、トンネル内面に密着することを特徴とする。
本発明の第1実施形態に係るトンネルの覆工構造の概略斜視図である。 袋体の部分拡大斜視図である。 袋体及び気密性バッグの部分拡大斜視図である。 袋体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。 袋体が装着された状態の支持バッグの斜視図である。 リング状に形成された袋体の斜視図である。 両端部が連通している袋体の部分拡大断面図である。 気密性バッグ内への加圧エア注入時における袋体の断面図である。 流動性固化材注入時における袋体の断面図である。 袋体に流動性固化材が注入された状態でのトンネルの部分断面図である。 図10のXI-XI線断面図である。 袋体の長さ方向に平行な断面における部分断面図である。 袋体に曲げ荷重を作用させたときの荷重パターンを示す図である。 袋体及び形状保持材としての長尺材の部分拡大斜視図である。 別の長尺材の部分拡大斜視図である。 さらに別の長尺材の部分拡大斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る袋体の斜視図である。 流動性固化材が注入された状態での袋体の断面図である。 袋体の部分断面図であり、(a)は袋体の長さ方向に平行な断面における断面図、(b)は、袋体の長さ方向に垂直な断面における断面図である。 本発明の第3実施形態に係る袋体の図18相当図である。 本発明の第4実施形態に係る袋体の図17相当図である。 変更形態に係るキンクが生じていない袋体の側面図である。 キンクが生じた袋体の側面図である。 変更形態に係るトンネルの覆工構造の図1相当図である。 従来のトンネルの覆工構造の概略斜視図である。
本発明の第1実施形態について説明する。この第1実施形態は、TBMにより掘削される比較的小径(例えば、口径約2000mm)の下水用のトンネルを覆工する場合に本発明を適用したものである。図1に示すように、先端部のカッターヘッド101を回転させながらTBM100を前進させて地山を所定距離掘削した後、掘削されたトンネルTの内面を覆工していく。
このトンネルTの覆工工程においては、図1に示すように、トンネルTの内面の周方向長さと略等しい長さを有する幅広の帯状の袋体10をトンネルTの内面に沿ってリング状に配置するとともに、袋体内に加圧エア(加圧流体)を注入して袋体をトンネル内面に密着させ(第1工程)、袋体10の内圧を維持しつつ、加圧エアを袋体から排出するとともに袋体10内に流動性固化材11を注入し(第2工程)、袋体10内の流動性固化材11を固化させる(第3工程)。そして、以上の第1〜第3工程を繰り返して、流動性固化材11が注入された袋体10(トンネル支持体20)をトンネルTの長手方向に複数並べて配置することにより、トンネルTの内面を覆工する。
図2に示すように、袋体10は、袋体10の長さ方向(図2のa方向)に延びるポリエステル繊維の経糸15及び幅方向(図2のb方向)に延びる同じくポリエステル繊維の緯糸16で織られた、透水性を有する筒状(例えば、直径約700mm)の織物であり、緯糸16がスパイラル状に連続して織り込まれている。尚、この袋体10は保形性を有さず、内圧及び外圧を加えることによりその形状を自由に変化させることが可能である。
ところで、モルタル等の流動性固化材が注入されるチューブやホースにおいては、固化材注入時の耐圧性を確保するために、チューブ等の径方向の引張強度が長さ方向の引張強度に対して2:1となっていることが多い。しかし、この第1実施形態においては、袋体10に流動性固化材11が注入されて構成されたトンネル支持体20が、トンネルTの内壁から作用する荷重に十分耐えられるようにするために、経糸15の糸密度(袋体10の長さ方向の糸量)を緯糸16の糸密度(幅方向の糸量)の1/2以上として、袋体10の長さ方向の引張強度を高めている。このような袋体10の具体例を挙げると、経糸15及び緯糸16の太さを1000d/3本、経糸15の糸密度を30本/インチ、緯糸16の糸密度を15本/インチ、織組織を平織りとして、袋体10を環状織機で織られた継ぎ目のない筒状の織物とすることができる。また、図4に示すように、袋体10には、その内部に後述の流動性固化材11を注入するための固化材注入口18と、次述の気密性バッグ17に加圧エアを注入し、また、気密性バッグ17から加圧エアを排出する為のエア注入・排出口19が互いに離隔した位置に設けられている。尚、これら固化材注入口18及びエア注入・排出口19の数は1つずつであってもよいし、あるいは、2以上の複数であってもよい。
図3及び図4(a),(b)に示すように、帯状の袋体10内には、袋体10をトンネル内に配置する前に、その両端が閉塞された状態の気密性バッグ17が配設される。この気密性バッグ17にはエア注入・排出口19が接続されており、このエア注入・排出口19から気密性バッグ17内に加圧エアが注入されたときには、気密性バッグ17が袋体10内で膨張して、袋体10も膨らむようになっている。
そして、図5に示すように、気密性バッグ17を内部に含む1又は複数の袋体10を、円筒状の支持バッグ12の外周部に装着して、袋体10と支持バッグ12をトンネルT内に搬送する。この支持バッグ12は、内部に加圧エアが充填されたときに径方向に膨張して袋体10を内側から支持する。尚、後述のように、袋体10内の気密性バッグ17に加圧エアが注入されたときに、袋体10がトンネルTの内面に密着するように、袋体10の長さは、支持バッグ12の外周部の周方向長さよりも長くなっている。そのため、支持バッグ12を袋体10に装着した状態では、袋体10の余尺分がだぶつくために作業性が悪くなる。そこで、図5に示すように、支持バッグ12の外周部には、袋体10を支持バッグ12に着脱可能に装着する面ファスナー等の装着部13と、この装着部13に装着された袋体10の余尺分を吸収するとともに、袋体10内の気密性バッグ17に加圧エアが注入されて袋体10が膨らんだときにはその膨張量に追従して周方向に伸びる、ゴムバンド等で構成された伸縮部14が設けられている。これら装着部13と伸縮部14の組数は特に限られないが、支持バッグ12の長手方向に複数組設けることが好ましい。
前述のような袋体10のだぶつきを防止する方法としては、流動性固化材11を袋体10内に注入する前に、支持バッグ12と袋体10との間に平板状に膨張するエアバッグを挿入し、流動性固化材11を袋体10内に注入するのに合わせてエアバッグ内のエアを排出するようにしてもよい。
次に、トンネルT内において周方向に沿って配置された袋体10の両端部を縫製等により接合して袋体10をリング状に形成する。トンネルTの内部には、TBM100の動力供給ケーブル等、種々のケーブル類や装置が存在することも多いが、これらのケーブル類は袋体10の内側に配置する必要がある。そこで、袋体10をトンネルT内に搬入してからトンネルTの内部で袋体10の両端部を接合するようにすれば、ケーブル等を袋体10の内側に配置してから袋体10をリング状に形成することが容易になる。ここで、図6に示すように、袋体10は、トンネルT内に搬入する前に両端部が予め閉塞されているものでもよいが、図7に示すように、搬入する前の状態では両端が開放されており、トンネルT内において両端部を接合したときに袋体10の内部がリング状に連通した空間(流動性固化材11の注入空間)となるものでもよい。この場合には、袋体10内に注入された後述の流動性固化材11がリング状に連なった状態で固化するため、より強度が高まる。
以上の説明では、袋体10をトンネルT内へ搬入してから両端部を接合してリング状に形成しているが、もちろん、袋体10の両端部を予め接合してからリング状の袋体10をトンネルT内へ搬入するようにしてもよい。また、その両端部が予め閉塞されている袋体10を用いる場合には、その両端を接合せずに突き合わせるだけでもよい。また、袋体10を先にトンネルTの内面に沿ってリング状に配置してから、支持バッグ12を袋体10の内側に設置してもよい。
そして、図8に示すように、袋体10を支持バッグ12により内側から支持しつつ、袋体10をトンネルTの内面に沿って配置し、さらに、袋体10内の気密性バッグ17にエア注入・排出口19から加圧エアを注入する(第1工程)。すると、加圧エアにより気密性バッグ17が膨張し、それに伴って袋体10も膨らんで、袋体10にある程度の自立性が備わりトンネルTの内面に密着する。
次に、図9に示すように、袋体10の内圧を維持しつつ、エア注入・排出口19から気密性バッグ17内の加圧エアを排出するとともに、袋体10の内部に固化材注入口18から流動性固化材11を注入する(第2工程)。エア注入・排出口19に接続されたエアホースに設けられた図示しないバルブにより、気密性バッグ17内の加圧エアを少しずつ排出して、気密性バッグ(袋体10)内の圧力をほぼ一定に保ちながら、袋体10内に流動性固化材11を気密性バッグ17内の圧力と同等かやや高めの圧力で注入する。ここで、固化材注入口18及びエア注入・排出口19は、袋体10の互いに離隔した位置に設けられているため、袋体10内に流動性固化材11を固化材注入口18から注入しつつ、気密性バッグ17内の加圧エアをエア注入・排出口19からスムーズに排出することが可能となる。そして、袋体10内に流動性固化材11を注入していくにつれ、袋体10内の気密性バッグ17は、流動性固化材11の圧力により押し潰された状態となる。尚、流動性固化材11としては、例えば、セメントミルク、モルタルあるいはコンクリート等のセメント系の固化材11を使用できる。
ここで、袋体10は筒状の織物であり且つ保形性を有しないため、流動性固化材11を注入しつつ支持バッグ12を膨張させた状態では、図10、図11に示すように、袋体10の長さ方向に垂直な断面形状は、幅方向に扁平な形状(例えば、袋体10の厚さ65mmに対して幅約700mmの略矩形断面形状)となる。そのため、袋体10がトンネルTの内面に密着したときの袋体10とトンネルTの内面との接触面積が大きく、袋体10がトンネルTの内面に確実に密着する。尚、袋体10は透水性を有するので、流動性固化材11が注入されたときには、袋体10内の流動性固化材11がトンネルTの内面と支持バッグ12との間で圧縮されて、流動性固化材11中の水分が袋体10から外へ排出される。
その後、流動性固化材11が固化した後に、支持バッグ12内のエアを排出して支持バッグ12を取り外す。このようにして、トンネルTの内面に沿って配置され且つトンネルTの長手方向に並べて設置された複数の帯状の袋体10と、これら複数の袋体10に注入された流動性固化材11とを有し、複数の袋体10が、長さ方向に垂直な断面形状が袋体10の幅方向に扁平な状態でトンネルT内面に密着したトンネルTの覆工構造が完成する。
次に、袋体10に流動性固化材11が注入されて構成されたリング状のトンネル支持体20の強度について検討した。図12に示すように、このトンネル支持体20に対して径方向外側から曲げ荷重Fが作用すると、袋体10の背面部10aにおいては圧縮荷重F1が作用し、袋体10の内面部10bには引張荷重F2が作用する。このときの、曲げ荷重パターンを図13に示す。この図13において、(a)は、経糸15の糸量が緯糸16の糸量の倍(経糸15の糸密度30本/インチ、緯糸16の糸密度15本/インチ)の袋体にモルタルを充填固化した供試体、(b)は、糸量比が逆(経糸15の糸密度15本/インチ、緯糸16の糸密度30本/インチ)の袋体にモルタルを充填固化した供試体、(c)は、コンクリート単体、の各ケースでの曲げ荷重パターンを示す。経糸15の糸量が緯糸16の糸量の倍である袋体10を用いた供試体においては、袋体10の長さ方向(リング周方向)の引張強度が高くなるため、曲げ耐力(a)は、コンクリート単体強度レベル(コンクリート単体(c)の破断時の荷重)を大きく上回っている。一方、経糸15の糸量と緯糸16の糸量比を逆にした場合の供試体の曲げ耐力(b)は、コンクリート単体強度レベルをわずかに上回るに過ぎず、補強効果はあまりないことがわかる。
以上説明した第1実施形態においては、帯状の袋体10をトンネルTの内面に沿ってリング状にしてトンネルTの長手方向に並べ、袋体10内に流動性固化材11を注入して固化させることにより、トンネルTの内面を簡易に覆工できる。ここで、袋体10内に流動性固化材11を注入したときには、袋体10は、その長さ方向に垂直な断面形状が幅方向に扁平な形状となってトンネルTの内面に密着するため、固化材11が注入された複数の袋体10によりトンネルTの内壁が確実に支持される。また、各袋体10がトンネルTの長手方向にずれたり、倒れたりしにくくなる。
袋体10内に気密性バッグ17を配設し、袋体10をトンネルTの内面に沿って配置するとともに気密性バッグ17内に加圧エアを注入するため、袋体10にある程度の自立性が備わってトンネルTの内面に密着するので、簡易な構造の支持バッグ12だけで袋体10を支持することができる。即ち、鋼製の支保工のような堅固な構造の支持体が不要であり、支持体の組み立て・解体が容易となり施工性が向上する。
袋体10をトンネルT内に搬入してから、袋体10の両端部を接合してリング状に形成するようにすれば、トンネルT内に配設された種々のケーブルや装置等を袋体10の内側に配置してから袋体10をリング状に形成することが容易である。
袋体10が継ぎ目のない筒状の織物であり、さらに、袋体10の経糸15の糸量が緯糸16の糸量の1/2以上となっているため、袋体10の長さ方向の引張強度が高くなる。即ち、袋体10と流動性固化材11で構成されるトンネル支持体20の曲げ荷重に対する強度が高くなる。
尚、前述した第1実施形態では、気密性バッグ17内に圧力流体として加圧エアを注入しているが、圧力流体は流動性固化材11よりも比重が小さいものであればよく、圧力流体として他の種類の気体、あるいは、水などの液体を用いることもできる。
また、袋体10内に可撓性を有する形状保持材を配設して、袋体10がある程度の自立性を備えた状態で、袋体10をトンネルTの内面に沿って配置するようにしてもよい。この形状保持材としては、例えば、図14に示すように、高密度ポリエチレン等の合成樹脂製の断面矩形状の長尺材21を使用できる。この長尺材21の外側部分(トンネルTの内面側の部分)には、平面部21aが形成されているため、袋体10をトンネルTの内面に沿った状態に保持しやすくなる。さらに、図15に示すように、外側部分に平面部22aが形成され且つ内側に開放した断面形状を有する長尺材22を使用してもよい。さらには、断面は矩形状に限るものではなく、例えば、図16に示すように、外側部分に平面部23aが形成され且つ内側に開放した多角形の断面形状を有する長尺材23を使用することもできる。尚、このような形状保持材を用いた場合には、袋体10が自立性を備えている状態となるため、袋体10内に気密性バッグ17を配設して加圧エアを気密性バッグ17内に注入する工程を省略してもよい。
袋体10をトンネルT内で支持する支持体としては、前記第1実施形態の支持バッグ12の他、合成樹脂製のリング状の型枠など、簡易な構造のものを使用できる。この支持体は、袋体10内の気密性バッグ17内に加圧エアを注入する前に袋体10をトンネルTの内面に沿って支持するとともに、袋体10内に注入された流動性固化材11が固化するまでの間に流動性固化材11の自重等による変形を防止することが可能な程度の構造であればよく、堅固な構造を有する必要はない。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、袋体をトンネルの内面に沿ってリング状に配置してから、その内部に流動性固化材を注入して固化させることによりトンネルの内面を覆工する点は同じであるが、袋体の構造が第1実施形態の袋体と異なる。その異なる点を中心に以下説明する。
袋体30は、袋体30の長さ方向に延びるポリエステル繊維の経糸及び幅方向に延びる同じくポリエステル繊維の緯糸で織られた、透水性を有する筒状(例えば、直径約700mm)の織物であり、緯糸がスパイラル状に連続して織り込まれている。経糸及び緯糸は、例えば、太さが1000d/3本、経糸の糸密度を30本/インチ、緯糸の糸密度を15本/インチである。尚、この袋体30の織組織は平織りであり、袋体30は、環状織機で織られた継ぎ目のない筒状の織物である。
そして、図17に示すように、この袋体30は、その長さ方向(図17のリング状に形成された袋体30ではその周方向)に平行に形成された複数の仕切部31と、これら複数の仕切部31により仕切られて前記長さ方向に延びる複数の固化材注入部32とを有する。
仕切部31は、背面部と内面部とが縫製等により袋体30の長さ方向に接合されて形成されており、その両側の固化材注入部32が互いに連通しないように仕切る役割を果たしている。固化材注入部32は、中空状で且つ袋体30の長手方向に延びており、袋体30がトンネルTの内面に沿って配置された状態では、固化材注入部32はリング状に形成される。そして、図18に示すように、固化材注入部32の内部には、流動性固化材11が注入される。そのため、固化材注入部32により流動性固化材11が拘束されて、袋体30に地山から圧縮荷重が作用したときの固化材11の変形を極力抑えることができるため、その支保としての耐力が高まる。また、従来のリング状のチューブ等においてはチューブ等を1つずつトンネルT内に搬入する必要があるのに対して、このような複数の固化材注入部32を有する袋体30では、一度に複数の固化材注入部32をトンネル内に配置することができるため、搬入作業が容易になる。
尚、図19(a)に示すように、流動性固化材11が注入された袋体30にトンネルTの内壁から曲げ荷重Fが作用すると、袋体30の背面部においては圧縮荷重F1が作用し、袋体30の内面部には引張荷重F2が作用する。しかし、図19(b)に示すように、袋体30の長さ方向に垂直な断面において、仕切部31は、径方向外側から作用する曲げ荷重Fに対して中立面34の近傍で接合されており、その接合部33に大きな荷重が作用しないようになっているため、接合部33における背面部と内面部の接合が破断してしまうのが防止されている。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、前述の第2実施形態に対して、袋体30の断面形状を変更したものである。図18に示す前記第2実施形態の袋体30においては、仕切部31が固化材注入部32の両側の中央部付近に連結された形状であるため、固化材注入部32内に流動性固化材11を注入した状態では、仕切部31がトンネルTの内面から離れて(例えば、離隔距離が約30mm)、仕切部31とトンネルTの内面との間に空隙が生じ、袋体30がトンネルTの内面に対して部分的にしか密着しないようになってしまう。
そこで、この第3実施形態の袋体においては、図20に示すように、袋体40の長さ方向に垂直な断面において、背面部と内面部の接合箇所を変更することにより、固化材注入部42が内側(トンネルTの内面と反対側)へ突出状に形成されている。従って、固化材注入部42に流動性固化材11が注入されたときには、袋体40の仕切部41もトンネルTの内面に密着することになり、袋体40がトンネルTの内面に全面的に密着することになる。
次に、第4実施形態について説明する。図21に示すように、この第4実施形態の袋体50は、仕切部51と、袋体50の幅方向に延び複数の固化材注入部52に夫々連通する複数(例えば3つ)の連通部53を有する。連通部53は、袋体50をリング状に形成した状態における周方向に略等間隔の位置に形成されている。連通部53の内径は、固化材注入部52の内径と同程度(例えば、内径65mm)である。但し、袋体50のサイズや注入される流動性固化材の種類等の種々の条件に応じて、適宜、固化材注入部52よりも大径、あるいは小径とすることもできる。
この連通部53のトンネルTの長手方向の端部には、流動性固化材11を注入する為のホース状の注入口54が設けられている。そして、この注入口54から、流動性固化材11を連通部53及び複数の固化材注入部52に一度に注入することができる。従って、複数の固化材注入部52の各々に流動性固化材11を注入する必要がなく、固化材11の注入作業を効率よく行うことができる。尚、ホース状の注入口54は小口径の筒状織物や内面が樹脂被膜された筒状織物等で形成されており、安価であるため、そのまま使い捨てにすることができる。
そして、連通部53に注入された流動性固化材11が固化した状態では、連通部53により複数のリング状の固化材注入部52がトンネルTの長手方向に支持された構成となる。従って、地山が変形したときでも、複数のリング状の固化材注入部52がトンネルTの長手方向に将棋倒しのように変形してしまうのを防止できる。さらに、固化材注入部52が密着していない部分の地山の荷重を、連通部53を介して複数の固化材注入部52に分散して作用させることができる。尚、連通部53の数は特に限定されないが、地山の荷重を複数の固化材注入部に確実に伝達するために複数設けられていることが好ましい。
次に、前述の第1〜第4実施形態に対して種々の部分的な変更を加えた変更形態について説明する。
1]袋体10をトンネルTの内面に沿ってリング状に配置した場合には、図22に示すように、本来は、内面部10bの周長はπ×Dとなり、一方、背面部10aの周長はπ×(D+2d)となるが(D:リング状の袋体の内径、d:袋体の厚さ)、実際の袋体10の背面部と内面部の長さ方向の寸法が同じであると、背面部10aの周長をトンネルTの内周長に合わせた場合、図23に示すように、袋体10の内面部に折れ曲がり(キンク60)が生じ、このキンク60が生じた部分において強度が部分的に低下してしまう。
そこで、背面部10aの長さ方向の伸度を内面部10bの長さ方向の伸度よりも高くしてもよい。具体例を示すと、トンネルTの内径を2130mm、リング状の袋体の内径Dを2000mm、袋体の厚さdを65mmとし、トンネルTの内面に密着する背面部10aの経糸としては伸度の大きなナイロン繊維からなるものを使用し、内面側の経糸としては伸度の低いポリエステル繊維からなるものを使用する。一般的に、ポリエステル繊維の伸度が17%であるのに対し、ナイロン繊維の伸度は25%前後であるため、袋体10をトンネルT内に配置したときに背面部10aが伸びるので、リング状の袋体10の内外径差1.07倍に十分追従できる。このように、背面部10aの長さ方向の伸度を内面部10bよりも高くすることにより、内面部10bにキンク60が生じるのを防止することができる。
2]前述の各実施形態においては、トンネルT内において、トンネルTの周方向長さと略等しい長さの袋体10をリング状に配置したが(図1参照)、図24に示すように、TBM100で掘削されたトンネルTの周方向長さよりも長い袋体70をトンネルTの内面に沿ってスパイラル状に配置してもよい。あるいは、トンネルTの周方向長さよりも短い袋体をトンネルTの内面に沿って円弧状に配置してもよい。
3]流動性固化材としては、モルタル等のセメント系固化材の他にも、熱硬化性樹脂液等、種々のものを使用できる。熱硬化性樹脂液を使用する場合には、袋体に熱硬化性樹脂液を注入したのちに、袋体に熱を加える又は常温で放置することにより熱硬化性樹脂液を硬化させる。
4]以上の説明においては、掘削された新設のトンネルの内面を覆工する場合に本発明を適用した例を述べたが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、トンネルの口径やその用途は前述の実施形態のものに限られない。さらには、既設のトンネルの内面を補修する場合などにも本発明を適用することができる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、その構成に適宜変更を加えることができる。
T トンネル
10 袋体
11 流動性固化材
12 支持バッグ
21,22,23 長尺材
30 袋体
31 仕切部
32 固化材注入部
40 袋体
41 仕切部
42 固化材注入部
50 袋体
51 仕切部
52 固化材注入部
53 連通部
70 袋体

Claims (11)

  1. 所定の長さを有する帯状の袋体であって、その背面部と内面部とが袋体の長さ方向に直接接合されることにより前記長さ方向に平行に形成された複数の仕切部とこれら複数の仕切部により仕切られて前記長さ方向に延びる複数の固化材注入部とを有する袋体を、前記背面部がトンネル内面に沿うように配置する第1工程と、
    前記複数の固化材注入部の内部に流動性固化材を注入しつつ、前記複数の固化材注入部をトンネル内面に密着させる第2工程と、
    前記固化材注入部内の流動性固化材を固化させる第3工程と、
    を有することを特徴とするトンネルの覆工方法。
  2. 前記袋体は、袋体の幅方向に延び前記複数の固化材注入部に夫々連通する連通部を有することを特徴とする請求項1に記載のトンネルの覆工方法。
  3. 流動性固化材が注入された袋体が、その長さ方向に垂直な断面形状が幅方向に扁平な状態でトンネル内面に密着することを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネルの覆工方法。
  4. 前記袋体の長さはトンネル内面の周方向長さと略等しく、前記第1工程において、袋体をトンネル内面に沿ってリング状に配置することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のトンネルの覆工方法。
  5. 前記第1工程において、トンネル内で袋体の両端部を接合して又は突き合わせて袋体をリング状に形成することを特徴とする請求項4に記載のトンネルの覆工方法。
  6. 前記袋体の長さはトンネル内面の周方向長さよりも長く、前記第1工程において、袋体をトンネル内面に沿ってスパイラル状に配置することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のトンネルの覆工方法。
  7. 前記袋体は、継ぎ目のない筒状の織物であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のトンネルの覆工方法。
  8. 前記袋体の長さ方向の糸量が、幅方向の糸量の1/2以上であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のトンネルの覆工方法。
  9. 前記袋体は、トンネル内面に密着する背面部の長さ方向の伸度が、トンネル内面に密着しない内面部の長さ方向の伸度よりも高いことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のトンネルの覆工方法。
  10. 前記第1工程において、前記袋体を、内部に流体が充填された支持バッグの外面部に装着して、袋体と支持バッグをトンネル内に搬入して支持バッグにより袋体を内側から支持させることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のトンネルの覆工方法。
  11. 前記固化材注入部は、前記内面部の幅が前記背面部の幅よりも長く、
    前記第2工程において、前記複数の固化材注入部に加えて前記仕切部が、トンネル内面に密着することを特徴とする請求項1〜10に記載のトンネルの覆工方法。
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