JP4883840B2 - プロトン化/酸性化核酸の肺輸送 - Google Patents
プロトン化/酸性化核酸の肺輸送 Download PDFInfo
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Description
発明の分野
本発明は,抗生物質の肺輸送に関し,特に呼吸器感染の緩和のための抗生物質の輸送に関する。
【0002】
発明の背景
細菌呼吸器感染は,米国において,特に免疫防御メカニズムに障害を有する患者の間で主要な健康上の問題である。嚢胞性線維症(CF),後天性免疫不全症候群(AIDS),うっ血性心不全,慢性肺疾患,癌を有する患者,および老齢者はすべて呼吸器感染の高いリスクを有している。例えば,CF患者における肺の虚弱化は,日和見感染性生物により引き起こされる慢性気管支内感染の結果として産生される化膿性痰の蓄積を伴う。CFに罹患したほとんどすべての患者が,最終的には呼吸不全で死亡する。
【0003】
P.aeruginosaは,土,水,植物,および動物(ヒトを含む)に住む小さい好気性グラム陰性杆菌である。P.aeruginosaは時々健康な人の皮膚,外耳,上部呼吸管または大腸に住み着き,これらの感染は通常は穏和である。P.aeruginosaによる感染は免疫障害患者においてはるかに深刻であり,多くの合併症,例えばCF患者の下部呼吸管の慢性感染症;化学療法誘導性の重症の好中球減少症の後の血液悪性腫瘍を併発する菌血性肺炎;およびAIDS,うっ血性心不全,および慢性肺疾患を有する患者における原発性肺炎を引き起こす。
【0004】
S.aureusは,頑強性,潜在的破壊性,および抗微生物薬剤に対する増加する耐性のため主要な健康上の問題であるブドウ状球菌である。S.aureus感染から生ずる肺炎は,最も一般的には入院中の気管挿管後に生じ,またはウイルス呼吸器感染の後に生ずる。そのような感染は,老齢および/または収容患者の間で非常に一般的である。さらに,S.aureusの呼吸器感染は,静脈薬剤ユーザーの間で一般的な右側心内膜炎等の状況下における敗血性肺塞栓形成,およびしばしば留置静脈カテーテルの合併症である敗血性血栓静脈炎を引き起こしうる。S.aureusは,慣用の全身抗生物質では治療することがしばしば困難であるため,免疫障害患者における健康上の問題でもある。
【0005】
これらのおよび他の肺細菌感染の現在の治療法は,しばしば高価であり,非特異的であり,有効であるためには非常に大量を使用しなければならない。一例においては,CF患者に見られる慢性気管支炎または気管支拡張に対して現在選択される治療は,P.aeruginosaに対して活性のあるアミノグリコシドおよびβラクタムの腹膜内投与である。しかし,アミノグリコシドの気管支分泌への透過は少なく,ピーク血清濃度のわずか約12%である(Rev.Infect.Dis.,3:67(1981))。Advances in Pediatric Infectious Disorders,8:53(1993)に従えば,痰はイオン強度が高く,2価カチオンが存在するため,痰それ自体がアミノグリコシドの生物活性に阻害的である。この阻害活性は,痰中のアミノグリコシドの濃度を特定のP.aeruginosaの単離物の最小阻害濃度の10倍に増加させることにより克服することができる(J.Infect.Dis.,I48:1069(1983))が,これは全身毒性,例えば耳毒性および腎毒性のリスクを増加させる。静脈内治療は,患者の辛苦を増加させるかもしれず,しばしば入院が必要である。これは治療コストを増加させ,患者を他の潜在的感染に暴露する。
【0006】
CFの治療にエアロゾル化抗生物質を用いる最初の研究の1つは,Lancet,22:1377−9(1981)に報告された。20人のCF患者における制御された二重盲検実験は,カルベニシリンおよびゲンタマイシンのエアロゾル投与により,CF患者の健康状態を改善することができることを示した。残念ながら,多くの抗生物質,例えばアミノグリコシドの物理学的性質のため,薬剤のエアロゾル化には比較的高い用量の薬剤が必要であり,したがってそのような治療はかなり高価になる。
【0007】
当該技術分野においては,細菌呼吸器感染,特に免疫に障害を有する患者における呼吸器感染のための,費用効率がよくかつ治療上有効な処置が必要とされている。また,抗生物質薬剤を呼吸管の感染部位に特異的に導入する有効な方法が必要とされている。
【0008】
発明の概要
本発明は,プロトン化/酸性化核酸を肺に投与することにより細菌呼吸器感染を治療する方法を提供する。これらの修飾された核酸は,細菌の種類にかかわらず殺菌性および/または静菌性薬剤として有効であり,したがって,診断が困難である場合または多数の感染性生物が存在する場合に,特に有用である。本発明の核酸の抗生物質活性は,核酸の特定の配列または核酸分子の長さのいずれにも依存しない。本発明の核酸は,プロトン化/酸性化されており,水に溶解したときに,pH7未満から約1,より好ましくはpH4.5未満から約1,さらにより好ましくはpH2未満から約1のpHを与える。エアロゾル化プロトン化/酸性化核酸の処方は,好ましくはエアロゾル化され,手で支える自給式のディスポーザブルユニットにより投与される。
【0009】
本発明の核酸は,ヌクレアーゼ耐性骨格,酸耐性骨格,および好ましい態様においては,酸耐性およびヌクレアーゼ耐性骨格の両方を有することができる。
【0010】
治療の好ましい方法は,プロトン化/酸性化核酸を,細菌成長を阻害または防止して細菌成長を緩和させるのに十分な量で,または細菌感染を治療するのに有効な量で,動物,特にヒトの気管支管にエアロゾル化輸送することを含む。
【0011】
別の態様においては,本発明は,プロトン化/酸性化核酸を肺輸送して,ウイルス感染,炎症性疾患,癌,真菌感染等が関与する原発性呼吸器疾患を治療または予防することを提供する。ここで,これらの疾患の治療を標的とする核酸は,細菌感染を同時に治療または予防するために,さらにプロトン化されている。好ましくは,この態様の核酸は,原発性呼吸器疾患に関与することが知られている遺伝子,例えば,ウイルス構造蛋白質をコードする遺伝子または癌に関与する内因性遺伝子,例えばオンコジンの発現を制御する。
【0012】
投与する核酸の用量は,多くの因子,例えば,患者の吸息速度,感染領域の位置(すなわち,上部または下部呼吸管),感染の程度,および感染に関与する特定の細菌の種により様々である。感染領域のよりよい治療のためには,調剤を肺の特定の部位にターゲティングすることがしばしば好ましい。例えば,肺炎を治療するために下部呼吸管に粒子を沈着させるためには,エアロゾル化処方を肺中に深く進ませることが望ましい。粒子の輸送は,部分的には,粒子サイズを調節することにより制御することができる。粒子サイズを調節することに加えて,プロトン化/酸性化核酸の輸送は,患者の呼吸サイクルの所望の時点でエアロゾル化用量を放出することによって得ることができる。
【0013】
別の目的は,プロトン化/酸性化オリゴヌクレオチド処方を患者に投与する方法を提供することであり,ここで,処方は,同じ測定吸息流速(0.1−2.0リットル/秒の範囲)で,別々に決定された吸息容量(0.15−1.5リットルの範囲)で,反復して患者に輸送される。好ましくは,オリゴヌクレオチドは2−100核酸の長さである。
【0014】
別の目的は,プロトン化/酸性化核酸モノマー処方を患者に投与する方法を提供することであり,ここで,処方は,同じ測定吸息流速(0.1−2.0リットル/秒の範囲)および別々に決定した吸息容量(0.15−1.5リットルの範囲)で,患者に繰り返し輸送される。
【0015】
本発明の目的は,病原性細菌により引き起こされる呼吸器疾患を治療するためにプロトン化/酸性化核酸を使用することである。
【0016】
本発明の別の目的は,非細菌性病原体,例えば,ウイルス感染および真菌感染により引き起こされる呼吸器疾患を治療し,同時に二次細菌感染を治療および/または予防するために,プロトン化/酸性化核酸を使用することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は,プロトン化/酸性化核酸を投与して免疫応答を抑制し,同時に二次細菌感染を治療および/または予防することにより,肺免疫応答活性を治療することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は,プロトン化/酸性化核酸を投与して発癌,転移,および/または脱分化を抑制し,同時に二次細菌感染を治療および/または予防することにより,肺新生物を治療することである。
【0019】
本発明の利点は,プロトン化/酸性化核酸の作用のメカニズムが比較的非特異的であるように見え,このため,任意の細菌,例えば臨床的に関連性の深い病原性細菌に対して有効である点にある。
【0020】
本発明の別の利点は,プロトン化/酸性化核酸が修飾核酸で治療する被検体に対して無毒性であることである。
【0021】
本発明の別の利点は,修飾核酸で治療する被検体が,核酸からの望まない副作用を事実上示さないことである。
【0022】
プロトン化/酸性化核酸の抗菌効力が,長さにも配列にも依存しないことが,さらなる利点である。
【0023】
本発明のこれらのおよび他の目的,利点および特徴は,以下により完全に記載される核酸およびその用途の詳細を読めば,当業者には明らかとなるであろう。
【0024】
好ましい態様の詳細な説明
本発明の肺輸送の方法を説明する前に,本発明は,記載される特定の方法に限定されるものではなく,したがってもちろん様々でありうることが理解されるべきである。また,本明細書において用いられる用語は,特定の態様を記載する目的のためのみであり,限定を意図するものではないことが理解されるべきである。これは,本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるためである。
【0025】
特に記載しないかぎり,本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は,本発明の属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験においては,本明細書に記載されるものと類似または同等である任意の方法および材料を用いることができるが,ここでは好ましい方法および材料を記載する。本明細書において言及されるすべての刊行物は,刊行物が引用されるものに関連した方法および/または材料を開示および記載するために,本明細書の一部としてここに引用する。
【0026】
本明細書において議論される刊行物は,もっぱら本出願の出願日前の開示のために提供される。ここに記載されるいずれのものも,本発明が先の発明によってそのような刊行物に先立つ権利がないと認めるものと解釈すべきではない。さらに,提供される刊行物の日付は実際の発行日とは異なるかもしれず,これは別途確認する必要があるかもしれない。
【0027】
定義
"処方"との用語は,室温で流動性の液体であり,薬学的に活性な量の本発明のプロトン化/酸性化核酸を含む任意の単一の液体,混合物,溶液,懸濁液などを記述するために用いられる。処方は,処方をエアロゾル化して粒子(直径0.1−10ミクロン)とし,患者の肺に吸入するときに,好ましくは肺の標的部分に到達するように,好ましくは,さらに担体からなり,より好ましくは,生理学的特性(例えば粘度)を有する液体である。担体は任意の薬学的に許容しうる材料であることができ,好ましくは活性薬剤と適合性の流動性液体である。処方は,好ましくは溶液,例えば水性溶液,エタノール性溶液,水性/エタノール性溶液,食塩水溶液,コロイド懸濁液および微小結晶懸濁液である。"処方"との用語はさらに,プロトン化/酸性化核酸,および好ましくはオリゴヌクレオチドまたはモノマーの乾燥粉末をさらに含みうる。
【0028】
"担体"との用語は,処方の実質的に不活性な(生物学的に)成分,例えばプロトン化/酸性化核酸をそれと混合,またはそれに懸濁または溶解する,薬学的に許容しうる賦形剤物質を意味する。担体は,好ましくは流動性液体である。有用な担体は,核酸と有害なように相互作用せず,担体および活性成分を含む処方をエアロゾル化したときに,エアロゾル化粒子,好ましくは0.1−10.0μm(より好ましくは1−5μm)の範囲の直径を有する粒子の形成を可能とする特性を有する。担体には,水,エタノール,食塩水溶液およびそれらの混合物が含まれ,純水が好ましい。適切なエアロゾルを形成するよう処方することができ,活性成分またはヒト肺組織または鼻腔経路に有害な影響を与えないかぎり,他の担体を用いることができる。
【0029】
"エアロゾル"との用語は,処方の粒子を意味し,ここで,粒子は0.1−10ミクロン,好ましくは1−5μmの範囲の直径を有し,好ましくは処方の総容量は5μlから10,000μlである。約1−3ミクロンの直径を有する約10μlの粒子が,約50ml−2リットル,好ましくは100ml−1,000mlの容量中に存在する。
【0030】
"空気","無粒子空気","無エアロゾル空気"等は,本明細書において互換的に用いられ,実質的に他の物質を含まず,特に,意図的に加えられる粒子,例えばエアロゾルを生成する処方の粒子を含まない,ある容量の空気を記述する。この用語は,空気が意図的に加えられた処方の粒子を含まないことを意味し,通常の周囲空気が濾過されるかまたはすべての粒子を除去するよう処置されていることを暗示することを意図するものではない。ただし,濾過を行ってもよい。空気は薬剤輸送において用いるために好ましい気体であるが,他の非毒性気体,例えば,CO2も用いることができることに注意すべきである。
【0031】
"粒子","エアロゾル化粒子"および"エアロゾル化粒子処方の"との用語は,本明細書において互換的に用いられ,本発明のプロトン化/酸性化核酸からなる処方の粒子を意味する。これらのいずれも,担体(例えば薬学的に活性な呼吸器薬剤および担体)とともに処方される。粒子は,粒子を形成したときに,患者が患者の肺内に粒子を吸入することができるように,粒子が十分な時間空気中に懸濁されているように,十分に小さいサイズを有する。粒子は,0.1μmから約50μm,好ましくは0.5から10μmの範囲のサイズを有する。粒子の直径は,空力学的直径である。
【0032】
"実質的に乾燥した"との用語は,容器中またはエアロゾルの粒子中で,総重量に基づいて10%以下の遊離水,エタノールまたは他の液体担体を含み,好ましくは検出可能な遊離液体担体を含まないプロトン化/酸性化核酸を意味する。
【0033】
"投与量ユニット"との用語は,核酸をこれを必要とする患者に肺内投与経路により投与することを意味し,15分間またはそれ以下,好ましくは10分間またはそれ以下,より好ましくは5分間またはそれ以下の時間の間に,投薬装置から(1またはそれ以上の容器から)処方が1回またはそれ以上放出されることを包含する。その時間の間に,1またはそれ以上の吸入が患者によりなされ,1またはそれ以上の用量の核酸が放出され吸入される。
【0034】
"核酸"および"核酸分子"との用語は,本明細書において互換的に用いられ,ヌクレオチド,すなわち,リボヌクレオチド,デオキシリボヌクレオチドまたはその両方からなる分子を表す。この用語は,リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドのモノマーおよびポリマーを含み,ポリマーの場合には,リボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドは5’−3’結合により連結されている。しかし,結合は,核酸合成の技術分野において知られる結合の任意のものを含み,例えば,5’−2’結合を含む核酸が含まれる。核酸分子において用いられるヌクレオチドは,天然に生ずるものであってもよく,または天然に生ずる塩基対と塩基対形成関係を形成しうる,合成で製造される類似体であってもよい。塩基対形成関係を形成しうる天然に生じない塩基の例には,限定されないが,アザおよびデアザピリミジン類似体,アザおよびデアザプリン類似体,およびプリンおよびピリミジン環の炭素および窒素原子の1またはそれ以上が,複素原子,例えば酸素,イオウ,セレニウム,リン等により置換されている他の複素環塩基類似体が含まれる。
【0035】
本明細書において用いる場合,"オリゴヌクレオチド"との用語は,約2−約100ヌクレオチド,より好ましくは2−80ヌクレオチド,さらにより好ましくは約4−約35ヌクレオチドを含む核酸分子を表す。
【0036】
本明細書において用いる場合,"モノマー"との用語は,単一のヌクレオチドからなる核酸分子およびその誘導体を意味する。
【0037】
本明細書において用いる場合,"修飾オリゴヌクレオチド","修飾モノマー","修飾核酸分子"との用語は,核酸塩基,糖部分,ヌクレオシド間ホスフェート結合の全てまたはいずれかの天然の分子構造の分子レベルで,1またはそれ以上の化学的修飾を,ならびに追加の置換基,例えばジアミン,コレステリルまたは他の親油性基を有する分子,またはこれらの部位における修飾の組み合わせを有する核酸を表す。ヌクレオシド間ホスフェート結合は,ホスホジエステル,ホスホトリエステル,ホスホルアミダイト,シロキサン,カーボネート,カルボキシメチルエステル,アセトアミデート,カルバメート,チオエーテル,架橋ホスホルアミデート,架橋メチレンホスホネート,ホスホロチオエート,メチルホスホネート,ホスホロジチオエート,架橋ホスホロチオエートおよび/またはスルホンヌクレオチド間結合,または3’−3’,2’−5’,または5’−5’結合,およびそのような類似の結合の組み合わせ(混合骨格修飾オリゴヌクレオチドが生成)でありうる。修飾は,オリゴヌクレオチド分子の内部(単一または反復)または末端にあることができ,ヌクレオシド間ホスフェート結合の分子への付加でありうる。これには,例えばコレステリル,アミノ基と末端リボースとの間に種々の数の炭素残基を有するジアミン化合物,反対側の鎖または付随する酵素または他の蛋白質を切断するかまたはこれと架橋するデオキシリボースおよびホスフェート修飾が含まれる。親電子性基,例えばリボースジアルデヒドは,そのような蛋白質のリシル残基のイプシロンアミノ基と共有結合することができる。親核性基,例えばオリゴマーにつながれたn−エチルマレイミドは,mRNAの5’末端または他の親電子性部位と共有結合することができる。修飾オリゴヌクレオチドとの用語はまた,糖部分への修飾を含むオリゴヌクレオチド,例えば2’−置換リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドモノマーを含み,これらの任意のものは,5’−3’結合により一緒に連結されている。修飾オリゴヌクレオチドはまた,配列の標的特異性が維持されているPNAまたはモルホリノ修飾骨格からなっていてもよい。
【0038】
本明細書において用いる場合,"核酸骨格"との用語は,分子中でヌクレオチドを連結する化学成分の構造を表す。この用語は,化学的にヌクレオチドを連結させる任意のおよびすべての手段から形成される構造を含んでいてもよい。本明細書において用いられる場合,修飾骨格とは,ヌクレオチド間の化学的結合への修飾,ならびに安定性および親和性を増強させるために用いることができる他の修飾,例えば糖構造への修飾を含む。例えば,塩基が天然のβ−アノマーに対して反転しているデオキシリボースのα−アノマーを用いることができる。好ましい態様においては,糖基の2’−OHは,2’−O−アルキルまたは2’−O−アルキル−n(O−アルキル)に変更することができ,これは親和性を含むことなく分解に対する耐性を与える。
【0039】
本明細書において互換的に用いられる,"酸性化"および"プロトン化/酸性化"との用語は,プロトン(または水素陽イオン)を核酸のプロトンアクセプター部位に付加するプロセスを表す。プロトンアクセプター部位は,核酸の塩基構造上のアミン基およびホスホジエステル結合のリン酸を含む。pHが低下するにつれて,これらのプロトン化されるアクセプター部位の数が増加し,より高度にプロトン化/酸性化された核酸が得られる。
【0040】
"プロトン化/酸性化核酸"との用語は,1mlあたり約16A260の濃度で水に溶解したときに,生理学的pHより低いpH,すなわち,約pH7より低いpHを有する核酸を表す。修飾核酸,ヌクレアーゼ−耐性核酸,およびアンチセンス核酸は,この定義により包含されることを意味する。一般に,核酸は,プロトンを核酸上の反応性部位に付加することによりプロトン化/酸性化するが,核酸のpHを低下させる他の修飾もまた用いることができ,この用語に包含されることが意図される。
【0041】
本明細書において用いる場合,"末端ブロックされた"との用語は,例えばヌクレアーゼの作用による選択されたヌクレオチドの分解を分子レベルで防止する化学的修飾を有する核酸を表す。この化学的修飾は,これが核酸の絶対に必要な部分,例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドのコーディング領域を保護するように配置される。末端ブロックは,3’末端ブロックでも5’末端ブロックでもよい。例えば,3’末端ブロックは,分子の最も3’側の位置であってもよく,核酸の絶対に必要な配列の3’側であるかぎり3’末端から内部であってもよい。
【0042】
"実質的にヌクレアーゼ耐性"との用語は,天然に生ずるまたは未修飾核酸と比較してヌクレアーゼ分解に対して耐性である核酸を表す。本発明の修飾核酸は,その未修飾対応物よりヌクレアーゼ分解に対して少なくとも1.25倍耐性が高く,より好ましくは少なくとも2倍耐性が高く,さらにより好ましくは少なくとも5倍耐性が高く,最も好ましくは少なくとも10倍耐性が高い。そのような実質的にヌクレアーゼ耐性の核酸には,限定されないが,骨格修飾,例えばホスホロチオエート,メチルホスホネート,エチルホスホトリエステル,2’−O−メチルホスホロチオエート,2’−O−メチル−p−エトキシリボヌクレオチド,2’−O−アルキル,2’−O−アルキル−n(O−アルキル),2’−フルオロ,2’−デオキシ−エリスロペントフラノシル,2’−O−メチルリボヌクレオシド,メチルカルバメート,メチルカーボネート,反転塩基(例えば,反転T),またはこれらの骨格のキメラ版を有する核酸が含まれる。
【0043】
本明細書において用いられる場合,"実質的に酸耐性"とは,未修飾核酸と比較して酸分解に対して耐性である核酸を表す。典型的には,核酸の相対的酸耐性は,耐性核酸の分解のパーセントを,その未修飾対応物質(すなわち,"正常な"骨格,塩基,およびホスホジエステル結合を有する対応する核酸)の分解のパーセントと比較することにより測定される。酸耐性である核酸は,好ましくはその非修飾対応物質より,酸分解に対する耐性が少なくとも1.5高く,または少なくとも2倍耐性が高く,さらに好ましくは少なくとも5倍耐性が高く,最も好ましくは少なくとも10倍耐性が高い。
【0044】
本明細書において用いる場合,"アルキル"との用語は,1−6個の炭素原子を含む分枝鎖または非分枝鎖の飽和炭化水素鎖,例えばメチル,エチル,プロピル,tert−ブチル,n−ヘキシルなどを表す。
【0045】
本明細書において用いる場合,"肺疾患に関与する遺伝子"との用語は,その発現が疾患の感染,進行,または悪性化に関与する任意の遺伝子を表す。例えば,肺疾患に関与する遺伝子は,真菌生物Pneumocystis cariniiの複製に関与する任意の遺伝子でありうる。そのような遺伝子の発現を抑制すると,複製が,したがってこの生物により引き起こされる肺炎の進行が妨害されるであろう。別の例においては,肺疾患に関与する遺伝子は,患者において不完全な,CF等の遺伝子疾患の原因である遺伝子でありうる。外来的に導入されたヒト型のCFR遺伝子(CF患者において不完全な遺伝子)の発現は,機能型のCFR蛋白質を提供することにより,疾患の症状を緩和することができる。さらに別の例においては,肺疾患に関与する遺伝子は,小細胞癌腫に関与するオンコジンなどの,患者において過剰発現されている内因性ヒト遺伝子でありうる。オンコジンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いるオンコジンの発現の抑制は,疾患の進行および/または転移を停止するであろう。
【0046】
本明細書において用いられる場合,"治療","治療する"等の用語は,一般に,所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。効果は,予防的,すなわち疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防するか,および/または治療的,すなわち疾患および/または疾患に特徴的な有害な効果を完全にまたは部分的に治癒させることである。本明細書において用いる場合,"治療"との用語は,動物,特にヒトにおける疾患のすべての治療をカバーし,以下のことを含む;
【0047】
(a)疾患の素因を有するがまだ疾患を有すると診断されていない被検体において呼吸器疾患が生ずることを防ぐ;
(b)呼吸器疾患を阻害する,すなわち,その進行を休止させる;または
(c)呼吸器疾患を軽減する,すなわち,疾患の退行および/または改善を引き起こす。本発明は,特に任意の感染性細菌を有する患者を治療することに向けられる。
【0048】
本発明の一般的観点
本発明は,任意の配列および任意の長さのプロトン化/酸性化核酸が,薬剤耐性および抗生物質感受性細菌に対してインビトロおよびインビボの両方で有効な新規な種類の抗生物質であるという発見に基づく。詳細には,本発明のプロトン化/酸性化核酸は,すべての細菌種に対して有効な抗菌薬剤であり,ヒトおよび動物において細菌感染の治療または予防に用いることができる。すなわち,本発明は,プロトン化,ヌクレアーゼ耐性核酸,および細菌を殺すかまたは細菌成長を阻害するのに有効であるようにこれらを製造する方法を含む。特に,本発明は,病原性細菌に対する核酸の抗菌作用を促進するためにプロトン化する方法に関する。
【0049】
さらに,他の疾病または疾患の治療用に現在用いられている核酸,例えば特定の遺伝子を標的とするアンチセンス核酸もまたプロトン化/酸性化することができ,このことにより,そのような核酸に抗菌活性の追加の治療的効果を与えることができる。すなわち,本発明はまた,同時に細菌感染を治療または予防するためにさらにプロトン化された核酸を使用して,ウイルス感染,癌,真菌感染等が関与する疾患を治療または予防することを含む。
【0050】
プロトン化/酸性化を用いて,核酸に抗菌剤として機能する能力を付与することができる。核酸の酸性化は,プロトン(または正の水素イオン)を核酸の反応性部位に付加するプロセスである。プロトン化される反応性部位の数が増加するにつれて,pHは低下し,核酸の細菌阻害活性は増加する。したがって,本発明の核酸は,プロトン化/酸性化されて,水に溶解したときにpH7より低く約pH1までの,好ましい態様においては,pH6−約1またはpH5−約1のpHを与える。別の好ましい態様においては,溶解した核酸はpH4.5−約1,または好ましい態様においてはpH4.0−約1,またはより好ましい態様においては,pH3.0−約1,または別のより好ましい態様においては,pH2.0−1である。
【0051】
好ましい態様においては,本発明の組成物および方法のプロトン化/酸性化核酸は,実質的にヌクレアーゼ耐性,実質的に酸耐性,および好ましくは,実質的にヌクレアーゼ耐性でありかつ実質的に酸耐性である。この態様には,ホスホロチオエート結合,2’−O−メチル−ホスホジエステル,2’−O−アルキル,2’−O−アルキル−n(O−アルキル),2’−フルオロ,2’−デオキシ−エリスロペントフラノシル,p−イソプロピル核酸,ホスホルアミデート,キメラ結合,および任意の他の骨格修飾により完全に誘導化された核酸も含まれる。この態様はまた,核酸を内因性ヌクレアーゼ活性に実質的に耐性にする他の修飾も含む。核酸をヌクレアーゼ耐性にする方法には,限定されないが,核酸を構成するプリンまたはピリミジン塩基を共有結合的に修飾することが含まれる。例えば,修飾塩基を含む核酸が実質的にヌクレアーゼ耐性となるように,塩基をメチル化,ヒドロキシメチル化,またはさもなくば置換(例えばグリコシル化)することができる。
【0052】
最も好ましい態様においては,プロトン化/酸性化核酸は,酸分解,エキソヌクレアーゼ分解,およびエンドヌクレアーゼ消化に実質的に耐性な骨格を有するであろう。
【0053】
典型的には,核酸の相対的ヌクレアーゼ耐性は,耐性核酸の分解のパーセントをその未修飾対応物(すなわち,"正常な"骨格,塩基,およびホスホジエステル結合を有する対応する核酸)の分解のパーセントと比較することにより測定することができる。分解のパーセントは,分析的HPLCを用いて全長核酸の喪失を評価することにより,または任意の他の適当な方法により(例えば,染色,オートラジオグラフィー,蛍光などを用いて生成物をシークエンスゲル上で可視化することにより,または光学密度のシフトを測定することにより),決定することができる。分解は一般に時間の関数として測定される。
【0054】
未修飾核酸と修飾核酸との比較は,無傷の修飾核酸のパーセンテージと無傷の未修飾核酸のパーセンテージとの比率を求めることにより行うことができる。例えば,ヌクレアーゼに15分間暴露した後に,25%の未修飾核酸が無傷であり(すなわち75%分解される),50%の修飾核酸が無傷である(すなわち50%分解される)場合,修飾核酸は未修飾核酸よりヌクレアーゼ分解に対して2倍(50%を25%で割る)耐性が高いと言われる。一般に,実質的にヌクレアーゼ耐性の核酸は,ヌクレアーゼに15分間暴露した後に,対応する配列を有する未修飾核酸より少なくとも約1.25倍ヌクレアーゼ分解に対して耐性が高く,典型的には少なくとも約1.5倍耐性が高く,好ましくは約1.75倍耐性が高く,より好ましくは少なくとも約10倍耐性が高いであろう。
【0055】
酸分解のパーセントは,分析HPLCを用いて全長核酸の喪失を評価することにより,または任意の他の適当な方法により(例えば,染色,オートラジオグラフィー,蛍光等を用いて生成物をシークエンシングゲル上で可視化することにより,または光学密度のシフトを測定することにより)決定することができる。分解は一般に時間の関数として測定される。
【0056】
未修飾核酸と修飾核酸との比較は,無傷の修飾核酸のパーセンテージと無傷の未修飾核酸のパーセンテージとの比率を求めることにより行うことができる。例えば,低pH環境に30分間暴露した後,未修飾核酸の25%が無傷であり(すなわち75%が分解される),修飾核酸の50%が無傷である(すなわち50%が分解される)場合,修飾核酸は未修飾核酸より酸分解に対して2倍(50%を25%で割る)耐性が高いと言われる。一般に,実質的に"酸耐性"核酸は,37℃でpH約1.5−約4.5に30分間暴露した後,酸分解に対して,対応する配列を有する未修飾核酸より少なくとも約1.25倍耐性が高く,典型的には少なくとも約1.5倍耐性が高く,好ましくは約1.75耐性が高く,より好ましくは少なくとも約10倍耐性が高いであろう。
【0057】
本明細書に記載される精製核酸は,単独の治療用薬剤として用いてもよく,または追加の抗菌剤または他の治療用薬剤と組み合わせてもよい。例えば,記載されるヌクレアーゼ耐性抗菌核酸は,慣用の抗生物質または細菌の遺伝子発現を阻害する他の化学基に結合させることができる。あるいは,精製された核酸を,他の疾患および/または症状を緩和させるよう設計された薬剤,例えば,うっ血除去薬,抗ヒスタミン薬,制吐剤,鎮静薬,鎮痛剤等とともに治療用組成物中に含ませることができる。別の例においては,核酸は,炎症に関与する遺伝子,例えばホスホジエステラーゼ−4の抑制に向けられたアンチセンス分子であってもよい。さらに,抗菌核酸を,例えば,核酸のインビボ安定性をさらに増強させるか,さもなくばその薬理学的特性を増強する(例えば,インビボ半減期を増加させる,毒性を減少させる,生体利用性を促進する等),種々のよく確立された化合物または構造と複合体化させることができる。
【0058】
修飾核酸の抗菌効果は配列に依存しないため,本発明の核酸の配列は様々でありうる。例えば,細菌感染の治療に向けられる核酸は,細菌成長に必要な既知の細菌遺伝子に相補的であってもよい。別の例においては,本発明の核酸は,治療または予防している感染を引き起こす細菌のゲノム中の任意の配列と実質的な配列ホモロジーを有していなくてもよい。さらに別の例においては,他の治療標的,例えば,ウイルス,癌細胞,真菌感染に向けられた核酸を本発明にしたがってプロトン化/酸性化して,それらの主たる治療機能に加えて,抗菌薬剤としても同時に機能させることができる。このようにして,免疫応答を抑制するように,または腫瘍原性,転移,脱分化,または新脈管形成を抑制するように設計された治療剤は,同時に,主たる適応症に付随する可能性のある二次細菌感染を治療または予防することができる。疾患,例えば,炎症,癌,ウイルス感染,真菌感染等の治療に用いられるアンチセンス配列は,本明細書の開示を読めば,当業者が決定することができる。
【0059】
本発明の核酸の殺菌活性および/または静菌活性は,当業者に利用可能な多くの方法の任意のものを用いて測定することができる。そのような方法の一例は,抗生物質を用いる細菌感染の治療のインビボ効力を予測しうると認識されているMIC(最小阻害濃度)試験を用いる抗菌活性の測定である。本発明の核酸は,細菌を前処理して膜を透過性にしなくても,核酸のPEG修飾なしでも,この試験において抗菌活性を示す。
【0060】
本発明においては,ある範囲の化学的変更を伴う核酸のプロトン化/酸性化を用いることができるが,本発明の好ましい態様は,5−ブタノール−2’−O−アルキルRNA−ブタノール−3’または2’−O−アルキル−O−アルキルの化学的構造を有し,水に溶解したときにpH3−1を有するプロトン化/酸性化核酸である。本発明の特に好ましい態様は,5’−ブタノール−2’−O−メチルRNA−ブタノール−3’の化学的骨格構造を有し,水に溶解したときにpH3−1を有するプロトン化/酸性化核酸である。
【0061】
核酸合成
核酸は,市販のDNA合成機で,1μMから1mMのスケールで,標準的なホスホルアミダイト化学および当該技術分野においてよく知られる方法,例えば,Stec et al,1984,J.Am.Chem.Soc.106:6077−6089,Stec et al.,1985,J.Org.Chem.50(20):3908−3913,Stec et al,1985,J.Chromatog.326:263−280,LaPlanche et al.,1986,Nuc.Acid.Res.14(22):9081−9093,およびFasman,1989,Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,1989,CRC Press,Boca Raton,Florida(本明細書の一部としてここに引用する)に記載される方法を用いて合成することができる。
【0062】
核酸は,当業者に知られる任意の方法により精製することができる。好ましい態様においては,核酸は,市販の逆相またはイオン交換媒体,例えばWaterのProtein Pak,PharmaciaのSourceQ等でクロマトグラフィーにより精製する。ピーク画分を合わせ,試料を脱塩し,ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)に基づく媒体,例えばHamiltonのPRP1またはPRP3,またはPolymer LabのPLRP樹脂での逆相クロマトグラフィーを用いて濃縮する。あるいは,エタノール沈澱,透析濾過またはゲル濾過を用い,次にSavantのSpeedVac等の市販の装置で真空下で凍結乾燥または溶媒蒸発することができる。任意に,少量の核酸をポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動的に精製することができる。
【0063】
凍結乾燥または乾燥した核酸の調製物は,無発熱物質の滅菌生理食塩水(すなわち0.85%食塩水),滅菌シグマ(Sigma)水に溶解し,0.45ミクロンのゲルマン(Gelman)フィルター(または滅菌0.2ミクロンの無発熱物質フィルター)を通して濾過することができる。記載される核酸は,広範な化学基または結合の任意のもの,例えば,限定されないが,ホスホルアミデート;ホスホロチオエート;アルキルホスホネート;2’−O−メチル;2’−修飾RNA;モルホリノ基;ホスフェートエステル;プロピン基;または上述の基または他の結合の任意の組み合わせのキメラ(またはそれらの類似体)で,部分的にまたは完全に置換されていてもよい。
【0064】
種々の標準的な方法を用いて,本明細書に記載される抗菌核酸を精製することができる。簡単には,本発明の抗菌核酸は,市販の逆相媒体でのクロマトグラフィーにより(例えば,the RAININ Instrument Co.,Inc.,DYNAMAX(登録商標)−300A,Pure−DNA逆相カラム,1989の使用説明書,または現在のその改訂版,(本明細書の一部としてここに引用する)を参照),またはイオン交換媒体,例えばWaterのProtein PakまたはPharmaciaのSourceQ(一般に,Warren and Vella,1994,"Analysis and Purification of Synthetic Nucleic Acids by High−Performance Liquid Chromatography",Methods in Molecular Biology,vol.26;Protocols for Nucleic acid Conjugates,S.Agrawal,ed.Humana Press,Inc.,Totowa,NJ;Aharon et al.,1993,J.Chrom.698:293−301;およびMillipore Technical Bulletin,1992,Antisense DNA:Synthesis,Purification,and Analysisを参照)により精製することができる。ピーク画分を合わせ,試料を濃縮し,アルコール(エタノール,ブタノール,イソプロパノール,およびそれらの異性体および混合物等)沈澱,逆相クロマトグラフィー,透析濾過またはゲル濾過により脱塩する。
【0065】
核酸は,とりわけ,所望の核酸の合成の間に生成される不完全な核酸生成物を実質的に含まないように単離されているとき,純粋であると考えられる。好ましくは,精製した核酸はまた,オリゴヌクレオチドの抗菌活性を隠すかさもなくばマスクするかもしれない夾雑物を実質的に含まないであろう。開示される方法のいずれかまたは当業者に知られる任意の他の方法により酸性化した後の精製した核酸は,とりわけ,過剰のプロトン化/酸性化剤を実質的に含まないように単離されているプロトン化/酸性化核酸である。一般に,核酸が標的細胞に結合するかまたはその中に入って目的とする生理学的活性を調節することができる場合には,核酸の有用性を減少させるであろう夾雑物を実質的に含まないとみなすべきである。
【0066】
特定の態様においては,本発明の核酸は,以下の1またはそれ以上から構成される:部分的にまたは完全に置換されたホスホロチオエート;ホスホネート;ホスフェートエステル;ホスホルアミデート;2’−修飾RNA;3’−修飾RNA;ペプチド核酸;プロピンまたはこれらの類似体。核酸は,化学的成分,例えば,限定されないが,ホスホジエステル結合,ホスホトリエステル結合,ホスホルアミデート結合,シロキサン結合,カーボネート結合,カルボキシメチルエステル結合,アセトアミデート結合,カルバメート結合,チオエーテル結合,架橋ホスホルアミデート結合,架橋メチレンホスホネート結合,ホスホロチオエート結合,メチルホスホネート結合,ホスホロジチオエート結合,モルホリノ,架橋ホスホロチオエート結合,スルホンヌクレオチド間結合,3’−3’結合,5’−2’結合,5’−5’結合,2’−デオキシ−エリスロペントフラノシル,2’−フルオロ,2’−O−アルキルヌクレオチド,2’−O−アルキル−n(O−アルキル)ホスホジエステル,モルホリノ結合,p−エトキシオリゴヌクレオチド,PNA結合,p−イソプロピルオリゴヌクレオチド,またはホスホルアミデートにより,完全にまたは部分的に誘導化されていてもよい。
【0067】
プロトン化/酸性化核酸
上述の合成および精製工程の後に,または工程中に,精製または部分精製されたまたは粗核酸を低pHまたは酸性の環境に供することにより,本発明のプロトン化/酸性化形態の核酸を生成することができる。精製または粗核酸は,酸,例えば,限定されないが,リン酸,硝酸,塩酸,酢酸等を用いてプロトン化/酸性化することができる。例えば,酸は溶液中で核酸と組み合わせることができ,あるいは,核酸を酸性溶液に溶解してもよい。過剰の酸は,クロマトグラフィーにより,または場合によって核酸を乾燥することにより,除去することができる。
【0068】
プロトン化核酸を製造するための,当業者に知られる他の方法も同じく,本発明の範囲内であることが企図される。本発明の核酸をいったんプロトン化したのち,望ましくない成分,例えば,過剰の酸から分離することができる。当業者には,オリゴヌクレオチドを望ましくない成分から分離する多くの方法が知られている。例えば,プロトン化の後に,オリゴヌクレオチド溶液をクロマトグラフィーに供することができる。好ましい態様においては,プロトン化の後に,オリゴヌクレオチド溶液を,ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)系の樹脂(例えば,HamiltonのPRP−1または3およびPolymerLabのPLRP)を通す。
【0069】
プロトン化/酸性化核酸は,直接用いることができ,または,好ましい態様においては,さらに加工して,沈澱,逆相クロマトグラフィー,透析濾過,またはゲル濾過により過剰の酸および塩を除去することができる。プロトン化/酸性化オリゴは,沈澱,凍結乾燥,溶媒蒸発などにより濃縮することができる。本発明の酸性化核酸調製物は,水または食塩水中に懸濁したとき,プロトン化/酸性化のレベルに依存して,典型的には1−4.5のpHを示す。これは,酸性化工程においてどの程度の量の酸が用いられたかにより決定することができる。あるいは,核酸は,水素イオンを満たしたカチオン交換カラムを通過させることにより,プロトン化することができる。
【0070】
酸およびヌクレアーゼ耐性核酸
一般に,pH2−1付近の核酸調製物は,pH4.5またはその付近の核酸より優れた抗菌活性を示す。多くのオリゴの骨格はpH2では安定ではなく,脱プリン化が生ずるが,多くの骨格はpH4−5では比較的安定である。2’−O−アルキル,3’−O−アルキル,および2’−O−アルキル−n(O−アルキル)核酸が所望のpH2−1において安定であることが発見された。
【0071】
1つの態様においては,本発明は実質的にヌクレアーゼ耐性である核酸を用いる。これには,ホスホロチオエート結合,2’−O−メチルホスホジエステル,2’−O−アルキル,2’−O−アルキル−n(O−アルキル),2’−フルオロ,2’−デオキシ−エリスロペントフラノシル,p−エトキシ,モルホリノ核酸,p−イソプロピル核酸,ホスホルアミデート,キメラ結合,および任意の他の骨格修飾,ならびに核酸を内因性ヌクレアーゼ活性に対して実質的に耐性にする他の修飾により,完全に誘導化された核酸が含まれる。核酸をヌクレアーゼ耐性にする別の方法には,限定されないが,核酸を構成するプリンまたはピリミジン塩基を共有結合的に修飾することが含まれる。例えば,修飾された塩基を含む核酸が実質的にヌクレアーゼ耐性となるように,塩基をメチル化,ヒドロキシメチル化,あるいは置換(例えばグリコシル化)することができる。
【0072】
類似の修飾を有する2’−O−アルキル置換核酸および分子は顕著な酸安定性およびエンドヌクレアーゼ耐性を示すが,これらは3’エキソヌクレアーゼに感受性である。2’−O−アルキル置換核酸のエキソヌクレアーゼ耐性を増強するため,リボ核酸配列の5’および3’末端をエキソヌクレアーゼブロッキング官能基に結合させることが好ましい。例えば,1またはそれ以上のホスホロチオエートヌクレオチドをオリゴリボヌクレオチドのいずれかの末端に配置することができる。さらに,1またはそれ以上の反転塩基をオリゴリボヌクレオチドのいずれかの末端に配置することができ,または1またはそれ以上のアルキル,例えばブタノール置換ヌクレオチドまたは化学基をオリゴリボヌクレオチドの1またはそれ以上の末端に配置することができる。酵素耐性ブタノールは,好ましくは構造CH2CH2CH2CH2−OH(4−ヒドロキシブチル)を有し,これはC4スペーサーとも称される。したがって,本発明の好ましい態様は,以下の構造:
A−B−C
[式中,"B"は,約1−約98塩基の長さの2’−O−アルキルまたは2’−O−アルキル−n(O−アルキル)オリゴリボヌクレオチドであり,"A"および"C"は,それぞれ5’および3’末端ブロッキング基(例えば,1またはそれ以上のホスホロチオエートヌクレオチド(典型的には6より少ない),反転塩基結合,またはアルキル,アルケニル,もしくはアルキニル基または置換ヌクレオチド)である]を有する抗菌核酸を含むプロトン化/酸性化核酸である。ブロッキング基としては,反転塩基,ジデオキシヌクレオチド,メチルホスフェート,アルキル基,アリール基,コルジセピン,シトシンアラビノシド,2’−メトキシ−エトキシヌクレオチド,ホスホルアミデート,ペプチド結合,ジニトロフェニル基,ホスホロチオエート結合を有する2’−または3’−O−メチル塩基,3’−O−メチル塩基,フルオレセイン,コレステロール,ビオチン,アクリジン,ローダミン,プソラーレン,およびグリセリルが挙げられる。
【0073】
抗菌核酸の治療用途
疾患の治療的処置に用いる場合,抗菌プロトン化/酸性化核酸またはそれらの混合物の適当な投与量は,いくつかのよく確立された方法論のいずれによっても決定することができる。例えば,慣用的に動物実験を用いて,キログラム体重あたりの生物活性剤の最大許容用量すなわちMTDを決定する。一般に,試験する動物種の少なくとも1つは哺乳動物である。当業者は適当に,これを基礎として有効な用量を推定し,他の種,例えばヒトに対する毒性を回避することができる。さらに,治療上の投与量は,感染の重篤性および宿主のサイズまたは種等の因子によって変更することができる。さらに,非経口的に,および適切に処方された形態の抗菌核酸を吸入治療により肺に直接適用することの両方により,肺感染を治療することができる。
【0074】
免疫に障害を有する患者,例えば,後天性免疫不全疾患症候群(AIDS)に罹患した患者,HIVに感染した者,化学療法または放射線療法を受けている患者等においては,細菌感染が特に問題のある二次合併症であるため,本明細書に記載される発明のさらに別の態様は,ウイルス,癌,真菌または他の標的を有する治療的核酸の使用であり,ここで,核酸は抗菌核酸としても働くことができるようにさらにプロトン化/酸性化されている。遺伝子は,外来生物の生命維持に必要な遺伝子,例えば酵母の複製遺伝子またはウイルスの構造蛋白質を標的とすることができる。このことにより,ある種類の生物による一次感染と二次的細菌感染の予防または治療とを同時に治療することが可能となる。例えば,AIDS患者において,Pneumocystis cariniiを標的とするプロトン化/酸性化アンチセンス遺伝子は真菌感染を標的とするであろうが,さらに,同時またはその後の日和見細菌感染を治療または予防するであろう。核酸は,目的とする遺伝子の発現または活性に影響を与えることによりその主たる標的に向けられるであろうが,それに加えて,抗菌剤としても機能するであろう。
【0075】
あるいは,核酸は,例えば脂質担体−核酸混合物を用いて,肺細胞中における内因性遺伝子の発現に向けることができる。エアロゾル化トランスジン輸送による肺細胞のトランスフェクションを記載する米国特許5,641,662を参照(本明細書の一部としてここに引用する)。これは,遺伝的疾患,例えば機能的外来性ヒトCFR遺伝子を導入する嚢胞性線維症の遺伝子治療において非常に有用であろう。これはまた,内因性遺伝子の増強されたまたは抑制された発現,または外来性遺伝子の発現が有効であろう,癌,例えば小細胞肺癌腫に対しても有用でありうる。米国特許5,849,863(本明細書の一部としてここに引用する)を参照。当業者には明らかなように,内因性および外来性の両方のヒト遺伝子を含む他の治療用途もまた可能である。
【0076】
別の態様においては,プロトン化/酸性化核酸を別の治療用薬剤とともに投与する。例えば,本発明の核酸は,濃くなったまたは蓄積された粘液分泌を伴う肺疾患に罹患した患者の粘液の粘度を低下させる薬剤とともに投与することができる。この目的のためのリン脂質の肺輸送を記載する米国特許5,698,537を参照。別の例においては,本発明の核酸は,抗炎症剤とともに投与することができ,これは患者における細菌感染の治療に有効であろう。
【0077】
本発明の方法が有効である細菌生物の例には,グラム陽性細菌,グラム陰性細菌,抗酸菌,放線菌,Staphylococcus aureus,Streptococcus pyogenes,Streptococcus pneumoniaeおよびEscherichia coliが含まれる。本発明の方法は,すべての細菌生物による感染に対して有効であり,そのような細菌には,以下の属のメンバーが含まれる:Aerococcus,Listeria,Streptomyces,Chlamydia,Actinomadura,Lactobacillus,Eubacterium,Arachnia,Mycobacterium,Peptostreptococcus,Staphylococcus,Corynebacterium,Erysipelothrix,Dermatophilus,Rhodococcus,Ribodobacterium,Pseudomonas,Streptococcus,Bacillus,Peptococcus,Pneumococcus,Micrococcus,Neisseria,Klebsiella,Kurthia,Nocardia,Nocardiopsis,Serratia,Rothia,Escherichia,Propionibacterium,Actinomyces,Helicobacter,Enterococcus,Shigella,Vibrio,Clostridia,Salmonella,Yersinia,およびHaemophilus。
【0078】
薬学的組成物および輸送
乾燥粉末装置用の処方は,裸の核酸構造,ウイルスもしくは哺乳動物ベクター中または小胞構造中の核酸のいずれかを含むことができる。現在望ましいプロトン化/酸性化抗菌核酸は,好ましくは種々の生理学的担体分子とともに処方する。これらの分子は,核酸組成物を安定化させ,粒子の分散を促進し,および/または特定の細胞のタイプまたは位置への核酸の輸送を容易にするよう機能することができる。
【0079】
組成物の多くの物理学的特性および投与量単位を変化させることにより,投与する核酸の用量を調節して,組成物を肺の所望の部位に所望の用量で最も適切に輸送することができる。例えば,ある種の肺輸送装置を用いることにより,患者が低い吸息速度を有する場合には投与量単位あたりより多くの組成物を用いるべきであり,一方,高い吸息速度を有する患者にはより少ない量が必要である。投与量単位は,一回投与で輸送してもよく,または投与量単位を同じ測定吸息流速(0.1−2.0リットル/秒の範囲)および別に決定した吸息体積(0.15−1.5リットルの範囲)で,患者に繰り返し輸送してもよい。
【0080】
粒子の輸送はまた,部分的には,粒子サイズを調節することにより制御することができる。粒子サイズは,肺に沈着しかつ呼気により放出されないように十分大きくあるべきであるが,核酸が標的細胞内に適切に吸収されるために適当な表面領域を有するように十分小さくあるべきである。
【0081】
粒子サイズを調節することに加えて,プロトン化/酸性化核酸は,患者の呼吸サイクルの所望の点においてエアロゾル化した用量を放出することにより輸送することができる。例えば肺炎を治療するために,粒子を下部呼吸管に沈着させるためには,エアロゾル化処方を肺の奥深くに導入することが望ましい。
【0082】
本明細書に記載される抗菌核酸はまた,標的細胞中に入る能力を増強する分子との複合体とすることができる。そのような分子の例には,限定されないが,炭水化物,ポリアミン,アミノ酸,ペプチド,脂質,および細菌成長に重要な分子が含まれる。例えば,抗菌核酸は,脂質,カチオン性脂質,またはアニオン性脂質(これがプロトン化/酸性化核酸には好ましい)と組み合わせることができる。得られる核酸/脂質乳濁液,またはリポソーム性懸濁液は,とりわけ,核酸のインビボ半減期を有効に増加させる。プロトン化/酸性化核酸とともに用いるための適当なアニオン脂質には,限定されないが,カルジオリピン,ジミリストイル,ジパルミトイル,もしくはジオレオイルホスファチジルコリン,またはホスファチジルグリセロール,パルミトイルオレオイルホスファチジルコリンまたはホスファチジルグリセロール,ホスファチジン酸,リソホスファチジン酸,ホスファチジルセリン,ホスファチジルイノシトール,およびアニオン性型のコレステロールが含まれる。カチオン性,アニオン性,および/または中性の脂質組成物またはリポソームの使用は,一般に,国際公開WO90/14074,WO91/16024,WO91/17424,および米国特許4,897,355(本明細書の一部としてここに引用する)に記載されている。抗菌核酸を脂質結合構造中に組み込むことによって適当なターゲティング薬剤(すなわち,特異的抗体またはレセプター)を核酸/脂質複合体中に取り込ませることにより,プロトン化/酸性化抗菌核酸を特定のタイプの細菌細胞にターゲティングすることができる。
【0083】
プロトン化/酸性化核酸は,哺乳動物宿主,通常は骨粗鬆症に罹患しているかそのリスクを有するヒト宿主への肺または呼吸器輸送に適当な薬学的に許容しうる組成物中に処方されるであろう。特定の処方には,乾燥粉末,噴霧に適した液体溶液または懸濁液および計量用量吸入器(MDI)において用いるのに適した噴射剤処方が含まれる。そのような処方の製造は,特許文献,化学文献および医学文献によく記載されており,以下の記載は例示のみを意図するものである。
【0084】
乾燥粉末処方は典型的には,乾燥した,通常は凍結乾燥した形態のプロトン化/酸性化核酸を含み,その粒子サイズは,肺の肺胞領域中での沈着に好ましい範囲内であり,典型的には0.5μm−5μmである。好ましい範囲のサイズのプロトン化/酸性化核酸の呼吸可能な粉末は,ジェットミル,噴霧乾燥,溶媒沈澱等の種々の慣用的な手法により製造することができる。次に,乾燥粉末を,装置を通る患者吸息を用いて粉末を分散させる慣用的な乾燥粉末吸入器(DPI)で,または外部動力源を用いて粉末をエアロゾル雲中に分散させる空気補助装置で,患者に投与することができる。
【0085】
乾燥粉末用の処方は,親水性の賦形剤物質を含むことができる。好ましくは,そのような賦形剤は,乾燥粉末エアロゾル中への核酸の分散を促進し,核酸構築物が身体中に輸送されるにしたがってその湿潤化を促進し,核酸構築物を安定化させるように機能する。WO96/32116(1996年10月17日公開,本明細書の一部としてここに引用する)を参照のこと。
【0086】
乾燥粉末装置は,典型的には,単一のエアロゾル化用量("ひと吹き(puff)")を生成するために約1mg−10mgの範囲の粉末質量を必要とする。以下に議論されるように,必要とされるプロトン化/酸性化核酸の用量は一般にこの量よりはるかに少ないため,プロトン化/酸性化核酸粉末は,典型的には薬学的に許容しうる乾燥増量粉末と組み合わせ,ここで,プロトン化/酸性化核酸は通常は約1重量%−10重量%で存在する。好ましい乾燥増量粉末には,ショ糖,ラクトース,トレハロース,ヒト血清アルブミン(HSA),およびグリシンが含まれる。他の適当な乾燥増量粉末には,セロビオース,デキストラン,マルトトリオース,ペクチン,クエン酸ナトリウム,アスコルビン酸ナトリウム,マンニトール等が含まれる。
【0087】
典型的には,適当な緩衝液および塩を用いて,粒子を形成する前に,溶液中のプロトン化/酸性化核酸を安定化させることができる。適当な緩衝液には,リン酸,クエン酸,酢酸,およびtris−HClが含まれ,典型的には濃度は約5mM−50mMである。適当な塩には,塩化ナトリウム,炭酸ナトリウム,塩化カルシウム等が含まれる。肺中で溶解したときにプロトン化/酸性化核酸の生物学的活性を促進するであろう他の添加物,例えばキレート剤,ペプチダーゼ阻害剤等も適切であろう。例えば,エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は,ペプチダーゼの補因子である二価カチオンのキレーターとして有用であろう。
【0088】
ネブライザシステムにおいて用いるためのプロトン化/酸性化核酸の液体処方は,やや酸性の緩衝液(pH4−6)を用いることができ,ここでプロトン化/酸性化核酸の濃度は約1mg/ml−20mg/mlである。適当な緩衝液には,5mM−50mMの濃度の酢酸塩,アスコルビン酸塩およびクエン酸塩が含まれる。これらの緩衝液は抗酸化剤として作用することができ,またはプロトン化/酸性化核酸中の遊離メチオニンを酸化から保護するために他の生理学的に許容しうる抗酸化剤を加えることができる。化学的安定性を増強または維持するために,他の成分,例えば,キレート剤,プロテアーゼ阻害剤,等張剤,不活性ガス等を加えてもよい。
【0089】
MDIにおいて用いるためには,本発明のプロトン化/酸性化核酸を適当なエアロゾル噴射剤,例えばクロロフルオロカーボン(CFC)またはヒドロフルオロカーボン(HFC)に溶解または懸濁する。適当なCFCには,トリクロロモノフルオロメタン(噴射剤11),ジクロロテトラフルオロメタン(噴射剤114),およびジクロロジフルオロメタン(噴射剤12)が含まれる。適当なHFCには,テトラフルオロエタン(HFC−134a)およびヘプタフルオロプロパン(HFC−227)が含まれる。
【0090】
好ましくは,エアロゾル噴射剤中に取り込ませるためには,乾燥粉末処方について記載されるように,本発明のプロトン化/酸性化核酸を加工して呼吸に適する粒子とする。次に,粒子を噴射剤中に懸濁し,典型的には界面活性剤で被覆してその分散を促進する。適当な界面活性剤には,オレイン酸,トリオレイン酸ソルビタンおよび種々の長鎖ジグリセリドおよびリン脂質が含まれる。
【0091】
そのようなエアロゾル噴射剤処方は,化学的安定性および生理学的許容性を維持または増強するために,さらに低級アルコール,例えばエタノール(30重量%まで)および他の添加物を含んでいてもよい。本発明にしたがうプロトン化/酸性化核酸の肺または呼吸器投与は,嚢胞性線維症または喘息の治療に特に有用であろう。この場合,プロトン化/酸性化核酸は抗炎症治療剤と組み合わせて投与することができる。そのような治療方法は,米国特許4,698,328および4,833,125によく記載されており,その開示は先に本明細書の一部として引用されている。
【0092】
細菌感染の治療のためのプロトン化/酸性化核酸の総エアロゾル化投与量は,典型的には1日あたり約100μg−2,000μg,通常は1日あたり約250μg−1000μgの範囲内である。そのような投与量により,1日あたり約50μg−500μg,通常は1日あたり100μg−250μgの範囲の合計全身的利用性(すなわち,血液に輸送される量)が得られるであろう。精密な投与量は,もちろん,用いる特定のプロトン化/酸性化核酸または類似体の活性および他の既知の薬物動力学的因子に依存して様々であろう。通常は,プロトン化/酸性化核酸の総投与量は,複数の,典型的には少なくとも2回,しばしば3から10回の別々のエアロゾル化用量として輸送され,ここで各エアロゾル化ボーラスは50μg−500μgのプロトン化/酸性化核酸を含む。
【0093】
本発明の方法にしたがうプロトン化/酸性化核酸の肺輸送は,所望の搏動性血清濃度プロファイルを与えることが見いだされた。プロトン化/酸性化核酸の搏動性血清濃度プロファイルは,典型的には投与の30分後にピークを有し,血清濃度は急速に低下し,典型的にはピークから30分以内に最大の50%未満に,ピークから60分以内に25%未満に低下する。
【0094】
乾燥粉末装置用の処方は,裸の核酸構造,ウイルスもしくは哺乳動物ベクターまたは小胞構造中の核酸のいずれかを含む。乾燥粉末処方の場合,プロトン化/酸性化核酸の総投与量が患者により吸入されるべき1またはそれ以上のエアロゾル化ボーラスにより上述の範囲内になるように,十分な量の乾燥バルク粉末を加える。典型的には,活性なプロトン化/酸性化核酸は約1重量%−25重量%の粉末で存在し,エアロゾル化ボーラスは1mg−10mgの粉末を含む。ネブライザにおいて用いるのに適当な液体処方は,典型的には約1mg/ml−20mg/mlの範囲の濃度のプロトン化/酸性化核酸を有し,ボーラスを輸送するのに必要な噴霧された液体の総容量は,約0.1ml−1mlの範囲である。エアロゾル噴射剤処方は,MDIにより,1回のエアロゾル用量あたり約0.5mg−5mgのプロトン化/酸性化核酸で輸送される。MDI装置の非能率性のため,わずかの部分,典型的には5%−20%の範囲の薬剤のみが肺に到達するであろう。すなわち,十分な量のプロトン化/酸性化核酸は,各ボーラスに約0.1−1mgのプロトン化/酸性化核酸を含む,2から5のエアロゾル化ボーラスで輸送することができる。
【0095】
エアロゾルは,核酸を噴射剤(例えばエチルアルコール)中に,または噴射剤および溶媒相中に,溶解または懸濁することにより製造することができる。局所またはエアロゾル形態用の薬学的組成物は,用いられる特定の形態により,一般に約0.01重量%−約40重量%,好ましくは約0.02重量%−約10重量%,より好ましくは約0.05重量%−約5重量%の核酸を含むであろう。
【0096】
一般に異なるメカニズムおよび方法論を用いて吸入用のエアロゾルを生成するいくつかの異なるタイプの装置がある。最も一般的に用いられている装置は,計量用量吸入器(MDI)であり,これは低沸点の噴射剤を含む処方を有する薬剤処方容器を含む。処方は,容器中で加圧下に保持され,容器のバルブを開いたときに計量された用量の処方がエアロゾルとして放出される。処方が容器外で大気圧にさらされたとき,低沸点の噴射剤は速やかに蒸発,すなわち"フラッシュ"する。薬剤を含む処方の粒子は噴射剤なしで患者の肺に吸入され,その後患者の循環系に移動する。多数の異なるタイプのMDI装置が存在する。このタイプの装置は,米国特許5,404,871および5,364,838に記載されている。
【0097】
別のタイプのエアロゾル輸送装置は,多孔質膜を通して処方を押し出す。孔を通して移動する処方は,破壊されて小さい粒子を形成し,これが患者により吸入される。このタイプの装置は米国特許5,554,646および5,522,385に示される。
【0098】
さらに別のタイプの装置は,乾燥粉末吸入器(DPI)装置である。その名前が示すとおり,そのような装置は乾燥粉末の処方を用い,ここで粉末は気体の爆発によりエアロゾル化雲中に吹き込まれる。典型的なDPI装置は,米国特許5,458,135,5,492,112,5,622,166,および5,775,320に示される。
【0099】
実施例
以下の実施例は,当業者に本発明をいかにして作成し使用するかの完全な開示および記載を提供するために記載され,発明者らが自らの発明として認識するものの範囲を限定することを意図するものではなく,発明者らが,以下の実験が実施したすべての実験でありそれのみであることを示すことを意図するものではない。用いる数値(例えば,量,温度など)に関して正確性を確実にするよう努力してきたが,ある実験誤差および偏差が考慮されるべきである。特に記載しない限り,部は重量部であり,分子量は平均分子量であり,温度は摂氏であり,圧力は大気圧またはそれに近い。
【0100】
実施例1:細菌成長研究
制限栄養成長研究
制限栄養成長研究のためには,細胞をプレートから取り出し,PBS中に懸濁して最終濃度105CFU/mlおよび最終用量1mlとした。Mueller−Hinton培地を加えた(S.aureusACC#13301については40μl,P.aeruginosaACC#10145については20μl)。100μlの水または100μlの核酸(32A260ユニット,2’−O−メチルリボヌクレオチド,ホスホジエステル結合,5’および3’反転T末端ブロック,配列CGCCATTGG,配列番号1)を加え,管を振盪せずに35℃で約24時間インキュベートした。A625を測定し,パーセント阻害を対照のパーセントとして計算した。結果を以下の表に示す。
【表1】
【0101】
定常成長研究
核酸の抗菌活性に及ぼすpHの影響を調べるために,定常成長アッセイも行った。細胞をプレートから取り出し,食塩水に懸濁して,1mlのPBS中最終濃度107CFU/mlのS.aureusとした。100μlの水または100μlの核酸(32A260ユニット,2’−O−メチルリボヌクレオチド,ホスホジエステル結合,5’および3’反転T末端ブロック,配列CGCCATTGG,配列番号1)を加え,管を振盪せずに35℃で約24時間インキュベートした。アリコートを直接または希釈後に播種して,37℃でインキュベートし,24時間後にコロニーを計数した。結果を以下の表に示す。
【表2】
【0102】
これらの結果から,ヌクレオチドのpHを低くすると,これに殺菌性および静菌性効果が付与されることが結論づけられる。次に,配列同一性および長さの影響を調べた。
【0103】
実施例2:抗菌活性に及ぼす配列の影響
定常成長研究
最初に,配列の長さの影響を調べるために,定常成長アッセイを行った。細胞をプレートから取り出し,食塩水に懸濁してPBS1ml中最終濃度107CFU/mlのStrep.mutansとした。50μlの水または50μlの種々の長さの核酸(16A260単位)を加え,管を35℃で振盪せずに約24時間インキュベートした。用いた各核酸は,ホスホジエステル結合の2’−O−メチル置換リボヌクレオチドからなり,5’および3’反転T末端ブロッキングを有する。配列は以下のとおりであった:114.6−CGCCAT(配列番号2);114.12−ACGCGCCATTGG(配列番号3);114.21−GGAACGCGCCATTGGTATATC(配列番号4)。各核酸について以下の表に示される長さは,5’および3’末端の反転Tを含む。アリコートを直接または希釈後に播種し,37℃でインキュベートし,24時間後にコロニーを計数した。結果を以下の表に示す。
【表3】
【0104】
制限栄養成長研究
次に,ヌクレオチドホモポリマー(AAAAAAAAAAAA,配列番号5;UUUUUUUUUUUU,配列番号6;GGGGGGGGGGGG,配列番号7;CCCCCCCCCCCC,配列番号8)の影響を調べるために,制限栄養成長アッセイを行った。用いた各ホモポリマーは,ホスホジエステル結合の2’−O−メチル置換リボヌクレオチドからなり,3’および5’の両方のブタノール末端ブロッキングを有する。細胞をプレートから取り出し,1mlのPBS中に懸濁して,最終濃度105CFU/mlとした。Mueller−Hinton培地を加えた(S.aurevsACC#13301については40μl,P.aeruginosaACC#10145については20μl)。100μlの水または100μlの核酸(pH1.5(32A260ユニット))を加え,管を振盪せずに35℃で約24時間インキュベートした。A625を測定し,パーセント阻害を対照のパーセントとして計算した。結果を以下の表に示す。
【表4】
【0105】
次に,モノマー,ダイマーおよびトリマーの影響を調べるために,制限栄養成長アッセイを行った。用いた各核酸は,ホスホジエステル結合の2’−O−メチル置換リボヌクレオチドからなり,ブタノールによる3’および5’の両方のブロッキングを有する。114.12と称される核酸は,ACGCGCCATTAT,配列番号9の配列を有する。細胞をプレートから取り出し,1mlのPBS中に懸濁して,最終濃度105CFU/mlとした。Mueller−Hinton培地を加えた(S.aureusACC#13301については40μl,E.coliACC#35218については20μl)。25μlの水または25μlの核酸(pH1.5(8A260ユニット))を加え,管を振盪せずに35℃で約24時間インキュベートした。A625を測定し,パーセント阻害を対照のパーセントとして計算した。アリコートを直接または希釈後に播種し,37℃でインキュベートし,24時間後にコロニーを計数してCFUを決定した。結果は以下の表に示される。
【表5】
【0106】
モノマー,ダイマーおよびトリマーの影響を調べるために定常状態アッセイを行った。用いた各核酸は,ブタノールの3’および5’ブロッキングの両方を有する,ホスホジエステル結合の2’−O−メチル置換リボヌクレオチドからなるものであった。114.12と称される核酸は,ACGCGCCATTAT,配列番号9の配列を有する。細胞をプレートから取り出し,食塩水に懸濁して,1mlのPBS中,S.aureusについては0.08,E.coliについては0.12,K.pneumoniaeについては0.1のA625とした。25μlの水または25μlの核酸(8A260ユニット)を加え,管を35℃で振盪せずに約24時間インキュベートした。アリコートを直接または希釈後に播種し,37℃でインキュベートし,24時間後にコロニーを計数してCFUを決定した。結果を以下の表に示す。
【表6】
【0107】
結論として,これらの結果は,プロトン化/酸性化核酸が抗菌剤として機能する能力は配列の同一性に依存しないことを示す。さらに,モノマー程度の短いホモポリマーおよび核酸も有効である。これらの結果は,配列はオリゴヌクレオチドの活性に役割を果たすかもしれないが,アンチセンス依存性ではなくしたがって配列非依存性である抗菌効果の別のメカニズムが存在することを示す。
【0108】
実施例3;耳感染の局所的治療の有効性
プロトン化/酸性化核酸は,チンチラにおいてPseudomonas aeruginosa細菌により引き起こされる外耳表皮感染の治療に非常に有効であった。連続的プロトン化/酸性化核酸治療を施したチンチラの感染耳は,処置開始から4日後にはすべて完全に治癒した。
【0109】
チンチラの耳をPseudomonas aeruginosa細菌で感染させた。詳細には,耳を水に長時間暴露することにより,チンチラの耳の表皮層を浸軟させた。これは,チンチラの耳管の内表面を覆う皮膚の表皮層にPseudomonas感染の受容性の環境を作ることを助ける。洗浄したPseudomonas aeruginosaの懸濁液で綿プリージを飽和させ,これをチンチラの耳管に挿入した。プリージは48時間後に除去した。
【0110】
チンチラの処置は感染後第3日に開始した。このとき,耳顕微鏡検査により測定して,耳は"レベル3"の重篤度を有すると判定された。チンチラには,400μlのプロトン化/酸性化核酸(pH1.5),配列ACGCGCCATTAT,配列番号9,水中(2.8mMolar),またはベヒクル混合物(水/エタノール/プロピレングリコール)中(2mMolar)の400μlの同一の配列のプロトン化/酸性化核酸のいずれかを,1日に2回局所投与した。核酸は,ホスホジエステル結合の2’−O−メチル置換リボヌクレオチドからなり,5’および3’末端の両方でブタノールによる末端ブロックを有していた。チンチラは毎日調べて,耳感染の重篤度の程度に基づいて,処置の有効性を評価した。
【0111】
プロトン化/酸性化核酸処置の結果は,耳顕微鏡検査により判定して,処置したチンチラの耳はすべて耳感染の重篤度の有意な低下を示した。有意な改善は,プロトン化/酸性化核酸で3回処置した後に観察することができた。チンチラにはさらに4−5日間処置を与えた。未処置対照チンチラは,この時間枠の中では改善を示さなかった。これに対し,連続的プロトン化/酸性化核酸処置を施したすべての耳感染は,感染後第7日までに完全に治癒した(すなわち,プロトン化/酸性化核酸での処置の開始から4日後)。
【0112】
さらに,2つの輸送媒体,すなわち水またはベヒクル混合物(水/エタノール/プロピレングリコール)に溶解したプロトン化/酸性化核酸の間では,治癒の進行にわずかの相違があった。耳顕微鏡検査に基づけば,ベヒクル混合物中のプロトン化/酸性化核酸は耳感染の治療においてわずかに有効性が高かった。
【0113】
結論として,プロトン化/酸性化核酸は,Pseudomonas aeruginosaにより引き起こされたチンチラの外耳感染の治療において有効性を示した。この感染性細菌は自然には抗生物質耐性細菌であるため,このことは重要である。
【0114】
実施例4:プロトン化/酸性化オリゴヌクレオチドの肺輸送
齧歯類モデル系および市販のジェットネブライザを用いて,酸性化/プロトン化オリゴヌクレオチドの肺輸送における有効性について試験する。これらの実験に用いたオリゴヌクレオチドは,滅菌水に溶解したプロトン化/酸性化ACGCGCCATTAT,配列番号9(2.8mMolar)である。核酸は,ホスホジエステル結合の2’−O−メチル置換デオキシリボヌクレオチドからなり,末端を5’および3’末端の両方でブタノールで末端ブロックされている。オリゴヌクレオチドは,肺輸送のためにマイクロカプセル化してもよく,または裸の核酸として直接投与してもよい。
【0115】
マイクロカプセル化
プロトン化/酸性化オリゴヌクレオチドを含むリポソームを,硫酸アンモニウム勾配を利用する,リモート充填法(Oh et al.,Antimicrob.Agents Chemother.,39:2104−2111(1995))を用いて調製した。
【0116】
感染および処置
改変Mueller−Hinton培地(Difco Laboratories)の培養物にF.tularensis生ワクチン株#296684(ATCC,Rockville,MD)を接種し,37℃で4−5日間インキュベートした。80匹の6週齢Balb/c雌マウスを麻酔し,それぞれをF.tularensis培養物のLD50と等しい投与量(一般にマウス1匹あたり約50μl)で鼻腔内感染させた。
【0117】
感染後24時間において,マウスを24ポートのノーズオンリーエアロゾル暴露チャンバにおいた。最初の実験群の20匹のマウスを,PurRD Raindropネブライザ(Puritan−Bermett,Lenoxa,Kansas)を用いて生成したエアロゾル化リポソーム封入修飾オリゴヌクレオチドに暴露した。第2の実験群の20匹のマウスを,水に溶解しエアロゾル化した裸の修飾オリゴヌクレオチド(これもPurRD Raindropネブライザを用いてエアロゾル化)に暴露した。第1の対照群にはエアロゾル化リポソーム封入水を与え,第2の対照群にはエアロゾル化水を与えた。感染動物は,感染による症状の兆候および死亡について毎日モニターした。感染後第14日に,感染から生存したマウスの数を測定した。
【0118】
リポソーム封入オリゴヌクレオチドを投与したマウスおよび裸のオリゴヌクレオチドを投与したマウスの両方とも,55−60%の生存率を示した。これに対し,対照群はいずれも0%の生存率を有していた。
【0119】
実施例5:リポソーム性プロトン化/酸性化モノマーのラットモデルへの肺輸送
次に,図1に示されるリポソーム封入プロトン化チミジンモノマーの肺輸送を,Pseudomonas aeruginosaの呼吸器感染の治療において試験した。
【0120】
動物モデルの調製
慢性肺感染の治療の動物モデルは,寒天ビーズ中にメッシュ化(enmesh)したP.aeruginosaの株で気管内感染させたラットにおいて樹立した。この研究においては,Pseudomonas aeruginosaの2つのCF株を用いた。先に記載されているように(Driver et al.,1991),P(R)P4438株およびPAO株は,それぞれシプロフロキサシン耐性およびシプロフロキサシン感受性である。これらの株は,Dr.HarveyRabin(嚢胞性線維症クリニック,Foothills Hospital,University of Calgary,Calgary,Alberta,Canada)から提供された。本研究において用いた,寒天ビーズ中にメッシュ化したP.aeruginosaは,先に記載された方法(Cash et al.,1979)を改変して,以下のように調製した。Pseudomonas aeruginosa(PAOおよびP(R)P4438株)を,100mlの黒い蓋付きボトル中で,2%グルコースを補充した25mlのLB培地中で16−18時間成長させた。濁度はShimadzu UV160U分光光度計を用いて波長600nmで測定した。培養物を約0.4OD600/mlの濃度(5x109CFU/ml)に希釈した。次に,1mlの細菌懸濁物を19mlの2%不活性寒天(PBS中に溶解)に加えて,2.5xl08CFU/mlの濃度を得た。2%不活性寒天(Sigma)は,細菌懸濁液に加える前に温水浴中で50℃に暖めた。10mlの細菌−不活性寒天混合物を,コーニングホットプレート上で3.75cm(l)x7mm(直径)の磁気撹拌子を用いて速度9で撹拌している200mlのミネラルオイル(Sigma)に一滴ずつ加えた。10秒間撹拌した後,速度6で約1−2分間寒天を固化させた。
【0121】
次に,寒天ビーズ懸濁液を250mlの遠心分離管に入れ,Beckman遠心分離器(モデルJ2−21M)およびJA−14ローターを用いて,8100rpm(〜10,000g)で4℃で15分間遠心分離した。上清を廃棄し,ペレットをフィルター滅菌した0.5%のデオキシコール酸(Sigma)に再懸濁した。懸濁液を8100rpmで4℃で20分間遠心分離した。これをさらに1回繰り返し,上清を除去し,ゆるいペレットを得た。20mlのPBSをペレットに加え,懸濁液を50mlファルコンチューブに移し,4000rpmで4℃で20分間遠心分離した。上清を除去した後,最終ペレットを等量のPBSに再懸濁して,50:50寒天ビーズ/PBS懸濁液を得た。偽寒天ビーズ(細菌なし)は,細菌培養物なしで,同じ調製方法を用いて調製した。
【0122】
寒天ビーズ懸濁液(1ml)を1mlシリンジを用いて50mlのファルコンチューブから取り出し,2mlの組織ホモジナイザー中ですりつぶした。次に,ホモジナイズした溶液の100μlのアリコートを連続的に10-5まで希釈した。各希釈物の100μlのアリコートをトリプチカーゼ大豆寒天(TSA)上に播種し,CO2,水冷却インキュベーター(Forma Scientific)で37℃で16−18時間インキュベートした。プレートのコロニー形成ユニット(CPU)を計数し,寒天ビーズの濃度を決定した。ラットに慢性の非致死的肺感染を樹立するための寒天ビーズ中のP.aeruginosaの所望の濃度は,1x107CFU/mLであると決定された。4回の洗浄工程およびPBS中の1/2希釈後の細菌の収率は8%であると決定された。偽寒天ビーズの分析では,予測されたように,P.aeruginosaの成長は認められなかった。
【0123】
すりつぶしていない寒天ビーズ懸濁液1滴をスライド上に置き,風乾させた。寒天ビーズを位相差顕微鏡で25X,40Xおよび100Xで観察し,サイズは直径10−150μmの範囲内にあると決定された。
【0124】
感染の動物モデルを作成するために,各ラットに合計約2−10x106個のメッシュ化細菌を投与した。気管内投与を用いて,ラットをメッシュ化寒天ビーズで感染させた。数群のラットをケタミン/キシラジン(体重1kgあたり90mgケタミン,10mgキシラジンを筋肉内に投与)で麻酔した。ラットが意識不明となったとき,仰向けにおいた。後頸の基部から胸郭にわたって皮膚に約2−2.5cmの正中切開を形成した。切開により暴露された下顎骨下唾液腺間の結合組織を2組の鉗子でつかみ,次にこれを横に引っ張って互いに離し,気管に被さる胸骨甲状筋を暴露した。筋肉は半分ずつが結合組織により一緒に保持されている。かなり強く押し下げながら1組の鉗子の点を筋肉の中心で上下させることによりこれらの2つの部分を分離した。このことにより,結合組織が裂け,2つの部分の間の中央平面が現れた。鉗子を用いて気管を暴露するよう保ちながら,気管の表面に小さい切開を作成した。次に,カーブした丸い先端の22ゲージの針を切開中に挿入し,気管を右肺方向に送った。抵抗を感じたとき,特定の容量のPseudomonas aeruginosa含有寒天ビーズ(チャレンジ)または薬剤(治療)のいずれかをゆっくり注入した。感染後第28日に,対照および処置ラットを安楽死させ,右肺および左肺の両方を無菌的に回収した。
【0125】
プロトン化モノマーのマイクロ封入
マイクロ封入プロトン化モノマーは,リモート充填小胞(RLV)または多層状小胞(MLV)リポソームのいずれかを用いて作成した。リモート充填のためには,Oh et al.(1995)の方法の改変を用いて,リモート充填により製造したリポソーム−封入モノマーを調製した。単層板小胞は,2つの0.2μmポリカーボネートフィルターを通して押し出した後に得た。モノマーは400mM硫酸アンモニウム勾配を用いて充填した。脂質成分は55:45モル比のホスファチジルコリン/コレステロールから構成された。薬剤対脂質比は6.65mg:30μmolであった。
【0126】
MLVリポソーム−封入プロトン化モノマーは,凍結乾燥封入法を用いて調製した。これは,Kirby and Gregoriadis(J.Microencapsul.1:33−45(1984))の方法に基づき,Wong et alにより記載された方法の改変である。この方法は,比較的高いトラップ効率が得られる簡単かつ穏和な方法であるため選択した。脂質混合物は卵ホスファチジルコリン(EPC),コレステロール(CHOL)およびジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)をモル比7:2:1で含有した。薬剤対脂質比は166μgモノマー:1μmol脂質であった。典型的な大量製造においては,大きい1000mlのRBフラスコ中で241μmolの総脂質を20mlのクロロホルムに溶解した。回転蒸発器ですべてのクロロホルムを蒸発させ,RBフラスコの下半分に脂質フィルムの均一な層を得た。脂質フィルムを真空オーブン中で85kPaで45℃で1時間さらに乾燥した。脂質フィルムを0.9%食塩水でpH=7で再水和させて多層状小胞(MLLV)を得,次にガラスバイアル中に分取した。次に,各バイアル中の脂質溶液を液体窒素中に沈めることにより凍結した。試料を18時間凍結乾燥して,脂質の白色粉末を形成させた。0.5mlの凍結乾燥脂質懸濁液を含むガラスバイアルを118μlのNU−3(6600A/ml)で水和した。試料を加熱ブロックで45℃で15分間加熱し,次に22℃で1時間放置した。0.9%Nace(pH=7,4ml)を粘稠な懸濁液に加え,50,000rpmで2時間の超遠心分離により遊離のプロトン化モノマーを除去した。
【0127】
肺ホモジネートの細菌負荷の判定
動物モデルの肺における細菌負荷(および後の実験における対照および処置ラットの細菌負荷)を決定するために,肺を無菌的に回収した。次に,各肺を5mlの滅菌リン酸緩衝化食塩水(PBS)中で手で支える組織グラインダーを用いてホモジナイズし,次に氷中においた。次に上清を播種して,トリプチカーゼ大豆寒天(TA)プレートで成長させた。接種したプレートを37℃で1−2日間インキュベートし,Pseudomonas aeruginosaの数を測定した。動物モデルにおけるP.aeruginosa感染の進行は,以下の表1に示される。
【表7】
【0128】
プロトン化モノマーの気管内投与
感染ラットをリポソーム封入プロトン化モノマーの気管内投与を用いて処置するために,最初に,先に記載したように,ラットを筋肉内注射によりケタミン/キシラジンで麻酔した。麻酔した後,ラットを単一用量のリポソーム封入プロトン化モノマー(MLV,RLV,または小単層小胞,SUV)で,2600A/ml(ラット1匹あたり250μl)の濃度で,右肺への気管内点滴により処置した。未処置感染対照ラットには,等容量のリン酸緩衝化食塩水(PBS)を投与した。気管内投与の後,術後の保護を維持して完全な快復を確実にした。処置の4日後,ラットを過剰量のケタミン/キシラジンにより安楽死させ,肺を回収し,ホモジナイズし,細菌負荷を測定した。
【0129】
リポソーム−封入プロトン化モノマーの気管内投与は,処置群においては,未処置対照と比較して,コロニー形成単位(CFU)の適度の約1−2log10の減少を示した。以下の表2を参照。
【表8】
【0130】
感染ラットを単一のエアロゾル処置でリポソーム封入プロトン化モノマーで処置すると,処置ラットの33%で肺ホモジネートからP.aeruginosaが根絶され,残りの67%は,PBS処置群と比較して有意なCFU減少を示した。これらの結果は,リポソーム−封入プロトン化モノマーのエアロゾル輸送が,嚢胞性線維症患者において肺P.aeruginosa感染に対する有望な治療法を提供するであろうことを示唆する。
【0131】
リポソーム含有エアロゾルの生成および特性決定
リポソーム性プロトン化モノマーの肺輸送用のエアロゾル吸入を評価するために,リポソームを破壊せずに呼吸可能なサイズの範囲内になるようエアロゾル化粒子を製造した。
【0132】
リポソーム封入プロトン化モノマー(RLV)を,ジェットネブライザPari LC STAR(Pari,,Starnberg,Germany)を用いてエアロゾル化した。RLVリポソーム封入プロトン化モノマー(1300A/ml)を容量4mlでネブライザのリザーバーに加えた。エアロゾルは,乾燥圧縮空気を用いて,40lbs/in.2で流速4L/minで生成した。生成したエアロゾル粒子は,エアロゾル運転の種々の段階で,レーザー空力学粒子サイザー(APS)(モデル3320;TSI Inc.,St.Paul,MN)およびAPS Advanced Software version2.9(TSI)を用いてモニターし,特性決定した。リポソーム封入薬剤を含有するエアロゾル粒子を,MMAD,幾何学的標準偏差(GSD)およびピーク粒子計数(PPC)について特性決定した。
【0133】
リポソーム封入プロトン化モノマーエアロゾルの空力学的粒子のサイズは,質量平均空力学的直径(MMAD)が3.8±0.2μm,幾何学的標準偏差が2.2μmであり,粒子の約90%が2μm未満で生成されたことを示した。エアロゾルの典型的な粒子サイズ分布を図2に示す。
【0134】
メッシュ化P.aeruginosaに感染させたラットを,リポソーム封入プロトン化モノマーまたはリポソーム化PBSで処置した。感染後第2週に処置を施した。メッシュ化P.aeruginosaに感染させたラットを24ポートのノーズオンリーエアロゾル暴露チャンバ(In−Tox Products,Albuquerque,NM)においた。次に,動物を,エアロゾルリポソーム封入プロトン化モノマーまたはリポソーム化PBSに70分間暴露した。Pari LC STARネブライザ(Pari,Stamberg,Germany)を用いてこれらのエアロゾル粒子を生成させ,先に記載したようにAPSシステムを用いて特性決定した。処置後第4日において,過剰量のケタミン/キシラジンによりラットを安楽死させ,肺を回収し,ホモジナイズし,細菌負荷を測定した。
【0135】
エアロゾル化PBSで処置したラットの肺においては,5匹すべてのラットは,未処置右肺において1.2x106から4.0x108の範囲のP.aeruginosaのCFU数を示した。これに対し,処置ラット肺は,有意に減少したCFUを示すか(2/6),または成長を示さなかった(4/6ラット)。以下の表3を参照。これらの結果は,リポソーム性モノマーのエアロゾル化輸送もまた肺における細菌感染の治療に有効であることを示す。
【表9】
【0136】
特定の態様を参照して本発明を説明してきたが,当業者には,本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく,種々の変更および均等物をなしうることが理解される。さらに,特定の状況,材料,組成,方法,工程を本発明の目的,精神および範囲に適合させるために多くの改変をなすことができる。すべてのそのような改変は,特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は,肺感染研究に用いたプロトン化モノマーの化学的構造を示す。
【図2】 図2は,リポソーム性プロトン化モノマーの肺輸送に用いたエアロゾルの典型的な粒子サイズ分布を示す。
【配列表】
Claims (32)
- 肺細菌感染を減少または阻害するための組成物であって、
治療上有効量の、pH4以下のプロトン化した核酸であって、該プロトン化した核酸が、
該核酸の3’及び/または5’位の、ブロッキング化学修飾、
天然に生ずるヌクレオチドポリマーの骨格構造から修飾された核酸骨格構造、
一以上の糖基における、2’または3’置換、
から選択される1以上の修飾によりヌクレアーゼ耐性を有する、核酸と、
賦形剤担体と
を含む組成物。 - 前記核酸が、3’−5’ヌクレオシド間結合を含み、糖基の2’残基が置換されており、該置換により、該核酸が、天然に生ずるヌクレオチドRNAもしくはDNAと区別される、請求項1に記載の組成物。
- 前記核酸が、2’−5’ヌクレオシド間結合を含み、糖基の3’残基が置換されており、該置換により、該核酸が、天然に生ずるヌクレオチドRNAもしくはDNAと区別される、請求項1に記載の組成物。
- 前記核酸が、2〜100のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記核酸が、部分的に置換されたホスホロチオエート、完全に置換されたホスホロチオエート、ホスホネート、ホスフェートエステル、ホスホルアミデート、2’−修飾RNA、3’−修飾RNA、ペプチド核酸、プロピン及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
- 前記核酸が、ホスホジエステル結合、ホスホトリエステル結合、ホスホルアミデート結合、シロキサン結合、カーボネート結合、カルボキシメチルエステル結合、アセトアミデート結合、カルバメート結合、チオエーテル結合、架橋ホスホルアミデート結合、架橋メチレンホスホネート結合、ホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、ホスホロジチオエート結合、架橋ホスホロチオエート結合、スルホンヌクレオチド間結合、3’−3’結合、5’−2’結合、5’−5’結合、2’−デオキシ−エリスロペントフラノシル、2’−フルオロ、2’−O−アルキルヌクレオチド、2’−O−アルキル−n(O−アルキル)ホスホジエステル、モルホリノ結合、p−エトキシオリゴヌクレオチド、PNA結合、p−イソプロピルオリゴヌクレオチドから選択される化学的成分により、完全にまたは部分的に誘導化されている、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が、プロトン化された核酸ポリマーを含み、1またはそれ以上の外来性プロトンが、核酸の塩基構造上のアミン基と前記ポリマー上のホスホジエステル結合のリン酸基とを含むプロトンアクセプター部位に付加され、前記核酸が、1から6のpHで、37℃で少なくとも1時間のpH安定性により特徴づけられ、前記核酸が抗菌活性を示す、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
- 前記組成物が、プロトン化された核酸モノマーを含み、1またはそれ以上の外来性プロトンが、核酸の塩基構造上のアミン基と前記モノマー上のリン酸基とを含むプロトンアクセプター部位に付加され、前記核酸が、0.01から7.0のpHで、少なくとも1時間のpH安定性により特徴づけられ、前記核酸が抗菌活性を示す、請求項1に記載の組成物。
- 組成物がリポソームと会合している、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
- 肺細菌感染を減少させ、または阻害するための使用のための薬学的組成物であって、治療上有効量のプロトン化された核酸ポリマーを含み、該ポリマーが、核酸の塩基構造上のアミン基と前記ポリマー上のホスホジエステル結合のリン酸基とを含むプロトンアクセプター部位に付加された、1またはそれ以上の外来性プロトンを有し、該プロトン化した核酸ポリマーが、
該核酸の3’及び/または5’位の、ブロッキング化学修飾、
天然に生ずるヌクレオチドポリマーの骨格構造から修飾された核酸骨格構造、
糖基における、2’または3’置換、
から選択される1以上の修飾によりヌクレアーゼ耐性を有し、
前記組成物のエアロゾル化粒子を肺組織に沈着させるエアロゾル化投与に適した形態である、組成物。 - 核酸が、前記核酸の3’末端、または5’末端にブロッキング化学的修飾を含み、および核酸が、同じ数のヌクレオチドを有する天然に生ずるポリマーの少なくとも2倍のヌクレアーゼ耐性を有する、請求項10記載の組成物。
- 組成物が液体形態であり、および組成物が1mg/mlで水に溶解したときに0から4以下のpHを有する、請求項10または11のいずれかに記載の組成物。
- 治療上有効量の第2の治療用薬剤を含む、請求項10〜12のいずれかに記載の組成物。
- 肺細菌感染を減少させ、または阻害するための使用のための薬学的組成物であって、治療上有効量の、プロトン化された核酸ポリマーを含み、該ポリマーが、核酸の塩基構造上のアミン基と前記ポリマー上のホスホジエステル結合のリン酸基とを含むプロトンアクセプター部位に付加された、1またはそれ以上の外来性プロトンを有し、該プロトン化した核酸ポリマーが、
該核酸の3’及び/または5’位の、ブロッキング化学修飾、
天然に生ずるヌクレオチドポリマーの骨格構造から修飾された核酸骨格構造、
糖基における、2’または3’置換、
から選択される1以上の修飾によりヌクレアーゼ耐性を有し、
前記核酸が、ウイルス遺伝子、細菌遺伝子、真菌遺伝子、および内因性哺乳動物遺伝子からなる群より選択される、肺疾患を媒介する遺伝子の発現に影響を与え、
前記修飾された核酸が、哺乳動物被検体において遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、
前記組成物のエアロゾル化された粒子を肺組織に沈着させるエアロゾル化投与に適した形態である、組成物。 - 肺疾患を媒介する遺伝子が内因性哺乳動物遺伝子であり、および修飾された核酸が哺乳動物被験体において遺伝子の発現を抑制する、請求項14に記載の組成物。
- 前記核酸が、天然に生ずるヌクレオチドポリマーの骨格構造から修飾された骨格構造を含み、前記核酸が、水中で、1mg/lの濃度において、pH0から4を示す範囲でプロトン化しており、前記核酸が、1から4のpHで、少なくとも1時間のpH安定性により特徴づけられる、請求項14に記載の組成物。
- 前記組成物がエアロゾル化されている、請求項14に記載の組成物。
- 前記組成物が患者の肺に吸入され、エアロゾル化された組成物の粒子が、肺組織に沈着される、請求項14に記載の組成物。
- 前記エアロゾル化された組成物の粒子が、1〜5μmの範囲の直径を有する、請求項14に記載の組成物。
- 前記核酸が、糖基の残基における修飾と、該核酸の3’末端におけるブロッキング化学修飾とを含む、請求項14に記載の組成物。
- 前記組成物が固体の形態であり、前記組成物が1mg/lの濃度で水に溶解したときに0から4以下のpHを有する、請求項20に記載の組成物。
- 前記核酸が、3’−5’ヌクレオシド間結合を含み、糖基の2’残基が置換されており、該置換により、該核酸が、天然に生ずるヌクレオチドRNAもしくはDNAと区別される、請求項20に記載の組成物。
- 前記核酸が、2’−5’ヌクレオシド間結合を含み、糖基の3’残基が置換されており、該置換により、該核酸が、天然に生ずるヌクレオチドRNAもしくはDNAと区別される、請求項20に記載の組成物。
- 前記核酸が、2〜100のヌクレオチドを含む、請求項14に記載の組成物。
- 前記核酸が、部分的に置換されたホスホロチオエート、完全に置換されたホスホロチオエート、ホスホネート、ホスフェートエステル、ホスホルアミデート、2’−修飾RNA、3’−修飾RNA、ペプチド核酸、プロピン及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
- 前記核酸が、ホスホジエステル結合、ホスホトリエステル結合、ホスホルアミデート結合、シロキサン結合、カーボネート結合、カルボキシメチルエステル結合、アセトアミデート結合、カルバメート結合、チオエーテル結合、架橋ホスホルアミデート結合、架橋メチレンホスホネート結合、ホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、ホスホロジチオエート結合、架橋ホスホロチオエート結合、スルホンヌクレオチド間結合、3’−3’結合、5’−2’結合、5’−5’結合、2’−デオキシ−エリスロペントフラノシル、2’−フルオロ、2’−O−アルキルヌクレオチド、2’−O−アルキル−n(O−アルキル)ホスホジエステル、モルホリノ結合、p−エトキシオリゴヌクレオチド、PNA結合、p−イソプロピルオリゴヌクレオチドから選択される化学的成分により、完全にまたは部分的に誘導化されている、請求項14に記載の組成物。
- 前記組成物が、天然に生ずるヌクレオチドモノマーの構造から修飾された構造と、核酸の塩基構造上のアミン基と、前記モノマー上のリン酸基とを含むプロトンアクセプター部位に付加された1またはそれ以上の外来性プロトンとを有するモノマーを含み、核酸が、0.01から4のpHで、少なくとも1時間のpH安定性により特徴づけられ、前記核酸が抗菌活性を示す、請求項14に記載の組成物。
- モノマーの5’位のブロッキング化学修飾と、モノマーの3’位のブロッキング化学修飾とをさらに含む、請求項24に記載の組成物。
- 前記核酸が、1から4のpHを有する、請求項24に記載の組成物。
- 前記核酸が、天然に生ずるRNAもしくはDNAに対して、糖基の2’位に修飾をさらに含む、請求項24に記載の組成物。
- 前記肺疾患が、肺細菌感染である、請求項14に記載の組成物
- 前記肺細菌感染が、Staphylococcus aureus感染、またはPseudomonas aeruginosa感染である、請求項14に記載の組成物。
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