以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
(第1の実施形態)
1. 駆動装置
図1に、本実施形態における駆動装置としての発振駆動回路の構成例のブロック図を示す。本実施形態における駆動装置としての発振駆動回路は、振動子に励振される駆動振動及び測定すべき物理量に基づいて振動子から出力される検出信号を同期検波した出力信号を用いて物理量を測定するのに用いられる。
発振駆動回路10には、第1及び第2の接続端子TM1、TM2(電極、パッド)が設けられ、発振駆動回路10の外部において、第1及び第2の接続端子の間に振動子12が挿入されている。振動子12には、励振手段14が取り付けられており、励振手段14が発振駆動回路10に対して接続されており、発振ループを構成している。まず、発振駆動回路10内の駆動器の利得(ゲイン)が大きい状態(ゲインが1より大きい状態)で発振スタートする。この時点では、駆動器への入力は雑音のみである。この雑音は、目的とする駆動振動の固有共振周波数を含む幅広い周波数の波動を含む。この雑音を、振動子12に入力する。
振動子12は、例えば後述するような圧電性単結晶からなる。振動子12の周波数フィルタ作用によって、目的とする固有共振周波数の波動を多く含む信号が出力され、この信号が駆動器に入力される。発振ループ内でこうした操作が繰り返されることによって、目的とする固有共振周波数の信号の割合が高くなり、駆動器への入力信号の振幅が大きくなる。
発振定常状態においては、例えば、振動子12からの出力電流を電流電圧変換器30により電圧値に変換し、この電圧値に基づいてAGC(Auto Gain Control)回路(広義にはゲイン制御回路)40によって発振ループ内の発振振幅を制御する。即ち、電流電圧変換器30は、振動子に流れる電流を電圧に変換する。そして、AGC回路40は、発振ループ内の振動子に流れる電流に基づいて発振ループ内の発振振幅を制御する。これによって、発振ループを信号が一周する間の利得(ループゲイン)が1となり、この状態で振動子12が安定発振する。
振動子の安定発振は、物理量の測定に必要不可欠である。なぜなら、振動子において発振している駆動信号の振幅が一定でないと、振動子から出力されるべき出力信号の値も一定とならず、正確な測定を行うことができないからである。
また、振動子及び発振駆動回路を含むシステムの低消費電力化には、振動子の発振起動の高速化が必要不可欠である。なぜなら、迅速に安定発振を得ることで、必要なときにのみ発振を起動させることができるようになり、無駄に電力を消費する動作期間を短くできるからである。
本実施形態では、発振駆動回路10において、駆動器としてゲインコントロールアンプ(Gain Control Amplifier:以下、GCA)20又はコンパレータ50が設けられる。GCA20又はコンパレータ50は、振動子12を駆動するための出力回路として機能する。
GCA20は、AGC回路40によってゲインが制御されるが、コンパレータとして機能することができる。より具体的には、振動子12を含む発振ループ内において、発振起動時にはコンパレータ50を含む発振ループ内で振動子12にエネルギーを注入し、発振定常状態においてGCA20を含む発振ループ内で発振を継続させる。
より具体的には、本実施形態では、発振駆動回路10は、GCA20と並列にコンパレータ50が設けられている。また、発振駆動回路10は、GCA20の出力と第2の接続端子TM2との間に挿入される第1のスイッチ素子SW1を含み、第1のスイッチ素子SW1は、スイッチ制御信号SWCTLによりオンオフ制御される。更に発振駆動回路10は、コンパレータ50の出力と第2の接続端子TM2との間に挿入される第2のスイッチ素子SW2を含み、第2のスイッチ素子SW2は、スイッチ制御信号SWCTL#によりオンオフ制御される。スイッチ制御信号SWCTL#は、スイッチ制御信号SWCTLの反転信号である。発振駆動回路10は、コンパレータ50の出力を、同期検波の参照信号としての同期検波用クロックとして出力することができる。
ここで、電流電圧変換器30とコンパレータ(GCA20又はコンパレータ50)と振動子12を含む発振ループ内では、理想的には電流電圧変換器30とコンパレータとでそれぞれ位相が180度ずつシフトする。ところが、実際には、製造ばらつき等に起因して数度だけ遅れてしまう。そこで、発振ループ内には位相を進める手段を設けることが望ましく、本実施形態では、発振ループ内に電流電圧変換器30の出力とコンパレータの入力との間にハイパスフィルタ(High Pass Filter:以下、HPF)60が設けられている。
ところで、発振起動時間を短縮するために、GCA20の出力又はコンパレータ50の出力を用いる方法が考えられる。この場合、GCA20の入力オフセット電圧に起因してGCA20の出力レベルが変化しないことや、コンパレータ50の入力オフセット電圧に起因してコンパレータ50の出力レベルが変化しないことがある。この点について、図20を参照して説明する。
図20は、発振不良の原因の一例について説明するための図である。発振起動時において、まず重要なのは、発振ループ内に電流を流して、定常発振を実現させるための動作を確実に開始することである。すなわち、電源を投入して駆動回路(発振駆動回路)10を起動すれば、必ず上述の動作が開始されるというものではなく、電源を投入しても、発振ループに何ら電流が流れず、時間が経過しても定常発振が生じない場合があり得る。
このような不都合が生じる原因の一例が図20に示される。図20では、電流電圧変換増幅器30(I/V)と、ゲインコントロールアンプ20(GCA)との間に、コンデンサCpと抵抗Rpで形成されるハイパスフィルタ60が設けられている。例えば、電源が投入された時点で、何からの理由で、コンデンサCpに電荷Qが蓄積されており、これによって、ゲインコントロールアンプ20(GCA)の非反転端子がグランド(GND)よりも高い電位になっていると、ゲインコントロールアンプ20(GCA)の出力レベルはLレベルに固定され、時間が経過しても、発振ループには電流が流れない場合があり得る。
また、例えば、ゲインコントロールアンプ20(GCA)の内部回路の製造ばらつきによって、非反転端子と反転端子の電位に不要なDCオフセットが生じている場合にも同様に、ゲインコントロールアンプ20(GCA)の出力レベルはH/Lのいずれかのレベルに固定され、発振ループには電流が流れないという事態が生じ得る。このような事態が生じると、振動子12を励振することができず、物理量の測定ができない。
したがって、例えば、GCA20やコンパレータ50に入力オフセット電圧が生じている場合であっても、振動子12を確実に励振して発振動作を開始させることが重要である。また、できるだけ早い期間に定常発振を生じさせて物理量測定を可能にすることが重要であり、このためには、発振起動を高速化する必要がある。
そこで、本実施形態では、発振起動過程においては、HPF60の基準電位を変化させることでGCA20又はコンパレータ50の出力レベルを確実に変化させ、発振定常状態においてはHPF60の基準電位を固定して通常の発振ループ内で発振を継続させる。即ち、発振駆動回路10では、HPF60により発振ループ内の発振条件を満足させるように位相調整を行うと共に、HPF60の基準電位を変動させることで発振起動の高速化を図る。ハイパスフィルタ(HPF)60の基準電位を強制的に揺らすと、ハイパスフィルタ(HPF)60の出力信号の電位(すなわち、GCA20およびコンパレータ50の入力端の電位)が変動する。GCA20およびコンパレータ50の少なくとも一方に入力オフセットが生じていたとしても、入力端の電位が変動し、かつ、その変動の振幅が、入力オフセットを超えていれば、GCA20およびコンパレータ50の出力信号のレベルは、必ず変化する。これによって電流が振動子12に流れて、振動子12は確実に発振を開始する。
ここで、HPF60の基準電位とは、発振ループ内の発振信号とは別にHPF60を構成する受動素子又は能動素子に供給される電位であって、HPF60のフィルタ機能により出力電圧を得るための電位ということができる。HPF60は、受動素子から構成される1次のHPFである。
こうすることで、発振起動時にはHPF60の基準電位の変動により振動子12にエネルギーが注入され、振動子12の発振起動時間を短縮できる。しかも、発振起動過程においては、変動するHPF60の基準電位は、振動子12の共振周波数に変調されていることとなり、発振ループの定常発振条件から大きく離れることがない。そのため、振動子の発振の妨げになることなく発振ループ内にエネルギーを注入できるため、効率的に発振起動を行うことができるようになる。
一般的に、発振ループ内では、発振ループ内のホワイトノイズのうち振動子12がその共振周波数のみを通す。その結果、共振周波数の信号成分のみが増幅されて発振が開始される。即ち、一般的な発振回路では、発振ループ内の真性雑音(特にホワイトノイズ)から振動子12の共振周波数成分のみを増幅させて発振を開始させる。ところが、真性雑音は、温度条件、電源条件、プロセス条件の変動によって大きく変化する。従って、発振を開始して、発振が定常状態になるまでの時間もまた、温度条件、電源条件、プロセス条件の変動に大きく変化することになる。しかしながら、本実施形態によれば、温度条件、電源条件、プロセス条件の変動によらず、確実に振動子12の発振を開始させることができる上に、発振を開始して発振が定常状態になるまでの時間を確実に短縮させることができるようになる。
本実施形態では、HPF60の基準電位を変動させるために、発振駆動回路10は、更に、基準電位変動回路70と、パルス発生回路80とを含むことができる。基準電位変動回路70は、HPF60の基準電位VBHを変動させる。このような基準電位変動回路70は、発振起動時において、複数の電圧レベルの中から選択された1つの電圧レベルを基準電位としてHPF60に供給する。パルス発生回路80は、HPF60の基準電位として出力する電圧レベルを選択するための切替パルスPSW発生させる。
図2に、HPF60の基準電位VBHと切替パルスPSWの説明図を示す。
発振起動過程では、パルス発生回路80が、切替パルスPSWを生成して、基準電位変動回路70に、HPF60の基準電位VBHを変化させる。そして、発振定常状態では、パルス発生回路80が、切替パルスPSWを固定して、基準電位変動回路70に、HPF60の基準電位VBHを固定させる。このように、パルス発生回路80は、切替パルスを所定期間だけ出力することができる。
HPF60は、受動素子のみで構成されていても良いし、能動素子のみで構成されていても良い。或いはHPF60は、受動素子と能動素子とを組み合わせて構成されていても良い。例えば図1のHPF60は、1次のHPFとすることができるが、本発明がHPFの次数に限定されるものではない。
なお、図1では、発振起動過程と発振定常状態においてGCA20とコンパレータ50とを切り替えるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図1において、GCA20及び第1のスイッチ素子SW1、或いはコンパレータ50及び第2のスイッチ素子SW2が省略された構成であってもよい。
1.1 スリープモード
本実施形態における発振駆動回路10には、低消費電力化を図るために、動作モードとして通常動作を行うための通常モード(広義には第1の動作モード)とスリープ動作を行うためのスリープモード(広義には第2の動作モード)とが設けられている。そのため、発振駆動回路10の内部又は外部に、スリープモード設定レジスタ90が設けられる。スリープモード設定レジスタ90には、発振駆動回路10を制御する図示しない制御回路により、制御データが設定される。発振駆動回路10は、スリープモード設定レジスタ90に設定される制御データに対応した動作モードで動作する。例えばスリープモード設定レジスタ90に「0」が設定されているとき、発振駆動回路10は、通常モードで動作する。また、例えばスリープモード設定レジスタ90に「1」が設定されているとき、発振駆動回路10は、スリープモードで動作する。
スリープモード設定レジスタ90に設定された制御データに対応したスリープ制御信号SLEEPは、GCA20、AGC回路40及びパルス発生回路80に供給される。そして、スリープモードで動作するとき、GCA20及びAGC回路40の動作が停止されるようになっている。なお、本実施形態では、スリープモードで動作するとき、電流電圧変換器30及びコンパレータ50は、ディセーブル状態に設定されることなく動作する(イネーブル状態が維持される)。
AGC回路40は、全波整流器42と、発振検出器44と、積分器46とを含む。全波整流器42は、電流電圧変換器30によって変換された電圧値を直流信号としての電圧値に変換する。発振検出器44は、全波整流器42によって変換された電圧値に基づいて、振動子12を含む発振ループが発振状態か否かを検出し、その検出結果としてスイッチ制御信号SWCTL#(又はスイッチ制御信号SWCTL)を生成する。例えば発振検出器44は、全波整流器42によって変換された電圧値と所与の基準電圧値とを比較し、その比較結果に基づいてスイッチ制御信号SWCTL#(又はスイッチ制御信号SWCTL)を生成する。また、積分器46は、全波整流器42によって変換された電圧値の積分結果に基づいて、GCA20による発振ループ内の発振制御を行うための制御信号VCTLを生成する。例えば、積分器46は、全波整流器42によって変換された電圧値を積分して直流成分のレベルを求め、該レベルと所与の基準信号レベルとを比較し、その比較結果に基づいて制御信号VCTLを生成する。例えばGCA20の出力段(最終段)の回路(出力回路)の高電位側電源電圧は、制御信号VCTLに基づいて制御されるようになっている。
より具体的には、全波整流器42、発振検出器44及び積分器46には、スリープ制御信号SLEEPが供給される。そして、スリープ制御信号SLEEPによりスリープモードが指定されているとき、全波整流器42、発振検出器44及び積分器46の動作が停止するようになっている。スリープ制御信号SLEEPにより通常モードが指定されているとき、全波整流器42、発振検出器44及び積分器46が動作するようになっている。
本実施形態では、スリープモード設定レジスタ90により通常モードに設定されている状態では、発振起動時には第1及び第2のスイッチ素子SW1、SW2を制御することで振動子12の起動が行われ、発振定常状態においては第1のスイッチ素子SW1をオン状態、第2のスイッチ素子SW2をオフ状態にして、振動子12とGCA20とを含む発振ループにおいて発振振幅制御が行われる。更に、本実施形態では、スリープモード設定レジスタ90によりスリープモードに設定されている状態では、振動子12とコンパレータ50とを含む発振ループ内で発振が継続される。このとき、AGC回路40は、発振状態の監視と、GCA20の発振振幅制御とを行う。
図3(A)、図3(B)に、スリープ制御信号SLEEP、スイッチ制御信号SWCTL、SWCTL#のタイミング波形図を示す。
図3(A)は、通常モードで動作時のタイミング波形図を示し、図3(B)は、スリープモードで動作時のタイミング波形図を示す。
図3(A)において、スリープ制御信号SLEEPがLレベルのとき、発振駆動回路10は、通常モードで動作する。このとき、電源投入直後等の発振起動過程においては、AGC回路40の発振検出器44では振動子12からの電流信号を変換した電圧値が所与の基準電圧値より低いことが検出され、発振検出器44は、Hレベルのスイッチ制御信号SWCTL#(Lレベルのスイッチ制御信号SWCTL)を生成する。これにより、第1のスイッチ素子SW1がオフ状態、第2のスイッチ素子SW2がオン状態に設定される。この際、コンパレータ50の動作特性として、コンパレータ50の入力信号のレベルが所与の閾値を超えると、非常に大きなゲインで該入力信号を増幅し、発振ループ内のゲインを1より大きくすることができる。この結果、発振起動過程では、振動子12及びコンパレータ50を含む発振ループにおいて、発振ループ内のゲインが1より大きく、且つ発振ループ内の位相が360×n(nは整数)となるように振動子12に駆動振動を励振する。
その後、発振検出器44において、振動子12からの電流信号を変換した電圧値が所与の基準電圧値より高いことが検出されると、発振検出器44は、Lレベルのスイッチ制御信号SWCTL#(Hレベルのスイッチ制御信号SWCTL)を生成する。これにより、第1のスイッチ素子SW1がオン状態、第2のスイッチ素子SW2がオフ状態に設定される。この際、AGC回路40からの制御信号VCTLに基づき、GCA20により発振ループ内の発振振幅が制御され、発振ループ内のゲインが1となるように制御される。この結果、発振起動過程が終了して発振定常状態に移る。この発振定常状態では、振動子12及びGCA20を含む発振ループにおいて、発振ループ内のゲインが1であり、且つ発振ループ内の位相が360×nとなるように振動子12に駆動振動を励振する。
即ち、本実施形態では、発振検出器44の検出結果に基づいて、振動子12とコンパレータ50とにより形成される発振ループから、振動子12とGCA20とにより形成される発振ループに切り替えることができる。より具体的には、発振検出器44において、振動子12に流れる電流を変換した直流電圧が所与の閾値電圧に達したことを条件に上記の切り替え制御を行う。こうすることで、一般的に発振ループの発振制御を行うために用いられる振動子12からの信号検出結果を流用してスイッチ素子の切り替え制御を行うことができるので、回路規模をそれほど増大させることなく、高速な発振起動を実現させることができるようになる。
図3(B)において、スリープ制御信号SLEEPがHレベルのとき、発振駆動回路10は、スリープモードで動作する。このとき、電源投入直後等の発振起動過程か発振定常状態かにかかわらず、発振検出器44は、Hレベルのスイッチ制御信号SWCTL#(Lレベルのスイッチ制御信号SWCTL)を生成する。これにより、第1のスイッチ素子SW1がオフ状態、第2のスイッチ素子SW2がオン状態に設定される。即ち、図3(A)に示す通常モード時の発振起動過程の同じ状態に設定される。このとき、上述のように、コンパレータ50の動作特性として、コンパレータ50の入力信号のレベルが所与の閾値を超えると、非常に大きなゲインで該入力信号を増幅し、発振ループ内のゲインを1より大きくすることができる。この結果、発振起動過程では、振動子12及びコンパレータ50を含む発振ループにおいて、発振ループ内のゲインが1より大きく、且つ発振ループ内の位相が360×n(nは整数)となるように振動子12に駆動振動を励振する。こうすることで、スリープモードでは、AGC回路40の動作を停止させて、低消費電力化を図ることができる。また、スリープモードでは、通常モードの発振起動過程で用いる発振ループ内で発振状態が継続されるため、スリープモードから通常モードに移行したときに、高速な発振起動を実現させることができる。従って、いわゆるスリープモードで動作可能な場合に、回路規模を増大させることなく発振起動時間を短縮できる駆動装置を提供できる。
なお、スリープモードから通常モードに移行するときも、スイッチ制御信号SWCTL(又はスイッチ制御信号SWCTL#)を用いて、確実且つより一層高速な発振起動を行うようにしてもよい。この場合、パルス発生回路80が切替パルスPSWを出力する所定期間の開始タイミングは、スリープモードから通常モードへの切り替えタイミングとなり、該切り替えタイミングを基準に開始される所定期間だけ、HPF60の基準電位VBHが変動する。こうすることで、スリープモードからの復帰時においても、確実に発振起動時間を短縮できるようになる。このとき、基準電位VBHが振動子12の共振周波数に変調されており、発振ループの定常発振条件から大きく離れることがない。そのため、振動子の発振の妨げになることなく、発振ループ内にエネルギーを注入できる。従って、効率的に発振起動を行うことができる。
1.2 電流制限機能
ところで、本実施形態のように発振ループ内の発振振幅を制御する場合、振動子12に流れる電流が変動することになる。振動子12に流れる電流が過剰になると(該電流が所与の閾値を超える等)、振動子12が破壊される場合もある。特に、本実施形態のようにスリープモードにおいてAGC回路40の動作をディセーブル状態に設定した場合には、発振ループ内の発振信号の振幅が制御されず、振動子12に流れる電流が過剰になってしまう可能性がある。
そこで、本実施形態において、コンパレータ50が電流制限機能を備える。この電流制限機能とは、例えば振動子12に流れる電流が所与の値以上にならないように制御するリミッタ機能ということができる。
ここで、比較例として、例えばAGC回路を動作させずに、発振ループ内に保護抵抗を挿入する等の方法が考えられる。しかしながら、この方法では、まず発振定常状態において発振ループ内のゲインが低下してしまい、消費電力を増大させてしまうという問題がある。更に、保護抵抗の抵抗値の精度が低く、発振余裕度を大きくすることができなくなるという問題がある。
これに対して、上述の電流制限機能を設けることで、スリープモードでの動作時においても、発振ループ内の発振信号の振幅が所与の振幅内に収まるようになるので、AGC回路40の動作をイネーブル状態に設定することなく低消費電力化を図ると共に振動子12に過剰な電流が流れ込む事態を回避できるようになる。
また、発振駆動回路10は、発振ループ内の発振信号に基づいてGCA20のゲインを制御するAGC回路40を含む場合に、スリープモードに設定された状態では、コンパレータ50の動作をディセーブル状態に設定することなく(イネーブル状態に設定した状態で)、GCA20及びAGC回路40の動作をディセーブル状態に設定することができる。このとき、AGC回路40の動作をイネーブル状態に設定されないため、低消費電力化を図ると共に振動子12に過剰な電流が流れ込む事態を回避できる。
更に、本実施形態では、通常モードの発振定常状態において、コンパレータ50の出力が、同期検波用のクロックとして出力される。こうすることで、振動子12に励振される駆動振動及び測定すべき物理量に基づいて振動子12から出力される検出信号を同期検波した出力信号を用いて物理量を測定するのに際して、回路規模を増大させることなく、同期検波処理と発振起動の高速化とを実現させることができる。
なお、コンパレータ50のゲインをできる限り大きくすることが好ましい。こうすることで、発振起動過程において形成される発振ループ内のループゲインを大きくでき、発振起動時間を短縮できるようになる。また、発振定常状態において出力される同期検波用クロックのクロック精度を向上できるようになる。
また、GCA20を構成するオペアンプの極性(反転、非反転)と、コンパレータ50を構成するオペアンプの極性とを同一にすることが好ましい。こうすることで、第1及び第2のスイッチ素子SW1、SW2により発振ループを切り替えたとしても、極性を反転させる回路を付加する必要が無くなり、回路規模の増大を抑えることができる。
1.3 具体的な構成例
図4に、図1の発振駆動回路10の構成例の回路図を示す。
図4において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
電流電圧変換器30は、オペアンプOP1、帰還キャパシタC1及び帰還抵抗R1を含む。オペアンプOP1の非反転入力端子(+)には、所与の基準電圧VR0が供給され、反転入力端子(−)には第1の接続端子TM1が電気的に接続される。
全波整流器42は、オペアンプOP2、OP3、抵抗R2、R3を含む。オペアンプOP2、抵抗R2、R3は、反転回路として機能する。またオペアンプOP3は、電流電圧変換器30の出力電圧と基準電圧VR0とを比較するコンパレータとして機能する。全波整流器42は、オペアンプOP2の出力側に設けられるスイッチ素子と、全波整流器42の入力と出力とをバイパスするスイッチ素子とを含む。両スイッチ素子は、オペアンプOP3の出力信号に基づいて排他的にオンオフ制御される。スリープ制御信号SLEEPがHレベルのとき、オペアンプOP2、OP3の各オペアンプの動作電流を停止又は制限することにより、各オペアンプの動作が停止される。一方、スリープ制御信号SLEEPがLレベルのとき、オペアンプOP2、OP3の各オペアンプの動作電流を発生させることにより、各オペアンプを動作させる。
発振検出器44は、ローパスフィルタ(Low Pass Filter:以下、LPF)と、オペアンプOP4を含む。LPFは、抵抗R4、キャパシタC2を含む。抵抗R4は、LPFの入力と出力との間に直列に挿入される。キャパシタC2の一端は、LPFの出力ノードに電気的に接続される。キャパシタC2の他端には、基準電圧VR1が供給される。このLPFのカットオフ周波数は1/(2π×C2×R4)である。オペアンプOP4の反転入力端子に、LPFの出力ノードが接続される。オペアンプOP4の出力と非反転入力端子との間に、抵抗R5が帰還抵抗として挿入される。オペアンプOP4の非反転入力端子には、抵抗R6を介して基準電圧VR1が供給される。オペアンプOP4の出力信号が、スイッチ制御信号SWCTL#として出力される。スリープ制御信号SLEEPがHレベルのとき、オペアンプOP4の動作電流を停止又は制限することにより、オペアンプOP4の動作が停止される。スリープ制御信号SLEEPがLレベルのとき、オペアンプOP4の動作電流を発生させることにより、オペアンプOP4を動作させる。
積分器46は、オペアンプOP5、抵抗R7、R8、キャパシタC3を含む。キャパシタC3は、オペアンプOP5の帰還キャパシタとして接続される。抵抗R8は、オペアンプOP5の帰還抵抗として挿入される。抵抗R7は、オペアンプOP5の反転入力端子と全波整流器42の出力ノードとの間に挿入される。積分器46では、抵抗R7、R8により入力電圧オフセットや入力電流オフセットの影響を低減し、ゲイン調整が行われる。オペアンプOP5の非反転入力端子には、基準電圧VR2が供給されている。積分器46のキャパシタC3、抵抗R8によりLPFの機能を備え、カットオフ周波数は1/(2π×C3×R8)である。オペアンプOP5の出力信号が、制御信号VCTLとしてGCA20に供給される。スリープ制御信号SLEEPがHレベルのとき、オペアンプOP5の動作電流を停止又は制限することにより、オペアンプOP5の動作が停止される。スリープ制御信号SLEEPがLレベルのとき、オペアンプOP5の動作電流を発生させることにより、オペアンプOP5を動作させる。
ここで、発振起動過程において振動子12に流れる電流をId、発振定常状態において振動子12に流れる電流をId´とする。電流電圧変換器30によって平滑化されることを考慮すると、基準電圧VR2は、次式のように表すことができる。
VR2=(Id×R1×2/π)+VR0 ・・・(1)
ここで、R1は、電流電圧変換器30の帰還抵抗の抵抗値を意味する。同様に、基準電圧VR1は、次式のように表すことができる。
VR1=(Id´×R1×2/π)+VR0 ・・・(2)
Id´<Idであるため、VR2>VR1である。また、基準電圧VR0との関係で、以下の関係を有することが好ましい。
VR0<VR1<VR2 ・・・(3)
また、スリープ制御信号SLEEPがHレベルのとき、GCA20の動作電流を停止又は制限することにより、GCA20の動作が停止される。スリープ制御信号SLEEPがLレベルのとき、GCA20の動作電流を発生させることにより、GCA20を動作させる。
HPF60は、電流電圧変換器30の出力とGCA20の入力又はコンパレータ50の入力との間に挿入されたキャパシタ(容量素子)CHと、一端に基準電位変動回路70からの基準電位VBHが供給され、他端にGCA20の入力又はコンパレータ50の入力が接続される抵抗(抵抗素子)RHとを含む1次のHPFである。
ところで、本実施形態では、電流電圧変換器30の出力が全波整流器42に供給されるように、HPF60が、電流電圧変換器30の出力とGCA20の入力又はコンパレータ50の入力との間に挿入される。こうすることで、AGC回路40(全波整流器42、発振検出器44及び積分器46)に、HPF60の基準電位を変動させた影響を及ぼさずに済ませることができる。
その理由は、以下のように考えることができる。基準電位変動回路70を基準に考えると、電流電圧変換器30が有するオペアンプOP1の出力インピーダンスは非常に小さいことを考慮すると、発振ループ内の電流電圧変換器30及びGCA20(又はコンパレータ50)は、抵抗RH及びキャパシタCHを介して図5のように接続される。
図5において、IVOは、電流電圧変換器30の出力ノードに該当する。上述のとおり、電流電圧変換器30の出力インピーダンスは極めて小さい。よって、IVO(電流電圧変換器30の出力ノード)は、グランドGNDに接続されているとみなすことができる。よって、ハイパスフィルタ(HPF)60の基準電位を揺らすことによって生じる電圧変動は、すべて電流電圧変換器30側で吸収される。よって、発振ループに接続されている全波整流器42(図1参照)に悪影響をほとんど与えずに済む。
また、ハイパスフィルタ(HPF)60は、見方を変えれば、基準電位変動回路70からの信号を平滑するローパスフィルタ(LPF)として機能する。すなわち、図5から明らかなように、GCA20又はコンパレータ50は、抵抗RH及びキャパシタCHからなるローパスフィルタ(LPF)を介して基準電位変動回路70に接続される。よって、基準電位変動回路70によって基準電位がパルス状に変動したとしても、その変動の波形はローパスフィルタ(LPF)を通過することによって鈍る。すなわち、パルスに含まれる低い周波数成分のみが伝達される。このため、GCA20及びコンパレータ50では、その入力が低い周波数で変動し、その変動の振幅が、GCA20及びコンパレータ50のいずれか一方の入力オフセット電圧をわずかに超えていれば、GCA20及びコンパレータ50の出力信号のレベルは変化し、発振が確実に開始される。変動による波形は急峻なパルス状の波形ではなく、また、その変動の振幅は、入力オフセット電圧を超える最小限度の振幅でよい。よって、その変動は、正規の発振に悪影響を及ぼさない。
ここで、仮に、例えば電流電圧変換器30の入力側において、発振ループ内の信号に所与の信号(すなわち、HPF60の基準電位を揺らすことに起因する電位変動)を与えた場合を想定する。この場合は、その電位変動が、全波整流器42、発振検出器44及び積分器46のすべての動作に影響を与えてしまい、安定的な発振を生じさせる観点から好ましくない。
以上のように、本実施形態によれば、AGC回路40に、HPF60の基準電位を変動させた影響を及ぼさずに済ませることができる。そのため、本実施形態によれば、HPF60の基準電位を変動させたことに起因するAGC回路40の誤動作の発生を回避できるようになる。
以下では、各部の詳細な構成例について説明する。
1.3.1 GCA
図6(A)、図6(B)に、図4のGCA20の構成例の回路図を示す。
図6(A)は、GCA20を、P型差動増幅器を用いて構成した場合の構成例を示し、図6(B)は、GCA20を、N型差動増幅器を用いて構成した場合の構成例を示す。図6(A)、図6(B)において、スリープ制御信号SLEEP#は、スリープ制御信号SLEEPの反転信号である。
図6(A)では、電流源で発生した電流I0が、2つのカレントミラー回路によってP型差動増幅器の動作電流I0´として供給されている。P型差動増幅器のP型差動トランジスタ対の一方のゲートには、入力信号INとして電流電圧変換器30の出力ノードの電圧が供給される。P型差動増幅器のP型差動トランジスタ対の他方のゲートには、基準電圧VR0が供給される。P型差動増幅器の出力電圧は、出力バッファに供給される。出力バッファの出力信号は、第1のスイッチ素子SW1の一端に供給される。
ここで、上記の2つのカレントミラー回路及びP型差動増幅器は、高電位側電源電圧が電圧VDDであり、低電位側電源電圧が電圧AGNDである。一方、出力バッファは、P型出力トランジスタ及びN型出力トランジスタにより構成されるインバータ回路である。この出力バッファのN型トランジスタのソースには電圧AGNDが供給され、P型トランジスタのソースに、AGC回路40からの制御信号VCTLが供給される。従って、制御信号VCTLを変化させることで、出力バッファの出力電圧を変化させることができる。
また図6(B)では、電流源で発生した電流I1が、2つのカレントミラー回路によってN型差動増幅器の動作電流I1´として供給されている。N型差動増幅器のN型差動トランジスタ対の一方のゲートには、入力信号INとして電流電圧変換器30の出力ノードの電圧が供給される。N型差動増幅器のN型差動トランジスタ対の他方のゲートには、基準電圧VR0が供給される。N型差動増幅器の出力電圧は、出力バッファに供給される。出力バッファの出力信号は、第1のスイッチ素子SW1の一端に供給される。
ここで、上記の2つのカレントミラー回路及びN型差動増幅器は、高電位側電源電圧が電圧VDDであり、低電位側電源電圧が電圧AGNDである。一方、出力バッファは、P型出力トランジスタ及びN型出力トランジスタにより構成されるインバータ回路である。この出力バッファのN型トランジスタのソースには電圧AGNDが供給され、P型トランジスタのソースに、AGC回路40からの制御信号VCTLが供給される。従って、制御信号VCTLを変化させることで、出力バッファの出力電圧を変化させることができる。
図6(A)、図6(B)において出力バッファのP型出力トランジスタの基板電位として制御信号VCTLを与えることで基板バイアス効果を防止することができる。
また、図6(A)、図6(B)には、電流源と直列に電流制御用トランジスタが設けられている。図6(A)では、電流源トランジスタがP型トランジスタにより構成され、該トランジスタのゲートにスリープ制御信号SLEEPが供給される。また、図6(B)では、電流源トランジスタがN型トランジスタにより構成され、該トランジスタのゲートにスリープ制御信号SLEEP#が供給される。図6(A)、図6(B)の構成では、スリープ制御信号SLEEPがHレベルになったとき、電流制御トランジスタのソース・ドレイン間が電気的に遮断され、電流源の電流がカレントミラー回路に供給されない。従って、スリープ制御信号SLEEPに基づいて、GCA20の動作をディセーブル状態に設定する(停止させる)ことができる。
1.3.2 コンパレータ
次に、コンパレータ50の構成(特にコンパレータ50の電流制限機能を実現する構成)について説明する。コンパレータ50には、高電位側電源として電源電圧VDDが供給され、低電位側電源としてアナログ電源電圧AGNDが供給される。このとき、コンパレータ50の電流制限機能は、高電位側電源及び低電位側電源の少なくとも1つへの電流経路の電流を制限する機能である。
図7に、図4のコンパレータ50の構成例の回路図を示す。
図7では、電流源で発生した電流I2が、2つのカレントミラー回路によってP型差動増幅器の動作電流として供給されると共に、P型の出力駆動トランジスタのドレイン電流I2´として供給される。P型差動増幅器のP型差動トランジスタ対の一方のゲートには、入力信号INとして電流電圧変換器30の出力ノードの電圧が供給される。P型差動増幅器のP型差動トランジスタ対の他方のゲートには、基準電圧VR0が供給される。P型差動増幅器の出力電圧は、N型の出力駆動トランジスタのゲート電圧として供給される。
P型の出力駆動トランジスタとN型の出力駆動トランジスタとが、電源電圧VDDとアナログ電源電圧AGNDとの間に直列に接続され、その接続ノード(P型の出力駆動トランジスタのドレイン)の電圧が出力電圧として第2のスイッチ素子SW2の一端に供給される。
このような構成により、図7のコンパレータ50では、電流I2´により出力電圧OUTの高電位側の電流駆動能力が制限される。例えば図6(A)、図6(B)に示す出力バッファを構成するP型出力トランジスタ及びN型出力トランジスタのゲートに同じ信号が供給される構成と比較すると、図7では高電位側の電流駆動能力が制限されることがわかる。
なお、コンパレータ50の構成は、図7に示す構成に限定されるものではない。
図8に、図4のコンパレータ50の他の構成例の回路図を示す。
図8では、電流源で発生した電流I3が、2つのカレントミラー回路によってN型差動増幅器の動作電流として供給されると共に、N型の出力駆動トランジスタのドレイン電流I3´として供給される。N型差動増幅器のN型差動トランジスタ対の一方のゲートには、入力信号INとして電流電圧変換器30の出力ノードの電圧が供給される。N型差動増幅器のN型差動トランジスタ対の他方のゲートには、基準電圧VR0が供給される。N型差動増幅器の出力電圧は、P型の出力駆動トランジスタのゲート電圧として供給される。
P型の出力駆動トランジスタとN型の出力駆動トランジスタとが、電源電圧VDDとアナログ電源電圧AGNDとの間に直列に接続され、その接続ノード(N型の出力駆動トランジスタのドレイン)の電圧が出力電圧として第2のスイッチ素子SW2の一端に供給される。
このような構成により、図8のコンパレータ50では、電流I3´により出力電圧OUTの高電位側の電流駆動能力が制限される。例えば図6(A)、図6(B)に示す出力バッファを構成するP型出力トランジスタ及びN型出力トランジスタのゲートに同じ信号が供給される構成と比較すると、図8では高電位側の電流駆動能力が制限されることがわかる。
図7及び図8では、高電位側電源及び低電位側電源のいずれか一方への電流経路の電流を制限していたが、高電位側電源及び低電位側電源の両方への電流経路の電流を制限するようにしてもよい。
図9に、図4のコンパレータ50の更に別の構成例の回路図を示す。
図9において、コンパレータ50は、オペアンプOP10と、アナログ制御ロジック部120と、出力回路部122とを含むことができる。オペアンプOP10は、コンパレータとして機能し、電流電圧変換器30の出力信号を入力信号とし、基準電圧VR0とを比較した比較結果信号CRESを出力する。アナログ制御ロジック部120は、オペアンプOP10によって生成された比較結果信号CRESに基づいて、出力回路部122を制御する制御信号S、XS、XH、Hを生成する。出力回路部122は、アナログ制御ロジック部120からの制御信号S、XS、XH、Hに基づいて、高電位側電源からの電流又は低電位側電源への電流を制限しながら、出力信号を生成する。
図10(A)に、図9のアナログ制御ロジック部120の構成例の回路図を示す。図10(B)に、図10(A)のアナログ制御ロジック部120の動作例のタイミング図を示す。
アナログ制御ロジック部120は、比較結果信号CRESに基づいて、互いの変化タイミングが同一とならないように制御信号S、Hを生成する。制御信号XSは、制御信号Sの反転信号である。制御信号XHは、制御信号Hの反転信号である。図10(A)では、比較結果信号CRESとその反転信号が、それぞれ2入力1出力NOR回路の一方の入力信号となる。第1のNOR回路の他方の入力信号は、第2のNOR回路の出力信号を遅延させた信号であり、第2のNOR回路の他方の入力信号は、第1のNOR回路の出力信号を遅延させた信号である。このように構成することで、制御信号Sの立ち下がりに起因して制御信号Hが立ち上がるようにすると共に、制御信号Hの立ち下がりに起因して制御信号Sが立ち上がるようにしている。
この結果、制御信号S、Hは、それぞれHレベルとなる期間が非重複となるように生成される。同様に制御信号XS、XHは、それぞれLレベルとなる期間が非重複となるように生成される。
図11に、図9の出力回路部122の構成例を示す。
出力回路部122は、第1及び第2のトランスファゲートと、一端に電源電圧VDDが供給され他端に第1のトランスファゲートが接続される第1の電流源と、一端に第2のトランスファゲートが接続され他端にアナログ電源電圧AGNDが供給される第2の電流源とを含む。第1の電流源は、電流I4を発生する。第2の電流源は、電流I5を発生する。第1及び第2のトランスファゲートは直列に接続され、その接続ノードの電圧がコンパレータ50の出力電圧OUTとして出力される。
第1の電流源に接続されるトランスファゲートを構成するP型トランジスタのゲートに制御信号XS、N型トランジスタのゲートに制御信号Sが供給される。第2の電流源に接続されるトランスファゲートを構成するP型トランジスタのゲートに制御信号XH、N型トランジスタのゲートに制御信号Hが供給される。
このような構成により、第1及び第2のトランスファゲートが同時にオンとならないように制御される。そして、第1のトランスファゲートがオンのときには第2のトランスファゲートがオフとなり、出力電圧OUTは、第1の電流源の電流I4で電流制限された状態で変化する。同様に、第2のトランスファゲートがオンのときには第1のトランスファゲートがオフとなり、出力電圧OUTは、第2の電流源の電流I5で電流制限された状態で変化する。
1.3.3 基準電位変動回路、パルス発生回路
次に、図4の基準電位変動回路70及びパルス発生回路80の構成例について説明する。
図12に、図4の基準電位変動回路70の構成例を示す。
図12では、HPF60との接続関係が明確になるように、HPF60と基準電位変動回路70の構成例を示している。
基準電位変動回路70では、発振駆動回路10の内部又は外部で生成された電圧VR0、VR3、VR4が供給される。ここで、図13に示すように、電圧VR0は、発振定常状態におけるHPF60の基準電位となる電圧である。電圧VR4は、HPF60の基準電位を変動させるときの高電位側の電圧である。電圧VR3は、HPF60の基準電位を変動させるときの低電位側の電圧である。即ち、VR3<VR0<VR4であり、発振定常状態におけるHPF60の基準電位をV0とした場合、基準電位VHを変化させる期間では、基準電位VBHが、電圧V0より高電位の電圧V4と該電圧V0より低電位の電圧V3とを交互に切り替えた電位である。これにより、発振起動課程から発振定常状態に移行する際に、HPF60の基準電位がどのような変動過程にあっても速やかに電圧VR0で安定化させることができるようになる。
基準電位変動回路70によるHPF60の基準電位の変動振幅は、電圧VR4と電圧VR3との間の電圧で決まる。上述のようにGCA20又はコンパレータ50の入力オフセット電圧に起因してGCA20又はコンパレータ50の出力レベルが変化しないことがある。そのため、発振起動を確実に高速化するために、GCA20、コンパレータ50の出力を確実に変化させる必要がある。そのため、基準電位変動回路70によるHPF60の基準電位の変動振幅は、GCA20又はコンパレータ50の入力オフセット電圧の振幅(或いはGCA20の入力オフセット電圧及びコンパレータ50の入力オフセット電圧のうち少なくとも1つの電圧の振幅)より大きいことが望ましい。
より具体的には、基準電位変動回路70が出力する基準電位VBHは、図5に示すような構成のLPFを介してGCA20又はコンパレータ50に供給される。キャパシタCHの容量値をC、抵抗RHの抵抗値をRとすると、図5のLPFの伝達関数は次式で表される。
Vout/Vin=1/(1+j×ω×C×R) ・・・(4)
(4)式において、jは複素平面上の虚軸を示し、ωは各周波数である。またVinが(V4−V3)であり、Vin=ΔVとすると、VoutがGCA20又はコンパレータ50の入力オフセット電圧Vxより大きければよい。従って、Vxと(4)式との関係は、次式で表される。
Vx<Vout=ΔV/((1+(ω×C×R)2)1/2 ・・・(5)
即ち、GCA20の入力オフセット電圧又はコンパレータ50の入力オフセット電圧であるVxが、ΔV/((1+(ω×C×R)2)1/2より小さいことが望ましい。こうすることで、GCA20の入力オフセット電圧又はコンパレータ50の入力オフセット電圧にかかわらず、GCA20又はコンパレータ50の出力を変化させることができるので、発振起動の高速化を確実に実現できるようになる。
このような電圧VR0、VR3、VR4は、電源電圧VDDやその他の電圧から抵抗分割により生成された電圧とすることができる。こうすることで、電圧VR0、VR3、VR4の少なくとも1つを容易に変更でき、製造ばらつきや発振環境の変化を吸収してより一層確実な発振を実現できる。
発振起動課程において、例えば図13のような基準電位VBHを発生させる基準電位変動回路70は、セレクタ72、74を含むことができる。セレクタ72は、パルス発生回路80からの切替パルスPSWに基づいて、電圧VR3、VR4のいずれか1つを選択出力する。セレクタ74は、スイッチ制御信号SWCTLに基づいて、電圧VR0又はセレクタ72の選択出力を、基準電位VBHとして出力する。
図14に、図4のパルス発生回路80の構成例のブロック図を示す。
パルス発生回路80は、パワーオンリセット回路400、切替パルス発生回路410、スイッチ制御回路420を含む。
パワーオンリセット回路400は、図15に示すようなパワーオンリセット信号PORを生成する。即ち、パワーオンリセット回路400は、電源投入直後から電源電圧の高電位側が電圧VDDに達するまでの過程において、該電源電圧が所与の閾値レベルに達したときにアクティブとなるようにパワーオンリセット信号PORを生成する。このようなパワーオンリセット回路400の構成としては、公知の回路を採用できる。
切替パルス発生回路410は、所定の期間内に、パワーオンリセット回路400からのパワーオンリセット信号PORとスリープ制御信号SLEEPとに基づいて1又は複数のパルスを有するパルス信号PLSAを生成する。このとき、切替パルス発生回路410は、上記の期間だけHレベルとなるディレイ信号DLYを出力できる。
図16(A)〜図16(D)に、図14の切替パルス発生回路410の説明図を示す。図16(A)は、図14の切替パルス発生回路410の構成例のブロック図である。図16(B)は、図16(A)のディレイユニットの構成例の回路図とタイミング図である。図16(C)は、図16(B)のディレイユニットのタイミングの一例である。図16(D)は、図16(A)の切替パルス発生回路410の動作例のタイミング図である。
図16(A)に示すように、切替パルス発生回路410は、複数のディレイユニットを有する。各ディレイユニットは、入力信号に基づいて1つのパルスを発生させる。初段のディレイユニットには、パワーオンリセット信号PORとスリープ制御信号SLEEPとの否定論理和演算結果の信号が入力される。最終段のディレイユニットの出力が、ディレイ信号DLYとして出力される。各ディレイユニットにおいて生成されたパルス同士は論理和演算されて、パルス信号PLSAとして出力される。
図16(B)、図16(C)に示すように、ディレイユニットは、入力信号INをインバータ列で遅延させて、次段のディレイユニットの入力となる出力信号OUTを生成する。各ディレイユニットが出力するパルス信号PLSは、インバータ列のうち初段のインバータ回路の入力と出力とにより生成され、例えば入力信号INの立ち下がりエッジ検出パルスとして出力される。このような各ディレイユニットのパルス信号PLS同士を論理和演算することで、パルス信号PLSAが生成される。出力信号OUTは、入力信号INの立ち下がりエッジを基準に、インバータ列による遅延時間だけ遅れて立ち下がる。
図16(B)、図16(C)に示すようなディレイユニットの論理和演算をすることで、図16(D)に示すようにパワーオンリセット信号PORの立ち下がりエッジを基準に開始される所定期間内に、ディレイユニット数のパルスを有するパルス信号PLSAが生成される。
図14に戻って説明を続ける。図14のスイッチ制御回路420には、スリープ制御信号SLEEP、発振検出器44からのスイッチ制御信号SWCTL#(又はスイッチ制御信号SWCTL)、パワーオンリセット回路400からのパワーオンリセット信号POR、切替パルス発生回路410からのディレイ信号DLY及びパルス信号PLSAが入力される。スイッチ制御回路420は、スイッチ制御信号SWCTL、パワーオンリセット信号POR、ディレイ信号DLY及びパルス信号PLSAに基づいて、所定期間内に1又は複数のパルスを有する切替パルスPSWを生成する。また、スイッチ制御回路420は、スリープ制御信号SLEEPに基づいて、切替パルスPSWの論理レベルを固定できるようになっている。
図17(A)に、図14のスイッチ制御回路420の構成例の回路図を示す。図17(B)に、図17(A)のスイッチ制御回路420の動作例のタイミング図を示す。
スイッチ制御回路420は、RSフリップフロップ422と、該RSフリップフロップ422の出力信号に基づいて選択制御されるセレクタ424とを含む。RSフリップフロップ422のセット入力としてパワーオンリセット信号PORとスリープ制御信号SLEEPとの否定論理和演算結果の信号が入力され、RSフリップフロップ422のリセット入力としてディレイ信号DLYが入力される。セレクタ424には、発振検出器44からのスイッチ制御信号SWCTL(スイッチ制御信号SWCTL#)と切替パルス発生回路410からのパルス信号PLSAとが入力され、RSフリップフロップ422の出力信号によりスイッチ制御信号SWCTL又はパルス信号PLSAが選択出力される。セレクタ424の出力信号が、切替パルスPSWとして出力される。スリープ制御信号SLEEPがHレベルのとき、Hレベルの切替パルスPSWが出力される。スリープ制御信号SLEEPがLレベルのとき、セレクタ424の出力信号が切替パルスPSWとして出力される。
従って、パワーオンリセット信号PORが立ち下がると、RSフリップフロップ422の出力信号がセットされて、セレクタ424はパルス信号PLSAを選択出力する。スリープ制御信号SLEEPがLレベルとすると、切替パルスPSWとしてパルス信号PLSAが出力される。やがて、ディレイ信号DLYが立ち下がると、RSフリップフロップ422の出力信号がリセットされて、セレクタ424はスイッチ制御信号SWCTLを選択出力する。このときも、スリープ制御信号SLEEPがLレベルとすると、切替パルスPSWとしてスイッチ制御信号SWCTLが出力される。
以上のような構成により、パルス発生回路80は、パワーオンリセット信号PORの立ち下がりエッジ(変化タイミング)を基準に、発振ループ内の信号が所定の閾値レベルを超えたことを示すスイッチ制御信号SWCTLの立ち下がりエッジ(変化タイミング)までの期間に、1又は複数のパルスを有する切替パルスPSW(所与の周波数の信号)を出力することができる。
なお、本実施形態のように開始タイミングを明確にすることで、ユーザの使い勝手を向上させることが可能となる。更に、例えば開始タイミングを基準に所与の基準クロックをカウントすることで所定期間の長さを定めることができるので、例えば発振振幅を検出する発振検出器44を省略でき、回路規模を縮小させることもできるようになる。
図14〜図17(A)、図17(B)では、ディレイユニット数のパルスを固定的に発生させるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。パワーオンリセット信号PORの変化タイミングを基準に、発振回路の出力のクロック数をカウントし、所定のカウント値になるまでの期間に、発振回路の出力を切替パルスPSWとして出力させるようにしてもよい。この場合、パルス発生回路80が切替パルスPSWを出力する所定期間の終了タイミングが、該所定期間の開始タイミングを基準に所定のカウント数をカウントしたことが検出されたタイミングとなる。
1.4 変形例
図12では、基準電位変動回路70が、発振起動時に、電圧VR0を中心に、高電位側の電圧VR4と低電位側の電圧VR3とに変動する基準電位VBHを生成するものとして説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
図18(A)、図18(B)に、本実施形態の変形例における基準電位変動回路の構成例を示す。
GCA20又はコンパレータ50の製造ばらつき等に起因して入力オフセット電圧の偏り等について予めその挙動が判明している場合には、基準電位変動回路70が、発振起動時に、電圧VR0と電圧VR4とを交互に切り替えた基準電位VBHを生成してもよいし、電圧VR3と電圧VR0とを交互に切り替えた基準電位VBHを生成してもよい。
図18(A)は、基準電位変動回路70が、発振起動時に、電圧VR0と電圧VR4とを交互に切り替えた基準電位VBHを生成する例を示している。この場合、パルス発生回路80からの切替パルスPSWがスイッチ制御信号SWCTLによりマスクされた選択制御信号に基づいて、基準電位変動回路70が、電圧VR4又は電圧VR0を基準電位VBHとして出力する。
図18(B)は、基準電位変動回路70が、発振起動時に、電圧VR3と電圧VR0とを交互に切り替えた基準電位VBHを生成する例を示している。この場合、パルス発生回路80からの切替パルスPSWがスイッチ制御信号SWCTLによりマスクされた選択制御信号に基づいて、基準電位変動回路70が、電圧VR3又は電圧VR0を基準電位VBHとして出力する。
1.5 発振起動時および安定発振時の発振条件
図1に示される発振駆動回路(駆動装置)10は、発振ループによって物理量トランスデューサ12を駆動する。本実施形態の発振駆動回路10では、高速な起動を可能とするため、発振起動時においてループゲインを1より大きく設定する。すなわち、発振起動時における発振条件は、ループゲイン>1、かつ、ループ内の位相=360度・n(nは整数)を満足することである。安定発振時の発振条件は、ループゲイン=1、かつ、ループ内の位相=360度・n(nは整数)を満足することである。
1.6 発振駆動回路の電源電圧について
図1の発振駆動回路10は、VDD(高電位電源電圧)とAGND(低電位電源電圧)との間で動作する。AGNDは例えば接地電位である。但し、接地電位の代わりに他の基準電位を用いることもあり得る。具体的には、振動子12の種類に応じて、使用できる電源電位が異なる。
振動子12が容量結合型のトランスデジューサ(内部等価回路において、信号経路に直流阻止コンデンサが介在する構成)である場合には、直流がカットされていることから、発振ループの直流レベル(バイアス点)は回路動作に関係なく、発振ループの駆動信号の電圧振幅を調整できればよいことになる。よって、例えば、低電位電源として、基本的には任意の電位を使用することができる。
振動子12が可変抵抗型トランスデューサである場合、発振ループのバイアス電圧を所望レベルに設定する必要があることから、このために所望レベルの基準電圧を使用するのが一般的である。
また、電源方式としては、片電源方式(正電源のみを用いる方式)と、両電源方式(正および負の双方の電源を用いる方式)とがある。後者の方式は、特に精度を重視する場合に使用される。
本発明では、上述の電源の形態のいずれも採用が可能である。図1(以降の図でも同じ)では、振動子12は、図21(A),図21(B)に示す等価回路から明らかなように、容量結合型トランスデューサである。また、上述の説明では、片電源方式を採用し、発振駆動回路200は、VDD(例えば5V)とGND(接地電位)間で動作するものとして説明している。
1.7 矩形波駆動と正弦波駆動ならびに容量結合型の振動子について
図1の本実施形態の駆動装置では、矩形波駆動および正弦波駆動のいずれも採用することができる。
図21(A),図21(B)は、矩形波駆動と正弦波駆動、ならびに容量結合型の振動子について説明するための回路図である。図21(A)は、矩形波駆動を実行する駆動装置の要部を示す。図示されるように、振動子12は、矩形波の駆動信号(PL)によって駆動される。発振ループの利得制御は、駆動信号(PL)のハイレベル電圧またはローレベル電圧を調整することによって、簡単に行うことができる。
矩形波による駆動方式は駆動信号(PL)のばらつきが少ないという利点がある。また、駆動信号の電圧振幅の制御が容易であるため、回路構成を簡素化でき、回路規模を縮小できるという利点がある。
図21(B)は、正弦波駆動を実行する駆動装置の要部を示す。図示されるように、振動子12は、正弦波の駆動信号(PQ)によって駆動される。ゲインコントロールアンプ(GCA)に含まれる前段のアンプ20aにおける可変抵抗R100の抵抗値を可変に制御することによって、発振ループのゲインを調整することができる。
また、図21(A),図21(B)では、振動子12として、容量結合型の振動子を用いている。但し、これに限定されるものではなく、可変抵抗型等の、種々の振動子を用いることができる。
容量結合型の振動子(容量性の振動子)は、内部等価回路において、信号経路に直流阻止コンデンサ(図21のC1,C2)が介在するタイプの振動子である。容量結合型の振動子(容量性の振動子)の例としては、圧電素子があげられる。
容量結合型の振動子を用いると、発振ループの直流電位として任意の電位を使用できる。よって、回路構成上の自由度が向上するという利点がある。
(振動子の種類)
上述のとおり、本実施形態では、振動子12として、容量結合型の振動子を用いている(但し、これに限定されるものではなく、可変抵抗型等の、種々の振動子を用いることができる)。
容量結合型の振動子(容量性の振動子)は、図21(A),図21(B)に記載されるとおり、内部等価回路において、信号経路に直流阻止コンデンサが介在するタイプの振動子である。容量結合型の振動子(容量性の振動子)の例としては、圧電素子があげられる。
容量結合型の振動子を用いると、発振ループの直流電位として任意の電位を使用できる。よって、直流電位を気にすることなく回路を構成することができ、回路構成上の自由度が向上するという利点がある。
(第2の実施形態)
本実施形態では、本発明の駆動装置と、その駆動装置によって駆動される振動子と、を有するジャイロセンサについて説明する。
2. 振動型ジャイロセンサ
図19に、本実施形態又はその変形例における発振駆動回路が適用された振動型ジャイロセンサの構成例のブロック図を示す。
図19において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
振動型ジャイロセンサ(広義には物理量測定装置)100は、発振回路200と検出回路(広義には検出装置)300とを含む。発振回路200は、振動子12と発振駆動回路10とを含む。発振駆動回路10は、振動子12の駆動振動部12aを励振するためのものである。
通常モードにおける発振起動時には、発振駆動回路10に対してコンパレータ50の出力を雑音として入力する。この雑音は、振動子12の駆動振動部12aを通過して周波数選択を受け、次いで駆動振動部12aを通過した信号の一部を取り出し、全波整流器42に入力し、振幅に変換する。この振幅の信号を発振検出器44に入力し、スイッチ制御信号SWCTL#を生成する。発振起動時には、振動子12aを通過して周波数選択を受けた信号の振幅が小さく、発振検出器44は、図3(A)に示すようなスイッチ制御信号SWCTL#を出力する。
通常モードにおける発振起動直後には、振動子12aを通過して周波数選択を受けた信号の振幅が大きくなり、スイッチ制御信号SWCTLがHレベルとなる。これにより、振動子12aを通過して周波数選択を受けた信号は、GCA20により振幅制御されるように発振ループが切り替えられる。その後、駆動振動部12aにおいて雑音の大部分がカットされて全波整流器42からの出力が比較的小さい場合には、GCA20における利得を大きくし、発振ループを一周する間のループゲインが1になるようにする。時間が経過すると、全波整流器42からの出力が大きくなるので、GCA20における利得を小さくし、ループゲインが1になるようにする。
なお、スリープモードでは、通常モードにおける発振起動過程と同様に制御される。
駆動信号の発振状態が安定化すると、振動子12の駆動検出部12b、12cからの信号の検出を開始する。即ち、振動子の駆動検出部12b、12cからの検出信号(交流)を交流増幅回路310の交流増幅器312A、312Bを用いて増幅し、各増幅器312A、312Bからの出力を加算器314によって加算する。
加算器314の出力は移相器320に通し、移相信号を得る。移相信号の位相は、発振駆動回路10のコンパレータ50の出力である同期検波用クロックの位相に対して、所定角度、例えば90度ずれている。この移相信号と発振駆動回路10からの同期検波用クロックとを同期検波器330に入力し、振動子12からの出力信号を検波する。この結果、検波後の出力信号においては、不要な漏れ信号は消去されており、あるいは少なくとも低減されているはずである。このように検出回路300において同期検波用クロックと検出信号との位相調整を行うことで、微少信号の検出処理中の位相変化に応じて位相調整を行うことができるので、その結果として、高精度な位相調整と回路規模増大の防止とを両立させることができる。
この検波後の出力信号をローパスフィルタ340に入力し、平滑化し、次いで0点調整器350に入力する。この0点調整器350の出力を、測定すべき物理量(例えば角速度)に対応した出力信号として外部に取り出す。
図19の振動型ジャイロセンサ100は、電子機器として例えばビデオカメラやデジタルカメラや、カーナビゲーションシステム、航空機やロボットに搭載されることが好ましい。
なお本発明は、本実施形態における振動子12に限定されるものではない。振動子12を構成する材質としては、エリンバー等の恒弾性合金、強誘電性単結晶(圧電性単結晶)を例示できる。こうした単結晶としては、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、ホウ酸リチウム、ランガサイトを例示できる。また、振動子12は、パッケージ内に気密封止されることが好ましい。パッケージ内の雰囲気は、乾燥窒素又は真空とするのが、好ましい。
また本発明において測定されるべき物理量は、本実施形態のような角速度に限定されるものではない。振動子に駆動振動を励振し、駆動振動中の振動子に対する物理量の影響によって振動子の振動状態に変化が生じたときに、この振動状態の変化から検出回路を通して検出可能な物理量を対象とする。こうした物理量としては、振動子に印加される角速度の他に、加速度、角加速度が特に好ましい。また、検出装置としては慣性センサが好ましい。