JP4876807B2 - コアーヤーン縫糸およびその製造方法 - Google Patents

コアーヤーン縫糸およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、工業用縫製や家庭用縫製などの可縫性および縫い目の綺麗さに優れたコアーヤーン縫糸およびその製造方法に関するものである。
近年、ミシン機の高速化や自動化などにより縫製技術が向上したのに伴い、可縫性は従来レベルを維持しながらも、より細く、あるいはより高強力な縫糸が要求されてきている。従来、合成繊維の縫糸として、フィラメント100%使いのものや、ステープルファイバー100%使いのものや、また芯糸はフィラメント糸を用い、鞘はステープル短繊維を用いてのコアーヤーン縫糸が知られている。
該コアーヤーン縫糸は、長繊維糸条からなる芯糸繊維と、ドラフトされた短繊維束からなる鞘糸繊維とを、芯・鞘状に引き揃えて精紡機のフロントローラに供給し複合紡績糸となし、次いで、該複合紡績糸を複数本引き揃えて該複合紡績糸のヨリ方向と逆方向に上ヨリが施されてなるものである。このコアーヤーン縫糸は、紡績糸のみの縫糸と比較して高強力になることから、耐久性が必要とされるジーンズや、美しい縫い目の仕上がりが要求される薄地衣料あるいはスーツなどの縫製に用いられている。
一方、フィラメント糸条の構成比率が100%のフィラメント縫糸に比べると、該コアーヤーン縫糸の鞘糸を構成する短繊維の毛羽が目立つので、フィラメント糸使いの薄地織物を縫製する場合に縫い目の品位を低下させ、高級衣料用品への展開は困難であった。
これらのコアーヤーン縫糸の根本的な問題を改善する技術として、例えば既に下ヨリが施されている長繊維糸条と、通常のスパン糸とを引き揃えて、合撚機で上ヨリ合撚してなる合撚構造の複合糸からなる「ポリエステル混撚ミシン糸」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このミシン糸は、合理的に製造される混撚ミシン糸ではあるが、合撚構造上長繊維糸条がスパン糸で完全に被覆されていなので、縫製性が低く、また長繊維糸条と短繊維糸との染色差や光沢差が目立ちやすくなることから、コアーヤーン縫糸として品位は低いものであった。
また、静電気により電気開繊された芯糸の長繊維糸条を、鞘糸となる短繊維群の断面内に均一に分布させ、複合精紡によりコアーヤーンを製造し、さらに該コアーヤーンを複数本引き揃えて上ヨリが施された高強度、高破断伸度の「複合ミシン糸」が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
この複合ミシン糸は、縫製性や芯/鞘間の均一染色性の点では優れているが、電気開繊工程を通過させることにより、製造コストが高くなることや、工程中に毛羽が生じやすいので品位は低くなり、高伸度になりやすいため縫い目のバッカリングが生じやすい問題がある。
さらに、その他のコアーヤーン製造装置とその製造方法が提案され(例えば、特許文献3参照)、さらには、二層構造糸およびその製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
これらの装置や方法は、ノズル軸方向に糸通路が形成された中空ガイド軸体と、その先端部に旋回流を作用させる旋回流発生ノズルにより構成される紡績部を備え、ドラフトされた短繊維束が紡績部に供給された長繊維の周囲に結束巻きつけられてなるコアーヤーン技術である。
この技術を用いて作ったミシン糸は確かに毛羽数が少なくて、縫い目がきれいではあるが、旋回気流を用いて短繊維を長繊維の周囲に絡ませているため、出来上がったミシン糸には柔らかさが足りなくて、そのため、ジグザグなど複雑な縫い目に対応出来ない欠点があった。
さらに、毛羽発生の軽減策として精紡工程でドラフト部分の後にエアーノズルを介し、毛羽伏せする手法が提案されているが(例えば、特許文献5参照)、この精紡機はリング精紡機とは紡出方法が全く異なり、毛羽そのものは確かに伏せられるものの、基本的には繊維の結束によって糸強度を持たせるという実撚が掛かっていない紡績糸になり、リング精紡機並の実撚を有するものとは構造上全く異なるため、リング糸よりも風合いが堅くなるなどの欠点がある。
すなわち、いずれの従来技術も細繊度で高強力特性を満足し、可縫性や品位に優れた縫糸としての製造技術も何ら提案されていない。
以上のように、可縫性や糸外観に優れた性能を有するコアーヤーン縫糸については、いまだ充分なものが得られていないのが実状である。
特開平02−33341号公報 特公昭63−3977号公報 特開2002−69760号公報 特開2002−69774号公報 特開平8−158167号公報
本発明の課題は、かかる従来技術の問題点を解決しよとするものであり、強度と可縫性に優れ、また縫い目の外観などを向上させた品位に優れたコアーヤーン縫糸を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するため、次の構成を有する。すなわち、
(1)芯糸となる長繊維糸条の周囲に、その長手方向に沿って鞘糸となる短繊維束が全糸重量比30%〜60%の巻き付きで、ヨリ係数KがK=3.5〜4.5の範囲で下ヨリが付与された、1mm以上の毛羽が250個/10m以下であることを特徴とするコアーヤーン複合繊維糸。
(2)前記(1)に記載のコアーヤーン複合繊維糸が、複数本引き揃えられて、下ヨリとは反対方向に上ヨリが施されてなることを特徴とするコアーヤーン縫糸。
(3)平均引っ張り強度が4.5cN/dtex以上、曲げ硬さが0.002gfcm/本以下、曲げ回復性が0.002gfcm/本以下であることを特徴とする前記(2)に記載のコアーヤーン縫糸。
(4)前記コアーヤーン複合繊維糸の下ヨリ方向がS方向、上ヨリ方向がZ方向であることを特徴とする前記(2)または(3)に記載のコアーヤーン縫糸。
(5)前記(1)に記載のコアーヤーン複合繊維糸を紡出する際、リング精紡機のフロントローラとスネールワイヤの間にメッシュ部を有する繊維収束用デリベリローラを設け、該デリベリローラのメッシュ部にて繊維束を吸着させながら加撚し、該デリベリローラと該フロントローラの間で1.0倍以下の倍率でドラフトすることを特徴とするコアーヤーン複合繊維糸の製造方法。
本発明によって鞘糸となる短繊維は毛羽が減少されたものとすることができ、従来技術では得られなかった美しい糸面を有し、かつ細番手、高強力のコアーヤーン縫糸を提供することができる。
また、これまでの紡績糸では毛羽伏せしつつ実撚を掛けることが不可能とされてきたが、本発明の技術を使用することで糸紡出が可能であり、高速可縫性および家庭用機対応性などの可縫性に優れ、縫製工程におけるコスト低減を図ることが出来る高性能なコアーヤーン縫糸が得られる。さらに、縫製後の縫い目表面が綺麗に見え、品位が優れたものとなるなどの効果を有する。
本発明は、前記課題を解決し、さらに縫製中の糸切れが少なく、ミシン機の縫製条件の調整が容易な高性能コアーヤーン縫糸について鋭意検討した結果、実質撚り(下ヨリ)を付与したコアーヤーンを、複数本引き揃えて上ヨリを施して縫糸を作ってみたところ、かかる課題を一挙に解決出来ることを究明したものである。
以下、本発明のコアーヤーン縫糸の最良の形態について説明する。
まず、本発明のコアーヤーン複合繊維糸は、上述したように、芯糸となる長繊維フィラメント糸条の周囲に、その長手方向に沿って鞘糸となる短繊維束が巻き付いて、実質的に撚り係数Kが3.5〜4.5の範囲で下ヨリが付与された、1mm以上の毛羽が250個/10m以下であるコアーヤーン複合繊維糸を特徴とするものである。
また、本発明のコアーヤーン縫糸は、上記コアーヤーン複合繊維糸がさらに複数本撚り合わされて、下ヨリとは反対方向に上ヨリが施されてなることを特徴とするものである。
また、本発明のコアーヤーン縫糸は、上記複合繊維2〜3本合わされて上撚りをかけて撚糸されることが好ましい。本数が2本未満であると縫糸として必要な強度が得られず、縫製中や糸切れの原因となるため、好ましくない。逆に本数が4本以上であると撚糸が困難であり、また糸の均一性が損なわれ可縫性が低下するため好ましくない。
ここで、芯糸としては、通常のあらゆる合成繊維を用いることができることは無論であるが、その中でもポリエステル系やポリアミド系などの繊維糸条が適している。また、高機能性繊維と言われる芳香族ポリアミドやポリエチレン繊維、あるいはポリウレタンなどの弾性系繊維、セルロース系繊維なども容易に適用することができ、特に限定されないが、出来上がったコアーヤーン縫糸の強度が4cN/dtex以上であることが好ましいことを考慮すると、芯糸となる長繊維フィラメント糸条の強度は6cN/dtex以上が好ましく、7cN/dtex以上がさらに好ましい。また、8cN/dtex以下であることが好ましい。
また、該長繊維フィラメント糸条のトータルフィラメント繊度としては、好ましくは30〜200dtexの範囲が、単糸フィラメント本数は12〜200本の範囲が適しており、例えば該長繊維フィラメント糸条の繊度が33dtexでは12本〜30本が、44dtexでは15〜28本、56dtexでは18〜48本が、78dtexでは24〜72本の糸構成であることがより好ましい。これは単繊維繊度が太くなると縫糸が硬くなり、縫い目が生地から浮き出るからである。一方、細くなると撚糸工程から最後の仕上げ工程までにおいて、毛羽発生したり強力低下を生じるので、適宜選択する必要がある。
鞘糸としては、芯糸と同様に通常のあらゆる合成繊維はもとより、その中でもポリエステル系やポリアミド系などが適しており、天然繊維の木綿、絹あるいはセルロース系やアクリル繊維なども容易に適用することができる。本発明において、芯糸を構成する短繊維としては、紡績糸用原料や布団綿、詰め綿などの原料とされるものであり、具体的な形態のものとして、ステープルファイバーあるいは単にステープルと呼ばれるもの等が挙げられる。
ステープルファイバーとしては、単繊維繊度は0.5〜3dtexの範囲が好ましく、0.7〜1.5dtexの範囲がカードの通過性など紡績性、あるいはコアーヤーン縫糸の柔らかさから高可縫性に繋がるので、より好ましい。また、繊維長としては、短紡式の30mm〜51mm程度、長紡式の51〜90mmのいずれであっても構わないが、コアーヤーン縫糸の縫製後の綺麗さからは前者が、高強力特性からは後者の紡績方式のものが好ましいといえる。
本発明に用いられている精紡方式では、鞘糸が芯糸に巻き付く本数、所謂短繊維糸条の形成に必要な断面構成本数は40本以上とする。リング紡には必要な最少断面構成本数は最低60本と言われていることに対して、本発明はより細番手の紡出を実現することが出来る。上限は特に制限がないものの、300本以下であることが好ましい。300本を超えると硬直化したり糸ムラを生じやすいため、好ましくない。なお40本未満においてはやはり巻き付き性が不良となるので、好ましくない。
この鞘糸となる短繊維束は、芯糸を含む全糸量に対して、30重量%以上60重量%以下の範囲とすることが好ましい。30重量%より少ないと芯糸が露出しやすくなり、また、強力も低くなるので、巻き付き不良や素抜けが生じやすく、コアーヤーンの形成が不十分となってくる。一方、60重量%を超えると芯糸の露出はなくなるが、強度低下が大きくなりやすくなる。
上記鞘糸重量の測定方法としては、拡大鏡を用いて1インチ(2.54cm)長さのコアーヤーン縫糸から芯糸と鞘糸を分解し、さらに鞘糸の巻き付き短繊維のみを取り出し、その重さ(g)を測定する。その重さを全糸重量に対する重量比率として算出したものである。
次に、本コアーヤーン複合繊維糸は、撚り係数KがK=3.5〜4.5の範囲で加撚し実撚を付与させるものである。撚り係数が上記の範囲に未満になると、強力が不足になり、また本発明の特徴である毛羽減少による縫い目の美しさを損ねる原因となる。反面、撚り係数が上記の範囲を超えると縫糸の強力が増加するが、仕上げ後の縫糸の硬直性に繋がり、高可縫性に影響をもたらすことで好ましくない。
なお、撚り係数K =T/(Ne)1/2
T:コアーヤーン複合繊維糸の1インチ(2.54cm)当たりの撚数
Ne:コアーヤーン複合繊維糸の英式綿番手
で表される。
コアーヤーン縫糸の毛羽数としては、1mm以上の毛羽が10m当たり250個以下であることが好ましい。250個以下とすると毛羽などが目立ち過ぎるのを抑え、縫い目の品位を保つことができる。また、下限については少ない方が良いが、少なすぎると針熱の散熱がうまくいかずに、高可縫性には影響を持たして好ましくない。よって、50〜200個/10mがより好ましい。
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明の製造方法をさらに詳細に説明する。
本発明のコアーヤーン複合繊維糸の製造方法は、リング精紡機のフロントローラとスネールワイヤとの間にメッシュ部を有する繊維収束デリベリローラを設け、該ローラのメッシュ部にて繊維束を吸着させながら通過後、加撚し実撚を付与させることを特徴とする。
図1は本発明のリング精紡機の紡出部分に毛羽撚り込み用の繊維収束デリベリローラを設けた装置の一例を示す側面図である。また、図2は、図1における繊維収束デリベリローラ部の詳細図である。
図1において、紡績工程の練条工程後のステープルファイバー、つまり短繊維束を用いて、繊維束はフロントローラ3から紡出され、繊維収束デリベリローラ1とデリベリニップローラ2とから構成されるデリベリローラから挿入された長繊維糸条8とドラフトされた短繊維束9をデリベリローラ2で引き揃えて、スネールワイヤ4を経て、巻取りスピンドル5のボビン上にコアーヤーン複合繊維糸6として巻き取られる。本発明の製造方法においては、上記のフロントローラ3とスネールワイヤ4との間に、繊維収束デリベリローラ1を設けるものである。なお、デリベリニップローラ2は繊維収束デリベリローラ1の上にかかる繊維束の収束をコントロールするためのものである。
本発明の製造方法で使用する繊維収束手段は繊維収束デリベリローラ1であり、図2に示すとおり、筒形の樹脂製のメッシュエプロン7がはまっており、このメッシュエプロン7はデリベリローラ1の表面上を周回するようになっている。繊維収束デリベリローラ1には複数のスリットが設けられており、図示されない空気吸引手段によって内部からスリット及びメッシュエプロン7を通して空気を吸引する。空気で吸引させる力を利用して、繊維収束デリベリローラ1の表面上を周回する筒形のメッシュエプロン7上に繊維束を貼り付かせることで紡績糸表面に発生する毛羽の向きを一定に揃え、通常糸表面に発生する毛羽を紡績糸の内部へと撚込むようにするものである。
紡績糸の毛羽の原因の一つは撚り込みきれなかった単繊維の先端が糸表面からはみ出たものである。この糸表面からはみ出る単繊維の向きは通常ランダムに向いているが、撚りが与えられる前に繊維収束デリベリローラ1のメッシュエプロン7上にて吸い込ませ、糸表面からはみ出た単繊維の向きを揃えることにより毛羽を撚り込ませることができるのである。また、この際にフロントローラ3とデリベリニップローラ2との間で1.0倍以下の倍率でドラフトすることでメッシュ部での吸引効果を高め、短繊維の向きを揃える補助となっているのである。この倍率を超えて加工すると、フロントローラ3とデリベリニップローラ2の間で糸に弛みが生じて、コアーヤーン複合繊維糸にした場合、ループなどの欠点に繋がるので、好ましくない。逆に0.7倍以下の倍率で加工すると、メッシュ部での吸引効果が十分発揮できないことから、好ましい加工倍率は0.7〜1.0倍である。
鞘糸の巻き付き方向としては、最終用途が縫糸であることから、一般縫糸の下ヨリ方向と同じS方向が好ましく、逆にZ方向ではヨリトルクが強くなり工程通過不良となるので、好ましくない。すなわち、本発明のコアーヤーン縫糸は、糸巻き付き方向と同じ方向に撚り係数KがK=3.5〜4.5の範囲で加撚し、下ヨリが挿入されたコアーヤーンを、複数本引き揃えて上撚を下ヨリ方向とは逆方向のZ方向に挿入された構造のコアーヤーン縫糸である。
また、上撚数は上述した下ヨリ数の60%〜90%が好ましく、さらに好ましくは70%〜80%である。上ヨリ数が下ヨリ数の60%未満であると、繊維同士の空隙が大きくなり、縫製中ミシン針がそこを通過して糸切れの原因となり好ましくない。また、上ヨリ数が下ヨリ数の90%より多くなると、トルクのバランスが悪く、縫製時の目飛びの原因となるため、好ましくない。
精紡工程で下よりが施された後、収縮止めあるいは下より後の残留トルク消滅を目的に熱セットを施す。また、縫糸用途に応じて、複数本の糸を併せて、上撚が施された後、同様に収縮止めあるいは下より後の残留トルク消滅を目的に熱セットを施す。セット後はソフト巻きを施したチーズを作成し、チーズ染色加工を施し、仕上げ巻きによってコアーヤーン縫糸の製品が得られる。
次に、本発明のコアーヤーン縫糸の平均引っ張り破断強度は一般的に、高い方が耐久性や可縫性が好ましく、厚地やジーンズの用途では4.0cN/dtex以上が好ましい。また、通常の衣料用生地に用いる縫糸としては、3.5cN/dtexもあれば充分である。しかし、逆に5.0cN/dtexより高くなると、縫製品に大きな負荷をかかり、縫い目付近の生地を痛めるため好ましくなく、5.0cN/dtex以下が好ましい。
また、工業用だけでなく、家庭用縫糸にも使用できる幅広い可縫性に対応するため、縫糸の柔らかさも要求される。本発明のコアーヤーン縫糸は、前述した精紡方法で曲げ硬さが0.002gfcm/本以下、曲げ回復性が0.002gfcm/本以下となることを実現できた。また、柔らかすぎると複雑のパターン、たとえば千鳥縫いなどのジクザクステッチを縫製時、上糸が下糸をうまく救えずに糸飛びの現象も起きるため、通常曲げ硬さが0.0005gfcm/本以上、曲げ回復性が0.0005gfcm/本以上が好ましい。
かくして得られたコアーヤーン縫糸は、鞘糸の均一且つ緊密巻き付き性が強いので、従来品に比べて、集束性が高い。また、毛羽個数が従来のリング精紡式コアーヤーン縫糸に比べて極めて少ないので、コアーヤーン縫糸では糸外観や縫い目は美しく仕上がるという優れた効果が得られる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
なお、測定方法は以下のとおりとした。
(1)見掛け繊度、番手、乾熱収縮率、沸騰水収縮率
JIS L1013(1999)に準拠して1水準につき20サンプル測定し、その平均値を算出した。
(2)平均引っ張り破断強度、平均引っ張り破断伸度
計測器工業(株)製STATIMAT MEにより、つかみ長200mm、引張速度100%/minで、1水準につき20サンプルの測定を行い、平均引っ張り破断強力(cN)及び平均引っ張り破断伸度(%)を求めた。
平均引っ張り破断強度(cN/dtex)は平均引っ張り破断強力と(1)で測定した見掛け繊度から算出した。
(3)毛羽数
速度30m/minで解舒しながら静電式コンデンサを使用して、各々の糸の直径に対して1mm以上、3mm以上、5mm以上はみ出ている表面毛羽本数を数えたものである。表中のデータは長さ10m当たりの毛羽数(個/10m)であり、各毛羽長さについてそれぞれ10回測定した平均値である。
なお、JIS L1095(1999)(一般紡績糸試験法)9.22 B法に準じ、測定装置は敷島テクノ(株)製 F−INDEX TESTERを用いて測定した。
(4)U%
計測機工業(株)製 EVENNESS TESTER 80を用いて測定した。
(5)鞘糸の巻き付き量
拡大鏡を用いて1インチ(2.54cm)長さのコアーヤーン縫糸から芯糸と鞘糸を分解し、さらに鞘糸の巻き付き短繊維のみを取り出し、その重さ(g)を測定する。その重さを全糸重量に対する重量比率として算出したものである。
(6)曲げ特性(曲げ硬さ、回復性)
カトーテック(株)製KES−FBを用いて測定した。1回の測定に60本の糸を使用し、1本当たりの曲げ硬さ、回復性をわり算で算出する。
(7)縫製性評価方法
A.高速可縫性(前進縫い):T/Cブロード生地を10枚重ねて2m縫製可能なミシン機で、糸切れがなく縫製できる最高回転数(針/分)を測定した。測定は、1000〜5000(針/分)の範囲でテストした。
B.バック可縫性(バック縫い):T/Cブロード生地を4枚重ね、ミシン機で1500(針/分)で1m縫製したときにおける糸切れ回数(平均回数/10回)を測定した。評価基準は下記の通りとした。
× :縫製不可もしくは6回以上
△ :2〜5回
○ :1〜2回
○○:0回。
C.ジグザグステッチ縫い(家庭用途):T/Cブロード生地を2枚重ね、ミシン機でジグザグステッチ(縫いピッチ1.4mm、ジグザグ幅:4mm)で0.5m縫製したときにおける、縫い目欠点(目飛び、縫い目不良個数)の発生回数を測定した。針回転数は300spm(ステッチ/min)とした。評価基準は下記の通りとした。
× :6回以上
△ :3〜5回
○ :1〜2回
○○:0回。
D.縫い目品位:A項の高速可縫性(前進縫い)評価において、1000(針/分)の回転数で縫製したサンプルを目視評価した。
△ :毛羽が多い。
○ :毛羽を発見できる。
○○:殆ど毛羽が目立たない。
実施例1
まず、芯糸となる長繊維糸条の強度が7.1cN/dtexのポリエステルマルチフィラメント56dtex−36フィラメントの糸条を図1のデリベリニップローラ2の手前から供給し、鞘糸となる短繊維束のポリエステル原綿の単繊維繊度が0.8dtex、繊維長が35mmのスライバーを用いて、ローラ方式のドラフト機構を有するリング精紡機に仕掛け、図2の繊維収束デリベリローラ1をフロントローラ3直下に設置して紡出し、ヨリ係数K=4.0に設定し、ヨリ方向はSとし、スピンドル回転数12000rpmとして、綿番手60sのコアーヤーン複合繊維糸を得た。
そして、該コアーヤーン糸を2本ヨリ縫糸を製造するため、上ヨリ数をZ方向に下ヨリ係数の80%を施し、2子ヨリのコアーヤーンを製造した。
次に、2子ヨリのコアーヤーンをチーズに巻き上げ、ヨリ止め処理として、95℃で30分間スチームセットを施し、続いてソフトチーズに巻き上げ、60℃で10分精練を行い、リラックス処理後、130℃で40分間のチーズ染色を行い、黒色に仕上げ、コアーヤーン縫糸を製造した。
得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
実施例2
芯糸となる長繊維糸条の強度が6.2cN/dtexのポリエステルマルチフィラメント44dtex−18フィラメントと、鞘糸となる短繊維束のポリエステル原綿の単繊維繊度が1.3dtex、繊維長が38mmを使用した以外は、実施例1と同様の方法でコアーヤーン縫糸を仕上げた。
得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
この表1より、実施例1では、高速可縫性、自動機対応などのあらゆる工業用途において優れた性能をもっている、さらに家庭用などで使われている複雑なジグザグステッチにも対応可能であった。また、毛羽数は少なく、縫い目の仕上がりは美しく、糸ムラU%は低く糸筋が滑らかであった。実施例2では、原料となる長繊維と短繊維を変更し、長繊維の強度が少し低くなるため、出来上がった縫糸の強度が若干低くなった。そのため、高速可縫性においては3800針/分で糸切れの発生が見られた他、ほぼ実施例1同様の縫い目品位を表した。
比較例1
次に、実施例1と同様の長繊維糸条、短繊維束を用いて、実施例と同一の撚り係数にて繊維収束デリベリローラのない通常のリング紡績で綿番手60Sのコアーヤーン複合繊維を得て、さらに実施例1と同様の方法でコアーヤーン縫糸を仕上げた。
得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
比較例2
実施例1と同様の長繊維糸条、短繊維束を用いて、より係数K=3.2とした以外は、実施例1と同様に繊維収束デリベリローラ1をフロントローラ3直下に設置して紡出し、綿番手60Sのコアーヤーン複合繊維糸を得た。さらに実施例1と同様の方法でコアーヤーン縫糸を仕上げた。
得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
比較例3
実施例1と同様の長繊維糸条、短繊維束を用いて、より係数K=4.7とした以外は、実施例1と同様に繊維収束デリベリローラ1をフロントローラ3直下に設置して紡出し、綿番手60Sのコアーヤーン複合繊維糸を得た。さらに実施例1と同様の方法でコアーヤーン縫糸を仕上げた。
得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
比較例4
実施例1と同様の長繊維糸条、短繊維束を用いて、図3,図4のように長繊維糸条をフロントローラ3の手前から供給し、デリベリローラ2〜フロントローラ3のドラフト倍率は1.009と設定したほか、実施例1と同様の方法でコアーヤーン縫糸を仕上げた。
得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
比較例5
実施例1と同様の長繊維糸条、短繊維束を用いて、図3,図4のように長繊維糸条をフロントローラ3の手前から供給し、デリベリローラ2〜フロントローラ3のドラフト倍率は1.029と設定したほか、実施例1と同様の方法でコアーヤーン縫糸を仕上げた。
得られたコアーヤーン縫糸の特性および可縫性評価結果を後述する表1に示した。
この表1より、比較例1では通常の精紡方式を用いるため、毛羽が多いので、縫い目表面には毛羽先が目立ち、フィラメント糸使いの生地縫製では極めて目立ち、欠点となった。
比較例2では、ヨリ係数が低いため、縫糸の強度が不足がちで、高速可縫性がやや低い水準となった。また、毛羽数も若干多いので、縫い目の外観にも影響をもたらしたものであった。
比較例3では、ヨリ係数が高いため、仕上がった縫糸は若干硬直化と見られた。そのため、高速可縫性について2800針/分で切れて、やや落ちたものとなった。
比較例4、5では、精紡工程の紡出には問題なかったが、デリベリローラ2〜フロントローラ3の間のドラフト倍率が1倍を超えたため、紡出時長繊維糸条が若干コアーヤーン複合繊維の表面に出ており、出来上がったコアーヤーン縫糸には若干ループが見られた。そのため、可縫性および縫糸品位の評価では悪くなった。
Figure 0004876807
工業用における高速可縫性、自動機対応縫製性、バック縫製、ならびに家庭用における、ジグザグステッチなど複雑のパターンにも対応できる縫い目の綺麗さなどを要求される一般衣料用として、例えば長短複合糸として表面が滑らかで、ピリングの発生が極めて少なく、ハリ・腰風合いに優れた特徴を活かした高級婦人衣料や、紳士パンツなどにも適用可能である。
実施例1〜2及び比較例2〜3で用いたリング精紡機の紡出部分に繊維収束用の繊維収束デリベリローラを設けた装置を示す側面図である。 図1における繊維収束デリベリローラ部の詳細図である。 比較例4〜5で用いたリング精紡機の紡出部分に繊維収束用の繊維収束デリベリローラを設けた装置を示す側面図である。 図3における繊維収束デリベリローラ部の詳細図である。
符号の説明
1……繊維収束デリベリローラ
2……デリベリニップローラ
3……フロントローラ
4……スネールワイヤ
5……スピンドル
6……コアーヤーン複合繊維糸
7……メッシュエプロン
8……長繊維糸条の供給位置
9……短繊維束

Claims (5)

  1. 芯糸となる長繊維糸条の周囲に、その長手方向に沿って鞘糸となる短繊維束が全糸重量比30%〜60%の巻き付きで、ヨリ係数KがK=3.5〜4.5の範囲で下ヨリが付与された、1mm以上の毛羽が250個/10m以下であることを特徴とするコアーヤーン複合繊維糸。
  2. 請求項1に記載のコアーヤーン複合繊維糸が、複数本引き揃えられて、下ヨリとは反対方向に上ヨリが施されてなることを特徴とするコアーヤーン縫糸。
  3. 平均引っ張り破断強度が4.0cN/dtex以上、曲げ硬さが0.002gfcm/本以下、曲げ回復性が0.002gfcm/本以下であることを特徴とする請求項2に記載のコアーヤーン縫糸。
  4. 前記コアーヤーン複合繊維糸の下ヨリ方向がS方向、上ヨリ方向がZ方向であることを特徴とする請求項2または3に記載のコアーヤーン縫糸。
  5. 請求項1に記載のコアーヤーン複合繊維糸を紡出する際、リング精紡機のフロントローラとスネールワイヤの間にメッシュ部を有する繊維収束用デリベリローラを設け、該デリベリローラのメッシュ部にて繊維束を吸着させながら加撚し、該デリベリローラと該フロントローラの間で1.0倍以下の倍率でドラフトすることを特徴とするコアーヤーン複合繊維糸の製造方法。
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