JP2008025037A - 紡績糸およびそれを利用した繊維製品 - Google Patents

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昌弘 増田
Katsuro Otsubo
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Abstract

【課題】編み立て加工性の良い編糸によってソフトでボリューム感のある綿の繊維製品を編成可能とする紡績糸であって空気精紡機で効率よく紡出できる紡績糸を提供する。
【解決手段】綿繊維(M繊維)に当該M繊維よりも繊維長が長い水溶性ビニロン短繊維(V繊維)を、それぞれ定量計量して(例えばM繊維:85重量%、V繊維:15重量%)ミックスビンを使用した混打綿工程で良く混綿することにより、スライバーを作る。このスライバーをオープンエンド方式の空気精紡機(OE機)に供給する。このOE機では、2つの補助加撚手段31,32によって撚り数(α)75以上(例えばα=95)で紡出可能とし、結束部にV繊維が多くなるように紡績糸を紡出する。このようにして得られた紡績糸からV繊維を溶解除去することにより、表面抵抗が小さく柔軟で嵩高性を有する綿糸を得る。この綿糸を編糸として編物を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気精紡機で紡出される紡績糸に関するものであり、更に詳しくは、綿繊維を主原料とする紡績糸および当該紡績糸から得られる綿糸を使用した繊維製品に関する。
エアージェット方式やオープンエンド方式等に基づく精紡機を用いて製造される市販の紡績糸としての綿糸は、編み立て加工性が悪く、編み組織や編み柄模様等が制限され汎用性に乏しいという問題を有していた。また、そのような紡績糸を使用した最終製品としての繊維製品には、風合いが硬くドレープ性や反発性が不足して、ソフトなボリューム感を発現できない等の難点があった。この点につきオープンエンド方式による空気精紡機によって紡出される紡績糸(以下「OE糸」と略記する)を例に挙げて説明する。
OE糸は、糸軸方向に略平行な繊維からなる主要部と、当該主要部を束ねるように当該主要部に巻き付く繊維からなる結束部とを有している。主要部には平行性の良い繊維と単繊維の先端が折れ曲がった繊維(「フック繊維」と呼ばれる)とが混在し、結束部には外層表面を糸軸方向に垂直な方向に強く締め付ける多数の繊維が含まれている。また、OE糸の製造のための加撚機構では、糸全体への撚り伝播効率が悪いため、リング精紡機を用いて製造される通常の糸に比べて20%以上大きい機械撚り係数を設定しなければならなかった。
OE糸は、このような構造から、表面抵抗が大きくかつ硬い糸となる。このため、柔軟で摩擦抵抗の少ない糸が要求されるニット分野では、OE糸を使用すると、編み立ての際に糸の張力が大きくなって針が折れたり、穴あき等のトラブルが発生したりして、編み立て加工性が悪くなる。このようなことから、綿繊維等を素材としたOE糸を使用してソフトなボリューム感のある繊維製品(ニット製品)を製造することはできないとされていた。
これに対し、特開平6−93523号公報(特許文献1)には、水溶性ポリビニルアルコール短繊維と天然又は合成の短繊維を用い、空気過流方式で紡出する際、結束部分が主に前者からなり、中心部は主に後者から成ることを特徴とする紡績糸が開示されている。また同公報には、この紡績糸を用いて織編物を作成し、結束部に存在する溶解性を持つ短繊維を加工段階で溶解除去することを特徴とするソフトな風合いの織編物の製造方法も開示されている。
特開平6−93523号公報 特開昭62−162030号公報
しかし、「空気過流方式で紡出する際、結束部分が主に前者からなり、中心部は主に後者から成る」ようにするための方法として同公報で具体的に言及されているのは、「特開昭62−162030号公報(特許文献2)記載の練条機でスライバーと篠を併せ2層構造のスライバーを作成し、このスライバーから得られた粗糸を空気過流方式による精紡機用の粗糸とする方法」のみである。しかし、この方法では、そのようなスライバーを作成するために特殊なフリースガイドを必要とする。
また、特許文献1に記載の発明に係る紡績糸の嵩高性や柔軟性を一層高めるには適正な紡績条件が必要であるが、そのための構成や設定条件などについては特許文献1では何ら言及されていない。
そこで本発明は、編み立て加工性の良い編糸によってソフトなボリューム感のある綿の繊維製品を編成できる紡績糸であって、特殊な部材や装置を必要とすることなく空気精紡機によって効率よく紡出可能な紡績糸を提供することを目的とする。
第1の発明は、空気精紡機によって紡出され、糸軸方向に略平行な繊維からなる主要部と当該主要部を束ねるように当該主要部に巻き付く繊維からなる結束部とを有する紡績糸であって、
前記主要部を構成する綿繊維と、
前記結束部を構成する水溶性系短繊維とを含み、
前記水溶性系短繊維の繊維長は、前記綿繊維の繊維長よりも長いことを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、
前記主要部を構成する水溶性系短繊維を更に含むことを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明において、
前記水溶性系短繊維の繊維長は、前記綿繊維の繊維長の1.5倍以下であることを特徴とする。
第4の発明は、第1の発明において、
綿繊維の割合が80重量%以上であり、水溶性系短繊維の割合が20重量%以下であることを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明において、
撚り係数は80〜115であることを特徴とする。
第6の発明は、第1の発明において、
紡出番手は10〜52Nmであることを特徴とする。
第7の発明は、綿糸であって、
第1から第6の発明のいずれかに係る紡績糸から水溶性系短繊維を溶解除去することにより得られたことを特徴とする。
第8の発明は、繊維製品であって、
第7の発明に係る綿糸で編まれた編物または織られた織物であることを特徴とする。
第9の発明は、綿糸の製造方法であって、
第1から第6の発明のいずれかに係る紡績糸から水溶性系短繊維を溶解除去することにより綿糸を得ることを特徴とする。
第10の発明は、繊維製品の製造方法であって、
第1の発明に係る紡績糸で編物または織物を作製し、当該編物または織物から水溶性系短繊維を溶解除去することを特徴とする。
上記第1の発明によれば、水溶性系短繊維の繊維長は綿繊維の繊維長よりも長いので、水溶性系短繊維からなる結束部を有する紡績糸を空気精紡機で容易に紡出することができる。そして、その紡績糸から水溶性系短繊維を溶解除去することにより、表面抵抗が小さく柔軟で嵩高性を有する綿糸を得ることができ、この綿糸を使用してソフトでボリューム感のある編物や織物等の繊維製品を製造することができる。
上記第2の発明によれば、紡績糸の主要部にも水溶性系短繊維が含まれているので、この紡績糸から水溶性系短繊維を溶解除去すると、結束部の水溶性系短繊維のみならず主要部の水溶性系短繊維も消滅し、より柔軟でより嵩高性を有する綿糸を得ることができる。
上記第3の発明によれば、水溶性系短繊維の繊維長は、前記綿繊維の繊維長の1.5倍以下であるので、空気精紡機における糸切れの発生頻度が低く、当該紡績糸を効率良く製造することができる。
上記第4の発明によれば、綿繊維の割合が80重量%以上であり、水溶性系短繊維の割合が20重量%以下であるので、練条機でのドラフトコントロールも可能となり、空気精紡機における糸切れの発生頻度が低くなると共に高価な水溶性系短繊維(水溶性ビニロン等)の使用量を少なくすることができる。したがって、当該紡績糸を経済的かつ効率よく製造することができる。
上記第5の発明によれば、撚り係数は80〜115であるので、糸切れの発生を抑えつつ効率良く柔軟な紡績糸を製造することができる。
上記第6の発明によれば、紡出番手は10〜52Nmであるので、毛羽が少なく外観の良い紡績糸を容易に製造することができる。
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態につき説明する。
本実施形態では、綿花(以下「M繊維」ともいう)に、当該M繊維よりも繊維長が長い水溶性ビニロン短繊維(以下「V繊維」ともいう)を、それぞれ定量計量してミックスビン(Mix Bin)を使用した混打綿工程で良く混綿することにより、スライバーを作る。そして、このスライバーをオープンエンド方式の空気精紡機(以下「OE機」という)に供給する。このOE機では、2つの補助加撚手段が付設されており、これらの補助加撚手段によって、低撚り数すなわちメートリック撚り係数が75程度であっても紡出可能とし、ロータ径60mmで結束部にV繊維が多くなるように紡績糸を紡出する。このようにして得られた紡績糸は、それに含まれるV繊維が温水で溶かされた後、洗浄乾燥される。これにより、その紡績糸に含まれていたV繊維が消滅する。また、その紡績糸の内層(主要部)に分散して存在していたV繊維も溶解除去されて、その主要部における綿繊維が粗密度となる。このようにして表面抵抗が小さく柔軟で嵩高性を有する綿糸が得られる。この綿糸を編糸として使用することにより、ソフトでボリューム感のある編物(綿の繊維製品)を製造することができる。
<1.実施例>
以下、本発明を一実施例により更に具体的に説明する。
原綿としてのピーマ綿であるM繊維が85重量%であって、1.5デニール、繊維長50mmのV繊維が15重量%となるように、それらM繊維およびV繊維を定量計量する。ここでV繊維の繊維長(「カット長」とも呼ばれる)をM繊維の繊維長(概ね30〜35mm程度)よりも長くしているのは、V繊維の繊維長がM繊維の繊維長と同等以下では、OE機から紡出される紡績糸においてV繊維が結束部を構成しにくく且つ低い撚りで撚り効率が低いからである。
次に、上記の混率(M繊維が85重量%でV繊維が15重量%の割合)となるように定量計量されたM繊維とV繊維をミックスビンに2回通して良く混ぜ合わせる(混打綿工程)。不均一な混紡スライバーでは、OE機による精紡工程において糸切れを発生して紡出不可能となるからである。その後、良く混ぜ合わされたM繊維とV繊維からなる混合物から練条機で2.8g/mの均一なスライバー(以下「混紡スライバー」という)を作る。
次に、この混紡スライバーをOE機に供給して紡績糸を紡出する。ここで使用されるOE機は、株式会社豊田自動織機製のBD型OE機であり、図1に示すように構成されている。このOE機では、ハウジング100内に、繊維供給口10とフィードローラ12等からなる繊維供給部と、コーミングローラ14と、繊維輸送チャネル16とが設けられている。繊維輸送チャネル16は、コーミングローラ14でコーミングされた繊維(開繊繊維)をハウジング100の外部を送り出すための通路であり、その出口部にはロータ20が配設されている。ロータ20は、漏斗状であって、その筒口部分は糸引き出し通路20bとなっている。その糸引き出し通路20bの出口部の近傍に1対のローラが巻き取りローラ22として配設されている。
このような構成のOE機において、繊維供給口10にスライバーが供給されると、そのスライバーは、フィードローラ12を介してコーミングローラ14に供給され、そこで開繊された後、コーミングロータ14から剥ぎ取られ、開繊繊維として繊維輸送チャネル16を経てロータ20に供給される。ロータ20は、不図示の駆動装置によって高速回転すると共に、その筒口部分に相当する糸引き出し通路20bは、負圧源に接続された室内に連通している。このため、ロータ20に開繊繊維が供給されると、その開繊繊維は、ロータ20の主部20aにおいて、その高速回転による遠心力で加撚され、その後、糸引き出し通路20bを経て巻き取りローラ22に巻き取られる。
本実施例では、このようなOE機に下記のような第1補助加撚手段31および第2補助加撚手段32が付設されている。
第1補助加撚手段31は、糸引き出し通路20bの側部に設けられたエアー導入口であり、その適正条件としての空気圧は、0〜1kg/cm2である。空気圧が1kg/cm2を超えると糸面が悪く糸切れが多くなるからである。
第2補助加撚手段32は、ロータの主部20a内に取り付けられたガイドである。このガイドには、撚り効率を向上させるために、粗面加工が施されている。その適正条件は、紙ヤスリの粗さに換算すると、100〜300番である。300番以上では、低い撚りの時に糸のつなぎが悪く糸切れとなり、100番以下では、糸に掛かる張力が高くなって毛羽が多くなり糸品位が低下するからである。
以下に本実施例における上記OE機の主な条件の典型例を列記する。
(1)ロータの回転速度: 30000rpm
(2)コーミングロータの回転速度: 6000rpm
(3)機械設定撚り係数(α): 95
(4)紡出番手: 28Nm(503t/m)
(5)第1補助加撚手段の空気圧: 0.6kg/cm2
第2補助加撚手段の表面粗さ: 200番
(6)ロータ径: 60mm
以上のような本実施例によれば、OE機における紡出状況は非常に良好で、200スピンドル・1時間当たりの糸切れは3本であり、また、糸外観についても、毛羽が少なく高品位であった。
上記第1および第2補助加撚手段31,32の具体的な条件設定については、要求される糸品位と使用する原料に応じて好適な条件が設定される。例えば、第1補助加撚手段の空気圧を0.1kg/cm2、第2補助加撚手段の表面粗さを250番とし、他の条件を上記と同一に設定した場合においても、上記実施例と同様の良好な結果が得られた。なお、第1および第2補助加撚手段31,32の双方を必ずしも必要とするものではなく、第1および第2補助加撚手段31,32の一方のみを使用する構成であってもよい。ちなみに、第1および第2補助加撚手段31,32が無い場合には、糸が立たず紡出不可能であった。
また、原料としてのV繊維の種類(繊維の長さや太さ)や混紡スライバーの作製工程については、原綿種や、混率(M繊維とV繊維の割合)、OE機の条件、最終用途に応じて、好適な条件が具体的に選定されるものであり、上記条件は好適な一例に過ぎず必ずしも必要十分な条件とは言えない。
<2.各種測定の結果について>
上記実施例により得られた紡績糸を電子顕微鏡で観察すると、V繊維が結束部に多く存在することがわかった。図2(a)は、この紡績糸の電子顕微鏡による観察結果を示す素描図である。この紡績糸を、それに含まれるV繊維を温水で溶解除去した後に、洗浄乾燥して各種測定を行ったところ、次のような結果が得られた。
(1)走査型電子顕微鏡で観察した結果、図2(b)に示すように結束部が消滅していた。これに対し、定番のOE糸には、図2(c)(d)に示すように、結束部が存在する。ここで、図2(c)は綿100%の定番OE糸のボイル前の状態(生糸)を示しており、図2(d)は綿100%の定番OE糸のボイル後の状態(ボイル糸)を示している。
本実施例に係る上記糸のように結束部が消滅すると、摩擦抵抗(表面抵抗)が小さくなり編みやすい糸となる。
(2)糸径は、通常紡績BD糸より12〜15%大きくなっていた。
(3)糸を構成する繊維の密度が粗となり、空隙が多い構造となっている。
(4)糸の伸度は8%であり、通常のOE糸(伸度は7.5%)に比べて改善されている。
(5)編み立て性については、糸の伸度が改善されたことから、例えば1.5〜3.0Gのローゲージの編物の編糸として本実施例に係る糸を使用することができる。また、従来の綿糸では不可能であった組織柄が可能となった(例えば4ピッチ寄せ柄が可能となった)。
編地の評価については、JIS−L−1018の測定法による圧縮弾性率が74%であり、通常の糸の場合(圧縮弾性率は72%)に比べ改善されている。また、目付は、例えば、通常の糸の場合に110g/40cm2であったものが、本実施例では100g/40cm2となり、1割程度軽くなった。さらに、V繊維の溶解除去後の上記実施例の糸で編まれたセータ等の編物の着用試験において、保温性が良好で暖かいという結果を得ている。
<3.紡績糸の構成と製造に関する条件の適正範囲>
上記実施例では、本発明の一実施形態に係る紡績糸の構成と製造に関する条件について好適な典型例が設定されている。以下では、図3〜図6に示す実測データを参照して当該条件の適正範囲について説明する。ただし、当該条件のうち以下において明記された条件以外の条件は上記実施例と同一であるものとする。
図3は、上記実施形態において水溶性ビニロン短繊維の割合(V繊維混率)を変化させた場合の糸切れの発生頻度を示している。ここで、図3のグラフの縦軸は、糸切れの発生頻度を200スピンドル・1時間当たりの糸切れの本数で示している。この図3より、V繊維混率が20重量%を超えると、糸切れが多くなり紡出が困難となることがわかる。また、本実施形態で使用するV繊維は高価である。したがって、本実施形態に係る紡績糸の製造における効率および経済性を考慮すると、V繊維混率は20重量%以下とするのが適切である。すなわち、適正なV繊維混率の上限値は20重量%とすべきである。なお、適正なV繊維混率の下限値は、V繊維の溶解除去後の糸(以下「本実施形態の綿糸」という)の嵩高性をどの程度にするかに依存する。したがって、実際の製造時にV繊維混率をどの程度にするかは、本実施形態の綿糸を使用する繊維製品(綿製品)に要求されるソフト感やボリューム感の程度に基づく当該綿糸の嵩高性や柔軟性の程度と紡績糸の製造効率(糸切れの発生頻度)を考慮して決定される。嵩高性に対する要求度が小さければ、V繊維混率を小さくした方が製造効率がよい(糸切れが少ない)。
図4は、上記実施形態において水溶性ビニロン短繊維(V繊維)の繊維長を変化させた場合の、結束部におけるV繊維の割合および単位長さ当たりの結束数(結束部の個数)を示している。図4より、本実施形態に係る紡績糸では、V繊維の繊維長が短くなると結束数が少なくなり、V繊維の繊維長が30mm程度になると、結束数が1程度となり結束部におけるV繊維の割合が50%以下となる。このような紡績糸では、V繊維の溶解除去した後に嵩高性や柔軟性の点で従来と異なる綿糸を得ることができない。また、V繊維の繊維長を長くするほど結束数や結束部におけるV繊維の割合が大きくなるが、V繊維の繊維長が50mmを越えると糸切れの発生頻度が大きくなり、OE機による紡出が困難であった。一方、V繊維の繊維長がM繊維の繊維長と同等以下では、OE機から紡出される紡績糸においてV繊維が結束部を構成しにくく且つ低い撚りで撚り効率が低い。したがって、V繊維の繊維長は、M繊維の繊維長よりも長く、かつ、50mm程度以下とするの適切である。本実施形態で使用されるM繊維(綿繊維)の繊維長は30〜35mm程度であるので、M繊維の繊維長を基準にすると、V繊維の繊維長の適正範囲はM繊維の繊維長の1.0〜1.5倍程度となる。
なお、V繊維の適正な繊維長の上限値は、ロータ直径に基づく限界から導くこともできる。すなわち、OE機における糸切れ抑制の観点から、一般に、ロータの周囲長の1/3程度が繊維長の最大限とされている。本実施例で使用されたOE機のロータの直径は60mmであるので、当該OE機で使用可能な繊維の繊維長の上限は60mm程度(60×π×1/3)となる。これは、V繊維の繊維長が50mmを超えると糸切れの発生頻度が大きくなったことと整合する。なお、OE機ではローラが高速回転することから、当該ロータの直径は特殊なものを除き65mmが最大となっている。これを考慮すると、使用可能な繊維の繊維長の上限は68mm程度となる。
図5は、上記実施形態において撚り係数(α)を変化させた場合の糸切れの発生頻度を、通常のOE糸(第1および第2補助加撚手段31,32の無い場合)の糸切れ発生頻度と共に示している。本実施形態では、通常のOE糸に比べ、撚り係数(α)を低くしても糸切れが少ないが、撚り係数が80以下では糸切れが多く紡出困難となる。一方、撚り係数が115以上では、嵩高性や柔軟性の点で本実施形態の糸と通常のOE糸との間に違いを見出しにくくなる。したがって、本実施形態における撚り係数(α)の適正範囲は80〜115である。なお、本明細書において、「撚り係数(α)」は次式で与えられるものとする。
α=T/√(N) …(1)
ここで、Tは1m当たりの撚り数を示し、Nはメートル番手を示すものとする。
図6は、上記実施形態において紡出番手を変化させた場合の単位長さ当たりの3mm以上の毛羽の個数を、撚り係数がα=85の場合とα=115の場合について示している。この図6によれば、撚り係数がα=85の場合は、紡出番手が50Nmを超えるくらいから紡出番手の増加に伴う毛羽の増加率が大きくなり、撚り係数がα=115の場合は、紡出番手が50〜60Nmの間で紡出番手の増加に伴う毛羽の増加率が大きくなる。したがって、上記のように適正な撚り係数の範囲がα=80〜115であることを考慮すると(図5)、上記実施形態では紡出番手を52Nm程度以下とするのが適切である。一方、紡出番手が10Nm以下になると、通常のOE機では紡出速度が過大で紡績糸の製造が困難となる。よって、本実施形態における紡出番手の適正範囲は10〜52Nmである。
<4.効果>
以上のように本実施形態に係る紡績糸はOE機によって得られる混紡糸であって、糸軸に略平行な繊維からなる主要部と当該主要部を束ねるように巻き付く繊維からなる結束部とから構成され、結束部は主としてV繊維からなり、主要部は主としてM繊維からなる。そして、このような紡績糸は、上記適正範囲の条件設定によって糸切れを抑えつつ効率よく製造することができる。このような本実施形態に係る紡績糸からV繊維を溶解除去すると、結束部を構成するV繊維が消滅すると共に、主要部に含まれていたV繊維も消滅する。これにより、表面抵抗が小さく柔軟で嵩高性を有する綿糸が得られる。この綿糸を使用することにより、ソフトでボリューム感のある綿の繊維製品としての編物や織物を製造することができる。
特に、この綿糸で編まれた編物については、従来の綿製品では想定されていなかったような新たな展開が可能となる。すなわわち、従来の綿製品は重くて嵩高性が乏しいとされていたが、この綿糸を使用することによりソフトでボリューム感のあるバルキーセータ等の編物の製造が可能となる。しかも、本実施形態の綿糸は、柔軟な綿繊維の特性から肌に触れたときにウール(獣毛繊維)のようなちくちく感がなく、肌着や睡眠用の衣服(例えば就寝時の保温用の肩掛け)のための編糸としても好適である。また、肌が弱い人やアトピー性皮膚炎等の症状があるためにウールのセータ等が着用できなかった人でも、この綿糸を編糸として使用することにより、ウール製品と同様のソフトでボリューム感のあるセータ等を着用できるようになる。さらに、この綿糸は、通常のOE糸に比べて軽量で伸度も改善されていることから、編糸として汎用性を有している。すなわち、この綿糸によれば、ローゲージの編物も可能であり、組織柄も可能となる。
<5.変形例>
上記実施形態では、M繊維とV繊維からなる紡績糸がOE機で紡出され、その紡績糸からV繊維を溶解除去することにより、表面抵抗が小さく柔軟で嵩高性を有する綿糸が得られる。この綿糸を使用することにより、ソフトでボリューム感のある編物または織物を製造することができる。しかし、これに代えて、上記紡績糸で編物または織物を製造し、その後に、その編物または織物からV繊維を溶解除去するようにしてもよい。このような方法によってもソフトでボリューム感のある綿の繊維製品が得られる。
なお、上記実施形態ではM繊維とV繊維からなる紡績糸がOE機で紡出されるが、V繊維に代えて他の水溶性系短繊維を使用してもよい。
本発明の一実施形態において使用されるオープンエンド方式の空気精紡機(OE機)の構成を示す断面図である。 上記実施形態における一実施例により得られた紡績糸および従来の紡績糸(OE糸)を電子顕微鏡で観察したもの示す素描図である。 上記実施形態において水溶性ビニロン短繊維の割合(V繊維混率)を変化させた場合の糸切れの発生頻度を示す図である。 上記実施形態において水溶性ビニロン短繊維(V繊維)の繊維長を変化させた場合の、結束部におけるV繊維の割合および単位長さ当たりの結束数を示す図である。 上記実施形態において撚り係数(α)を変化させた場合の糸切れの発生頻度を示す図である。 上記実施形態において紡出番手を変化させた場合の単位長さ当たりの毛羽の個数を示す図である。
符号の説明
10 …繊維供給口
12 …フィードローラ
14 …コーミングローラ
20 …ロータ
20a …(ロータの)主部
20b …糸引き出し通路
31 …第1補助加撚手段
32 …第2補助加撚手段

Claims (10)

  1. 空気精紡機によって紡出され、糸軸方向に略平行な繊維からなる主要部と当該主要部を束ねるように当該主要部に巻き付く繊維からなる結束部とを有する紡績糸であって、
    前記主要部を構成する綿繊維と、
    前記結束部を構成する水溶性系短繊維とを含み、
    前記水溶性系短繊維の繊維長は、前記綿繊維の繊維長よりも長いことを特徴とする紡績糸。
  2. 前記主要部を構成する水溶性系短繊維を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の紡績糸。
  3. 前記水溶性系短繊維の繊維長は、前記綿繊維の繊維長の1.5倍以下であることを特徴とする、請求項1に記載の紡績糸。
  4. 綿繊維の割合が80重量%以上であり、水溶性系短繊維の割合が20重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の紡績糸。
  5. 撚り係数は80〜115であることを特徴とする、請求項1に記載の紡績糸。
  6. 紡出番手は10〜52Nmであることを特徴とする、請求項1に記載の紡績糸。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の紡績糸から水溶性系短繊維を溶解除去することにより得られた綿糸。
  8. 請求項7に記載の綿糸で編まれた編物または織られた織物であることを特徴とする繊維製品。
  9. 請求項1から6のいずれか1項に記載の紡績糸から水溶性系短繊維を溶解除去することにより綿糸を得ることを特徴とする綿糸の製造方法。
  10. 請求項1に記載の紡績糸で編物または織物を作製し、当該編物または織物から水溶性系短繊維を溶解除去することを特徴とする、繊維製品の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8653470B2 (en) 2009-09-02 2014-02-18 3833364 Canada Inc. Neutron energy spectrometer
CN103643369A (zh) * 2013-11-20 2014-03-19 苏州工业园区友顺制衣厂 一种银杏果冰丝布料的制作工艺
CN104611814A (zh) * 2015-02-09 2015-05-13 苏州陈恒织造有限公司 一种利用水煮式定型工艺制备粘胶纤维面料的方法
CN105926108A (zh) * 2016-06-03 2016-09-07 长兴恒远纺织有限公司 一种易眠保健纺织面料的加工工艺

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