JP4876431B2 - 中空糸型血液浄化膜への表面改質剤コーティング方法、表面改質剤コート中空糸型血液浄化膜および表面改質剤コート中空糸型血液浄化器 - Google Patents

中空糸型血液浄化膜への表面改質剤コーティング方法、表面改質剤コート中空糸型血液浄化膜および表面改質剤コート中空糸型血液浄化器 Download PDF

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本発明は、膜孔保持剤を含んでなる中空糸型血液浄化膜の選択透過性を保持しながら効率よく、かつ、表面改質剤によって付与された特性が十分発揮できる、中空糸型血液浄化膜への表面改質剤コーティング方法、該方法によって得られる表面改質剤コート中空糸型血液浄化膜、および該表面改質剤コート中空糸型血液浄化膜を充填してなる表面改質剤コート中空糸型血液浄化器に関する。
中空糸型血液浄化膜を用いた血液浄化療法としては、慢性腎不全患者の延命法や急性中毒症、急性劇症肝炎の救命法として利用される血液透析、血液濾過、血液透析濾過や、リウマチ、高脂血症、急性中毒症、敗血症の治療に利用される血漿分離、血漿交換などがある。
血液透析膜、血液濾過膜、血液透析濾過膜には再生セルロース、セルロースジアセテート(以下CAと略記する)、セルローストリアセテート(以下CTAと略記する)、表面をポリエチレングリコールやビタミンEなどで修飾したセルロースなどのセルロース系材料、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン(以下PSfと略記する)、ポリエーテルスルホン(以下PESと略記する)、ポリメチルメタクリレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの合成高分子が、血漿分離膜にはCTAやエチレン-ビニルアルコール共重合体、PSf、ポリプロピレンなどが使用されている。
このような中空糸型血液浄化膜は多孔構造となっており、上記膜素材の中でセルロース、CA、CTAなどのセルロース系素材膜や、一部の合成素材膜においては、乾燥時の多孔構造を好ましい状態に保持するため、あるいは、乾燥収縮防止のためなどの目的で、膜壁の細孔(膜孔と呼称する)を保持する膜孔保持剤が使用されている。
また、中空糸型血液浄化膜に新たな特性を付与する目的で、改質剤を導入する技術も知られている。このような改質剤としては、例えば、親水性の付与を目的とした親水化剤、抗血栓性の付与を目的とした抗血栓剤、抗酸化性の付与を目的とした抗酸化剤などが例示される。
[親水化剤について]
近年、透水性が高いことから注目されているPSf系樹脂は、疎水性であるために血液との親和性に乏しく、エアーロック現象を起こしてしまうため、親水性高分子を配合するのが一般的である。
[抗血栓剤について]
体外循環によって実施される血液浄化療法では、通常、患者より血液を体外に取り出し、血液浄化膜を構成要素として含んでなる血液浄化デバイスによって、透析、濾過、透析濾過、血漿分離、酸素富化等の処理を行い、血液を患者に戻す体外循環が行われる。この際、体外に取り出された血液は異物である血液浄化膜と接触するため、生体の持つ防御機構によって凝固や血球成分の減少/増加、補体系の活性化などが引き起こされる。このような副作用を回避/軽減する目的で、体外循環時にはヘパリンやメシル酸ナファモスタットなどのような抗凝固剤を循環血液に添加するのが一般的である。
近年広く行われている血液浄化療法として、術後腎不全や急性腎不全、急性薬物中毒、劇症肝炎等の治療に適用される持続血液透析、持続血液濾過、持続血液透析濾過がある。通常の慢性腎不全患者の治療に利用されている血液透析が1回につき4時間程度の時間で行われるのに対し、これらの持続血液浄化療法は、1回につき12時間から数日間の長期にわたって連続的に施行される。この療法によって病因物質や過剰水分の連続除去が可能となり、重篤な疾病の治療に大きな効果を上げているものの、長期間の連続使用による血液の凝固、血栓生成が問題となるケースも多い。さらに、このような病態にある患者は使用する抗凝固剤の量が制限されたり、血液が凝固しやすい状態にあったりすることも多く、使用される血液浄化膜には高い抗血栓性が要求される。
しかしながら、持続血液浄化膜も含めて血液浄化に用いられる膜の素材は、汎用プラスチックや繊維素材を血液浄化膜用途に転用しただけに過ぎず、大量生産されているために低コストで入手でき、成型も比較的容易であるというメリットはあるものの、血液浄化膜用途を主眼において開発されたものではないので、十分な抗血栓性を持っているとは言い難い。
一方、生体適合性付与に有効な構造として近年活発に検討されているもののひとつにホスホリルコリンがある。ホスホリルコリンは生体膜を形成するリン脂質のひとつであるホスファチジルコリンの極性部分の構造であるため、ホスホリルコリンの材料への導入は生体との親和性向上、血液適合性向上に有効である。2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含む重合体はホスファチジルコリンと類似の構造を有していることから、生体中のリン脂質を吸着して擬内膜化することによりすぐれた血液適合性が得られることが報告されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開昭54-063025号公報 特開昭63-096200号公報
また、ホスホリルコリン構造によって血液浄化膜に血液適合性を付与する技術も開示されている(例えば、特許文献3、4、5、6、非特許文献1、2参照)。本発明者らもホスホリルコリン類似構造の有効性に着目し、この構造を含有する材料を利用した血液浄化膜について、既に出願している(例えば、特許文献7、8、9参照)。
特開平07−231935号公報 特開平05−177119号公報 特開平05−220218号公報 WO02/009857号公報 Biomaterials,20,1545(1999) Biomaterials,20,1553(1999) 特開2000−037617号公報 特開2000−126566号公報 特開2000−308814号公報
これらホスホリルコリン構造を導入した材料は、調製のプロセスが複雑であるためコストが高くなり、また、新規素材であるために十分な安全性が確保できるかどうかは未知の部分があるという短所はあるものの、優れた血液適合性を発揮するという大きな特長を持っており、注目される技術である。
血液接触面に抗血栓性を付与する他の方法としては、天然の抗凝固剤であるヘパリンや、血栓溶解剤であるウロキナーゼをコーティングする技術が知られている。特に、オニウム塩との複合体生成によって有機溶媒に可溶化したヘパリンをコーティングする方法は比較的簡便に実施でき、優れた抗血栓性を付与することができる。本発明者らは有機溶媒可溶化ムコ多糖、特に有機溶媒可溶化ヘパリンを有効成分とした抗血栓性組成物について既に多くの出願している(例えば、特許文献10、11、12、13、14、15、16、17参照)。
特開平09−176379号公報 特開平09−187501号公報 特開平09−187502号公報 特開平11−164882号公報 特開2001−204809号公報 特開2002−360686号公報 特開2003−038640号公報 特開2003−048840号公報
本発明者らは、また、血液接触面に血液適合性が付与された血液回路および血液浄化デバイスを構成要素として含んでいることを特徴とする血液適合性血液浄化システムについて出願している(特許文献18参照)。
特開2004−008693号公報
[抗酸化剤について]
近年、長期にわたって血液透析を行っている患者に、血中抗酸化作用の低下や過酸化脂質などが確認されており、このような酸化ストレスが種々の合併症と関わっていることが指摘されている。この問題を解決するひとつの方法として、血液浄化膜への抗酸化物質固定化が試みられている(特許文献19、20、21、22、23、24、25など参照)。
特開平09−066225号公報 特開平10−235171号公報 特開2002−066273号公報 特公昭62−041738号公報 特開2000−312716号公報 特開平07−178166号公報 特開平11−178919号公報
[その他の特殊な目的での改質剤導入]
また、特許文献26では、分画特性の異なる複数種類の膜を後処理によって作製することを目的として、多孔質膜表面に高分子溶液を接触させ、高分子を付着保持させることで得られる、改質前後の溶質の篩係数が規定された膜が開示されている。ここでは、親水性高分子以外の高分子、アルコールなど水以外の溶媒に対して可溶性を有する高分子であってもよい、との記載は見られるものの、実態は親水性高分子、好ましくはポリビニルピロリドン(以下PVPと略記する)水溶液を疎水性高分子膜に接触させる方法で導入している。
特開2001−038167号公報
これら改質剤の導入方法としては、まず第1に、製膜原液に改質剤を配合する方法がある(例えば、親水化剤であるポリエチレングリコール等の多価アルコールを配合する方法として特許文献27、28、親水化剤であるPVPを配合する方法として特許文献29、30、抗血栓剤であるホスホリルコリン構造含有ポリマーを配合する方法として前記非特許文献1、2、前記特許文献7、8、9参照)。
特開昭61−232860号公報 特開昭58−114702号公報 特公平5−054373号公報 特公平6−075667号公報
第2に、中空糸型血液浄化膜製造時の内腔形成剤(芯液)および/または凝固液に改質剤を含有させて、中空糸型血液浄化膜表面に改質剤を導入する方法も開示されている(例えば、親水化剤である親水性高分子の導入技術として特許文献31、抗血栓剤であるホスホリルコリン構造含有ポリマーの導入技術として前記特許文献6、抗酸化剤の導入技術として前記特許文献19、20、21参照)。
特開2002−212333号公報
これらの方法は、中空糸型血液浄化膜の製造工程において処理を行うものであり、好ましい特性を有する既存の中空糸型血液浄化膜に、その好ましい特性を保持したまま新たな特性を付与する目的で改質剤を導入することは不可能であり、一般性に欠ける。
改質剤導入の第3の方法としては、既に成型された中空糸型血液浄化膜表面に改質剤を含有する溶液等を接触させて導入させる方法、すなわちコーティングによる導入方法がある(例えば、分画特性調整剤の導入技術として前記特許文献26、親水化剤である親水性高分子の導入技術として特許文献32、33、34、抗血栓剤であるホスホリルコリン構造含有ポリマーの導入技術として前記特許文献4、5、抗血栓剤である有機溶媒可溶化ヘパリン含有抗血栓性組成物の導入技術として前記特許文献10、11、12、13、14、15、16、17、18、抗酸化剤の導入技術として前記特許文献22、23、24参照)。
特開平10−118472号公報 特開平10−151196号公報 特開平11−169690号公報
特許文献32、33、34の技術においては、親水性高分子溶液を疎水性高分子膜に接触させて物理的に付着保持させた血液浄化膜が開示されており、実質的には、親水性高分子(好ましくはPVP)水溶液を疎水性高分子膜に接触させて処理する方法であり、他の溶媒(有機溶媒)についての技術開示は見られない。水を媒体として処理する場合には問題とならないこともあるが、水難溶性の改質剤をコートするにあたって、有機溶媒を使用する場合、微細構造により性能を発揮している膜型の医療用具への導入は通常の方法で単にコーティングするだけでは膜構造が破壊され、性能の低下を招いてしまう可能性がある。従って、上記の技術は種々の改質剤、血液浄化膜に対して広汎に適用可能な方法とは言い難い。
特許文献26、4、5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24では、改質剤の有機溶媒溶液を含浸、塗布などの方法で表面に付与し、過剰の溶液を除去後、溶媒を除去するという一般的な導入方法が記載されているのみである。血液浄化膜は精密な微細構造により選択透過性能を発揮しているため、このような単純方法でコーティング方法を実施した場合には、膜の微細構造が破壊されてしまう可能性があり、そのため膜としての透過性能が保持されなくなってしまうことがある。特許文献24では溶解度パラメータδが13以下である疎水性の膜にビタミンEをコーティングしているが、これはビタミンEとの相互作用が強固な膜素材を選択することでビタミンEの溶出を低下させるのが目的であり、膜構造の破壊を回避する手法とはなり得ない。
このように、単純に改質剤含有液を接触させる方法では選択透過性を発揮している膜の微細構造を改変して性能が変化してしまう可能性が高く、所望の膜性能を持った改質剤コート中空糸型血液浄化膜を得るには、コーティングによる膜性能の変化を勘案して原料膜を製造する必要があり、効率的でない。
その他、改質剤の特殊な導入方法としては、例えば特許文献35に開示された方法がある。特許文献35においては、膜への処理剤の付着性を高め、処理を効率化することを目的として、圧力差により処理液を一方の表面(被コート面)からもう一方の表面(非コート面)へ向けて移動させて処理する方法が開示されている。この技術は、実質的には親水化剤(好ましくはPVP)を水溶液として処理する方法であり、他の溶媒(有機溶媒)についての技術開示は見られない。これも上記同様、有機溶媒を使用する場合には膜の性能の低下を招いてしまう可能性がある。特に、圧力差によって膜内部まで溶液を導入しているため、膜構造の破壊はより顕著になってしまう可能性も考えられる。
特開2004−230375号公報
また、前記特許文献25では、膜の微細孔に、改質剤と相溶性の低い充填液(具体的に好ましくは水)を充填しておき、その後改質剤の有機溶媒溶液を接触させてコーティングする手法が開示されている。この方法では、膜の細孔があらかじめ保護されているので、有機溶媒との接触による微細構造の破壊は回避できる可能性が高いが、微細孔への充填工程、改質剤による被覆工とふたつの工程を連続して行う必要があるため効率的でない。
前記特許文献3では、膜表面にエステル結合でグラフト化することでホスホリルコリン構造を導入しているが、この方法は膜表面で化学反応を行わせなければならず、簡便に実施できない。
特許文献36では血液接触面にヘパリンと有機カチオン化合物とからなるイオン性複合体が被覆された人工肺が開示されており、コーティング方法として浸漬法、スプレー法、塗布法など一般的な方法が例示されている。特許文献36では膜型人工肺に限定されているが、人工肺においては透過成分がガスであり、膜の細孔は非常に小さいもので十分な性能を発揮する。また、血液透析膜、血液濾過膜、血液透析濾過膜などは、溶質の選択透過性が厳密である必要がないため、膜の微細構造の制御がこれらの膜ほど精密である必要は必ずしもない。このため、特許文献31に記載された組成の血液適合性組成物を使用してコーティングすることで比較的簡便に血液適合性を付与することが可能であり、またコーティング工程によって性能が変化する可能性も低い。このため、コーティング組成物の構成の最適化で十分な性能維持が可能であったが、細孔径が比較的大きい人工腎臓などの血液浄化膜を含めた種々の血液浄化膜に対し、性能を保持したままコーティングを実施して血液適合性を付与する方法として本法を広く適用することは困難である。
特開2001−276215号公報
本発明が意図する中空糸型血液浄化膜とは異なるが、特許文献37、38では、第4級アンモニウムを有効成分とする成分を、浸漬法、スプレー法、塗布法など一般的な方法でコーティングすることで得られるエンドトキシン除去膜が開示されているが、この用途の場合は膜の精密な微細構造を保持して厳密な選択透過性を保ってコーティングを行う必要性が低いため、コーティング手法を最適化する重要性があまり問題とならない。種々の血液浄化膜に対し、性能を保持したまま血液適合性を付与するにはコーティング手法の最適化が不可欠である。
特開2002−355553号公報 特開2003−010655号公報
また、本発明に使用される中空糸型血液浄化膜は膜孔保持剤を含んでなるものであるが、改質剤を導入する際には、この膜孔保持剤について考慮する必要がある。すなわち、上記の、中空糸型血液浄化膜表面に改質剤を含有する溶液等を接触させて導入する方法では、改質剤の導入プロセスにおいて膜孔保持剤が除去されてしまい、膜孔が保持されなくなってしまう可能性がある。また、膜孔保持剤を含む中空糸型血液浄化膜の場合、膜孔保持剤が膜表面を覆ってしまっていて、改質剤を含有する溶液を単純に接触するだけでは膜表面への改質剤導入が不十分となる可能性がある。前記特許文献22には、改質剤であるビタミンEの有機溶媒溶液中にグリセリンを含有させておくこともでき、これにより透過膜に親水性を与えることができる、との記載がある。このグリセリンは親水化剤であると同時に膜孔保持剤と考えることもできるが、特許文献22においてはコーティング方法に特殊な工夫は見られず、従って、ビタミンEに限定した場合は問題なかったとしても、上記の理由により、改質剤の種類によっては導入が不十分となったりすることも考えられる。
本発明は、親水化剤、抗血栓剤、抗酸化剤など種々の表面改質剤を、血液透析膜、血液濾過膜、血液透析濾過膜、血漿分離膜など、膜孔保持剤を含んでなる種々の中空糸型血液浄化膜に広く適用可能で、その選択透過性を保持しながら効率よく、かつ、表面改質剤によって付与された特性が十分発揮できる、中空糸型血液浄化膜への表面改質剤コーティング方法、該方法によって得られる表面改質剤コート中空糸型血液浄化膜、および該表面改質剤コート中空糸型血液浄化膜を充填してなる表面改質剤コート中空糸型血液浄化器を提供することにある。
本発明は、上記技術課題を解決するために鋭意検討した結果、膜孔保持剤を含んでなる中空糸型血液浄化膜の表面に表面改質剤をコーティングする際に、膜孔保持剤および該表面改質剤の双方を含有する有機溶媒溶液または有機溶媒分散液または有機溶媒懸濁液を、該中空糸型血液浄化膜の被コート面側に導入し、加圧することにより、上記課題を解決することができたものである。
詳細な実施態様としては、膜孔保持剤を含んでなる中空糸型血液浄化膜の被コート面側に、膜孔保持剤および表面改質剤の双方を含有する有機溶媒溶液または有機溶媒分散液を導入するのに先立ち、中空糸型血液浄化膜に含まれる膜孔保持剤の良溶媒を該被コート面側に通液するものであり、中空糸型血液浄化膜は血液透析膜または血液濾過膜または血液透析濾過膜または血漿分離膜であり、表面改質剤はムコ多糖と第4級オニウムのイオン性複合体を含んでなり、ムコ多糖はヘパリン類である。
本発明の中空糸型血液浄化膜への表面改質剤コーティング方法は、血液透析膜、血液濾過膜、血液透析濾過膜、血漿分離膜など種々の膜孔保持剤を含んでなる中空糸型血液浄化膜に広く適用可能で、その選択透過性を保持しながら効率よく、かつ表面改質剤によって付与された特性が十分発揮できるという利点があり、また、本発明の表面改質剤コート中空糸型血液浄化膜および表面改質剤コート中空糸型血液浄化器は、優れた選択透過性を保持し表面改質剤によって付与された特性が十分に発揮されるという利点がある。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、中空糸型血液浄化膜とは中空の繊維状に成型された膜(中空糸膜)に血液を灌流し、血液中の老廃物、病因物質などを除去する浄化膜を意味する。また、血液内部灌流型とは、「中空糸膜の内腔に血液を灌流するタイプ」ということを意味する。中空糸型血液浄化膜の素材は、例えば、再生セルロース、CA、CTA、表面をポリエチレングリコールやビタミンEなどで修飾したセルロースなどのセルロース系材料、ポリアクリロニトリル、PSf、PES、ポリメチルメタクリレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、シリコーンなどの合成高分子が例示されるが、特に限定されない。本発明の中空糸型浄化膜の径や選択透過特性などは特に限定されないが、内径100〜1000μm、好ましくは120〜500μm、膜厚は5μm〜500μm、好ましくは10〜300μmが好ましく使用される。
本発明に用いられる表面改質剤は親水化剤、エンドトキシン吸着剤、抗酸化剤、抗菌剤、抗血栓剤など、特に制限されない。具体的には、親水化剤としては、例えば、PVP、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどが例示され、中でも、安全性や経済性よりPVPが好ましい。エンドトキシン吸着剤としては、例えば、ポリミキシンB、ヒスチジンなどの天然物、ポリエチレンイミン、キトサン、アミノアルキルアクリレート、アミノアルキルメタクリレート、アミノアルキルアクリルアミド、アミノアルキルメタクリルアミド、ポリアリルアミンなどのポリマー、テトラアルキルアンモニウム塩などの低分子化合物などが例示される。抗酸化剤としては、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、フラボノイド、セサモール、カテキン、ポリフェノール、クルクミン、グルタチオン、チオタウリン、ヒポタウリン、およびこれらの誘導体などが例示される。抗菌剤としては、例えば、銀ゼオライト、銀−リン酸ジルコニウム複合体、銀セラミクス、プロテイン銀、スルファジアジン銀、抗菌性ガラス、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩などが例示される。
抗血栓剤としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含む共重合体などの合成材料、ヘパリンやウロキナーゼなど天然物を有効成分として含んでなる抗血栓性組成物が例示されるが、本発明においては、ムコ多糖と第4級オニウムのイオン性複合体を含んでなる抗血栓性組成物が好ましく用いられる。これらの表面改質剤は単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
抗血栓性組成物に使用されるムコ多糖としては例えば、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン類、あるいはこれらの金属塩などが例示される。これらのうち、本発明に使用されるムコ多糖としては、ヘパリン類が好ましい。本発明においてヘパリン類とは、ヘパリン、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカリウム、ヘパリンリチウム、ヘパリンカルシウム、ヘパリン亜鉛塩、ヘパリンアンモニウム塩などのヘパリン塩、低分子ヘパリン、ヘパラミンなどのヘパリン誘導体を意味する。
本発明に用いられる第4級オニウムは4つの炭化水素基が結合したアンモニウムまたはホスホニウムが好ましい。第4級アンモニウムの窒素原子あるいは第4級ホスホニウムのリン原子に結合する4つの炭化水素基における炭素原子の総数は、ムコ多糖の血中溶出量制御、適度な親水性・疎水性バランス、ムコ多糖の活性発揮などの観点から、20〜38が好ましい。炭化水素基の炭素原子総数が小さいと血中への溶出が速く長期間の効果を維持することが困難となる。したがって、炭素原子の総数は22以上がより好ましく、24以上がさらに好ましい。また、炭素原子の総数が大きいと疎水性が高すぎて血液接触部における活性の発揮が不十分となる。したがって、炭素原子の総数は36以下がより好ましく、34以下がさらに好ましい。このような第4級オニウムとしては、例えば、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、トリブチルオクタデシルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルテトラデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム、ジメチルジドデシルホスホニウム、ジメチルジテトラデシルホスホニウム、ジメチルジヘキサデシルホスホニウム、ジメチルジオクタデシルホスホニウムなどが例示される。さらに、上記4つの炭化水素基のうち、少なくとも1つの炭化水素基が炭素数10以上のアルキル基であることが好ましく、少なくとも2つの炭化水素基が炭素数10以上のアルキル基であることがさらに好ましく、少なくとも2つの炭化水素基が炭素数10以上のアルキル基でありかつ2つがメチル基であることがよりさらに好ましい。このような第4級オニウムとしては、例えば、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルジドデシルホスホニウム、ジメチルジテトラデシルホスホニウム、ジメチルジヘキサデシルホスホニウム、ジメチルジオクタデシルホスホニウムなどが例示される。ムコ多糖および第4級オニウムはそれぞれ1種を使用しても、それぞれ2種以上を混合して使用してもよい。
ムコ多糖と第4級オニウムのイオン性複合体を調製する方法は特に制限されないが、例えば次のような方法が例示される。まずムコ多糖を適当な量の水に溶解して水溶液とする。次に第4級オニウムをメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールに溶解する。ムコ多糖水溶液には上記第4級オニウムの溶解に使用した低級アルコールを、第4級オニウム塩溶液には水を添加して最終的な溶媒の組成が同一になるように調整する。この際に、ムコ多糖もしくは第4級オニウムが析出する場合には、溶解可能な温度以上に溶液を加温して、完全に均一な溶液状態にする。
続いて、ムコ多糖の溶液中に第4級オニウム溶液を攪拌しながら滴下していく。ムコ多糖と第4級オニウムとはほぼ瞬間的に反応して沈殿物を生成する。この沈殿物を回収して十分に洗浄し、未反応のムコ多糖および第4級オニウムを除去する。得られた沈殿物は遠心分離および凍結乾燥によって溶媒を完全に除去して、ムコ多糖と第4級オニウムのイオン性複合体を得る。
上記の操作で得られたイオン性複合体は単独でコーティングするほか、他の添加成分との混合物としてコーティングしてもよい。この場合混合する添加成分としては、例えば、親水化剤、エンドトキシン吸着剤、抗酸化剤、抗菌剤などが例示される。ムコ多糖と第4級オニウムのイオン性複合体と、その他の添加成分を包含して本発明においては抗血栓性組成物と呼称する。
本発明に使用される膜孔保持剤は特に制限されないが、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリンなどが例示される。本発明において、中空糸型血液浄化膜に含まれる膜孔保持剤と、表面改質剤含有液体(以下コート液と呼称する)に含まれる膜孔保持剤は必ずしも同一である必要はないが、同一であることが好ましい。
表面改質剤のコーティングに使用する溶媒または分散媒は中空糸型血液浄化膜素材の膨潤、収縮、溶解による膜構造の破壊を招かないものが好ましい。最適な溶媒または分散媒は中空糸型血液浄化膜を構成する素材によっても異なるが、例えば、メタノール(以下MeOHと略記する)、エタノール(以下EtOHと略記する)、イソプロピルアルコール(以下IPAと略記する)、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルヘキサン(以下Hexと略記する)、シクロヘキサン(以下cHexと略記する)、テトラヒドロフラン(以下THFと略記する)、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、水など、あるいはこれらの混合物の中から、表面改質剤、膜孔保持剤の溶解性あるいは分散性、中空糸型血液浄化膜素材の膨潤、収縮、溶解など好ましくない影響への低さを考慮して選択すればよい。これらの中で、MeOH、EtOH、IPAなど低級アルコールとHex、cHexなどの炭化水素との混合物、MeOH、EtOH、IPAなど低級アルコールとTHF、1,4−ジオキサンなどの環状エーテルとの混合物が好ましく用いられる。
表面改質剤をコーティングする際に使用するコート液は、必ずしも均一、清澄な溶液である必要はなく、分散液、懸濁液であってもよいが、中空糸型血液浄化膜表面へのコーティングの均一性を考慮すると、均一溶液状態であることが好ましい。
コート液における表面改質剤の濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.005〜5重量/容量%である。これよりも表面改質剤の濃度が低いと、表面改質剤によって付与される特性の発揮が不十分な場合がある。したがって、表面改質剤の濃度は0.01重量/容量%以上がより好ましい。逆に、これよりも表面改質剤の濃度が高いと、中空糸型血液浄化膜の膜性能が保持されにくく、また多量の表面改質剤を必要とするため好ましくない。したがって、表面改質剤濃度は1重量/容量%以下がより好ましく、0.5重量/容量%以下がさらに好ましい。
コート液における膜孔保持剤の濃度は、特に制限されないが、好ましくは1〜90容量%である。これよりも膜孔保持剤の濃度が低いと、膜の微細構造が破壊されて選択透過性能が低下しやすくなる。膜孔保持剤の濃度は10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。これよりも膜孔保持剤の濃度が高いと、表面改質剤によって導入される特性が発揮されにくく、好ましくない。膜孔保持剤の濃度は80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
本発明においては、中空糸型血液浄化膜の被コート面側に表面改質剤含有液体および膜孔保持剤の双方を含有するコート液を導入後、被コート面全面がコート液と接触した状態でコート液を加圧することが必要である。微細構造により性能を発揮している中空糸型血液浄化膜表面へのコーティングは、従来から一般的に行われている単純な浸漬法、スプレー法、塗布法では、膜性能の低下を招いてしまい実用的でないことは前述のとおりである。さらに、中空糸型血液浄化膜に膜孔保持剤が含まれている場合、この膜孔保持剤が膜表面を覆っているため、上記の、一般的に行われている単純な方法では膜表面への表面改質剤導入が効率的に行われにくく、表面改質剤によって新たに導入される特性が発揮されにくい可能性がある。膜表面への表面開始剤導入を効率的に行うために、膜孔保持剤を完全に除去した上で上記のような単純な方法で表面改質剤を導入すると、膜孔保持剤除去によって膜の微細構造破壊が進行し、膜性能保持がより困難となってしまう。本発明の特徴のひとつであるコート液の加圧によって、被コート面の最表面近傍の微細構造部分に表面改質剤が到達しやすくなり、ムラがなく、強固で効率的な導入が可能になるものと考えられる。また、この際、本発明のもうひとつの特徴である膜孔保持剤の共存によって、この膜孔保持剤が緩衝剤のような効果を発揮し、膜の微細構造の破壊、膜性能の低下を抑制するものと考えられる。このような機構により、本発明によって表面改質剤の効率的な導入と、膜性能の保持という、二律背反の要求が本発明によって可能となった。
また、本発明においては、表面改質剤と膜孔保持剤の双方を含有するコート液を導入するのに先立ち、中空糸型血液浄化膜に含まれる膜孔保持剤の良溶媒(以下前洗浄液と略記する)を該被コート面側に通液(以下この操作を前洗浄と略記する)して、被コート表面の膜孔保持剤を除去するのが好ましい実施態様のひとつである。中空糸型血液浄化膜表面を覆っている膜孔保持剤を一旦除去し、引き続いてコート液を導入することで、膜表面への表面改質剤導入が効率的に行われる。この際、コート液に膜孔保持剤を含有させ、被コート面全面をコート液で覆って加圧することにより、除去された膜孔保持剤が補填され、膜構造の破壊、膜性能の低下が回避される。加圧操作は表面改質剤の効率的な導入と同時に、膜孔保持剤を膜孔内部に「押し込む」ことにより、膜構造、膜性能の保持にも寄与する。
中空糸型血液浄化膜の被コート面へのコート液の導入方法は特に制限されないが、例えば、図1において、コック4、コック6を開き、コック5を閉じた状態で、ローラーポンプ、ペリスタポンプ、シリンジポンプなどの流量制御が可能なポンプ7によってコート液をコート液貯留槽8から貯液チャンバー2を経て血液浄化器1に導入する方法が例示される。コート液を導入させる流量は流速として3〜150cm/min、好ましくは15〜100cm/min、より好ましくは20〜60cm/minである。これよりも流量が大きいと空気塞栓などが生じやすく、被コート面におけるコーティング層が不均一となってしまう可能性がある。従って、コート液の流量は流速として15cm/min以上がより好ましく、20cm/min以上がさらに好ましい。また、これよりも流量が小さいとコート液が被コート面全面と接触するまでにいたる時間が長くなり、効率的でない。コート液の流量は流速として150cm/min以下がより好ましく、100cm/min以下がさらに好ましい。
本発明においては、中空糸型血液浄化膜の被コート面側にコート液を導入後、被コート面全面がコート液と接触した状態でコート液を一定時間滞留し、この滞留時にコート液を加圧するのが特徴である。コート液導入後の加圧の手法については特に制限されないが、具体的には、例えば、図1においてコート液導入後、ポンプ7を停止させた状態で、コック4、コック6を閉じ、減圧弁/圧力計で圧力を制御された気体をコック5を開いて導入し、貯液チャンバー2に貯留されたコート液を介して血液浄化器1に充填された中空糸型血液浄化膜の被コート面への加圧を行う方法が例示される。コート液フィード後の滞留、加圧時間は好ましくは10〜600秒、より好ましくは30〜300秒である。滞留時間がこれよりも短いと被コート面へのコーティングが不十分となる可能性があり、これよりも長いと膜の微細構造の破壊などの問題が生じる可能性がある。貯液チャンバーへの加圧を行う気体としては、例えば、酸素、空気、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴンなどが例示されるが、酸素や、酸素を含む空気などはコート液に含まれる表面改質剤の酸化、劣化を促進してしまう可能性があるので、このような影響を与えることのない窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性気体が好ましく、コストの面から窒素がより好ましい。加圧を行う際の圧力は、0.01〜5気圧が好ましい。圧がこれよりも低いと表面改質剤の導入効率が低下することがある。加圧圧力は0.05気圧以上がより好ましく、0.1気圧以上がさらに好ましい。また、圧力がこれよりも高いと膜の微細構造破壊が進行しやすくなってしまうため好ましくない。加圧圧力は3気圧以下がより好ましく、1気圧以下がさらに好ましい。
被コート面とコート液の接触、加圧によってコーティングを行った後、コート液は除去する必要がある。コート液の導出、過剰なコート液の除去方法については特に制限されないが、不活性気体などによってコート液を導出させる方法などが例示される。例えば、図1においてコート液導入、加圧後、ポンプ7を停止させた状態で、コック6を閉じ、減圧弁/圧力計で圧力を制御された気体をコック5を開いて導入し、コック4を開いて血液浄化器1に導入されたコート液を導出させる方法が例示される。コート液を導出させる際の不活性気体圧力は、0.01〜5気圧が好ましい。圧力がこれよりも低いとコート液が過剰に残存することがある。したがって、0.05気圧以上がより好ましく、0.1気圧以上がさらに好ましい。圧力がこれよりも高いとコート液が過剰に除去されてしまい好ましくない。加圧圧力は3気圧以下がより好ましく、1気圧以下がさらに好ましい。
コーティングの操作は常温、常湿の環境で実施してもよいが、極端に高温、高湿の条件下ではコート液の吸湿、変質などを招く可能性があるので、好ましくは除湿して湿度を40%未満にし、温度を20〜30℃に調節した恒温・恒湿ブース内で実施するのが好ましい。
被コート面をコート液と接触し、コート液を除去した後はコート液を乾燥させる必要がある。乾燥にあたって高温の条件下で溶媒を除去する方法は、コート液に含まれる表面改質剤の変質や、膜の微細構造の破壊などの問題が生じる可能性があり、好ましくない。また、酸素や水分を多く含む気体によるブロー乾燥では、表面改質剤や膜素材の酸化促進、通風時の結露などが発生してしまう可能性があり、好ましくない。具体的には、例えば、コート液導出に使用した不活性気体の送入をそのまま継続して乾燥を行うのが効率的で好ましい。この不活性気体ブローによる乾燥時、周囲の環境が高湿であると、溶媒の蒸発に伴う温度低下によって結露が生じる可能性があるので、好ましくは除湿して湿度を40%未満にし、温度を20〜30℃に調節した恒温・恒湿ブース内で実施するのが好ましい。この際、ブース内を窒素で置換し、不活性かつ低湿度環境下で乾燥を行うことも好ましい。乾燥時の不活性気体圧力は、0.01〜5気圧が好ましい。圧力がこれよりも低いとコート液の乾燥が効率的に行われないことがある。したがって、0.05気圧以上がより好ましく、0.1気圧以上がさらに好ましい。圧力がこれよりも高いとコート液が過剰に除去されてしまうことがある。加圧圧力は3気圧以下がより好ましく、1気圧以下がさらに好ましい。上記の操作によって導入される表面改質剤の被覆量は、例えば、ヘパリンと第4級オニウムのイオン性複合体を使用した場合には、ヘパリンの活性として1〜50mU/cm2、好ましくは5〜40mU/cm2である。被覆量がこれよりも少ないと被覆にムラが生じやすく、ヘパリンによる抗血栓性の効果が減少する。また、これよりも多いと表面改質剤の導入量が過剰となり、血液浄化膜としての性能が低下する可能性がある。
中空糸型血液浄化膜の被コート面への表面改質剤の導入効率を向上させるには、表面改質剤と膜孔保持剤の双方を含有するコート液を導入するのに先立ち、中空糸型血液浄化膜を前洗浄液によって前洗浄し、被コート表面の膜孔保持剤を一旦除去する方法を適用するのが好ましい。この際に使用する前洗浄液は特に制限されないが、表面改質剤と膜孔保持剤の双方を含有するコート液に利用される溶媒であることが好ましい。具体的には、例えば、MeOH、EtOH、IPAなど低級アルコールなどが例示される。前洗浄後、前洗浄液を除去した後に改めてコート液を導入してもよいが、この際、前洗浄液を完全に除去、乾燥させてしまうと、被コート面は膜孔保持剤が除去された状態にあるため、膜の微細構造が破壊されて、膜性能が低下してしまう可能性がある。そこで、前洗浄を完全に除去、乾燥せずに、コート液を導入するのが好ましい。前洗浄液を除去せず、コート液を導入し、前洗浄液を押し出して、前洗浄液の除去とコート液の導入を同時に行う方法も好ましく適用され得る。
具体的な中空糸型血液浄化膜の被コート面の前洗浄方法としては、例えば、図2において、コック4を開き、コック5を閉じ、コック6をローラーポンプ、ペリスタポンプ、シリンジポンプなどの流量制御が可能なポンプ7と通じる方向に開いた状態で、ポンプ7によって前洗浄液を前洗浄液貯留槽9から貯液チャンバー2を経て血液浄化器1に導入して灌流する方法が例示される。前洗浄終了後、ポンプ7を停止させ、血液浄化器1、貯液チャンバー2、および回路内の前洗浄液を残したまま、コック6をローラーポンプ、ペリスタポンプ、シリンジポンプなどの流量制御が可能なポンプ8と通じる方向に開いて、コート液をコート液をコート液貯留槽10から貯液チャンバー2を経て血液浄化器1に導入してもよい。また、前洗浄終了後、ポンプ7を停止させ、コック6を閉じ、減圧弁/圧力計で圧力を制御された気体をコック5を開いて導入し、コック4を開いて血液浄化器1に導入された前洗浄液を導出させた後、改めてコック5を閉じ、コック4を開き、コック6をポンプ8に通じる方向に開いて、コート液をコート液貯留槽10から貯液チャンバー2を経て血液浄化器1に導入してもよい。後者の方法で前洗浄後のコート液導入を行う場合、前洗浄液を完全に除去、乾燥させてしまうと、被コート面は膜孔保持剤が除去された状態にあるため、膜の微細構造が破壊されて、膜性能が低下してしまう可能性がある。そこで、前洗浄を完全に除去、乾燥せずに、コート液を導入するのが好ましい。
前洗浄液を導入させる流量は流速として3〜150cm/min、好ましくは10〜100cm/min、より好ましくは15〜50cm/minである。これよりも流量が大きいと空気塞栓などが生じやすく、被コート面における前洗浄が不均一となってしまう可能性がある。従って、コート液の流量は流速として10cm/min以上がより好ましく、15cm/min以上がさらに好ましい。また、これよりも流量が小さいと前洗浄液が被コート面全面と接触して効果的な洗浄が完了するまでの時間が長くなり、効率的でない。コート液の流量は流速として100cm/min以下がより好ましく、50cm/min以下がさらに好ましい。前洗浄液の灌流時間は30〜600秒、好ましくは60〜300秒、より好ましくは90〜240秒である。これよりも灌流時間が短いと被コート面における前洗浄が不十分となり、これよりも長いと膜の構造が破壊されて、膜性能が低下してしまう可能性があり、好ましくない。
前洗浄の操作は常温、常湿の環境で実施してもよいが、極端に高温、高湿の条件下ではコート液の吸湿、変質などを招く可能性があるので、好ましくは除湿して湿度を40%未満にし、温度を20〜30℃に調節した恒温・恒湿ブース内で実施するのが好ましい。
なお、例えば、血液内部灌流型の血漿分離膜の場合、血液と接触するのは内面だが、得られた血漿は外面となり、抗凝固剤の添加量が少ない場合には、外面で凝固が進行してしまう可能性もある。従って、本発明では中空糸型血液浄化膜の血液非接触面側を含め、両面にコーティングすることも制限されない。両面コーティングを実施する場合、例えば、第一に中空糸型血液浄化膜の内面を被コート面、外面を非コート面として上記のコーティング操作を行った後、引き続いて中空糸型血液浄化膜の外面を被コート面、内面を非コート面として上記のコーティング操作を実施する方法が例示される。
上記のようなコーティング操作を行う場合、操作の都合上、中空糸型血液浄化膜はモジュールに成型されていることが好ましい。適当本数の中空糸型血液浄化膜を束ね、内径30〜35mmの円筒状のモジュールケース(両末端が開口し、両末端部近傍の側面にそれぞれポートのついたもの)に装填し、両末端をポリウレタン樹脂などのポッティング材で封止し、ポッティング材もろとも端部を切断して中空糸型血液浄化膜の両末端を開口させたモジュールを利用することができる。以下、このように成型されたモジュールを単にモジュールと呼称する。また、血液透析器では通常、中空糸の内部に血液を灌流するので、以下便宜的に円筒状モジュールの両末端を血液流入口、流出口、側面のポートを透析液流入口、流出口と呼称し、さらに、血液流入口から血液流出口に通じる部分を血液側、透析液流入口から透析液流出口に通じる部分を透析液側と呼称する。
本発明において、中空糸型血液浄化膜は、血液あるいは血液成分と接触するものであれば特に制限されないが、具体的に、好ましくは、血液透析膜および/または血液濾過膜および/または血液透析濾過膜および/または血漿分離膜である。これ以外の用途に使用される膜であっても、必要に応じて本法を適用することができる。
上記のコーティング方法によって、表面改質剤のコートされた中空糸型血液浄化膜、および/または表面改質剤コート中空糸型血液浄化膜が充填されてなる表面改質剤コート中空糸型血液浄化器を得ることができる。
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.透水率の測定(UFRと略記する)
モジュールの血液流出口に接続した回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子で封じて流れを止め、モジュールの血液流入口から入った純水を全濾過するようにした。37℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、37℃恒温槽で保温したモジュールへ純水を送り、透析液流出口から流出した濾液量をメスシリンダーで測定した。膜間圧力差(TMP)は
TMP=(Pi+Po)/2
とした。ここで、Piはモジュールの血液流入口側圧力、Poはモジュールの血液流出口側圧力である。TMPを4点変化させ濾過流量を測定し、それらの関係の傾きから透水性(mL/h/mmHg)を算出した。このときTMPと濾過流量の相関係数は0.999以上でなくてはならないとした。また回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定した。中空糸膜の透水性は膜面積と透析器の透水性から算出した。
UFR=UFR(D)/A
ここでUFRは中空糸膜の透水性(mL/m2/h/mmHg)、UFR(D)はモジュールの透水性(mL/h/mmHg)、Aはモジュールの膜面積(m2)である。
2.膜面積の計算
モジュールの膜面積は中空糸膜の血液接触側の径を基準として求めた。血液透析膜の場合中空糸の内側が血液接触面となるので、以下の式によってモジュールの膜面積が計算できる。
A=n×π×d×L
ここで、nはモジュール内の中空糸膜の本数、πは円周率、dは中空糸膜の内径(m)、Lはモジュール内の中空糸膜の有効長(m)である。
3.マイクロモジュールの作製
約12cmに切りそろえた中空糸型血液浄化膜を10本束ね、中空糸型血液浄化膜の露出部分が10cmになるよう両末端をシリコーンチューブに差しこみ、両末端が開口した状態でシリコーン接着剤により固定し、マイクロモジュールを作製した。下記5.中空糸型血液浄化膜内面の抗凝血性に使用するマイクロモジュールは、さらに、中空糸型血液浄化膜露出部分をポリウレタン樹脂のポッティング材で包埋し、膜壁からの物質の出入りを遮断した。
4.マイクロモジュール内面の溶出
ペリスタポンプにチューブをセットし、上記3.で得たマイクロモジュールの片末端のシリコーンチューブに接続した。塩化ナトリウム8.00g、塩化カリウム0.20g、リン酸一水素ナトリウム無水物1.15g、リン酸二水素カリウム無水物0.20gを蒸留水に溶解して全量で1000mLとしたリン酸緩衝液(以下PBSと略記する)を10mL/minの流量でマイクロモジュール内面に流通させて8時間にわたり溶出を行った。この際、操作はすべて37℃に温度調節されたブース内で行い、マイクロモジュールから出てきたPBSはそのまま廃棄した。PBS溶出操作の完了したマイクロモジュールは、内部に窒素を送り込んでPBSを除去した。
5.中空糸型血液浄化膜内面の抗凝血性(AC試験と略記する)
中空糸型血液浄化膜露出部分をポリウレタン樹脂のポッティング材で包埋したマイクロモジュールを使用した。ヒト新鮮血を注射器を用いマイクロモジュール内腔に充填し両端を鉗子で封じた。20min経過後、鉗子をはずし、マイクロモジュール片端から注射器により生理食塩水を送入して封入血液を生理食塩水を満たしたシャーレ内に押し出した。封入血の状態を下記のようにランク付けした。
ランク1:血栓がまったく見られない
ランク2:微小な血栓が数個見られる
ランク3:10個未満の血栓が見られる
ランク4:10個以上の血栓が見られる
ランク5:多量の血栓が見られる または 封入血が凝固している
6.持続血液濾過模擬試験(CHF試験と略記する)
測定は膜面積1.5m2のモジュールを使用して行った。クエン酸加牛血(ACD牛血)に牛血漿を加えて希釈し、ヘマトクリットを30%に調整した。このACD牛血1Lをプールし、モジュールの血液側に100mL/minの流量で灌流しながら、透析液側から10mL/minで濾過を行った。このとき、濾液は廃棄し、同流量で補液として扶桑薬品工業社製キンダリー液2号を純水で35倍希釈して得た人工腎臓用透析液(以下単に透析液と呼称する)をプール血に添加した。溶血を防止する目的でモジュール内、血液回路内はあらかじめ生理食塩水で置換しておいた。血液の灌流・濾過・補液添加を行いながら、血液のモジュール流入側の圧力を連続して観察した。血液濾過によって血液中に添加されたクエン酸は除去され、同時に除去される凝固因子のカルシウムは透析液から補充されるので、灌流血液は凝固傾向に向かう。モジュール内で凝血が進行することによってモジュール流入側の圧力は上昇してくるので、圧力測定によってモジュール内での凝血をモニターすることができる。灌流開始からモジュール側流入圧が500mmHgを超えるまでの灌流・濾過・補液添加時間(min)で評価した。
7.3L除水時のアルブミンリーク量(3L−Albと略記する)
測定は膜面積1.5m2のモジュールを使用して行った。ACD牛血に牛血漿を加えて希釈し、ヘマトクリットを30%に調整した。このACD牛血5Lをプールし、37℃に保温してモジュールの血液側に200mL/minの流量で灌流しながら、透析液側から15mL/minで濾過を行った。このとき、濾液はプール血に戻し循環系とした。溶血を防止する目的でモジュール内、血液回路内はあらかじめ生理食塩水で置換しておいた。灌流開始後5分後に所定の濾過流量が得られていることを確認し、灌流開始30分後から15分おきに濾液を約1mLサンプリングした。この濾液を試験液として、和光純薬工業社製A/G B−テストワコーを使用しブロムクレゾールグリーン法により、濾液中のアルブミン濃度を算出した。このアルブミン濃度を使用し、以下の方法によって3L除水時のアルブミンリーク量を算出した。灌流開始30分、45分、60分、75分、90分、105分、120分のアルブミン濃度 (mg/dl)(TALと略記する)を縦軸に、ln(灌流時間(min))(lnTと略記する)を横軸にとり、表計算ソフトで一次近似によりフィッティングカーブを描き、その関係式TAL=a×lnT+bにおける定数aおよびbを求めた。この式TAL=a×lnT+bについてT=0からT=240で積分し、これを240(min)で除することにより平均のアルブミンリーク濃度(mg/dL)を算出した。この平均アルブミンリーク濃度に30(dL)を乗じて、3L除水時のアルブミンリーク量(3L−Alb)を得た。
8.アルブミンの篩係数(SCalbと略記する)
測定は膜面積1.5m2のモジュールを使用して行った。牛血清アルブミンをPBSに10g/Lの濃度となるよう溶解してアルブミン溶液を調製した。このアルブミン溶液3Lをプールし、37℃に保温してモジュールの血液側に200mL/minの流量で灌流しながら、透析液側から15mL/minで濾過を行った。このとき、濾液はプールアルブミン溶液に戻し循環系とした。灌流開始後5分後に所定の濾過流量が得られていることを確認し、灌流開始15分後に濾液、モジュールの血液側流入液、モジュール血液側流出液からそれぞれ約1mLサンプリングした。これらの液を試験液として、和光純薬工業社製A/G B−テストワコーを使用しブロムクレゾールグリーン法により、それぞれの液中のアルブミン濃度を算出した。その濃度から、次式によりアルブミンの篩係数を求めた。
SCalb=2×Cfa/(Cia+Coa)
ここでCfaは濾液中のアルブミン濃度、Ciaはモジュール流入液のアルブミン濃度、Coaはモジュール流出液のアルブミン濃度をそれぞれ示す。
9.ミオグロビンのクリアランス(CLmyoと略記する)
測定は膜面積1.5m2のモジュールを使用して行った。シグマアルドリッチ社製のミオグロビンを透析液に0.1g/Lの濃度となるよう溶解してミオグロビン溶液を調製した。このミオグロビン溶液をモジュールの血液側に流量200±1mL/minで灌流し、透析液側には透析液を500±10mL/minの流量で灌流した。灌流開始3min後に、モジュールの血液流入口側、血液流出口側からそれぞれミオグロビン溶液をサンプリングした。これらのサンプリング液の408nmにおける吸光度から流入側のミオグロビン濃度(Cim)、流出側のミオグロビン濃度(Com)を測定した。これらの値を使用し、次式からミオグロビンのクリアランス(CLmyo)を算出した。
CLmyo(mL/min)=200×Cim/Com
10.IgGの透過率(PR(IgG)と略記する)
上記抗凝血性の評価に使用したマイクロモジュールを用いて評価を行った。シグマアルドリッチ社製のIgGをPBSで1000ppmの濃度になるよう溶解してIgG溶液を調製した。マイクロモジュールの一方の端部を鉗子で封じ、もう一方の端部からIgG溶液5mLを注射器を用いマイクロモジュール内腔に導入し、全濾過を行った。得られた濾液をサンプル液とし、マクロモジュールに導入したIgG溶液のIgG濃度をC1、濾液のIgG濃度をC2とし、次式からIgGの透過率(PR(IgG))を算出した。なお、IgGの濃度は和光純薬工業社製マイクロTP−テストワコーを使用しピロガロールレッド・モリブデン錯体発色法により測定した。
PR(IgG)=100×C2/C1
(表面改質剤製造例1)
ジメチルジドデシルアンモニウムクロリド6gおよびジメチルジテトラデシルアンモニウムクロリド19gをMeOH30g中に攪拌しながら添加して溶解した。完全に溶解したことを確認した後、水70gを加えた。次にヘパリンナトリウム塩10gを水35gに溶解し、続いてMeOH15gを加えた。これら溶液を調製する際に溶質が一部析出する場合には、適宜加温することで均一の溶液を得ることができる。ヘパリンナトリウム塩溶液を攪拌しながら、アンモニウム塩溶液を滴下した。両者混合後、沈殿として析出した生成物を回収し、洗浄を十分に行って未反応のヘパリンおよびアンモニウム塩を除去した。さらに生成物を遠心分離して水分を除き、最後に凍結乾燥して白色のヘパリン−アンモニウム複合体(有機溶媒可溶化ムコ多糖A)を得た。
(表面改質剤製造例2)
ジメチルジヘキサデシルアンモニウムクロリド29gをMeOH36g中に攪拌しながら添加して溶解した。完全に溶解したことを確認した後、水64gを加えた。次にヘパリンナトリウム塩10gを水32gに溶解し、続いてMeOH18gを加えた。これら溶液を調製する際に溶質が一部析出する場合には、適宜加温することで均一の溶液を得ることができる。ヘパリンナトリウム塩溶液を攪拌しながら、アンモニウム塩溶液を滴下した。両者混合後、沈殿として析出した生成物を回収し、洗浄を十分に行って未反応のヘパリンおよびアンモニウム塩を除去した。さらに生成物を遠心分離して水分を除き、最後に凍結乾燥して白色のヘパリン−アンモニウム複合体(有機溶媒可溶化ムコ多糖B)を得た。
(表面改質剤製造例3)
ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド32gをMeOH38g中に攪拌しながら添加して溶解した。完全に溶解したことを確認した後、水62gを加えた。次にヘパリンナトリウム塩10gを水31gに溶解し、続いてMeOH19gを加えた。これら溶液を調製する際に溶質が一部析出する場合には、適宜加温することで均一の溶液を得ることができる。ヘパリンナトリウム塩溶液を攪拌しながら、アンモニウム塩溶液を滴下した。両者混合後、沈殿として析出した生成物を回収し、洗浄を十分に行って未反応のヘパリンおよびアンモニウム塩を除去した。さらに生成物を遠心分離して水分を除き、最後に凍結乾燥して白色のヘパリン−アンモニウム複合体(有機溶媒可溶化ムコ多糖C)を得た。
(表面改質剤製造例4)
トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウムクロリド25gをMeOH36g中に攪拌しながら添加して溶解した。完全に溶解したことを確認した後、水64gを加えた。次にヘパリンナトリウム塩10gを水32gに溶解し、続いてMeOH18gを加えた。これら溶液を調製する際に溶質が一部析出する場合には、適宜加温することで均一の溶液を得ることができる。ヘパリンナトリウム塩溶液を攪拌しながら、ホスホニウム塩溶液を滴下した。両者混合後、沈殿として析出した生成物を回収し、洗浄を十分に行って未反応のヘパリンおよびホスホニウム塩を除去した。さらに生成物を遠心分離して水分を除き、最後に凍結乾燥して白色のヘパリン−ホスホニウム複合体(有機溶媒可溶化ムコ多糖D)を得た。
(表面改質剤製造例5)
ジメチルジヘキサデシルアンモニウムクロリド29gをMeOH36g中に攪拌しながら添加して溶解した。完全に溶解したことを確認した後、水64gを加えた。次にデキストラン硫酸ナトリウム塩10gを水32gに溶解し、続いてMeOH18gを加えた。これら溶液を調製する際に溶質が一部析出する場合には、適宜加温することで均一の溶液を得ることができる。デキストラン硫酸ナトリウム塩溶液を攪拌しながら、アンモニウム塩溶液を滴下した。両者混合後、沈殿として析出した生成物を回収し、洗浄を十分に行って未反応のデキストラン硫酸およびアンモニウム塩を除去した。さらに生成物を遠心分離して水分を除き、最後に凍結乾燥して白色のデキストラン硫酸−アンモニウム複合体(有機溶媒可溶化ムコ多糖E)を得た。
(製膜例1)
CTA(ダイセル化学社製)4.00kg、N−メチル−2−ピロリドン(三菱化学社製)10.40kg、トリエチレングリコール(三井化学社製)5.60kgを150℃で均一に溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。製膜溶液を15μm、15μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、チューブインオリフィスノズルから、中空形成剤として紡糸原液に対し非凝固性の流動パラフィン(松本油脂製薬社製)とともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された50mmの乾式部を通過後、30℃の水中で凝固させた。凝固浴から引き揚げられた中空糸膜は水洗後、78℃、65重量%のグリセリン水溶液中を通過させ、ドライヤーで乾燥しボビンに巻き上げて中空糸型血液浄化膜Aを得た。得られた中空糸型血液浄化膜Aの内径は198.8μm、膜厚は15.0μmであった。得られた中空糸型血液浄化膜Aを巻き返して中空糸11000本のバンドルにし、モジュールケースに装填後端部をウレタン樹脂で接着、樹脂を切り出して中空糸膜端部を開口させモジュールA(以下MOD−Aと略記する)を組み立てた。MOD−Aの有効長は22cm、有効膜面積は1.5m2であった。中空糸型血液浄化膜Aの膜特性は表1に示した。また、MOD−AでCHF試験を実施した。さらに、中空糸型血液浄化膜Aでマイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。結果は表2に示した。
(製膜例2)
PES(住化ケムテックス社製、スミカエクセル(R)4800P)8.00kg、PVP(BASF社製コリドン(R)K−90)0.70kg、N−メチル−2−ピロリドン(三菱化学社製)6.78kg、トリエチレングリコール(三井化学社製)4.52kgを140℃で均一に溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。製膜溶液を15μm、15μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、チューブインオリフィスノズルから、中空形成剤として紡糸原液に対し非凝固性の流動パラフィン(松本油脂製薬社製)とともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断された20mmの乾式部を通過後、5℃の凝固浴に導いた。凝固液には、4.00kgのN−メチル−2−ピロリドンと6.00kgの水を混合した溶液を使用した。凝固浴から引き揚げられた中空糸膜は水洗後、78℃、55重量%のグリセリン水溶液中を通過させ、ドライヤーで乾燥しボビンに巻き上げて中空糸型血液浄化膜Bを得た。得られた中空糸型血液浄化膜Bの内径は197.5μm、膜厚は14.3μmであった。得られた中空糸型血液浄化膜Bを巻き返して中空糸11000本のバンドルにし、モジュールケースに装填後端部をウレタン樹脂で接着、樹脂を切り出して中空糸膜端部を開口させモジュールB(以下MOD−Bと略記する)を組み立てた。MOD−Bの有効長は22cm、有効膜面積は1.5m2であった。中空糸型血液浄化膜Bの膜特性は表1に示した。また、MOD−BでCHF試験を実施した。さらに、中空糸型血液浄化膜Bでマイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。結果は表2に示した。
(製膜例3)
CTA(ダイセル化学社製)5.00kg、N−メチル−2−ピロリドン(三菱化学社製)9.75kg、ポリエチレングリコール400(第一工業製薬社製)5.25kgを120℃で均一に溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。製膜溶液を15μm、15μmの2段の焼結フィルターに順に通した後、チューブインオリフィスノズルから、中空形成剤とともに同時に吐出し、乾式部を通過させて75℃の凝固浴に導いた。中空形成剤には、4.90kgのN−メチル−2−ピロリドン、2.10kgのポリエチレングリコール400、3.00kgの水を混合した溶液を使用した。また、凝固液には、4.50kgのN−メチル−2−ピロリドン、2.00kgのポリエチレングリコール400、3.50kgの水を混合した溶液を使用した。凝固浴から引き揚げられた中空糸膜は水洗後巻き上げ、ポリエチレン製のフィルムを巻きつけた後切断しバンドルとした。このバンドルを50℃の90重量%のグリセリン水溶液に浸漬して処理した後、引き上げて遠心分離で過剰なグリセリン水溶液を除去し、乾燥して中空糸型血液浄化膜Cのバンドルを得た。得られた中空糸型血液浄化膜Cの内径は288.2μm、膜厚は49.8μmであった。得られた中空糸型血液浄化膜C1700本のバンドルをモジュールケースに装填し、端部をウレタン樹脂で接着し、樹脂を切り出して中空糸膜端部を開口させてモジュールC(以下MOD−Cと略記する)を組み立てた。MOD−Cの有効長は16cm、有効膜面積は0.25m2であった。中空糸型血液浄化膜Cの膜特性は表1に示した。また、中空糸型血液浄化膜Cでマイクロモジュールを作製してPR(IgG)を評価した。結果は表1に示した。さらに、このマイクロモジュールを使用してAC試験を実施した。結果は表2に示した。
(コート液調製例1)
表面改質剤製造例1で得た有機溶媒可溶化ムコ多糖A1.00gを秤取し、EtOH420mLとHex180mLの混合溶媒に溶解した。この溶液にグリセリン400mLを加えて混合し、コート液A1を得た。
(コート液調製例2)
表面改質剤製造例1で得た有機溶媒可溶化ムコ多糖A1.00gを秤取し、EtOH475mLとTHF25mLの混合溶媒に溶解した。この溶液にグリセリン500mLを加えて混合し、コート液A2を得た。
(コート液調製例3)
表面改質剤製造例2で得た有機溶媒可溶化ムコ多糖B1.00gを秤取し、EtOH375mLとTHF125mLの混合溶媒に溶解した。この溶液にグリセリン500mLを加えて混合し、コート液Bを得た。
(コート液調製例4)
表面改質剤製造例3で得た有機溶媒可溶化ムコ多糖C1.00gを秤取し、EtOH350mLとTHF150mLの混合溶媒に溶解した。この溶液にグリセリン500mLを加えて混合し、コート液Cを得た。
(コート液調製例5)
表面改質剤製造例4で得た有機溶媒可溶化ムコ多糖D1.00gを秤取し、EtOH375mLとTHF125mLの混合溶媒に溶解した。この溶液にグリセリン500mLを加えて混合し、コート液Dを得た。
(コート液調製例6)
表面改質剤製造例5で得た有機溶媒可溶化ムコ多糖E1.00gを秤取し、EtOH375mLとTHF125mLの混合溶媒に溶解した。この溶液にグリセリン500mLを加えて混合し、コート液Eを得た。
(コート液調製例7)
表面改質剤製造例1で得た有機溶媒可溶化ムコ多糖A1.00gを秤取し、EtOH700mLとHex300mLの混合溶媒に溶解し、コート液A1'を得た。
(コート液調製例8)
表面改質剤製造例2で得た有機溶媒可溶化ムコ多糖B1.00gを秤取し、EtOH750mLとTHF250mLの混合溶媒に溶解し、コート液B'を得た。
(コート液調製例9)
表面改質剤製造例5で得た有機溶媒可溶化ムコ多糖E1.00gを秤取し、EtOH750mLとTHF250mLの混合溶媒に溶解し、コート液E'を得た。
(実施例1)
製膜例1で得たMOD−Aを、血液流入口を下方、透析液流入口を上方として直立させて固定、透析液流入口、透析液流出口をシリコーンキャップで封止した。この状態でモジュールの血液流入側からEtOHを75mL/minの流量で、2min流通して内面の前洗浄を行った。モジュール内にEtOHを残したまま、モジュールの血液流入側から、コート液調製例1で得たコート液A1を150mL/minの流量で導入した。コート液導入流路には貯液チャンバーを設け、このチャンバーに窒素によって加圧を行い、貯液チャンバーに貯留されたコート液を介して被コート面への加圧を行えるように回路を組んだ。コート液導入開始から約2〜3min送液を継続してモジュールの血液側にコート液を満たした後、モジュールの血液流出口を封じ、貯液チャンバーに窒素によって0.15気圧の圧力で加圧を行い、貯液チャンバーに貯留されたコート液を介して被コート面への加圧を2minにわたって行った。続いて、加圧を中止し、血液流出口の封止を解除して、モジュールの血液流出口から0.15気圧の加圧窒素を送り込んでモジュールの血液側に導入されたコート液を廃液した。コート液の排除後、モジュールの透析液流入口に装着したシリコーンキャップを外し、モジュールの血液側、透析液側双方に0.15気圧の加圧窒素を5minにわたって送り込み、被コート層の乾燥を行った。以上の操作によってコートモジュールAwGPA1(以下CMOD−AwGPA1と略記する)を得た。CMOD−AwGPA1のUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoを測定し、未コートのMOD−Aに対するそれぞれの値についての膜性能保持率を次式により算出した。結果は表2に示した。
(膜性能保持率)
=100×(未コートモジュール測定値)/(コートモジュール測定値)(%)
また、上記の操作で得たCMOD−AwGPA1を使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwGPA1を解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例2)
コート液調製例2で得たコート液A2を使用した以外は実施例1と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwGPA2(以下CMOD−AwGPA2と略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwGPA2のUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwGPA2を使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwGPA2を解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例3)
コート液調製例3で得たコート液Bを使用した以外は実施例1と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwGPB(以下CMOD−AwGPBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwGPBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwGPBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwGPBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例4)
コート液調製例4で得たコート液Cを使用した以外は実施例1と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwGPC(以下CMOD−AwGPCと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwGPCのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwGPCを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwGPCを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例5)
コート液調製例5で得たコート液Dを使用した以外は実施例1と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwGPD(以下CMOD−AwGPDと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwGPDのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwGPDを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwGPDを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例6)
コート液調製例6で得たコート液Eを使用した以外は実施例1と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwGPE(以下CMOD−AwGPEと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwGPEのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwGPEを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwGPEを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例7)
コート液導入に先立つEtOHでの内面前洗浄を行わない以外は実施例1と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAnwGPA1(以下CMOD−AnwGPA1と略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AnwGPA1のUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AnwGPA1を使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AnwGPA1を解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例8)
コート液調製例3で得たコート液Bを使用した以外は実施例7と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAnwGPB(以下CMOD−AnwGPBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AnwGPBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AnwGPBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AnwGPBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例9)
製膜例2で得たMOD−Bを使用した以外は実施例1と同様にコート液A1によるコーティングを行い、コートモジュールBwGPA1(以下CMOD−BwGPA1と略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−BwGPA1のUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−BwGPA1を使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−BwGPA1を解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例10)
製膜例2で得たMOD−Bを使用した以外は実施例2と同様にコート液A2によるコーティングを行い、コートモジュールBwGPA2(以下CMOD−BwGPA2と略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−BwGPA2のUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−BwGPA2を使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−BwGPA2を解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例11)
製膜例2で得たMOD−Bを使用した以外は実施例3と同様にコート液Bによるコーティングを行い、コートモジュールBwGPB(以下CMOD−BwGPBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−BwGPBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−BwGPBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−BwGPBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例12)
製膜例2で得たMOD−Bを使用した以外は実施例6と同様にコート液Eによるコーティングを行い、コートモジュールBwGPE(以下CMOD−BwGPEと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−BwGPEのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−BwGPEを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−BwGPEを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例13)
製膜例2で得たMOD−Bを使用した以外は実施例8と同様に前洗浄なしでコート液Bによるコーティングを行い、コートモジュールBnwGPB(以下CMOD−BnwGPBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−BnwGPBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−BnwGPBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−BnwGPBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例14)
製膜例3で得たMOD−Cを使用した以外は実施例1と同様にコート液A1によるコーティングを行い、コートモジュールCwGPA1(以下CMOD−CwGPA1と略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−CwGPA1のUFRの保持率を求めた。また、CMOD−CwGPA1を解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してPR(IgG)についての膜性能保持率を求めた。さらに、このマイクロモジュールを使用してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例15)
製膜例2で得たMOD−Cを使用した以外は実施例2と同様にコート液A2によるコーティングを行い、コートモジュールCwGPA2(以下CMOD−CwGPA2と略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−CwGPA2のUFRの保持率を求めた。また、CMOD−CwGPA2を解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してPR(IgG)についての膜性能保持率を求めた。さらに、このマイクロモジュールを使用してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例16)
製膜例2で得たMOD−Cを使用した以外は実施例3と同様にコート液Bによるコーティングを行い、コートモジュールCwGPB(以下CMOD−CwGPBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−CwGPBのUFRの保持率を求めた。また、CMOD−CwGPBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してPR(IgG)についての膜性能保持率を求めた。さらに、このマイクロモジュールを使用してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例17)
製膜例2で得たMOD−Cを使用した以外は実施例6と同様にコート液Eによるコーティングを行い、コートモジュールCwGPE(以下CMOD−CwGPEと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−CwGPEのUFRの保持率を求めた。また、CMOD−CwGPEを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してPR(IgG)についての膜性能保持率を求めた。さらに、このマイクロモジュールを使用してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(実施例18)
製膜例2で得たMOD−Cを使用した以外は実施例8と同様に前洗浄なしでコート液Bによるコーティングを行い、コートモジュールCnwGPB(以下CMOD−CBnwGPBと略記する)を得た実施例1と同様に、CMOD−CnwGPBのUFRの保持率を求めた。また、CMOD−CnwGPBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してPR(IgG)についての膜性能保持率を求めた。さらに、このマイクロモジュールを使用してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表2に示した。
(比較例1)
コート液調製例7で得たグリセリン非含有のコート液A1'を使用した以外は実施例1と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwPA1(以下CMOD−AwPA1と略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwPA1のUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwPA1を使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwPA1を解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例2)
コート液調製例8で得たグリセリン非含有のコート液B'を使用した以外は実施例1と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwPB(以下CMOD−AwPBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwPBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwPBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwPBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例3)
コート液調製例9で得たグリセリン非含有のコート液E'を使用した以外は実施例1と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwPE(以下CMOD−AwPEと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwPEのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwPEを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwPEを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例4)
コート液導入後、コート液を介しての被コート面への加圧を行わない以外は実施例1と同様にMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwGA1(以下CMOD−AwGA1と略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwGA1のUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwGA1を使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwGA1を解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例5)
コート液調製例3で得たコート液Bを使用した以外は比較例4と同様に被コート面への加圧なしでMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwGB(以下CMOD−AwGBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwGBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwGBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwGBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例6)
コート液調製例6で得たコート液Eを使用した以外は比較例4と同様に被コート面への加圧なしでMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwGE(以下CMOD−AwGEと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwGEのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwGEを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwGEを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例7)
コート液調製例8で得たグリセリン非含有のコート液B'を使用した以外は比較例4と同様に被コート面への加圧なしでMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAwB(以下CMOD−AwBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AwBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AwBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AwBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例8)
コート液調製例8で得たグリセリン非含有のコート液B'を使用した以外は実施例7と同様に前洗浄なしでMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAnwPB(以下CMOD−AnwPBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AnwPBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AnwPBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AnwPBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例9)
コート液導入後、コート液を介しての被コート面への加圧を行わない以外は実施例8と同様に前洗浄なしでコート液BによるMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAnwGB(以下CMOD−AnwGBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AnwGBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AnwGBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AnwGBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例10)
コート液調製例8で得たグリセリン非含有のコート液B'を使用した以外は比較例9と同様に前洗浄なし、被コート面への加圧なしでコート液BによるMOD−Aへのコーティングを行い、コートモジュールAnwB(以下CMOD−AnwBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−AnwBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−AnwBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−AnwBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例11)
製膜例2で得たMOD−Bを使用した以外は比較例2と同様にグリセリン非含有のコート液B'によるコーティングを行い、コートモジュールBwPB(以下CMOD−BwPBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−BwPBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−BwPBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−BwPBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例12)
製膜例2で得たMOD−Bを使用した以外は比較例5と同様に被コート面への加圧なしでコート液Bによるコーティングを行い、コートモジュールBwGB(以下CMOD−BwGBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−BwGBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−BwGBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−BwGBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例13)
製膜例2で得たMOD−Bを使用した以外は比較例7と同様に被コート面への加圧なしでグリセリン非含有のコート液B'によるコーティングを行い、コートモジュールBwB(以下CMOD−BwBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−BwBのUFR、3L−Alb、SCalb、CLmyoについての膜性能保持率を求めた。また、CMOD−BwBを使用してCHF試験を実施した。さらに、CMOD−BwBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例14)
製膜例3で得たMOD−Cを使用した以外は比較例2と同様にグリセリン非含有のコート液B'によるコーティングを行い、コートモジュールCwPB(以下CMOD−CwPBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−CwPBのUFRの保持率を求めた。また、CMOD−CwPBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してPR(IgG)についての膜性能保持率を求めた。さらに、このマイクロモジュールを使用してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例15)
製膜例3で得たMOD−Cを使用した以外は比較例5と同様に被コート面への加圧なしでコート液Bによるコーティングを行い、コートモジュールCwGB(以下CMOD−CwGBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−CwGBのUFRの保持率を求めた。また、CMOD−CwGBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してPR(IgG)についての膜性能保持率を求めた。さらに、このマイクロモジュールを使用してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
(比較例16)
製膜例3で得たMOD−Cを使用した以外は比較例7と同様に被コート面への加圧なしでグリセリン非含有のコート液B'によるコーティングを行い、コートモジュールCwB(以下CMOD−CwBと略記する)を得た。実施例1と同様に、CMOD−CwBのUFRの保持率を求めた。また、CMOD−CwBを解体して充填された中空糸型血液浄化膜を取り出し、マイクロモジュールを作製してPR(IgG)についての膜性能保持率を求めた。さらに、このマイクロモジュールを使用してAC試験を実施した。AC試験はマイクロモジュール内面の溶出前後で実施した。結果は表3に示した。
前洗浄後、膜孔保持剤および表面改質剤の双方を含有するコート液を使用し、コート液の加圧を行って得られた実施例1、実施例3、実施例6の結果と、膜孔保持剤を含有しないコート液を使用し、コート液の加圧を行って得られた比較例1、比較例2、比較例3、膜孔保持剤および表面改質剤の双方を含有するコート液を使用し、コート液の加圧を行わずに得られた比較例4、比較例5、比較例6、さらに、膜孔保持剤を含有しないコート液を使用し、コート液の加圧を行わずに得られた比較例7の膜性能保持率について図3にまとめた。コート液への膜孔保持剤添加、コート液の加圧操作、いずれか一方でも欠けた場合には、膜性能保持率が低下している。膜の微細構造破壊が避けられずにこのような結果を招いているものと推定される。
前洗浄を行わず、膜孔保持剤および表面改質剤の双方を含有するコート液を使用し、コート液の加圧を行って得られた実施例8の結果と、膜孔保持剤を含有しないコート液を使用し、コート液の加圧を行って得られた比較例8、膜孔保持剤および表面改質剤の双方を含有するコート液を使用し、コート液の加圧を行わずに得られた比較例9の膜性能保持率について図4にまとめた。前洗浄実施の場合と比較すると傾向はあまり明確でないが、コート液への膜孔保持剤添加、コート液の加圧操作、いずれか一方でも欠けた場合には、膜性能保持率が低下している。前洗浄実施の場合と比較すると顕著ではないものの、膜の微細構造破壊が避けられずにこのような結果を招いているものと推定される。
また、上記の場合について、マイクロモジュール内面の溶出後のAC試験の結果を図5にまとめた。比較例では凝血が著しく、膜性能の保持と表面改質剤の効果(この場合は抗血栓性)が両立されていないことがわかる。
(ヘパリン活性測定実験例)
ヘパリン活性の測定は、第一化学薬品社製テストチームヘパリンS(以下測定キットと略記する)を使用し、下記に示す手法で行った。操作はすべて37℃に温度調節されたブース内で行い、各試薬類の温度も37℃に調整した。
(1)ヘパリン標準液の調製
ヘパリンナトリウム注射液(10000U/10mL)を注射用生理食塩液で100倍に希釈し、濃度10U/mLのヘパリン一次希釈液を得た。このヘパリン一次希釈液を測定キットに添付の緩衝液で希釈し、80、60、40、20mU/mLのヘパリン溶液を得た。また、緩衝液をそのまま使用し、0mU/mL溶液とした。
(2)基質液の調製
測定キットに添付の基質剤1バイアルに注射用蒸留水20mLを加えて溶解し、基質液を得た。
(3)アンチトロンビンIII−血漿混合液の調製
測定キットに添付のアンチトロンビンIII剤1バイアルに注射用蒸留水10mLを加えて溶解した。また、測定キットに添付の正常血漿剤1バイアルに注射用蒸留水1.0mLを加えて溶解した。上記アンチトロンビンIII溶液1.0mLと正常血漿液1.0mLを混合し、アンチトロンビンIII−血漿混合液(以下ATIII−血漿液と略記する)を得た。
(4)ファクターXa液の調製
測定キットに添付のファクターXa剤1バイアルに注射用蒸留水10mLを加えて溶解し、ファクターXa液(以下FXa液と略記する)を得た。
(5)反応停止液の調製
氷酢酸20mLに注射用蒸留水を加え、全量で40mLとし、反応停止液を得た。
(6)検量線の作成
長さ45cm、内径3mm、外径5mmのシリコーンチューブをペリスタポンプにつなぎ、シリコーンチューブの末端は試験管に挿入した(以下この端部を入端と略記する)。シリコーンチューブのもう一方の端部(以下この端部を出端と略記する)は試験管にセットし、試験管内の液体がペリスタポンプによってシリコーンチューブに導かれ、試験管に戻るような回路を組んだ。上記(1)で得たヘパリン標準液を4.0mL分取し、37℃の条件下、ペリスタポンプによって20mL/minの流量で液の還流を開始した。還流開始後4分50秒の時点で入端を試験管内の溶液から引き抜き、回路内の液を試験管内に貯留した。続いて、試験管内にATIII−血漿液1.0mLを加え、速やかに攪拌後、入端を液に浸けて37℃の条件下、ペリスタポンプによって20mL/minの流量で液の還流を開始した。還流開始後2分50秒の時点で入端を試験管内の溶液から引き抜き、回路内の液を試験管内に貯留した。続いて、試験管内にFXa液1.2mLを加え、速やかに攪拌後、入端を液に浸けて37℃の条件下、ペリスタポンプによって20mL/minの流量で液の還流を開始した。還流開始後20秒の時点で入端を試験管内の溶液から引き抜き、回路内の液を試験管内に貯留した。続いて、試験管内に基質液2.5mLを加え、速やかに攪拌後、入端を液に浸けて37℃の条件下、ペリスタポンプによって20mL/minの流量で液の還流を開始した。還流開始後2分50秒の時点で入端を試験管内の溶液から引き抜き、回路内の液を試験管内に貯留した。続いて、試験管内に反応停止液3.8mLを加え、速やかに攪拌後、入端を液に浸けて37℃の条件下、ペリスタポンプによって20mL/minの流量で液の還流を開始した。還流開始後50秒の時点で入端を試験管内の溶液から引き抜き、回路内の液を試験管内に貯留した。溶液は室温で保管した。この操作を80、60、40、20、0mU/mLの各ヘパリン標準液について行い、405nmの吸光度を測定し、吸光度を横軸に、ヘパリン濃度を縦軸にとり、表計算ソフトで一時近似によるフィッティングカーブを描いて検量線を得た。
(7)コート中空糸膜のヘパリン活性測定
実施例1でAC試験用に作製したのと同様のマイクロモジュールを使用して、リン酸緩衝液溶出後のヘパリン活性を測定した。この実験において使用したマイクロモジュールは、内面にコーティングの施された中空糸型血液浄化膜から構成されているが、被コート表面積(内腔部分の表面積)がヘパリン活性の値に影響してくるので、長さを正確に12cmにあわせて作製した。
PBSによる内面の溶出を実施後、マイクロモジュールの一方の端部を長さ45cm、内径3mm、外径5mmのシリコーンチューブに接続した。このシリコーンチューブをペリスタポンプにつなぎ、シリコーンチューブの末端は試験管に挿入した(以下この端部を入端と略記する)。マイクロモジュールのもう一方の端部(以下この端部を出端と略記する)は試験管にセットし、試験管内の液体がペリスタポンプによってシリコーンチューブ、マイクロモジュールに導かれ、試験管に戻るような回路を組んだ。
試験管に測定キット添付の緩衝液4.0mLを分取し、37℃の条件下、ペリスタポンプによって20mL/minの流量で液の還流を開始した。還流開始後4分50秒の時点で入端を試験管内の溶液から引き抜き、回路内の液を試験管内に貯留した。続いて、試験管内にATIII−血漿液1.0mLを加え、速やかに攪拌後、入端を液に浸けて37℃の条件下、ペリスタポンプによって20mL/minの流量で液の還流を開始した。還流開始後2分50秒の時点で入端を試験管内の溶液から引き抜き、回路内の液を試験管内に貯留した。続いて、試験管内にFXa液1.2mLを加え、速やかに攪拌後、入端を液に浸けて37℃の条件下、ペリスタポンプによって20mL/minの流量で液の還流を開始した。還流開始後20秒の時点で入端を試験管内の溶液から引き抜き、回路内の液を試験管内に貯留した。続いて、試験管内に基質液2.5mLを加え、速やかに攪拌後、入端を液に浸けて37℃の条件下、ペリスタポンプによって20mL/minの流量で液の還流を開始した。還流開始後2分50秒の時点で入端を試験管内の溶液から引き抜き、回路内の液を試験管内に貯留した。続いて、試験管内に反応停止液3.8mLを加え、速やかに攪拌後、入端を液に浸けて37℃の条件下、ペリスタポンプによって20mL/minの流量で液の還流を開始した。還流開始後50秒の時点で入端を試験管内の溶液から引き抜き、回路内の液を試験管内に貯留した。溶液は室温で保管した。
同様の操作を、実施例1、実施例7、実施例11、実施例13、比較例1、比較例4、比較例11、比較例12で得たコート中空糸膜から作製したマイクロモジュールについて実施して、それぞれで得られた溶液の405nmの吸光度を測定し、上記(6)で得た検量線から溶液中のヘパリン活性(SHA)を算出した。また、コート中空糸膜のヘパリン活性(HFHA)を次式により算出した。結果は図3に示した。
HFHA=SHA×V÷(n×π×d×L)
ここで、HFHAはコート中空糸膜のヘパリン活性(mU/cm2)、SHAは溶液のヘパリン活性(mU/mL)、Vは緩衝液の量(4mL)、nはマイクロモジュール内の中空糸膜の本数(10)、πは円周率、dは中空糸膜の内径(cm)、Lはマイクロモジュール内の中空糸膜の長さ(12cm)である。
コート中空糸膜のPBS溶出後のヘパリン活性について図6に、AC試験の結果について図7にまとめた。抗血栓性の直接的な評価であるAC試験の結果には、ヘパリン活性との相関が見られる。比較例においてはヘパリン活性が低く、AC試験によって凝血が進行しやすい傾向が確認された。コート液への膜孔保持剤添加、コート液の加圧操作、いずれか一方でも欠けた場合には、導入された表面改質剤(この場合は抗血栓剤であるヘパリン−第4級オニウムイオン性複合体)の保持性に劣るため、溶出後のヘパリン活性が低下し、抗血栓性が十分に発揮されない結果を招いている。
本発明の中空糸型血液浄化膜への表面改質剤コーティング方法は、血液透析膜、血液濾過膜、血液透析濾過膜、血漿分離膜など種々の中空糸型血液浄化膜に広く適用可能で、その選択透過性を保持しながら効率よく、かつ表面改質剤によって付与された特性が十分発揮できるという利点があり、また、本発明の表面改質剤コート中空糸型血液浄化膜および/または表面改質剤コート中空糸型血液浄化器は、優れた選択透過性を保持し表面改質剤によって付与された特性が十分に発揮されるという利点があり、産業界に寄与することが大である。
本発明の中空糸型血液浄化膜の被コート面へのコート液の導入方法の一例を示す図。 本発明の中空糸型血液浄化膜の被コート面の前洗浄方法の一例を示す図。 本発明の前洗浄実施の場合のコーティング条件と膜性能保持率との関係を示す図。 本発明の前洗浄非実施の場合のコーティング条件と膜性能保持率との関係を示す図。 本発明の前洗浄非実施の場合のコーティング条件と抗血栓性との関係を示す図。 本発明のコート中空糸膜のPBS溶出後のヘパリン活性を示す図。 本発明の中空糸型血液浄化膜内面の抗凝血性を示す図。
符号の説明
1:血液浄化器
2:貯液チャンバー
3:減圧弁/圧力計
4、5、6:コック
7、8:コート液貯留槽
9:前洗浄液貯留槽
10:コート液貯留槽

Claims (8)

  1. 膜孔保持剤としてグリセリンを含んでなる中空糸型血液浄化膜の表面に抗血栓剤をコーティングする方法であって、該グリセリンおよび該抗血栓剤の双方を含有する有機溶媒溶液または有機溶媒分散液を、該中空糸型血液浄化膜の被コート面側に流速3〜150cm/minで導入し、該被コート面全面が該グリセリンおよび該抗血栓剤の双方を含有する有機溶媒溶液または有機溶媒分散液に接触した状態で10〜600秒間滞留させ、該導入された該グリセリンおよび該抗血栓剤の双方を含有する有機溶媒溶液または有機溶媒分散液を20〜30℃、0.1気圧以上1気圧以下で加圧することを特徴とする中空糸型血液浄化膜への抗血栓剤のコーティング方法。
  2. 膜孔保持剤としてグリセリンを含んでなる中空糸型血液浄化膜の表面に抗血栓剤をコーティングするに際して、該中空糸型血液浄化膜の被コート面側に該グリセリンの良溶媒を灌流して該被コート面の該グリセリンを除去した後、引き続いて該グリセリンおよび該抗血栓剤の双方を含有する有機溶媒溶液または有機溶媒分散液を、該中空糸型血液浄化膜の被コート面側に導入し、加圧することによって、除去された該グリセリンの再導入と該抗血栓剤のコーティングを同時に行うことを特徴とする請求項1記載の中空糸型血液浄化膜への抗血栓剤のコーティング方法。
  3. グリセリンを含んでなる中空糸型血液浄化膜の被コート面側に、グリセリンおよび抗血栓剤の双方を含有する有機溶媒溶液または有機溶媒分散液を導入するのに先立ち、中空糸型血液浄化膜に含まれるグリセリンの良溶媒を該被コート面側に通液することを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸型血液浄化膜への抗血栓剤のコーティング方法。
  4. 中空糸型血液浄化膜が血液透析膜または血液濾過膜または血液透析濾過膜または血漿分離膜であることを特徴とする請求項1〜いずれかに記載の中空糸型血液浄化膜への抗血栓剤のコーティング方法。
  5. 抗血栓剤がムコ多糖と第4級オニウムのイオン性複合体を含んでなる抗血栓性組成物であることを特徴とする請求項1〜いずれかに記載の中空糸型血液浄化膜への抗血栓剤のコーティング方法。
  6. ムコ多糖がヘパリン類であることを特徴とする請求項記載の中空糸型血液浄化膜への抗血栓剤のコーティング方法。
  7. 請求項1〜いずれかに記載の中空糸型血液浄化膜への抗血栓剤のコーティング方法によって得られることを特徴とする抗血栓剤コート中空糸型血液浄化膜。
  8. 請求項抗血栓剤コート中空糸型血液浄化膜が充填されてなることを特徴とする抗血栓剤コート中空糸型血液浄化器。
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