JP4992104B2 - 血液濾過または血液濾過透析用のモジュール - Google Patents

血液濾過または血液濾過透析用のモジュール Download PDF

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本発明は、長時間の施行中に体外循環回路中の血液の圧上昇を起こしにくい、ライフタイム(膜寿命)が長く、かつ、アルブミン等の補液を行わずに安全かつ効率的に体外循環できる血液濾過または血液濾過透析用のモジュールに関するものである。更に詳しくは、長時間の血液循環によっても目詰まりや血液回路内の血液の圧力上昇を起こし難く、かつ、アルブミン等の補液の要らない、ポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンとよりなる中空糸膜を用いた血液濾過または血液濾過透析用のモジュールに関する。
これまで、血液透析、血液濾過、血液濾過透析などの膜分離技術を利用した血液浄化法が種々考案され、技術的にも確立されているが、これらの血液浄化療法は、慢性腎不全患者のみならず急性腎不全患者、うっ血性心不全患者等にまで適用が広まり、近年では救命救急やICU等でも広く施行されるに至っている。膜分離による血液浄化法を急性腎不全患者に対して施行する場合、基本的には従来の慢性腎不全患者に対するそれと同様に体外循環が行なわれるが、中でも、急性腎不全患者は多臓器不全を併発していたり、循環動態が不安定であるなど、慢性腎不全患者に比較して病態が悪いケースが少なくないので、通常の血液透析のような短時間かつ間歇的な治療モードを採用するには無理があった。
そこで、特に急性腎不全患者に対しては、専用の血液浄化器を用いたよりきめの細かい治療として、長時間かけて少量ずつ除水や液置換を行なう「持続式血液浄化療法」と称する治療モードが主に採用されている。具体的には、この条件下で濾過や透析を行なう「持続式血液濾過」や「持続式血液濾過透析」が施行されており、「持続式血液濾過」においては、血液流速を50〜150ml/分、濾過速度を5〜50ml/分というように通常の血液濾過や血液透析よりも低く設定して施行される。また、専用の持続式血液濾過器が用いられることが多く、通常の血液透析器(膜面積がおよそ1.3〜2.1m)に比較してより小型のモジュール(膜面積がおよそ1.1m以下)が用いられる。なお、「血液濾過透析」においては、前記の血液濾過と同時に透析液を低流量で流して血液透析も併用されるが、ここでは専ら持続式血液濾過器が兼用されている。
このような持続式の治療モードは、例えば、心臓血管手術後、重症外傷、SIRS(systemic inflammatory response syndorome:全身性炎症反応症候群)、重症心不全にともなう急性腎不全等に応用されている。
ところで、持続式での施行時間は、血液濾過や血液濾過透析のいずれの場合も通常の血液透析時間の4〜5時間よりはるかに長く、20時間以上〜数日間にもわたるケースが多い。そして、施行中に持続式血液濾過器が血液流路内で目詰まりを起こすことがあり、血液入口側と血液出口側での圧力損失が高くなって体外循環の途中で治療を中止せざるを得ない、あるいは、施行途中で持続式血液濾過器を交換しなければならないケースが散見された。
このような長時間施行上の問題に対して、持続式血液濾過器等の体外循環用モジュールのライフタイムを長くするために膜材質や容器部材の抗血栓性を高め、血液凝固による目詰まりを改善する工夫が数多くなされている。しかし、膜分離性能・生物学的安全性・製造コスト等の全ての要件を満足できる医用材料をえるのは容易ではなく、実用化まで至っていないケースが多い。
一方、既に市販されている幾つかの持続式血液濾過器をライフタイムの観点から比較評価し、臨床現場で適切な血液濾過器を選択するための指針を与えた報告例が知られている(非特許文献1)。この文献においては、各種持続式血液濾過器の回路内圧からみたライフタイムを臨床評価しており、ポリアクリルニトリル(PAN)系の中空糸膜を用いた血液濾過器とポリスルホン(PS)系中空糸膜を用いた血液濾過器のライフタイムが長いことが報告されている。しかし、本発明者らが見出したインビトロでのライフタイムの評価方法によれば、この文献に記載の血液濾過器のライフタイムは充分に長いものとはいえなかった。特にポリスルホン系の中空糸膜を内蔵する持続式血液濾過器は、中空糸膜が疎水性高分子であるポリスルホン系高分子と親水性高分子であるポリビニルピロリドンから形成されているので、一般的に低分子蛋白質の透過性能、限外濾過量、生体適合性の全てに優れるバランスのよいものとされているが、それでもこのポリスルホン系の血液濾過器は、2日以上の長期施行を考慮するとライフタイムがまだ不十分であると言わざるを得なかった。
又、当然のことながら、持続式血液浄化療法においては、施行中にアルブミン等の様な有用な蛋白質が体外に漏れ出す(損失)することは好ましくない。従って、一般的に患者の管理が行き届いているICUでは、そうした事態に陥った場合は、アルブミン等の補液を行うことがある。しかしながら、できることならば、アルブミンのような有用蛋白質の損失はできるだけ抑え、煩雑なアルブミン等の補液操作は不要であることが望ましいので、持続式血液濾過器に望まれる性能特性としては、アルブミン等の補液を必要とされない程度の濾過性能が望まれているが、ライフタイムも十分に満足し、かつ、アルブミンの濾過性能も十分に満足するものとは言えなかった。
以上述べたとおり、持続式血液浄化療法のような長時間の体外循環治療において、疎水
性高分子と親水性高分子よりなる中空糸膜、とりわけ、ポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンとよりなる中空糸膜を用いたモジュールであって、体外循環回路中の血液の圧上昇を起こさないライフタイムが長く、かつ、有用蛋白質であるアルブミンの損失の少ない血液濾過または血液濾過透析用のモジュールは知られていなかった。
山下芳久、鈴木洋通、集中治療 vol.12 s15−s16別冊号 2000
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みて、ポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンよりなる中空糸膜を用いたモジュールであって、長時間の治療に於いて体外循環回路中の血液の圧上昇を起こさないライフタイム(膜寿命)が長く、かつ、有用蛋白質であるアルブミンの損失の少ない血液濾過または血液濾過透析用のモジュールを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、内蔵される中空糸膜がポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンからなり、該中空糸膜の内径は205〜250μmであって、毛細管上昇法で測定した該中空糸膜の液面上昇値が内径230μmの中空糸膜に換算すると60mm〜120mmになり、該中空糸膜の開口端面間距離をL、該筒状容器の最小内径をDとしたときのL/Dが3.5〜6.5であり、in vitroにおける牛血漿濾過性能試験における3時間後のアルブミンの篩係数(Alb−Sc)が0.0054以下である血液濾過または血液濾過透析用のモジュールがライフタイムに優れており、かつ、アルブミンの損失量も少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の血液濾過用モジュールに関する。
(1) 筒状容器の内部に中空糸膜の束が充填され、該中空糸膜の両端部が硬化性樹脂により該筒状容器両端部にポッティング加工されて容器両端部で開口端面となっており、該開口端面の夫々に血液の入口または出口を有するヘッダーキャップが取り付けられ、更に該中空糸膜濾過液側空間に通じる濾過液の流通口を有する中空糸膜型の体外循環用モジュールにおいて、
該中空糸膜はポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンからなり、
該中空糸膜の内径は205〜250μmであって、
毛細管上昇法で測定した該中空糸膜の液面上昇値が内径230μmの中空糸膜に換算すると60mm〜120mmになり、
該中空糸膜の開口端面間距離をL、該筒状容器の最小内径をDとしたときのL/Dが3.5〜6.5であることを特徴とする、血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
(2) in vitroにおける牛血漿濾過性能試験における3時間後のアルブミンの篩係数が0.0054以下であることを特徴とする、(1)記載の血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
(3) 前記血液濾過または血液濾過透析用のモジュールであって、
以下a〜dからなる体外循環用モジュールのライフタイム評価条件;
a)血液プールを30〜37℃に加温し:
b)血液濾過ポンプを配した濾過回路を体外循環モジュールの濾過側に接続し:
c)血液循環ポンプにより50ml/分の血液流量で血液を循環させ、血液濾過ポンプにより10ml/分の流量で得た濾液を血液プールに戻す血液循環を施行しながら:
d)血液循環開始から30分経過後にカルシウムイオノホアA23187を10μMとなるように循環血液に添加する:
において、体外循環用モジュールの血液入口側と出口側との圧力損失が150mmHgに到達する所要時間が200分以上であることを特徴とする、(1)〜(2)の何れかに記載の血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
(4) 前記中空糸膜の筒状容器への充填率が50%以上75%未満である(1)〜(3)の何れかに記載の血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
(5) 照射滅菌されている(1)〜(4)の何れかに記載の血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
(6) 抗酸化剤溶液が充填されている(1)〜(5)の何れかに記載の血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
本発明によれば、モジュールに内蔵される中空糸膜がポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンからなり、該中空糸膜の内径は205〜250μmであって、毛細管上昇法で測定した該中空糸膜の液面上昇値が内径230μmの中空糸膜に換算すると60mm〜120mmになり、該中空糸膜の開口端面間距離をL、該筒状容器の最小内径をDとしたときのL/Dが3.5〜6.5であり、in vitroにおける牛血漿濾過性能試験における3時間後のアルブミンの篩係数(Alb−Sc)が0.0054以下である血液濾過または血液濾過透析用のモジュールがライフタイムに優れており、かつ、アルブミンの損失量も少ないので、長時間の施行中に体外循環回路中の血液の圧上昇を起こしにくく、ライフタイムが長く、かつ、アルブミン等の補液等を行わずに、安全かつ効率的に体外循環できる血液濾過または血液濾過透析用のモジュールを提供できる。
以下、本発明について詳細に述べる。
本発明でいう血液濾過または血液濾過透析用モジュールとは、持続的血液浄化療法のように長時間の血液濾過や、濾過に透析を併用する血液濾過透析を行うためのものである。モジュールについては、血液濾過透析専用のモジュールはなく、専ら血液濾過用モジュールが兼用されているのが現状である。従って、以下の説明では単に「血液濾過用モジュール」と称するが、これは血液濾過透析用のモジュールも当然含んでいる。
本発明でいう毛細管上昇法とは、中空糸膜の中空開口部の一端を水溶液に浸し、一定時間後に毛細管現象で中空部を上昇した液面の水面からの高さを測定する方法のことをいう。
具体的には、以下の(1)、(2)の前処理、すなわち(1)血液濾過モジュールの血液流出入口及び液体の出入口の夫々一方から注射用蒸留水を各々500mL流し、中空部及び中空糸膜外部を洗浄する、(2)血液濾過用モジュール内の水を十分に廃棄後、モジュールを解体し、中空糸膜を取り出して乾燥させる、の後、乾燥させた中空糸膜の中空開口部の一端を水溶液に浸し、一定時間後に毛細管現象で管状の構造体の中空部を上昇した液面の水面からの高さを測定する方法のことをいう。このような前処理を行う理由は、中空糸膜がグリセリンや充填液を含んでいるとその表面特性を正確に評価できないこと、および、実際に血液が接触する状態で評価する方が適切であることによる。
毛管上昇に関しては、一般的に、以下の関係式があることが知られている。
h=2γcosθ/rρg (1)
h:液体面からの上昇位
γ:液体の表面張力
θ:接触角(固体と液体の接触面から液体と気体の接触面への角度)
r:管半径
ρ:液体の密度
g:重力加速度
すなわち、r(管半径)、ρ(液体密度)、h(液体面からの上昇位)を測定することによって液体の表面張力を測定することができ、この関係式(1)から、管状構造体内表面の液体に対する濡れ易さ、すなわち、親水性、疎水性の度合いは、毛細管中の液面上昇の度合いによって評価することが可能である。
したがって、中空糸膜の場合も上記の毛細管上昇法により、中空糸内表面の水溶液に対する濡れ易さ、すなわち、親水性(疎水性)の度合いを測定することができる。また、内径の異なる中空糸膜であっても、各々の毛細管中の液面上昇値と内径を測定し、式(1)の関係から基準とする中空糸膜の内径に換算する補正をすることによって、各々の中空糸の親水性(疎水性)の度合いを、基準とする内径の中空糸膜の液面上昇値として絶対比較することが可能になる。本発明では液面上昇値として中空糸膜の内径を230μmに換算した補正値を使用する。
中空糸膜の毛管上昇値を測定するに際しては、中空糸膜の水分率や内径が測定値に影響を与えるので、水分率と内径を測定しておく必要がある。中空糸膜の水分率としては5%以下である必要があり、水分率が5%より大きいと、中空糸膜が本質的に有している内表面の疎水性の性質が現れにくくなり、その毛管上昇値は、大きな測定値を示すようになり、サンプル同士の比較を困難にしてしまう。
毛細管現象による水溶液の液面上昇値を測定するに際しては、その測定時間も重要である。中空糸膜内表面がより親水性である場合は、中空部を上昇していく水溶液のスピードが速くなり、短時間での測定では測定値にばらつきがでてしまう。また、多くのサンプルを一度に測定することが難しくなる。実用的な測定時間は、中空糸膜を水溶液に浸してから5秒以上経過した時点が好ましく、より実用的には3分以内の適当な時間に設定することが好ましい。本発明では1分後の値を示す。
中空部の水溶液の液面は、中空糸膜がある程度の透明性を有していれば肉眼で観察することができる。しかしながら、中空糸膜がポーラスになればなるほど透明性が低下し、肉眼での観察が難しくなる。その場合は、水溶液にコンゴーレッドなどのような染料を水溶液の表面張力に影響を与えない程度の量だけ加えて水溶液を着色すれば、観察が容易になる。
本発明の血液濾過用モジュールに内蔵される疎水性高分子と親水性高分子よりなる中空糸膜において、毛細管上昇法により測定される水溶液の上昇値の、中空糸膜の内径を230μmに換算した補正値は60mm以上であることが必要である。60mmより低いと極端にライフタイムが低くなるので、長時間施行する血液濾過用モジュールとして不適切である。水溶液の上昇値は、より好ましくは70mm以上であり、中空糸膜の吸湿性による取扱い性や製造性を考慮すると120mm以下であることが好ましい。
ここで、ライフタイムとは、血液濾過療法などの体外循環療法施行中に、血液濾過モジュールの中空糸膜やその他の血液流路に血球や血漿蛋白質が詰まって圧上昇が発生し、治療継続不能になることなく施行できる時間のことであり、膜寿命のことをいう。
臨床使用時のライフタイムは、本発明者等が開発した インビトロでの評価方法によって推定することができる。その方法とは、特定濃度の血小板を含む抗凝固剤添加血液をプールし、この血液を血液流路に循環させた状態で血小板活性化試薬を添加し、血液濾過用モジュールの圧力損失の変化(上昇)をモニターするものである。つまり、活性化した血液を循環した際に、血液濾過用モジュールの圧力損失が特定の値に到達する所要時間を測定し、その長短によってライフタイムを評価する加速試験であるので、この所要時間が長いほどライフタイムに優れた体外循環用モジュールと評価され、反対に短いほどライフタイムが劣る、すなわち目詰まり傾向が高いモジュールであると評価される。その際、圧力損失が特定の値に到達する所要時間が具体的にどの程度であればライフタイムに優れる(劣る)血液濾過用モジュールと判断するかは、例えば、既に臨床経験によりライフタイムの良し悪しが分かっている血液濾過用モジュールを指標に相対比較すればよい。
以下、本発明に係るインビトロでのライフタイム評価方法についてより具体的に説明する。本発明者等が開発したライフタイム評価方法は、血液透析等の通常の体外循環に類似した閉回路をインビトロで構成し、これに血液を循環しながら圧力上昇をモニターして実施するものである。図1にその概略構成図を示すが、血液循環ポンプ5および血液入口側圧力検出器6を配した動脈側血液回路3、体外循環用モジュール2、血液出口側圧力検出器7を配した静脈側血液回路4をこの順番に接続して血液流路1を準備し、血液流路1の動脈側および静脈側の端部を血液プール8にセットすることにより閉回路としている。
本血液流路を構成する個々の部材、装置は通常の体外循環治療で用いられる公知のもの
を利用すればよく、例えば、軟質チューブからなる血液回路、ローラーポンプ等の送液装
置、水銀マノメーターやディジタルマノメーター等の圧力検出器を用いるとよい。また、
血液循環を行なう上で取り付けたほうが好ましいクランプやドリップチャンバー等の部品
を適宜取り付けても構わない。さらに、実際の血液濾過や血液透析を模して、前記の血液
流路に濾過回路や透析回路を併設してもよい。例えば、血液濾過ポンプ10を配した濾過
回路9を体外循環用モジュールの濾過側のノズルに接続し、一定流量で濾過しながら血液
循環を行ったり、透析液の導入回路および排出回路を体外循環用モジュールの濾過側のノ
ズルに接続すれば、血液濾過透析の条件でライフタイムの評価をすることもできる。
本発明に係るライフタイム評価方法に用いられる体外循環モジュールは、血液濾過透析器、血液濾過器、血液透析器、血漿分離器、血漿成分分離器のような中空糸膜型血液浄化器、不織布を円筒状に充填した細胞吸着器、粒子や繊維からなる吸着材を充填した成分吸着器等の何れでも構わないが、以下に述べるように、本ライフタイム評価方法は、臨床現場で長時間施行する体外循環用モジュールのライフタイムの評価に好適であるので、中空糸膜型の持続式血液濾過器が好ましい。なお、持続式血液濾過器は持続式血液濾過透析にも一般的に用いられるので、濾過に限定されるものではない。
本発明に係るライフタイム評価方法においては、前記の血液流路に血液を循環するにあたり、血液プール8に血小板濃度を特定した血液をプールし、これに血小板活性化剤を添加する必要がある。
本ライフタイム評価方法で用いられる抗凝固剤とは、体外に取り出した血液が凝固するのを阻止する薬剤であり、クエン酸系抗凝固剤(クエン酸ナトリウム、ACD−A、CPD等)、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド(EDTA)のようなキレート剤、ヘパリン系抗凝固剤(ヘパリン、低分子ヘパリン等)、メシル酸ナファモスタット、メシル酸ガベキサート等の抗凝固剤が例示できる。中でも、ヘパリン系抗凝固剤(ヘパリン、低分子ヘパリン等)は凝固系に必須のカルシウムをキレートしないため、以下に述べる血小板活性化剤として、カルシウムイオノホアを用いる際にもっとも好ましく用いられる。
本ライフタイム評価方法で用いられる血液は、採血された全血であり、人、牛、豚等の哺乳類の血液を用いることが好ましい。中でも牛の血液が好ましく用いられるが、これは試験に十分な量の新鮮血を入手しやすいことと、ライフタイムを評価するのに丁度よい血小板濃度であることが多く、評価に際して血小板濃度を人為的に調整する必要がないからである。抗凝固剤を添加した血液の血小板濃度は10万個/μL以上であることが必要であり、これより低濃度では血小板活性化剤を添加しても圧力上昇が起こりにくいので、短時間で評価を行なうことができない。一方、血小板濃度があまりにも高すぎると、圧力上昇が早まる傾向にあり、例えば30万個/μLを越えると所定の圧力値に到達する所用時間が短くなり、しかもばらつく傾向が高くなる。従って、血小板濃度が10〜30万個/μLの範囲にある血液をプールすることが好ましく、血小板濃度が15〜30万個/μLの血液がより好ましく、血小板濃度が22〜30万個/μLの血液が特に好ましい。
本ライフタイム評価方法で用いられる血小板活性化試薬とは、血小板に作用し、血小板の凝集や血栓形成を促進化させる物質である。例示すると、カルシウムイオノホア、PAF(platelet−activaing facter)、トロンビン、エンドトキシン等が挙げられるが、カルシウムイオノホアは、循環血液の圧力上昇への作用が比較的緩やかでありながらも非添加系に比べて明確な圧力上昇を引き起こすことが可能であり、圧力上昇を安定的かつ感度良く測定できるという点で好ましい。中でもカルシウムイオンの膜透過性を高める働きを有し、カルシウムイオンに対する特異性が特に高く、生体膜における物質の担体輸送のモデルとして取り扱われることの多いカルシウムイオノホアA23187が特に好ましい。
本ライフタイム評価方法は、前記のように、特定濃度の血小板を含む抗凝固剤添加血液をプールし、この血液を血液流路に循環させた状態で血小板活性化試薬を添加し、体外循環用モジュールの圧力損失の変化(上昇)をモニターするものである。つまり、活性化した血液を循環した際に、体外循環用モジュールの圧力損失が特定の値に到達する所要時間を測定し、その長短によってライフタイムを評価する加速試験であるので、この所要時間が長いほどライフタイムに優れた体外循環用モジュールと評価され、反対に短いほどライフタイムが劣る、すなわち目詰まり傾向が高いモジュールであると評価される。その際、圧力損失が特定の値に到達する所要時間が具体的にどの程度であればライフタイムに優れる(劣る)体外循環用モジュールと判断するかは、例えば、既に臨床経験によりライフタイムの良し悪しが分かっている体外循環用モジュールを指標に相対比較すればよい。
ここでいう圧力損失とは、体外循環用モジュールの入口付近および出口付近の血液流路に分岐管路を設けて取り付けた圧力検出器を用いて、血液の循環中に血液入口側圧力と血液出口側圧力を測定し、下記の式(2)によって算出されるものである。

体外循環用モジュールの圧力損失=血液入口側圧力−血液出口側圧力 (2)
本ライフタイム評価方法においては、より安定的な評価を行うために圧力損失の上限を100〜300mmHgにすることが好ましい。圧力損失が100mmHgよりも低いと圧力上昇の有無を明確に検出し難い場合があり、反対に、圧力損失が300mmHgを越えると、通常の体外循環用モジュールにおいては既に目詰まりが発生して正常に血液循環できない場合があり、評価方法としては好ましくないからである。より好ましくは100〜250mmHg、特に好ましくは100〜200mmHgの範囲である。
前述の血小板活性化試薬については、血液への添加濃度を調整することが好ましく、血小板濃度が10万個/mL以上のプール血液(濃度Aとする)に、該血液中の血小板濃度を10〜20万個/μL(濃度Bとする)減少させ、かつA≧Bとなるような濃度の血小板活性化試薬を添加すればよい。こうすることにより、圧力損失が所定の値に到達する所要時間が短くなる傾向にあり、測定感度を高めかつ評価時間を短くすることができるからである。具体的には血小板活性化試薬を、添加後の血中濃度が2〜15μM程度となるように添加するとよい。
また、血小板活性化試薬は、体外循環用モジュールの圧力損失が安定する血液循環開始後少なくとも30分以降に加えると、圧力変化を安定化して評価精度を高めることができる。添加方法は特に問わないが、血小板活性化試薬を生理食塩水や緩衝液等に溶解して濃度既知の添加液として準備し、これを血液流路のインジェクションポートやヘパリン注入回路等の任意の場所から注入したり、あるいはプール血液に滴下し、血球カウンター等で循環血液中の血小板濃度を確認すればよい。
血液の循環条件については、実際の臨床現場における体外循環用モジュールの施行条件をできるだけ反映させることにより、より確実な評価方法となる。例えば、血液プールは30〜37℃に加温することが好ましく、体温に近くしかも血小板の活性化を進めやすい35〜37℃がより望ましい。
また、血液循環ポンプにより体外循環用モジュールに流す血液流量は、持続式血液濾過療法を想定する場合は50〜100ml/分が好ましく、50〜60ml/分がより好ましい。その場合、体外循環用モジュールの濾過側のノズルに、血液濾過ポンプを配した濾過回路を接続して濾過流量1〜20ml/分で濾過を行なうことが好ましく、8〜12ml/分がより好ましい。得られた濾液は血液プールに戻し、血球が濃縮されないようにする。
以上述べたライフタイム評価方法により、ライフタイムに優れた体外循環モジュールを選択することもできる。本発明者らの知見によれば、具体的条件として、血液プールを30〜37℃に加温し、血液濾過ポンプを配した濾過回路を体外循環モジュールの濾過側に接続し、血液循環ポンプにより50ml/分の血液流量で血液を循環させ、血液濾過ポンプにより10ml/分の流量で得た濾液を血液プールに戻す血液循環を施行しながら、血液循環開始から30分経過後にカルシウムイオノホアA23187を血中濃度が8〜15μM(血小板濃度が10〜20万/μL減少する濃度)となるように循環血液に添加する評価条件において、体外循環用モジュールの圧力損失が150mmHgに到達する所要時間が200分以上であれば、その体外循環用モジュールは、臨床においても十分長いライフタイムを示した。
次に、本発明の血液濾過用モジュールの製造方法について説明する。
前記モジュールに内蔵されるポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンからなる中空糸膜は、公知の乾湿式紡糸方法を利用して得ることができる。このような組成の中空糸膜は、膜表面が親水化された構造となるので血液接触面において血液凝固系を活性化し難く、血液濾過用モジュールのライフタイムを長くできる。
ポリスルホン系高分子としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルエーテルスルホン等が挙げられる。これらは製膜性や強度の点から好ましく、中でも、放射線に対する滅菌耐性に優れ、かつ低透水型から高透水型までの幅広い孔径制御に優れることからも好ましい。ポリスルホン系高分子の代表的な構造式を[化1]および[化2]に示す。
ポリビニルピロリドンは、ポリスルホン系高分子との相溶性および血液適合性の観点から優れているので好ましい。
疎水性高分子にポリスルホン系高分子、親水性高分子にポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコールを用いて乾湿式紡糸する場合は、膜構造が形成される際に親水性高分子が孔径形成材と親水化材の両方を担う。その結果、低分子蛋白質の透過性、限外濾過量、生体適合性の全てに優れる膜構造が得られやすいので、この組み合わせが最も好ましい。以下、ポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンの場合を例として説明する。
乾湿式製膜を行うための製膜原液としては、ポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンを共通に溶解する溶剤に溶解混和した溶液が用いられる。該溶剤としては、ポリマーの溶解性や生体に対する安全性、コスト等を考えるとN,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。
製膜原液中のポリスルホン系高分子の濃度が低すぎると、膜形成が困難となって膜強度が弱くなり、反対に高すぎると、紡糸性が悪くなったり孔径が小さくなる等の現象が生じてくるので、一般的に12〜25重量%、より好ましくは15〜20重量%である。また、ポリビニルピロリドンは、中空糸膜が形成される過程においてその一部が膜中に残存する。その割合はポリビニルピロリドンの分子量や紡糸条件により変化するので、ポリビニルピロリドンの最適な濃度は適宜検討されるべきであるが、例えば、ポリビニルピロリドンの数平均分子量が300,000以上の時には1〜15重量%、より好ましくは3〜7重量%である。
上記の製膜原液を内部凝固液と同時に二重環状紡口から吐出させ、空中走行部を経て凝固浴へ導くと中空糸膜が形成される。内部凝固液および凝固浴としては水を主体とした液が用いられるが、ポリスルホン系高分子の溶剤と水の混合液を用いることが好ましい。内部凝固液は、血液濾過用モジュールとしての透過性、濾過性を得るうえで、例えばN,N-ジメチルアセトアミドを用いた場合は、45〜80重量%の水溶液が好適に用いられる。
本発明における中空糸膜内表面の特性を発現するために、すなわち毛細管上昇法により測定される水溶液の液面上昇値の、中空糸膜の内径を230μmに換算した補正値を60mm以上にするために重要な点は、製膜原液の凝固条件を制御することである。
その第一点は空中走行部の走行時間の制御である。製膜原液は、紡口から吐出されてから凝固浴に浸漬されるまでの間に適度に凝固していることが好ましく、そのためには空中走行部の走行時間は0.4秒以上であることが好ましく、より好ましくは0.5秒以上である。空中走行部の走行時間は紡糸速度により管理することができる。空中部の走行時間が0.4秒未満、特に0.1秒以下になると、凝固不十分な状態で中空糸膜が凝固浴中に浸漬され、水溶性であるポリビニルピロリドンの凝固浴中へ溶出量が増加し、中空糸膜内に残存するポリビニルピロリドン量が減少して親水化が不充分になることがある。つまり、毛細管上昇法により測定される水溶液の液面上昇値の、中空糸膜の内径を230μmに換算した補正値を確実に60mm以上にするのが困難となる場合がある。反対に、その上限については空中走行距離によって異なるが、空中走行距離が50cmの場合には2.0秒を超えない範囲であることが好ましい。
第二点は空中走行部分の湿度の制御である。空中走行部の相対湿度は70〜95%であることが好ましく、より好ましくは75〜90%である。相対湿度がこの範囲より低いと凝固浴に浸漬するまでに中空糸膜の形成が充分に行われず、本発明の膜表面特性を支配する適度な膜構造の形成ができない場合があり、中空糸膜間の固着を起こすなど安定した紡糸ができない。反対に、相対湿度が高すぎると外表面からの凝固が促進され、中空糸膜内の孔径も小さくなって低分子蛋白質の透過性が悪くなり好ましくない。
本発明の血液濾過用モジュールにおいては、中空糸膜が前記の組成と特性を有し、しかもその内径が205〜250μmと、通常の血液透析膜のそれよりも幾分大きいことがライフタイムの点で特に重要となる。すなわち、中空糸膜の内径が205μmより小さいと、本発明のライフタイム評価方法において、血液濾過用モジュールの圧力損失が血液循環開始から150mmHgに到達する所要時間が200分より短くなり、ライフタイムの点で満足できる血液濾過用モジュールにならない。反対に、中空糸膜の内径が250μmより大きいと、前記評価方法による所要時間が200分を越えるものの、膜面積当たりの血液プライミング容量が大きくなってしまう。持続式血液濾過を適用するような循環動態の悪い患者にとって、体外に取り出される血液量は出来る限り低く抑えるべきであり、内径を大きくし過ぎるのは避けるべきである。従って、中空糸膜のより好ましい内径は210〜245μmであり、さらに好ましい内径は220〜240μmである。また、必要以上に内径を大きくすると透析効率が低下するので、血液濾過透析に使用する場合を想定すると、内径250μmを上限とするのが好ましい。
本発明の血液濾過用モジュールは、前記の中空糸膜を巻き取って乾燥した束を筒状容器に充填して成型したものであるが、成型方法は中空糸膜型モジュールの公知の成型方法を参照すればよい。例えば、中空糸膜を数千本から2万本程度に束ねた中空糸膜束を濾液ポートを1つ以上有する筒状容器に挿入して充填し、中空糸膜束の端部と容器端部とを硬化性樹脂によりポッティング加工し、さらに硬化した樹脂層を切断して中空糸膜をその端部に開口させた後、両端部に血液流通口(流入口または流出口)を有するヘッダーキャップを装着することによって形成される。形成されたモジュールは、必要に応じて水や生理食塩水で容器内を充填し、γ線照射などによって滅菌することにより、患者にとって安全に使用できる。
ここで、本発明の血液濾過用モジュールにおいて、ライフタイムを長くするうえで重要な点はモジュールの長さと胴径との比率である。すなわち、中空糸膜の開口端面間距離をL、筒状容器の最小内径をDとしたときのL/Dが3.5〜6.5であることが必要である。ここで中空糸の開口端面間距離とは、ポッティングした樹脂層の一方の中空糸膜開口端面から他方の樹脂層の開口端面までの距離をいう。厳密には、モジュールに充填されている中空糸膜の長さのことではあるが、膜のたるみ等は無視してモジュール内部の固定された距離とする。また、筒状容器の最小内径とは、中空糸膜束が充填された筒状容器の断面を真円に換算したときの直径の最小値を言う。
L/Dが3.5より小さいと、前記のライフタイム評価法において、血液濾過用モジュールの圧力損失が血液循環開始から150mmHgに到達する所要時間が200分を越え、血液濾過用モジュールのライフタイムが長くなる傾向があるが、モジュールが必要以上に太くなる結果、ヘッダーキャップ内の空間容量が大きくなって血液プライミング容量が増えるので、循環動態の悪い患者に使用するのに好ましくない。また、筒状容器の断面積が大きくなると、ポッティング樹脂の容器内壁への接着力が低下する等の懸念も生じる。反対に、L/Dが6.5を超えると、前記評価方法において、所要時間が200分よりも小さくなり、血液濾過用モジュールのライフタイムが短くなってしまう。
本発明の牛血漿濾過性能試験とは、以下の方法のことをいう。
まず、抗凝固剤としてCPD溶液を血液1mlに対して0.13mlになるように添加した牛血液から遠心分離によって血漿成分だけを分離し、その血漿に対して生理食塩水を用いて総蛋白濃度を6.5±0.5g/dlに調整した血漿1Lをプールしておき、次に、血液回路を血液濾過または血液濾過透析用のモジュールの血液の入口および出口となるヘッダーキャップに接続し、前述の血漿を血液循環ポンプにより100ml/分の血漿流量で37℃にて循環させ、同時に血液濾過ポンプにより10ml/分の流量で濾過を行い、濾液は前述の血漿プールに戻す。
一定時間後の溶質の篩係数(Sc)の測定については、例えばアルブミンの篩係数(Alb−Sc)を例にとると、濾液を一定時間後に採取し、その時の濾液中のアルブミンの濃度(CF)、ヘッダーキャップからモジュールに入る血漿中のアルブミンの濃度(CBi)、モジュールのヘッダーキャップから流出した血漿中のアルブミンの濃度(CBo)を測定することで、下記の式(3)によって、濾液採取時点でのアルブミンの篩係数(Alb−Sc)を求めることができる。

アルブミンの篩係数(Alb−Sc)=2(CF)/(CBi+CBo) (3)
本発明の血液濾過用モジュールにおいては、牛血漿濾過性能試験における3時間後のアルブミンの篩係数(Alb−Sc)が0.0054以下である必要がある。Alb−Scが0.0054を超えると、牛血漿濾過性能試験において、30時間後のアルブミンの総損失量が3gを超えてしまい、実際の臨床現場ではアルブミン製剤などの補液が必要になってきてしまうからである。
30時間後のアルブミンの総損失量については、以下の(I)〜(IV)の手順に従って求めることができる。
(I)1〜30時間までの実測アルブミン濃度より篩係数を算出する。
(II)(I)の篩係数から、近似曲線を描き、近似式を求める。
(III)(II)の近似式から、1〜30時間の15分毎の篩係数を求める。
(IV)1〜30時間の平均篩係数を求め、その値を下記式(4)にあてはめる。

アルブミン総損失量(g)
=アルブミン濃度(g/ml)×平均篩係数(1-30Hrの平均値)
×濾過流量(ml/min)×時間(min) (4)
上記の手順をさらに詳しく説明する。篩係数(y)は時間(x)の関数として、y= ax^(b)で表すことできるので、血液濾過モジュールの篩係数の実測値から、最小自乗法で定数a、bを計算し、血液濾過モジュールの近似式を求めることができる。この近似式を用いて、求められた平均篩係数を上記式(4)に代入することにより、アルブミンの総損失量を計算することができる。
一方、アルブミンの総損失量が3gを超えると、アルブミン製剤などを補液する必要があることを考慮して、上記近似式から、30時間後のアルブミンの総損失量が3.0gを超えない、3時間後のアルブミンの篩係数(Sc)は、例えば、モジュールの持つ性能(例.濾過性能)がよりアルブミンが濾過される方向に変化した場合、ベースとした近似式の曲線は変化せずにy軸方向にスライドするものと仮定し、シミュレーションすることにより求めることができる。
中空糸膜束の筒状容器への充填率とは、筒状容器に充填された中空糸膜束の充填密度のことをいい、筒状容器の最小内径部分の容器断面積に占める中空糸膜断面積の割合(%表示)で定義される。中空糸膜断面積に比べて容器断面積が大きすぎると充填率が下がり、血液濾過透析療法のように透析を併用する場合に透析効率が低下する傾向にあるので好ましくない。その観点から、充填率は50%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。一方、充填率が高すぎると、容器に中空糸膜束を充填した際に中空糸膜を傷つけてしまうので、充填率は75%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。
このようにして得られた血液濾過用モジュールは、その内部の中空糸膜を加温した水や溶剤、それらの混合液等で洗浄することによっても、毛細管上昇法により測定される水溶液の液面上昇値を調整することが可能である。例えば、18〜25℃程度の室温付近で洗浄すると、中空糸内表面に存在するポリビニルピロリドンやグリセリン等の親水性物質を洗浄できるので、過度の親水化や膜間ばらつきの一因となるのを防止できるので好ましい。また、40〜50℃程度の温水で洗浄するとさらに洗浄力が高まり、しかし中空糸膜表面や容器、ヘッダーキャップの熱変性に殆ど影響しないので好ましい。これらのモジュール洗浄を一定のパルスで行う、あるいは逆方向の洗浄と交互に行うことも好ましい。
本発明の血液濾過用モジュールは、容器内の空間に水や生理食塩水などの水溶液を充填させても、させなくても良いが、臨床現場で使用前にプライミングを行うことを考慮すると、エア抜け性等の理由から容器内に水や生理食塩水などの水溶液を充填させておくことが好ましい。いわゆるウエットタイプである。その際、充填液として、グリセリンのようなラジカル捕捉型の有機化合物や抗酸化性の無機塩類を含んだ抗酸化剤溶液を用いることが好ましく、中でも洗浄性のよいピロ亜硫酸ナトリウム溶液を用いることが最も好ましい。これは、血液濾過用モジュールを放射線滅菌する際に、中空糸膜の酸化を抑制する上で好都合であるばかりではなく、放射線による親水性高分子の架橋や変性を適度に抑制することにより、毛細管上昇法により測定される水溶液の液面上昇値を適切な範囲に調整できることもあるからである。その理由は定かではないが、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコール等の線状高分子が架橋によって三次元構造化されると、その分子運動性が抑制されて親水性に影響を与えるものと推定される。
滅菌方法についてはγ線滅菌や電子線滅菌等の放射線滅菌が好ましいが、生産性を考慮するとγ線滅菌が特に好ましい。
以下、実施例に従って本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1,2,3,4及び比較例1]
ポリスルホン樹脂(ソルベイ社製、P-1700)18.5重量部、ポリビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K-92)6.7重量部、ジメチルアセトアミド(以下、DMAC)74.8重量部からなる均一な紡糸原液を作成した。この紡糸原液をDMAC濃度20重量%の中空内液とともにスリット幅60μmの二重環状口金から吐出し、105cm下方に設けた60℃の水中に浸漬し70m/分の速度で巻き取った。中空糸膜厚を45μm、内径を205μmに合わせるように紡糸原液、中空内液の吐出量を調整した。7100本のフィラメントを巻き取ったところで、ロープを300mmの長さに切断後、90℃の熱水で24hrシャワー洗浄し、洗浄液においてUV吸光度220nmのピークが認められないことを確認した。次にグリセリン20%水溶液に含浸させ、85℃にて7時間熱風乾燥させた。乾燥後、再び内径、膜厚を測定し、中空糸内径が205μmに合っていることを確認した。
上記の中空糸膜6400本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積0.7m、L/D=5.3のモジュールに成型した。筒状容器の両端部にヘッダーキャップを取り付け、γ線(25KGy)による照射滅菌を行い持続式血液濾過器(持続式血液濾過器1)を5本得た。
得られた持続式血液濾過器は、夫々生理食塩水1Lで内部を洗浄し体外循環用の回路に接続した。血小板活性化試薬の影響を確認するために、血小板活性化試薬としてカルシウムイオノホアA23187(SIGMA製)(実施例1)、PAF(SIGMA製)(実施例2)、トロンビン(Pacific Hemostasis製)(実施例3)、エンドトキシン(SIGMA製)(実施例4)の4種類を準備した。抗凝固剤としてヘパリン系抗凝固剤(三菱ウェルファーマ製)を添加した牛血液2000mL(血小板濃度25万個/μL)を血液プールとし、37℃に保ちながら血液流量50mL/分で持続式血液濾過器内を再循環させた。同時に濾過流量10mL/分で濾過を行い、得られた濾液は血液プールに戻した。循環開始直後にカルシウムイオノホアA23187を10μmol/L、PAFを0.5μmol/L、トロンビンを3000IU/L、エンドトキシンを5μmol/Lの血中濃度になるようにそれぞれの血液プールに加え、持続式血液濾過器の入口側及び出口側の圧力変化を観察した。比較例1として血小板活性化試薬を加えない試験も行なった。
その結果、血小板活性化試薬を加えた実施例1〜4の持続式血液濾過器の圧力損失は初期圧力より上昇したのに対して、比較例1では持続式血液濾過器の圧力損失は変化しなかった。血小板活性化試薬の種類によって圧力上昇のレベルは様々であり、循環血液の圧力上昇を安定的に且つ感度良く測定できるという点で、カルシウムイオノホアA23187が好ましかった。結果を表1及び図2に示す。
[実施例5、6、7]
実施例1と同様の製造方法で得られた持続式血液濾過器3本を、夫々生理食塩水1Lで内部を洗浄した後、体外循環回路に接続した。
カルシウムイオノホアA23187の添加量の影響を確認するため、抗凝固剤としてヘパリン系抗凝固剤を添加した牛血液2000mL(血小板濃度25/μL)を血液プールとし、37℃に保ち、血液流量50mL/分で持続式血液濾過器内を再循環させ、濾過流量10mL/分で濾過を行い、得られた濾液は血液プールに戻した。血小板活性化試薬は、開始30分後にカルシウムイオノホアA23187を血中濃度として2μM、8μM、10μMとなるように添加し(それぞれ実施例5,6,7とする)、持続式血液濾過器の入口側と出口側の圧力変化を観察し、持続式血液濾過器の圧力損失が150mmHgに到達する所要時間を測定した。
その結果、添加した血小板活性化試薬の血中濃度によりライフタイム評価の感度を調節でき、濃度が高いほど感度も高くなることがわかる。結果を表2および図3に示す。
[実施例8、9、10、11及び比較例2、3]
実施例1と同様の製造方法で得られた持続式血液濾過器6本を、夫々生理食塩水1Lでモジュール内を洗浄し、回路に接続した。
血小板濃度が30万/μLより高い血液、血小板濃度が10万/μL未満の血液、血小板濃度が10〜30万/μLの3種類の血液を準備した。血小板濃度の影響、血液温度の影響を確認するため、抗凝固剤としてヘパリン系抗凝固剤を添加した牛血液2000mLを血液プールとし、血液温度を25℃、37℃、40℃に保ち(それぞれ実施例8,9,10とする)、血液流量50mL/分で持続式血液濾過器内を再循環させ、濾過流量10mL/分で濾過を行い、得られた濾液は血液プールに戻した。開始30分後にカルシウムイオノホアA23187を血中濃度10μmol/Lとなるように添加し、持続式血液濾過器の圧力損失が150mmHgに到達する所要時間を測定した。また、血液温度37℃では、血小板濃度が30万/μLより高い血液(実施例11)、および血小板濃度が10万/μL未満の血液(比較例2)で同様な実験を行った。すなわち、血小板濃度の影響、血液温度の影響を表3に示す条件で評価した。比較例3として、カルシウムイオノホアを添加しないケースをコントロールとした。
その結果、血小板活性化試薬を加えない比較例3の持続式血液濾過器の圧力損失は変化せず、血小板濃度が10万/μLより低い血液を用いた評価(比較例2)でも圧力損失は変化しなかった。反対に、血小板濃度が30万/μLより高い血液を用いた評価(実施例11)では150mmHgに到達する所要時間が短くなり感度は高いといえる。しかし、所要時間が100分程度まで短くなると評価系が不安定となってくるので、バラツキ等の精度上の懸念が残ると思われた。また血液の温度が高くなるに従い、150mmHgに到達する所要時間が短くなる傾向を示した(実施例8〜10)。結果を表3に示す。
[実施例12、13、14及び比較例4、5]
実施例1と同様な製膜条件で、中空膜糸の膜厚は変えないようにして、内径だけを変化させた中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は内径が205μm、230μm、250μmの3種類であった。
前記中空糸膜を用いて、実施例1と同様な製造方法により、中空糸膜の内径250μm、中空糸本数5800本の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器3、実施例12)、中空糸膜の内径230μm、中空糸本数6400本の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器2、実施例13)、実施例1で作製したものと同じ持続式血液濾過器1(実施例14)を準備した。また、ポリスルホン系中空糸膜を充填した持続式血液濾過器の比較対象として、X社製血液濾過器(比較例4)及びY社製血液濾過器(比較例5)を準備した。夫々の持続式血液濾過器の内部を生理食塩液500mLで洗浄し、体外循環回路と連結した。抗凝固剤としてヘパリン系抗凝固剤を添加した牛血液2000mL(血小板濃度25/μL)を血液プールとし、37℃に保ち、血液流量50mL/分で持続式血液濾過器内を再循環させ、濾過流量10mL/分で濾過を行い、得られた濾液は血液プールに戻した。開始30分後にカルシウムイオノホアA23187を血中濃度10μMになるように添加し、持続式血液濾過器の圧力損失が150mmHgに到達する所要時間を測定した。
その結果、中空糸膜の内径が205〜250μmの中空糸を充填し、かつL/Dを5.4とした持続式血液濾過器においては、圧力損失が150mmHgに到達する所要時間が200分より長かったのに対し、内径が200μmのポリスルホン系中空糸膜が充填され、かつL/Dが7.5の市販の持続式血液濾過器は、所要時間が200分よりも短かく、ライフタイムが短いと判断された。結果を表4に示す。
[実施例15、16及び比較例6、7、8]
ポリスルホン樹脂(ソルベイ社製、P-1700)18.5重量部、ポリビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K-92)6.5重量部、ジメチルアセトアミド(以下、DMAC)75重量部からなる均一な紡糸原液を作成した。この紡糸原液をDMAC濃度22重量%の内部凝固液とともにスリット幅60μmの二重環状口金から吐出し、100cm下方に設けた60℃の水中に浸漬し70m/分の速度で巻き取った。中空糸膜厚を45μm、内径を230μmに合わせるように紡糸原液、内部凝固液の吐出量を調整した。6400本のフィラメントを巻き取ったところで、ローブを300mmの長さに切断し、90℃熱水で24時間シャワー洗浄し、不安定なポリビニルピロリドン等の水溶性高分子がフィラメントに存在しないことを、洗浄液においてUV吸光度220nmのピークが認められないことで確認した。次にグリセリン20%水溶液に含浸させ、85℃にて7時間熱風乾燥させた。乾燥後、再び内径と膜厚を測定し、中空糸内径が230μmに合っていることを確認した。
上記の中空糸6400本を筒状容器に挿入してポッティング加工し、有効膜面積0.7m、L/D=5.4のモジュールに成型した。モジュールの両端にヘッダーキャップを取り付けた後、このモジュールの血液側及び濾液側を(1)20℃の水3Lで洗浄したもの(実施例15)、(2)50℃の水3Lで洗浄したもの(実施例16)、(3)60℃の水9Lでの洗浄を2回繰り返したもの(比較例6)の3種類のモジュールを製造した。続いて、それぞれのモジュールにピロ亜硫酸ナトリウム300ppmと炭酸ナトリウム100ppmを溶解させた水溶液を充填し、25kGyのγ線を照射して3種類のポリスルホン系血液濾過用モジュールを得た。
これ以外に比較例として、X社の市販ポリスルホン系血液濾過用モジュール(比較例7)、およびY社の市販ポリスルホン系血液濾過用モジュール(比較例8)を準備した。いずれのモジュールも中空糸膜の内径は200μm、L/Dは7.5であった。
上記の血液濾過用モジュールの血液側および濾液側をそれぞれ注射用蒸留水500mlで洗浄し、十分に水を廃棄した後、モジュールを解体して中空糸膜を取り出した。中空糸膜を乾燥機にて乾燥させ、各々の中空糸膜の水分率が5%以下であることを確認した。
両面テープを貼ったガラス板に、ガラス板の片端に中空糸膜の末端を揃えるように各々の中空糸膜を10本ずつ鉛直に並べて貼り付けた。その後、ガラス板に末端を揃えた側の中空糸膜の端部約5mmを0.1%のコンゴーレッド水溶液に浸漬し、1分後に水溶液の上昇した液面の水面からの距離を測定し、その平均値を求めた。また、比較例7および8の中空糸膜については、その内径が230μmに相当するように液面上昇値の補正値も求めた。その結果を表5に示した。
一方、モジュールのライフタイムをインビトロで評価するために、上記の5種類のモジュールと同等の血液濾過用モジュールを準備し、それらの血液側および濾液側をそれぞれ生理食塩水500mlで洗浄した。次に、図1に示す循環回路を用いて、抗凝固剤としてヘパリン系抗凝固剤(三菱ウェルファーマ製)を添加した牛血液2000mL(血小板濃度25万個/μL)を血液プールとし、37℃に保ちながら血液流量50mL/分で血液濾過用モジュール内を再循環させた。同時に濾過流量10mL/分で濾過を行い、得られた濾液は血液プールに戻した。循環開始直後に、カルシウムイオノホアA23187(SIGMA製)を10μmol/Lの血中濃度になるように血液プールに加え、血液濾過用モジュールの血液入口側及び血液出口側の圧力変化を観察した。圧力損失が150mmHgに到達した時間を測定し、その時間をライフタイムとした。その結果を表5に示した。
以上の結果より、液面上昇値が60mm以上であると血液濾過用モジュールのライフタイムが長く、反対に60mmを下ると急激にライフタイムが低下することもわかる。また、滅菌前のモジュールを洗浄処理する際に、洗浄温度や洗浄量を変えることにより、中空糸膜の液面上昇値を調整できることもわかる。
[実施例17、18、19及び比較例9、10]
実施例15と同様な製膜条件で、中空膜糸の膜厚は45μmで変えないようにして、内径が205μm、230μm、250μm,200μm、180μmの5種類の中空糸膜を作製した。
前記中空糸膜を用いて、実施例16と同様な製造方法により、L/Dが5.4になるように、中空糸膜の内径250μm、中空糸本数5800本の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器8、実施例17)、中空糸膜の内径230μm、中空糸本数6400本の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器7、実施例18)、中空糸膜の内径205μm、中空糸本数7100本の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器6、実施例19)、中空糸膜の内径200μm、中空糸本数7300本の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器5、比較例9)、中空糸膜の内径180μm、中空糸本数8100本の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器4、比較例10)を準備した。
夫々の持続式血液濾過器に内蔵されている中空糸の毛細管上昇法による内径230μmに換算した液面上昇値は、実施例15と同様にして測定した。
夫々の持続式血液濾過器の牛血漿濾過性能試験は、CPD溶液を牛血液1mlに対して0.13mlになるように添加した牛血液から分離した牛血漿の総蛋白濃度を6.5g/dlに調整し、血漿1Lを血漿プールとし、37℃に保ちながら血漿流量100ml/分で持続式血液濾過器内を再循環させた。同時に濾過流量10ml/分で濾過を行い、得られた濾液は血漿プールに戻し、3時間後のアルブミンの篩い係数(Alb−Sc)を計測した。
in vitroにおけるライフタイムの評価については、夫々の持続式血液濾過器の内部を生理食塩液500mLで洗浄し、体外循環回路と連結した。抗凝固剤としてヘパリン系抗凝固剤を添加した牛血液2000mL(血小板濃度25万個/μL)を血液プールとし、37℃に保ち、血液流量50mL/分で持続式血液濾過器内を再循環させ、濾過流量10mL/分で濾過を行い、得られた濾液は血液プールに戻した。開始30分後にカルシウムイオノホアA23187を血中濃度10μMになるように添加し、持続式血液濾過器の圧力損失が150mmHgに到達する所要時間を測定した。夫々の結果を表6に示す。
表6の結果より、中空糸膜の内径が205μmの以上の持続式血液濾過器においては、圧力損失が150mmHgに到達する所要時間が200分より長かったのに対し、内径が200μm以下の持続式血液濾過器は、所要時間が200分よりも短かく、ライフタイムが短いと判断された。
[実施例20、21、22および比較例11、12]
実施例18と同様な製膜条件で、中空膜糸の膜厚45μmで変えないようにして、内径が230μmの中空糸膜を作製した。
前記中空糸膜を用いて、実施例16と同様な製造方法により、各々の持続式濾過器の膜面積が0.7m2一定になるようにして、L/Dが4.3の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器9、実施例20)、L/Dが5.4の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器10、実施例21)、L/Dが6.5の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器11、実施例22)、L/Dが7.5の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器12、比較例11)、L/Dが10の持続式血液濾過器(持続式血液濾過器13、比較例12)を準備した。
夫々の持続式血液濾過器に内蔵されている中空糸の毛細管上昇法による内径230μmに換算した液面上昇値は、実施例15と同様にして測定した。
夫々の持続式血液濾過器の牛血漿濾過性能試験は、CPD溶液を牛血液1mlに対して0.13mlになるように添加した牛血液から分離した牛血漿の総蛋白濃度を6.5g/dlに調整し、血漿1Lを血漿プールとし、37℃に保ちながら血漿流量100ml/分で持続式血液濾過器内を再循環させた。同時に濾過流量10ml/分で濾過を行い、得られた濾液は血漿プールに戻し、3時間後のアルブミンの篩い係数(Alb−Sc)を計測した。
in vitroにおけるライフタイムの評価については、夫々の持続式血液濾過器の内部を生理食塩液500mLで洗浄し、体外循環回路と連結した。抗凝固剤としてヘパリン系抗凝固剤を添加した牛血液2000mL(血小板濃度25万個/μL)を血液プールとし、37℃に保ち、血液流量50mL/分で持続式血液濾過器内を再循環させ、濾過流量10mL/分で濾過を行い、得られた濾液は血液プールに戻した。開始30分後にカルシウムイオノホアA23187を血中濃度10μMになるように添加し、持続式血液濾過器の圧力損失が150mmHgに到達する所要時間を測定した。
その結果、中空糸膜の内径が230μmの持続式血液濾過器においては、いずれのL/Dの持続式血液濾過器も圧力損失が150mmHgに到達する所要時間が200分より長かったが、とりわけ、L/Dが6.5以下のものは、所要時間が400分よりも長く、ライフタイムが極めて長いと判断された。結果を表7に示す。
[実施例23]<アルブミンScの経時変化と30時間試験のAlb総損失量の計算>
実施例15,16、18の持続式血液濾過器を用いて、牛血漿を用いて30時間の牛血漿濾過性能試験を行った。牛血漿の総蛋白濃度を6.5g/dlに調整し、血漿1Lを血漿プールとし、37℃に保ちながら血漿流量50ml/分で持続式血液濾過器内を再循環させた。同時に濾過流量10ml/分で濾過を行い、得られた濾液は血漿プールに戻した。その後、1時間、3時間、10時間、20時間、30時間後のアルブミンの篩い係数(Sc)を計測した。その結果を表8に示す。
これらの結果から、アルブミンの総損失量(30時間積算値)を以下の(I)〜(IV)の手順に従って求めた。
(I)1〜30時間までの実測アルブミン濃度より篩係数を算出する。
(II)(I)の篩係数から、近似曲線を描き、近似式を求める。
(III)(II)の近似式から、1〜30時間の15分毎の篩係数を求める。
(IV)1〜30時間の平均篩係数を求め、その値を下記式にあてはめる。
アルブミン総損失量(g)=アルブミン濃度(g/ml)×平均篩係数(1-30Hrの平均値)×濾過流量(ml/min)×時間(min)
上記の手順に従って、表8に示される本発明の血液濾過モジュールの篩係数の実測値から、求めた(II)の近似式は、
y= 0.0066x^(−0.4579)
と計算された。この近似式を用いて、1〜30時間の平均篩係数を求めると0.0022と計算された。アルブミン濃度としてヒト血漿中の平均アルブミン濃度0.045(g/ml)を用い、上記式より求められたアルブミンの総損失量は、1.82gと計算された。
一方、上記近似式から、30時間後のアルブミンの総損失量が3.0gを超えない、3時間後のアルブミンの篩係数(Sc)は、シミュレーションの結果、0.0054と計算された。
本発明の血液濾過用モジュールは、モジュールのライフタイムが長く、かつ、アルブミンの損失量も少ないので、持続式療法のように長時間に渡る血液濾過療法や血液濾過透析療法に有効に用いることができる。
本発明のライフタイム評価方法を行なう回路構成を示す概略図である。 血小板活性化試薬添加後のモジュール内圧力損失の変化を示すグラフである。 血小板活性化試薬を濃度別に添加した後のモジュール内圧力損失変化を示すグラフである。
符号の説明
1 ・・・ 血液流路
2 ・・・ 体外循環用モジュール
3 ・・・ 動脈側血液回路
4 ・・・ 静脈側血液回路
5 ・・・ 血液循環ポンプ
6 ・・・ 血液入口側圧力検出器
7 ・・・ 血液出口側圧力検出器
8 ・・・ 血液プール
9 ・・・ 濾過側回路
10・・・ 血液濾過ポンプ


Claims (5)

  1. 筒状容器の内部に中空糸膜の束が充填され、該中空糸膜の両端部が硬化性樹脂により筒状容器両端部にポッティング加工されて容器両端部で開口端面となっており、該開口端面の夫々に血液の入口または出口を有するヘッダーキャップが取り付けられ、更に中空糸膜濾過液側空間に通じる濾過液の流通口を有する中空糸膜型の体外循環用モジュールにおいて、
    該中空糸膜はポリスルホン系高分子とポリビニルピロリドンからなり、
    該中空糸膜の内径は205〜250μmであって、
    毛細管上昇法で測定した該中空糸膜の液面上昇値が内径230μmの中空糸膜に換算すると60mm〜120mmになり、
    該中空糸膜の開口端面間距離をL、該筒状容器の最小内径をDとしたときのL/Dが3.5〜6.5であり、かつ
    以下a〜dからなる体外循環用モジュールのライフタイム評価条件;
    a)血液プールを30〜37℃に加温し:
    b)血液濾過ポンプを配した濾過回路を体外循環モジュールの濾過側に接続し:
    c)血液循環ポンプにより50ml/分の血液流量で血液を循環させ、血液濾過ポンプにより10ml/分の流量で得た濾液を血液プールに戻す血液循環を施行しながら:
    d)血液循環開始から30分経過後にカルシウムイオノホアA23187を10μMとなるように循環血液に添加する:
    において、体外循環用モジュールの血液入口側と出口側との圧力損失が150mmHgに到達する所要時間が200分以上であることを特徴とする、血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
  2. in vitroにおける牛血漿濾過性能試験における3時間後のアルブミンの篩係数が0.0054以下であることを特徴とする、請求項1記載の血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
  3. 前記中空糸膜の筒状容器への充填率が50%以上75%未満である請求項1〜の何れかに記載の血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
  4. 照射滅菌されている請求項1〜の何れかに記載の血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
  5. 抗酸化剤溶液が充填されている請求項1〜の何れかに記載の血液濾過または血液濾過透析用のモジュール。
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