JP4386607B2 - ポリスルホン系血液浄化膜の製造方法およびポリスルホン系血液浄化膜 - Google Patents

ポリスルホン系血液浄化膜の製造方法およびポリスルホン系血液浄化膜 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はポリスルホン系血液浄化膜の製造方法およびその製造方法によって得られるポリスルホン系血液浄化膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、選択透過性分離膜を用いた分離技術である限外濾過法、逆浸透法、気体分離法等が各種の分野において実用化されており、その多様な用途に各々適する素材から作られた分離膜が市販されている。選択透過性分離膜の素材としては、セルロース系、セルロースアセテート系、ポリアミド系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリメチルメタクリレート系、ポリスルホン系、ポリオレフィン系などのポリマーが使用されている。中でもポリスルホン系ポリマーは、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、耐酸化性などの物理化学的性質が優れていることから、近年の医療用、工業用分離膜素材として注目されている。
【0003】
しかしながら、ポリスルホン系ポリマーは疎水性の素材であるために、これを素材とした選択透過性分離膜は、親水性ポリマーを素材とした選択透過性分離膜に比べて水濡れ性がよくない。このため、医療用とした場合、血漿蛋白の吸着が起こりやすく、気泡の抜けが悪いため膜中に残った気泡が血中へ抜け出し血小板を活性化することで血液凝固に至るという欠点が指摘されている。
【0004】
そこで、ポリスルホン系ポリマーから成る選択透過性分離膜に親水性を付与して水濡れ性を向上させるための検討がなされ、そのひとつの方法として、ポリスルホン系ポリマーに親水性ポリマーを含有させた選択透過性分離膜とその製法が提案されている。しかし、親水性ポリマーの含有量が少ないと、水濡れ性が悪くなって血液凝固を引き起こし、親水性ポリマーの含有量が多いと、洗浄不足になりがちで膜からの親水性ポリマーの溶出量が多くなるという問題点がある。
【0005】
特開昭61-238306号公報、同63-97666号公報には、ポリスルホン系ポリマー、親水性ポリマー、該ポリスルホン系ポリマーに対して非溶媒もしくは膨潤剤なる添加剤を加えた系を紡糸原液として用いたポリスルホン系分離膜の製造方法が開示されている。また、特開昭63-97205号公報、同63-97634号公報、特開平4-300636号公報には、上記方法で製造されたポリスルホン系分離膜に放射線処理および/または熱処理を施して親水性ポリマーを固定する方法が開示されている。特開平6-165926号公報ではポリグリコール類とビニルピロリドン系ポリマーを含有するポリスルホン系中空糸膜を水洗、熱水洗処理、該ポリスルホン系ポリマーに対して貧溶媒作用を有する溶液での処理を行ない中空繊維膜を製造する方法が開示されている。一方、特開平11-309355号公報には、血液適合性を十分に保つのに必要な中空糸内表面の親水性高分子濃度が30%以上であると規定されている。
【0006】
しかし、これらの製法においては、いずれも血液適合性が十分となるまで表面親水性を上げようとする場合、紡糸原液中に多量の親水性ポリマーを含有させなくてはならず、その結果、製造コストがかかるのみならず、フィラメント強度が低下し、血液浄化膜として適さなくなるという問題点があった。
また、表面親水性を上げるために、ポリビニルピロリドンを含まない中空糸膜の血液接触面に対してのみ、後からポリビニルピロリドンを付与する方法も考えられるが、この場合は、ポリビニルピロリドンの固定が十分にできないため、中空糸膜からの溶出を避けられない懸念があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みて、紡糸原液中のポリビニルピロリドン濃度を上げることなく、中空糸膜の内表面ポリビニルピロリドン濃度が高く、しかも、フィラメント強度が高いポリスルホン系血液浄化膜を製造する方法を提供することを課題とする。また、本発明は、その製造方法によるポリスルホン系血液浄化膜を提供することも課題とする。
【0008】
【課題を解決する手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、紡糸後の中空糸を湿潤状態から乾燥状態にする際、中空糸膜を特定の体積変化率で収縮させることにより、ポリビニルピロリドンを中空糸内表面に濃縮することが可能であることを見出した。本発明者らは、これによって、紡糸原液中のポリビニルピロリドン含量を低く抑えつつも十分な血液適合性を確保でき、しかもフィラメント強度を高く維持できることを確認して本発明を完成するに至った。
【0009】
さらに、本発明者らは、紡糸後の中空糸膜を、含水率を一定値以上に湿潤させて、あるいは紡糸後の中空糸膜に所定値以下の濃度の孔径保持剤溶液を付与した後に、乾燥させることによって、所望の体積変化率に収縮させることができることを見出して本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下(1)、(2)のポリスルホン系血液浄化膜の製造方法に関する。
(1)ポリスルホンとポリビニルピロリドン、およびジメチルアセトアミドを含む紡糸原液であって、ポリビニルピロリドン重量/(ポリスルホン重量+ポリビニルピロリドン重量)×100で規定されるポリビニルピロリドン濃度が13〜23%である紡糸原液から中空糸膜型のポリスルホン系血液浄化膜を製造する方法において、紡糸後の中空糸膜に孔径保持剤溶液を付与しない状態で、中空糸膜を湿潤状態から乾燥状態にする際、該中空糸膜を水に浸漬することによって含水率200%以上315%以下の湿潤状態になるようよう調整した後、乾燥することにより体積変化率5%以上15%以下収縮させて、かつ該中空糸膜の内表面ポリビニルピロリドン濃度と紡糸原液中ポリビニルピロリドン濃度の比である濃縮率が2.03以上、4以下であることを特徴とするフィラメント強度が25g以上であるポリスルホン系血液浄化膜の製造方法。
(2)中空糸膜の内表面ポリビニルピロリドン濃度が33〜40重量%である前記(1)に記載のポリスルホン系血液浄化膜の製造方法
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を述べる。
本発明で言うポリスルホンポリマー(以下PSf)とは、スルホン結合を有する高分子結合物の総称であり特に限定するものでないが、例を挙げると
【化1】
Figure 0004386607
または
【化2】
Figure 0004386607
に示される繰り返し単位をもつポリスルホン系ポリマー樹脂が広く市販されており、入手も容易なため好ましく用いられる。前者の構造を持つポリスルホン樹脂はアモコ・エンジニアリング・ポリマーズ社より「ユーデル」の商標名で、またビー・エー・エス・エフ社より「ウルトラゾーン」の商標名で市販されており、重合度等によっていくつかの種類が存在する。
【0012】
また、本発明のポリビニルピロリドン(以下、PVP)は、N−ビニルピロリドンをビニル重合させた水溶性の高分子化合物であり、アイ・エス・ピー社より「プラスドン」の商標名で、また、ビー・エー・エス・エフ社より「コリドン」の商標名で市販されており、それぞれいくつかの分子量のものがある。
【0013】
中空糸膜の血液適合性に重要な因子は、膜表面の親水性であり、PVPを含有するポリスルホン系中空糸膜では、膜の内表面PVP濃度が重要である。内表面PVP濃度が低すぎると、膜表面の疎水性が高くなるので、血漿タンパクが吸着しやすく血液の凝固も起こりやすい。すなわち、血液適合性が不良となる。逆に、内表面PVP濃度が高すぎると、PVPの血液等への溶出量が増加し、本発明の目的や用途にとって好ましくない結果を与える。従って、本発明での内表面PVP濃度は、33%〜40%の範囲が好ましい。
【0014】
中空糸膜の内表面PVP濃度は、X線光電子分光法(ESCA)によって決定される。すなわち、中空糸膜の試料を両面テープ上に並べた後、カッターで繊維軸方向に切開し、中空糸膜の内側が表になるように押し広げたものを数本並べて試料とし、通常の方法で表面の元素濃度を測定する。得られたC1s、O1s、N1s、S2pスペクトルの面積強度より、装置付属の相対感度係数を用いて窒素の表面濃度(A)とイオウの表面濃度(B)求め、下記の式
内表面PVP濃度=A×111×100/(A×111+B×442)
より内表面PVP濃度を算出する。
【0015】
本発明における中空糸膜の製膜に際しては、従来より一般的に知られている技術である乾湿式製膜技術を利用できる。すなわち、まず、PSfとPVPを両方に共通溶媒に溶解し、均一な紡糸原液を調整する。このようなPSf及びPVPを共に溶解する共通溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジオキサン等の多種の溶媒あるいは上記2種以上の混合液からなる溶媒が挙げられる。本発明の紡糸原液は、これらのPSfとPVPと溶媒とを少なくとも含有していれば良く、紡糸原液には、孔径制御のための水などの他の添加物を加えても良い。
【0016】
PVPを紡糸原液へ添加する目的は、中空糸膜内にPVPを残存させて膜に親水性を付与することである。従って、用いるPVPの分子量は重要である。PVPの分子量が小さすぎると膜への残存率が低いため、紡糸原液の凝固時や紡糸後の中空糸膜の洗浄時にPVPが容易に膜から溶出してしまう、すなわちロスが増える。そのため、中空糸膜に一定の親水性を付与するのに必要なPVPを中空糸膜中に残存させるには、より多量のPVPを紡糸原液へ添加せざるを得なくなって製造コストを増大させる結果となる。このため、PVPの中空糸膜への残存率を高めるには分子量が大きい方が好ましく、次式によって定義されるK-値が88〜95、好ましくは89〜94がよい。
【式1】
Figure 0004386607
ここで、Zは濃度Cの溶液の相対粘度率、 およびCは(重量/容量)%の濃度である。
【0017】
紡糸原液中のPSfとPVPの相対量は得られる中空糸膜の内表面PVP濃度を決定するうえで極めて重要である。中空糸内表面に存在するPVP濃度は、紡糸原液と中空内液が接触する中空糸内表面の凝固面におけるPSfとPVPの重量比率により支配される。従って、従来の技術では、十分な生体適合性を示す内表面PVP濃度を得ようとすると、紡糸原液中のPVP濃度もそれ相応に高める必要があった。その結果、膜中に残存するPVPの量は増大するが、PVPの溶出量も増大してしまうという問題や、中空糸膜のフィラメント強度が低下するという問題が発生していた。なお、本発明において、紡糸原液中のPVP濃度(%)というときには、PSfとPVPの相対量、すなわち、紡糸原液中のPVP重量/(PSf重量+PVP重量)×100のことをいう。
【0018】
フィラメント強度を高めるためには、紡糸原液中のPVPを極力減らす必要がある。その理由は、フィラメント強度は主に中空糸膜中のPSfによりもたらされるため、紡糸原液中にPVPが多量に混入する場合、PVPがPSf骨格を作る際の不純物として働き、フィラメント強度が低下することによるものと考えられる。ここでいうフィラメント強度とは、一本の中空糸膜の両端を固定し、破断するまで引っ張った時にかかる最大荷重を言う。フィラメント強度は高い方がよく、25gを下回るフィラメント強度であると血液浄化膜用途で使用する場合、使用条件によっては破断する恐れがある。
【0019】
本発明では、紡糸後の中空糸膜を湿潤状態から乾燥状態にする際、強制的に乾燥収縮による体積変化を起こすことで、中空糸内表面にPVPを濃縮することが可能であることを見出した。ここでいう湿潤状態とは、紡糸、水洗後の中空糸が一度も乾燥されること無く、空隙部分が水若しくは他の液体で満たされている状態をいう。乾燥状態とは、乾燥工程後、それ以上乾燥を継続してもその乾燥工程の雰囲気下ではそれ以上重量変化を起こさなくなるまで水分を除去した状態をいう。
【0020】
膜の内表面PVP濃度(重量%)を33%以上とし、25g以上の十分なフィラメント強度を得るには、中空糸膜の製造工程で紡糸原液中のPVPを効率よく膜表面に濃縮する必要がある。ここで、ESCAにより求めた中空糸膜の内表面PVP濃度、すなわち、内表面のPVPの存在比率(PVP(重量)/PSf(重量)+PVP(重量))を紡糸原液中のPVPの存在比率(PVP(重量)/PSf(重量)+PVP(重量))で除した値、すなわち中空糸膜の内表面PVP濃度と紡糸原液中のPVP濃度との比をPVPの濃縮率と定義すると、本発明の製造方法においては、濃縮率1.5以上が必要である。濃縮率1.5以下では、内表面のPVP濃度を33%以上にしようとすると、紡糸原液中のPVP濃度が高くなりすぎ、必要なフィラメント強度を得るのが困難となる。また、濃縮率4以上では、PVPが過剰に濃縮されるため、膜からの溶出が懸念される。従って、濃縮率は1.5以上が必要であり、好ましくは1.5以上4以下である。
【0021】
本発明では、PVPの濃縮率を1.5以上とするためには、紡糸後の中空糸膜を湿潤状態から乾燥状態にする際に、中空糸膜の体積変化率を5%以上収縮させる必要がある。体積変化率が5%以下では、濃縮率を1.5以上に高めることが困難であり、15%以上では、中空糸膜の収縮が著しくなって透水性能や透過性能の制御が困難である。従って、体積変化率を5%以上15%以下とすることが必要であり、好ましくは6%以上10%以下である。
【0022】
ここでいう体積変化率とは、紡糸後の湿潤状態の中空糸膜を300mmに切断し、内径、外径、長さから、中空部分を除いた円環部分の体積を求め、同様に、乾燥後の中空糸も体積を求めた時に、
体積変化率=(乾燥前体積−乾燥後体積/乾燥前体積)×100
の式に従い、算出された数値を言う。体積はそれぞれ10本の中空糸の平均値を用いる。
【0023】
体積変化率を制御する方法としては、温度、除湿速度、熱源等の乾燥条件を最適化する方法や中空糸膜の凝固過程で熱セット等の前処理を施す方法もあるが、中空糸膜に孔径保持剤溶液を付与してから乾燥する方法が好ましく用いられる。中空糸膜に孔径保持剤溶液を付与するためには、紡糸凝固後に孔径保持剤溶液に浸漬する方法、あるいは孔径保持剤溶液のシャワーをかける方法などが採用できる。
【0024】
体積変化率を5%以上にするには、孔径保持剤として通常用いられるグリセリン、ポリエチレングリコール等を水その他の溶媒で所定の溶液濃度に調整し、中空糸膜に付与した後に中空糸膜を乾燥すればよい。孔径保持剤溶液の濃度が20%以上では、中空糸膜は殆ど体積変化を示さず、20%より減らしていくと除々に体積変化を起こす。溶液濃度をさらに下げていくと、12%前後で中空糸膜の体積変化率5%が達成され、孔径保持剤を全く使用しない場合に体積変化率は最大の15%になる。従って、孔径保持剤溶液の濃度としては、12%以下が望ましく、10%以下がさらに好ましい。最も好ましいのは、溶液濃度が0%、すなわち、孔径保持剤を用いずに乾燥することである。
【0025】
孔径保持剤を用いない場合、重要なのは乾燥前の湿潤状態の中空糸膜の含水率であり、含水率が200%以上あるのが望ましい。ここでいう含水率とは
(乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥後重量 ×100
より求められる。含水率が200%より小さいと乾燥後の束の性能バラツキが大きくなり、また、体積変化率も小さくなるため、PVPの中空糸内表面への濃縮効果が十分でない。なお、前記処理を行うにあたって、乾燥前に中空糸膜に熱処理、延伸等の操作を併用してもかまわない。
【0026】
以上のような方法により、紡糸原液中のPVPの濃度を低くしても内表面PVP濃度を高くすることが可能である。内表面PVP濃度を33%以上、フィラメント強度25g以上にする場合、好ましい紡糸原液中のPVP濃度は13〜23%、さらに好ましくは16〜20%である。
【0027】
中空内液は水、または水を主体とした凝固液が使用でき、目的とする中空糸膜の膜性能に応じて決定される。例えば5〜60重量%のジメチルアセトアミド水溶液などが用いられるが、特に10〜60重量%であることが好ましい。
【0028】
中空糸膜を製膜するに際してはチューブインオリフィス型の二重紡口を用い、該紡口から前記紡糸原液と該紡糸原液を凝固させる為の中空内液とを同時に空中に押し出し、1〜100cmの空走部を走行させた後、紡口下部に設置した水を主体とする凝固浴中へ浸漬、凝固させた後巻き取り、乾燥を行う。従来の技術では、この時、グリセリンなどの孔径保持剤を用い、膜の孔径を保持するのが普通であったが、この場合、体積変化率が小さく、乾燥収縮により、膜中に存在するPVPが中空糸内表面側に濃縮される効果が期待できなかった。本発明では、孔径保持剤の添加量を意図的に減らし、または孔径保持剤を使用しないことにより、あえて体積変化率を大きくし、PVPを中空糸内表面に濃縮することに成功した。
【0029】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
本発明での透水量および篩い係数は、以下のように測定したものである。すなわち、乾燥させたポリスルホン中空糸膜100本からなるミニモジュール(有効長18cm)を組立成型し、膜間圧力差を200mmHgとしてストップ法にて透水量を測定した(単位はml/Hr/m/mmHg)。続いてさらに、人血清を用いてβ2ミクログロブリン(以下β2-mg)、アルブミン(以下Alb)の篩い係数を測定した。篩い係数の測定は、0.4cm/secの線速になるように流量を調整し、膜間圧力差25mmHgの濾過圧力をかけて次式から算出した。β2-mgおよびAlbの濃度は、それぞれEIA法、BCG法を用いて求めた。
篩い係数 = 濾液の濃度 / 元液の濃度
尚、人血清は使用前、生理食塩水を加えて総タンパク濃度を6.5g/dlになるように調整したものを用いた。
フィラメント強度はORIENTEC社TENSILON;RTC−1210を用い、中空糸膜を破断するまで引っ張り、その時かかった最大荷重をフィラメント強度とした。
【0030】
【実施例1】
ポリスルホン樹脂(アモコ・エンジニアリング・ポリマーズ社製、P−1700)18重量部、ポリビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K−92)4重量部、ジメチルアセトアミド(以下、DMAC)78重量部、からなる均一な紡糸原液を作成した。この紡糸原液中のPVP濃度は18.2%である。DMAC濃度54重量%の中空内液とともにスリット幅50μmの環状口金から吐出し、80cm下方に設けた60℃の水中に浸漬し68.5m/分の速度で巻き取った。中空糸膜厚を50μm、内径を200μmに合わせるように紡糸原液、中空内液の吐出量を調製した。9500mmフィラメント巻き取ったところで、ロープを300mmに切断し、次いで、OLYMPUS社製のMEASURING MICROSCOPE STM−UMで内径、膜厚を測定し乾燥前体積を求めた。尚、糸の体積は10本測定し、その平均値とした。次に水に浸漬することによって湿潤状態の中空糸の含水率を310%になるよう調整した後、85℃にて7時間熱風乾燥させた。乾燥後、再び内径、膜厚、長さを測定して、体積変化率を求めた。続いて中空糸膜を二亜硫酸ナトリウム300ppmと炭酸ナトリウム100ppmを溶解させた水溶液に浸漬させ、25kGyのγ線を照射し、ポリスルホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PVP濃度、フィラメント強度、透過性能(透水量、β2-mg篩係数及びAlb篩係数)の測定を行った。これらの結果を表1に示す。表1には、PVP濃縮率、乾燥前体積、乾燥後体積、体積変化率もともに示した。
【0031】
【実施例2】
DMAC濃度52重量%の中空内液を用いたことと、乾燥前5重量%のグリセリン水溶液に中空糸を浸漬させた以外は実施例1と同様な方法でポリスルホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PVP濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0032】
【実施例3】
DMAC濃度50重量%の中空内液を用いたことと、乾燥前8重量%のグリセリン水溶液に中空糸を浸漬させた以外は実施例1と同様な方法でポリスルホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PVP濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0033】
【実施例4】
ポリスルホン樹脂(アモコ・エンジニアリング・ポリマーズ社製、P−1700)18重量部、ポリビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K−92)3重量部、DMAC79重量部の紡糸原液を使用し、DMAC濃度53%の中空内液を用いた以外は実施例1と同様な方法でポリスルホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PVP濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0034】
【比較例1】
DMAC濃度35重量%の中空内液を用いたことと、乾燥前20重量%のグリセリン水溶液に中空糸を浸漬させた以外は実施例1と同様な方法でポリスルホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PVP濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行った。これらの結果を表1に示す。20重量%のグリセリン水溶液を付与した場合、体積変化率が小さく、PVPの内表面への濃縮が不十分であった。
【0035】
【比較例2】
ポリスルホン樹脂(アモコ・エンジニアリング・ポリマーズ社製、P−1700)18重量部、ポリビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K−92)6.5重量部、DMAC75.5重量部の紡糸原液(PVP濃度26.5%)を使用し、DMAC25重量%の中空内液を用い、乾燥前20重量%のグリセリン水溶液に中空糸を浸漬させた以外は、実施例1と同様な方法でポリスルホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PVP濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行った。これらの結果を表1に示す。紡糸原液中のPVP濃度が高く、孔径保持剤濃度も高い比較例2ではフィラメント強度がかなり低くなった。
【0036】
【比較例3】
ポリスルホン樹脂(アモコ・エンジニアリング・ポリマーズ社製、P−1700)16重量部、ポリビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K−92)3.5重量部、DMAC80.5重量部の紡糸原液(PVP濃度18.0%)を使用し、DMAC52重量%の中空内液を用いた以外は実施例1と同様な方法でポリスルホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PVP濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行った。これらの結果を表1に示す。比較例3の膜は体積変化率が15.1と大きかったため、透過性能のバラツキが他の例に比べ大きかった。
【0037】
【比較例4】
乾燥前中空糸膜の含水率を150%前後なるよう調整した以外は実施例1と同様な方法でポリスルホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PVP濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行った。これらの結果を表1に示す。乾燥前含水率が低いため、透過性能のバラツキが大きかった。
【0038】
【表1】
Figure 0004386607
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように、紡糸後の中空糸膜を湿潤状態から乾燥状態にする際、中空糸膜の体積変化率を特定範囲に制御して乾燥することにより、PVP濃度を極力少なくした紡糸原液から、PVPを中空糸内表面に効率よく濃縮されたポリスルホン系血液浄化膜を製造することができた。また、これによって、フィラメント強度を損なうことなく十分な生体適合性を示す膜が得られた。

Claims (2)

  1. ポリスルホンとポリビニルピロリドン、およびジメチルアセトアミドを含む紡糸原液であって、ポリビニルピロリドン重量/(ポリスルホン重量+ポリビニルピロリドン重量)×100で規定されるポリビニルピロリドン濃度が13〜23%である紡糸原液から中空糸膜型のポリスルホン系血液浄化膜を製造する方法において、紡糸後の中空糸膜に孔径保持剤溶液を付与しない状態で、中空糸膜を湿潤状態から乾燥状態にする際、該中空糸膜を水に浸漬することによって含水率200%以上315%以下の湿潤状態になるよう調整した後、乾燥することにより体積変化率5%以上15%以下収縮させて、かつ該中空糸膜の内表面ポリビニルピロリドン濃度と紡糸原液中ポリビニルピロリドン濃度の比である濃縮率が2.03以上、4以下であることを特徴とするフィラメント強度が25g以上であるポリスルホン系血液浄化膜の製造方法。
  2. 中空糸膜の内表面ポリビニルピロリドン濃度が33〜40重量%である請求項1に記載のポリスルホン系血液浄化膜の製造方法
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