JP2003154240A - ポリスルホン系血液浄化膜の製造方法およびポリスルホン系血液浄化膜 - Google Patents

ポリスルホン系血液浄化膜の製造方法およびポリスルホン系血液浄化膜

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 中空糸膜の内表面ポリビニルピロリドン濃度
が高く、しかも、フィラメント強度が高いポリスルホン
系血液浄化膜を製造する方法を提供すること。 【解決手段】 ポリスルホンとポリビニルピロリドン、
および溶剤を含む紡糸原液から中空糸膜型のポリスルホ
ン系血液浄化膜を製造する方法において、紡糸後の中空
糸膜を湿潤状態から乾燥状態にする際、該中空糸膜を体
積変化率5%以上15%以下収縮させることを特徴とす
るポリスルホン系血液浄化膜の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリスルホン系血液浄化
膜の製造方法およびその製造方法によって得られるポリ
スルホン系血液浄化膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、選択透過性分離膜を用いた分離技
術である限外濾過法、逆浸透法、気体分離法等が各種の
分野において実用化されており、その多様な用途に各々
適する素材から作られた分離膜が市販されている。選択
透過性分離膜の素材としては、セルロース系、セルロー
スアセテート系、ポリアミド系、ポリアクリロニトリル
系、ポリビニルアルコール系、ポリメチルメタクリレー
ト系、ポリスルホン系、ポリオレフィン系などのポリマ
ーが使用されている。中でもポリスルホン系ポリマー
は、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、耐酸化性などの物
理化学的性質が優れていることから、近年の医療用、工
業用分離膜素材として注目されている。
【0003】しかしながら、ポリスルホン系ポリマーは
疎水性の素材であるために、これを素材とした選択透過
性分離膜は、親水性ポリマーを素材とした選択透過性分
離膜に比べて水濡れ性がよくない。このため、医療用と
した場合、血漿蛋白の吸着が起こりやすく、気泡の抜け
が悪いため膜中に残った気泡が血中へ抜け出し血小板を
活性化することで血液凝固に至るという欠点が指摘され
ている。
【0004】そこで、ポリスルホン系ポリマーから成る
選択透過性分離膜に親水性を付与して水濡れ性を向上さ
せるための検討がなされ、そのひとつの方法として、ポ
リスルホン系ポリマーに親水性ポリマーを含有させた選
択透過性分離膜とその製法が提案されている。しかし、
親水性ポリマーの含有量が少ないと、水濡れ性が悪くな
って血液凝固を引き起こし、親水性ポリマーの含有量が
多いと、洗浄不足になりがちで膜からの親水性ポリマー
の溶出量が多くなるという問題点がある。
【0005】特開昭61-238306号公報、同63-97666号公
報には、ポリスルホン系ポリマー、親水性ポリマー、該
ポリスルホン系ポリマーに対して非溶媒もしくは膨潤剤
なる添加剤を加えた系を紡糸原液として用いたポリスル
ホン系分離膜の製造方法が開示されている。また、特開
昭63-97205号公報、同63-97634号公報、特開平4-300636
号公報には、上記方法で製造されたポリスルホン系分離
膜に放射線処理および/または熱処理を施して親水性ポ
リマーを固定する方法が開示されている。特開平6-1659
26号公報ではポリグリコール類とビニルピロリドン系ポ
リマーを含有するポリスルホン系中空糸膜を水洗、熱水
洗処理、該ポリスルホン系ポリマーに対して貧溶媒作用
を有する溶液での処理を行ない中空繊維膜を製造する方
法が開示されている。一方、特開平11-309355号公報に
は、血液適合性を十分に保つのに必要な中空糸内表面の
親水性高分子濃度が30%以上であると規定されてい
る。
【0006】しかし、これらの製法においては、いずれ
も血液適合性が十分となるまで表面親水性を上げようと
する場合、紡糸原液中に多量の親水性ポリマーを含有さ
せなくてはならず、その結果、製造コストがかかるのみ
ならず、フィラメント強度が低下し、血液浄化膜として
適さなくなるという問題点があった。また、表面親水性
を上げるために、ポリビニルピロリドンを含まない中空
糸膜の血液接触面に対してのみ、後からポリビニルピロ
リドンを付与する方法も考えられるが、この場合は、ポ
リビニルピロリドンの固定が十分にできないため、中空
糸膜からの溶出を避けられない懸念があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術の問題点に鑑みて、紡糸原液中のポリビニルピロリド
ン濃度を上げることなく、中空糸膜の内表面ポリビニル
ピロリドン濃度が高く、しかも、フィラメント強度が高
いポリスルホン系血液浄化膜を製造する方法を提供する
ことを課題とする。また、本発明は、その製造方法によ
るポリスルホン系血液浄化膜を提供することも課題とす
る。
【0008】
【課題を解決する手段】本発明者らは、上記課題を達成
すべく鋭意検討した結果、紡糸後の中空糸を湿潤状態か
ら乾燥状態にする際、中空糸膜を特定の体積変化率で収
縮させることにより、ポリビニルピロリドンを中空糸内
表面に濃縮することが可能であることを見出した。本発
明者らは、これによって、紡糸原液中のポリビニルピロ
リドン含量を低く抑えつつも十分な血液適合性を確保で
き、しかもフィラメント強度を高く維持できることを確
認して本発明を完成するに至った。
【0009】さらに、本発明者らは、紡糸後の中空糸膜
を、含水率を一定値以上に湿潤させて、あるいは紡糸後
の中空糸膜に所定値以下の濃度の孔径保持剤溶液を付与
した後に、乾燥させることによって、所望の体積変化率
に収縮させることができることを見出して本発明に至っ
た。
【0010】すなわち、本発明は、以下(1)〜(6)
のポリスルホン系血液浄化膜の製造方法及びポリスルホ
ン系血液浄化膜に関する。 (1)ポリスルホンとポリビニルピロリドン、および溶
剤を含む紡糸原液から中空糸膜型のポリスルホン系血液
浄化膜を製造する方法において、紡糸後の中空糸膜を湿
潤状態から乾燥状態にする際、該中空糸膜を体積変化率
5%以上、15%以下収縮させることを特徴とするポリ
スルホン系血液浄化膜の製造方法。 (2)紡糸後の中空糸膜を湿潤状態から乾燥状態にする
際、該中空糸膜を含水率200%以上の湿潤状態から乾
燥することを特徴とする(1)に記載のポリスルホン系
血液浄化膜の製造方法。 (3)紡糸後の中空糸膜を湿潤状態から乾燥状態にする
際、該中空糸膜に溶液濃度10%重量以下の孔径保持剤
溶液を付与した後、乾燥することを特徴とする(1)ま
たは(2)に記載のポリスルホン系血液浄化膜の製造方
法。 (4)紡糸後の中空糸膜を湿潤状態から乾燥状態にする
際、該中空糸膜に孔径保持剤溶液を付与しないことを特
徴とする(1)または(2)に記載のポリスルホン系血
液浄化膜の製造方法。 (5)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造
方法によって得られる中空糸膜型のポリスルホン系血液
浄化膜であって、該中空糸膜の内表面ポリビニルピロリ
ドン濃度と紡糸原液中ポリビニルピロリドン濃度の比で
ある濃縮率が1.5以上、4以下であることを特徴とす
るポリスルホン系血液浄化膜。 (6)中空糸膜の内表面ポリビニルピロリドン濃度が3
3〜40%、フィラメント強度が25g以上である
(5)に記載のポリスルホン系血液浄化膜。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細を述べる。本
発明で言うポリスルホンポリマー(以下PSf)とは、
スルホン結合を有する高分子結合物の総称であり特に限
定するものでないが、例を挙げると
【化1】 または
【化2】 に示される繰り返し単位をもつポリスルホン系ポリマー
樹脂が広く市販されており、入手も容易なため好ましく
用いられる。前者の構造を持つポリスルホン樹脂はアモ
コ・エンジニアリング・ポリマーズ社より「ユーデル」
の商標名で、またビー・エー・エス・エフ社より「ウル
トラゾーン」の商標名で市販されており、重合度等によ
っていくつかの種類が存在する。
【0012】また、本発明のポリビニルピロリドン(以
下、PVP)は、N−ビニルピロリドンをビニル重合さ
せた水溶性の高分子化合物であり、アイ・エス・ピー社
より「プラスドン」の商標名で、また、ビー・エー・エ
ス・エフ社より「コリドン」の商標名で市販されてお
り、それぞれいくつかの分子量のものがある。
【0013】中空糸膜の血液適合性に重要な因子は、膜
表面の親水性であり、PVPを含有するポリスルホン系
中空糸膜では、膜の内表面PVP濃度が重要である。内
表面PVP濃度が低すぎると、膜表面の疎水性が高くな
るので、血漿タンパクが吸着しやすく血液の凝固も起こ
りやすい。すなわち、血液適合性が不良となる。逆に、
内表面PVP濃度が高すぎると、PVPの血液等への溶
出量が増加し、本発明の目的や用途にとって好ましくな
い結果を与える。従って、本発明での内表面PVP濃度
は、33%〜40%の範囲が好ましい。
【0014】中空糸膜の内表面PVP濃度は、X線光電
子分光法(ESCA)によって決定される。すなわち、
中空糸膜の試料を両面テープ上に並べた後、カッターで
繊維軸方向に切開し、中空糸膜の内側が表になるように
押し広げたものを数本並べて試料とし、通常の方法で表
面の元素濃度を測定する。得られたC1s、O1s、N
1s、S2pスペクトルの面積強度より、装置付属の相
対感度係数を用いて窒素の表面濃度(A)とイオウの表
面濃度(B)求め、下記の式内表面PVP濃度=A×1
11×100/(A×111+B×442)より内表面
PVP濃度を算出する。
【0015】本発明における中空糸膜の製膜に際して
は、従来より一般的に知られている技術である乾湿式製
膜技術を利用できる。すなわち、まず、PSfとPVP
を両方に共通溶媒に溶解し、均一な紡糸原液を調整す
る。このようなPSf及びPVPを共に溶解する共通溶
媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチル
スルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチル
ホルムアミド、スルホラン、ジオキサン等の多種の溶媒
あるいは上記2種以上の混合液からなる溶媒が挙げられ
る。本発明の紡糸原液は、これらのPSfとPVPと溶
媒とを少なくとも含有していれば良く、紡糸原液には、
孔径制御のための水などの他の添加物を加えても良い。
【0016】PVPを紡糸原液へ添加する目的は、中空
糸膜内にPVPを残存させて膜に親水性を付与すること
である。従って、用いるPVPの分子量は重要である。
PVPの分子量が小さすぎると膜への残存率が低いた
め、紡糸原液の凝固時や紡糸後の中空糸膜の洗浄時にP
VPが容易に膜から溶出してしまう、すなわちロスが増
える。そのため、中空糸膜に一定の親水性を付与するの
に必要なPVPを中空糸膜中に残存させるには、より多
量のPVPを紡糸原液へ添加せざるを得なくなって製造
コストを増大させる結果となる。このため、PVPの中
空糸膜への残存率を高めるには分子量が大きい方が好ま
しく、次式によって定義されるK-値が88〜95、好ま
しくは89〜94がよい。
【式1】 ここで、Zは濃度Cの溶液の相対粘度率、 およびCは
(重量/容量)%の濃度である。
【0017】紡糸原液中のPSfとPVPの相対量は得
られる中空糸膜の内表面PVP濃度を決定するうえで極
めて重要である。中空糸内表面に存在するPVP濃度
は、紡糸原液と中空内液が接触する中空糸内表面の凝固
面におけるPSfとPVPの重量比率により支配され
る。従って、従来の技術では、十分な生体適合性を示す
内表面PVP濃度を得ようとすると、紡糸原液中のPV
P濃度もそれ相応に高める必要があった。その結果、膜
中に残存するPVPの量は増大するが、PVPの溶出量
も増大してしまうという問題や、中空糸膜のフィラメン
ト強度が低下するという問題が発生していた。なお、本
発明において、紡糸原液中のPVP濃度(%)というと
きには、PSfとPVPの相対量、すなわち、紡糸原液
中のPVP重量/(PSf重量+PVP重量)×100
のことをいう。
【0018】フィラメント強度を高めるためには、紡糸
原液中のPVPを極力減らす必要がある。その理由は、
フィラメント強度は主に中空糸膜中のPSfによりもた
らされるため、紡糸原液中にPVPが多量に混入する場
合、PVPがPSf骨格を作る際の不純物として働き、
フィラメント強度が低下することによるものと考えられ
る。ここでいうフィラメント強度とは、一本の中空糸膜
の両端を固定し、破断するまで引っ張った時にかかる最
大荷重を言う。フィラメント強度は高い方がよく、25
gを下回るフィラメント強度であると血液浄化膜用途で
使用する場合、使用条件によっては破断する恐れがあ
る。
【0019】本発明では、紡糸後の中空糸膜を湿潤状態
から乾燥状態にする際、強制的に乾燥収縮による体積変
化を起こすことで、中空糸内表面にPVPを濃縮するこ
とが可能であることを見出した。ここでいう湿潤状態と
は、紡糸、水洗後の中空糸が一度も乾燥されること無
く、空隙部分が水若しくは他の液体で満たされている状
態をいう。乾燥状態とは、乾燥工程後、それ以上乾燥を
継続してもその乾燥工程の雰囲気下ではそれ以上重量変
化を起こさなくなるまで水分を除去した状態をいう。
【0020】膜の内表面PVP濃度(重量%)を33%
以上とし、25g以上の十分なフィラメント強度を得る
には、中空糸膜の製造工程で紡糸原液中のPVPを効率
よく膜表面に濃縮する必要がある。ここで、ESCAに
より求めた中空糸膜の内表面PVP濃度、すなわち、内
表面のPVPの存在比率(PVP(重量)/PSf(重
量)+PVP(重量))を紡糸原液中のPVPの存在比
率(PVP(重量)/PSf(重量)+PVP(重
量))で除した値、すなわち中空糸膜の内表面PVP濃
度と紡糸原液中のPVP濃度との比をPVPの濃縮率と
定義すると、本発明の製造方法においては、濃縮率1.
5以上が必要である。濃縮率1.5以下では、内表面の
PVP濃度を33%以上にしようとすると、紡糸原液中
のPVP濃度が高くなりすぎ、必要なフィラメント強度
を得るのが困難となる。また、濃縮率4以上では、PV
Pが過剰に濃縮されるため、膜からの溶出が懸念され
る。従って、濃縮率は1.5以上が必要であり、好まし
くは1.5以上4以下である。
【0021】本発明では、PVPの濃縮率を1.5以上
とするためには、紡糸後の中空糸膜を湿潤状態から乾燥
状態にする際に、中空糸膜の体積変化率を5%以上収縮
させる必要がある。体積変化率が5%以下では、濃縮率
を1.5以上に高めることが困難であり、15%以上で
は、中空糸膜の収縮が著しくなって透水性能や透過性能
の制御が困難である。従って、体積変化率を5%以上1
5%以下とすることが必要であり、好ましくは6%以上
10%以下である。
【0022】ここでいう体積変化率とは、紡糸後の湿潤
状態の中空糸膜を300mmに切断し、内径、外径、長さか
ら、中空部分を除いた円環部分の体積を求め、同様に、
乾燥後の中空糸も体積を求めた時に、 体積変化率=(乾燥前体積−乾燥後体積/乾燥前体積)
×100 の式に従い、算出された数値を言う。体積はそれぞれ1
0本の中空糸の平均値を用いる。
【0023】体積変化率を制御する方法としては、温
度、除湿速度、熱源等の乾燥条件を最適化する方法や中
空糸膜の凝固過程で熱セット等の前処理を施す方法もあ
るが、中空糸膜に孔径保持剤溶液を付与してから乾燥す
る方法が好ましく用いられる。中空糸膜に孔径保持剤溶
液を付与するためには、紡糸凝固後に孔径保持剤溶液に
浸漬する方法、あるいは孔径保持剤溶液のシャワーをか
ける方法などが採用できる。
【0024】体積変化率を5%以上にするには、孔径保
持剤として通常用いられるグリセリン、ポリエチレング
リコール等を水その他の溶媒で所定の溶液濃度に調整
し、中空糸膜に付与した後に中空糸膜を乾燥すればよ
い。孔径保持剤溶液の濃度が20%以上では、中空糸膜
は殆ど体積変化を示さず、20%より減らしていくと除
々に体積変化を起こす。溶液濃度をさらに下げていく
と、12%前後で中空糸膜の体積変化率5%が達成さ
れ、孔径保持剤を全く使用しない場合に体積変化率は最
大の15%になる。従って、孔径保持剤溶液の濃度とし
ては、12%以下が望ましく、10%以下がさらに好ま
しい。最も好ましいのは、溶液濃度が0%、すなわち、
孔径保持剤を用いずに乾燥することである。
【0025】孔径保持剤を用いない場合、重要なのは乾
燥前の湿潤状態の中空糸膜の含水率であり、含水率が2
00%以上あるのが望ましい。ここでいう含水率とは (乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥後重量 ×100 より求められる。含水率が200%より小さいと乾燥後
の束の性能バラツキが大きくなり、また、体積変化率も
小さくなるため、PVPの中空糸内表面への濃縮効果が
十分でない。なお、前記処理を行うにあたって、乾燥前
に中空糸膜に熱処理、延伸等の操作を併用してもかまわ
ない。
【0026】以上のような方法により、紡糸原液中のP
VPの濃度を低くしても内表面PVP濃度を高くするこ
とが可能である。内表面PVP濃度を33%以上、フィ
ラメント強度25g以上にする場合、好ましい紡糸原液
中のPVP濃度は13〜23%、さらに好ましくは16
〜20%である。
【0027】中空内液は水、または水を主体とした凝固
液が使用でき、目的とする中空糸膜の膜性能に応じて決
定される。例えば5〜60重量%のジメチルアセトアミ
ド水溶液などが用いられるが、特に10〜60重量%であ
ることが好ましい。
【0028】中空糸膜を製膜するに際してはチューブイ
ンオリフィス型の二重紡口を用い、該紡口から前記紡糸
原液と該紡糸原液を凝固させる為の中空内液とを同時に
空中に押し出し、1〜100cmの空走部を走行させた
後、紡口下部に設置した水を主体とする凝固浴中へ浸
漬、凝固させた後巻き取り、乾燥を行う。従来の技術で
は、この時、グリセリンなどの孔径保持剤を用い、膜の
孔径を保持するのが普通であったが、この場合、体積変
化率が小さく、乾燥収縮により、膜中に存在するPVP
が中空糸内表面側に濃縮される効果が期待できなかっ
た。本発明では、孔径保持剤の添加量を意図的に減ら
し、または孔径保持剤を使用しないことにより、あえて
体積変化率を大きくし、PVPを中空糸内表面に濃縮す
ることに成功した。
【0029】
【実施例】以下に実施例及び比較例を用いて本発明を詳
細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるも
のではない。本発明での透水量および篩い係数は、以下
のように測定したものである。すなわち、乾燥させたポ
リスルホン中空糸膜100本からなるミニモジュール
(有効長18cm)を組立成型し、膜間圧力差を200
mmHgとしてストップ法にて透水量を測定した(単位
はml/Hr/m/mmHg)。続いてさらに、人血
清を用いてβ2ミクログロブリン(以下β2-mg)、アル
ブミン(以下Alb)の篩い係数を測定した。篩い係数の
測定は、0.4cm/secの線速になるように流量を
調整し、膜間圧力差25mmHgの濾過圧力をかけて次
式から算出した。β2-mgおよびAlbの濃度は、それぞれ
EIA法、BCG法を用いて求めた。 篩い係数 = 濾液の濃度 / 元液の濃度 尚、人血清は使用前、生理食塩水を加えて総タンパク濃
度を6.5g/dlになるように調整したものを用い
た。フィラメント強度はORIENTEC社TENSI
LON;RTC−1210を用い、中空糸膜を破断する
まで引っ張り、その時かかった最大荷重をフィラメント
強度とした。
【0030】
【実施例1】ポリスルホン樹脂(アモコ・エンジニアリ
ング・ポリマーズ社製、P−1700)18重量部、ポ
リビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K−9
2)4重量部、ジメチルアセトアミド(以下、DMA
C)78重量部、からなる均一な紡糸原液を作成した。
この紡糸原液中のPVP濃度は18.2%である。DM
AC濃度54重量%の中空内液とともにスリット幅50
μmの環状口金から吐出し、80cm下方に設けた60
℃の水中に浸漬し68.5m/分の速度で巻き取った。
中空糸膜厚を50μm、内径を200μmに合わせるよ
うに紡糸原液、中空内液の吐出量を調製した。9500
mmフィラメント巻き取ったところで、ロープを300
mmに切断し、次いで、OLYMPUS社製のMEAS
URING MICROSCOPE STM−UMで内
径、膜厚を測定し乾燥前体積を求めた。尚、糸の体積は
10本測定し、その平均値とした。次に水に浸漬するこ
とによって湿潤状態の中空糸の含水率を310%になる
よう調整した後、85℃にて7時間熱風乾燥させた。乾
燥後、再び内径、膜厚、長さを測定して、体積変化率を
求めた。続いて中空糸膜を二亜硫酸ナトリウム300p
pmと炭酸ナトリウム100ppmを溶解させた水溶液
に浸漬させ、25kGyのγ線を照射し、ポリスルホン
系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PVP
濃度、フィラメント強度、透過性能(透水量、β2-mg篩
係数及びAlb篩係数)の測定を行った。これらの結果を
表1に示す。表1には、PVP濃縮率、乾燥前体積、乾
燥後体積、体積変化率もともに示した。
【0031】
【実施例2】DMAC濃度52重量%の中空内液を用い
たことと、乾燥前5重量%のグリセリン水溶液に中空糸
を浸漬させた以外は実施例1と同様な方法でポリスルホ
ン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PV
P濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行った。
これらの結果を表1に示す。
【0032】
【実施例3】DMAC濃度50重量%の中空内液を用い
たことと、乾燥前8重量%のグリセリン水溶液に中空糸
を浸漬させた以外は実施例1と同様な方法でポリスルホ
ン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面PV
P濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行った。
これらの結果を表1に示す。
【0033】
【実施例4】ポリスルホン樹脂(アモコ・エンジニアリ
ング・ポリマーズ社製、P−1700)18重量部、ポ
リビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K−9
2)3重量部、DMAC79重量部の紡糸原液を使用し、
DMAC濃度53%の中空内液を用いた以外は実施例1
と同様な方法でポリスルホン系血液浄化膜を得た。得ら
れた中空糸膜の内表面PVP濃度、フィラメント強度、
透過性能の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0034】
【比較例1】DMAC濃度35重量%の中空内液を用い
たことと、乾燥前20重量%のグリセリン水溶液に中空
糸を浸漬させた以外は実施例1と同様な方法でポリスル
ホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面P
VP濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行っ
た。これらの結果を表1に示す。20重量%のグリセリ
ン水溶液を付与した場合、体積変化率が小さく、PVPの
内表面への濃縮が不十分であった。
【0035】
【比較例2】ポリスルホン樹脂(アモコ・エンジニアリ
ング・ポリマーズ社製、P−1700)18重量部、ポ
リビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K−9
2)6.5重量部、DMAC75.5重量部の紡糸原液
(PVP濃度26.5%)を使用し、DMAC25重量
%の中空内液を用い、乾燥前20重量%のグリセリン水
溶液に中空糸を浸漬させた以外は、実施例1と同様な方
法でポリスルホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸
膜の内表面PVP濃度、フィラメント強度、透過性能の
測定を行った。これらの結果を表1に示す。紡糸原液中
のPVP濃度が高く、孔径保持剤濃度も高い比較例2で
はフィラメント強度がかなり低くなった。
【0036】
【比較例3】ポリスルホン樹脂(アモコ・エンジニアリ
ング・ポリマーズ社製、P−1700)16重量部、ポ
リビニルピロリドン(アイ・エス・ピー社製、K−9
2)3.5重量部、DMAC80.5重量部の紡糸原液
(PVP濃度18.0%)を使用し、DMAC52重量
%の中空内液を用いた以外は実施例1と同様な方法でポ
リスルホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内
表面PVP濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を
行った。これらの結果を表1に示す。比較例3の膜は体
積変化率が15.1と大きかったため、透過性能のバラ
ツキが他の例に比べ大きかった。
【0037】
【比較例4】乾燥前中空糸膜の含水率を150%前後な
るよう調整した以外は実施例1と同様な方法でポリスル
ホン系血液浄化膜を得た。得られた中空糸膜の内表面P
VP濃度、フィラメント強度、透過性能の測定を行っ
た。これらの結果を表1に示す。乾燥前含水率が低いた
め、透過性能のバラツキが大きかった。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】以上述べたように、紡糸後の中空糸膜を
湿潤状態から乾燥状態にする際、中空糸膜の体積変化率
を特定範囲に制御して乾燥することにより、PVP濃度を
極力少なくした紡糸原液から、PVPを中空糸内表面に効
率よく濃縮されたポリスルホン系血液浄化膜を製造する
ことができた。また、これによって、フィラメント強度
を損なうことなく十分な生体適合性を示す膜が得られ
た。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D01F 6/94 D01F 6/94 Z Fターム(参考) 4C077 AA05 BB01 BB02 KK04 KK21 LL05 LL22 PP15 PP19 4D006 GA07 MA01 MB09 MB16 MB20 MC40X MC62X NA04 NA10 NA13 NA16 NA64 PB09 PB52 PC41 4L035 BB04 DD03 EE08 MF01

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリスルホンとポリビニルピロリドン、
    および溶剤を含む紡糸原液から中空糸膜型のポリスルホ
    ン系血液浄化膜を製造する方法において、紡糸後の中空
    糸膜を湿潤状態から乾燥状態にする際、該中空糸膜を体
    積変化率5%以上15%以下収縮させることを特徴とす
    るポリスルホン系血液浄化膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 紡糸後の中空糸膜を湿潤状態から乾燥状
    態にする際、該中空糸膜を含水率200%以上の湿潤状
    態から乾燥することを特徴とする請求項1に記載のポリ
    スルホン系血液浄化膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 紡糸後の中空糸膜を湿潤状態から乾燥状
    態にする際、該中空糸膜に濃度10重量%以下の孔径保
    持剤溶液を付与した後、乾燥することを特徴とする請求
    項1または2に記載のポリスルホン系血液浄化膜の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 紡糸後の中空糸膜を湿潤状態から乾燥状
    態にする際、該中空糸膜に孔径保持剤溶液を付与しない
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のポリスルホ
    ン系血液浄化膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製
    造方法によって得られる中空糸膜型のポリスルホン系血
    液浄化膜であって、該中空糸膜の内表面ポリビニルピロ
    リドン濃度と紡糸原液中ポリビニルピロリドン濃度の比
    である濃縮率が1.5以上、4以下であることを特徴と
    するポリスルホン系血液浄化膜。
  6. 【請求項6】 中空糸膜の内表面ポリビニルピロリドン
    濃度が33〜40重量%、フィラメント強度が25g以
    上である請求項5記載のポリスルホン系血液浄化膜。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN107002312A (zh) * 2014-11-27 2017-08-01 株式会社大赛璐 丝束带的制造方法及丝束带制造装置

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