JP2011041830A - 血液浄化用中空糸膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、プライミング処理後1時間経過時の純水の限外ろ過係数(UFR(1hr))とプライミング処理後24時間経過時の純水の限外ろ過係数(UFR(24hr))が特定範囲である血液浄化用中空糸膜である。また、乾湿式紡糸法による中空糸膜の製造において、中空糸膜をボビン形状で巻き取ったあと、ボビンを一定範囲の透湿性のある袋の中に入れ熱処理をする血液浄化用中空糸膜の製造方法である。
【選択図】なし
Description
即ち本発明は、ポリマー、溶媒、非溶媒からなる製膜溶液をチューブインオリフィスノズルから中空形成材と共に吐出し、エアギャップを通過後、凝固浴で凝固させた血液浄化用中空糸膜を水洗し、引き続きグリセリン水溶液に浸漬する工程、乾燥する工程を経て、ボビンに巻き取り、該ボビンを0.1〜1.0mg/(cm2・hr)の透湿性を有する包装袋に入れて、40〜98℃で熱処理を行うことにより得られた、内径が100〜300μm、膜厚が10〜100μm、含水率が1〜10%の血液浄化用中空糸膜であって、該血液浄化用中空糸膜を用いて作製した膜面積1.5m2(中空糸膜内径基準)の血液浄化器について測定したプライミング処理後1時間経過時の純水の限外ろ過係数(UFR(1hr))とプライミング処理後24時間経過時の純水の限外ろ過係数(UFR(24hr))が下記(1)式を満たすことを特徴とする血液浄化用中空糸膜である。
2%≦UFR(24hr)/UFR(1hr)×100−100≦20% (1)
この場合において、該血液浄化器をプライミング処理し、室温で1時間および24時間静置した後の血液浄化器のそれぞれに、ヘマトクリット30%、総蛋白量6.5g/dlの新鮮牛血(ヘパリン処理血)を血液浄化器の中空糸膜内側に流量200ml/min、濾過量が15ml/minで環流し、環流開始1時間後の濾液中のタンパク質漏出量をそれぞれ(TPL(1hr))および(TPL(24hr))とした時に、下記(2)式を満たすことが好ましい。
TPL(24hr)/TPL(1hr)=0.8〜1.4 (2)
また、この場合において、該血液浄化器の血液接触側にヘマトクリット30%、総蛋白量6.5g/dlの新鮮牛血(ヘパリン処理血)を200ml/minの流量で灌流した際、30分後の血小板保持率が80〜98%であることが好ましい。
また、この場合において、上記血液浄化用中空糸膜は主としてセルロース系ポリマーからなることが好ましい。
また、この場合において、上記セルロース系ポリマーはセルローストリアセテートおよびセルロースジアセテートであることが好ましい。
また、この場合において、上記血液浄化用中空糸膜を用いて作製された血液浄化器はドライタイプであることが好ましい。
また、疎水性が比較的強いセルロースアセテートを素材としているため、中空糸膜を濡らした場合にも、膜厚や中空糸膜内径、中空糸膜外径は再生セルロース中空糸膜ほど変化しない。
TPL(24hr)/TPL(1hr)=0.8〜1.4 (2)
TPL(24hr)/TPL(1hr)が小さすぎると、臨床使用中に血液中のタンパク質や血球成分が膜に付着しやすくなり、経時的な性能の低下や凝血や残血が発生することがある。したがって、TPL(24hr)/TPL(1hr)は0.85以上がより好ましく、0.90以上がさらに好ましい。また、TPL(24hr)/TPL(1hr)が大きすぎると、臨床使用中にたんぱく質の漏出量が増大し、生体内の血中タンパク質濃度が低くなり、低タンパク症を引き起こす恐れがある。したがってTPL(24hr)/TPL(1hr)は1.35以下がより好ましく、1.30以下がさらに好ましい。
セルロース系ポリマーおよびセルロース系ポリマーに対する溶媒、非溶媒を溶解して製膜溶液を調製し、得られた製膜溶液をチューブインオリフィスノズルの外側スリットから吐出すると同時に中心孔より中空形成材を吐出する。ノズルから吐出された製膜溶液は、空中走行部(エアギャップ)を通過させた後、凝固液に浸漬させ製膜溶液の凝固、相分離を行なわせる、いわゆる乾湿式紡糸法で製造するのが好ましい。得られた中空糸膜は、過剰の溶媒、非溶媒等を除去するために洗浄工程を経た後、中空糸膜に親水化剤や孔径保持剤を含浸させるための液体槽に浸漬させる。このようにして得られた湿潤中空糸膜をドライヤーに通して乾燥し、ボビンにチーズ状に巻き取る(ボビンの捲き厚は5〜30cm)。このボビンを透湿量0.1〜1.0mg/(cm2・hr)の一定の透湿性を有する袋に入れて、加熱処理を実施する。本発明による中空糸膜はこの一定の透湿性を持つ袋を利用し、中空糸膜自体の水分を一定に保ちながら熱処理を行い、膜の微細構造を調整するのが好ましい。
さらに、製膜溶液には、酸化防止剤や微孔形成剤などの添加剤を必要に応じて加えることができる。
一方、中空糸膜の熱処理時に、中空糸膜中の水分の蒸発が少なすぎると、膜中のポリマーは、水分を含んだ状態で固定される。このような場合、プライミング処理後にポリマーが水を吸収せずにポリマーと血液が直接接触することになるため、血液中のタンパク質や血球成分が膜に付着しやすくなり、凝血や残血が発生する原因になると考えられる。また、中空糸膜の熱処理時、中空糸膜中の水分が蒸発しすぎると、透水性の変化や生体適合性に悪影響を与えるだけでなく、中空糸膜の表面が荒れるなど表面状態が悪化することがあり、生産効率にも悪影響を与えるという弊害が発生する可能性がある。そのため、このような透湿量の範囲の袋に包装して中空糸膜を熱処理する事により、膜中のポリマーから適度に水分を除いた状態で膜構造が固定でき、プライミング処理後の透水性の変化を一定範囲内に保つ事ができると考えられる。
血液浄化器を使用し、膜の内外両面に純水を満たし、37℃に恒温した。膜の内側に通じる血液浄化器入口から圧力をかけて37℃の純水を流し、膜の内側と外側の圧力差、すなわち膜間圧力差を生じせしめ、1分間に膜を通じて膜外側に出てくる純水の量を測定した。膜間圧力差(TMP)はTMP=(Pi+Po)/2とする。(Piは血液浄化器入口圧力、Poは血液浄化器出口圧力。)4点の異なった膜間圧力差において、1分間の透水量を測定し、膜間圧力差と透水量の2次元座標にプロットして、それらの近似直線の傾きを求めた。この数値に60をかけ、血液浄化器の膜面積で割って中空糸膜の純水の限外濾過係数(以下UFR)をもとめた。単位はml/(m2・hr・mmHg)である。
中空糸断面のサンプルは以下のようにして得る事ができる。測定には中空形成材を洗浄、除去した後、中空糸膜を乾燥させた状態で観察する事が好ましい。乾燥方法は特に問わないが、乾燥により著しく形態が変化する場合には中空形成材を洗浄、除去した後、純水で完全に置換し、湿潤状態で形態を観察することが好ましい。乾燥後の中空糸膜を厚さ2mmのスライドガラスの中央に開けられたφ1mmの孔に適当数通し、スライドガラス上下面で剃刀によりカットし、中空部を露出させた断面サンプルを得る。得られたサンプルは投影機(Nikon-12A)を用いて、視野内の任意の5サンプルを無作為に抽出し、各中空糸膜断面内側の短径と長径をそれぞれ測定し、その算術平均値を中空糸膜1個の内径とした。さらに5サンプルの平均値をもって中空糸膜内径とした。
一辺30cm四方の線を袋に書き、線の外側に沿ってヒートシーラーで3方をシールし、30cm四方の袋を作る。作製した袋に25℃の純水250mlを入れ、他3方と同様にシールする。このとき、袋と水の合計重量を測定する。
袋の一辺を一塊にまとめ、線の外側部分をたこ糸でしばり、60℃の定温乾燥器内で2hr吊り下げた状態で静置する。2hr後乾燥器から袋を取り出し袋と残った水の合計重量を測定し、透湿量は蒸発した水の重量を袋の表面積と時間の積で割る。
透湿量(mg/(cm2・hr))=(投入前重量−投入後重量)/(1800cm2×2hr)
血液浄化器を使用し、ダイアライザー性能評価基準(昭和57年、日本人工臓器学会)に準じ、シングルパス方式を採用し、血液側は尿素100mg/dLを含む生理食塩水溶液、透析液は生理食塩水を用い、温度37±1℃でろ過を生じない条件で測定した。血液側流量200mL/minで透析液側流量500mL/min時の尿素クリアランス(CLun)を求める。
CLun(ml/min)=(血液側入口濃度×血液側入口流量−血液側出口濃度×血液側出口流量)/血液側入口濃度×100
ヘマトクリット30%、総蛋白量6.5g/dlの新鮮牛血(ヘパリン処理血)を400ml準備し、膜面積1.5m2の血液浄化器を作製し、室温の生理用食塩水を使用してプライミング処理を行う。血液浄化器の中空糸膜内側に流量200ml/minで、牛血を30分環流する。測定は環流前の牛血中PLTと、環流後の牛血中PLTを測定し、測定方法は自動血球計算器法を用いる。
PLT変化率(%)=環流後のPLT/環流前のPLT×100
ヘマトクリット30%、総蛋白量6.5g/dlの新鮮牛血(ヘパリン処理血)を用いて、血液浄化器の中空糸内側に200ml/minで送る。その際、出口側の圧力を調整して、濾過量が15ml/minかかるようにし、濾液は血液槽に戻す。プライミング後室温静置1時間と24時間の血液浄化器を使用して、環流開始後1時間後に濾液をサンプリングする。得られたサンプルをピロガロールレッド法によって分析し、各サンプル採取時間でのTPL濃度を求める。
中空糸膜を5〜10g採取し、採取時の重量を記録しておく。記録後、サンプルを105℃の定温乾燥機内に2hr静置する。サンプルを乾燥機から取り出したら、すばやくデシケータ内に移動し40〜60min放冷する(デシケータ内は乾燥雰囲気下状態である事が必要)。放冷後すばやくサンプルの重量を測り、含水率を求める。
中空糸膜中の含水率(重量%)=(乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥前重量×100
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0重量%、N-メチル-2-ピロリドン(三菱化学社製)56.7重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)24.3重量%を145℃で溶解し製膜溶液を得た。120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として、流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、30℃の水中で凝固させた。その後、水洗し膜構造を安定化させた後、60℃、65重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し、綾角4°、捲き厚12cmでボビンに巻き上げた。ボビンを透湿量0.4mg/(cm2・hr)のポリエチレン製の袋に入れて、70℃で20時間熱処理を行った。得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて膜面積1.5m2の血液浄化器を作製し、UFR(24hr)、UFR(1hr)を測定した。結果を表1に示す。
尿素クリアランスは良好で透析液の偏流は確認されず、血小板変化率は少なく、TPLのプライミング依存性も小さく良好であった。
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)23.0重量%、N-メチル-2-ピロリドン(三菱化学社製)53.9重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)23.1重量%を170℃で溶解して製膜溶液を得た。140℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として、流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、30℃のN-メチル-2-ピロリドン/トリエチレングリコール/水=21/9/70からなる凝固浴中で凝固させた。その後、水洗し膜構造を安定化させた後、60℃、60重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し、綾角4°、捲き厚25cmでボビンに巻き上げた。その後は実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。このようにして得られた中空糸膜から膜面積1.5m2の血液浄化器を作製して性能を評価した。結果を表1に示す。
結果、実施例1と同じく尿素クリアランスは良好で透析液の偏流は確認されず、血小板変化率は少なく、TPLのプライミング依存性も小さく良好であった。
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)24.5重量%、N-メチル-2-ピロリドン(三菱化学社製)52.9重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)22.6重量%を140℃で溶解した製膜溶液を用い、凝固させた。その後は実施例1と同様に中空糸膜を作製した。このようにして得られた中空糸膜から膜面積1.5m2の血液浄化器を作製して性能を評価した。結果を表1に示す。なお、本実施例で得られたサンプルはUFRが小さくタンパク質の漏出は確認できなかった。このため、TPLのプライミング依存性評価は実施していない。
結果、実施例1と同じく尿素クリアランスは良好で透析液の偏流は確認されず、血小板変化率は少なく良好であった。
実施例1と同じ条件で中空糸膜を紡糸しボビンに巻き取り、ボビンを透湿量0.1mg/(cm2・hr)のポリエチレン製の袋に入れて、70℃で20時間熱処理を行った。このようにして得られた中空糸膜から膜面積1.5m2の血液浄化器を作製して性能を評価した。結果を表1に示す。
尿素クリアランスは良好で透析液の偏流は確認されず、TPLのプライミング依存性も小さく良好であった。
熱処理時に、ポリエチレン袋に入れない状態で実施した以外は実施例1と同じ条件で中空糸膜を製造した。得られた中空糸膜の内径は199μm、膜厚は15μmであった。このようにして得られた中空糸膜から膜面積1.5m2の血液浄化器を作製して実施例と同様に中空糸膜の性能評価を行った結果を表1に示す。
結果、血小板保持率は良好だったが、TPLの時間依存性が大きく、性能が不安定であった。また、膜の膨潤起因で中空糸膜の形状が変化し血液浄化器の透析液側流路の不均一化による偏流が発生し、尿素クリアランス値が低下した。
熱処理時に、透湿性のない(0.01mg/(cm2・hr)以下)アルミ箔製の袋にいれた状態で実施した以外は実施例1と同じ条件で中空糸膜を製造した。得られた中空糸膜の内径は201μm、膜厚は15μmであった。このようにして得られた中空糸膜から膜面積1.5m2の血液浄化器を作製して実施例と同様に中空糸膜の性能評価を行った結果を表1に示す。
結果、性能は安定しているが、血小板の保持率が低く、抗血栓性に課題が残った。
セルローストリアセテート19.0重量%、N-メチル-2-ピロリドン56.7重量%、トリエチレングリコール24.3重量%を150℃で溶解して製膜溶液を得た。120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンを用いて製膜原液を吐出、エアギャップを通過後、30℃の水中で凝固させた。その後、水洗し膜構造を安定化させた後、60℃、65%のグリセリン水溶液中を通過させ、ドライヤーで乾燥し実施例1と同様にボビンに巻き上げた。ボビンを実施例1と同様の方法で熱処理を行った。得られた中空糸膜の内径は201μm、膜厚は15μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用いて膜面積1.5m2の血液浄化器を作製し、種々評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (6)
- ポリマー、溶媒、非溶媒からなる製膜溶液をチューブインオリフィスノズルから中空形成材と共に吐出し、エアギャップを通過後、凝固浴で凝固させた血液浄化用中空糸膜を水洗し、引き続きグリセリン水溶液に浸漬する工程、乾燥する工程を経て、ボビンに巻き取り、該ボビンを0.1〜1.0mg/(cm2・hr)の透湿性を有する包装袋に入れて、40〜98℃で熱処理を行うことにより得られた、内径が100〜300μm、膜厚が10〜100μm、含水率が1〜10%の血液浄化用中空糸膜であって、該血液浄化用中空糸膜を用いて作製した膜面積1.5m2(中空糸膜内径基準)の血液浄化器について測定したプライミング処理後1時間経過時の純水の限外ろ過係数(UFR(1hr))とプライミング処理後24時間経過時の純水の限外ろ過係数(UFR(24hr))が下記(1)式を満たすことを特徴とする血液浄化用中空糸膜。
2%≦UFR(24hr)/UFR(1hr)×100−100≦20% (1) - 該血液浄化器をプライミング処理し、室温で1時間および24時間静置した後の血液浄化器のそれぞれに、ヘマトクリット30%、総蛋白量6.5g/dlの新鮮牛血(ヘパリン処理血)を血液浄化器の中空糸膜内側に流量200ml/min、濾過量が15ml/minで環流し、環流開始1時間後の濾液中のタンパク質漏出量をそれぞれ(TPL(1hr))および(TPL(24hr))とした時に、下記(2)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の血液浄化用中空糸膜。
TPL(24hr)/TPL(1hr)=0.8〜1.4 (2) - 該血液浄化器の血液接触側にヘマトクリット30%、総蛋白量6.5g/dlの新鮮牛血(ヘパリン処理血)を200ml/minの流量で灌流した際、30分後の血小板保持率が80〜98%であることを特徴とする請求項1または2に記載の血液浄化用中空糸膜。
- 血液浄化用中空糸膜は主としてセルロース系ポリマーからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の血液浄化用中空糸膜。
- セルロース系ポリマーがセルローストリアセテートおよび/またはセルロースジアセテートであることを特徴とする請求項4に記載の血液浄化用中空糸膜。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の血液浄化用中空糸膜を用いて作製されたことを特徴とするドライタイプ血液浄化器。
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