JP6547518B2 - 中空糸膜モジュール及びその製造方法 - Google Patents
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Description
(A)N,N−ジメチルアセトアミドに溶解した時の不溶成分が前記中空糸膜全体質量の3質量%未満
(B)湿潤状態において機能層表面に柔軟層が存在し、前記柔軟層の厚みが7nm以上
すなわち、本発明に係る中空糸膜モジュールにおいては、中空糸膜が不溶化されていない、すなわち、ポリスルホン系ポリマーから溶出しないように、上記親水性ポリマーを十分架橋していないにも関わらず、上記所定の条件にて水を循環したときの中空糸膜内表面から溶出する溶出物量が少ない、という効果を示すものである。
溶出物量(mg/m2)=4L中の親水性高分子量(mg)/中空糸膜の内表面面積の合計値(m2)
中空糸膜の内表面面積の合計値は下記式で求められる。
中空糸膜の内表面面積の合計値(m2)=π×中空糸膜内径(m)×有効長(m)×糸本数(本)
ここで、有効長とは、中空糸膜モジュールに充填された中空糸膜においてポッティング材が付着していない部分を言う。
しかし、このように製膜原液に添加される親水性ポリマー、特に低分子量の親水性ポリマーが放射線照射後の溶出物の原因となる場合が多い。その原因としては、例えばポリスルホン系ポリマーとしてポリスルホン、親水性ポリマーとしてポリビニルピロリドンを用いた製膜原液の場合、ポリスルホンとポリビニルピロリドンの吸着平衡定数が低いため、溶出してくるものと考えられる。さらに、含水率の低い場合では、架橋反応が起こりにくいため、より溶出しやすいと考えられる。そのため、上述したような洗浄方法で洗浄することが必要である。
中空糸膜内径(μm)=中空糸膜外径−2×膜厚
中空糸膜をモジュールに内蔵する方法としては、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状のケースに入れる。その後、両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填できるため好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後。中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断する。ケースの両端にヘッダーを取り付け、ヘッダーおよびケースのノズル部分に栓をすることで中空糸膜モジュールを得る。
UFR(mL/hr/m2/mmHg)=Qw/(P×T×A)
ここで、Qw:濾過量(mL)、T:流出時間(hr)、 P:圧力(mmHg)、A:
中空糸膜の内表面積(m2)
中空糸膜内表面における血液適合性は、中空糸膜に付着する血小板の付着数で評価できる。血小板の付着数が多い場合、血液の凝固に繋がるため、中空糸膜内表面の血液適合性が低いと言える。中空糸膜内表面における血小板の付着数は、ヒト血液と接触させた後の中空糸膜内表面を走査型電子顕微鏡にて観察することで評価が可能である。評価条件の詳細は実施例にて後述する。倍率1500倍で試料の内表面を観察した際、1視野4.3×103μm2に付着する血小板の付着数は20個以下が好ましく、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは8個以下、特に好ましくは4個以下である。血小板の付着数は、異なる10視野を観察した際の平均値(小数点第1位を四捨五入する)を用いる。
三角フラスコに任意に選定した中空糸膜を1g分採り、DMAc40mLとともに添加し、2時間撹拌した。ついで、2500rpmで遠心分離を行い、不溶成分を沈殿させ、上澄みを取り除いた。次に、再度DMAcを10mLを加え、不溶成分を洗浄し、遠心分離を行い、上澄みを取り除く作業を3回繰り返した。最後に上澄みを取り除いた後、凍結乾燥を行った。不溶成分の乾燥質量を測定し、乾燥質量/1g(中空糸膜の質量)×100を不溶成分含有率(質量%)とした。小数点第2位を四捨五入した値を用いた。
(2)溶出物試験
37℃に加温した超純水を用いて、中空糸膜モジュールの中空糸膜内表面側の流路に100mL/minで7分間通液し、ついで中空糸膜外表面側の流路に500mL/minで5分間通液し、再度、中空糸膜内表面流路に100mL/minで3分通液を行い、洗浄を実施した。その後、中空糸膜内表面側に37℃に加温した4Lの超純水を200mL/minで4時間循環させながら通液した。4時間循環後の水を採取し、サンプル溶液を得た。得られたサンプル溶液は希薄であるため、凍結乾燥を行い、100倍に濃縮して測定に供した。ゲルろ過クロマトグラフィーは下記の条件で測定を実施した。カラム:TSKgel GMPWXL(東ソー社製)
溶媒:0.1mol/L 硝酸リチウム、水/メタノール:50vol/50vol
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計 RI−8010(東ソー社製)
まず、ポリビニルピロリドン(ISP社製 K90)を濃度を変更して溶解した数種類の水溶液を標準試料として、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて測定した。標準試料のポリビニルピロリドンのピーク面積と調製した濃度の関係の検量線を作成した。次に、前記サンプル溶液を測定して得られた全てのピークの面積の合計値と前記検量線から、サンプル溶液中の溶出物の濃度を算出した。
4L中の親水性高分子量(mg)=測定サンプル中の親水性高分子濃度(ppm)×4(kg)/100
このようにして求めた4時間循環後の水4L中の親水性高分子量(mg)を、測定対象の中空糸膜モジュールに充填された中空糸膜の内表面面積の合計値(m2)で割った値を、本発明における溶出物量(mg/m2)とした。計算値としては小数点第2位を四捨五入した値を用いた。
溶出物量(mg/m2)=4L中の親水性高分子量(mg)/中空糸膜の内表面面積の合計値(m2)
中空糸膜の内表面面積の合計値(m2)=π×中空糸膜内径(m)×有効長(m)×糸本数(本)
ここで、有効長とは、中空糸膜モジュールに充填された中空糸膜においてポッティング材が付着していない部分を言う。
(3)中空糸表面の柔軟層測定
中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、内表面を原子間力顕微鏡(AFM)にて測定した。測定サンプルは、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させた後、測定に供した。
(4)中空糸膜の含水率測定
中空糸膜モジュールの質量を測定し、中空糸膜モジュール質量(a)とした。この中空糸膜モジュールを50℃に設定した減圧乾燥機に入れ、0.5Torrで12時間乾燥させた後、測定した質量を絶乾状態の中空糸膜モジュール質量(b)とした。さらに、上記モジュールと同じ方法により作成した別のモジュールを解体して中空糸膜を取り出し、50℃、0.5Torrで12時間減圧乾燥させた後、測定した質量を絶乾時の中空糸膜の質量(c)とした。このとき、cはポッティング材によって固定化されている中空糸膜の質量を含まない。中空糸膜の含水率は下記の式より算出し、測定値は小数点第2位を四捨五入した値を用いる。
含水率(質量%)=100×(a−b)/c
ここで、a:中空糸膜モジュール質量(g)、b:絶乾後中空糸膜モジュール質量(g)、c:絶乾時の中空糸膜質量(g)。
(5)顕微ATR法
中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させ、表面測定用の試料とした。この乾燥中空糸膜の各表面をJASCO社製IRT−3000の顕微ATR法により測定した。測定は視野(アパーチャ)を100μm×100μmとし、1箇所における測定範囲は3μm×3μmで積算回数を30回、縦横各5点の計25点測定した。得られたスペクトルの波長1549〜1620cm−1で基準線を引き、その基準線とスペクトルの正の部分で囲まれた部分をポリスルホン由来ベンゼン環C=C由来のピーク面積を(ACC)とした。同様に1711〜1759cm−1で基準線を引き、その基準線とスペクトルの正部分で囲まれた部分をエステル基由来のピーク面積を(ACOO)とし、(ACOO)/(ACC)を求め、25点の平均値を求めた。
(6)親水性ポリマー等のポリスルホンへの吸着平衡定数測定
GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製のAuセンサーチップをスピンコーターに固定させた後、ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)の0.1質量%クロロベンゼン溶液をパスツールピペットで1、2滴滴下させた。その直後に3000rpmで1分間回転乾燥させることで、ポリスルホン系ポリマーが表面に薄層化したAuセンサーチップを作成した。このセンサーチップをGEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製BIACORE3000に挿入し、2000秒間センサーチップを水洗浄した後、以下の操作を10、100、250、500、1000ppm各濃度の親水性ポリマー等の水溶液にて繰り返した。
1.親水性ポリマー水溶液を750μL流して薄層化したポリスルホン表面に吸着させた。
2.2000秒間水洗浄を行った。
3.0.025質量%トリトンを750μL流して1.で吸着させた親水性ポリマーを剥離させた。
4.2000秒間水洗浄を行った。
Q=KCn (式1)
(Q:単位面積当たり吸着量、K:吸着結合定数、n:フロインドリッヒ定数)
(7)ヒト血小板付着試験方法
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープを貼り付け、そこに中空糸膜を固定した。貼り付けた中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を露出させた。中空糸膜内表面に汚れやキズ、折り目が存在すると、その部分に血小板が付着するため正しい評価ができないことがあるので注意を要する。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、中空糸膜を貼り付けた面が、円筒の内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。ヒトの静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mLになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を採血後30分以内に円筒管内に1.0mL加え、37℃にて1時間振とうさせた。その後、中空糸膜を10mLの生理食塩水で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド生理食塩水を加え、静置し、血液成分を中空糸膜に固定化させた。1時間以上経過後、20mLの蒸留水にて洗浄した。洗浄した中空糸膜を常温、0.5Torrにて10時間減圧乾燥した。この中空糸膜を走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を中空糸表面に形成させて、試料とした。この中空糸膜内表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S−800)にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察し、1視野中(4.3×103μm2)の付着した血小板数を数えた。中空糸長手方向における中央付近で、異なる10視野での付着した血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×103μm2)とした。値は小数点第1位を四捨五入した値を用いた。1視野で50個/4.3×103μm2を超えた場合は、50個としてカウントした。中空糸の長手方向における端の部分は、血液溜まりができやすいため、血小板付着数の計測対象からはずした。
(8)アルブミンふるい係数の経時変化測定
本項目の測定において、透析装置32としては東レメディカル社製TR3000Sを使用した。TR3000Sは、図3においてBiポンプ34、Fポンプ35、および透析装置32にあたる要素を含む。各回路には液体中の気泡を取り除くためのチャンバー(Do回路チャンバー44、Di回路チャンバー45、Bi回路チャンバー46、Bo回路チャンバー47)を備えている。また、Bi回路チャンバーの液面とDi回路チャンバーの液面、ならびにBo回路チャンバーの上部、Do回路チャンバーの上部を基準線31として同じ高さとし、圧力差が生じないようにした。
Sc−Alb(%)=2CDo/(CBi+CBo)×100
上記式において、CDoはDo回路出口側のアルブミン濃度(g/mL)、CBiはBi回路入口側のアルブミン濃度(g/mL)、CBoはBo回路出口側のアルブミン濃度を示す(g/mL)。また、下記式を用いて循環5分後と循環240分後のアルブミンふるい係数の値から、以下の式によってアルブミンふるい係数の維持率を算出した。
アルブミンふるい係数維持率(%)=Sc−Alb(240分後)/Sc−Alb(5分後)×100。
(9)泡抜け性評価
中空糸膜モジュールの被処理液注入口側を下側、被処理液排出口側を上側に向けた状態で、流量100mL/minで超純水を5分間中空糸膜モジュールに通液した。このとき中空糸膜モジュールには振動を与えないようにした。その後、中空糸膜モジュールを手で叩いて振動を与えながら2分間通液を行った。その際に中空糸内部から発生する気泡を水上置換法でガラス瓶内に回収し、水中で蓋を閉めた。その後、ガラス瓶の周りの水滴を圧空等で除去し、ガラス瓶の重量(x)の測定を行った。また、別途ガラス瓶内を満水にした状態での重量(y)の測定を行った。満水時のガラス瓶の重量としては3回測定を行った値の平均値を使用した。満水時のガラス瓶の重量(y)と気泡回収後のガラス瓶の重量(x)の差を中空糸内部から発生した気泡の量として、小数点第3位を四捨五入して求めた。水の比重は1.0とした。気泡量が0.15mL未満の場合、泡抜け性を良として、気泡量が0.15mL以上の場合、泡抜け性を悪とした。
発生した気泡量(mL)=y(g)−x(g)
[実施例1]
ポリスルホン(ソルベイ社製“ユーデル”P−3500)16質量%、ポリビニルピロリドン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社製;以下ISP社と略す K30)4質量%およびポリビニルピロリドン(ISP社製 K90)を2質量%、N,N−ジメチルアセトアミド77質量%、水1質量%を加熱溶解し、製膜原液とした。
[実施例2]
洗浄工程に用いる洗浄液としてビニルピロリドン/酢酸ビニル(5/5)ランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA55)0.01質量%の25℃の水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール2を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、及び中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。実施例1と同様に不溶成分は観測できないが、柔軟層が厚く、血小板付着数が少ない中空糸膜モジュールが得られた。洗浄液に含まれる親水性基含有ポリマー(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(5/5)ランダム共重合体)のポリスルホンに対する吸着平衡定数が実施例1において用いた同ポリマーに比べてやや低いが、低溶出を達成可能であった。
[実施例3]
洗浄工程に用いる洗浄液の温度を50℃とした以外は実施例2と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール3を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、及び中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。実施例1と同様に不溶成分は観測できないが、柔軟層が厚く、血小板付着数が少ない中空糸膜モジュールが得られた。実施例2に比べて、中空糸膜機能層表面に存在するエステル基量が多く、溶出物量が少なかった。これは、洗浄液温度を上げたことにより、洗浄液中のポリマーとポリスルホンの疎水性相互作用が強まったためであると考えられる。
[実施例4]
洗浄工程に用いる洗浄液としてビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64)0.01質量%の25℃の水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール4を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、及び中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。実施例1と同様に不溶成分は観測できないが、柔軟層が厚く、血小板付着数が少ない中空糸膜モジュールが得られた。洗浄液に含まれる親水性基含有ポリマー(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体)のポリスルホンに対する吸着平衡定数が実施例1において用いた同ポリマーに比べてやや低いが、低溶出を達成可能であった。
[実施例5]
洗浄工程に用いる洗浄液としてビニルピロリドン/酢酸ビニル(7/3)ランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA73)0.03質量%の50℃の水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール5を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、及び中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。実施例1と同様に不溶成分は観測できないが、柔軟層が厚く、血小板付着数が少ない中空糸膜モジュールが得られた。洗浄液に含まれる親水性基含有ポリマー(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(7/3)ランダム共重合体)のポリスルホンに対する吸着平衡定数が実施例1において用いた同ポリマーに比べて低いが、低溶出を達成可能であった。
[実施例6]
洗浄工程に用いる洗浄液としてビニルピロリドン・ビニルカプロラクタム(5/5)共重合ポリマー(VPC55)0.01質量%の25℃の水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール6を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、及び中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。実施例1と同様に不溶成分は観測できないが、柔軟層が厚く、血小板付着数が少ない中空糸膜モジュールが得られた。洗浄液に含まれる親水性基含有ポリマー(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(7/3)ランダム共重合体)のポリスルホンに対する吸着平衡定数が実施例1において用いた同ポリマーに比べて低いが、低溶出を達成可能であった。
[実施例7]
洗浄工程に用いる洗浄液としてビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64)0.01質量%の70℃の水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール7を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、及び中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。実施例3に比べて、中空糸膜機能層表面に存在するエステル基量が多く、溶出物量が少なかった。これは、洗浄液温度を上げたことにより、洗浄液中のポリマーとポリスルホンの疎水性相互作用が強まったためであると考えられる。
[比較例1]
洗浄工程に用いる洗浄液として25℃の水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール8を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、及び中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。親水性ポリマーの溶出量が多かった。これは、水では洗浄効果が低かったためであると考えられる。さらに柔軟層の厚みも薄く、血小板の付着数も多かった。
[比較例2]
洗浄工程に用いる洗浄液として70℃の水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール9を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、及び中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。洗浄液温度を上げることで、比較例1よりも親水性ポリマーの溶出量が少なくなったが、十分に抑制できていなかった。
[比較例3]
洗浄工程に用いる洗浄液としてビニルピロリドン(IPS社製)K90の0.01質量%の25℃の水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール10を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、及び中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。比較例1、2に比べて、溶出物量、血小板付着数は減少したが、効果は十分ではなかった。これはビニルピロリドンのポリスルホンに対する吸着平衡定数が低く、十分に洗浄できていいなかったためと考えられる。
[比較例4]
洗浄工程に用いる洗浄液としてビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“KOLLIDON”(登録商標) VA64)0.001質量%の25℃の水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール11を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、及び中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。柔軟層が厚く、血小板付着数は少なかったが、洗浄効果が十分でなく溶出物量が多かった。
[比較例5]
γ線照射時の中空糸膜モジュールの含水率を283質量%とした以外は、比較例4と同様の実験を行い、中空糸膜モジュール12を得た。得られた中空糸膜モジュールにおける不溶成分量、溶出物量、および中空糸膜内表面における顕微ATR、血小板付着数等を測定した。結果を表1に示す。γ線照射時の含水率が高く、架橋反応が進行したため、不溶成分の含有率が多かった。また、膜表面の高分子の運動性が低下したため、アルブミンふるい係数の維持率が低くなったと考えられる。また、泡抜け性も含水率が低いものに比べて悪かった。
13 中空糸膜
14A ヘッダー
14B ヘッダー
15A 中空糸膜内側入口
15B 中空糸膜内側出口
16A 中空糸膜外側ノズル(処理液注入口)
16B 中空糸膜外側ノズル(処理液排出口)
17 ポッティング剤
21 カンチレバーが機能層表面に接触する前の領域
22 カンチレバーが機能層表面に接触した後に現れた、フォースカーブが湾曲した非線形の領域
23 カンチレバーが表面に接触した後に現れた、フォースカーブが線形的な直線の相関となった領域
24 柔軟層の厚さ
31 基準線
32 透析装置
33 中空糸膜モジュール
34 Biポンプ
35 Fポンプ
36 廃棄用容器
37 循環用ビーカー
38 Bi回路
39 Bo回路
40 Di回路
41 Do回路
42 ろ液循環回路
43 温水槽
44 Do回路チャンバー
45 Di回路チャンバー
46 Bi回路チャンバー
47 Bo回路チャンバー
Claims (7)
- 中空糸膜がケースに内蔵された中空糸膜モジュールであって、
該中空糸膜が、ポリスルホン系高分子と親水性高分子と親水性基を含有する共重合ポリマーとを含み、前記親水性基を含有する共重合ポリマーがエステル基を有し、
次の(A)〜(E)の要件を満たす、中空糸膜モジュール。
(A)N,N−ジメチルアセトアミドに溶解した時の不溶成分が前記中空糸膜全体質量の3質量%未満である
(B)湿潤状態において機能層表面に柔軟層が存在し、前記柔軟層の厚みが7nm以上である
(C)前記中空糸膜内表面の流路に、37℃に加温した超純水を4時間、200mL/minで循環して得られる液体に含まれる溶出物量が、1.0mg/m 2 以下である
(D)前記中空糸膜の機能層表面にエステル基が存在し、前記エステル基が、前記親水性基を含有する共重合ポリマーに由来する
(E)前記中空糸膜の長手方向における端面近傍および中央部付近の機能層表面での、1730cm −1 付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク強度(A CO )の1580cm −1 付近のポリスルホン系ポリマーのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク強度(A CC )に対する比(A COO )/(A CC )の平均値が0.02以上、0.5以下である - 前記中空糸膜の含水率が10質量%以下である、請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
- X線電子分光法による測定において、
前記中空糸膜の機能層表面における炭素由来の全ピーク面積を100(原子数%)としたときに、前記機能層表面におけるエステル基由来の炭素ピークの面積百分率が1〜10(原子数%)である、
請求項1または2に記載の中空糸膜モジュール。 - 前記親水性基を含有する共重合ポリマーが、ケン化度が99%未満のポリビニルアルコール、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合ポリマー、ビニルピロリドン・ビニルカプロラクタム共重合ポリマー、ビニルピロリドン・ビニルアルコール共重合ポリマー、から選ばれる少なくとも1種を含んでいる、請求項1〜3のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを製造する方法であって、
ポリスルホン系ポリマーと親水性ポリマーとを含む中空糸膜を洗浄液により洗浄した後、モジュールへの内蔵及び放射線照射を行って得られる製造方法であり、
前記洗浄に用いる洗浄液には前記親水性基を含有する共重合ポリマーが含まれ、
前記親水性基を含有する共重合ポリマーの前記ポリスルホン系ポリマーに対する吸着平衡定数は、中空糸膜を構成する前記親水性ポリマーの前記ポリスルホン系ポリマーに対する吸着平衡定数よりも高く、
かつ、前記放射線照射後の中空糸膜をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した時の不溶成分が該中空糸膜全体質量の3質量%未満である、中空糸膜モジュールの製造方法。 - 前記中空糸膜の放射線照射時の含水率が10質量%以下である、請求項5に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
- 前記親水性基を含有する共重合ポリマーが親水性ユニットと疎水性ユニットとの共重合体からなる、請求項5または6に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
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