JP5857407B2 - 中空糸膜および中空糸膜の製造方法 - Google Patents
中空糸膜および中空糸膜の製造方法 Download PDFInfo
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1.透水性が100ml/hr/mmHg/m2以上、2000ml/hr/mmHg/m2以下の中空糸膜において、親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体の前記中空糸膜における含有比率が0.1重量%以上、5重量%以下であり、機能層表面における前記酢酸ビニルの含有比率が、膜全体における酢酸ビニルの含有比率に対して30倍以上、1000倍以下であり、該共重合体が架橋し水に不溶化していることを特徴とする中空糸膜。
2.前記共重合体中における親水性ユニットの比率が10モル%以上、80モル%以下であることを特徴とする前記1に記載の中空糸膜。
3.前記親水性ユニットがビニルピロリドンであることを特徴とする、前記1または2に記載の中空糸膜。
4.中空糸膜がポリスルホン系高分子からなることを特徴とする、前記1〜3のいずれかに記載の中空糸膜。
5.機能層表面における1730cm−1 付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系高分子のベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、0.01以上、0.3以下であることを特徴とする前記4に記載の中空糸膜。
6.中空糸膜の外側表面における1730cm−1 付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系高分子のベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、0.2以下であることを特徴とする前記4または5に記載の中空糸膜。
7.外側表面の開孔率が5%以上、50%以下であることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の中空糸膜。
8.前記1〜7のいずれかに記載の中空糸膜がケースに内蔵された中空糸膜モジュール。
9.血液透析器として用いることを特徴とする前記8に記載の中空糸膜モジュール。
10.透水性が100ml/hr/mmHg/m2以上、2000ml/hr/mmHg/m2以下である中空糸膜の製造方法において、疎水性高分子を含有する製膜原液に親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体を1重量%以上、30重量%以下添加し、二重管口金のスリット部から該製膜原液、円管部から疎水性高分子の貧溶媒を含む注入液を吐出し、乾式部を0.2秒以上通過させた後に凝固浴で凝固させることによって得られた膜状物を水洗後、放射線を照射することで製造されたことを特徴とする中空糸膜の製造方法。
11.前記共重合体中における親水性ユニットの比率が10モル%以上、80モル%以下であることを特徴とする前記10に記載の中空糸膜の製造方法。
12.前記共重合体の親水性ユニットがビニルピロリドンであることを特徴とする、前記10または11に記載の中空糸膜の製造方法。
13.前記共重合体を製膜原液に、疎水性高分子に対して30重量%より多く、70重量%以下添加することを特徴とする、前記10〜12のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
14.前記膜状物を水洗後、50℃以上150℃以下で乾燥することを特徴とする、前記10〜13のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
15.前記疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする、前記10〜14のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
16.前記10〜15のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法によって得られた中空糸膜をケースに内蔵することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
ここで、SCはデキストラン篩い係数、Ciは分離膜に供給する水溶液の濃度 、Coは濾過後に供給側に残った水溶液の濃度、Cfは濾液の濃度である。各分子量のデキストラン濃度は、ゲル濾過クロマトグラフィ法などの方法で測定できる。測定の際は、分子量と濃度の検量線を、分子量及び濃度が既知のデキストラン溶液から得ればよい。各分子量に対するデキストラン篩い係数の値をプロットした分画曲線の傾きが鋭角であるほど、分離性能の高い中空糸膜といえる。また、デキストラン篩い係数が0.1となる分子量を分画分子量という。
中空糸膜40本を、直径約5mm、長さ17cmのハウジングに充填し、両端をコニシ(株)製エポキシ樹脂系化学反応形接着剤“クイックメンダー”でポッティングし、カットして開口することによって、中空糸膜モジュールを作製する。次いで、該モジュールの中空糸膜およびモジュール内部を蒸留水にて、1 時間洗浄した。中空糸膜内側に水圧100mmHgをかけ、外側へ流出してくる単位時間当たりの濾過量を測定した。透水性(UFR)は下記の式で算出した。
ここで、Qw:濾過量(mL)、T:流出時間(hr)、 P:圧力(mmHg)
(2)デキストラン篩い係数の測定方法
(1)の測定で用いた中空糸膜モジュールを用いた。FULKA社製デキストラン平均分子量〜1500(No.31394)、平均分子量〜6000(No.31388)、平均分子量15000〜20000(No.31387)、平均分子量〜40000(No.31389)、平均分子量〜60000(No.31397)、平均分子量〜200000(No.31398)を各々0.5mg/ml( 溶質全体では3.0mg/ml) になるように蒸留水で溶解し、デキストラン水溶液(原液)を作成する。モジュールに対して、中空糸膜の内側に原液を流し、外側に濾過をかけた。原液の温度は37℃とし、原液流量が20ml/min、濾過流量が0 .24ml/minになるように流速を調整した。原液を流して60分後から75分後の、モジュール原液入口液、出口液および濾液を採取し、GPCで濃度測定を行った。GPCは、サンプリングした水溶液を細孔径0.5ミクロンのフィルターで濾過し、その濾液をGPC用カラム(東ソーTSK−gel−G3000PWXL)、カラム温度40℃、移動相を液クロ用蒸留水1ml/min、サンプル打ち込み量100μlで分析を行い、示差屈折率計(東ソー社製 RI−8020)にてslice time0.02min、base−line−range4.5〜11.0minで測定した。デキストラン重量平均分子量の検量線は、測定直前に単分散のデキストラン(Fluka社製デキストランスタンダードNo.31416、No.31417、No.31418、No.31420、No.31422) を用いて行った。各重量平均分子量の篩い係数(SC)は、モジュール原液入口のデキストラン濃度(Ci)、出口のデキストラン濃度(Co)、濾液のデキストラン濃度(Cf)から、下記式で算出した。
分離性能の指標として、分画曲線の傾き(s)を、SCが0.4の重量平均分子量(MW0.4)とSCが0.6の重量平均分子量(MW0.6)から、次式で算出した。
sの絶対値が大きい程、分離性能が高い。
(3)中空糸膜のヒト血小板付着試験方法
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープを貼り付け、そこに中空糸膜を固定した。貼り付けた中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を露出させた。中空糸膜内表面に汚れや傷、折り目などがあると、その部分に血小板が付着し、正しい評価ができないことがあるので注意を要する。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、中空糸膜を貼り付けた面が、円筒内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。人間の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を、採血後10分以内に、円筒管内に1.0ml入れて37℃にて1時間振盪させた。その後、中空糸膜を10mlの生理食塩水で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド生理食塩水で血液成分の固定を行い、20mlの蒸留水にて洗浄した。洗浄した中空糸膜を常温0.5Torrにて10時間減圧乾燥した。この中空糸膜を走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を中空糸膜表面に形成させて、試料とした。この中空糸膜の内表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察し、1視野中(4.3×103μm2)の付着血小板数を数えた。中空糸長手方向における中央付近で、異なる10視野での付着血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×103μm2)とした。1視野で100個/4.3×103μm2を超えた場合は、100としてカウントした。中空糸の長手方向における端の部分は、血液溜まりができやすいため付着数の計測対象からはずした。なお、血小板付着数は20個/4.3×103μm2以下であることが好ましい。
(4)X線光電子分光法(XPS)測定
中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の機能層表面を3点測定した。測定サンプルは、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させた後、測定に供した。測定装置、条件としては、以下の通り。
励起X線: monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6eV)
X線径: 0.15mm
光電子脱出角度: 90 °(試料表面に対する検出器の傾き)
C1sには、主にCHx,C−C,C=C,C−S由来の成分、主にC−O,C−N由来の成分、π-π*サテライト由来の成分、C=O由来の成分、COO由来の成分の5つの成分から構成される。従って、5つ成分でピーク分割を行う。COO由来の成分は、CHxやC−Cのメインピーク(285eV付近)から+4.0〜4.2eVに現れるピークである。この各成分のピーク面積比を、小数点第2桁目を四捨五入し、算出した。エステル基由来の炭素量(原子数%)は、C1sの炭素量(原子数%)から、COO由来の成分のピーク面積比を乗じることで求めた。なお、ピーク分割の結果、0.4%以下であれば、検出限界以下とした。
(5)元素分析
中空糸膜3gを凍結乾燥させ、全自動元素分析装置varioEL(エレメンタール社)にて、試料分解路950℃、還元炉500℃、ヘリウム流量200ml/min、酸素流量20〜25ml/minで測定を行った。中空糸膜に含まれる共重合体が酢酸ビニルとビニルピロリドンユニットからなる場合、中空糸膜全体の酢酸ビニル含有比率(wA(重量%))は、ビニルピロリドンユニット比(d(モル%))と、窒素含有量(wN(重量%))から、下記式で計算して求めた。
また、酢酸ビニルユニットとビニルピロリドンユニットからなる共重合体の含有比率(wC(重量%))は、下記式で計算して求めた。
(6)顕微ATR法
中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させ、機能層表面測定用の試料とした。中空糸膜を超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させ、中空糸膜の外側表面測定用の試料とした。この乾燥中空糸膜の各表面をJASCO社製IRT−3000の顕微ATR法により測定した。測定は視野(アパーチャ)を100μm×100μmとし、測定範囲は3μm×3μmで積算回数を30回、縦横各5点の計25点測定した。得られたスペクトルの波長1549〜1620cm−1で、基準線を引き、その基準線とスペクトルの正部分で囲まれた部分のピーク面積をポリスルホンのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積ACCとした。同様に、1711〜1759cm−1で、基準線を引き、エステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積ACOとした。
(7)不溶化物有無の確認
中空糸膜1gを、100mlのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、不溶物の有無を目視で確認した。
(8)縦弾性率の測定
有効試料長50mmの中空糸膜を引っ張り速度50mm/minで引っ張り試験を行った。測定温度は25℃で行った。測定には、テンシロン万能試験機RTM−100(株式会社オリエンテック)を用いた。変位1mmあたりの荷重(kgf)を中空糸膜の断面積(mm2)で除し、縦弾性率(kgf/mm2)を算出した。中空糸膜10本の測定を行い、平均値を求めた。
(9)外側表面の開孔率測定
中空糸膜の外側表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて10000倍で観察し、像をコンピュータに取り込んだ。SEM像を6μm×6μmの範囲に切り取り、孔を黒く塗りつぶした。孔の下層にポリマー構造が見える場合も1つの孔として塗りつぶした。画像処理ソフト(Scion Image、Scion社製)にて解析を行った。SEM像を二値化処理し、孔が黒、構造ポリマー部分が白となった画像を得た。孔の総面積Sを読み取り、次式で開孔率(%)を算出した。
各表面の5箇所で同様の測定を行い、その平均値を求めた。
(実施例1)
ポリスルホン( アモコ社製“ユーデル”P−3500)18重量%およびビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)9重量%をN,N'−ジメチルアセトアミド72重量%および水1重量%の混合溶媒に加え、90℃ で10時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を温度45℃の紡糸吐出部へ送り、外径0.35mm、内径0.25mmのオリフィス型二重円筒型口金のスリット部より吐出した。注入液としてN,N'−ジメチルアセトアミド55重量%および水45重量%からなる溶液を円間部より吐出した。吐出された製膜原液は、温度30℃、湿度70RH%の雰囲気の乾式部350mmを通過した後、40℃の凝固浴(水浴)を通過させ、80℃の水洗工程を通過させた後、紡速30m/minで巻き取り、膜状物を得た。乾式部の滞留時間は0.7秒であった。得られた膜状物を水に含浸し、照射線量25kGyのγ線を照射し、中空糸膜を得た。中空糸膜の寸法は、内直径200μm膜厚40μmであった。得られた中空糸膜の透水性、デキストラン篩い係数、血小板付着数、膜全体の共重合体比率、機能層表面の共重合体比率、機能層表面の顕微ATR、不溶化物の有無、縦弾性率を測定した。結果を表1に示した。共重合体は不溶化され、機能層表面に多く存在しており、血小板付着数が少なく、縦弾性率が高く、分離性能の高い中空糸膜が得られた。
(実施例2)
ポリスルホン( アモコ社製“ユーデル”P−3500)18重量%およびビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)2重量%、ポリビニルピロリドン(ISP社 K30)2重量%をN,N'−ジメチルアセトアミド77重量%および水1重量%の混合溶媒に加え、90℃ で10時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を温度45℃の紡糸吐出部へ送り、外径0.35mm、内径0.25mmのオリフィス型二重円筒型口金のスリット部より吐出した。注入液としてN,N'−ジメチルアセトアミド51重量%および水49重量%からなる溶液を円間部より吐出した。吐出された製膜原液は、温度30℃、湿度70RH%の雰囲気の乾式部350mmを通過した後、40℃の凝固浴(水浴)を通過させ、80℃の水洗工程を通過させた後、紡速30m/minで巻き取り、膜状物を得た。乾式部の滞留時間は0.7秒であった。得られた膜状物を水に含浸し、照射線量25kGyのγ線を照射し、中空糸膜を得た。中空糸膜の寸法は、内直径170μm、膜厚26μmであった。得られた中空糸膜の透水性、デキストラン篩い係数、血小板付着数、膜全体の共重合体比率、機能層表面の共重合体比率、機能層表面の顕微ATR、不溶化物の有無、縦弾性率を測定した。結果を表1に示した。共重合体は不溶化され、機能層表面に多く存在しており、血小板付着数が少なく、縦弾性率が高く、分離性能の高い中空糸膜が得られた。
(実施例3)
ポリスルホン( アモコ社製“ユーデル”P−3500)18重量%およびビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)9重量%をN,N'−ジメチルアセトアミド72重量%および水1重量%の混合溶媒に加え、90℃ で10時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を温度45℃の紡糸吐出部へ送り、外径0.35mm、内径0.25mmのオリフィス型二重円筒型口金のスリット部より吐出した。注入液としてN,N'−ジメチルアセトアミド70重量%および水30重量%からなる溶液を円間部より吐出した。吐出された製膜原液は、温度30℃、湿度70RH%の雰囲気の乾式部350mmを通過した後、40℃の凝固浴(水浴)を通過させ、80℃の水洗工程を通過させた後、紡速30m/minで巻き取り、膜状物を得た。乾式部の滞留時間は0.7秒であった。得られた膜状物を100℃で1時間乾燥し、照射線量25kGyのγ線を照射し、中空糸膜を得た。中空糸膜の寸法は、内直径200μm、膜厚40μmであった。得られた中空糸膜の透水性、デキストラン篩い係数、血小板付着数、膜全体の共重合体比率、機能層表面の共重合体比率、機能層表面の顕微ATR、不溶化物の有無、縦弾性率を測定した。結果を表1に示した。共重合体は不溶化され、機能層表面に多く存在しており、血小板付着数が少なく、縦弾性率が高く、分離性能の高い中空糸膜が得られた。
(比較例1)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)の替わりに、ポリビニルピロリドン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社製;以下ISP社と略す K30)を添加したことと、γ線を照射しなかったこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示した。ポリビニルピロリドンは不溶化されておらず、実施例1と比較して、血小板付着数がやや多く、縦弾性率が低く、分離性能も低かった。
(比較例2)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)の替わりに、ポリビニルピロリドン(ISP社製 K30)を添加したこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示した。γ線を照射することで、ポリビニルピロリドンは不溶化したが、血小板付着数が著しく増加した。
(比較例3)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)の替わりに、ビニルピロリドンとスチレンのグラフト共重合体(ISP社製“ANTARA430”)を添加したことと、γ線を照射しなかったこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示した。共重合体は不溶化されておらず実施例1と比較して、血小板付着数は同程度で、縦弾性率が高いが、分離性能が低かった。
(比較例4)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)の替わりに、ビニルピロリドンとスチレンのグラフト共重合体を添加したこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示した。γ線を照射することで、血小板付着数が著しく増加した。グラフト共重合体では、機能層表面の血液適合性が不充分であることがわかる。また、γ線照射をしても不溶化物がなかった。これは、機能層表面の共重合体量が少なかったためと推察される。
(比較例5)
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)18重量%をN,N'−ジメチルアセトアミド81重量%および水1重量%の混合溶媒に加え、90℃ で10時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を温度45℃の紡糸吐出部へ送り、外径0.35mm、内径0.25mmのオリフィス型二重円筒型口金のスリット部より吐出した。注入液としてN,N'−ジメチルアセトアミド55重量%および水45重量%からなる溶液を円間部より吐出した。吐出された製膜原液は、温度30℃、湿度70RH%の雰囲気の乾式部350mmを通過した後、40℃の凝固浴(水浴)を通過させ、80℃の水洗工程を通過させた後、130℃/2分の乾燥工程を通過させ、160℃のクリンプ工程を経て、紡速30m/minで巻き取り、膜状物を得た。乾式部の滞留時間は0.7秒であった。膜状物の内表面積が1.6m2になるように、ケースに充填し、かつ両端をポッティングによりケース端部に固定し、ポッティング材の端部の一部をカッティングすることで両端を開口させることで、中空部を血液側、外表面側を透析液側としたモジュールを得た。ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、“コリドンVA64“)0.01重量%水溶液を血液側入口から血液側出口に500mL/minで1分間、通液した。次に血液側入口から透析液側入口に500mL/minで1分間、通液することで、中空糸膜の内表面に、VA64を集積させた。この時の中空糸膜内部に入り込んだVA64を内表面に、より集積させるために、100kPaの圧縮空気で透析液側から血液側へ充填液を押しだした。この後、血液側の充填液をブローし、中空糸膜のみに水溶液が保持された状態にした。さらに窒素で透析液側、血液側それぞれを各1分間ブローし、モジュール内を窒素で置換した後、該モジュールに25kGyのγ線を照射し、中空糸膜モジュールを得た。モジュール内の酸素濃度は0.7%であった。得られた中空糸膜モジュールを解体し、中空糸膜を取り出した。中空糸膜の透水性、デキストラン篩い係数、血小板付着数、膜全体の共重合体比率、機能層表面の共重合体比率、機能層表面の顕微ATR、不溶化物の有無、縦弾性率を測定した。結果を表1に示した。共重合体は不溶化され、機能層表面に多く存在しており、血小板付着数が少ないが、中空糸膜の構造が決定した後に共重合体を添加しているため、中空糸膜全体の共重合体含有量が少なく、縦弾性率および、分離性能が低い中空糸膜となった。
(比較例6)
乾式長を30mmにし、乾式部滞留時間を0.06秒とした以外は、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示した。開孔率が低いため、中空糸膜同士の癒着がおこってしまい、透水性および篩い係数の測定が行えなかった。中空糸膜全体における共重合体の含有量は充分なため、縦弾性率は高かった。しかしながら、乾式部滞留長が短いため、中空糸膜機能層表面における共重合体の含有比率が低下し、血小板付着数が悪化した。
Claims (16)
- 透水性が100ml/hr/mmHg/m2以上、2000ml/hr/mmHg/m2以下の中空糸膜において、
疎水性高分子を含有する製膜原液に親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体を添加して得られ、
前記ランダム共重合体または前記交互共重合体の前記中空糸膜における含有比率が0.1重量%以上5重量%以下であり、機能層表面における酢酸ビニルの含有比率が前記中空糸膜全体における酢酸ビニルの含有比率に対して30倍以上1000倍以下であり、
前記ランダム共重合体または前記交互共重合体が架橋し水に不溶化している、中空糸膜。 - 中空糸膜がポリスルホン系高分子からなることを特徴とする、請求項1に記載の中空糸膜。
- 透水性が100ml/hr/mmHg/m2以上、2000ml/hr/mmHg/m2以下のポリスルホン系高分子からなる中空糸膜において、
親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体の前記中空糸膜における含有比率が0.1重量%以上5重量%以下であり、機能層表面における酢酸ビニルの含有比率が前記中空糸膜全体における酢酸ビニルの含有比率に対して30倍以上1000倍以下であり、
縦弾性率が18kgf/m2以上であり、かつ、前記共重合体が架橋し水に不溶化している、中空糸膜。 - 機能層表面における1730cm−1付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系高分子のベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、0.01以上、0.3以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の中空糸膜。
- 中空糸膜の外側表面における1730cm−1付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系高分子のベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、0.2以下であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の中空糸膜。
- 前記共重合体中における親水性ユニットの比率が10モル%以上、80モル%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜。
- 前記親水性ユニットがビニルピロリドンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸膜。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の中空糸膜がケースに内蔵された中空糸膜モジュール。
- 血液透析器として用いることを特徴とする請求項8に記載の中空糸膜モジュール。
- 透水性が100ml/hr/mmHg/m2以上、2000ml/hr/mmHg/m2以下である中空糸膜の製造方法において、疎水性高分子を含有する製膜原液に親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体を1重量%以上、30重量%以下、かつ、疎水性高分子の添加量に対して30重量%より多く、70重量%以下添加し、二重管口金のスリット部から該製膜原液、円管部から疎水性高分子の貧溶媒を含む注入液を吐出し、乾式部を0.2秒以上2秒以下通過させた後に凝固浴で凝固させることによって得られた膜状物を水洗後、放射線を照射することで製造されたことを特徴とする中空糸膜の製造方法。
- 前記共重合体中における親水性ユニットの比率が10モル%以上80モル%以下であることを特徴とする請求項10に記載の中空糸膜の製造方法。
- 前記共重合体の親水性ユニットがビニルピロリドンであることを特徴とする、請求項10または11に記載の中空糸膜の製造方法。
- 前記共重合体を製膜原液に、疎水性高分子に対して30重量%より多く、70重量%以下添加することを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
- 前記膜状物を水洗後、50℃以上150℃以下で乾燥することを特徴とする、請求項10〜13のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
- 前記疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする、請求項10〜14のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
- 請求項10〜15のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法によって得られた中空糸膜をケースに内蔵することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
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