JP5857407B2 - 中空糸膜および中空糸膜の製造方法 - Google Patents

中空糸膜および中空糸膜の製造方法 Download PDF

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本発明は、血液適合性が高く、分画特性の優れた中空糸膜およびその製造方法に関する。
従来、血液体外循環や水処理の分野において、中空糸膜モジュールによる物質分離が広く用いられている。特に透析膜、血液成分分離膜等の分野においては、合成高分子を用いた中空糸膜が広く利用されている。近年、β−ミクログロブリンなどの中・高分子量の病因タンパク質を多く除去できる、孔径が大きな高性能タイプの中空糸膜が主流となっており、主に疎水性高分子が素材として用いられている。しかしながら、疎水性の強さから血液適合性がよくない。そこで、親水性成分を添加することで膜表面を親水化し、血液適合性を改善している。
血液が接触する機能層表面において、疎水性成分が露出すると、血液が疎水性成分と接触し、血液の活性化によって血液凝固が進行してしまう。つまり、血液適合性を改善するためには、機能層表面が一様に親水性成分で覆われていることが必要となる。
親水性成分を添加する方法としては、製膜原液に親水性成分を添加して製膜する方法や、中空糸膜に親水性成分を浸漬して結合させる方法が一般的である。製膜原液に親水性成分を添加すると、膜構造に形成に影響を与えるため、分離膜の機械強度、透水性、分離性能が変化する。つまり、添加する親水性成分の種類や添加量を最適化することで、機械強度や分離性能に優れた中空糸膜を得ることができる。疎水性高分子に親水性成分を添加する効率的な方法として、疎水性ユニットと親水性ユニットからなる共重合体を添加する方法がある。疎水性ユニットが疎水性高分子と相互作用することで、導入効率が高まり、効率的に親水化することができる。
中空糸膜を内蔵したモジュールを血液浄化等に使用する場合、親水性成分を添加するとき、親水性成分が血液等に溶出して、親水性の経時低下や処理液への混入などが問題となることがある。かかる溶出を抑制する方法として、放射線を照射することで、中空糸膜と親水性成分に強固な結合を形成する方法がある。
酢酸ビニル系共重合体とその他一種以上の混合物を吸着保持させた親水化膜とその製造方法(特許文献1)が開示されている。ここでは、酢酸ビニル系共重合体を添加することで、疎水性の分離膜と親水性成分との親和性を高めているが、分離膜と共重合体の結合が物理的吸着であるため、溶出抑制に限界がある。また、膜への後処理であるため、膜形成に影響を与えず、分離比率や機械強度の向上が望めない。
製膜原液に親水性ユニットと酢酸ビニルユニット(ポリスルホンを除く)からなるグラフト共重合体または/およびブロック共重合体を含む膜とその製造方法(特許文献2)が開示されている。ここでは、酢酸ビニルユニットを含む共重合体を添加することで、膜と親水性成分の親和性を高め、溶出を抑制している。しかしながら、かかる溶出の抑制とは、製造段階において用いる凝固液への溶出に関するものである。一方で、膜と共重合体の結合が分子間力によるものであるため、透析などの長時間使用時に微量の溶出が問題となる場合では、溶出抑制に限界がある。また、特許文献2の実施例によると血小板付着量が抑制されているとあるが、中空糸膜の分野においては、血小板付着量が、共重合体を添加しない膜に対して30%以上であり、このレベルでは充分な厳しい血液適合性の要求を満たすことができるとはいえず、血小板付着が悪化傾向となるγ線照射技術を適用することもできない。また、製膜原液に共重合体を添加した際の分離性能と機械強度の変化について言及されていない。
疎水性高分子に架橋性高分子をブレンドして調整した分離膜を架橋処理する親水性多孔質高分子膜の形成方法(特許文献3)が開示されている。しかしながら、この技術は、透過性能を河川水で測定していることなどから、水処理用途と推測できる。ここで、水処理用途で用いられる限外濾過膜は分画分子量が150000程度であることから、孔径が大きいために高分子の絡み合いが少なく、架橋性高分子の溶出量が大きいと考えられる。特許文献3においては、架橋性高分子によって親水化することによって透過性を向上させており、比較例として挙げられている架橋処理を施さなかった場合に透過性が著しく低い。つまり、架橋処理前では多量の架橋性高分子が透過性の測定時に水によって洗い流されていることを示唆している。特許文献3においては、架橋処理前にも洗浄を行っているが、かかる洗浄においても同様に架橋性高分子が洗い流されていることが容易に予測される。このため、該技術では架橋処理前の洗浄工程を強化することができない。そのため、溶媒などを充分に洗浄するためには、架橋処理後の洗浄が必須となり、工程が煩雑となってしまう。
製膜原液にポリグリコール類、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体を添加した中空糸膜の製造方法(特許文献4)が開示されている。ここでは、膜中にポリグリコール類を含有させることで、親水性成分であるビニルピロリドン系高分子の添加量に対する含有量(残存量)を向上させている。
しかしながら、特許文献4においては、膜中のビニルピロリドン系高分子の量が多くすることを考慮する余り、膜中のビニルピロリドン系高分子が膨潤するなどの理由により、膜中の物質透過の抵抗が上がる原因となり、結果として透水性の低い中空糸膜となることについて、考慮がなされていない。また、上記のような疎水基と親水基の両方を有する共重合体における親水基部分の大部分は膜中に存在しているため、その機能を十分に発揮できない。すなわち、膜の透水性と血液適合性を両立するためには、製膜原液に上記共重合体を添加した場合においても、機能層表面のビニルピロリドン系高分子の含有量を膜全体のビニルピロリドン系高分子の含有量よりも充分に大きくすることが必要となるのであるが、特許文献4の実施例においてビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体を添加した膜では、該共重合体の機能層表面における含有比率は、膜全体における含有比率の6倍程度であり、透水性と血液適合性を高いレベルでの両立を達成するのに充分とはいえない。γ線などの放射線照射による架橋処理を行うと血液適合性が低下するため、放射線照射の技術を適用することができない。さらには、膜全体でビニルピロリドン系高分子の含有量が上がるため、含有量を低く抑えたい外表面におけるビニルピロリドン系高分子を除去するために、素材となる高分子の貧溶媒での洗浄が必要となっている。このため、貧溶媒での洗浄時間を延長するなど操作が煩雑となるデメリットがある。
つまり、従来技術では、親水化された中空糸膜において、製造工程に煩雑な洗浄工程が少なく、親水性成分が低溶出で、血液適合性、透水性、機械強度、分離性能に優れた中空糸膜はこれまで存在していなかった。
特開平8−131794号公報 国際公開第97/13575号パンフレット 特表2008−543548号公報 特開平6−165926号公報
本発明の目的は、親水化された中空糸膜において、製造工程に煩雑な洗浄工程が少なく親水性成分が低溶出で、血液適合性、透水性、機械強度、分離性能に優れた中空糸膜および、その製造方法を提供することにある。
本発明は上記課題を達成するために、以下の構成を有する。
1.透水性が100ml/hr/mmHg/m以上、2000ml/hr/mmHg/m以下の中空糸膜において、親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体の前記中空糸膜における含有比率が0.1重量%以上、5重量%以下であり、機能層表面における前記酢酸ビニルの含有比率が、膜全体における酢酸ビニルの含有比率に対して30倍以上、1000倍以下であり、該共重合体が架橋し水に不溶化していることを特徴とする中空糸膜。
2.前記共重合体中における親水性ユニットの比率が10モル%以上、80モル%以下であることを特徴とする前記1に記載の中空糸膜。
3.前記親水性ユニットがビニルピロリドンであることを特徴とする、前記1または2に記載の中空糸膜。
4.中空糸膜がポリスルホン系高分子からなることを特徴とする、前記1〜3のいずれかに記載の中空糸膜。
5.機能層表面における1730cm−1 付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系高分子のベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、0.01以上、0.3以下であることを特徴とする前記4に記載の中空糸膜。
6.中空糸膜の外側表面における1730cm−1 付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系高分子のベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、0.2以下であることを特徴とする前記4または5に記載の中空糸膜。
7.外側表面の開孔率が5%以上、50%以下であることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の中空糸膜。
8.前記1〜7のいずれかに記載の中空糸膜がケースに内蔵された中空糸膜モジュール。
9.血液透析器として用いることを特徴とする前記8に記載の中空糸膜モジュール。
10.透水性が100ml/hr/mmHg/m以上、2000ml/hr/mmHg/m以下である中空糸膜の製造方法において、疎水性高分子を含有する製膜原液に親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体を1重量%以上、30重量%以下添加し、二重管口金のスリット部から該製膜原液、円管部から疎水性高分子の貧溶媒を含む注入液を吐出し、乾式部を0.2秒以上通過させた後に凝固浴で凝固させることによって得られた膜状物を水洗後、放射線を照射することで製造されたことを特徴とする中空糸膜の製造方法。
11.前記共重合体中における親水性ユニットの比率が10モル%以上、80モル%以下であることを特徴とする前記10に記載の中空糸膜の製造方法。
12.前記共重合体の親水性ユニットがビニルピロリドンであることを特徴とする、前記10または11に記載の中空糸膜の製造方法。
13.前記共重合体を製膜原液に、疎水性高分子に対して30重量%より多く、70重量%以下添加することを特徴とする、前記10〜12のいずれかに記載の中空糸膜の製造方
14.前記膜状物を水洗後、50℃以上150℃以下で乾燥することを特徴とする、前記10〜13のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
15.前記疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする、前記10〜14のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
16.前記10〜15のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法によって得られた中空糸膜をケースに内蔵することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
本発明によれば、以下に説明するとおり、中空糸膜を親水化して血液適合性を向上させるとともに、機械強度および分離性能を向上することができ、親水性成分の溶出も抑制することができる。
本発明に係る中空糸膜は、回収目的物質と廃棄物質を弁別する分離膜であり、遠心分離、限外濾過、透析などに用いることができるが、主として血液浄化器に用いられる。通常、中空糸膜束として、プラスチック製の筒状ケース、ヘッダー等から構成されるモジュール内部に内蔵される。血液浄化器としては、一般に人工腎臓と呼ばれる血液透析器、血液濾過器や救急救命用途の緩徐式血液濾過器および血液透析濾過器等が挙げられる。一般的に中空糸膜は、透水性や血液適合性の向上などの目的で、親水性成分を含有させている。しかしながら、親水性成分の不足による血液適合性の不良や、親水性成分の溶出による親水性の経時低下、処理液への溶出物の混入が問題となる。また、親水性成分を添加することによって、機械強度、分離性能にも変化が生じる。
そこで、本発明において鋭意検討の結果、親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなる共重合体としてランダム共重合体または交互共重合体を用いて、これを製膜原液の段階において1重量%以上、30重量%以下添加し、これを機能層表面における酢酸ビニルの比率が膜全体の酢酸ビニルの平均値の比率に対して30倍以上、1000倍以下となるように中空糸膜として紡糸し、該共重合体を架橋して水に不溶化することで製造された中空糸膜が、優れた血液適合性を有する上に、親水性成分の溶出が少なく、透水性、機械強度、分離性能に優れていることを見いだした。
中空糸膜は、血液などの処理液に接触し分離性能に寄与する機能層と、膜の機械強度に寄与する支持層からなっている非対称構造の膜が透水性、分離性能の面から好ましい。特に限定しないが、中空部に血液を通す透析膜などでは、中空糸膜の内表面側が機能層となる。機能層表面の親水性が低いと、血液が接触した際にタンパク質や血小板の付着が発生し、血液凝固の原因となる。したがって、機能層表面の親水性を高めることで血液適合性が向上する。
製膜原液に、親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体を添加することで、中空糸膜の機能層表面の親水性が向上し、中空糸膜の血液適合性を高めることができる。
本願発明において、親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなる共重合体を用いるのは、酢酸ビニルユニットが膜素材である疎水性高分子との疎水性相互作用によって導入効率が高まり、一方で親水性ユニットが機能層表面を親水化するためである。酢酸ビニルユニットも機能層表面に露出するが、本発明においてはランダム共重合体や交互共重合体を用いるものであり、これらは酢酸ビニルユニットの繰り返しが少ないため、酢酸ビニルユニットの偏在化がおさえられ、酢酸ビニルユニットの集まりが血液中のタンパク質や血小板に比べて非常に小さい面積となり、相互作用による付着をおこしづらいという利点を有する。酢酸ビニルユニットと親水性ユニットの交互比率が大きい程、ユニットの繰り返し数は少なくなる。ここでいう交互比率とは、酢酸ビニルユニットと親水性ユニットの結合数から、全てのユニットの結合数を除した値である。なお、上記より、本発明ではランダム共重合体における交互比率が0.01以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。交互比率はNMR法やIR法などにより、各結合の比を測定することで算出できる。
また、該共重合体を添加することで、中空糸膜の分離性能が向上する。これは、製膜時に製膜原液が疎水性高分子の貧溶媒と接触した時におこる相分離において、界面を安定させる効果が高く、均一な孔を形成するためと考えられる。ここでいう均一な孔の形成とは、中空糸膜の横断面の同心円上に存在する孔のことであり、機能層から支持層にかけて孔径の大きくなる非対称構造に影響を及ぼすものではない。
さらに、均一な孔を形成することで、骨格の太さも均一となりやすく、機械強度が向上する。特に縦弾性率が高くなる。中空糸膜の縦弾性率が高くなることで、糸のつぶれに対する耐性が高まり、製造工程による糸つぶれなどの欠陥が生じにくくなる。本発明においては、中空糸膜の縦弾性率は18kgf/m以上であり、好ましくは19kgf/m以上、より好ましくは19.5kgf/m以上である。
また、糸のつぶれに対する強度は膜厚の内径に対する比の影響も強く受ける。本発明においては、膜厚の内径に対する比は0.12以上であることが好ましい。
原液に添加する共重合体の親水性ユニットとは、そのユニットのみからなる高分子が水に易溶な繰り返し単位であり、20℃の純水に対して10g/100g以上の溶解度を有するものをいう。具体例としては、特に限定しないが、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N,N′−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。なかでも、放射線照射による架橋処理で溶出抑制できることから、ビニルピロリドンユニットが特に好ましい。
また、共重合体中の親水性ユニットの比率が小さいと、親水性が低下するため血液適合性が悪化する。一方で、親水性ユニットの比率が大きいと、疎水性高分子との相互作用が弱まり、導入効率が低下するため、血液適合性が悪化する。そのため、親水性ユニットの比率は10モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。一方で、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましい。
膜素材となる疎水性高分子としては、具体的に、ポリスルホン系高分子、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリルなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。この中でも、ポリスルホン系高分子は、中空糸膜を形成させやすく、また、酢酸ビニル基との相互作用が強く中空糸膜に導入されやすいことから、好適に用いられる。ポリスルホン系高分子とは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつものであり、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルエーテルスルホンなどが挙げられる。例えば、次式(1)、(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。
Figure 0005857407
血液適合性の観点から考えると、機能層表面における、共重合体の含有比率が重要となってくる。特に、ポリスルホン系高分子を用いる場合、機能層表面における共重合体のポリスルホン系高分子に対する含有比率は、機能層表面の赤外吸収のピーク面積の比と正の相関を示す。全反射赤外分光法(ATR)でポリスルホン系高分子由来のピーク面積と酢酸ビニル由来のピーク面積の比を測定することで、機能層表面から数μmの領域の共重合体の含有比率に相関する値を得ることができる。すなわち、1730cm−1 付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積(ACO)の、1580cm−1付近のポリスルホン系高分子のベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)によって示される。機能層表面における共重合体のポリスルホン系高分子に対する含有比率が少ないと、十分な血液適合性を発揮することができない。また、ポリスルホン系高分子と共重合体の架橋が進行しない。一方で、機能層表面における共重合体のポリスルホン系高分子に対する含有比率が大きいと、透過抵抗が大きくなり、透水性や分画分子量が低下してしまう。そのため、機能層表面における(ACO)/(ACC)が、0.01以上、0.3以下であることが好ましい。
また、中空糸膜の外側表面における共重合体のポリスルホン系高分子に対する含有比率が大きいと、共重合体の架橋や、酢酸ビニル基の疎水性相互作用によって中空糸膜同士で癒着が生じることがある。中空糸膜同士が癒着した部分は液の流れが妨げられ、性能が低下してしまう。そのため、中空糸膜の外側表面における(ACO)/(ACC)が、0.2以下であることが好ましい。
一方で、中空糸膜の外側表面の開孔率が低いと、中空糸膜同士の接触面積が大きくなるため、共重合体の架橋による中空糸膜同士の癒着が生じることがある。一方で、中空糸膜の外側表面の開孔率が高いと、構造体が細くなって損傷しやすくなる。そのため、中空糸膜の外側表面の開孔率は5%以上50%以下であることが好ましく、20%以下がより好ましい。
機能層に起因する血液適合性と分離性能の向上と、支持層に起因する機械強度の向上を両立するためには、中空糸膜に含有される共重合体の分布を制御する必要がある。血液適合性の向上には、前述している通り、機能層表面の共重合体の含有量が多いことが重要である。一方で、機械強度の向上の観点からは、共重合体自体は骨格成分ではないため、構造体としての強度向上への寄与は小さく、膜の形成過程に影響を与える効果が大きい。支持層中の共重合体の含有量を増やしても、強度の飛躍的な向上は望めず、逆に膜抵抗上昇による透水性の低下が問題となる。すなわち、本発明の効果を効率的に発揮するためには、共重合体が支持層よりも機能層表面に多く存在することが必要である。製膜時に製膜原液と貧溶媒を含む注入液とを接触させることで、注入液中の貧溶媒と製膜原液中の共重合体の親水性ユニットに相互作用が生じ、機能層表面の共重合体濃度を高めることができる。また、製膜原液が疎水性高分子の貧溶媒と接触した時におこる相分離において、酢酸ビニルユニットと親水性ユニットを有する共重合体は、相の界面に存在しやすい。そのため、形成された膜においては相分離過程で界面の多い機能層表面での存在量が多くなる。上述したような、共重合体の機能層表面における濃度の上昇は、製膜原液が吐出されてから凝固浴に入るまでの空走部分である乾式部でおこる。そのため、乾式部の滞留時間が短いと、機能層表面の共重合体の濃度が充分に上がらない。また、中空糸膜の外側表面の孔は乾式部における外気との接触によって成長が進行し、凝固浴に入ることで成長が停止するため、乾式部の滞留時間が短いと中空糸膜外側の開孔率が低下する。一方で、乾式部の滞留時間が長いと、糸揺れなど紡糸性の悪化に繋がる。最適な乾式部の滞留時間は、製膜原液や注入液の組成によって異なるが、乾式部の滞留時間は0.2秒以上が好ましく、一方で2秒以下が好ましい。
該共重合体は酢酸ビニルユニットを有していることから、酢酸ビニルの含有比率によって、含有量を表すことができる。つまり、機能層表面の酢酸ビニル含有比率が、膜全体の含有比率よりも大きいことが必要であり、機能層表面の酢酸ビニル含有比率が膜全体の含有比率に対して、30倍以上であることが好ましく、50倍以上であることがより好ましい。一方で、1000倍以下が好ましく、500倍以下がより好ましい。
また、中空糸膜全体における共重合体の含有比率が低いと、十分な血液適合性、機械強度、分離性能を発揮することができない。また、含有比率が高いと、膜の透過抵抗が大きくなり、透水性や分画分子量が低下してしまう。そのため、膜全体の含有比率は0.1重量%以上、5重量%以下であり、1重量%以下が好ましい。
中空糸膜全体における共重合体の含有比率および酢酸ビニルの含有比率は、元素分析などによって求めることができる。共重合体の親水性ユニットの種類や共重合体のユニット比によって算出過程が異なるが、親水性ユニットがビニルピロリドンの場合は、窒素含有量とユニット比から膜全体の共重合体含有比率や酢酸ビニル含有比率を求めることができる。
中空糸膜機能層表面の酢酸ビニル含有比率は、XPS法によって求めることができる。エステル基(COO)由来の炭素のピークはC1sのCHやC−C由来のメインピークから+4.0〜4.2eVに現れるピークをピーク分割することによって求めることができる。全元素(水素原子は検出できないので、水素原子以外の全元素)に対する該ピーク面積の割合を算出することで、エステル基由来の炭素量(原子数%)が求まる。より具体的には、C1sには、主にCHx,C−C,C=C,C−S由来の成分、主にC−O,C−N由来の成分、π-π*サテライト由来の成分、C=O由来の成分、COO由来の成分の5つの成分から構成される。従って、5つ成分でピーク分割を行う。COO由来の成分は、CHxやC−Cのメインピーク(285eV付近)から+4.0〜4.2eVに現れるピークである。この各成分のピーク面積比は、小数点第2桁目を四捨五入し、算出する。エステル基由来の炭素量(原子数%)は、C1sの炭素量(原子数%)から、COO由来の成分のピーク面積比を乗じることで求める。なお、ピーク分割の結果、0.4%以下であれば、検出限界以下とする。エステル基由来の炭素量(原子数%)と疎水性高分子の組成、親水性ユニットの組成から、機能層表面の酢酸ビニル含有比率を算出できる。
該共重合体の添加量が多すぎると、溶解性の低下や中空糸膜中に多量に共重合体の残存がおこる。前述したとおり、該共重合体は中空糸膜への適度な含有量を維持することが好ましい。そのため、該共重合体の製膜原液への添加量は、疎水性高分子の添加量に対して30重量%より多く、70重量%以下であることが好ましい。
また、製膜原液には、疎水性高分子、親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体および良溶媒の他に、特に限定しないが、貧溶媒や親水性高分子またはその両方を添加してもよい。
製膜原液中の疎水性高分子の濃度を高くすることで、機械強度を高めることができる。一方で、疎水性高分子濃度が高すぎると、溶解性の低下や製膜原液の粘度増加による吐出不良などの問題が生じる。また、疎水性高分子の濃度によって、透水性および分画分子量を調整することができる。疎水性高分子の濃度を高くすると、機能層の密度が上がるため、透水性および分画分子量は低下する。以上のことから、製膜原液中の疎水性高分子の濃度は14重量%以上が好ましく、一方で24重量%以下が好ましい。
本発明における良溶媒とは、製膜温度において実質的に疎水性高分子を溶解する溶媒のことである。特に限定しないが、ポリスルホン系高分子を用いる場合は、その溶解性から、N,N−ジメチルアセトアミドが好適に用いられる。貧溶媒とは、製膜温度において、実質的に疎水性高分子を溶解しない溶媒のことである。特に限定しないが、水が好適に用いられる。
製膜原液に貧溶媒を添加することで、貧溶媒が核となって相分離の進行が促進される。一方で、貧溶媒の添加量が多すぎると、製膜原液が不安定となって製膜の再現性が得られないことや、一部の疎水性高分子が析出することで吐出圧が高くなりフィルター寿命を著しく縮めてしまうことがある。貧溶媒の最適な添加量は、貧溶媒の種類によって異なるが、代表的な貧溶媒である水を用いる場合は、貧溶媒の添加量は、0.5重量%以上が好ましく、一方で4重量%以下が好ましい。
また、製膜原液に他の親水性高分子を添加することで、増孔剤としての効果による透水性向上や、親水性を更に高める効果が期待できる。一方で、親水性高分子の添加量が多すぎると、製膜原液の粘度増加による溶解性の低下や吐出不良がおこり、中空糸膜中に多量の親水性高分子が残存することで、透過抵抗の増大による透水性の低下などがおこることがある。最適な親水性高分子の添加量は、その種類によって異なるが、1重量%以上が好ましく、一方で15重量%以下が好ましい。親水性高分子としては、特に限定しないが、ポリスルホン系高分子を用いる場合、相溶性が高いことから、ポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
また、原液に添加する成分が親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体との親和性が強いと、場合により該ランダム共重合体が支持層に残存してしまい、透水性の低下や、機能層表面での該ランダム共重合体の含有量低下による血液適合性の悪化が問題となることがあるので、注意が必要である。具体例としては、ポリグリコール類などが挙げられる。
高分子を溶解する際は、高温で溶解することが、溶解性を上げる面で好ましいが、熱による高分子の変性や溶媒の蒸発による組成変化の懸念がある。そのため、溶解温度は、30℃以上、120℃以下が好ましい。疎水性高分子および添加剤の種類によってこれらの最適範囲は異なるので注意が必要である。
二重管口金のスリット部から該製膜原液、円管部から貧溶媒を含む注入液を吐出し、乾式部を通過させた後に凝固浴で凝固させることによって得られた膜状物を水洗後、放射線を照射することで中空糸膜が製造される。
注入液は貧溶媒と良溶媒の混合液であり、その比率によって中空糸膜の透水性および分画分子量を調整する。貧溶媒としては、特に限定しないが、水が好適に用いられる。良溶媒としては特に限定しないが、N,N−ジメチルアセトアミドが好適に用いられる。製膜原液と注入液が接触することで、貧溶媒の作用によって製膜原液の相分離が誘起され、凝固が進行する。注入液の貧溶媒比率を高めることで、透水性および分画分子量が低下する。また、注入液中の貧溶媒と、原液中の共重合体の親水性ユニットが相互作用をおこし、注入液側の共重合体の含有量が増える。中空糸膜の機能層が内表面側の場合は、注入液を調整することによって、機能層表面の共重合体の含有量を制御することができる。また、貧溶媒比率が低すぎると、液体のまま滴下されることになるため、中空糸膜を得ることができない。適正な注入液の比率は、良溶媒と貧溶媒の種類によって異なるが、貧溶媒が10重量%以上であることが好ましく、一方で80重量%以下であることが好ましい。
吐出時の二重管口金の温度は、製膜原液の粘度、相分離挙動、注入液の製膜原液への拡散速度に影響を与える。一般的に、二重管口金の温度が高い程、得られる中空糸膜の透水性と分画分子量は大きくなる。ただし、二重管口金の温度が高過ぎると製膜原液の粘度の低下や凝固性の低下によって、吐出が不安定となるため紡糸性が低下する。一方で、二重管口金の温度が低いと、結露によって二重管口金に水分が付着することがある。そのため、二重管口金の温度は20℃以上が好ましく、一方で90℃以下が好ましい。
吐出された製膜原液と注入液が乾式部を通過する際に、注入液における貧溶媒の製膜原液への拡散が進み、機能層から支持層にかけて孔径が大きくなっていく膜構造が形成される。さらに、前述したとおり、注入液に含まれる貧溶媒との相互作用により、機能層表面の共重合体の含有量が増加する。すなわち乾式長が短いと、機能層表面の共重合体の含有量が減少してしまう。一方で乾式長が長いと、糸揺れなどによって紡糸安定性が低下してしまう。そのため、乾式長は30mm以上が好ましく、一方で600mm以下が好ましい。
乾式部では、支持層表面が空気と接触することで、貧溶媒である空気中の水分を取り込み、相分離が進行する。そのため、乾式部の露点を制御することで、支持層表面の開孔率を調整することができる。乾式部の露点が低いと相分離が充分に進行しないため、支持層表面の開孔率が低下し、中空糸膜の摩擦が大きくなって紡糸性が悪化する。一方で、乾式部の露点が高くても、支持層表面が凝固するため開孔率が低下する。乾式部の露点は60℃以下が好ましく、一方で10℃以上が好ましい。
凝固浴は貧溶媒を主成分としており、必要に応じて良溶媒が添加される。貧溶媒としては好適に水が用いられる。製膜原液が凝固浴に入ることで、凝固浴中の多量の貧溶媒によって製膜原液は凝固し、膜構造が固定化される。凝固浴の温度を高くする程、凝固が抑制するため、透水性と分画分子量は大きくなる。
凝固浴で凝固させることによって得られた膜状物は、溶媒や余剰の共重合体を含んでいるため、水洗が必要である。水洗が不充分だと、使用前の洗浄が煩雑になることや、溶出物の処理液への流入が問題になる。水洗温度を上げることで水洗効率が上がることから、水洗の温度は、50℃以上が好ましい。
膜状物を乾燥処理する場合、乾燥温度が高いと熱架橋が過剰に進行し、中空糸膜同士の癒着がひきおこされることがある。一方で、乾燥温度が低いと乾燥処理に長い時間がかかる。そのため、乾燥温度は50℃以上、150℃以下が好ましい。
水洗をした膜状物には、分子の絡み合いや分子間力によって、共重合体が保持されている。該共重合体は、疎水性高分子と架橋することによって、水に不溶化し、溶出物の処理液への流入や、性能の経時変化を防ぐことができる。ここでいう水に不溶化とは、中空糸膜を疎水性高分子の良溶媒に溶解した時の不溶物が、中空糸膜に対して0.1重量%以上であることをいう。良溶媒に不溶な成分は、架橋構造を有しているため、水にも不溶である。特に、疎水性高分子がポリスルホン系高分子の場合、良溶媒としてはN,Nジメチルアセトアミドが用いられる。共重合体と疎水性高分子を架橋する方法としては、架橋剤の添加、放射線照射、加熱などが挙げられる。なかでも、放射線照射による方法が、中空糸膜の性能変化が小さく、添加剤も必要ないことから、好適に用いられる。放射線としては、α線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが用いられる。また、人工腎臓などの血液浄化用モジュールは滅菌することが必要であり、近年は残留毒性の少なさや簡便さの点から、γ線や電子線を用いた放射線滅菌法が多用されている。すなわち、疎水性高分子と共重合体の架橋と滅菌を同時に達成できる。滅菌と架橋を同時に行う場合は、滅菌効果の高い15kGy以上の照射線量が好ましい。一方で、照射線量が100kGy以上であると、共重合体の3次元架橋や分解などが起きるため、血液適合性が低下する。また、中空糸膜を水に含浸してγ線照射をすることが、架橋効率を上げるうえで好ましい。
中空糸膜の分離性能の指標として、デキストラン篩い係数がある。デキストラン篩い係数とは、デキストラン水溶液を中空糸膜で濾過した際に、デキストランが膜を透過する割合であり、重量平均分子量毎に得られる値である。デキストラン篩い係数は次式で求められる。
SC =2Cf/(Ci+Co)
ここで、SCはデキストラン篩い係数、Ciは分離膜に供給する水溶液の濃度 、Coは濾過後に供給側に残った水溶液の濃度、Cfは濾液の濃度である。各分子量のデキストラン濃度は、ゲル濾過クロマトグラフィ法などの方法で測定できる。測定の際は、分子量と濃度の検量線を、分子量及び濃度が既知のデキストラン溶液から得ればよい。各分子量に対するデキストラン篩い係数の値をプロットした分画曲線の傾きが鋭角であるほど、分離性能の高い中空糸膜といえる。また、デキストラン篩い係数が0.1となる分子量を分画分子量という。
中空糸膜の分画分子量が大きいと、疎水性高分子と共重合体の分子からみ合いが減るため、共重合体の吸着力が弱まってしまい、容易に洗い流されてしまうため、共重合体の導入効率が低下する。一方で、中空糸膜の分画分子量が小さいと、共重合体の目詰まりによる性能の低下がおこってしまう。そのため、本発明は分画分子量が10000以上、50000以下の中空糸膜において、より大きな効果が得られる。
中空糸膜の血液適合性が高い場合でも、中空糸膜の透水性が高いと、中空糸膜モジュールとして用いた時に、内部濾過が促進されるため、血液中のタンパク質や血小板が活性化され、血液の凝固が促進する。一方で、中空糸膜の透水性が低いと、処理できる血液量が低下してしまう。そのため、透水性は100ml/hr/mmHg/m以上、2000ml/hr/mmHg/m以下であることが必要となり、200ml/hr/mmHg/m以上、1500ml/hr/mmHg/m以下であることがより好ましい。
中空糸膜をモジュールに内蔵する方法としては、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断する。ケースの両端にヘッダーを取り付け、ヘッダーおよびケースのノズル部分に栓をすることで中空糸膜モジュールを得る。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(1)透水性の測定
中空糸膜40本を、直径約5mm、長さ17cmのハウジングに充填し、両端をコニシ(株)製エポキシ樹脂系化学反応形接着剤“クイックメンダー”でポッティングし、カットして開口することによって、中空糸膜モジュールを作製する。次いで、該モジュールの中空糸膜およびモジュール内部を蒸留水にて、1 時間洗浄した。中空糸膜内側に水圧100mmHgをかけ、外側へ流出してくる単位時間当たりの濾過量を測定した。透水性(UFR)は下記の式で算出した。
UFR(ml/hr/mmHg/m)=Q/(P×T×A)
ここで、Q:濾過量(mL)、T:流出時間(hr)、 P:圧力(mmHg)
(2)デキストラン篩い係数の測定方法
(1)の測定で用いた中空糸膜モジュールを用いた。FULKA社製デキストラン平均分子量〜1500(No.31394)、平均分子量〜6000(No.31388)、平均分子量15000〜20000(No.31387)、平均分子量〜40000(No.31389)、平均分子量〜60000(No.31397)、平均分子量〜200000(No.31398)を各々0.5mg/ml( 溶質全体では3.0mg/ml) になるように蒸留水で溶解し、デキストラン水溶液(原液)を作成する。モジュールに対して、中空糸膜の内側に原液を流し、外側に濾過をかけた。原液の温度は37℃とし、原液流量が20ml/min、濾過流量が0 .24ml/minになるように流速を調整した。原液を流して60分後から75分後の、モジュール原液入口液、出口液および濾液を採取し、GPCで濃度測定を行った。GPCは、サンプリングした水溶液を細孔径0.5ミクロンのフィルターで濾過し、その濾液をGPC用カラム(東ソーTSK−gel−G3000PWXL)、カラム温度40℃、移動相を液クロ用蒸留水1ml/min、サンプル打ち込み量100μlで分析を行い、示差屈折率計(東ソー社製 RI−8020)にてslice time0.02min、base−line−range4.5〜11.0minで測定した。デキストラン重量平均分子量の検量線は、測定直前に単分散のデキストラン(Fluka社製デキストランスタンダードNo.31416、No.31417、No.31418、No.31420、No.31422) を用いて行った。各重量平均分子量の篩い係数(SC)は、モジュール原液入口のデキストラン濃度(Ci)、出口のデキストラン濃度(Co)、濾液のデキストラン濃度(Cf)から、下記式で算出した。
SC =2Cf/(Ci+Co)
分離性能の指標として、分画曲線の傾き(s)を、SCが0.4の重量平均分子量(MW0.4)とSCが0.6の重量平均分子量(MW0.6)から、次式で算出した。
s=(0.4−0.6)/(logMW0.4−logMW0.6
sの絶対値が大きい程、分離性能が高い。
また、SCが0.1の重量平均分子量を分画分子量とした。
(3)中空糸膜のヒト血小板付着試験方法
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープを貼り付け、そこに中空糸膜を固定した。貼り付けた中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を露出させた。中空糸膜内表面に汚れや傷、折り目などがあると、その部分に血小板が付着し、正しい評価ができないことがあるので注意を要する。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、中空糸膜を貼り付けた面が、円筒内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。人間の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を、採血後10分以内に、円筒管内に1.0ml入れて37℃にて1時間振盪させた。その後、中空糸膜を10mlの生理食塩水で洗浄し、2.5%グルタルアルデヒド生理食塩水で血液成分の固定を行い、20mlの蒸留水にて洗浄した。洗浄した中空糸膜を常温0.5Torrにて10時間減圧乾燥した。この中空糸膜を走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を中空糸膜表面に形成させて、試料とした。この中空糸膜の内表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察し、1視野中(4.3×103μm2)の付着血小板数を数えた。中空糸長手方向における中央付近で、異なる10視野での付着血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×103μm2)とした。1視野で100個/4.3×103μm2を超えた場合は、100としてカウントした。中空糸の長手方向における端の部分は、血液溜まりができやすいため付着数の計測対象からはずした。なお、血小板付着数は20個/4.3×103μm2以下であることが好ましい。
(4)X線光電子分光法(XPS)測定
中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の機能層表面を3点測定した。測定サンプルは、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させた後、測定に供した。測定装置、条件としては、以下の通り。
測定装置: ESCALAB220iXL
励起X線: monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6eV)
X線径: 0.15mm
光電子脱出角度: 90 °(試料表面に対する検出器の傾き)
C1sには、主にCHx,C−C,C=C,C−S由来の成分、主にC−O,C−N由来の成分、π-π*サテライト由来の成分、C=O由来の成分、COO由来の成分の5つの成分から構成される。従って、5つ成分でピーク分割を行う。COO由来の成分は、CHxやC−Cのメインピーク(285eV付近)から+4.0〜4.2eVに現れるピークである。この各成分のピーク面積比を、小数点第2桁目を四捨五入し、算出した。エステル基由来の炭素量(原子数%)は、C1sの炭素量(原子数%)から、COO由来の成分のピーク面積比を乗じることで求めた。なお、ピーク分割の結果、0.4%以下であれば、検出限界以下とした。
中空糸膜がポリスルホンおよび、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体からなる場合、窒素量(a(原子数%))と硫黄量(b(原子数%))とエステル基由来の炭素量(c(原子数%))から、下記式で酢酸ビニル含有比率を求めた。
機能層表面の酢酸ビニル含有比率(重量%)=(c×86/(a×111+b×442+c×86))×100
(5)元素分析
中空糸膜3gを凍結乾燥させ、全自動元素分析装置varioEL(エレメンタール社)にて、試料分解路950℃、還元炉500℃、ヘリウム流量200ml/min、酸素流量20〜25ml/minで測定を行った。中空糸膜に含まれる共重合体が酢酸ビニルとビニルピロリドンユニットからなる場合、中空糸膜全体の酢酸ビニル含有比率(w(重量%))は、ビニルピロリドンユニット比(d(モル%))と、窒素含有量(w(重量%))から、下記式で計算して求めた。
=w/14×((100−d)/d)×86
また、酢酸ビニルユニットとビニルピロリドンユニットからなる共重合体の含有比率(w(重量%))は、下記式で計算して求めた。
=w×111/14+w
(6)顕微ATR法
中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させ、機能層表面測定用の試料とした。中空糸膜を超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させ、中空糸膜の外側表面測定用の試料とした。この乾燥中空糸膜の各表面をJASCO社製IRT−3000の顕微ATR法により測定した。測定は視野(アパーチャ)を100μm×100μmとし、測定範囲は3μm×3μmで積算回数を30回、縦横各5点の計25点測定した。得られたスペクトルの波長1549〜1620cm−1で、基準線を引き、その基準線とスペクトルの正部分で囲まれた部分のピーク面積をポリスルホンのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積ACCとした。同様に、1711〜1759cm−1で、基準線を引き、エステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積ACOとした。
上記の操作を、それぞれ同一中空糸で異なる3箇所測定し、(ACO)/(ACC)の平均値を求めた。
(7)不溶化物有無の確認
中空糸膜1gを、100mlのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、不溶物の有無を目視で確認した。
(8)縦弾性率の測定
有効試料長50mmの中空糸膜を引っ張り速度50mm/minで引っ張り試験を行った。測定温度は25℃で行った。測定には、テンシロン万能試験機RTM−100(株式会社オリエンテック)を用いた。変位1mmあたりの荷重(kgf)を中空糸膜の断面積(mm)で除し、縦弾性率(kgf/mm)を算出した。中空糸膜10本の測定を行い、平均値を求めた。
(9)外側表面の開孔率測定
中空糸膜の外側表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて10000倍で観察し、像をコンピュータに取り込んだ。SEM像を6μm×6μmの範囲に切り取り、孔を黒く塗りつぶした。孔の下層にポリマー構造が見える場合も1つの孔として塗りつぶした。画像処理ソフト(Scion Image、Scion社製)にて解析を行った。SEM像を二値化処理し、孔が黒、構造ポリマー部分が白となった画像を得た。孔の総面積Sを読み取り、次式で開孔率(%)を算出した。
S(μm)÷36(μm)×100=開孔率(%)
各表面の5箇所で同様の測定を行い、その平均値を求めた。
(実施例1)
ポリスルホン( アモコ社製“ユーデル”P−3500)18重量%およびビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)9重量%をN,N'−ジメチルアセトアミド72重量%および水1重量%の混合溶媒に加え、90℃ で10時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を温度45℃の紡糸吐出部へ送り、外径0.35mm、内径0.25mmのオリフィス型二重円筒型口金のスリット部より吐出した。注入液としてN,N'−ジメチルアセトアミド55重量%および水45重量%からなる溶液を円間部より吐出した。吐出された製膜原液は、温度30℃、湿度70RH%の雰囲気の乾式部350mmを通過した後、40℃の凝固浴(水浴)を通過させ、80℃の水洗工程を通過させた後、紡速30m/minで巻き取り、膜状物を得た。乾式部の滞留時間は0.7秒であった。得られた膜状物を水に含浸し、照射線量25kGyのγ線を照射し、中空糸膜を得た。中空糸膜の寸法は、内直径200μm膜厚40μmであった。得られた中空糸膜の透水性、デキストラン篩い係数、血小板付着数、膜全体の共重合体比率、機能層表面の共重合体比率、機能層表面の顕微ATR、不溶化物の有無、縦弾性率を測定した。結果を表1に示した。共重合体は不溶化され、機能層表面に多く存在しており、血小板付着数が少なく、縦弾性率が高く、分離性能の高い中空糸膜が得られた。
(実施例2)
ポリスルホン( アモコ社製“ユーデル”P−3500)18重量%およびビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)2重量%、ポリビニルピロリドン(ISP社 K30)2重量%をN,N'−ジメチルアセトアミド77重量%および水1重量%の混合溶媒に加え、90℃ で10時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を温度45℃の紡糸吐出部へ送り、外径0.35mm、内径0.25mmのオリフィス型二重円筒型口金のスリット部より吐出した。注入液としてN,N'−ジメチルアセトアミド51重量%および水49重量%からなる溶液を円間部より吐出した。吐出された製膜原液は、温度30℃、湿度70RH%の雰囲気の乾式部350mmを通過した後、40℃の凝固浴(水浴)を通過させ、80℃の水洗工程を通過させた後、紡速30m/minで巻き取り、膜状物を得た。乾式部の滞留時間は0.7秒であった。得られた膜状物を水に含浸し、照射線量25kGyのγ線を照射し、中空糸膜を得た。中空糸膜の寸法は、内直径170μm、膜厚26μmであった。得られた中空糸膜の透水性、デキストラン篩い係数、血小板付着数、膜全体の共重合体比率、機能層表面の共重合体比率、機能層表面の顕微ATR、不溶化物の有無、縦弾性率を測定した。結果を表1に示した。共重合体は不溶化され、機能層表面に多く存在しており、血小板付着数が少なく、縦弾性率が高く、分離性能の高い中空糸膜が得られた。
(実施例3)
ポリスルホン( アモコ社製“ユーデル”P−3500)18重量%およびビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)9重量%をN,N'−ジメチルアセトアミド72重量%および水1重量%の混合溶媒に加え、90℃ で10時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を温度45℃の紡糸吐出部へ送り、外径0.35mm、内径0.25mmのオリフィス型二重円筒型口金のスリット部より吐出した。注入液としてN,N'−ジメチルアセトアミド70重量%および水30重量%からなる溶液を円間部より吐出した。吐出された製膜原液は、温度30℃、湿度70RH%の雰囲気の乾式部350mmを通過した後、40℃の凝固浴(水浴)を通過させ、80℃の水洗工程を通過させた後、紡速30m/minで巻き取り、膜状物を得た。乾式部の滞留時間は0.7秒であった。得られた膜状物を100℃で1時間乾燥し、照射線量25kGyのγ線を照射し、中空糸膜を得た。中空糸膜の寸法は、内直径200μm、膜厚40μmであった。得られた中空糸膜の透水性、デキストラン篩い係数、血小板付着数、膜全体の共重合体比率、機能層表面の共重合体比率、機能層表面の顕微ATR、不溶化物の有無、縦弾性率を測定した。結果を表1に示した。共重合体は不溶化され、機能層表面に多く存在しており、血小板付着数が少なく、縦弾性率が高く、分離性能の高い中空糸膜が得られた。
(比較例1)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)の替わりに、ポリビニルピロリドン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社製;以下ISP社と略す K30)を添加したことと、γ線を照射しなかったこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示した。ポリビニルピロリドンは不溶化されておらず、実施例1と比較して、血小板付着数がやや多く、縦弾性率が低く、分離性能も低かった。
(比較例2)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)の替わりに、ポリビニルピロリドン(ISP社製 K30)を添加したこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示した。γ線を照射することで、ポリビニルピロリドンは不溶化したが、血小板付着数が著しく増加した。
(比較例3)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)の替わりに、ビニルピロリドンとスチレンのグラフト共重合体(ISP社製“ANTARA430”)を添加したことと、γ線を照射しなかったこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示した。共重合体は不溶化されておらず実施例1と比較して、血小板付着数は同程度で、縦弾性率が高いが、分離性能が低かった。
(比較例4)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)ランダム共重合体(BASF社製“コリドン VA64”)の替わりに、ビニルピロリドンとスチレンのグラフト共重合体を添加したこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示した。γ線を照射することで、血小板付着数が著しく増加した。グラフト共重合体では、機能層表面の血液適合性が不充分であることがわかる。また、γ線照射をしても不溶化物がなかった。これは、機能層表面の共重合体量が少なかったためと推察される。
(比較例5)
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)18重量%をN,N'−ジメチルアセトアミド81重量%および水1重量%の混合溶媒に加え、90℃ で10時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を温度45℃の紡糸吐出部へ送り、外径0.35mm、内径0.25mmのオリフィス型二重円筒型口金のスリット部より吐出した。注入液としてN,N'−ジメチルアセトアミド55重量%および水45重量%からなる溶液を円間部より吐出した。吐出された製膜原液は、温度30℃、湿度70RH%の雰囲気の乾式部350mmを通過した後、40℃の凝固浴(水浴)を通過させ、80℃の水洗工程を通過させた後、130℃/2分の乾燥工程を通過させ、160℃のクリンプ工程を経て、紡速30m/minで巻き取り、膜状物を得た。乾式部の滞留時間は0.7秒であった。膜状物の内表面積が1.6mになるように、ケースに充填し、かつ両端をポッティングによりケース端部に固定し、ポッティング材の端部の一部をカッティングすることで両端を開口させることで、中空部を血液側、外表面側を透析液側としたモジュールを得た。ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、“コリドンVA64“)0.01重量%水溶液を血液側入口から血液側出口に500mL/minで1分間、通液した。次に血液側入口から透析液側入口に500mL/minで1分間、通液することで、中空糸膜の内表面に、VA64を集積させた。この時の中空糸膜内部に入り込んだVA64を内表面に、より集積させるために、100kPaの圧縮空気で透析液側から血液側へ充填液を押しだした。この後、血液側の充填液をブローし、中空糸膜のみに水溶液が保持された状態にした。さらに窒素で透析液側、血液側それぞれを各1分間ブローし、モジュール内を窒素で置換した後、該モジュールに25kGyのγ線を照射し、中空糸膜モジュールを得た。モジュール内の酸素濃度は0.7%であった。得られた中空糸膜モジュールを解体し、中空糸膜を取り出した。中空糸膜の透水性、デキストラン篩い係数、血小板付着数、膜全体の共重合体比率、機能層表面の共重合体比率、機能層表面の顕微ATR、不溶化物の有無、縦弾性率を測定した。結果を表1に示した。共重合体は不溶化され、機能層表面に多く存在しており、血小板付着数が少ないが、中空糸膜の構造が決定した後に共重合体を添加しているため、中空糸膜全体の共重合体含有量が少なく、縦弾性率および、分離性能が低い中空糸膜となった。
(比較例6)
乾式長を30mmにし、乾式部滞留時間を0.06秒とした以外は、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示した。開孔率が低いため、中空糸膜同士の癒着がおこってしまい、透水性および篩い係数の測定が行えなかった。中空糸膜全体における共重合体の含有量は充分なため、縦弾性率は高かった。しかしながら、乾式部滞留長が短いため、中空糸膜機能層表面における共重合体の含有比率が低下し、血小板付着数が悪化した。
Figure 0005857407

Claims (16)

  1. 透水性が100ml/hr/mmHg/m以上、2000ml/hr/mmHg/m以下の中空糸膜において、
    疎水性高分子を含有する製膜原液に親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体を添加して得られ、
    前記ランダム共重合体または前記交互共重合体の前記中空糸膜における含有比率が0.1重量%以上5重量%以下であり、機能層表面における酢酸ビニルの含有比率が前記中空糸膜全体における酢酸ビニルの含有比率に対して30倍以上1000倍以下であり、
    前記ランダム共重合体または前記交互共重合体が架橋し水に不溶化している、中空糸膜。
  2. 中空糸膜がポリスルホン系高分子からなることを特徴とする、請求項1に記載の中空糸膜。
  3. 透水性が100ml/hr/mmHg/m以上、2000ml/hr/mmHg/m以下のポリスルホン系高分子からなる中空糸膜において、
    親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体の前記中空糸膜における含有比率が0.1重量%以上5重量%以下であり、機能層表面における酢酸ビニルの含有比率が前記中空糸膜全体における酢酸ビニルの含有比率に対して30倍以上1000倍以下であり、
    縦弾性率が18kgf/m以上であり、かつ、前記共重合体が架橋し水に不溶化している、中空糸膜。
  4. 機能層表面における1730cm−1付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系高分子のベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、0.01以上、0.3以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の中空糸膜。
  5. 中空糸膜の外側表面における1730cm−1付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系高分子のベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、0.2以下であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の中空糸膜。
  6. 前記共重合体中における親水性ユニットの比率が10モル%以上、80モル%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜。
  7. 前記親水性ユニットがビニルピロリドンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸膜。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の中空糸膜がケースに内蔵された中空糸膜モジュール。
  9. 血液透析器として用いることを特徴とする請求項8に記載の中空糸膜モジュール。
  10. 透水性が100ml/hr/mmHg/m以上、2000ml/hr/mmHg/m以下である中空糸膜の製造方法において、疎水性高分子を含有する製膜原液に親水性ユニットと酢酸ビニルユニットからなるランダム共重合体または交互共重合体を1重量%以上、30重量%以下、かつ、疎水性高分子の添加量に対して30重量%より多く、70重量%以下添加し、二重管口金のスリット部から該製膜原液、円管部から疎水性高分子の貧溶媒を含む注入液を吐出し、乾式部を0.2秒以上2秒以下通過させた後に凝固浴で凝固させることによって得られた膜状物を水洗後、放射線を照射することで製造されたことを特徴とする中空糸膜の製造方法。
  11. 前記共重合体中における親水性ユニットの比率が10モル%以上80モル%以下であることを特徴とする請求項10に記載の中空糸膜の製造方法。
  12. 前記共重合体の親水性ユニットがビニルピロリドンであることを特徴とする、請求項10または11に記載の中空糸膜の製造方法。
  13. 前記共重合体を製膜原液に、疎水性高分子に対して30重量%より多く、70重量%以下添加することを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の中空糸膜の製造方
  14. 前記膜状物を水洗後、50℃以上150℃以下で乾燥することを特徴とする、請求項10〜13のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
  15. 前記疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする、請求項10〜14のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
  16. 請求項10〜15のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法によって得られた中空糸膜をケースに内蔵することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
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