JP6805527B2 - 中空状多孔質膜 - Google Patents

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Description

本発明は、高い透水性と表面親水性を有する中空状多孔質膜に関する。
多孔質膜は、飲料水製造、浄水処理、排水処理等の水処理分野等の様々な分野で利用されている。近年、高い透水性能や親水性等の膜の性能に加え、製造工程の簡略化が望まれている。
親水性に優れた多孔質膜としては、親水性モノマー及び疎水性モノマーからなる共重合体により多孔質基材の表面に親水化処理を行った多孔質膜が知られている。
例えば、ポリフッ化ビニリデン等の疎水性膜形成ポリマー、並びに、親水性モノマー及び疎水性モノマーからなるランダム共重合体を含む多孔質膜が提案されている(例えば、特許文献1)。また、膜形成ポリマー、及び、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマーと、その他のモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られるポリマーから形成される多孔質膜が提案されている(例えば、特許文献2)。
特開2006−239680号公報 国際公開公報WO2014/142311
しかしながら、特許文献1に記載されている多孔質膜では、透水性能及び膜表面の親水性が低いという課題があった。また、特許文献2に記載されている多孔質膜では、透水性が十分でないという課題があった。
本願発明の目的は、高い透水性と表面親水性を有する中空糸状の多孔質膜を提供することにある。
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 膜形成ポリマー(A)、並びに、疎水性モノマー(b1)及び親水性モノマー(b2)からなる両親媒性共重合体(B)を含む中空状多孔質膜であって、
前記中空状多孔質膜表面のFT−IRのピーク強度比(1726〜1730cm−1に現れるピークの強度/1398〜1402cm−1に現れるピークの強度)が0.4以上10以下であり、かつ、膜表面の表面開孔率が20%以上50%以下である、中空状多孔質膜。
[2] 前記膜形成ポリマー(A)が、ポリフッ化ビニリデンである、[1]記載の中空状多孔質膜。
[3] 前記親水性モノマー(b2)が、(メタ)アクリルモノマーである、前記[1]又は[2]記載の中空状多孔質膜。
[4] 前記両親媒性共重合体(B)の主成分が、グラフト共重合体である、前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の中空状多孔質膜。
[5] 前記両親媒性共重合体(B)が、前記疎水性モノマー(b1)ユニットを5以上99wt%以下含有する、前記[1]〜[4]の何れか一項に記載の中空状多孔質膜。
本発明は、高い透水性と表面親水性を有する中空状多孔質膜を提供することを可能とする。また、本発明によれば、製品化の際に、親水化工程を省略することが期待できる。
本発明における多孔質膜表面のFT−IRのピーク強度比の一例である。
以下、本説明を詳細に説明する。
<中空状多孔質膜>
本発明において、中空状多孔質膜は、膜形成ポリマー(A)、並びに、疎水性モノマー(b1)及び親水性モノマー(b2)からなる両親媒性共重合体(B)を含む中空状多孔質膜であって、下記(1)及び(2)の特徴を有する。これにより、高い透水性と表面親水性を発現することができる。
(1)前記多孔質膜表面のFT−IRのピーク強度比(1726〜1730cm−1に現れるピークの強度/1398〜1402cm−1に現れるピークの強度)が0.4以上10以下
(2)膜表面の表面開孔率が20%以上50%以下
前記中空状多孔質膜は、多孔質膜の孔連通性、親水性及び耐ファウリング性の観点から、前記多孔質膜表面のFT−IRのピーク強度比(1726〜1730cm−1に現れるピークの強度/1398〜1402cm−1に現れるピークの強度)は、0.4以上10以下であることが好ましく、0.45以上8以下であることがより好ましく、0.5以上7以下であることが特に好ましい。
さらに、前記多孔質膜の透水性及び強度の観点から、膜表面の表面開孔率は20%以上50%以下であることが好ましく、25%以上45%以下がより好ましい。
[FT−IRのピーク強度比]
本発明におけるFT−IRのピーク強度比は、赤外全反射吸収スペクトル法(ATR法)により得られた値である。
分析は、60℃のエタノール80%水溶液に4時間浸漬し洗浄した多孔質膜表面について行った。図1に示すように、1726〜1730cm−1の位置に両親媒性共重合体(B)由来のピーク、1398〜1402cm−1の位置に膜形成ポリマー(A)及び両親媒性共重合体(B)由来のピークを、前記強度比の計算に用いた。尚、このピーク強度比は、洗浄後の多孔質膜表面に存在する両親媒性共重合体(B)の量を示す値である。
[表面開孔率]
本発明における表面開孔率は、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、製品名:JSM−6340F)により観察された膜表面について、Image Proによる画像解析の結果得られた値である。
<膜形成ポリマー(A)>
本発明において、膜形成ポリマー(A)は、中空状多孔質膜(以下、多孔質膜とも言う)の構造を維持させるためのものである。膜形成ポリマー(A)は、多孔質膜に求められる特性に応じて、組成を選択することができる。例えば、膜形成ポリマー(A)として、耐薬品性、耐酸化劣化性及び耐熱性が要求される場合には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDF−co−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、エチレン−co−クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びセルロースアセテートが挙げられる。
また、非溶媒相分離を進める観点から、膜形成ポリマー(A)は、後述の溶剤に溶解可能であり、純水に溶解しないポリマーが好ましい。前述のポリマーの中で、後述する両親媒性共重合体(B)と後述する溶剤(I)への相溶性の観点からPVDFが好ましい。
前記膜形成ポリマー(A)は、多孔質膜の機械的強度及び溶剤への溶解性の観点から、質量平均分子量(以下、「Mw」という)は、100,000〜2,000,000が好ましく、300,000〜1,500,000がより好ましい。
多孔質膜中の膜形成ポリマー(A)の含有量としては、多孔質性及び親水性の観点から、膜形成ポリマー(A)及び両親媒性共重合体(B)の合計量100wt%に対して、20〜95wt%が好ましく、40〜80wt%がより好ましい。
尚、本発明において、「高い親水性」とは、純水に対する接触角が75°以下であることを意味する。
本発明の中空状多孔質膜において、伸縮性、耐久性及び製造コストの観点から、厚みは10μm以上1,000μm以下であることが好ましく、30μm以上800μm以下がsより好ましい。
また、中空状多孔質膜の外径は、糸切れ抑制及び扁平抑制の観点から、20〜2,000μmであることが好ましく、40〜1,500μmがより好ましい。
<溶剤(I)>
溶剤(I)としては、前記膜形成ポリマー(A)、後述する両親媒性共重合体(B)の溶解性及び取り扱いの容易さの点で、トルエン等の炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトン等のケトン;メタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル;酢酸エチル等のビニルエステル;エチレンカーボネート等のカーボネート;及び超臨界二酸化炭素が挙げられる。これらの中で、膜形成ポリマー(A)、ポリマー(B)及びビニルピロリドン単位を含むポリマー(C)の溶解性及び取り扱いの容易さの点で、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びN−メチルピロリドン(NMP)が好ましい。溶剤(II)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
<両親媒性共重合体(B)>
本発明において、両親媒性共重合体(B)は、疎水性モノマー(b1)及び親水性モノマー(b2)を含むモノマー組成物を重合して得られる。
両親媒性共重合体(B)の数平均分子量(以下、「Mn」という)は、引張強度、引張伸度、曲げ強度及び熱安定性の点から、1,000以上5,000,000以下であることが好ましく、5,000以上300,000以下がより好ましい。
両親媒性共重合体(B)において、膜形成ポリマー(A)中への取り込まれ易さの観点から、疎水性モノマー(b1)ユニットの含有量は5wt%以上99wt%以下が好ましく、20wt%以上98wt%以下がより好ましく、40wt%以上95wt%以下が特に好ましい。
これは、膜形成ポリマー(A)との分子の絡み合いが大きくなるためであり、これにより多孔質膜に連通構造が形成されるためである。
前記両親媒性共重合体(B)において、開孔性の観点から、親水性モノマー(b2)ユニットの含有量は1wt%以上95wt%以下が好ましく、2wt%以上80wt%以下がより好ましく、5wt%以上60wt%以下が特に好ましい。
前記ポリマー(B)の製造方法として、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法及び乳化重合法等が挙げられる。このうち、疎水性モノマー(b1)と親水性モノマー(b2)の重合反応性の観点から、溶液重合法が好ましい。
前記両親媒性共重合体(B)は、中空状多孔質膜への表面親水性付与の観点から、主鎖に親水鎖、側鎖に疎水鎖を持つ構造のグラフト共重合体であることが好ましい。これは、両親媒性共重合体(B)の疎水鎖が、同じく疎水性である膜形成ポリマー(A)との分子同士の絡み合いが強くなるためと推測できる。
<溶剤(II)>
前記両親媒性共重合体(B)を溶液重合法で製造する場合に使用される溶剤(II)としては、例えば、トルエン等の炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトン等のケトン;メタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル;酢酸エチル等のビニルエステル;エチレンカーボネート等のカーボネート;及び超臨界二酸化炭素が挙げられる。これらの中で、膜形成ポリマー(A)、ポリマー(B)及びビニルピロリドン単位を含むポリマー(C)の溶解性及び取り扱いの容易さの点で、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びN−メチルピロリドン(NMP)が好ましい。溶剤(II)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[疎水性モノマー(b1)]
本発明において、疎水性モノマー(b1)は、両親媒性共重合体を形成するものである。ここで、「疎水性」という用語は、そのセグメントが水に不溶性である、又は、非分散性であることを意味する。
疎水性モノマー(b1)のうち、有用なエチレン性不飽和モノマーの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:スチレン、スチレンの疎水性誘導体、共役ジエン、アクリル酸のC1〜30直鎖状、環状、又は分岐状のアルキル及びアリー
ルエステル、メタクリル酸のC1〜30直鎖状、環状、又は分岐状のアルキル及びアリール
エステル、オレフィン、フッ素含有モノマー、並びにケイ素含有モノマー。
入手のし易さ、得られる共重合体の機械物性バランスの観点から、有用なメタクリルモノマーが好ましい。
膜形成ポリマー(A)との分子の絡み合い、溶剤への溶解性の観点から、疎水性ブロックの数平均分子量(以下、「Mn」という)は、500以上120,000以下であることが好ましく、は5,000以上80,000以下であることがより好ましい。
入手のし易さ、得られる共重合体の機械物性バランスの観点から、有用なメタクリルモノマーの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸、ブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200及びブレンマーPME−400。
このうち、前記膜形成ポリマー(A)がPVDFである場合、PVDFとの相溶性が良好な点でメタクリル酸メチルが特に好ましい。
<溶剤(III)>
前述の疎水性モノマー(b1)を溶液重合法で得る際に使用される溶剤(III)としては、例えば、トルエン等の炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトン等のケトン;メタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル;酢酸エチル等のビニルエステル;エチレンカーボネート等のカーボネート;及び超臨界二酸化炭素が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[親水性モノマー(b2)]
本発明において、親水性モノマー(b2)は、両親媒性共重合体を形成するものである。
ここで、「親水性」という用語は、そのセグメントが、水溶性若しくは水分散性、又は、一般的に水を吸収並びに/若しくは透過することが可能であるということを意味する。
親水性モノマー(b2)のうち、有用なエチレン性不飽和モノマーとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:アクリル酸、メタクリル酸、並びにメタクリル酸及びアクリル酸の塩、エステル、無水物及びアミド;ジカルボン酸無水物;アクリル酸カルボキシエチル;アクリレートの親水性誘導体;スチレンの親水性誘導体;並びにアクリルアミド。
入手のし易さ、得られる共重合体の機械物性バランスの観点から、有用なアクリレートの親水性誘導体が好ましい。入手のし易さ、得られる共重合体の機械物性バランスの観点から、有用なアクリルモノマーの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸。
また、親水性及び溶剤への溶解性の観点から、親水性ブロックのMnは、1,000〜160,000が好ましく、5,000〜60,000が好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(FT−IR測定方法)
FT−IRのピーク強度比は、Varian UMA600を用い、赤外全反射吸収スペクトル法(ATR法)により測定した。尚、測定は、60℃のエタノール80%水溶液に4時間浸漬し洗浄した多孔質膜表面について行った。
(表面開孔率測定方法)
表面開孔率及び平均表面孔径は、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、製品名:JSM−6340F)により観察された膜表面について、Image Proによる画像解析により算出した値である。
(透水量測定方法)
多孔質膜の片端をウレタン樹脂(日本ポリウレタン(株)、コロネート4403、ニッポラン4221)によりポッティングし、圧力タンクにつないだホースにポッティングしていない側から入れた。圧力タンクに100kPa、10kPaの圧力をかけ、ポッティング側から出てきた水の量を測定した。その水の量を、有効膜面積、測定時間、測定圧力で除すことで透水量を算出した。
(Mn、Mw/Mnの測定方法)
両親媒性共重合体(B)のMn及びMw/Mnは、GPC(東ソー(株)製、「HLC−8220」(商品名))を使用して以下の条件で求めた。
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER HZ−L(4.6×35mm)と2本のTSK−GEL SUPER HZM−N(6.0×150mm)を直列に接続
溶離液:クロロホルム、DMF又はTHF
測定温度:40℃
流速:0.6mL/分
尚、Mw及びMnは、Polymer Laboratories製のポリメタクリル酸メチル(Mp(ピークトップ分子量)が141,500、55,600、10,290及び1,590の4種)を用いて作成した検量線を使用して求めた。
(合成例1;コバルト連鎖移動剤CoBF−1の合成)
撹拌装置を備えた反応装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬(株)製、和光特級)1.00g、ジフェニルグリオキシム(東京化成(株)製、EPグレード)1.93g及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル(関東化学(株)製、特級)80mlを入れ、室温で30分間攪拌した。次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成(株)製、EPグレード)10mlを加え、更に6時間攪拌した。混合物をろ過し、固体をジエチルエーテル(関東化学(株)製、特級)で洗浄し、15時間真空乾燥して、赤褐色固体であるコバルト連鎖移動剤CoBF−1を2.12g得た。
(合成例2;分散剤1の合成)
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中に、17%水酸化カリウム水溶液61.6wt%、メタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)19.1wt%及び脱イオン水19.3wt%を仕込んだ。次いで、反応装置内の液を室温にて撹拌し、発熱ピークを確認した後、更に4時間撹拌した。この後、反応装置中の反応液を室温まで冷却してメタクリル酸カリウム水溶液を得た。
次いで、撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900wt%、42%メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム水溶液(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルSEM−Na)70wt%、上記のメタクリル酸カリウム水溶液16wt%及びメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)7wt%を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬工業(株)製、商品名:V−50)0.053wt%を添加し、更に60℃に昇温した。重合開始剤の投入後、15分毎にメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)1.4wt%を計5回、分割添加した。この後、重合装置内の液を撹拌しながら60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分8%の分散剤1を得た。
(合成例3;疎水性モノマー(b1)の合成)
冷却管付フラスコに、メタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)100wt%、脱イオン水150wt%、硫酸ナトリウム1.39wt%、分散剤1、1.53wt%、CoBF−1、0.00075wt%を仕込んだ。フラスコ内の液を70℃に加温した状態で、CoBF−1を溶解させ、窒素バブリングにより内wt%を窒素置換した。次いで、AIBN、1質量wt%を加えた後、内温を70℃に保った状態で、6時間保持し、重合を完結させた。この後、重合反応物を室温まで冷却し、更にろ過して重合体を回収した。得られた重合体を水洗後、50℃で一晩真空乾燥することにより疎水性モノマー(b1)を得た。疎水性モノマー(b1)のMnは7,000、Mw/Mnは3.0であった。疎水性モノマー(b1)の末端二重結合の導入率はほぼ100%であった。疎水性モノマー(b1)は、前記の式(1)において、Rはメチル基であった。
(合成例4;両親媒性共重合体(B−1)の合成)
冷却管付フラスコに、疎水性モノマーとしてメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製)(65wt%)、親水性モノマー(b2)としてHEA(アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光純薬(株)製、和光一級))35wt%及び溶剤としてDMAc(N,N−ジメチルアセトアミド、和光純薬(株)製、和光特級)150wt%を含有するモノマー組成物を投入し、窒素バブリングにより内wt%を窒素置換した。次いで、モノマー組成物を加温して内温を70℃に保った状態で、ラジカル重合開始剤としてAIBN0.1wt%(和光純薬(株)、和光特級)をモノマー組成物に加えた後、4時間保持し、次いで80℃に昇温して30分間保持し、重合を完結させ、重合反応物を得た。この後、重合反応物を室温まで冷却し、脱イオン水で再沈殿させた。再沈殿によって析出したポリマーを回収し、50℃及び50mmHg(6.67kPa)以下の条件で一晩真空乾燥して、グラフト共重合体である両親媒性共重合体(B−1)(PMMA−g−PHEA)を得た。得られた両親媒性共重合体(B−1)の収率は、ほぼ100%であった。両親媒性共重合体(B−1)のMnは71,000であり、Mw/Mnは3.0であった。
(合成例5;両親媒性共重合体(B’−1)の合成)
疎水性モノマー(b1)としてメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)50wt%、親水性モノマー(b2)としてHEA(アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光純薬(株)製、和光一級))50wt%、トルエン(和光純薬(株)製、試薬特級)150wt%の条件で、ランダム共重合体である両親媒性共重合体(B’−1)(PMMA−r−PHEA)を得た。両親媒性共重合体(B’−1)のMnは89,000であり、Mw/Mnは6.8であった。
(合成例6;両親媒性共重合体(B’−2)の合成)
疎水性モノマー(b1)としてメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)70wt%、親水性モノマー(b2)としてHEMA(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(三菱レイヨン(株)製)30wt%を使用する以外は合成例5と同様にランダム共重合体である両親媒性共重合体(B’−2)(PMMA−r−HEMA)を得た。両親媒性共重合体(B’−1)のMnは105,000であり、Mw/Mnは3.0であった。
(合成例7;両親媒性共重合体(B’−3)の合成)
疎水性モノマー(b1)(メタクリル酸メチル)70wt%、親水性モノマー(b2)としてHEA(アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光純薬(株)製、和光一級))30wt%を使用する以外は合成例4と同様に、グラフト共重合体である両親媒性共重合体(B’−3)(PMMA−g−HEMA)を得た。両親媒性共重合体(B’−3)のMnは20,000であり、Mw/Mnは1.7であった。
(合成例8;両親媒性共重合体(B−2)の合成)
疎水性モノマー(b1)としてメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)50wt%、親水性モノマー(b2)としてHEMA(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(三菱レイヨン(株)製)50wt%を使用する以外は合成例5と同様にランダム共重合体である両親媒性共重合体(−2)(PMMA−r−HEMA)を得た。両親媒性共重合体(B−2)のMnは260,000であり、Mw/Mnは4.2であった。
(合成例9;両親媒性共重合体(B’−4)の合成)
疎水性モノマー(b1)としてメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)50wt%、親水性モノマー(b2)としてHEMA(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(三菱レイヨン(株)製)50wt%を使用する以外は合成例5と同様にランダム共重合体である両親媒性共重合体(B’−)(PMMA−r−HEMA)を得た。両親媒性共重合体(B’−)のMnは129,000であり、Mw/Mnは3.2であった。
表中の略号は以下の化合物を示す。
MMA:メタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光純薬(株)製、和光一級)
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(三菱レイヨン(株)製、商品名:亜クリエステルHOMA)
PME−400(日本油脂(株)製、ブレンマーPME−400(商品名))
[実施例1]
膜形成ポリマー(A)としてKynar761A(アルケマ社製、PVDFホモポリマー、商品名、Mw=550,000)を15wt%、両親媒性共重合体(B)として前記共重合体(B−1)を10wt%、溶剤としてNMP(関東化学(株)製、特級)を75wt%含むポリマー溶液を、75℃に加温した状態で編み紐上に塗布し、常温の純水中に浸漬し、中空状多孔質膜を作製した。
得られた中空状多孔質膜について、FT−IR、表面開孔率、表面平均孔径及び透水量を測定した。結果を表1に示す。
[実施例2]
両親媒性共重合体(B)として前記共重合体(B−2)を使用する以外は、実施例1と同様に中空状多孔質膜を作製した。
得られた中空状多孔質膜について、FT−IR、表面開孔率、表面平均孔径及び透水量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
両親媒性共重合体(B)として前記共重合体(B’−1)を使用する以外は、実施例1と同様に中空状多孔質膜を作製した。
得られた中空状多孔質膜について、FT−IR、表面開孔率、表面平均孔径及び透水量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例2]
両親媒性共重合体(B)として前記共重合体(B’−2)を使用する以外は、実施例1と同様に中空状多孔質膜を作製した。
得られた中空状多孔質膜について、FT−IR、表面開孔率、表面平均孔径及び透水量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例3]
両親媒性共重合体(B)として前記共重合体(B’−3)を使用する以外は、実施例1と同様に中空状多孔質膜を作製した。
得られた中空状多孔質膜について、FT−IR、表面開孔率、表面平均孔径及び透水量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例4]
両親媒性共重合体(B)として前記共重合体(B’−4)を使用する以外は、実施例1と同様に中空状多孔質膜を作製した。
得られた中空状多孔質膜について、FT−IR、表面開孔率、表面平均孔径及び透水量を測定した。結果を表1に示す。
表1より、多孔質膜表面のFT−IRのピーク強度比(1726〜1730cm−1に現れるピークの強度/1398〜1402cm−1に現れるピークの強度)が0.4以上10以下である多孔質膜であり、かつ、表面開孔率が20%以上50%以下である実施例1、2は、測定圧力100kPa、10kPaともに高い透水性能を発現した。多孔質膜の実使用圧力である3〜30kPaにおいても、実施例1及び2は十分な透水量を示した。
一方、前記ピーク強度比が前記範囲外の比較例1、2及び4、並びに、表面開孔率が前記範囲外の比較例3は、測定圧力100kPa、10kPaでの透水性量が低く、特に10kPaでの透水性能が低かった。

Claims (7)

  1. 膜形成ポリマー(A)並びに、疎水性モノマー(b1)及び親水性モノマー(b2)からなる両親媒性共重合体(B)を含む中空状多孔質膜であって、
    前記多孔質膜表面のFT−IRのピーク強度比(1726〜1730cm−1に現れるピークの強度/1398〜1402cm−1に現れるピークの強度)が0.4以上10以下である多孔質膜であり、かつ、表面開孔率が20%以上50%以下である、中空状多孔質膜。
  2. 前記膜形成ポリマー(A)が炭素−水素単結合を有するポリマーである、請求項1に記載の中空状多孔質膜。
  3. 前記両親媒性共重合体(B)がカルボニル結合を有する共重合体である、請求項1又は2に記載の中空状多孔質膜。
  4. 前記膜形成ポリマー(A)がポリフッ化ビニリデンである、請求項1〜3の何れか一項に記載の中空状多孔質膜。
  5. 前記親水性モノマー(b2)が(メタ)アクリルモノマーである、請求項1〜4の何れか一項に記載の中空状多孔質膜。
  6. 前記両親媒性共重合体(B)の主成分がグラフト共重合体である、請求項1〜の何れか一項に記載の中空状多孔質膜。
  7. 前記両親媒性共重合体(B)において、前記疎水性モノマー(b1)ユニットが5wt%以上99wt%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の中空状多孔質膜。
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