JP4873884B2 - 紙の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は紙の製造方法に関し、更に詳しくは、製品や装置へのピッチの付着、白水中へのピッチの蓄積、及び発泡性が抑制された紙の製造方法に関する。
紙の製造工程において発生するピッチ(ピッチとは、紙の原料である木材に含まれている樹脂や、古紙及び損紙由来で混入する接着剤などの粘着性物質、または紙を製造する際に添加されるサイズ剤や紙力剤などに由来して発生する異物を指す)は、例えば抄紙工程ではワイヤーやフェルトに付着し、目詰まりによる搾水性の低下や断紙などの操業性低下の原因となる。また、系内で凝集したり装置に付着して大きくなったピッチが紙製品に混入することで、欠点の原因となる。このようなトラブルは、用水のクローズド化による白水中でのピッチの高濃度化、古紙利用率の増加、紙力剤など製紙用薬剤の多用化などに由来して、更に大きな問題となっている。
製品や装置へのピッチの付着を防止する方法として、従来以下の方法が知られている。
(1)ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)を用いる方法(特許文献1参照)。
(2)アミン・エピハロヒドリン重縮合物を用いる方法(特許文献2参照)。
(3)ポリビニルアルコールを用いる方法(特許文献3参照)。
(4)ポリビニルアルコールとゼラチンとカチオン性重合体を含有する組成物を用いる方法(特許文献4参照)。
しかし、上記(1)〜(2)のカチオン性重合体を用いる方法は、ピッチをパルプ繊維に歩留まらせるために、白水中でピッチが高濃度化することは少ないが、ピッチの凝集を促進させてしまうために問題が悪化する場合がある。上記(3)のポリビニルアルコールを用いる方法は、ピッチがパルプに歩留まらずに白水中に蓄積し高濃度化する場合があるうえ、他の製紙用薬剤などとの組み合わせによっては工程中で発泡し、操業性を低下させる場合がある。上記(4)の方法によっても、製品や装置へのピッチの付着、白水中へのピッチの蓄積及び発泡性について充分な解決には至っていない。即ち、製品や装置へのピッチの付着、白水中へのピッチの蓄積、及び発泡性が抑制された紙の製造方法は開発されていないのが現状である。
ところで、ポリビニルアルコールは、一般的にはポリ酢酸ビニルをメタノール−水系でアルカリを触媒としてケン化することで得られるが、ケン化条件などによって残存酢酸基の分布が異なることが知られており、集団的に連なってブロック的に分布する場合や、ランダム的に分布する場合がある(例えば、非特許文献1参照)。
ポリビニルアルコール分子内の残存酢酸基の分布状態は、ヨード吸光度を測定することで簡便に相対評価でき、集団的に連なって分布している場合は、ランダムに分布している場合と比較して高い数値となることが知られている。これは、ポリビニルアルコールの分子鎖に沿って存在する残存酢酸基が連続して配列することで、ヨード呈色するためのポリヨードを形成する基盤となるためである(例えば、非特許文献2参照)。
一方で、ポリビニルアルコールの残存酢酸基量が増すと、残存酢酸基の連なりが起こりやすくなるため、ヨード吸光度も増大することが知られている。これらの点から、近似したケン化度のポリビニルアルコールを2種類以上比較する場合には、ヨード吸光度が高い方がよりブロック的であるとの相対的な判断は可能であるが、任意のケン化度のポリビニルアルコール1種類だけを評価する場合には、ヨード吸光度だけでは当該ポリビニルアルコールがブロック的か否かという判断は困難であった。
特開昭57−149591号公報 特開昭62−223394号公報 特開昭61−55294号公報 特表2000−511596公報 ポバール(1989年10月、高分子刊行会発行)第154〜159頁、第246〜249頁;長野浩一、山根三郎、豊島賢太郎 高分子化学、第20巻、第217号(1963年発行)、第303−311頁;林貞男、中野千世子、本山卓彦
本発明の目的は、製品や装置へのピッチの付着、白水中へのピッチの蓄積及び発泡性が抑制された紙の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリビニルアルコールの残存酢酸基モル分率とそのヨード吸光度との間に、特定の関係式が成立し、それに基づいて算出されるヨード吸光度比が、任意のケン化度のポリビニルアルコールのブロック的度合いを判定する指標として用いることができること、そして該ヨード吸光度比がある値以上であり、かつ平均重合度及びケン化度が特定の範囲にあるポリビニルアルコールを所定の割合でパルプに添加した後に、アミン・エピハロヒドリン重縮合物を、更に所定の割合で添加することにより、前記課題を解決しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
即ち本発明は、
(1) 平均重合度が300〜10,000、ケン化度が70〜92モル%及び
(ポリビニルアルコールのヨード吸光度)/(94.21×M3.207
(式中、Mはポリビニルアルコールの残存酢酸基のモル分率を示す)
で表されるヨード吸光度比が1.6以上のポリビニルアルコール(A)(以下、A成分という)をパルプに添加した後に、アミン・エピハロヒドリン重縮合物(B)(以下、B成分という)をパルプに添加する方法であって、A成分及びB成分がパルプ固形分に対して各々0.1〜1,000ppmであることを特徴とする紙の製造方法、及び
(2)前記B成分をパルプに添加する前に、更に、
(イ)式[1]で示されるポリオキシアルキレン化合物由来の単位と
1O(AO)n2 [1]
(ただし、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基で、R1は炭素数2〜5のアルケニル基、R2は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜200である)
(ロ)無水マレイン酸由来の単位とを必須単位とし、(イ)と(ロ)のモル比が7:3〜3:7であり、かつ重量平均分子量が1,500〜200,000である共重合体あるいはその加水分解物、加水分解物の塩または加水分解物のエステル化物(C)を添加することを特徴とする前記(1)記載の紙の製造方法を提供する。
本発明の紙の製造方法を適用することにより、製品や装置へのピッチの付着、白水中へのピッチの蓄積、及び発泡性が充分に抑制され、品質の高い紙を安定して製造することができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明者らは、前記非特許文献2のFig.16に示された、一般的な方法でケン化した各種ケン化度のポリビニルアルコールのヨード吸光度のグラフに基づき、ポリビニルアルコールの残存酢酸基モル分率Mとそのヨード吸光度pとの間に、下記式で示される関係があることを見出した。
p=94.21×M3.207
(式中、Mはポリビニルアルコール中の残存酢酸基のモル分率を示す。)
更に、上記の式を用いて次の式に示すヨード吸光度比を算出することで、任意のケン化度のポリビニルアルコールのブロック的度合いを判定する指標として用いることができることを見出した。
ヨード吸光度比=(ポリビニルアルコールのヨード吸光度)/(94.21×M3.207
(式中、Mはポリビニルアルコール中の残存酢酸基のモル分率を示す。)
A成分は、残存酢酸基のブロック的度合いが、市販の一般的なポリビニルアルコールに比べ、より高いものが使用される。本発明においては、残存酢酸基のブロック的度合いを示す指標としてヨード吸光度比を用いた。
A成分は、ヨード吸光度比が1.6以上であり、好ましくは1.8〜5.0、更に好ましくは2.0〜3.0である。ヨード吸光度比が上記範囲内であれば、充分なピッチ付着防止性が得られ、また、発泡性が低いため好ましい。
A成分は、その平均重合度が300〜10,000であり、好ましくは400〜5,000、更に好ましくは1,400〜3,000である。重合度が上記範囲における下限値以上であれば、充分なピッチ付着防止性が得られ、また、重合度が上記範囲における上限値以下であれば、更に取り扱いが容易であり好ましい。
なお、平均重合度についてはJIS K 6726(1994)の3.7に準じて求めることができる。
また、A成分のケン化度は70〜92モル%であり、好ましくは80〜91モル%、更に好ましくは85〜90モル%である。ケン化度が上記範囲内であれば、充分なピッチ付着防止性が得られ、好ましい。
なお、ケン化度についてはJIS K6726(1994)の3.5に準じて求めることができる。
A成分は、特に好ましくは、平均重合度が1,400〜3,000、ケン化度が86〜89モル%、ヨード吸光度比が2.0〜3.0であり、この場合のA成分のヨード吸光度は、0.159〜0.516となる。
A成分は、例えばブロックタイプとして市販されているポリビニルアルコールを用いることができ、具体的には、クラレ(株)製ではPVA−217E、PVA−217EE、PVA−220E、並びにPVA−224Eなどであり、日本酢ビ・ポバール(株)製ではJP−20E、並びにJP−24Eなどがこれに該当する。
本発明の方法は、A成分を、好ましくは0.1〜50質量%、更に好ましくは0.5〜40質量%、特に好ましくは2〜30質量%含有するピッチコントロール剤を使用するものである。A成分の含有量が上記範囲における下限値以上であれば、充分なピッチ付着防止性が得られ、また、上記範囲における上限値以下であれば、更に取り扱いが容易であり好ましい。A成分を含有するピッチコントロール剤は、必要に応じ、A成分に加え、界面活性剤、重合体、キレート剤、ビルダー、有機酸、pH調整剤、溶剤、消泡剤、殺菌剤、並びに防腐剤などを含有することができる。
本発明に使用するB成分のアミン・エピハロヒドリン重縮合物は、アミンとエピハロヒドリンとを反応させることで得られ、例えば特許文献2に開示されている方法で得られる。B成分の一方の原料に使用するアミンとしてはメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジs−ブチルアミン、ジt−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、エチレンジアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルヘキシレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ジヒドロキシエチルプロピレンジアミン、エチルアミノエタノール、トリエタノールアミンなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を使用することができる。好ましくは炭素数1〜3のジアルキルアミンであり、具体的にはジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジイソプロピルアミンが挙げられ、更に好ましくはジメチルアミンである。B成分は、上記のアミンの他、アンモニアなどを含有してもよい。
B成分のもう一方の原料に使用するエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を使用することができる。好ましくはエピクロルヒドリンである。
B成分は、具体的にはジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジエチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、エチレンジアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・アンモニア・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・エピブロモヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピブロモヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・アンモニア・エピブロモヒドリン重縮合物などが挙げられ、好ましくはジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・アンモニア・エピクロルヒドリン重縮合物、更に好ましくはジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロルヒドリン重縮合物である。
B成分において、アミンとエピハロヒドリンとの反応モル比は好ましくは3:7〜7:3、更に好ましくは4:6〜6:4である。
B成分は、その重量平均分子量が好ましくは5,000〜1,000,000、更に好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは20,000〜100,000である。重量平均分子量が上記範囲における下限値以上であれば、充分なピッチ付着防止性及び歩留性が得られ、発泡性が低く、また、重量平均分子量が上記範囲における上限値以下であれば、更に取り扱いが容易であり好ましい。
本発明の方法は、B成分を、好ましくは0.1〜70質量%、更に好ましくは0.5〜60質量%、特に好ましくは2〜55質量%含有するピッチコントロール剤を使用するものである。B成分の含有量が上記範囲における下限値以上であれば、充分なピッチ付着防止性及び歩留性が得られ、発泡性が低く、また、上記範囲における上限値以下であれば、更に取り扱いが容易であり好ましい。B成分を含有するピッチコントロール剤は、必要に応じ、B成分に加え、界面活性剤、重合体、キレート剤、ビルダー、有機酸、pH調整剤、溶剤、消泡剤、殺菌剤、並びに防腐剤などを含有することができる。
本発明の方法において、A成分とB成分との質量比は、好ましくは1:99〜99:1、更に好ましくは10:90〜90:10である。
本発明の方法は、必要に応じ、A成分及びB成分に加え、界面活性剤、重合体、キレート剤、ビルダー、有機酸、pH調整剤、溶剤、消泡剤、殺菌剤、並びに防腐剤などをパルプに添加することができる。
好ましくは、(イ)式[1]で示されるポリオキシアルキレン化合物由来の単位と
1O(AO)n2 [1]
(ただし、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基で、R1は炭素数2〜5のアルケニル基、R2は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜200である)
(ロ)無水マレイン酸由来の単位とを必須単位とし、(イ)と(ロ)のモル比が7:3〜3:7であり、かつ重量平均分子量が1,500〜200,000である共重合体あるいはその加水分解物、加水分解物の塩または加水分解物のエステル化物(C)(以下、C成分という)をパルプに添加するのが好ましい。
C成分の一般式[I]においてR1で示される炭素数2〜5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基などのアルケニル基が挙げられ、好ましくはアリル基及びメタリル基である。
C成分のAOで示される炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基などが挙げられ、1種または2種以上が付加されていてもよい。2種以上のオキシアルキレン基を付加する場合は、ブロック状付加でもランダム状付加のどちらでもよい。また、nはオキシアルキレンの平均付加モル数を表し、n=1〜200であり、好ましくはn=3〜50である。nが上記範囲内であれば、充分なピッチ付着防止性が得られ、好ましい。
C成分の式[I]においてR2は水素原子及びメチル基、エチル基、アリル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル機、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、テトラデセニル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、ノナデシル基、イソノナデシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ベンジル基、フェニル基、クレジル基、ブチルフェニル基、ジブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基であり、これらの1種または2種以上を混合して用いてもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基またはt−ブチル基を用いることが好ましい。
C成分の(イ)ポリオキシアルキレン化合物由来の単位と(ロ)無水マレイン酸由来の単位のモル比は(イ):(ロ)=7:3〜3:7であることが好ましく、更に好ましくは、6:4〜4:6である。上記範囲内であれば、充分なピッチ付着防止性が得られ、好ましい。
C成分の重量平均分子量は1,500〜200,000であることが好ましく、更に好ましくは5,000〜50,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、充分なピッチ付着防止性が得られ、好ましい。
得られた共重合体は、加水分解を行い加水分解物としても、加水分解物を塩基性物質で中和して塩としても、加水分解物とアルコールとのエステル化反応を行いエステル化物としても用いることができる。中和に用いる塩基性物質としては、アンモニア、有機アミン、またナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩などが挙げられ、好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物である。エステル化に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、アリルアルコールなどが挙げられ、1種または2種以上のオキシアルキレン基が付加されていてもよい。
C成分は、(イ)式[I]で表されるポリオキシアルキレン化合物及び(ロ)無水マレイン酸を水または有機溶剤中、あるいは溶剤を全く用いない系で、重合開始剤を用いて共重合させることで容易に得ることができる。ベンゼン、トルエン、キシレンなどの有機溶剤中または溶剤を用いない場合の開始剤としては、過酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物系、あるいはアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤が挙げられる。水系で重合を行う際は、過酸化水素、第三ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩などの水溶性重合開始剤が挙げられる。更に親水性有機溶剤と水との混合溶剤を用いることもでき、その際は上記の重合開始剤を適宜選択して使用する。C成分は、スチレン、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸、アクリル酸など他の共重合可能な単量体を混合して共重合してもよいが、その場合(イ)ポリオキシアルキレン化合物と(ロ)無水マレイン酸以外の単量体の比率は、本発明の性能を損なわないために単量体全体に対するモル比で20%未満が好ましい。
A成分とC成分の質量比は、好ましくは(A):(C)=1:99〜99:1、更に好ましくは(A):(C)=20:80〜97:3である。上記範囲内であれば、充分なピッチ付着防止性及び歩留性が得られ、発泡性が低いため好ましい。
本発明の方法をパルプ化工程または調成工程に適用する場合は、A成分をパルプ固形分に対して0.1〜1000ppmの範囲で適宜選択しパルプ原料に添加した後に、B成分をパルプ固形分に対して0.1〜1000ppmの範囲で適宜選択しパルプ原料に添加すればよい。好ましくはA成分及びB成分がパルプ固形分に対して各々10〜1000ppmである。A成分の添加量が上記範囲における下限値以上であれば、充分なピッチ付着防止性が得られ、また、上記範囲における上限値以下であれば、更に発泡性も低く好ましい。B成分の添加量が上記範囲における下限値以上であれば、充分なピッチ付着防止性及び歩留性が得られ、発泡性が低く、また、上記範囲における上限値以下であれば、更に他の製紙用薬剤の機能を阻害することなく好ましい。A成分及びB成分を添加する箇所としては、フィルター、デッカー、エキストラクター、シックナー、リファイナー、ストックチェスト、DDR、ブレンダー、ミキシングチェスト、マシンチェスト、ファンポンプ、種箱、スクリーン、インレット、並びにその前後の配管などが挙げられ、A成分を添加した箇所の後段にB成分を添加すればよい。A成分とB成分の添加箇所が同一設備内である場合は、設備入口付近のパルプ原料にA成分を添加し、設備出口付近のパルプ原料にB成分を添加すればよい。
また、本発明の方法を抄造工程に適用する場合は、A成分及びB成分をワイヤー、フェルト、カンバス、並びに各ロールなど、紙を製造する設備に噴霧または浸漬することでパルプシートに添加すればよく、A成分をパルプ固形分に対して0.1〜1000ppmの範囲で適宜選択し、設備に噴霧または浸漬した後に、B成分をパルプ固形分に対して0.1〜1000ppmの範囲で適宜選択し、設備に噴霧または浸漬すればよい。好ましくはA成分及びB成分がパルプ固形分に対して各々0.1〜20ppmである。また、A成分及びB成分をシャワー水などで希釈し、紙を製造する設備に噴霧するのが好ましく、希釈液濃度は希釈水に対して各々0.5〜100ppmであるのが好ましい。A成分の添加量が上記範囲における下限値以上であれば、充分なピッチ付着防止性が得られ、また、上記範囲における上限値以下であれば、更に発泡性も低く好ましい。B成分の添加量が上記範囲における下限値以上であれば、充分なピッチ付着防止性及び歩留性が得られ、発泡性が低く、また、上記範囲における上限値以下であれば、更に他の製紙用薬剤の機能を阻害することなく好ましい。A成分及びB成分を噴霧または浸漬する設備としては、シックナー、ワイヤー、フェルト、カンバス、並びに各ロールなどが挙げられ、A成分を噴霧または浸漬した設備の、後段に位置する設備にB成分を噴霧または浸漬すればよい。
更に、A成分をパルプ原料に添加した後に、B成分を、紙を製造する設備に噴霧または浸漬してもよい。
本発明の方法をパルプ化工程または調成工程に適用するのが、充分なピッチ付着防止性及び歩留性が得られる点から好ましい。
本発明の方法においては、ピッチを含むパルプがA成分と均一に接触した後にB成分と接触することで、充分なピッチ付着防止性及び歩留性が得られ、発泡性が低い。パルプがA成分を添加する箇所からB成分を添加する箇所に移送されるのに要する時間は、パルプと薬剤との接触効率、ピッチ濃度や種類によって異なるが、1分以上であるのが、充分なピッチ付着防止性及び歩留性が得られ、発泡性が低い点から好ましい。
本発明の方法においてC成分をパルプに添加する場合には、B成分を添加する位置よりも前段にC成分を添加することが好ましく、B成分を添加する位置よりも前段にA成分とC成分とを含有するピッチコントロール剤を添加することが更に好ましい。
なお、B成分をパルプに添加した後にA成分をパルプに添加した場合や、A成分とB成分を同時にパルプに添加した場合は、A成分とB成分が各々有する作用が相殺され、ピッチ付着防止性及び歩留性が不良となるばかりでなく、発泡性が高いため好ましくない。
本発明の方法を適用する場合、対象となるパルプの種類に制限はなく、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒または未晒化学パルプ、砕木パルプやサーモメカニカルパルプなどの晒または未晒機械パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプ、マシン損紙、コート損紙などのブロークパルプが挙げられる。特に、ピッチを多量に含有する機械パルプ、古紙パルプ、ブロークパルプが好ましい。
本発明の方法は酸性、中性及びアルカリ性条件下で行われる紙の製造に適用することができ、得られる紙に制限はなく、例えば新聞用紙、上質紙やコート紙などの印刷用紙、PPC用紙や感熱紙原紙などの情報用紙、純白ロール紙や晒クラフト紙などの包装用紙、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの衛生用紙、食品容器原紙や塗工印刷用原紙などの雑種紙、ライナーや中しん原紙などの段ボール原紙、白板紙や色板紙などの紙器用板紙、石こうボードや紙管原紙などの雑板紙などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
なお、実施例で用いた本発明のA成分A−1〜5、B成分B−1〜5及びC成分C−1〜2並びに比較例で用いた成分A−6〜8及びB−6の構造及び性状を表1、表2、及び表3に示す。また、上記A−1〜8のヨード吸光度比は以下のようにして求めた。
ヨード吸光度比
ヨード吸光度の測定は非特許文献2に準拠して行った。即ち、20℃の恒温室中にて0.5質量%ポリビニルアルコール水溶液2mlに蒸留水を加えて全容量を9mlとし、これにヨード:ヨードカリ=1:2(質量比)の1/1000N水溶液を2ml加え、攪拌した後温度を20℃に調節し、波長480nmにおける吸光度を測定した。ヨード吸光度比を次の式により求めた。
ヨード吸光度比=(ポリビニルアルコールのヨード吸光度)/(94.21×M3.207
(式中、Mはポリビニルアルコール中の残存酢酸基のモル分率を示す。)
実施例1〜6及び比較例1〜6
表1に示す各ポリビニルアルコールA−1〜8、表2に示す重合体B−1〜6、及び表3に示す重合体C−1を、それぞれ固形分が2.5質量%になるように精製水と混合して表4に示すピッチコントロール剤a−1〜8、b−1〜6、及びc−1とし、以下に示す方法でピッチ付着防止性試験、歩留性試験、並びに発泡性試験を行った。
実施例7
表1に示すポリビニルアルコールA−5及び表3に示す重合体C−2を、A−5の固形分が2.5質量%、C−2の固形分が0.1質量%になるように精製水と混合してピッチコントロール剤d−1とした。また、表2に示す重合体B−2を、固形分が2.5質量%になるように精製水と混合して表4に示すピッチコントロール剤b−2とした。以下に示す方法でピッチ付着防止性試験、歩留性試験、並びに発泡性試験を行った。
Figure 0004873884
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疑似ピッチの調製
古紙パルプを主原料として、ロジンサイズ剤、硫酸アルミニウム並びにポリアクリルアミドを添加して抄造するライナーマシーンのドライヤーに付着した異物について、クロロホルムで抽出を行い、その後その抽出残査を温水で抽出した。得られた各々の抽出物を濾過後、エバポレーターで濃縮乾固した。クロロホルム抽出物は4.0g得られ、スチレン・ブタジエン、ロジン化合物などが検出された。また、温水抽出物は0.4g得られ、ポリアクリルアミドなどが検出された。クロロホルム抽出物4.0gに50gのクロロホルムを加え加温溶解し、クロロホルム抽出物溶液を得た。また、温水抽出物0.4gに50gの水を加え加温溶解し、温水抽出物溶液を得た。クロロホルム抽出物溶液:温水抽出物溶液:エタノールを質量比1:1:2の比率で混合し、激しく振とうしたものを疑似ピッチ溶液として使用した。
ピッチ付着防止性
実施例1
よく洗浄したワイヤーを、7×21cmに切りとり、円筒状にしたものをテストピースとし、105℃にて1時間乾燥した後、デシケーター中で放冷し、秤量した[質量(イ)]。500mlのビーカーの中にCSF500mLのLBKPを0.5質量%含むパルプスラリー400gを入れ、ウォーターバス中で、40℃に昇温した後調製した溶液中にテストピースを入れて攪拌を開始した。ビーカーの中に擬似ピッチ溶液1mlを添加し、直ちにピッチコントロール剤a−3を8mg(ピッチコントロール剤固形分換算で、対パルプ100ppm)添加し、試験を開始した。試験開始時より1分後にピッチコントロール剤c−2を2.4mg添加し(ピッチコントロール剤固形分換算で、対パルプ30ppm)、試験開始時より2分後にピッチコントロール剤b−2を8mg(ピッチコントロール剤固形分換算で、対パルプ100ppm)添加した。試験開始より30分間攪拌した後にテストピースを取り出し、水を切った後105℃にて1時間乾燥させ、デシケーターで放冷し、質量を測定した[質量(ロ)]。ピッチ付着量を次の式により求めた。
ピッチ付着量=[質量(ロ)]−[質量(イ)]
また、次の式によりピッチ付着防止率を求めた。
ピッチ付着防止率(%)=[(薬剤無添加時ピッチ付着質量−薬剤添加時ピッチ付着質量)/薬剤無添加時ピッチ付着質量]×100
実施例2〜7及び比較例1〜6
表4に示すピッチコントロール剤を用いて、実施例1と同様に実施例2〜7及び比較例1〜6の各々の評価を行った。
上記のピッチ付着防止率の値に基づき、ピッチ付着防止性を以下の基準で評価した。
◎: ピッチ付着防止率が70%以上である。
○: ピッチ付着防止率が60%以上70%未満である。
△: ピッチ付着防止率が50%以上60%未満である。
×: ピッチ付着防止率が50%未満である。
歩留性
ピッチ付着防止性評価においてテストピースを取り出した後のパルプスラリーを、直ちに濾紙(Whatman社製41)で濾過し、濾液を得た。濾液の濁度(単位はNTU)をHACH社製濁度計2100P型で測定した。
上記の濁度の値に基づき、歩留性を以下の基準で評価した。
◎:濁度が1.0NTU未満である。
○:濁度が1.0以上2.0NTU未満である。
△:濁度が2.0以上4.0NTU未満である。
×:濁度が4.0NTU以上である。
発泡性
古紙パルプを主原料として、ミキシングチェスト内のパルプ原料にロジンサイズ剤、硫酸アルミニウム並びにポリアクリルアミドを添加して抄造するライナーマシンにおいて、A成分、又はA成分及びC成分をミキシングチェスト内のパルプ原料に、B成分をミキシングチェストより後段に位置するマシンチェスト内のパルプ原料に所定量添加した。A成分の添加を開始してから4時間後の、ワイヤー下に位置する白水ピット内の発泡性を目視にて以下の基準で実施例2及び7、比較例1及び5について評価した。
◎:ピッチコントロール剤添加前と同等以下の発泡性である。
△:ピッチコントロール剤添加前より発泡性が高い。
×:ピッチコントロール剤添加前より著しく発泡性が高い。
Figure 0004873884
Figure 0004873884
本発明の方法は、ピッチ付着防止性及び歩留性が良好で発泡性が抑制されたものであった。これに対して、比較例1はA成分のヨード吸光度比が1.6未満であるため、ピッチ付着防止性が不良であり、発泡性が高かった。比較例2はA成分のケン化度が92モル%を超えるうえ、本発明のB成分を添加していないため、ピッチ付着防止性及び歩留性が不良であった。比較例3はA成分のケン化度が70モル%未満であるため、ピッチ付着防止性が不良であった。比較例4はA成分を添加した後にB成分を添加していないため、ピッチ付着防止性が不良であった。比較例5は本発明のB成分を添加していないため、歩留性が不良であり、発泡性が高かった。比較例6は本発明のA成分を用いていないため、ピッチ付着防止性が不良であった。
本発明の方法は、製品や装置へのピッチの付着、白水中へのピッチの蓄積、及び発泡性が充分に抑制されることから、紙の製造において有利に利用可能である。

Claims (2)

  1. 平均重合度が300〜10,000、ケン化度が70〜92モル%及び
    (ポリビニルアルコールのヨード吸光度)/(94.21×M3.207
    (式中、Mはポリビニルアルコールの残存酢酸基のモル分率を示す)
    で表されるヨード吸光度比が1.6以上のポリビニルアルコール(A)をパルプに添加した後に、アミン・エピハロヒドリン重縮合物(B)をパルプに添加する方法であって、(A)及び(B)がパルプ固形分に対して各々0.1〜1,000ppmであることを特徴とする紙の製造方法。
  2. 前記アミン・エピハロヒドリン重縮合物(B)をパルプに添加する前に、
    更に、(イ)式[1]で示されるポリオキシアルキレン化合物由来の単位と
    1O(AO)n2 [1]
    (ただし、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基で、R1は炭素数2〜5のアルケニル基、R2は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜200である)
    (ロ)無水マレイン酸由来の単位とを必須単位とし、(イ)と(ロ)のモル比が7:3〜3:7であり、かつ重量平均分子量が1,500〜200,000である共重合体あるいはその加水分解物、加水分解物の塩または加水分解物のエステル化物(C)を添加することを特徴とする請求項1記載の紙の製造方法。

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