JP4873203B2 - 硬化性オキセタン組成物の硬化方法 - Google Patents
硬化性オキセタン組成物の硬化方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性オキセタン組成物の硬化方法に関する。更に詳しくは、エポキシ樹脂組成物の代替品として期待される硬化性オキセタン組成物の硬化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
4員環の環状エーテル化合物であるオキセタンは、炭素−酸素間の結合が分極していることから高い反応性を示し、ルイス酸等を触媒とするオキセタンの開環重合(S.Inoue and T.Aida,“Ring OpeningPolymerization,” K.J.Ivin and T.Saegusa,Eds.,Elsevier,London,1984,Vol.1,pp.185〜298等参照)や、トリアルキルアルミニウム−水反応生成物を触媒とするオキセタニルメチル トリメチルシリル エーテルの開環重合(特開平2−29429号公報参照)等は知られている。
【0003】
また、最近では、カチオン重合におけるオキセタンの高い反応性を利用した、光酸発生剤存在下の光カチオン重合も幾つか知られている。例えば、特開平6−16804号公報、特開平7−17958号公報、特開平7−173279号公報、特開平8−245783号公報等には、式(1)
【0004】
【化2】
【0005】
(式中、R1は水素原子、フッ素原子、1価の炭化水素基等であり、R2は水素原子、アルキル基、アリール基等、nは1〜4の整数)で示される分子中に1〜4個のオキセタン環をもつ3−置換オキセタンモノマーと、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩等の光酸発生剤とからなる硬化性オキセタン組成物に、紫外線、X線又は電子線等の活性エネルギー線を照射するオキセタンモノマーの硬化方法が示されている。
【0006】
更に、熱潜在性カチオン重合開始剤を用いたオキセタンの熱カチオン重合についても知られている(特開平11−269370号公報)。
【0007】
また、特開平11−130766号公報には、分子中にオキセタニル基及び水酸基をもつ式(2)の化合物が示されるとともに、これを含む活性エネルギー線硬化型組成物は、短時間の光照射によって重合度が高くかつ密着性に優れる硬化物を与えると記載されている。
【0008】
【化3】
【0009】
(式中、R3はメチル基又はエチル基を示し、R4、R5は水素原子、ハロゲン原子、メチル基、フェニル基又はトリハロゲノメチル基を示す。)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
先に、本発明者等は、種々のオキセタン化合物を検討する過程で、新規なオキセタン化合物、すなわち、分子中に2個以上のオキセタニル基及び1個以上の水酸基をもつ脂肪族系又は脂環系化合物を合成した。本発明は、この水酸基含有オキセタン化合物を原料とし、迅速に、かつ効率良く硬化させる硬化方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明者らは種々検討する中で、水酸基含有オキセタン化合物を硬化剤の存在下に、活性光線の照射と加熱とを組み合わせれば、水酸基含有オキセタン化合物を、迅速に、しかも効率良く硬化させうること、及び得られる硬化物は密着性が良好であることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、分子中に2個以上のオキセタニル基及び1個以上の水酸基をもつオキセタン化合物(A)と、カチオン重合開始剤である硬化剤(B)とを含んでなる硬化性オキセタン組成物を、40℃以下の温度で、0.01秒〜1時間の照射時間で活性光線の照射ののち、40〜200℃の温度で、0.1秒〜50時間加熱を行い硬化させることを特徴とする硬化性オキセタン組成物の硬化方法である。
また、本発明は、前記カチオン重合開始剤が、式(IV)で表される潜在性カチオン重合開始剤である上記に記載の硬化性オキセタン組成物の硬化方法である。
【0013】
【化4】
また、上記硬化方法において活性光線の照射条件は、酸を発生させ、重合・架橋反応を促進しない条件とする。そのような条件は、活性光線の照射量によっても変動するが、照射温度は、40℃以下、その照射時間は0.01秒〜1時間である。照射温度を40℃以下とするのは、重合・架橋反応を抑制するためである。また、上記硬化方法において、加熱の温度は40〜200℃、その時間は、0.1秒〜50時間とする。重合・架橋反応を促進させるためである。
【0014】
また、上記硬化方法におけるオキセタン化合物(A)としては、2個以上のオキセタニル基及び1個以上の水酸基をもつ化合物を用いる。これにより、硬化密度の高い硬化物を得ることができる。
【0015】
また、上記硬化方法における硬化剤(B)としては、カチオン重合開始剤を用いる。硬化前の硬化性オキセタン組成物の保存安定性が高いからである。
【0016】
【作用】
活性光線の照射と加熱とにより、硬化性オキセタン組成物が硬化する機作は、次のように考えられる。すなわち、活性光線の照射によって、硬化剤(B)に由来する酸(プロトン)がはじめに発生する。発生した酸は、40℃程度の低い温度では、オキセタン化合物(A)中の水酸基と相互作用(水素結合)するにとどまり、オキセタン化合物(A)の開環・重合反応へは進まない。その後、この状態で加熱されると、水酸基に相互作用(水素結合)していた酸(プロトン)が遊離して、オキセタン化合物(A)のオキセタン環の開環・重合反応(又は重付加反応)を起こし、不溶不融の三次元網目構造の硬化物を形成する、というものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明における実施の形態を説明する。先ず、本発明で用いられる硬化性オキセタン組成物について述べる。用いられる硬化性オキセタン組成物中の主たる成分は、分子中にオキセタニル基及び水酸基を有しているオキセタン化合物(A)で、活性光線の照射や加熱によって硬化するものであればよい。中でも、オキセタニル基を2個以上、水酸基を1個以上有する化合物は、硬化させた際の架橋密度が高くなるので更に好ましい。更に、分子中にオキセタニル基を2〜6個有し、水酸基を1〜6個有する脂肪族系又は脂環系化合物は、硬化性に優れており特に好ましい。これらは、硬化剤(B)の存在下、適当な条件下に開環重合して硬化する。
【0018】
上記オキセタン化合物(A)の具体例として以下の化合物が挙げられる。
【化5】
(式中、Rは水素又はメチル基を示し、R 4は−(CH2)x−(但し、xは1〜20の整数)、−O−{(CH2)2−O}y−、(但し、yは2〜20の整数)、
【0019】
【化6】
等である。
【0020】
これらのオキセタン化合物(A)は、多価アルコールに反応後水酸基が残るように等量を調整した(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル トシラート又は(3−メチルオキセタン−3−イル)メチル トシラート又は(オキセタン−3−イル)メチル トシラートを塩基の存在中で作用させることにより製造することができる。
【0021】
多価アルコールの水酸基の一部を保護し、残りの水酸基と(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル トシラート又は(3−メチルオキセタン−3−イル)メチル トシラート又は(オキセタン−3−イル)メチル トシラートを塩基の存在中で反応させた後、脱保護することによっても製造できる。さらに、これらのオキセタン化合物(A)は、塩基存在下、ヒドロキシル基とオキセタニル基を有する化合物にエポキシを反応させて合成することもできる。また、分子中にエポキシ基及びオキセタニル基を同時にもつ化合物とアルコール又はフェノールとを反応させて合成することもできる。
【0022】
なお、オキセタン化合物(A)は単一の分子量を持つ化合物だけでなく、分子量分布を持つオリゴマー(A’)を用いてもよい。このようなオリゴマー(A’)を用いた組成物では結晶性が低下し、保存安定性が優れるものとなる。上記オリゴマー(A’)として具体的には以下に示す化合物が挙げられる。
【0023】
【化7】
また、オキセタン化合物(A)又はオリゴマー(A’)の分子量は、好ましくは74〜20,000(更に好ましくは、74〜10,000)である。分子量が74以下では、分子中にオキセタニル基及び水酸基を形成することができず、また、20,000を超えると硬化速度が低下する。これらオキセタン化合物(A)及びオリゴマー(A’)は、単独でも、2種類以上を組み合わせても使用できる。
【0024】
硬化性オキセタン組成物には、前記オキセタン化合物(A)のほかに、通常、硬化剤(B)が含まれる。硬化剤(B)としては、オキセタン化合物(A)を開環重合させる硬化剤やオキセタン化合物に付加反応する硬化剤であればよい。オキセタン化合物(A)を開環重合させる硬化剤としては、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤、潜在性カチオン重合開始剤、潜在性アニオン重合開始剤が挙げられる。また、後者のオキセタン化合物に付加反応する硬化剤としては、2官能以上のカルボン酸、2官能以上のポリチオール、2官能以上のカルボン酸無水物、2官能以上のフェノール等が好適に用いられる。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
硬化剤(B)として、カチオン重合開始剤を用いると、硬化性オキセタン組成物が短時間で硬化し、更に高い架橋密度の硬化物が得られる。このようなカチオン重合開始剤として、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸のようなプロトン酸、あるいは三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸が好適に用いられる。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
また、カチオン重合開始剤の中で、活性光線の照射又は加熱によってカチオン重合開始剤を形成するいわゆる「光カチオン重合開始剤」は、オキセタニル基及び水酸基をもつオキセタン化合物(A)に配合して室温に保存する限りにおいては長期間にわたって安定で、活性光線の作用で直ちにカチオン重合開始剤を形成し、その後加熱すると硬化反応を開始・促進するので好ましく用いられる。
【0027】
このような光カチオン重合開始剤には、式(8)、式(9)又は式(10)で表されるスルホニウム塩、式(12)で表されるヨードニウム塩のほか、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等がある。
【0028】
【化8】
(式(8)〜(12)中、R9〜R12は、それぞれ、それぞれ、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜12のアルケニル基、アリール基、アルカリール基、炭素原子数1〜20のアルカノール基もしくは炭素原子数5〜10のシクロアルキル基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、また置換基を有しても有さなくてもよく、また、Xは、BF4、PF6、AsF6、SbF6、SbCl6、(C6F5)4B、SbF5(OH)、HSO4、p−CH3C6H4SO3、HCO3、H2PO4、CH3COOおよびハロゲン原子からなる群より選ばれる1価の陰イオンであり、R9〜R12のうち2個は互いに結合して、N、P、OまたはSをヘテロ原子とする複素環を形成してもよく、Ar1は、置換基を有しても有さなくてもよい1価のアリール基を表わし、Ar2は、置換基を有しても有さなくてもよい2価のアリーレン基を表わし、Ar3およびAr4は、互いに同一でも異なっていてもよく、また置換基を有しても有さなくてもよい1価のアリール基である。)なお、上記光カチオン重合開始剤は単独で、または2種類以上を組み合わせて使用される。
【0029】
そして、前記式(8)、(9)または(10)で示されるスルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム四フッ化ホウ素、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモン、トリフェニルスルホニウム六フッ化砒素、トリ(4−メトキシフェニル)スルホニウム六フッ化砒素、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム六フッ化砒素、アデカオプトマーSP−150(旭電化工業社製、対イオン:PF6)、アデカオプトマーSP−170(旭電化工業社製、対イオン:SbF6)、アデカオプトマーCP−66(旭電化工業社製、対イオン:SbF6)、アデカオプトマーCP−77(旭電化工業社製、対イオン:SbF6)、サンエイドSI−60L(三新化学工業社製、対イオン:SbF6)、サンエイドSI−80L(三新化学工業社製、対イオン:SbF6)、サンエイドSI−100L(三新化学工業社製、対イオン:SbF6)、サンエイドSI−150(三新化学工業社製、対イオン:SbF6)、CYRACUREUVI−6974(ユニオン・カーバイド社製、対イオン:SbF6)、CYRACURE UVI−6990(ユニオン・カーバイド社製、対イオン:PF6)、UVI−508(ゼネラル・エレクトリック社製)、UVI−509(ゼネラル・エレクトリック社製)、FC−508(ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング社製)、FC−509(ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング社製)、CD−1010(サートマー社製)、CD−1011(サートマー社製)およびCIシリーズ(日本曹達社製、対イオン:PF6、SbF6)などを挙げることができる。
【0030】
また、前記式(12)で示されるヨードニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウム 六フッ化砒素、ジ4−クロロフェニルヨードニウム 六フッ化砒素、ジ(4−ブロムフェニル)ヨードニウム 六フッ化砒素、フェニル(4−メトキシフェニル)ヨードニウム 六フッ化砒素、ゼネラル・エレクトリック社製のUVEシリーズ、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング社製のFCシリーズ、東芝シリコーン社製のUV−9310C(対イオン:SbF6)およびローヌプーラン社製のPhotoinitiator2074(対イオン:(C6F5)4B)などを挙げることができる。
【0031】
以上の光カチオン重合開始剤は、単独で、または2種類以上を組み合わせて使用される。
【0032】
オキセタン化合物(A)に付加反応する硬化剤としては、以下の化合物が挙げられる。2官能以上のカルボン酸及び無水物として、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ナジック酸、メチルナジック酸、ドデセニルコハク酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、シクロペンタジエンテトラカルボン酸、四角酸、これらの無水物、等である。また、2官能以上のフェノール系硬化剤としては、例えば、カテコール、カテコール誘導体、レゾルシノール、レゾルシノール誘導体、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、ピロガノール、ピロガノール誘導体、テトラヒドロキシベンゼン類、テトラヒドロキシベンゼン誘導体類、等である。 2官能以上のチオール類としては、1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、等である。これらの硬化剤は、単独で、または2種類以上を組み合わせて使用される。
【0033】
カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤、潜在性カチオン重合開始剤、潜在性アニオン重合開始剤等の、オキセタン化合物(A)を開環重合させる硬化剤の使用量はオキセタン化合物(A)100重量部に対して好ましくは0.01〜20重量部(更に好ましくは、0.1〜10重量部)である。0.01重量部未満では硬化性が不充分となりやすく、20重量部を越えると接着フィルムの使用前の保存安定性が低下しやすい。また、2官能以上のカルボン酸、2官能以上のポリチオール、2官能以上のカルボン酸無水物、2官能以上のフェノール等の、オキセタン化合物(A)と付加反応する硬化剤の使用量は、オキセタン化合物(A)100重量部に対して好ましくは2〜500重量部(更に好ましくは50〜300重量部)である。2重量部未満では硬化性が不充分となりやすく、500重量部を越えると接着フィルムの使用前の保存安定性が低下しやすい。
【0034】
以上は、用いる硬化性オキセタン組成物について説明した、次に、硬化の処理条件(活性光線による照射処理と加熱処理)について説明する。本発明の硬化方法においては、硬化性オキセタン組成物に対し、活性光線による照射処理と、加熱処理とを組み合わせ、開環重合させ、硬化させる。ここで、活性光線を照射する目的は、これによって、硬化剤(B)から酸(プロトン)を発生させるためである。使用する活性光線としては、紫外線、可視光、赤外光等が挙げられる。これらの活性光線の中でも、重合硬化速度の点から紫外線、可視光が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線の主たる波長が300nm以上であることが好ましく、350nm以上であることが特に好ましい。また、活性光線の他に、電子線、エックス線、γ線又はマイクロ波等のエネルギー線を用いることもできる。紫外線を照射する場合には、様々な光源を使用することができ、例えば水銀アークランプ、キセノンアークランプ、螢光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプ及び周囲の日光からの照射光により硬化させることができる。活性光線の照射量は、硬化剤(B)から酸(プロトン)を発生させ、その後の加熱で充分な硬化反応が進行する程度に照射すればよい。概ね、1mJ/平方cm〜500,000mJ/平方cmである。更に、活性光線の照射は1回又は2回以上行うことができ、それぞれの活性光線の照射条件は同一でもよく、異なっていてもよい。更に、異なる光源を組み合わせて用いても良い。活性光線照射時の温度は40℃以下好ましく、35℃以下が更に好ましく、30℃以下が特に好ましい。温度が40℃を越えると、活性光線照射時に重合反応も進行しやすいからであり、活性光線を照射した後に基材同士を張り合わせるような場合は作業時間の裕度がなくなる傾向がある。
【0035】
加熱の処理は、活性光線による照射処理とともに行ってもよいが、好ましくは、活性光線の照射後に行なう。これにより、重合・架橋反応を進行させる。加熱の温度は、好ましくは40℃〜200℃、更に好ましくは50℃〜150℃であり、加熱の時間は、好ましくは0.1秒〜50時間、更に好ましくは1秒〜30時間である。加熱温度が40℃未満であると硬化反応が進みにくく、200℃を超えると望まない副反応が進行しやすい。加熱時間が0.1秒未満では硬化反応が終わらず、50時間を超えると硬化物の生産性が低下し、更に望まない副反応も進みやすい。前記活性光線の照射及び加熱は、繰り返し行うこともできるが、好ましくは、1回にて完結させる。
【0036】
上記硬化方法において、活性光線による照射処理と加熱による処理とのあいだに、所定の保持時間を挟んでもよい。その保持の時間は、0秒〜24時間が好ましく、0.05秒〜12時間がより好ましく、0.1秒〜6時間が更に好ましく、0.2秒〜1時間が最も好ましい。この保持時間が24時間を超えると硬化物の生産性が低下する。
【0037】
上記方法において、活性光線を40℃以下で照射し、次いで、0.01秒〜24時間保持し、その後、40〜200℃で0.1秒〜50時間加熱すると、活性光線を照射している間及びそのあとの保持している間は実質的な硬化反応はほとんど進行せず、その後の加熱により速やかに重合・架橋反応が進行する。このために、活性光線を透過させない基材同士を接着するような場合、基材の片面又は両面に硬化性オキセタン組成物を塗布し、活性光線を照射した後に張り合わせて加熱を行なうと、張り合わせてから加熱するまでの間(すなわち、保持時間)の暫くの間は硬化反応が進行しないので、その間に精度の高い位置合わせを容易に行なうことができる。
【0038】
上記方法における反応の圧力は特に制限されるものではなく、減圧、常圧及び加圧のいずれでもよいが、装置の簡略化の点では常圧は好ましい。また、反応の際、撹拌する必要はないが、必要に応じて撹拌してもよい。
【0039】
硬化反応は、酸素の影響による好ましくない反応を防止するために、不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。不活性ガスとしては、窒素ガスのほか、アルゴンガスやヘリウムガス等の希ガスを使用できる。
【0040】
今まで述べたように、オキセタニル基及び水酸基をもつオキセタン化合物(A)と硬化剤(B)とを必須成分として含む硬化性オキセタン組成物(後述するように、必要に応じて、反応性モノマー(E)、その他の成分(F)、及び溶媒(G)も含む場合もある。)を上記の硬化方法で処理すれば、三次元網目構造をもつ不溶不融の硬化物が得られる。金属、ゴム、プラスチック、形成部品、フィルム、紙、木、ガラス、コンクリート又はセラミック等の基材に、前記硬化性オキセタン組成物を塗布した後、本発明の硬化方法に従い硬化させれば、その硬化物を皮膜とする基材を得ることができる。なお、硬化反応を溶媒中で行う場合は、硬化反応の終了後、得られた反応混合物から溶媒を蒸発せしめ、次いで常温まで冷却して上記硬化物を得てもよいし、硬化反応の終了後、得られた反応混合物を常温まで冷却し、溶媒を含んだままの柔軟性のある硬化物として使用してもかまわない。
【0041】
次に、硬化性オキセタン組成物に添加(又は含有)させる任意的成分について付言する。
反応性モノマー(E):本発明で用いられる硬化性オキセタン組成物には、前記オキセタン化合物(A)のほかに反応性モノマー(E)を加えることもできる。このような反応性モノマー(E)としては、オキセタニル基をもつ化合物(E1)、オキシラニル基をもつ化合物(E2)、又はエチレン性不飽和基をもつ化合物(E3)等がある。これは、単独に又は2種類以上を組み合わせて併用してもよい。そのとき、オキセタン化合物(A)を開環重合させる硬化剤の使用量は、オキセタン化合物(A)と反応性モノマー(E)の合計100重量部に対し、好ましくは0.01〜20重量部(更に好ましくは、0.1〜10重量部)とする。また、硬化剤がオキセタン化合物(A)に付加反応させる硬化剤である場合、その使用量は、オキセタン化合物(A)と反応性モノマー(E)の合計100重量部に対し、好ましくは2〜500重量(更に好ましくは、50〜300重量部)とする。
【0042】
オキセタニル基をもつ化合物(E1)としては、その分子中に1〜6個のオキセタン環をもつ化合物を用いることができる。
【0043】
オキシラニル基を有する化合物(E2)としては、その分子中にオキシラン環を有して化合物を用いることができる。
【0044】
エチレン性不飽和基をもつ化合物(E3)としては、分子中に二重結合を1個有する化合物、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル系モノマや、スチレン系モノマ、ビニルエーテル系モノマ等がある。エチレン性不飽和基を有する化合物(E3)として、分子中に二重結合を2個有する化合物、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジビニルエーテル等もある。これら、エチレン性不飽和基をもつ化合物(E3)は、単独でも、2種類以上を組み合わせもよい。
【0045】
本発明で用いる硬化性オキセタン組成物の構成成分として、上記反応性モノマー(E)を加えた場合、オキセタン化合物(A)の水酸基が連鎖移動を起こし、反応性モノマー(E)の反応性が向上する。反応性モノマー(E)を加える場合のその使用量は、オキセタン化合物(A)100重量部に対し、好ましくは0〜1,000,000重量部(更に好ましくは1〜100,000重量部)である。1,000,000重量部を越えると、オキセタン化合物(A)中の水酸基の連鎖移動の効果は認めにくい。
【0046】
その他の成分(F):本発明における硬化性オキセタン組成物には、使用に際し、発明の効果を損なわない範囲内であれば、公知の各種添加剤、例えば、無機充填剤、強化材、着色剤、安定剤(熱安定剤、耐候性改良剤等)、増量剤、粘度調節剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤、抗菌剤、防黴剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤、離型剤等を添加・混合することができる。上記着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料等の染料、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカ等の無機顔料及びカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、フタロシアニン系等の有機顔料等が挙げられる。また、上記安定剤としては、ヒンダードフェノール系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、オキザリックアシッドアニリド系等の化合物が挙げられる。更にまた、上記無機充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、ホウ素繊維、ステンレス鋼繊維、アルミニウム、チタン、銅、真鍮、マグネシウム等の無機質及び金属繊維、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、錫、鉛、ステンレス鋼、アルミニウム、金及び銀等の金属粉末、木粉、マグネシア、カルシア等の酸化物、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、石英粉末、タルク、クレイ、各種金属の水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ホウ珪酸塩、アルミノ珪酸塩、チタン酸塩、塩基性硫酸塩、塩基性炭酸塩及びその他の塩基性塩、ガラス中空球、ガラスフレーク等のガラス材料、炭化珪素、窒化アルミ、ムライト、コージェライト等のセラミック、及びフライアッシュやミクロシリカ等の廃棄物等が挙げられる。
【0047】
溶媒(G):本発明で用いるオキセタン化合物(A)と硬化剤(B)とは相溶性に優れている。そのため、本発明においては、必ずしも溶媒を必要としない。しかし、硬化剤(B)等の各成分の性状に合わして、必要に応じて溶媒を使用することもできる。その際、使用する溶媒(G)としては、各成分を混合、分散させることができるものを好適に選択できる。具体例としてはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン等が挙げられる。単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。その沸点は50℃〜300℃が好ましく、70〜250℃が更に好ましい。沸点が50℃未満では後記する硬化物の製造時に溶媒が飛散しやすく、また300℃を越えると硬化物製造時の溶媒の揮散が困難となる。溶媒の使用量は、均一な原料液(硬化性オキセタン組成物)を製造でき、また所定の流動性を実現できる範囲内であれば特に制限はない。オキセタン化合物(A)100重量部に対し、好ましくは0〜10,000重量部(更に好ましくは1〜5,000重量部)である。溶媒の使用量が10,000重量部を越えると、硬化物の製造後の溶媒の除去に時間を要するだけでなく、硬化物の強度が低下する。
【0048】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。
(合成例1)
特開平11−130766号公報に記載された方法に準じて、次式(I)で示される(分子中にオキセタニル基及び水酸基をもつ)化合物(I)を合成した。
【0049】
【化9】
【0050】
(合成例2)
[3,3,18,18−ビス(3−オキサシクロブチリデン)−7,14−ジヒドロキシ−5,9,12,16−テトラオキサイコサン(II)の合成]
【化10】
【0051】
500ml反応容器を乾燥窒素で置換し、水素化ナトリウム(60%油性)0.9g(22mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、この懸濁液を0℃に冷却した。そこへ、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン2.6g(22mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド50ml溶液をゆっくりと加えた後、反応混合物を0℃で30分間撹拌した。その後、エチレングリコールジグリシジルエーテル1.7g(10mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド50ml溶液を滴下し、反応液を40℃に昇温しながら乾燥窒素気流下6時間撹拌した。反応液を水中に投じ、クロロホルムで抽出した。抽出液は無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、3,3,18,18−ビス(3−オキサシクロブチリデン)−7,14−ジヒドロキシ−5,9,12,16−テトラオキサイコサン(II)2.8gを得た(収率70%)。
【0052】
(合成例3)
[3,3,16,16−ビス(3−オキサシクロブチリデン)−7,12−ジヒドロキシ−5,14−ジオキサオクタデカン(III)の合成]
【0053】
【化11】
【0054】
500ml反応容器を乾燥窒素で置換し、水素化ナトリウム(60%油性)0.9g(22mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド100mlを加え、この懸濁液を0℃に冷却した。そこへ、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン2.6g(22mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド50ml溶液をゆっくりと加えた後、反応混合物を0℃で30分間撹拌した。その後、1,2,7,8−ジエポキシオクタン1.4g(10mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド50ml溶液を滴下し、反応液を80℃に昇温しながら乾燥窒素気流下6時間撹拌した。反応液を水中に投じ、クロロホルムで抽出した。抽出液は無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、3,3,16,16−ビス(3−オキサシクロブチリデン)−7,12−ジヒドロキシ−5,14−ジオキサオクタデカン(III)3.0gを得た(収率80%)。
【0055】
[硬化性オキセタン組成物の調製(その1)]
オキセタン化合物(A)として式(I)のもの1.0g、硬化剤(B)として次式(IV)で表される潜在性カチオン重合開始剤アデカオプトマーSP−170(旭電化工業(株)製)0.02gを混合し、硬化性オキセタン組成物(a−1)を得た。
【0056】
【化12】
【0057】
[硬化性オキセタン組成物の調製(その2)]
オキセタン化合物(A)として式(I)のもの1.0g、硬化剤(B)として式(IV)の潜在性カチオン重合開始剤アデカオプトマーSP−170(旭電化工業(株)製)0.005gを混合し、硬化性オキセタン組成物(a−2)を得た。
【0058】
[硬化性オキセタン組成物の調製(その3)]
オキセタン化合物(A)として式(II)のもの1.0g、硬化剤(B)として式(IV)の潜在性カチオン重合開始剤アデカオプトマーSP−170(旭電化工業(株)製)0.02gを混合し、硬化性オキセタン組成物(a−3)を得た。
【0059】
[硬化性オキセタン組成物の調製(その4)]
オキセタン化合物(A)として式(II)のもの1.0g、硬化剤(B)として式(IV)の潜在性カチオン重合開始剤アデカオプトマーSP−170(旭電化工業(株)製)0.005gを混合し、硬化性オキセタン組成物(a−4)を得た。
【0060】
[硬化性オキセタン組成物の調製(その5)]
オキセタン化合物(A)として式(III)のもの1.0g、硬化剤(B)として式(IV)の潜在性カチオン重合開始剤アデカオプトマーSP−170(旭電化工業(株)製)0.02gを混合し、硬化性オキセタン組成物(a−5)を得た。
【0061】
[硬化性オキセタン組成物の調製(その6)]
オキセタン化合物(A)として式(III)のもの1.0g、硬化剤(B)として式(IV)の潜在性カチオン重合開始剤アデカオプトマーSP−170(旭電化工業(株)製)0.005gを混合し、硬化性オキセタン組成物(a−6)を得た。
【0062】
以上、(その1)から(その6)までにおいて、オキセタン化合物(A)と硬化剤(B)との相溶性は優れており、これらは溶媒を用いることなく混合でき、均一な硬化性オキセタン組成物とすることができた。
【0063】
(実施例1)
[硬化性オキセタン組成物の硬化反応]
銅箔(厚さ35μm)を両面に積層したガラスエポキシ材である銅張り積層板(日立化成工業(株)製 MCL−E−61)の銅表面を#600相当のブラシをもつ研磨機(三啓(株)製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥した。上で得られた硬化性オキセタン組成物(a−1)をこの銅張り積層板に約20μmになるように塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置を用いて、25℃、照度10mW/平方cmの紫外線を2分間照射した.その後、硬化性オキセタン組成物(a−1)の上に厚み25μmのテフロン(登録商標)フィルムを重ねて5分間放置した。硬化性オキセタン組成物(a−1)が120℃に加熱されるように、あらかじめ加熱してある金属圧子をテフロンフィルム側から押し当てて、20秒加熱した。室温まで冷却した後、テフロンフィルムを剥離してオキセタン硬化物(b−1)を得た。
【0064】
(実施例2)
[硬化性オキセタン組成物の硬化反応]
硬化性オキセタン組成物(a−2)を前記銅張り積層板に約20μmになるように塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置を用いて、25℃、照度10mW/平方cmの紫外線を1分間照射した.その後、5分間放置して、80℃で2時間加熱してオキセタン硬化物(b−2)を得た。
【0065】
(実施例3)
[硬化性オキセタン組成物の硬化反応]
硬化性オキセタン組成物(a−3)を前記銅張り積層板に約20μmになるように塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置を用いて、25℃、照度10mW/平方cmの紫外線を2分間照射した.その後、硬化性オキセタン組成物(a−3)の上に厚み25μmのテフロンフィルムを重ねて30秒間放置した。硬化性オキセタン組成物(a−3)が120℃に加熱されるように、あらかじめ加熱してある金属圧子をテフロンフィルム側から押し当てて、20秒加熱した。室温まで冷却した後、テフロンフィルムを剥離してオキセタン硬化物(b−3)を得た。
【0066】
(実施例4)
[硬化性オキセタン組成物の硬化反応]
硬化性オキセタン組成物(a−4)を前記銅張り積層板に約20μmになるように塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置を用いて、25℃、照度10mW/平方cmの紫外線を1分間照射した.その後、1時間放置して、80℃で2時間加熱してオキセタン硬化物(b−4)を得た。
【0067】
(実施例5)
[硬化性オキセタン組成物の硬化反応]
硬化性オキセタン組成物(a−5)を前記銅張り積層板に約20μmになるように塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置を用いて、25℃、照度10mW/平方cmの紫外線を2分間照射した.その後、硬化性オキセタン組成物(a−5)の上に厚み25μmのテフロンフィルムを重ねて5分間放置した。硬化性オキセタン組成物(a−5)が120℃に加熱されるように、あらかじめ加熱してある金属圧子をテフロンフィルム側から押し当てて、20秒加熱した。室温まで冷却した後、テフロンフィルムを剥離してオキセタン硬化物(b−5)を得た。
【0068】
(実施例6)
[硬化性オキセタン組成物の硬化反応]
硬化性オキセタン組成物(a−6)を前記銅張り積層板に約20μmになるように塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置を用いて、25℃、照度10mW/平方cmの紫外線を2分間照射した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置を用いて、25℃、照度10mW/平方cmの紫外線を1分間照射した.その後、5分間放置して、120℃で2時間加熱してオキセタン硬化物(b−6)を得た。
【0069】
(比較例1)
[硬化性オキセタン組成物の硬化反応]
硬化性オキセタン組成物(a−1)を前記銅張り積層板に約20μmになるように塗布した。高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置を用いて、25℃、照度10mW/平方cmの紫外線を2分間照射し、5分間放置して(b’−1)を得た。(b’−1)は液状のままで十分に硬化していなかった。
【0070】
(比較例2)
[硬化性オキセタン組成物の硬化反応]
硬化性オキセタン組成物(a−2)を前記銅張り積層板に約20μmになるように塗布した。その後、高圧水銀灯を備えた紫外線照射装置を用いて、25℃、照度10mW/平方cmの紫外線を1分間照射し、5分間放置して(b’−2)を得た.(b’−2)は液状のままで十分に硬化していなかった。
【0071】
[オキセタン硬化物の特性評価]
(硬化物のIRスペクトル)
実施例1〜6で得られた硬化物(b−1)〜(b−6)の赤外吸収スペクトルをKBr錠剤法によって測定すると、いずれも、オキセタン環由来の980(1/cm)付近のピークが消失していることを確認した。したがって、硬化性オキセタン組成物(a−1)から(a−6)の硬化反応は充分に進行していることがわかった。
【0072】
(密着性の評価)
実施例1〜6及び比較例1,2で得られた銅張り積層板上の硬化塗膜について、JIS K5400記載の碁盤目テープ法を参考にして密着性を評価した。具体的には、硬化塗膜に1mm×1mmの面積になるようにカッターナイフで切込みを入れ、塗膜表面にセロテープ(登録商標)を貼り付けて剥離し、銅張り積層板上に残ったオキセタン硬化物の個数を測定し、残膜率が95〜100%のときに良(○)、残膜率が95%未満のとき不良(×)と判定した。
【0073】
【表1】
実施例又は比較例 硬化物 密着性
実施例1 b−1 ○
実施例2 b−2 ○
実施例3 b−3 ○
実施例4 b−4 ○
実施例5 b−5 ○
実施例6 b−6 ○
比較例1 b’−1 ×
比較例2 b’−2 ×
【0074】
以上の結果から、オキセタン化合物(A)と硬化剤(B)とを含む硬化性オキセタン組成物に活性光線を照射し、次いで加熱した場合、(実施例1〜6のいずれも)密着性の高い硬化物が得られることが分かかる。更に、活性光線照射後の加熱は、120℃程度の比較的低温で、20秒間程度の短時間においても硬化した。これらと比較して、活性光線照射のみで加熱を行なわなかった比較例1,2は硬化反応が進行せず、密着性も悪かった。
【0075】
【発明の効果】
本発明の硬化方法によれば、高い硬化密度をもつ硬化物が、迅速に、かつ効率良く得られる。本発明の硬化方法により得られる硬化物は、不溶不融の三次元網目構造の硬化物で、優れた機械的性質(引張強さ、硬さ等)、電気的性質(電気絶縁性、低誘電率等)、接着性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性等を示すものであり、エポキシ樹脂の代替品として、塗料やコーティング剤、つや出しワニス、インキ、塗料、接着剤、電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、積層板、及びその他の電気・電子部品、コンクリート構造物の補修、新旧コンクリートの打継、補強鋼板の接着、各種ライニング等の土木建築用途、成形材料、複合材料用途、更に導電粒子を分散させて回路接続用材料用途等の分野への使用が期待できる。また、40℃未満で活性光線を照射した段階では硬化反応がほとんど進行しないので、たとえば活性光線を透過しない材料同士を低温で接着する分野に特に好適である。更に、張合せ時に精度の高い位置合わせを要する場合、本方法によれば張り合わせるまでの猶予時間をとることができて好都合である。
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