JP4872679B2 - フッ化物結晶の熱処理方法、フッ化物結晶の判別方法及びフッ化物結晶の加工方法 - Google Patents

フッ化物結晶の熱処理方法、フッ化物結晶の判別方法及びフッ化物結晶の加工方法 Download PDF

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Description

本発明は、フッ化物結晶、特に光学機器や光リソグラフィの光学系などに好適に用いられるフッ化物結晶の熱処理方法、その判別方法及び加工方法に関するものである。
光リソグラフィは、マイクロプロセッサ、メモリ、システムLSI、イメージセンサ、発光素子及び表示素子等の半導体装置の作製に用いられている。光リソグラフィにおいて、レンズ、プリズム、ハーフミラー及び窓材などの光学系に用いられる材料としては、フッ化物単結晶が高透過率を有するため好適である。
特に、特許文献1、2に開示されたフッ化カルシウム単結晶は、レーザーに対する耐久性等の光学性能に優れている。そのため、フッ化カルシウム単結晶は、ステッパー用レンズ材料として広く採用されている。
特開2002−037697号公報 特開2005−330146号公報
フッ化カルシウム単結晶は、その(111)面が複屈折や屈折率不均質などの光学性能の低下を最も引き起こし難い。そのため、フッ化カルシウム単結晶をレンズとして用いる場合、通常、(111)面を光透過面とした、すなわち(111)面に対し垂直に光が入射するようにフッ化カルシウム単結晶は加工される。そのようなフッ化カルシウム単結晶の製造を意図すると、通常(111)方位に配向した種結晶が用いられ、垂直ブリッジマン法又はチョクラルスキー法により結晶が育成される。
垂直ブリッジマン法では、まず加熱炉内でルツボに収容されたフッ化カルシウム原料を溶融した後、徐々にルツボを加熱炉に対して下降させる。こうして、溶融したフッ化カルシウムがルツボの底部側から徐々に冷却されて、結晶化がルツボ底部側から上方向に向かって進行することにより、フッ化カルシウム単結晶が育成される。
このようにして得られた単結晶は、種結晶と同一の方位に配向して成長しているはずである。ところが、実際には、結晶成長中の固液界面の熱的条件などにより、種結晶の結晶配向に対して、単結晶の方位のずれが生じることが多い。そのため、レンズ面が(111)面となるように、種結晶の(111)面と平行に単結晶のインゴットを切り出しても、そのレンズ面は(111)面から傾いてしまう。
ところで、レンズ面が(111)面からどの程度ずれているかを決定するには、X線やそれ以外の手段による精密測定を用いるのが一般的である。しかしながら、単結晶からなるレンズにおける方位のずれの確認を、全て精密測定で行うには費用及び時間がかかり、かつ煩雑である。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、X線やそれ以外の手段による精密測定を行うことなく、フッ化物単結晶表面の(111)面からの方位のずれを十分簡易に把握することができるフッ化物結晶の判別方法、フッ化物結晶の熱処理方法、並びに、その判別方法を利用したフッ化物結晶の加工方法を提供することを目的とする。
フッ化物単結晶は、結晶成長時の熱履歴に伴い、応力歪がその結晶内に発生している。例えば、単結晶をステッパー用レンズとして用いた場合、上述の応力歪が複屈折を引き起こし、ステッパーの結像の際の光学的な不均質を生じさせる。これを防止するため、育成されたフッ化物単結晶に対して加熱処理が施され、応力歪が除去される。
本発明は、多孔質部材を備える基台上に、(111)面とのなす角度が−15〜+15°である平滑面を有するフッ化物の単結晶を、平滑面と多孔質部材とが対面接触するように載置した状態で、熱処理炉内において最高温度が1000℃以上となるように単結晶に加熱処理を施すフッ化物結晶の熱処理方法を提供する。
本発明の熱処理方法において、熱処理炉内の圧力が10−1Pa以下であると好ましい。また、多孔質部材のかさ密度が0.50g/cm以下であると好適である。
本発明は、上述のフッ化物結晶の熱処理方法によって得られたフッ化物の単結晶におけるピットパターンを観察して、単結晶の方位のずれを判別するフッ化物結晶の判別方法を提供する。また、本発明は上述の判別方法によって判別されたフッ化物の単結晶を、その単結晶におけるピットパターンの表面と平行な面に沿って切断するフッ化物結晶の加工方法を提供する。
本発明者らは、上述の熱処理方法を採用することにより、結晶表面にピットパターンが形成されることを見出した。さらに、そのピットパターンは[111]方位に配向していることを確認した。このピットパターンを目視で観察することにより、単結晶表面の方位が簡便に確認できる。
そして、このピットパターンの表面と平行に単結晶を切断すれば、新たに露出した単結晶表面は(111)面となる。したがって、本発明によると、フッ化物単結晶の応力歪みを除去できるアニール処理と共に、精密な(111)面を有するフッ化物単結晶を得ることができる、という効果が奏される。
なお、本明細書において「ピットパターン」とは、エッチピットの集合体を意味する。エッチピットは、ケミカルエッチピットと熱エッチピットとに分類される。ケミカルエッチピットは、化学反応により結晶表面が溶解して生成する、細孔又は溝のような形状を有するエッチピットである。また熱エッチピットは、加熱により結晶表面の材料が部分的に蒸発して生成する、細孔又は溝のような形状を有するエッチピットである。加熱によりエッチピットが生成すること、及び、フッ化物単結晶が加熱のみで化学反応を起こす可能性は極めて低いことを考慮すると、本発明に係るエッチピットは熱エッチピットであると考えられる。
本発明によれば、X線やそれ以外の手段による精密測定を行うことなく、フッ化物単結晶表面の(111)面からの方位のずれを十分簡易に把握することができるフッ化物結晶の判別方法、フッ化物結晶の熱処理方法、並びに、その判別方法を利用したフッ化物結晶の加工方法を提供することができる。また、本発明によれば、フッ化物単結晶の応力歪みを除去できるアニール処理と共に、精密な(111)面を有するフッ化物単結晶を得ることが可能なフッ化物結晶の判別方法、フッ化物結晶の熱処理方法、並びに、その判別方法を利用したフッ化物結晶の加工方法を提供することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態に係るフッ化カルシウムなどのフッ化物の単結晶は、ブリッジマン法又はチョクラルスキー法などの単結晶育成方法により得られる。これらのうちブリッジマン法とは、炉内に設定された温度勾配中で結晶育成用ルツボを降下させることによって、ルツボ内の融液を結晶化させる方法である。
図1は、ブリッジマン法に用いられる炉(VB炉)の構造を示す模式断面図である。図1に示すVB炉100は、フッ化物原料2を収納し昇降方向に可動する結晶育成用ルツボ1と、結晶育成用ルツボ1の降下方向(図中矢印)に沿って温度勾配を形成するためのヒータ4と、これらを取り囲む断熱部材5と、これら全てを外包する気密化可能な容器3とから構成されている。なお、容器3の側面には排気口11が形成されている。ここで、フッ化物原料2の酸化を防ぐため、必要に応じて酸素を取り除くためのフッ化亜鉛のようなスカベンジャーをフッ化物原料2に混合し、排気口3Aから排気して容器3を真空状態で気密することが好ましい。その後、ヒータ4で加熱を行い、結晶育成用ルツボ1を下降させて内部のフッ化物原料2に温度勾配を与える。このようなブリッジマン法に適した炉を用いてフッ化物原料2を育成することにより、熱処理すべきフッ化物単結晶のインゴットを得ることができる。
スカベンジャーとしては、上述のフッ化亜鉛に限定されず、一般的に知られている抗酸化物質を使用できる。フッ素原子を有するスカベンジャーとしては、フッ化亜鉛の他、例えばフッ化鉛が挙げられる。ただし、人体に対する安全性がより高いため、フッ化亜鉛がスカベンジャーとして好ましく用いられる。
得られた単結晶インゴットは、結晶育成ルツボ1から取り出される。そして、室温まで冷却された単結晶インゴットは、所定の形状、例えば、図3に断面を示した、実質的に互いに平行である平滑面S及びSを備える円板状に切り出されて、円板状単結晶が準備される。より具体的には、単結晶の結晶育成方向に直交する面が露出するように、単結晶インゴットを切り出して、円板状単結晶として準備してもよい。後述するピットパターンをより確実に形成するためには、種結晶の(111)面に平行な面が平滑面Sとなるように単結晶インゴットを切り出すことが好ましい。
準備された円板状単結晶11は、加熱処理を施すための真空炉の所定位置に配置される。図2は、円板状単結晶11を加熱処理するための装置を示す模式図である。図2に示す真空炉10は、圧力調整可能なように気密性が高くなっている。真空炉10は、円板状単結晶を収容して加熱処理するためのルツボ6と、ルツボ6の周囲に設けられたヒータ8と、真空炉10の内側であってヒータ8の外側に設けられた断熱部材9とを備えている。
ルツボ6は、ルツボ本体6Bと、ルツボ本体6Bの開口部を覆う蓋部材6Aと、ルツボ本体6Bの下部に固定される基台6Cとを備えて構成されている。ルツボ本体6Bは、例えば円筒状であり耐熱性の材料からなる。ルツボ本体6Bが円筒状である場合、蓋部材6Aは円板状であり、同様に耐熱性の材料からなる。基台6Cは、断熱部材9上に載置されており、やはり耐熱性の材料からなる。ルツボ本体6B、蓋部材6A、基台6Cの材料としては、例えば、不純物や空孔が少なく、円板状単結晶11の重量や、基台6Cの場合はその上に載置されているルツボ本体6Bの重量を支えることのできる硬質カーボンが使用できる。
基台Cの上部には多孔質部材7が備えられている。多孔質部材7は、円板状等の板状であり、その主面上に、円板状単結晶11が、平滑面Sと多孔質部材7の主面とが接触するようにして配置される。円板状単結晶11が加熱処理を施されると、単結晶材料であるフッ化物が平滑面Sから揮発するため、揮発したフッ化物を速やかに排出できるよう、多孔質部材7は多孔質状になっている。多孔質部材7の材料としては、例えば、結晶の局所的な加熱を抑制することができる、カーボンフェルト又は多孔質カーボンが用いられる。それらの中では、多孔質部材7の材料として、多孔質カーボンが好ましい。これにより、還元雰囲気での加熱処理に対する耐性が更に高まる。
また、多孔質部材7のかさ密度は、0.50g/cm以下であることが好ましく、0.05〜0.40g/cmであることがより好ましく、0.08〜0.30g/cmであることが更に好ましい。かさ密度が0.50g/cmを超えると、多孔質部材7と接した円板状単結晶11の平滑面から揮発したフッ化物の排出が多孔質部材7により阻害されるため、平滑面S及びSに[111]方位の配向に起因したピットパターンを設けることが困難になる傾向にある。なお、本明細書における「かさ密度」とは多孔質部材の質量をその体積で除算した見かけ比重のことを意味する。
以下、フッ化物単結晶の加熱処理について詳細に説明する。まず、蓋部材6Aを取り外して、上述のようにして切り出された円板状単結晶11をルツボ6内の多孔質部材7の表面上に、平滑面Sが多孔質部材7の表面と対面接触するようにして配置する。次いで、蓋部材6Aをルツボ本体6B上に載置した後、真空炉10の内部を、真空ポンプ10Cによって減圧し、ヒータ8によって加熱する。
このとき、真空炉10内の圧力は10−1Pa以下であることが好ましく、10−2Pa以下であることがより好ましい。真空炉10内の圧力が10−1Paを超えると、円板状単結晶11の、特に多孔質部材7側の平滑面Sから揮発するフッ化物が真空炉10内から排出され難くなり、その平滑面Sにピットパターンを形成するのが困難となる傾向にある。
ヒータ8による加熱は、例えば、まず室温から徐々に昇温し、円板状単結晶11を構成するフッ化物の融点未満である所定温度に達したら、所定時間その所定温度を維持し、その後、冷却することによって行われる。この加熱処理の際の上記所定温度は1000℃以上であるが、1200℃以上であるとより好ましい。この所定温度が1000℃未満であると、円板状単結晶11の平滑面Sに[111]方位に基づくピットパターンが形成され難くなる。
また、所定温度の上限は、円板状単結晶11を構成するフッ化物の融点よりも20〜200℃低いと好ましい。この温度よりも上記所定温度が高くなると、結晶が融解しやすくなる傾向にある。例えば、フッ化物単結晶がフッ化カルシウム単結晶である場合、その融点は1420℃であるから、所定温度は1200〜1400℃であることが好ましい。
加熱処理の際の上記所定時間は、ピットパターンを目視又は顕微鏡で確認できる程度に形成するために、10〜200時間であることが好ましい。
上述の加熱処理が施された円板状単結晶11は、冷却後に真空炉10から取り出され、目視又は顕微鏡により、その平滑面Sにピットパターンが形成されているか否かを確認される。ピットパターンを構成するエッチピットのパターン形状は特に決まっておらず、例えば、円形であったり、楕円形であったりする。また、ピットパターンの配置態様も特に決まっていない。
円板状単結晶11は、その平滑面Sとフッ化物単結晶の(111)面とのなす角度α(図3を参照)が−15〜+15°の角度範囲にあれば、ヒータ8を用いた上記加熱処理により、平滑面Sにピットパターンが形成される。図4は、ピットパターンが形成された円板状単結晶を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるI−I線に沿った断面図である。円板状単結晶12には上述の加熱処理により複数のエッチピット15からなるピットパターンが形成されている。エッチピット15の表面は、その大部分が平面状になっており、その平面部分17が(111)面である。また、複数のエッチピット15が有する平面部分17は互いに平行になっている。この平面部分17と円板状単結晶11の平滑面Sとのなす角度は、図3に示すものと同様にαである。
円板状単結晶12の方位のずれは、例えば、平面部分17と平滑面Sとのなす角度αを測定し、その角度αを決定することによって判別される。あるいは、その角度αが所定の角度範囲内にあるか否かによって判別されてもよい。
そして、エッチピット15の平面部分17と平行な面に沿って円板状単結晶12を切断すると、それにより新たに露出した表面はフッ化物単結晶の(111)面となる。こうして、表面が(111)面であるフッ化物単結晶が得られる。
得られたフッ化物単結晶は、例えば、ステッパー用レンズ材料、レーザー用窓材及びカメラ用レンズとして用いた場合に十分な光学性能を得ることができる。フッ化物単結晶は、これらの用途に適した形状に適宜切り出されればよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、上述の実施形態では、円板状単結晶をルツボ6に収容して加熱処理を行ったが、ルツボ6に代えて、図1に示すルツボ1を用いて加熱処理を行ってもよい。
また、フッ化物単結晶インゴットは、垂直ブリッジマン法により得られるものでなくてもよく、例えば、チョクラルスキー法により得られるものであってもよい。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(単結晶インゴットの作製)
初めに、図1に示すものと同様の真空VB炉を用いて、フッ化カルシウム単結晶のインゴットを作製した。なお、種結晶は[111]方位に配向したものを用いた。
(円板状単結晶に対する加熱処理)
得られたフッ化カルシウム単結晶のインゴットから、結晶の成長方向に直交する面が平滑面となるように、円板状単結晶を切り出した。得られた円板状単結晶の寸法は、直径240mm、厚さ70mmであった。この円板状単結晶の平滑面における結晶方位をX線単結晶方位測定装置(リガク社製、商品名「2991F2」)で分析したところ、その平滑面は[111]方位から2°傾いていることが確認された。すなわち、その平滑面と単結晶の(111)面とのなす角度は2°であった。
次いで、円板状単結晶に対し、図2に示すものと同様の真空炉を用いて、下記のようにして加熱処理を施した。まず、図2に示すルツボ6を用意した。ルツボ本体6B、蓋部材6A及び基台6Cは全て硬質カーボン製の成形品(新日本テクノカーボン社製、商品名「EGS−743」、かさ密度:1.80g/cm)で構成した。また、多孔質部材7として、多孔質カーボン製成形断熱材プレート(日本カーボン社製、商品名「FGL−203」、かさ密度:0.16g/cm)を用いた。
このルツボ6における多孔質部材7の表面上に上述の円板状単結晶を、上記平滑面が多孔質部材7の表面と接触するように載置して、ルツボ6内に円板状単結晶を収容した。続いて、蓋部材6Aでルツボ本体6B内の円板状単結晶を収容した部分を閉じた。次に、円板状単結晶が収容されたルツボ6を、真空炉10の所定位置に設置した。
次いで、真空炉10内を、真空ポンプ10C(ロータリーポンプ及びディヒュージョンポンプ)により10−4Pa以下に減圧した。続いて、ヒータ8により、昇温速度60℃/hで炉内を1400℃まで加熱した。なお、炉内圧力はコールドカソードゲージ(PFEIFFER社製)を用いて制御し、炉内温度はB型熱電対を用いて制御した。
上述のとおり炉内を1400℃まで加熱した後、その温度(最高温度)で100時間保持した。その後、3℃/hの冷却速度で炉内を250℃まで冷却し、更に10℃/hの冷却速度で50℃まで冷却した。次に、ヒータ8の電源を切って、室温まで冷却した。
(ピットパターンの確認)
加熱処理後の円板状単結晶を、ルツボ6から取り出した。次いで、円形状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。多孔質部材に接していない平滑面は、その全面が一様にエッチングされていた。一方、多孔質部材と接していた平滑面には、深さ1〜3mmのピットパターンが形成されていた。その平滑面の顕微鏡写真を図5に示す。図5では、黒色よりも白色に近い部分の方が、より深いエッチピットを形成していた。円板状単結晶の平滑面とエッチピットにおける平面部分とのなす角度を測定したところ2°であった。
最後に、エッチピットにおける平面部分と平行な面に沿って円板状単結晶を切断して、フッ化カルシウム単結晶を得た。
(実施例2)
平滑面における結晶方位をX線単結晶方位測定装置で分析したところ、その平滑面と単結晶の(111)面とのなす角度が5°であった円板状単結晶を用いた以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。加熱処理後の円板状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。多孔質部材に接していない平滑面には、その全面が一様にエッチングされていた。一方、多孔質部材と接していた平滑面は、深さ1〜3mmのピットパターンが形成されていた。
(実施例3)
平滑面における結晶方位をX線単結晶方位測定装置で分析したところ、その平滑面と単結晶の(111)面とのなす角度が7°であった円板状単結晶を用いた以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。加熱処理後の円板状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。多孔質部材に接していない平滑面には、その全面が一様にエッチングされていた。一方、多孔質部材と接していた平滑面は、深さ1〜3mmのピットパターンが形成されていた。
(比較例1)
平滑面における結晶方位をX線単結晶方位測定装置で分析したところ、その平滑面と単結晶の(111)面とのなす角度が16°であった円板状単結晶を用いた以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。加熱処理後の円板状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。多孔質部材と接していた平滑面には、ピットパターンが認められなかった。その平滑面の顕微鏡写真を図6に示す。図6では、全体が黒色に近く、ピットパターンの存在が認められなかった。
(実施例4)
平滑面における結晶方位をX線単結晶方位測定装置で分析したところ、その平滑面と単結晶の(111)面とのなす角度が4°であった円板状単結晶を用い、加熱処理における最高温度を1350℃とした以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。加熱処理後の円板状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。多孔質部材に接していない平滑面には、その全面が一様にエッチングされていた。一方、多孔質部材と接していた平滑面は、深さ1〜3mmのピットパターンが形成されていた。
(実施例5)
平滑面における結晶方位をX線単結晶方位測定装置で分析したところ、その平滑面と単結晶の(111)面とのなす角度が3°であった円板状単結晶を用い、加熱処理における最高温度を1300℃とした以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。加熱処理後の円板状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。多孔質部材に接していない平滑面には、その全面が一様にエッチングされていた。一方、多孔質部材と接していた平滑面は、深さ1〜3mmのピットパターンが形成されていた。
(比較例2)
加熱処理における最高温度を900℃とした以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。加熱処理後の円板状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。多孔質部材と接していた平滑面には、ピットパターンが認められなかった。
(実施例6)
多孔質部材7として、多孔質カーボン製フェルト縫製プレート(日本カーボン社製、商品名「FGT−200」、かさ密度:0.1g/cm)を用いた以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。多孔質部材に接していない平滑面には、その全面が一様にエッチングされていた。一方、多孔質部材と接していた平滑面は、深さ1〜3mmのピットパターンが形成されていた。
(比較例3)
多孔質部材7に代えて、硬質カーボン製の成形プレート(上記「EGS−743」)を用いた以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。加熱処理後の円板状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。硬質カーボン製の成形プレートと接していた平滑面には、ピットパターンが認められなかった。
(比較例4)
平滑面における結晶方位をX線単結晶方位測定装置で分析したところ、その平滑面と単結晶の(111)面とのなす角度が1°であった円板状単結晶を用い、ルツボ本体6B、蓋部材6A及び基台6Cは全てファインカーボン製の成形品(SGL社製、商品名「R6500P」、かさ密度:1.77g/cm)で構成し、多孔質部材7に代えて、ファインカーボン製成形プレート(上記「R6500P」)を用いた以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。加熱処理後の円板状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。ファインカーボン製成形プレートと接していた平滑面には、ピットパターンが認められなかった。
(比較例5)
種結晶Sはその[100]方位が円柱状の側面(柱面)と実質的に平行であり、平滑面における結晶方位をX線単結晶方位測定装置で分析したところ、その平滑面が[100]方位に配向した円板状単結晶を用いた以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。加熱処理後の円板状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。多孔質部材と接していた平滑面には、ピットパターンが認められなかった。
(比較例6)
種結晶Sはその[110]方位が円柱状の側面(柱面)と実質的に平行であり、平滑面における結晶方位をX線単結晶方位測定装置で分析したところ、その平滑面が[110]方位に配向した円板状単結晶を用いた以外は実施例1と同様にして冷却まで行った。加熱処理後の円板状単結晶の平滑面を顕微鏡により観察した。多孔質部材と接していた平滑面には、ピットパターンが認められなかった。
以上の結果を表1にまとめて示す。
Figure 0004872679

ルツボを備えた真空VB炉の概略構造を示す模式図である。 ルツボを備えた真空炉の概略構造を示す模式図である。 円板状フッ化物単結晶を説明するための模式断面図である。 ピットパターンが形成された円板状フッ化物単結晶の模式図である。 円板状フッ化物単結晶の平滑面の顕微鏡写真である。 図5に示したものとは別の円板状フッ化物単結晶の平滑面の顕微鏡写真である。
符号の説明
1、6…ルツボ、2…フッ化物原料、3…容器、4、8…ヒータ、5、9…断熱部材、7…多孔質部材、10…真空炉、11、12…円形状単結晶、15…エッチピット、100…真空VB炉。

Claims (5)

  1. 多孔質部材を備える基台上に、(111)面とのなす角度が−15〜+15°である平滑面を有するフッ化物の単結晶を、前記平滑面と前記多孔質部材とが対面接触するように載置した状態で、熱処理炉内において最高温度が1000℃以上となるように前記単結晶に加熱処理を施して前記平滑面に前記単結晶の方位のずれを判別するためのピットパターンを形成する、フッ化物結晶の熱処理方法。
  2. 前記熱処理炉内の圧力が10−1Pa以下である、請求項1記載の熱処理方法。
  3. 前記多孔質部材のかさ密度が0.50g/cm以下である、請求項1又は2に記載の熱処理方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のフッ化物結晶の熱処理方法によって得られたフッ化物の単結晶におけるピットパターンを観察して、前記単結晶の方位のずれを判別する、フッ化物結晶の判別方法。
  5. 請求項4記載の判別方法によって判別されたフッ化物の単結晶を、その単結晶におけるピットパターンの表面と平行な面に沿って切断する、フッ化物結晶の加工方法。
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