JP4871624B2 - 皮膚を柔軟にするための化粧料 - Google Patents

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本発明は化粧料に関し、更に詳細には、肘乃至は踵の角質硬化部位を柔軟化するための化粧料に好適な化粧料に関する。
肌を健やかに保つためには、肌の最外層である角層の形態を健全に保つことが必要であると言われている。これは角層が肌のバリア機能を担うものであり、角層の形態の乱れは皮膚バリア機能の低下と直結するものであるからである。前記角層の形態の乱れの一例に、肘部や踵部における、角化亢進に伴う角層の肥厚、硬化とひび割れなどの形態変化が挙げられる。このような形態変化は、古い角層が硬化して残存するため、その改善は難しく、
改善に先立っては古い、硬化した角層を除去し、新しい角層組織の新生を促すことが必要であり、新生するまでの間に於いては、角層バリア機能を補完する必要が存する。この様な作業に対しては、角層(角質)溶解剤と保湿剤とを組み合わせて処置することがなされている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照)。これらの技術により、角化亢進に伴う角層の肥厚、硬化とひび割れなどの形態変化の改善はなされたが、十分とは言えない状況にあった。この様な肘や踵の角層の形態変化は、非常に顕著であるため、見た目にも目立ち、その意味からも改善が望まれている。
尿素は角層溶解作用と角層保湿作用を兼ね備えた成分であると言われているが、尿素は皮膚に対して刺激感の惹起作用が存すると言われ、角層バリア機能の低下した人に適用するのは、はばかれる状況も存した。一方、トレハロースには保湿作用が存することが知られている(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8を参照)。しかしながら、これらトレハロースと尿素とを組み合わせて含有する化粧料は全く知られていない。この様な形態で使用することにより、尿素の刺激感の惹起を抑制し、且つ、角層保湿性を向上せしめ、角層形態を正常化させる作用を発揮することは全く知られていなかった。
特開2005−306831号公報 特開2005−220084号公報 特開2005−60234号公報 特開2004−323401号公報 特開2003−81881号公報 特開2005−53817号公報 特開2002−60319号公報 特表2001−513536号公報
本発明は、この様な状況下為されたものであり、肘部や踵部に見られるような、角化亢進を伴う角層の形態変化を刺激感を惹起することなく、改善する手段を提供することを課題とする。
この様な状況に鑑みて、肘部や踵部に見られるような、角化亢進を伴う角層の形態変化を刺激感を惹起することなく、改善する手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)尿素と2)トレハロースとを含有することを特徴とする、乳化剤形の化粧料がその様な機能を備えていることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)1)尿素と2)トレハロースと3)ベヘン酸からなる脂肪酸石鹸とを含有する乳化剤形の化粧料であって、前記尿素の含有量が、化粧料全量に対して0.05〜20質量%であり、かつ前記尿素とトレハロースの質量比が、3:2〜2:3であることを特徴とす
る、乳化剤形の化粧料。
(2)脂肪酸トリグリセライド及び1価アルコールと脂肪酸のエステルの質量の総和が、化粧料全量に対して10質量%以下であることを特徴とする、(1)に記載の乳化剤形の化粧料。
(3)肘乃至は踵の角質硬化部位を柔軟化するためのものであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の化粧料。
(4)尿素を0.05質量%〜20質量%含有する化粧料の皮膚への刺激を抑制する方法であって、前記化粧料に、前記尿素とトレハロースの質量比が3:2〜2:3になるように、前記トレハロースを配合することを特徴とする、化粧料の皮膚への刺激を抑制する方法。
本発明によれば、肘部や踵部に見られるような、角化亢進を伴う角層の形態変化を刺激感を惹起することなく、改善する手段を提供できる。
(1)本発明の化粧料の必須成分である尿素
本発明の化粧料は、尿素を含有することを特徴とする。尿素は前述の如く、化粧料で汎用されている成分であり、化粧料用のグレードの原料も市販されており、その入手も困難は存しない。本発明の化粧料に於いて、尿素は、角化亢進し、硬化した古い角層を軟化させ、古い角層を脱離させて、新しい角層の新生を促し、皮膚バリア機能の保全を行うとともに、角層の水分量を維持する作用を有する。この様な作用を有し、且つ、後記のトレハロースとともに働いて、損傷のある皮膚に於いて刺激を発現しないためには、かかる成分の好ましい含有量は、化粧料全量に対し、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜10質量%である。
(2)本発明の化粧料の必須成分であるトレハロース
本発明の化粧料は、トレハロースを必須成分として含有する。トレハロースは、既に化粧料原料として使用されており、その入手に困難は存せず、例えば、株式会社林原生物化学研究所などより購入することができる。かかる成分は、本発明の化粧料に於いては、角層の水分保持量を上昇させるとともに、尿素が損傷した、或いは、角層バリア機能が十分ではない皮膚に対して、刺激感を惹起するのを防ぐ作用を有する。この様な作用を奏するためには、トレハロースは、尿素との質量比に於いて、1:2〜50:1であることが好ましく、より好ましくは、3:2〜2:3である。これは、尿素に比してトレハロースの質量が少なすぎると、前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、前記効果が頭打ちになり、徒に処方の自由度のみを損なう場合が存するためである。又、化粧料全量に対する質量比としては、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜10質量%である。
(3)本発明の化粧料
本発明の化粧料は、前記必須成分を含有し、乳化剤形であることを特徴とする。乳化剤形としては、水中油乳化剤形であっても、油中水乳化剤形であっても構わないが、水中油乳化剤形であることが好ましく、該水中油乳化剤形に於いては、脂肪酸トリグリセライドや一価アルコールと脂肪酸のエステルなどの極性油剤を10質量%以下の含有量とすることが好ましく、より好ましくは、これらの極性油剤を含有しない形態が好ましい。更に、乳化は脂肪酸石鹸と非イオン界面活性剤の組み合わせで行うことが好ましい。脂肪酸石鹸の含有量は、1〜4質量%が好ましく、2〜3質量%がより好ましい。脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸としては、炭素数16以上のものが好ましく、特にベヘン酸が好ましい。この様な特性の乳化剤形を用いることにより、トレハロースの効果を更に助けて、角化亢進を伴う角層の形態変化を刺激感を惹起することなく改善する作用をより効果的に実現できるからである。
本発明の化粧料に於いては、前記成分以外に、通常化粧料で使用される任意成分を含有
することができる。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4'−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB 6 塩酸塩、ビタミンB 6 トリパルミテート、ビタミンB 6 ジオクタノエート、ビタミンB 2 又はその誘導体、ビタミンB 12 、ビタミンB 15 又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。かかる成分を常法に従って処理することにより、本発明の化粧料は製造することができる。
以下に、実施例を挙げて、更に詳細に本発明について、説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないのは、言うまでもない。
以下に示す処方に従って、本発明の化粧料であるクリームを製造した。即ち、イ、ロ、ハの成分をそれぞれ80℃に加熱し、攪拌下イに徐々にロを加え乳化し、更にハを加え、乳化粒子をホモミキサーで整えた後、攪拌冷却し、クリーム1を得た。
Figure 0004871624
<試験例1>
上記クリーム1及びクリーム1の尿素をトレハロースに置換した比較例1、トレハロースを尿素に置換した比較例2をクリーム1と同様に作成し、ヒトの上腕内側部をストリッピングして作成した損傷皮膚モデルで、刺激の発現の仕方を比較した。ストリッピングは、サージカルテープで20回行った。ここにパッチ絆創膏を貼付し、24時間閉塞パッチを行い、パッチ絆創膏除去後30分に、日本皮膚科学会の本邦パッチテスト基準に従って、皮膚反応を判定した。即ち、++:浮腫又は丘疹を伴う反応、+:明瞭な紅斑を伴う反応、±:疑わしい紅斑を伴う反応、−:無反応の基準である。パネラーは7名を用いた。結果を表2に示す。これより、本発明の化粧料であるクリーム1は、皮膚バリア機能が極端に低下した皮膚でも刺激感を発現することなく使用できることがわかる。
Figure 0004871624
<試験例2>
試験例1の判定後、それぞれの部位の経皮的散逸水分量(TEWL)をテヴァメータ(インテグラル社製)を用いて測定した。それぞれの部位のTEWLの平均と偏差を表3に示す。これより、本発明の化粧料であるクリーム1は優れたTEWL抑制効果を有することがわかる。
Figure 0004871624
<試験例3>
1群5名、3群計15名のパネラーを用い、クリーム1(1群)、比較例1(2群)、比較例2(3群)のサンプルを肘と踵のかさかさ、ひび割れ部に2週間、朝晩2回塗布してもらい、改善度をスコア1:改善せず、スコア2:わずかに改善、スコア3:明瞭に改善、スコア4:著しい改善のスコアを賦して評価してもらった。結果を出現例数として表4に示す。これより、本発明の化粧料は肘や踵のかさかさ、ひび割れ部の改善に優れることがわかる。
Figure 0004871624
<参考例1>
実施例1と同様に下記処方に従って、クリーム2を製造した。このものを試験例1及び2の方法で評価したところ(n=1)、皮膚反応は−であり、TEWLは24.8であった。
Figure 0004871624
実施例1と同様に下記処方に従って、本発明の化粧料であるクリーム3を製造した。このものを試験例1及び2の方法で評価したところ(n=1)、皮膚反応は±であり、TEWLは25.4であった。
Figure 0004871624
実施例1と同様に下記処方に従って、本発明の化粧料であるクリーム4を製造した。
Figure 0004871624
このクリーム4について、試験例3の方法で使用テストを行ったところ、パネラー5名ともスコア4の評価を賦した。又、使用テスト中、刺激感の発現は認められなかった。これにより、本発明の効果が確認された。
本発明は、化粧料に応用できる。

Claims (4)

  1. 1)尿素と2)トレハロースと3)ベヘン酸からなる脂肪酸石鹸とを含有する乳化剤形の化粧料であって、
    前記尿素の含有量が、化粧料全量に対して0.05〜20質量%であり、かつ
    前記尿素と前記トレハロースの質量比が、3:2〜2:3であることを特徴とする、
    乳化剤形の化粧料。
  2. 脂肪酸トリグリセライド及び1価アルコールと脂肪酸のエステルの質量の総和が、化粧料全量に対して10質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料。
  3. 肘乃至は踵の角質硬化部位を柔軟化するためのものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧料。
  4. 尿素を0.05質量%〜20質量%含有する化粧料の皮膚への刺激を抑制する方法であって、
    前記化粧料に、前記尿素とトレハロースの質量比が3:2〜2:3になるように、前記トレハロースを配合することを特徴とする、化粧料の皮膚への刺激を抑制する方法。
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