以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、本発明の緩衝器を概念的に示した図である。図2は、具体的な構成の一例である緩衝器の縦断面図である。図3は、具体的な構成の一例である緩衝器における液圧ダンパ部の拡大縦断面図である。
図1に示すように、緩衝器Dは、バネ下部材Wとバネ上部材Bとの間に懸架バネSと並列に介装されており、基本的には、バネ下部材Wに連結される液圧ダンパEと、液圧ダンパEに直列に連結されるとともにバネ上部材B側に連結されるアクチュエータAと、アクチュエータAとバネ下部材Wとの間に液圧ダンパEと並列に介装され液圧ダンパEを圧縮する方向に附勢するバネ1と液圧ダンパEを伸長させる方向に附勢するバネ2とで構成されている。
アクチュエータAは、直線運動を回転運動に変換する運動変換機構Tと該運動変換機構Tにより変換された回転運動が伝達されるモータMとを備えて構成されており、運動変換機構Tは、具体的にたとえば、螺子軸と螺子ナットで構成される送り螺子機構や、ラックアンドピニオン、ウォームギア等の機構で構成されている。
そして、このアクチュエータAの場合、駆動源をモータMとしているので、運動変換機構Tにおける回転部材、すなわち、送り螺子機構を採用する場合には、螺子軸もしくは螺子ナットのいずれか回転する側の部材の回転運動がモータMに伝達されるようになっており、モータMに電気エネルギを与えて駆動する場合には、直線運動側の部材を直線運動させること、すなわちアクチュエータとしての機能を発揮できる。
また、モータMは、回転部材側から強制的に回転運動が入力されると、誘導起電力に基づいて、回転部材の回転運動を抑制するトルクを発生するので、直線運動側の部材の直線運動を抑制するように機能する。すなわち、この場合には、モータMが外部入力される運動エネルギを回生して電気エネルギに変換することによって発生する回生トルクで上記直線運動側の部材の直線運動を抑制するのである。
したがって、このアクチュエータAは、モータMに積極的にトルクを発生させることによって直線運動側の部材に推力を与えることができ、また、直線運動側の部材が外力によって強制的に運動させられる場合には、モータMが発生する回生トルクで上記運動を抑制することができる。
そして、この緩衝器Dにあっては、上記アクチュエータAが発生する推力およびトルクでバネ上部材Bとバネ下部材Wとの相対移動を抑制することができると同時に、アクチュエータとしての機能を生かしてバネ上部材B、具体的には、車両の車体の姿勢制御も同時に行うことができ、これにより、アクティブサスペンションとしての機能をも発揮することができる。
なお、モータMと運動変換機構Tの回転部材とは回転運動を伝達することが可能に連結されればよいので、モータMと上記回転部材との間に減速機や、回転運動の伝達が可能なリンク、継手等を介装するとしてもよい。
また、モータMとしては、上記した機能を実現するものであればよいので、種々の形式のものを使用可能であり、具体的にたとえば、直流、交流モータ、誘導モータ、同期モータ等を用いることができる。
転じて、液圧ダンパEは、具体的な構成は後述するが、シリンダCと、シリンダC内に摺動自在に挿入されシリンダC内に2つの圧力室を隔成するピストンPと、ピストンPに一端が連結されるロッドRとを備えて構成され、伸縮時に所定の減衰力を発生するようになっている。
この緩衝器において液圧ダンパEは、主として高周波振動を吸収する目的で、アクチュエータAとバネ下部材Wとの間に介装され、具体的には、一端がアクチュエータAの直線運動側の部材に、他端がバネ下部材Wに連結される。
なお、液圧ダンパEとアクチュエータAとの連結に際しては、液圧ダンパEのシリンダCもしくはロッドRの一方をアクチュエータAの直線運動側の部材に連結すればよく、他方、バネ下部材Wには、液圧ダンパEのシリンダCもしくはロッドRの他方を連結する。
したがって、液圧ダンパEは、アクチュエータAとバネ下部材Wとの間にいわゆる正立に介装されても倒立に介装されてもよい。
また、この緩衝器Dにあっては、液圧ダンパEの各圧力室内にそれぞれ収納され液圧ダンパを圧縮させる方向に附勢するバネ1と液圧ダンパを伸長させる方向に附勢するバネ2を備えている。
すなわち、バネ1,2は、アクチュエータAとバネ下部材Wとの間に液圧ダンパEに対して並列に介装されることになり、具体的には、液圧ダンパEのピストンPをこれら2つのバネ1,2で挟持して支持している。
これによりバネ1は、液圧ダンパEを圧縮する方向に附勢しており、また、バネ2は、液圧ダンパEを伸長する方向に附勢している。
これらのバネ1,2は、特にバネ下部材Wの高周波振動をアクチュエータA側に、すなわち、バネ上部材B側に伝達することを抑制する働きをすると同時に、液圧ダンパEのシリンダに対してピストンを決められた位置に戻す作用を発揮する。
すなわち、従来緩衝器のようにシリンダCにピストンPが干渉して車両における乗り心地を悪化させたり、緩衝器の信頼性を低下させたりといった不具合が解消される。
そして、この緩衝器Dにあっては、この液圧ダンパEは、アクチュエータAに対しては直列に連結され、しかも、バネ下部材W側に配置されることになるので、車両が悪路を走行したり、路面の突起に乗り上げたりするような場合にバネ下部材Wに、たとえば、比較的加速度が大きい振動等の高周波振動が入力されると、この振動エネルギを吸収し、上述のバネ1,2による振動伝達抑制効果と相俟って、アクチュエータA側に振動を伝達し難くするように作用する。
ここで、アクチュエータAは、バネ下部材W側から入力される直線運動となる振動を回転運動に変換することになるが、回転する多くの部材を備えており、その慣性質量も大きく高周波振動に対しては慣性モーメントが大きくなること、および、フリクションの影響もあって、バネ下部材W側の振動をバネ上部材Bに伝達しやすくなるという特性があるが、上述のように、液圧ダンパEが該振動を吸収し、さらに、バネ1,2が振動伝達抑制効果を発揮することで、アクチュエータAへの振動の伝達を抑制するので、この緩衝器Dにあっては、このような場合にあっても、車両における乗り心地を悪化させるということがないという効果がある。
さらに、上記したようにアクチュエータAに直接的に高周波振動が作用することが液圧ダンパEによって防止されることから、モータMに特に加速度が大きな高周波振動が伝達されることが抑制されるので、緩衝器Dの主要部品であるアクチュエータAの信頼性が向上し、従来緩衝器の不具合を解消して緩衝器Dの信頼性を向上させることができる。
また、上記構成とすることでアクチュエータAの使用環境を向上することができることから、アクチュエータAのコストを低減することも可能となる。
そして、上記バネ1,2は、液圧ダンパEのシリンダC内に収納されるので、液圧ダンパE外周側等にバネ受けおよび各バネを設けるような構成に比較して、緩衝器Dをスリム化および小型化することができる。
また、バネ1,2が液圧ダンパEのシリンダC内に収納されるので、バネ1,2をコイルスプリングとする場合、バネ1,2の直径を小さくすることができることから、液圧ダンパE外周側に各バネを設ける場合に比較して線材径を小さくしても同じバネ定数を確保することができ、その分、バネ1,2のコストを削減できると共に緩衝器Dを軽量化することが可能である。
また、液圧ダンパE外周側等にバネ受けおよび各バネを設けるような構成とする必要がないので、その分液圧ダンパEの外周径を大きくすることもでき、その場合には、液圧ダンパE内の液体量を多くすることができるから液体の温度変化を抑制して液圧ダンパEの減衰力特性変化を防止することができる。
さらに、液圧ダンパEにアクチュエータAの直線運動が伝達される構成、すなわち、モータMや上記回転部材はバネ上部材B側に連結される構成となっているので、バネ1,2で支持している質量にはモータM等の質量が大きいものは含まれない。
したがって、高周波振動がバネ下部材Wに作用しても、バネ1,2に支持されてバネ上部材Bとバネ下部材Wとの間で振動する総質量を、モータ自体がバネによって支持される従来緩衝器に比較して軽量のものとすることができるので、バネ下部材Wの振動がバネ上部材Bに伝達し難くなり、これにより、さらに乗り心地を向上することが可能となる。
さらに、上記したことから明らかなように、モータM自体がバネ1,2により支持されないことから、モータMの配線等の取りまわしが容易で、かつ、モータM自体に直接高周波振動が入力されないので、配線を傷める心配もない。したがって、この緩衝器Dの車両への搭載性が向上し、より実用的である。
以上では緩衝器Dを概念的に説明したが、以下、緩衝器Dの具体的な構成を示して説明する。
図2に示すように、具体的な構成の緩衝器Dは、基本的には、図示しないバネ下部材に連結される液圧ダンパEと、液圧ダンパEに直列に連結されるとともに図示しないバネ上部材側に連結されるアクチュエータAと、アクチュエータAとバネ下部材との間に液圧ダンパEと並列に介装され液圧ダンパEを圧縮する方向に附勢するバネ1および液圧ダンパEを伸長させる方向に附勢するバネ2とで構成されている。
以下、詳細に説明すると、アクチュエータAは、モータMおよび運動変換機構Tとを備えて構成されている。
モータMは、特には図示しないが、ケース10と、ロータと、ステータとで構成され、ロータは、シャフトと、シャフトの外周に取付けられた磁石とで構成されてケース10にボールベアリング等を介して回転自在に支持されている。
他方、ステータは、ケース10の内周であって上記磁石と対向するように取付けた電機子鉄心たるコアと、コアに巻回した巻線とで構成されており、モータMは、いわゆるブラシレスモータとして構成されている。
ちなみに、図示はしないが、モータMには、回転子の位置検出手段としてホール素子やレゾルバ等の磁気センサや光センサ等が搭載されており、ロータの回転運動の状況(回転角や角速度等)に応じて緩衝器Dが発生する車体と車軸との相対移動を抑制する減衰力あるいは制御力を制御できるようにしてある。
なお、ここではモータMをブラシレスモータとしているが、上述のように、電磁力発生源として使用可能であれば、様々なモータ、たとえばブラシ付直流モータや交流モータ、誘導モータ等も使用可能である。
このモータMは、マウント11を介して図示しない車両のバネ上部材に連結可能とされており、具体的には、マウント11は、下端に鍔部13を備えハット型に形成されるマウント筒12と、鍔部13の図中上面に溶着した環状の防振ゴム14と、防振ゴム14の上端に溶着された環状のプレート15とを備えて構成され、モータMのケース10をマウント筒12の上端に固定し、プレート15を図示しないバネ上部材に固定することで、モータMをバネ上部材に連結するようになっている。
つづいて、運動変換機構Tは、螺子軸16と螺子ナットたるボール螺子ナット17とで構成されている。
そして、螺子軸16は、ボールベアリング18,19を介して、内筒20によって回転自在に支持されている。具体的には、このボールベアリング18,19は、内筒20の図2中上端内に嵌着のキャップ体21に保持されており、さらに、キャップ体21は、外周側に鍔部22が設けられ、この鍔部22は、上述のマウント筒12の上底部に図示しないボルト等で締結されている。
また、螺子軸16の図中上端側には、段部16aが設けられ、この段部16aとナット99とでボールベアリング18,19を挟持しており、内筒20に対して螺子軸16の軸ぶれが防止されている。
そして、螺子軸16の図中上端は、マウント筒12の上底部の軸芯部に形成された付示しない孔に挿通されるとともに、図示しないモータMのロータに連結されており、螺子軸16の回転運動をモータMのロータに伝達可能とされている。
転じて、螺子軸16に螺合されている螺子ナットたるボール螺子ナット17は、内筒20より小径の連繋筒40の図2中上端に回動不能に連結されており、この連携筒40は、外周側に軸方向に沿う複数の溝40aを備えており、この溝40a内には、内筒20の図中下端内周側に形成した突起20aが挿入されており、連繋筒40は、上記溝40aと突起20aとにより内筒20に対して回り止めされている。
つまり、連繋筒40に連結されたボール螺子ナット17は、内筒20に対して回り止めされることになる。
この具体的な緩衝器DにおけるアクチュエータAは、上記したように、モータM、螺子軸16、内筒20、ボール螺子ナット17および連繋筒40で構成され、マウント11によって図示しないバネ上部材に連結されている。
そして、上述したところから、内筒20は、キャップ体21を介してマウント筒12に連結され、さらに、モータMがマウント筒12に固定されているので、モータMが回転駆動させられると、螺子軸16が回転するが、ボール螺子ナット17が内筒20に対して回り止めされているので、ボール螺子ナット17は図中上下方向の直線運動を呈することになる。
逆に、ボール螺子ナット17が螺子軸16に対し図中上下方向の直線運動を呈すると、ボール螺子ナット17は、連繋筒40および内筒20により回転運動が規制されているので、螺子軸16は強制的に回転駆動され、モータMのロータが強制的に回転運動せしめられることになる。
ここで、ボール螺子ナット17が外力を受けて強制的に直線運動を呈する場合には、上記したように、モータMのロータが強制的に回転運動せしめられることから、モータMの巻線には、誘導起電力が生じて回生電流が流れ、モータMはロータの回転を抑制する電磁力を発生する。
つまり、該巻線に誘導起電力を発生させることよりモータMにエネルギ回生させて電磁力を発生させ、モータMのロータには電磁力によるトルクが作用し、上記トルクがロータの回転運動を抑制することとなる。
そして、このロータの回転を抑制するトルクは、運動変換機構Tによってボール螺子ナット17の直線運動を抑制する力、緩衝器Dにおいては減衰力として作用することになる。
したがって、アクチュエータAは、モータMを駆動するとボール螺子ナット17に直線方向の推進力を与えるアクチュエータとして機能するとともに、ボール螺子ナット17の直線運動を抑制する機能を備えている。
なお、マウント11は、上述したものに限られず、他の構成をとることも可能である、つまり、マウントとして機能する限りにおいて他の構成および形状としても差し支えない。
そして、上記内筒20は、その外周側に配在の外筒60内に軸受63を介して摺動自在に挿入されている。
また、外筒60は、その中間部外周の所定の位置に車両のバネ上部材の質量を支持する懸架バネSの下端を支承する懸架バネ受け100を備え、懸架バネSは、図2に示すように、防振ゴム14の外周側下部に設けた窪み14aと、上記懸架バネ受け100との間に介装されている。
このように構成することで、車両に過度のバンピングが生じても懸架バネSの上端を防振ゴム14で受けているので、バネ上部材側への伝達される振動を柔らかく吸収して車両における乗り心地を向上できるようになっている。
さらに、上述のように外筒60の上端内周には、環状の軸受63が配在されており、内筒20の外筒60に対する軸ぶれが防止され、また、外筒60の上端開口部には、筒状のストッパ部材66が嵌着されこのストッパ部材66の内周側に配在の環状のダストシール67が内筒20の外周と外筒60との間をシールして、外筒60と内筒20で形成される空間内に、すなわち、緩衝器D内への埃、塵、雨水等の侵入が防止され、緩衝器Dの主要部材である螺子軸16、ボール螺子ナット17やモータMの品質劣化が防止され、緩衝器Dの信頼性を向上させている。
さらに、上記螺子軸16とボール螺子ナット17は、内筒20および外筒60内に収容されているので、外部からの飛び石等の干渉を受けないので、この点で緩衝器Dの信頼性が向上されている。
また、上記ストッパ部材66の上端は、この緩衝器Dが収縮して任意の長さとなると、内筒20の図1中上端外周側に設けた蛇腹筒状のバンプストッパ25と当接するようになっており、緩衝器Dの収縮時の衝撃を緩和できるようになっている。とともに、また、螺子軸16の下端が後述する液圧ダンパEのロッド32の上端に衝突、すなわち、緩衝器Dのいわゆる底付きが防止され、緩衝器Dの最収縮時における車両における乗り心地が向上される。
そして、外筒60の下端開口部は、後述する液圧ダンパEのリザーバ筒33の外周に圧入等により結合されている。
転じて、液圧ダンパEは、図3に示すように、シリンダ30と、シリンダ30内に摺動自在に挿入されシリンダ30内に図中上下の圧力室35,36を隔成するピストン31と、一端がピストン31に連結されるロッド32と、シリンダ31の外周側を覆うリザーバ筒33とを備えている。
以下、詳しく説明すると、シリンダ30の上端開口部には、環状のヘッド部材37の下部に形成の段部(付示せず)が嵌合されている。そして、このヘッド部材37は、リザーバ筒33の内側に嵌合されるとともに、リザーバ筒33の上端開口部を加締めてリザーバ筒33に固定されており、このヘッド部材37によってシリンダ30とリザーバ筒33が同心に位置決められている。
また、ヘッド部材37の内周側にはロッド32が挿通され、ヘッド部材37の外周側に配在のシール部材41によってヘッド部材37とリザーバ筒33との間がシールされるとともに、ヘッド部材37の内周側に配在のロッド32の外周に摺接する筒状のロッドガイド38と、同じくロッド32の外周に摺接してロッド32とヘッド部材37との間をシールするシール部材42が設けられ、リザーバ筒33とシリンダ30の上端側が液密に封止されている。
他方、シリンダ30の下端には、鍔付円板状のバルブボディ43が嵌合され、リザーバ筒33の下端内周には、リザーバ筒33を液密に封止する有底筒状のボトム部材61が嵌着されている。
上記したバルブボディ43は、鍔の外周側を上記ボトム部材61の内周に当接させてあり、シリンダ30の下端に嵌合されているので、リザーバ筒33とシリンダ30を同心に位置決めている。
そして、リザーバ筒33の中間部外周は、上述の通り、外筒60の下端開口部に結合され、また、上記ボトム部材61は、車両のバネ下部材へ緩衝器Dを連結可能なアイ型ブラケット64を備えており、このアイ型ブラケット64と上記マウント10によって緩衝器Dは、懸架バネSに対して並列に配置されてバネ上部材とバネ下部材との間に介装される。
また、バルブボディ43は、底部に設けた凹部43aと、この凹部43aと圧力室36とを連通する通路51,52と、各通路51,52の途中に設けた減衰力発生要素53,54と、凹部43aと鍔の外周側とを連通する切欠43bとを備えている。
また、ピストン31は、圧力室35と圧力室36とを連通する通路55,56と、各通路55,56の途中に設けた減衰力発生要素57,58とを備えて構成されている。
そして、ロッド32の図中上端は連繋筒40の下端側に連結され、また、ロッド32の図中上端近傍には環状のクッション部材70が設けられ、このクッション部材70は、液圧ダンパEが最圧縮する時にヘッド部材37の図中上端に当接して、ロッド32のシリンダ30側への移動を規制するとともに、連繋筒40とシリンダ30との直接衝突を防止し衝撃を緩和する。
さらに、ロッド32のピストン31を挟んで両側には、ロッド32に対して回転可能な環状のバネ受け45,46が設けられ、バルブボディ43の上端側にもバネ受け47が設けられており、上記バネ受け45とヘッド部材37との間にはバネ1が介装されるとともに、バネ受け46,47間にもバネ2が介装されている。
つまり、バネ1は、圧力室35内に収納され、ピストン31を図中下方に附勢、すなわち、液圧ダンパEを圧縮する方向に附勢しており、他方、バネ2は、圧力室36内に収納され、ピストン31を図中上方に附勢、すなわち、液圧ダンパEを伸長する方向に附勢している。
したがって、ピストン31は、上記バネ1,2によって図中上下方向から附勢される状態となり、これらバネ1,2によりシリンダ30に対して軸方向に位置決めがなされることになり、中立位置に維持される。
また、上記バネ1,2で弾性支承する質量は、連繋筒40ボール螺子ナット17、液圧ダンパEのロッド32およびピストン31となり、負担する質量が従来緩衝器に比較して軽量となる。
このように、バネ1,2は、液圧ダンパE内に収納されるから、緩衝器Dの全長に影響することがないという点で非常に有利である。
ここで、バネ受け45,46がロッド32に対して回転可能なように取り付けられている利点について説明する。いま液圧ダンパEが伸縮すると、この伸縮に伴い、バネ1,2も伸縮することになるが、伸縮する際にバネ1,2は、周方向に回転する特性を有しているので、バネ受け45,46,47およびヘッド部材37に対して周方向に回転しようとする。
このバネ1,2の回転に対し、バネ受け45,46がロッド32に対して回転が許容されていることから、バネ1,2の回転を妨げることがない。
つまり、バネ1,2は伸縮時にバネ受け45,46と共にロッド32、バネ受け47およびヘッド部材37に対して回転するので、バネ1,2の線条端部がバネ受け45,46,47のバネ1,2を支承する面や、ヘッド部材37におけるバネ1の支承面をかじることがない。
したがって、バネ受け45,46,47およびヘッド部材37を傷つける事がないので、バネ受け45,46,47およびヘッド部材37の劣化を防止でき、ひいては、緩衝器Dの信頼性が向上される。
また、バネ1,2の伸縮時の回転によるトルクは、ロッド32に作用せず、ロッド32を周方向に回転させてしまうことが無いので、ロッド32と連繋筒40との連結が解かれてしまう事態が防止される。
そして、ロッド32にバネ1,2からのトルクが作用しないことから、連繋筒40の溝40aと内筒20の突起20aとの間に必要以上の摩擦力を生じさせず、緩衝器Dの円滑な伸縮を妨げないばかりでなく、該連繋筒40と内筒20の劣化を防止することが可能となる。
したがって、この具体的な緩衝器Dにおける許容手段は、上記バネ受け45,46自体ということになり、このようにバネ受け45,46そのものをロッド32に対して回転自在に取り付けておくことで、簡易、かつ、低コストで、バネ1,2の周方向への回転を許容できる。また、上記したところでは、許容手段をバネ受け45,46としているが、バネ受け47をバルブボディ43に対して回転自在に取り付け、さらには、バネ1とバネ受け45あるいはヘッド部材37との間にワッシャ等の環状部材を介装し、バネ2とバネ受け46,47の一方との間におよびワッシャ等の環状部材を介装して、該環状部材とバネ1,2を共回りさせることで上記バネ1,2の周方向への回転を許容する許容手段としても差し支えない。
また、上記した外筒60の下端開口部と液圧ダンパEのリザーバ筒33との結合を螺合とする場合には、リザーバ筒33を外筒60に対して回動させることによって、外筒60に対してリザーバ筒33を軸方向に進退させることができ、これによって、いわゆる車高調整が可能となるが、車高調整時にあっても、上記したバネ受け45,46がロッド32に対して回転可能とされることで、ロッド32と連繋筒40の結合がとかれる心配が無く、また、該調整時にあってもバネ受け45、46、47およびヘッド部材37ひいては該連繋筒40および内筒20の劣化を防止することが可能となる。
なお、外筒60の下端開口部と液圧ダンパEのリザーバ筒33との結合を螺合とする場合には、リザーバ筒33の外周にナットを螺着し、このナットを外筒60の開口部下端に当接させて締め付けておくことで、リザーバ筒30と外筒60の緩み止め防止を図っておくとよい。
引き続き、液圧ダンパEの構成の説明に戻ると、この液圧ダンパEにおけるシリンダ30内の圧力室35,36には作動油等の液体が充填されるとともに、シリンダ30とリザーバ筒33との間の隙間にも所定量の液体が充填されるが、該隙間44には液面Oを境にして気室Gが形成され、該隙間44はリザーバとして機能する。
したがって、この液圧ダンパEは、いわゆる複筒型として形成されている。無論、液圧ダンパEをいわゆる単筒型として形成するようにしてもよいが、上述したように、液圧ダンパEを複筒型としリザーバをシリンダの外周側に配置した構成とすることにより、液圧ダンパEの全長を短くすることができる利点がある。
この液圧ダンパEにあっては、ロッド32がシリンダ30に対して図中下方に移動すると、ピストン31が下方に移動して圧力室35を拡大し、圧力室36を収縮させる。
このとき、液体は、圧力室36から通路56および減衰力発生要素58を通過して圧力室35へ移動するとともに、シリンダ30内で余剰となるシリンダ30内へのロッド侵入体積分の液体がリザーバとしての隙間44へ通路51および減衰力発生要素53を通過して移動する。
そして、液圧ダンパEは、液体が減衰力発生要素53,58を通過するときに生じる圧力損失に見合った減衰力を発生する。
逆に、ロッド32がシリンダ30に対して図中上方に移動すると、ピストン31が上方に移動して圧力室36を拡大し、圧力室35を収縮させる。
このとき、液体は、圧力室35から通路55および減衰力発生要素57を通過して圧力室36へ移動するとともに、シリンダ30内で不足となるシリンダ30内から退出するロッド32の体積分の液体がリザーバとしての隙間44から通路52および減衰力発生要素54を通過してシリンダ30内に移動する。
この場合には、液圧ダンパEは、液体が減衰力発生要素54,57を通過するときに生じる圧力損失に見合った減衰力を発生する。
なお、減衰力発生要素53,54,57,58については、具体的には、オリフィスやリーフバルブ等を用いればよく、また、所定の減衰作用を呈する限りにおいてそれ以外のものを使用してもよい。
そして、アクチュエータAの連繋筒40は、上述のように、液圧ダンパEのロッド32に連結されていることから、ロッド32に連結されたピストン31が外筒60にリザーバ筒33を介して結合されるシリンダ30に摺接され軸受として機能し連繋筒40の下端側における軸ぶれが防止され、また、外筒60によって軸ぶれが防止される内筒20の突起20aによっても連繋筒40の軸ぶれが防止されるので、結果的に、ボール螺子ナット17に対する螺子軸16の軸ぶれが防止され、これにより、緩衝器Dに横方向からの力が入力されても、ボール螺子ナット17の一部のボール(図示せず)に集中して荷重がかかることを防止でき、上記ボールもしくは螺子軸16の螺子溝の劣化を避けることが可能である。
また、上記ボールもしくは螺子軸16の螺子溝の劣化を防止できるので、螺子軸16のボール螺子ナット17に対する回転および緩衝器Dの伸縮方向への移動の各動作の円滑さを保つことができ、上記各動作の円滑を保てるので、緩衝器Dとしての機能も損なわれず、本構成を採ることによって、この点でも緩衝器Dの信頼性を向上する。
また、液圧ダンパEが複筒型として形成されるため、緩衝器Dの全長を短くすることができ、加えて、バネ1,2が液圧ダンパE内に収納されるので、上述のように、バネ1,2等が緩衝器Dの全長に影響することがないから、複筒型の液圧ダンパEと相俟って、緩衝器Dの全長を最小限に留めることが可能となり、これにより、アクチュエータAに液圧ダンパEを直列に連結して構成される緩衝器Dにあってもストローク確保が容易となるばかりでなく、車両への搭載性も向上する。
そして、上記バネ1,2は、液圧ダンパEのシリンダC内に収納されるので、緩衝器Dをスリム化および小型化することができ、また、バネ1,2の直径を小さくすることができることから、バネ1,2のコストを削減できると共に緩衝器Dを軽量化することが可能である。
またさらに、液圧ダンパE外周側等にバネ受けおよび各バネを設けるような構成とする必要がないので、その分液圧ダンパEの外周径を大きくすることもでき、その場合には、液圧ダンパE内の液体量を多くすることができるから液体の温度変化を抑制して液圧ダンパEの減衰力特性変化を防止することができるとともに、外周径が大きくできる分、液圧ダンパEにおける受圧面積も大きくすることができ、減衰力発生にも有利となる。
さらに、バネ1,2が液圧ダンパE内に収納されているので、緩衝器Dを組み立てる際に、アクチュエータA側と、液圧ダンパE側をそれぞれアッセンブリ化することができる。
すなわち、アクチュエータAは、モータMを含む電気機器であり、液圧ダンパEは油圧機器であるから、生産ラインが異なることになりかねないが、それぞれ、アッセンブリ化できるので、それぞれを別工場で生産するようなことになっても、両者を単に組付けるだけで最終製品である緩衝器Dを製造することができる点で有利であり、また組付け作業も容易となる。
さて、上述のように構成された緩衝器Dにあっては、路面から力を受けて車両のバネ上部材とバネ下部材とが直線相対運動すると、車軸側に連結されるボール螺子ナット17とバネ上部材側に連結される螺子軸16とが直線相対運動を呈し、この相対運動が上記のように螺子軸16の回転運動に変換され、モータMのロータに伝達される。
そして、モータMのロータが回転運動を呈すると、モータM内の巻線が磁石の磁界を横切ることとなり、該巻線に誘導起電力を発生させることよりモータMにエネルギ回生させて電磁力を発生させ、モータMのロータには誘導起電力に起因する電磁力による回転トルクが作用し、上記回転トルクがロータの回転運動を抑制することとなる。
このロータの回転運動を抑制する作用は、上記螺子軸16の回転運動を抑制することとなり、螺子軸16の回転運動が抑制されるのでボール螺子ナット17の直線運動を抑制するように働き、緩衝器Dは、上記電磁力によって、この場合減衰力として働く制御力を発生し、振動エネルギを吸収緩和する。
このとき、積極的に巻線に外部電源から電流供給する場合には、ロータに作用する回転トルクを調節することで緩衝器Dの伸縮を自由に制御、すなわち、緩衝器Dの制御力を発生可能な範囲で自由に制御することが可能であるので、緩衝器Dの減衰特性を可変としたり、緩衝器Dをアクチュエータとして機能させたりすることも可能であり、また、上述のエネルギ回生による減衰力にあわせて緩衝器Dをアクチュエータとして機能させて適切な制御を行う場合には、緩衝器Dをアクティブサスペンションとしても機能させることも可能である。
なお、上述のように積極的にアクチュエータとして機能させる必要が無い場合、すなわち、減衰力の発生させるだけであれば、モータMを外部電源に接続する必要はなく、モータMのロータが強制的に回転させられるときに巻線に生じる誘導起電力により、すなわち、エネルギ回生のみにより発生する電磁力に起因する回転トルクで螺子軸16とボール螺子ナット17との直線相対運動を抑制するとしてもよいことは勿論である。
そして、この緩衝器Dにあっては、バネ下部材側に液圧ダンパEが配置されているので、路面から高周波振動が入力されて、上記したようにアクチュエータAで振動吸収できないような場面にあっても、液圧ダンパEで高周波振動を吸収し、また、バネ1,2によって該振動がバネ上部材側へ伝達されてしまうことを抑制できる。
したがって、具体的な緩衝器Dにあっても、車両が悪路を走行したり、路面の突起に乗り上げたりするような場合にバネ下部材に、たとえば、比較的加速度が大きい振動等の高周波振動が入力された場合にあっても、車両における乗り心地を悪化させるということがないという効果が奏することになる。
さらに、上記許容手段であるバネ受け45,46によりバネ1,2のトルクが連繋筒40側に伝達されず、連繋筒40の溝40aと内筒20の突起20aとの間で生じる摩擦力を抑制することができアクチュエータAの円滑な伸縮運動を妨げないので、振動の吸収、抑制が円滑に行われるから、これにより、車両における乗り心地をより確実に向上できるのである。
ここで、慣性モーメントによる減衰力について少し説明すると、緩衝器DのアクチュエータA側で発生する減衰力は、概ね、螺子軸16の慣性モーメント、モータMのロータの慣性モーメント、ボール螺子ナット17の慣性モーメントによって緩衝器Dの軸方向に作用する力と、モータMの発生する電磁力の総和であり、中でも回転系の慣性モーメントによる力は、モータMのロータの角加速度が、上記緩衝器Dの伸縮運動の加速度に比例することから、緩衝器Dの伸縮運動の加速度に比例して大きくなるが、ロータおよび螺子軸16の慣性モーメントは比較的大きく減衰力に対する影響は無視できない。
そして、この上記ロータおよび螺子軸16の慣性モーメントによる力は、上述の通り上記伸縮運動の加速度に比例することから、路面等から緩衝器Dに入力される緩衝器Dの軸方向の力に対し対向する方向に作用することから、緩衝器DはモータMの電磁力に依存しない減衰力を発生することになり、特に急激な軸方向の力が入力された場合には、より高い減衰力を発生することになり、車両搭乗者にゴツゴツ感を知覚させてしまうこととなる。
したがって、常に電磁力に依存した減衰力に先んじてロータおよび螺子軸16の慣性モーメントによる減衰力が発生することとなり、また、緩衝器Dの伸縮運動の加速度に依存するロータおよび螺子軸16の慣性モーメントにより発生する減衰力は制御しづらいので、ロータおよび螺子軸16の慣性モーメントが小さければ小さいほど、ロータおよび螺子軸16の慣性モーメントの減衰力に対する影響を抑制することができることとなるが、ロータおよび螺子軸16の慣性モーメントによって緩衝器Dの軸方向に作用する力は、上述のように液圧ダンパEおよびバネ1,2によって吸収され、バネ上部材への加速度が大きい振動の伝達が抑制されることから、車両における乗り心地が向上されることになるのである。
さらに、バネ下部材に高周波振動が作用した場合にあっても、バネ1,2で支持している質量は、質量の大きいモータMや螺子軸16等の質量が含まれず、従来緩衝器に比較して軽量となっているので、バネ下部材の振動の入力をバネ上部材へ伝達する力も上記軽量化によって小さくなり、車両における乗り心地を向上できることとなる。
また、バネ1,2で支持する質量が軽量化されて固有振動数も高くなるから、車両搭乗者に特に乗り心地が悪いと感じる領域の周波数で共振してしまう弊害もなく、この点でも車両における乗り心地を向上することが可能となる。
さらに、液圧ダンパEをバネ下側に配置しているので、液圧ダンパEの搭載スペースを車体内側に確保することを要しないので、モータMを特に車体の内側に固定できるので、緩衝器Dの相対運動部分の長さは、緩衝器D全体の長さからモータMの長さを除した長さとなり、緩衝器Dのストロークの確保が容易となる。つまり、モータMが車体の下部、すなわち、車体外方に取付ける場合に比較すると、モータMの長さ分のストロークを長く取ることが可能となる。
また、モータMを車体内側に配置可能であるから、モータMの各電極から延設されるであろう電線(図示せず)を車体内側で取り回すことが可能であり、当該電線を外方の制御装置、制御回路に接続することも容易となり、当該電線は車体内に収納されることとなるので、電線の劣化機会も減ずることが可能となる。
なお、モータMを特に車体の内側に固定しているから、車体側の取付部位の変更なしに、緩衝器Dを車両に搭載することが可能となり、車体側の取付部位を規格化できコスト低減可能となるとともに、フルバウンドした場合の衝撃的な荷重は上記マウント部分を介して車体に伝達されるようにしてあるので、モータMに大きな力が作用してしまうことを防止可能である利点もある。
また、具体的な構成の緩衝器Dにあっても、液圧ダンパEを倒立配置することができ、その場合には、ロッド32を外筒60に、シリンダ30を連繋筒40に連結しておけばよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。