以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態におけるサスペンション装置Sは、直動型のアクチュエータAと、ロッド3とロッド3が出入りするダンパ本体4とを有してロッド3をアクチュエータAに連結した流体圧ダンパDと、ダンパ本体4に対して軸方向に不動とされるアクチュエータ側ばね受5およびダンパ側ばね受6と、前記ロッド3に対して軸方向に不動とされる中間ばね受7と、前記アクチュエータばね受5と前記中間ばね受7との間に圧縮状態で介装されるアクチュエータ側ばね8と、前記中間ばね受7と前記ダンパ側ばね受6との間に圧縮状態で介装されるダンパ側ばね9とを備えて構成されている。
また、このサスペンション装置Sの場合、アクチュエータAの外周に設けたマウント10を介して図示しない車両のばね上部材へ取付可能とされるとともに流体圧ダンパDの図1中下端に設けたアイブラケット11を介して図示しない車両のばね下部材へ取付けて、車両のばね上部材とばね下部材との間に介装することができるようになっている。
さらに、このサスペンション装置Sにあっては、ダンパ本体4の外周に取付けられた筒状のエアピストン12と、アクチュエータAの外周に取付けられた筒状のエアチャンバ13と、これらエアピストン12とエアチャンバ13とに折り返された状態で装着される筒状のダイヤフラム14とを備えてアクチュエータAと流体圧ダンパDの外周に気体が充填されるエア室Gを形成することで、エアばねASをアクチュエータAおよび流体圧ダンパDの外周に設けている。このエアばねASは、ダンパ本体4とアクチュエータAの図1中上下方向となる軸方向の相対移動に対して弾発力を発揮する懸架ばねとして機能するようになっている。なお、エアばねASの代わりにコイルばねを懸架ばねとして、ダンパ本体4とアクチュエータAの間に介装するようにしてもよい。
この実施の形態では、アクチュエータAは、直動部材としての螺子軸1の直線運動を回転部材としてのボール螺子ナット2の回転運動に変換する運動変換機構Tと該運動変換機構Tにおけるボール螺子ナット2に連結されるモータMとを備えて構成されており、ボール螺子ナット2を回転駆動することで螺子軸1を図1中上下方向となる軸方向へ直線運動させる直動型のアクチュエータとされていて、出力軸を螺子軸1としている。
詳しくは、モータMは、ボール螺子ナット2を回転自在に保持するケース15内に収容されて固定され、そのロータをボール螺子ナット2に連結してある。また、ケース15は、その内部に、ボール螺子ナット2の他にボールスプラインナット16を保持している。他方、螺子軸1は、ボールスプラインナット16の内周に挿入されて回り止めされつつ、ボール螺子ナット2内に螺合されている。また、モータMにおけるロータは、図示はしないが、中空構造とされていて、螺子軸1の挿通が許容されていて、螺子軸1は図1中上下方向となる軸方向へ直線運動することが可能となっている。なお、ケース15をモータMの筐体であるフレームに一体化するようにしてもよい。また、螺子軸1の回り止めは、ボールスプラインによる以外の方法を採用することも可能である。
上述したところから理解できるように、このアクチュエータAにあっては、モータMを駆動してボール螺子ナット2を回転させることで螺子軸1を軸方向へ直線運動を呈することができ、反対に、螺子軸1を強制的に直線運動させることで、ボール螺子ナット2を回転運動させることができ、モータMを強制的に回転駆動することもできるようにもなっている。
なお、上記したところでは、モータMを駆動するとボール螺子ナット2が回転して、ボール螺子ナット2に螺合する螺子軸1が図1中上下方向の直線運動を呈することになるが、反対に、螺子軸1をモータMに接続してこれを回転部材とし、ボール螺子ナット2を上下方向へ直線運動を呈するように駆動するようにしてもよい。その場合は、ボール螺子ナット2を流体圧ダンパDに連結することになる。
ケース15の外周には、頂部を有する筒状のエアチャンバ13が設けられており、当該エアチャンバ13の内周には、伸びきりを規制する環状のリバウンドストッパ17が設けられている。
また、この実施の形態にあっては、運動変換機構Tが螺子軸1とボール螺子ナット2とで構成されているが、モータMのロータの回転を回転部材に伝達し直動部材を直線運動させることができればよいので、螺子軸1とボール螺子ナット2の組み合わせ以外にも、回転部材をピニオンギアやウォームギアとして、直動部材をラックとしてもよい。さらに、アクチュエータAは、モータMと運動変換機構Tとで構成されるほか、リニアモータとされてもよいが、運動変換機構Tでギア比を設定できるので、モータMの小型化に寄与でき、アクチュエータの推力設定範囲の自由度が高まるといった利点がある。
流体圧ダンパDは、ダンパ本体4に対してロッド3が出入りする伸縮作動を呈すると所定の減衰力を発揮するようになっており、主として高周波振動を吸収する目的で設けられている。
詳しくは、流体圧ダンパDは、複筒型ダンパとして構成されており、シリンダ18と、シリンダ18内に摺動自在に挿入されるピストン19にて区画される二つの圧力室R1,R2と、シリンダ18の外周を覆う外筒20と、シリンダ18と外筒20との間の環状隙間で形成されるリザーバRと、圧力室R2とリザーバRとを仕切る仕切部材23とを備えたダンパ本体4と、ピストン19に連結されてシリンダ18内に移動自在に挿入されるロッド3とを備えて構成されている。圧力室R1,R2には、流体が充填されており、当該流体は、作動油や水、水溶液といった液体の他、気体とされてもよい。なお、この実施の形態の場合、流体が液体とされていてリザーバRからシリンダ18内へ液体を供給或いはシリンダ18からリザーバRへ液体を排出することで、シリンダ18内の液体の温度変化による体積変化やロッド3がシリンダ18内に出入りする体積を補償しているが、流体を気体とする場合には、リザーバRを廃止することができる。
そして、ピストン19には、圧力室R1と圧力室R2を連通する通路19a,19bと、各通路19a,19bのそれぞれに設けた減衰弁21,22が設けられている。減衰弁21は、通路19aを図1中上方側の圧力室R1から下方側の圧力室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定するとともに、通路19aを通過する液体の流れに抵抗を与えるようになっている。反対に、減衰弁22は、通路19bを圧力室R2から圧力室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定するとともに、通路19bを通過する液体の流れに抵抗を与えるようになっている。
また、仕切部材23には、圧力室R2とリザーバRとを連通する通路23a,23bと、通路23aに設けた減衰弁24と、通路23bに設けた逆止弁25とが設けられている。減衰弁24は、通路23aを圧力室R2からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定するとともに、通路23aを通過する液体の流れに抵抗を与えるようになっている。反対に、逆止弁25は、通路23bをリザーバRから圧力室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定するとともに、通路23bを通過する液体の流れに殆ど抵抗を与えないようになっている。
このように構成された流体圧ダンパDは、ロッド3がダンパ本体4に対して図1中上方向に移動する伸長時には、ピストン19によって圧縮される圧力室R1から拡大する圧力室R2へ向かう液体の流れに減衰弁21で抵抗を与え、圧力室R1と圧力室R2に差圧を生じさせ、ピストン19に当該差圧を作用させることでロッド3のダンパ本体4に対する移動を抑制する伸側減衰力を発生する。なお、ロッド3がシリンダ18から退出する体積分の液体がシリンダ18内で不足するが、逆止弁25が通路23bを開放して、リザーバRから当該不足分の液体がシリンダ18内に供給される。他方、流体圧ダンパDは、ロッド3がダンパ本体4に対して図1中下方向に移動する圧縮時には、ピストン19によって圧縮される圧力室R2から拡大する圧力室R1へ向かう液体の流れとリザーバRへ向かう液体の流れに減衰弁22,24で抵抗を与え、圧力室R2と圧力室R1に差圧を生じさせ、ピストン19に当該差圧を作用させることでロッド3のダンパ本体4に対する移動を抑制する圧側減衰力を発生する。なお、この場合、流体圧ダンパDは、リザーバRを備えていて、減衰弁24で圧側減衰力を発揮することが可能であるから、減衰弁22を圧力室R2から圧力室R1へ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁してもよい。また、流体圧ダンパDの構造は、一例であって上記した複筒型ダンパとして構成されるほか、たとえば、ダンパ本体4が外筒を備えずシリンダのみを備える単筒型ダンパ等とされてもよい。
このように、本実施の形態のサスペンション装置Sは、慣性モーメントが大きいモータMを備えており、高周波振動の入力に対して伸縮しにくく振動を伝達しやすくなるという特性があるが、上述のように流体圧ダンパDを運動変換機構Tに直列連結しており、比較的加速度が大きい振動等の高周波振動の入力に対して、流体圧ダンパDで振動エネルギを吸収して、アクチュエータA側へ振動が伝達することを抑制することができるようになっている。なお、図示したところでは、流体圧ダンパDのロッド3をアクチュエータAに連結しているが、ダンパ本体4をアクチュエータAに連結するようにしてもよい。
また、流体圧ダンパDのダンパ本体4の外周には、ダンパ本体4の外周を覆うエアピストン12が設けられている。エアピストン12は、ダンパ本体4の外周に装着される環状の基部12aと、基部12aの外周から立ち上がる筒部12bとを備えており、当該筒部12bの内周には、アクチュエータ側ばね受5が装着されている。なお、筒部12bの外径は上記したエアチャンバ13の内径より小径とされて、エアチャンバ13と干渉することなくエアチャンバ13内に出入りすることができるようになっている。
アクチュエータ側ばね受5は、環状の座5aと、座5aの外周から立ち上がりエアピストン12の筒部12bの内周に嵌合する筒状の嵌合部5bと、座5aの内周から垂下される筒状の内筒5cと備えて構成されている。
そして、このアクチュエータ側ばね受5の嵌合部5bの上端5dは内周へ向けて折り曲げられており、当該嵌合部5bの上端5dをエアピストン12における筒部12bを全周にわたって外周から加締めて形成した環凹状の加締部12cの下端に衝合させることで、エアピストン12に対してアクチュエータ側ばね受5の上方側への移動が規制されていて、加締部12cによってアクチュエータ側ばね受5がエアピストン12に対して位置決められている。また、アクチュエータ側ばね受5のエアピストン12への取付け方法は一例であって、上述したものだけでなく、溶接、圧入、螺合といった種々の取付け方法を採用することができる。
なお、アクチュエータ側ばね受5は、本実施の形態にあっては、エアピストン12の内周に装着されるようになっているが、エアピストン12の他に、別途、ダンパ本体4にアクチュエータ側ばね受5を軸方向に不動に設けることができる筒等を設けてもよいが、エアピストン12にアクチュエータ側ばね受5をダンパ本体4へ取付ける機能を集約することで部品点数を削減できるとともに、サスペンション装置Sの無用な大型化を避けることができる。また、エアばねASをサスペンション装置Sに設けない場合には、ダンパ本体4の外周に筒等といった何らかの部材を設けて、当該部材を介してダンパ本体4にアクチュエータ側ばね受5を軸方向に不動に取付けるようにしてもよい。
さらに、アクチュエータ側ばね受5に設けた内筒5cは、後述するアクチュエータ側ばね8の上端内周に嵌合して、当該アクチュエータ側ばね8を調心する機能を備えているが、特にアクチュエータ側ばね8の調芯の必要が無ければ廃止することも可能である。
また、ダンパ本体4の外周には、ダンパ側ばね受6が装着されていて、ダンパ側ばね受6はダンパ本体4に軸方向に不動とされており、当該ダンパ側ばね受6と上記アクチュエータ側ばね受5との間には、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9とが直列に圧縮状態で介装されている。ダンパ側ばね受6は、ダンパ本体4の外周に装着されているが、この実施の形態の場合、エアピストン12を備えているのでエアピストン12の基部12aをダンパ側ばね受として機能させたり、エアピストン12の内周にダンパ側ばね受を設けるようにしてもよい。
なお、このようにアクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9がアクチュエータ側ばね受5とダンパ側ばね受6との間に圧縮状態で介装されると、アクチュエータ側ばね受5は、常に図1中上方側へ附勢される状態となるが、上述のように加締部12cにて上方への移動が規制されるので、エアピストン12に対して図1中上下方向となる軸方向に不動とされる。なお、アクチュエータ側ばね受5の形状は、一例であってこれに限定されるものではないが、アクチュエータ側ばね受5がアクチュエータ側ばね8の上端を支持する座5aの外周から反ばね側へ向けて立上る嵌合部5bを備えて、当該嵌合部5bが加締部12cによって位置決めされるようにすることで、加締部12cをアクチュエータ側ばね8と径方向にて対向しない範囲に設けることができる。このように、アクチュエータ側ばね8とエアピストン12の筒部12bが縮径されて形成される加締部12cとが径方向にて対向しないので、加締部12cとアクチュエータ側ばね8とが干渉することがなく、その分、エアピストン12を小径にすることができる。
アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9は、ともに、アクチュエータ側ばね受5とダンパ側ばね受6との間に圧縮状態で介装されているのであるが、これらアクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9の間には、流体圧ダンパDのロッド3の上端に固定される中間ばね受7が介装されている。
中間ばね受7は、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9とで挟持される環状の座部7aと、ロッド3の上端に装着される環状の装着部7bと、座部7aの内周と装着部7bの外周とに接続される円筒部7cとを備えて構成されている。
このようにアクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9で挟持されることによって、中間ばね受7は、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9とが発生する附勢力が釣り合う位置に位置決めされることになる。そして、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9が介装されるアクチュエータ側ばね受5とダンパ側ばね受6がダンパ本体4に軸方向に不動とされ、中間ばね受7がロッド3に軸方向に不動とされていることから、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9によって、ダンパ本体4に対するロッド3の軸方向位置を所定位置に位置決められることになる。なお、サスペンション装置Sは、懸架ばねとしてのエアばねASを備えており、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9は、サスペンション装置Sが車両における車体と車軸との間に介装されても、車体重量を支承することはないが、アクチュエータAにおける直動側の部材の重量を支持することになる。
このように構成されたサスペンション装置Sは、モータMが発生するトルクでボール螺子ナット2を回転駆動することによって螺子軸1を図1中上下方向へ直線運動させることが可能であって、外力の入力に対して、モータMに積極的にトルクを発生させることによって螺子軸1に推力を与えることで螺子軸1の直線運動を抑制することもできる。また、螺子軸1が外力によって強制的に直線運動させられるとボール螺子ナット2に連結されるモータMのロータが回転運動を呈し、モータMは誘導起電力に起因するロータの回転運動を抑制するトルクを発生し、螺子軸1の直線運動を抑制するように機能する。
したがって、このサスペンション装置Sにあっては、単に、螺子軸1の直線運動を抑制する減衰力を発生するばかりではなく、アクチュエータとしても機能することから、このサスペンション装置Sが車両の車体と車軸との間に介装されて使用されると、車両の車体の姿勢制御も同時に行うことができ、これにより、アクティブサスペンションとして機能することができる。
また、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9は、車軸側からサスペンション装置Sに高周波振動が入力されると伸縮して、高周波振動の車体側への伝達を絶縁し、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9に並列される流体圧ダンパDで発生する減衰力で高周波振動を速やかに減衰させる。このように流体圧ダンパD、アクチュエータ側ばね8およびダンパ側ばね9は、協働して高周波振動の車体側への伝達を絶縁しつつ、速やかに振動を吸収する。
また、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9は、ダンパ本体4とロッド3との軸方向相対位置を所定位置へ復帰させるように機能することから、流体圧ダンパDが最伸長あるいは最収縮したままとなり、ピストンがダンパ本体4の上端あるいは下端に干渉して高周波振動を吸収できなくなったり、車両における乗り心地を悪化させたりする事態を回避でき、流体圧ダンパDのストローク余裕を確保してサスペンション装置Sの信頼性を向上させることができる。
なお、所定位置とは、この場合、アクチュエータAの直動側の部材重量とロッド3の重量を支承した状態でアクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9の附勢力の釣り合いにより、ダンパ本体4に対してロッド3が静的に位置決められる軸方向位置であり、サスペンション装置Sの設定によって任意に決定される位置である。
そして、この実施の形態の場合、特に、ダンパ本体4に対するロッド3の軸方向位置が所定位置に位置決められた状態から、ロッド3がダンパ本体4に対して流体圧ダンパDの伸長側となる図1中上方側へ最大限ストロークする際のストローク長と、流体圧ダンパDの収縮側となる図1中下方側へ最大限ストロークする際のストローク長とが異なるように設定されており、より詳しくは、ロッド3の所定位置からの伸長側へのストローク長より収縮側へのストローク長のほうが長くなるように設定されている。
つまり、この実施の形態の場合、図示したように、ピストン19の位置がシリンダ18の中央より上方側へ配置される位置関係となるように、アクチュエータ側ばね8およびダンパ側ばね9によって、ロッド3とダンパ本体4と軸方向に相対的に位置決められていて、この位置関係を所定位置としている。
このように、ピストン19の位置がシリンダ18の中央より上方側へ配置される位置関係となるようにダンパ本体4に対してロッド3を位置決めるに際して、本実施の形態では、同じばね定数に設定されているもののアクチュエータ側ばね8の自由長よりダンパ側ばね9の自由長を長くしてあって、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9をアクチュエータ側ばね受5とダンパ側ばね受6との間に圧縮状態で介装すると、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9と同じ長さだけ縮むものの自由長が異なっているので、アクチュエータ側ばね受5とダンパ側ばね受6を従来のサスペンション装置と同等の位置に設置しても、中間ばね受7を従来のサスペンション装置に比較して上方側へ配置して、ロッド3の所定位置からの伸長側へのストローク長より収縮側へのストローク長のほうが長くなるように設定することができるようになっている。
そして、アクチュエータ側ばね8のばね定数をkとし、ダンパ側ばね9のばね定数をkとすると、ロッド3が所定位置から流体圧ダンパDが伸長側へストロークする場合、アクチュエータ側ばね8がストローク分だけ縮んで、ダンパ側ばね9がストローク分だけ伸長するが、ストロークに対してアクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9は、ストローク量xに対して当該ストロークを抑制するx×(k+k)の附勢力を発揮する。そして、ロッド3が所定位置から流体圧ダンパDが伸長側へ最大限ストロークする場合、アクチュエータ側ばね8が最も圧縮され、ダンパ側ばね9が最も伸長することになる。
反対に、ロッド3が所定位置から流体圧ダンパDが収縮側へストロークする場合、アクチュエータ側ばね8がストローク分だけ伸長して、ダンパ側ばね9がストローク分だけ縮むが、やはり、ストロークに対してアクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9は、ストローク量xに対して当該ストロークを抑制するx×(k+k)の附勢力を発揮する。そして、ロッド3が所定位置から流体圧ダンパDが収縮側へ最大限ストロークする場合、アクチュエータ側ばね8が最も伸長して、ダンパ側ばね9が最も圧縮することになる。
また、図2に示すように、ロッド3の所定位置からの伸長側へのストローク長より収縮側へのストローク長のほうが長いという条件のもと、アクチュエータ側ばね8は、初期縮み長だけ縮んだ状態、つまり、ロッド3が所定位置にある状態から流体圧ダンパDの伸長側へストロークする際の最大ストローク長L1以上縮むことができ、初期縮み長だけ縮んだ状態から流体圧ダンパDの収縮側へストロークする際の最大ストローク長L2以上伸長することができればよい。これに対して、ダンパ側ばね9は、初期縮み長だけ縮んだ状態、つまり、ロッド3が所定位置にある状態から流体圧ダンパDストロークする際の伸長側への最大ストローク長L1以上伸長でき、初期縮み長だけ縮んだ状態から流体圧ダンパDの収縮側へストロークする際の最大ストローク長L2以上縮むことができればよい。これに加えて、ばね定数が等しいので、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9における初期縮み長さが等しくなる。
そうすると、アクチュエータ側ばね8における初期縮み長さをロッド3が所定位置にある状態から流体圧ダンパDの収縮側へストロークする際の最大ストローク長L2以上に設定し、また、初期縮み長だけ縮んだ状態の長さH1から最圧縮された状態の長さである密着長e1を引いた長さがロッド3が所定位置にある状態から流体圧ダンパDの伸長側へストロークする際の最大ストローク長L1以上になるように設定すれば、アクチュエータ側ばね8が中間ばね受7から離間することが無い。これに対して、ダンパ側ばね9における初期縮み長さは、アクチュエータ側ばね8における初期縮み長さと等しくなるという条件から、ロッド3が所定位置にある状態から流体圧ダンパDの伸長側へストロークする際の最大ストローク長L2以上に設定し、また、初期縮み長だけ縮んだ状態の長さH2から最圧縮された状態の長さである密着長e2を引いた長さがロッド3が所定位置にある状態から流体圧ダンパDの収縮側へストロークする際の最大ストローク長L2以上になるように設定すれば、ダンパ側ばね9が中間ばね受7から離間することが無い。
したがって、自由長の短いアクチュエータ側ばね8は、伸長側の最大ストローク長L1に収縮側の最大ストローク長L2を加算した長さ以上を伸縮ストローク長さとして、これに密着長e1に加えた長さとすればよい。対して、自由長の長いダンパ側ばね9は、伸長側と収縮側のいずれにも最大ストローク長L2をストロークする必要があるので、最大ストローク長L2を2倍した長さ以上を伸縮ストローク長さとして、これに密着長e2に加えた長さとすればよい。すなわち、自由長の短いアクチュエータ側ばね8は、流体圧ダンパDの総ストロークL以上の長さを伸縮ストローク長さとして、これに密着長e1に加えた長さとすればよく、自由長の長いダンパ側ばね9は、長い方の最大ストローク長L2の2倍以上の長さを伸縮ストローク長さとして、これに密着長e2に加えた長さとすればよいことになる。また図2から理解できるように、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9を直列配置した総和の長さであるセット長は、ともに、伸長側の最大ストローク長L1に収縮側の最大ストローク長L2を加算した長さ以上を伸縮ストローク長さとして、これに密着長e1,e2に加えた長さとすればよい。
ここで、従来のサスペンション装置と同様に、アクチュエータ側ばねとダンパ側ばねとを同じばね定数で同じ自由長に設定することを考える。この場合にも、アクチュエータ側ばねは、初期縮み長だけ縮んだ状態から流体圧ダンパDの伸長側へストロークする際の最大ストローク長L1以上縮むことができ、初期縮み長だけ縮んだ状態から流体圧ダンパDの収縮側へストロークする際の最大ストローク長L2以上伸長することができればよく、対するダンパ側ばねにあっても初期縮み長だけ縮んだ状態から流体圧ダンパDの伸長側へストロークする際の最大ストローク長L1以上伸長でき、初期縮み長だけ縮んだ状態から流体圧ダンパDの収縮側へストロークする際の最大ストローク長L2以上縮むことができればよい。しかしながら、アクチュエータ側ばねとダンパ側ばねが等しいばね定数で自由長が同じである場合、初期縮み長が等しくなるから、中間ばね受7から離間しないようにするには、アクチュエータ側ばねとダンパ側ばねの初期縮み長を最大ストローク長L1,L2のうち長い方の最大ストローク長以上に設定し、かつ、初期縮み長だけ縮んだ状態の長さから最圧縮された状態の長さである密着長を引いた長さが、ともに、最大ストローク長L1,L2のうち長い方の最大ストローク長以上に設定しなければならない。要するに、アクチュエータ側ばねとダンパ側ばねが等しいばね定数であって自由長も等しい場合、アクチュエータ側ばねとダンパ側ばねのセット長は、少なくとも、最大ストローク長の2倍の長さに密着長を加算した自由長を必要とするのである。
これに対して、アクチュエータ側ばね8のばね定数とダンパ側ばね9のばね定数が同じでも自由長を異なるように設定しておくと、上述したように、少なくとも短い方のアクチュエータ側ばね8のセット長は、流体圧ダンパDの総ストロークLの長さに密着長e1に加えた長さに設定すればよく、最低でもアクチュエータ側ばねとダンパ側ばねの双方を最大ストローク長L2の2倍の長さに密着長を加算したセット長を必要とする従来のサスペンション装置と比較して、セット長における無駄の発生を抑制できセット長を短くすることができるのである。
そして、アクチュエータ側ばね8の自由長とダンパ側ばね9の自由長に差を持たせることによって、従来のサスペンション装置と同じ位置にアクチュエータ側ばね受5とダンパ側ばね受6を設けておきながら、ダンパ本体4に対するロッド3の所定位置を流体圧ダンパDの全ストロークの中心からダンパ本体4側へもロッド3側へも偏心させた位置に設定することが可能であり、流体圧ダンパDの伸長側のストローク長と収縮側のストローク長を異ならしめることができる。
また、従来のサスペンション装置では、上述したように、アクチュエータ側ばねとダンパ側ばねが、最低でも最大ストローク長の2倍の長さに密着長を加算したセット長を必要とし、アクチュエータ側ばね受とダンパ側ばね受との中点にロッド3の所定位置が位置決められるので、たとえば、流体圧ダンパDの収縮側のストローク長を伸長側より長くとることを考えると、必然にアクチュエータ側ばね受とダンパ側ばね受とをアクチュエータA側へ寄せて設置することになってアクチュエータ側ばね受がボールスプラインナット等に干渉する場合があり、ばね受を大径に設定しなければ収縮側のストローク長を自由に設定できない問題があるが、本実施の形態のサスペンション装置では、従来のサスペンション装置に比較して、アクチュエータ側ばね受5をアクチュエータA側へ寄せずともよいので、このような問題が生じにくいことが解かる。
換言すれば、アクチュエータ側ばね受5とダンパ側ばね受6の設置位置を変更せずとも、流体圧ダンパDの伸長側と収縮側のストローク長を異ならしめることができるので、アクチュエータ側ばね受5をアクチュエータAにおける部材に干渉しない位置に設けたまま、伸縮双方のストローク長を比較的に自由に設定することができるのである。したがって、流体圧ダンパDにおけるシリンダ長の長大化を招かず、サスペンション装置Sの外径の大型化を招くことのなく、省スペースとしつつも、流体圧ダンパDの伸長側のストローク長と収縮側のストローク長を異ならしめることができる。
また、本実施の形態のサスペンション装置におけるアクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9にあっては、上述したように、等しいばね定数で等しい自由長をもつ従来のサスペンション装置におけるアクチュエータ側ばねとダンパ側ばねに比較して自由長を短くすることも可能であり、アクチュエータ側ばね受5とアクチュエータAにおける部材との干渉の回避とサスペンション装置Sの外径の大型化回避に寄与するとともに、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9における無駄長さを低減できるのでその分重量も軽減されるという効果もある。
さらに、流体圧ダンパDの伸長行程と収縮行程のうち短いストローク長となる行程において縮むばね、すなわち、この実施の形態の場合、アクチュエータ側ばね8となるが、当該アクチュエータ側ばね8について、流体圧ダンパDの総ストローク長さをLとしたとき、自由長を密着長e1に流体圧ダンパDの総ストローク長Lを加えた長さに設定し、他方の流体圧ダンパDの伸長行程と収縮行程のうち長いストローク長となる行程において縮むばね、すなわち、この実施の形態の場合、ダンパ側ばね9となるが、当該ダンパ側ばね9について、自由長を密着長e2に流体圧ダンパDの最大ストローク長L2の2倍の長さを加えた長さに設定すると、双方の自由長を最小に設定することができ、サスペンション装置Sの重量のより一層軽減でき、より一層省スペース化を図ることができる。
また、アクチュエータ側ばね8の自由長とダンパ側ばね9の自由長を異なるものとしておくことで、特に、流体圧ダンパDの伸長側ストローク長と収縮側ストローク長に特に大きな差を設けてダンパ本体4に対してロッド3の所定位置を位置決める際に、アクチュエータ側ばね8とダンパ側ばね9の設計が容易となる利点があるだけでなく、サスペンション装置Sへの組み込み時に、互いを反対に組み込んでしまう作業ミスを減らすことができる。
加えて、上記所定位置からのロッド3のタンパ本体4に対するストローク長のうち、流体圧ダンパDの伸長側より収縮側を長く設定することで、流体圧ダンパDにおける全長の長大化を避けつつも、路面からの突き上げ入力に対してストローク余裕を稼ぐことができ、流体圧ダンパDのいわゆる底付き発生機会と低減でき、車両における乗り心地を向上することができる。また、このように設定することで、中間ばね受7がアクチュエータ側ばね受5へ配置されることになるので、円筒部7cの長さが短くなるか、中間ばね受7の座部7aの位置によっては円筒部7cを廃止して座部7aと装着部7bとが一体化されて単なる環状の一つの部材に集約することができるようになるので、中間ばね受7の重量の軽減、加工性の向上が見込め、場合によっては、中間ばね受7の構造を簡素化することができる利点もある。
なお、上記したところでは、ダンパ本体4に対してアクチュエータ側ばね受5とダンパ側ばね受6とが軸方向に不動とされており、ロッド3に対して中間ばね受7が軸方向に不動とされているが、これとは逆に、ロッド3に対してアクチュエータ側ばね受5とダンパ側ばね受6とを軸方向に不動とし、ダンパ本体4に対して中間ばね受7を軸方向に不動として、ダンパ本体4をアクチュエータAの直動部材に連結するようにしてもよい。また、上記した実施の形態では、流体圧ダンパDの収縮側のストローク長を伸長側のストローク長より長く設定しているが、反対に、ダンパ側ばね9の自由長をアクチュエータ側ばね8の自由長より短くすることで、伸長側のストローク長を収縮側のストローク長より長く設定することもできる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。