JP4866501B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の植物の抽出物を配合することにより、肌のうるおい、ハリ、しわ及びくすみ改善作用に優れた皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生体成分を酸化させる要因として、フリーラジカルや活性酸素がとりあげられ、その悪影響が問題となっている。フリーラジカルや活性酸素は生体内で生じ、コラーゲン等の生体組織を分解あるいは架橋し、また、油脂類を酸化して、細胞に障害を与える過酸化脂質をつくると言われている。この様な障害は、肌のハリの低下、しわ等の老化の原因になると考えられており、老化を防ぐ方法の一つにフリーラジカルや活性酸素を除去する抗酸化剤を配合する方法が知られている。従来、老化防止を目的として用いられる抗酸化剤にはアスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)、3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)等が用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
皮膚の老化防止又は抗酸化を目的として用いられるビタミンCやスーパーオキシドジスムターゼは不安定であり、製剤化が難しく、ビタミンEも効果が充分であるとは言えない。また、合成化合物であるBHT等は安全性に問題があり、配合量に制限があることから、化学合成品ではなく、安定でかつ副作用の少ない天然原料が望まれている。
【0004】
以上のことから、安全であり、しわ及びハリ改善作用に優れるばかりでなく、肌のうるおい、及びくすみ改善作用に効果的な皮膚外用剤が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この様な事情により、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ササゲ、ワサビノキ、バンウコン及びビダララウツの抽出物が、不飽和脂肪酸酸化防止作用及び活性酸素消去作用に優れ、安定性においても優れていることを見出した。さらに、ササゲ、ワサビノキ、バンウコン、ビダララウツから一種又は二種以上選ばれる抽出物を含有する皮膚外用剤が、安全であり、肌のうるおい、ハリ、しわ及びくすみ改善作用に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、ササゲ、ワサビノキ、バンウコン、ビダララウツから一種又は二種以上選ばれる抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【0007】
本発明で用いるササゲ(学名:Vigna sinensis)は、マメ科の植物である。ワサビノキ(学名:Moringa oleifera、別名: Kelor)は、ワサビノキ科の植物である。バンウコン(学名:Kaempfera galanga)は、ショウガ科の植物である。ビダララウツ(学名:Strychnos ligustrina)は、フジウツギ科の植物である。これらは主に東南アジアに分布し、生薬として広く使用されている。
【0008】
本発明で用いる抽出物は、上記の葉、茎、樹皮、花、実、根等の植物体の一部又は全草から抽出したものであるが、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択すれば良い。抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温抽出したものであっても良い。
【0009】
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。
【0010】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過等の処理をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0011】
本発明の皮膚外用剤には、上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、通常の外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を配合することもできる。
【0012】
本発明の皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品及び医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅等の皮膚に適用されるものが挙げられる。
【0013】
本発明に用いる上記抽出物の配合量は、本発明の皮膚外用剤全量に対し、固形物に換算して0.0001重量%以上、好ましくは 0.001〜10重量%が良い。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を越えて配合した場合、効果の増強はみられにくく不経済である。また、添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0014】
【実施例】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、本発明の処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部を示し、%は重量%を示す。
【0015】
製造例1 ササゲの熱水抽出物
ササゲの葉の乾燥物20gに精製水400mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してササゲの熱水抽出物を5.1g得た。
【0016】
製造例2 ササゲの50%エタノール抽出物
ササゲの全草の乾燥物100gに精製水1L及びエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、ササゲの50%エタノール抽出物を18g得た。
【0017】
製造例3 ササゲの1,3-ブチレングリコール抽出物
ササゲの根の乾燥物100gに1,3-ブチレングリコール1.0kgを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、ササゲの1,3-ブチレングリコール抽出物を0.93kg得た。
【0018】
製造例4 ワサビノキの熱水抽出物
ワサビノキの葉の乾燥物20gを製造例1と同様に抽出してワサビノキの熱水抽出物を3.0g得た。
【0019】
製造例5 ワサビノキの50%エタノール抽出物
ワサビノキの全草の乾燥物100gを製造例2と同様に抽出してワサビノキの50%エタノール抽出物を12g得た。
【0020】
製造例6 ワサビノキの1,3-ブチレングリコール抽出物
ワサビノキの根の乾燥物100gを製造例3と同様に抽出してワサビノキの1,3-ブチレングリコール抽出物を0.92kg得た。
【0021】
製造例7 バンウコンの熱水抽出物
バンウコンの地下茎の乾燥物20gを製造例1と同様に抽出してバンウコンの熱水抽出物を3.3g得た。
【0022】
製造例8 バンウコンの50%エタノール抽出物
バンウコンの全草の乾燥物100gを製造例2と同様に抽出してバンウコンの50%エタノール抽出物を23g得た。
【0023】
製造例9 バンウコンの1,3-ブチレングリコール抽出物
バンウコンの地下茎の乾燥物100gを製造例3と同様に抽出してバンウコンの1,3-ブチレングリコール抽出物を0.93kg得た。
【0024】
製造例10 ビダララウツの熱水抽出物
ビダララウツの実(豆)の乾燥物20gを製造例1と同様に抽出してビダララウツの熱水抽出物を3.4g得た。
【0025】
製造例11 ビダララウツの50%エタノール抽出物
ビダララウツの全草の乾燥物100gを製造例2と同様に抽出してビダララウツの50%エタノール抽出物を11g得た。
【0026】
製造例12 ビダララウツの1,3-ブチレングリコール抽出物
ビダララウツの葉の乾燥物100gを製造例3と同様に抽出してビダララウツの1,3-ブチレングリコール抽出物を0.91kg得た。
【0027】
実施例1 クリーム1
Figure 0004866501
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分 1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0028】
実施例2 クリーム2
実施例1において、ササゲの熱水抽出物をワサビノキの熱水抽出物(製造例4)に置き換えたものをクリーム2とした。
【0029】
実施例3 クリーム3
実施例1において、ササゲの熱水抽出物をバンウコンの熱水抽出物(製造例7)に置き換えたものをクリーム3とした。
【0030】
実施例4 クリーム4
実施例1において、ササゲの熱水抽出物をビダララウツの熱水抽出物(製造例10)に置き換えたものをクリーム4とした。
【0031】
比較例1 従来のクリーム
実施例1において、ササゲの熱水抽出物を精製水に置き換えたものを従来のクリームとした。
【0032】
実施例5 化粧水
Figure 0004866501
[製造方法]成分1〜9及び14と、成分10〜13をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0033】
実施例6 乳液
Figure 0004866501
[製造方法]成分2〜7を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分 1及び9〜12を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分8を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0034】
実施例7 ゲル剤
Figure 0004866501
[製造方法]成分2〜5と、成分1及び6〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0035】
実施例8 軟膏
Figure 0004866501
[製造方法]成分3〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7〜9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0036】
実施例9 パック
Figure 0004866501
[製造方法]成分1〜11を均一に溶解し製品とする。
【0037】
実施例10 ファンデーション
Figure 0004866501
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分20に成分10をよく膨潤させ、続いて、成分1及び11〜14を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分15〜18を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分19を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0038】
実施例11 浴用剤
Figure 0004866501
[製造方法]成分1〜5を均一に混合し製品とする。
【0039】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【0040】
実験例1 不飽和脂肪酸酸化防止作用の測定方法(抗酸化作用)
試料0.5mg(固形分当たり)、0.02mg/mLリノール酸・エタノール溶液2mL、エタノール1mL及び0.2Mリン酸緩衝液(pH 7.0)1mLを精製水で全量5mLとする。50℃で8日間反応させ、試験液とし、ロダン鉄法によって吸光度を測定した。すなわち、各試験液0.1mLに75%(v/v)エタノール4.7mL、30%チオシアン酸アンモニウム水溶液0.1mL及び0.02M塩化第一鉄塩酸溶液0.1mLを加え、3分間放置後、波長500nmにおける吸光度(A)を測定した。一方、ブランクとして試料を添加しない試験液を用いて同様に操作し、吸光度(B)を測定した。また、ビタミンEを比較品とした。各試料の不飽和脂肪酸酸化防止作用は以下に示す式より算出した。
不飽和脂肪酸酸化防止率(%)=(1−A÷B)×100
【0041】
これらの試験結果を表1に示した。その結果、ササゲ、ワサビノキ、バンウコン及びビダララウツの抽出物は、優れた不飽和脂肪酸酸化防止作用を示した。
【0042】
【表1】
Figure 0004866501
【0043】
実験例2 活性酸素消去作用(抗酸化作用)
製造例1〜12を試料として用い、活性酸素の一種であるスーパーオキシドの消去作用を測定した。陽性対照として、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を用いた。また、試料の安定性を確認するために、試料の水溶液を95℃で1時間加熱した液を使用して同様に測定を行った。
【0044】
活性酸素消去作用の測定方法
各濃度の試料水溶液0.1mLに0.45mLの発色試薬(0.24mMニトロブルーテトラゾリウム、0.4mMキサンチンを含む0.1Mリン酸緩衝液;pH8.0)と0.45mLの酵素液(0.1U/mLキサンチンオキシダーゼ)を加え、37℃で20分間反応させジホルマザンを生じさせた。この溶液に反応停止液(69mMドデシル硫酸ナトリウム水溶液)1.0mLを加えた後、波長560nmにおける吸光度(At)を測定した。同様に酵素液の代わりにブランク液(0.1Mリン酸緩衝液;pH8.0)を加えて反応させ、吸光度(As)を測定した。一方、コントロールとして試料溶液の代わりに精製水を用いて同様に操作し、吸光度(Bt)及び(Bs)を測定した。各試料の活性酸素消去率は次式より算出した。
活性酸素消去率(%)={1−(As−At)÷(Bs−Bt)}×100
【0045】
これらの試験結果を表2に示した。また、SODは95℃で1時間の加熱により、活性酸素消去作用が大きく減少したが、ササゲ、ワサビノキ、バンウコン及びビダララウツの抽出物は消去作用に変化はなかった。以上のことから、ササゲ、ワサビノキ、バンウコン及びビダララウツの抽出物は、95℃の加熱にも安定で優れた活性酸素消去作用を示した。
【0046】
【表2】
Figure 0004866501
【0047】
実験例3 使用試験
実施例1〜4のクリーム及び比較例1の従来のクリームを用いて、各々女性30人(30〜45才)を対象に1ヶ月間の使用試験を行った。使用後、肌のうるおい、ハリ、しわ及びくすみの改善を総合的に判断するアンケート調査を行った。
【0048】
その結果、当該皮膚外用剤は、肌のうるおい、ハリ、しわ及びくすみの改善に関して優れた作用を示した(表3)。なお、試験期間中、皮膚トラブルは一人もなく、安全性においても問題なかった。また、処方成分の劣化についても問題なかった。
【0049】
【表3】
Figure 0004866501
【0050】
実施例5の化粧水、実施例6の乳液、実施例7のゲル剤、実施例8の軟膏、実施例9のパック、実施例10のファンデーション及び実施例11の浴用剤についても使用試験を行ったところ、安全であり、肌のうるおい、ハリ、しわ及びくすみ改善作用に優れていた。
【0051】
【発明の効果】
以上のことから、本発明のササゲ、ワサビノキ、バンウコン、ビダララウツから一種又は二種以上選ばれる抽出物は、抗酸化作用、安定性に優れていた。さらに、これらの抽出物を含有する皮膚外用剤は、安全であり、肌のうるおい、ハリ、しわ及びくすみ改善作用に優れていた。

Claims (1)

  1. ワサビノキの抽出物およびバンウコンの抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤。
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