JP4865171B2 - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は色素増感型太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球環境保全、化石エネルギー資源の枯渇等の問題に対し、太陽から無尽蔵に降り注ぐ自然光を利用して発電する太陽電池が注目されてきている。現在普及している太陽電池システムでは、結晶系シリコン太陽電池が主流であり、一部アモルファスシリコン系太陽電池が採用されている。しかしながら、これらシリコン系太陽電池には、半導体シリコン原料の不足、エネルギーペイバックができない、コストが高い等の問題を抱えている。こうした中、このような問題が少ない色素増感型太陽電池が近年開発されている(特開平1ー220380等)。この色素増感型太陽電池は、1991年にスイスのローザンヌ大学のグレッツェルらによって開発されたものであり、グレッツェルセルとも呼ばれている。
【0003】
この色素増感型太陽電池の基本的な構造は、光極と、光極に対して所定の間隔を隔てて設けられた導電性を有する対極と、光極と対極との間に封入された電荷輸送層とをもつ。光極は、光透過性をもつ基板と、基板に積層された透明導電層と、透明導電層に積層されたn型の半導体層と、半導体層に担持された色素とを有する。通常、光極の主要素である基板は、無機ガラスを基材としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで色素増感型太陽電池においては、色素や電荷輸送層は一般的に有機物で構成されていることが多いため、しばしば紫外線に対する耐光性が問題となる。紫外線を遮蔽する方策としては、基板となるガラスとして紫外線吸収ガラスを用いる方法が考えられるが、紫外線吸収ガラスは高価であり、色素増感型太陽電池のコストアップを誘発する。また紫外線を遮蔽する方策としては、光極を構成する基板となるガラスに有機系の紫外線遮蔽皮膜を積層する方策も考えられる。
【0005】
有機系の紫外線遮蔽皮膜は、樹脂系の塗布液の塗布、乾燥により形成できるため比較的安価に製造できる。この有機系の紫外線遮蔽皮膜は、樹脂を基材とする皮膜に有機系の紫外線吸収剤または無機系の紫外線吸収剤が含まれているものであり、高温領域に加熱する熱処理が不要となるため、コスト低廉化に有利である。
【0006】
しかしながら、屋外に直接さらされる状態で使用される頻度が高い色素増感型太陽電池では、重要構成要素である色素や電荷輸送層は前述したように有機物で構成されていることが多いため、しばしば紫外線に対する耐光性が課題になる。一般に有機物は、太陽光線の紫外線の影響を受けて劣化する。紫外線とは400nm以下の電磁波のことであり、そのうち290〜400nmの紫外線が地表に到達すると言われている。この紫外線を有機物が吸収すると光化学反応により、分子結合の切断、新しい結合の生成等の光酸化劣化が起こる。
【0007】
更に色素増感型太陽電池では、光極の半導体層は酸化チタン等のペーストを基板に塗布した後に高温領域に加熱して焼成することにより形成されている。このため焼成温度を考慮すると、光極の基板としては有機ガラスではなく、無機ガラスを使用せざるを得ない。この場合、紫外線遮蔽皮膜の基材である樹脂と無機ガラスとの密着性は、必ずしも十分ではない。殊に、紫外線遮蔽皮膜の基材がアクリル樹脂である場合には、アクリル樹脂と無機ガラスとの密着性が必ずしも十分ではないため、紫外線遮蔽皮膜の剥離などのおそれもある。
【0008】
また、色素増感型太陽電池の用途によっては、耐傷付き性、表面における光反射性、埃付着性が問題となる。傷付きが激しいと、色素増感型太陽電池の寿命に影響を与える。表面における光反射性が高いと、色素増感型太陽電池が眩しい感じを与え易い。埃付着が激しいと、入射光の光量が制約され、色素増感型太陽電池の発電性能に影響を与える。
【0009】
本発明は上記した実情に鑑みなされたものであり、第1発明及び第2発明は、無機ガラスを基材とする光極側の基板に対する密着性が高く、且つ、紫外線遮蔽効果に優れ、耐久性に優れた紫外線遮蔽皮膜を有する色素増感型太陽電池を提供することを課題とする。
【0010】
更に紫外線遮蔽皮膜が潤滑硬質微粒子を含む場合には、耐傷付き性を改善できる色素増感型太陽電池を提供することを課題とする。更に紫外線遮蔽皮膜が光散乱粒子を含む場合には、光反射性を抑えた色素増感型太陽電池を提供することを課題とする。更に紫外線遮蔽皮膜が導電物質を含む場合には、埃付着防止性を改善できる色素増感型太陽電池を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る色素増感型太陽電池は、
光透過性をもつ無機ガラスを基材とする基板と、基板に積層された透明導電層と、透明導電層に積層された半導体層と、半導体層に担持された色素とを有する光極と、
光極に対して所定の間隔を隔てて設けられた導電性を有する対極と、
光極と対極との間に封入された電荷輸送層とをもつ色素増感型太陽電池において、
光極を構成する基板には、
紫外線吸収性官能基をもつ樹脂と、樹脂及び基板の密着性を高めるカップリング剤とを含む紫外線遮蔽皮膜が積層されていることを特徴とするものである。
【0012】
第2発明に係る色素増感型太陽電池は、
光透過性をもつ無機ガラスを基材とする基板と、基板に積層された透明導電層と、透明導電層に積層された半導体層と、半導体層に担持された色素とを有する光極と、
光極に対して所定の間隔を隔てて設けられた導電性を有する対極と、
光極と対極との間に封入された電荷輸送層とをもつ色素増感型太陽電池において、
光極を構成する基板には、
紫外線吸収特性をもつ紫外線吸収微粒子と、樹脂と、樹脂及び基板の密着性を高めるカップリング剤とを含む紫外線遮蔽皮膜が積層されていることを特徴とするものである。
【0013】
第1発明及び第2発明に係る色素増感型太陽電池によれば、光極を構成する基板には紫外線遮蔽皮膜が積層されているため、色素等の有機物が紫外線から保護される。更に紫外線遮蔽皮膜は、紫外線遮蔽皮膜の基材である樹脂及び光極の基板の密着性を高めるカップリング剤を含むため、光極の基板と紫外線遮蔽皮膜との密着性が確保されている。
【0014】
【発明の実施の形態】
第1発明及び第2発明に係る色素増感型太陽電池によれば、次の実施形態を必要に応じて採用することができる。
【0015】
・色素増感型太陽電池における光極は、光透過性をもつ無機ガラスを基材とする基板と、基板に積層された透明導電層と、透明導電層に積層された半導体層と、半導体層に担持された色素とを有する。基板は無機ガラスで形成されている。基板に積層される半導体層は、高温領域(一般的には400〜500℃)で焼成して形成されることが多いため、有機ガラスでは熱的問題があり、そこで基板として無機ガラスが採用されている。光極の基板となる無機ガラスについては、透光性を有するものであれば、特に材質等の限定はないが、コスト面を考慮するとソーダガラスが好ましい。対極側の基板としては、ソーダガラスでもよいし、カーボンでも良い。透明導電層としてはITO、酸化錫等を例示できる。半導体層としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化錫等のn型の酸化物半導体を用いることができる。
【0016】
・色素増感型太陽電池における色素は、光照射により自由電子が発生し、光エネルギーを電気エネルギーに変換する役割をもつものである。代表的な色素としては、ルテニウム系金属錯体、オスニウム系金属錯体、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、キサンテン系色素等の少なくとも1種を採用することができ、通常、ルテニウム系金属錯体が用いられている。
【0017】
・色素増感型太陽電池における電荷輸送層は光極と対極との間に封入されており、色素で発生した自由電子が半導体層に注入された後、色素に発生したホールに電子を供給する役割をもつ。この電荷輸送層には、電解液、ゲル電解質、固体電解質等を用いることができる。この電解液の溶媒としてアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の少なくとも1種の有機溶媒を用いることができ、電解液の電解質にはハロゲン系酸化還元種、例えばヨウ素系酸化還元種、ブロム系酸化還元種、塩素系酸化還元種等を用いることができる。
【0018】
・光極を構成する基板には、紫外線遮蔽皮膜が積層されている。紫外線遮蔽皮膜の厚みとしては、紫外線透過率、成膜性等を考慮し、一般的には、1〜100μm、1〜50μmとすることができ、殊に1〜30μm、5〜15μmにすることができるが、これらに限定されるものではない。第1発明に係る色素増感型太陽電池によれば、紫外線遮蔽皮膜は、紫外線吸収性官能基をもつ樹脂と、樹脂及び基板の密着性を高めるカップリング剤とを含む。紫外線遮蔽皮膜の基材となる樹脂としては、アクリル系、フッ素系、シリコーン系が考えられるが、コスト、廃棄物処理等を考慮するとアクリル系が優位である。この場合、紫外線吸収性官能基をもつアクリル樹脂が用いられる。紫外線吸収性官能基をもつアクリル樹脂とは、アクリル樹脂の骨格に有機系の紫外線吸収剤が化学結合しているものである。代表的な有機系の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系があるが、光吸収特性およびアクリル樹脂との結合性を考慮すると、ベンゾトリアゾール系が好ましい。
【0019】
・光極の基板となる無機ガラスと、紫外線遮蔽皮膜の基材とである樹脂とは親和性は、必ずしも高いものではない。カップリング剤は、光極の基板となる無機ガラスと、紫外線遮蔽皮膜の基材である樹脂との密着性を高めるものであり、無機ガラスの表面とアクリル樹脂等の樹脂との密着性を向上させるのに効果がある。カップリング剤は、一般的には、有機物と結合する有機官能基と、無機物と反応する加水分解性基とを分子中に有している。有機官能基としては、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、メタクリロキシ基、メルカプト基等が例示され、特にエポキシ基が好ましい。加水分解性基としてはアルコキシ基、アセトキシ基が例示される。代表的なカップリング剤としてはシラン系カップリング剤がある。シラン系カップリング剤の具体例として、エポキシ基系では、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等があり、アミノ基系では、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等があり、ビニル基系では、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン等、メタクリロキシ基系では、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等があり、メルカプト基系では、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等がある。 場合によってはチタン系カップリング剤でも良い。カップリング剤による密着力向上のメカニズムは次のようである。即ち、カップリング剤のアルコキシル基等の加水分解性基が加水分解を受け、ガラス表面と結合をつくる一方、有機官能基がアクリル樹脂等の樹脂と反応することによって、お互いを強固に結合させる。
【0020】
光極の基板を構成する無機ガラスの表面とアクリル等の樹脂との密着性の確保等を考慮すると、カップリング剤の添加量としては、外付け%では、樹脂成分に対して0.05重量%〜30重量%、0.1重量%〜25重量%、殊に0.1重量%〜20重量%、1重量%〜15重量%が好ましい。上記樹脂成分としては、紫外線吸収性官能基を有する場合には、紫外線吸収性官能基を有する樹脂とする。『外付け%』で0.1%添加するとは、樹脂成分100%に対して0.1重量%添加することをいい、全体で100.1%となることと定義する。従って『外付け%』は重量部に相当する。
【0021】
またカップリング剤の添加量としては、内付け%では、一般的には、0.05重量%〜23重量%、0.1重量%〜20重量%、殊に0.1重量%〜17重量%、1.0重量%〜13重量%とする実施形態を採用することもできる。『内付け%』で0.1%添加するとは、樹脂、カップリング剤等を含む紫外線遮蔽皮膜の全体を100%としたとき、100%内において0.1重量%含まれていることと定義する。カップリング剤の添加量が過剰であれば、紫外線吸収性官能基をもつ樹脂の割合が相対的に減少するため、満足できる紫外線遮蔽効果が得られにくい。カップリング剤の添加量が過少であれば、紫外線吸収性官能基をもつ樹脂と、基板となるガラスとの密着性が低下するおそれがある。
【0022】
・前記したように、光極を構成する基板には、紫外線遮蔽皮膜が積層されている。第2発明に係る色素増感型太陽電池によれば、光極を構成する基板には、紫外線吸収特性をもつ紫外線吸収微粒子と、樹脂と、樹脂及び基板の密着性を高めるカップリング剤とを含む。第2発明に係る樹脂としては、紫外線吸収性官能基を有する樹脂を採用できるが、場合によっては、紫外線吸収性官能基を有しない樹脂でも良い。紫外線吸収特性をもつ紫外線吸収微粒子とは、半導体のエネルギーバンドギャップによる光吸収特性を利用して紫外線を吸収する粒子であり、例えば、酸化セリウム、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型を含む)、酸化亜鉛、酸化鉄等の少なくとも1種を含む金属酸化物微粒子を用いることができる。これら金属酸化物微粒子等の紫外線吸収微粒子の平均粒子径としては、1nm〜100nm、2nm〜50nm、殊に2nm〜20nmが好ましいが、これらに限定されるものではない。紫外線吸収特性をもつ紫外線吸収微粒子の添加量としては、外付け%で、樹脂成分に対して0.05重量%〜20重量%、0.1重量%〜15重量%、殊に0.1重量%〜10重量%、0.5重量%〜5重量%が好ましい。ここで上記樹脂成分としては、紫外線吸収性官能基を有する場合には、紫外線吸収性官能基を有する樹脂成分とする。
【0023】
また場合によっては、紫外線吸収微粒子の添加量としては、内付け%では、樹脂、カップリング剤、紫外線吸収微粒子等を含む紫外線遮蔽皮膜の全体を100%としたとき、一般的には、0.05重量%〜17重量%、0.1重量%〜13重量%、殊に0.1重量%〜9重量%、0.5重量%〜5重量%とする実施形態を採用することもできる。紫外線吸収微粒子の添加量が過剰であれば、カップリング剤の添加量が相対的に減少するため、紫外線遮蔽皮膜の基材である樹脂と、光極の基板となるガラスとの密着性が低下するおそれがある。紫外線吸収微粒子の添加量が過少であれば、満足できる紫外線遮蔽効果が得られにくい。
【0024】
・上記した紫外線遮蔽皮膜は、第1発明では、紫外線吸収性官能基をもつアクリル系樹脂等の樹脂、溶媒、シラン系カップリング剤等のカップリング剤を主要成分とする塗布液を用い、基板となるガラスに塗布液を塗布し、固化させることにより形成することができる。
【0025】
また上記した紫外線遮蔽皮膜は、第2発明では、紫外線吸収特性をもつ金属酸化物微粒子等の紫外線吸収微粒子、アクリル系樹脂等の樹脂(紫外線吸収性官能基を有する樹脂でも良いし、紫外線吸収性官能基を有しない樹脂でも良い)、有機溶媒等の溶媒、シラン系カップリング剤等のカップリング剤を主要成分とする塗布液を用い、基板となるガラスに塗布液を塗布し、固化させることにより形成することができる。
【0026】
・塗布液における溶媒としては、上記アクリル系樹脂等の樹脂とシラン系カップリング剤等のカップリング剤との相溶性が良好であればよく、一般の塗装等に用いられる有機溶剤を採用することができる。例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等がある。溶媒量は特に限定はなく、各コーティング方法に適した粘度で使用することができる。コーティング方法としては、スプレー法、バーコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ディップ法、スピンコート法等の一般的な塗布法を用いることができる。コーティング後、皮膜効果を促進するために、必要に応じて、加熱処理することも可能である。加熱処理温度としては、色素増感型太陽電池の熱劣化が起きない程度の温度であり、望ましくは100℃以下、80℃以下が好ましい。形成した紫外線遮蔽皮膜の厚みは適宜選択できるものの、0.5μm〜100μm、0.5μm〜50μm、殊に3μm〜15μmを採用することができる。上記したように塗布液を、光極の基板となるガラスに塗布し、固化させて紫外線遮蔽皮膜を形成することにより、電池の製造工程中に、電極への不純物混入の恐れがなく、色素および電解液等による紫外線遮蔽皮膜の汚染も防止できる。
【0027】
・紫外線遮蔽皮膜は二酸化シリコン微粒子等の潤滑硬質微粒子を含む実施形態をことができる。二酸化シリコン微粒子等の潤滑硬質微粒子を含む紫外線遮蔽皮膜では、内部の二酸化シリコン微粒子等の潤滑硬質微粒子の効果により、紫外線遮蔽皮膜の表面の滑り性が良くなり、紫外線遮蔽皮膜の耐傷付き性が向上し、紫外線遮蔽皮膜の表面が汚れにくくなり、付いた汚れも取れやすくなるといった効果を付与することができる。上記した効果の確保等を考慮すると、潤滑硬質微粒子の平均粒子径としては、1nm〜100nm、1nm〜50nm、殊に2nm〜20nmが好ましい。上記した効果の確保等を考慮すると、二酸化シリコン微粒子等の潤滑硬質微粒子の添加量としては、外付け%で、樹脂成分に対して0.05重量%〜20重量%、0.1重量%〜10重量%、殊に0.5重量%〜5重量%が好ましい。ここで上記した樹脂成分としては、紫外線吸収性官能基を有する場合には、紫外線吸収性官能基を有する樹脂とする。
【0028】
また場合によっては、潤滑硬質微粒子の添加量としては、紫外線遮蔽皮膜の全体を100%としたとき、内付け%で、一般的には、0.05重量%〜17重量%、0.1重量%〜9重量%、殊に0.5重量%〜5重量%とする実施形態を採用することもできる。
【0029】
二酸化シリコン微粒子等の潤滑硬質微粒子の添加量が過剰であれば、紫外線吸収性官能基をもつ樹脂や紫外線吸収微粒子の割合が相対的に減少するため、満足できる紫外線遮蔽効果が得られにくい。二酸化シリコン微粒子等の硬質微粒子の添加量が過少であれば、紫外線遮蔽皮膜の表面の滑り性、紫外線遮蔽皮膜の耐傷付き性、紫外線遮蔽皮膜における表面汚損防止性が低下するおそれがある。二酸化シリコン微粒子等の潤滑硬質微粒子を紫外線遮蔽皮膜に配合する場合には、前記した塗布液に、二酸化シリコン微粒子等の硬質微粒子を分散させることができる。
【0030】
・紫外線遮蔽皮膜は、光散乱性を有する光散乱粒子を含む実施形態を採用することができる。紫外線遮蔽皮膜が光散乱粒子を含む場合には、紫外線遮蔽皮膜の内部の光散乱粒子の効果により、太陽や照明器具の反射光を色素増感型太陽電池の表面上で散乱させるため、色素増感型太陽電池の表面における眩しさを低減する効果がある。光散乱性を有する光散乱粒子としては、光散乱性を有する二酸化シリコン微粒子及び酸化チタンの少なくとも1種を採用することができる。光散乱粒子の平均粒子径としては、光散乱性等を考慮すると、5nm〜1000nm、5nm〜500nm、殊に20nm〜200nmが好ましい。
【0031】
上記した光散乱粒子による効果の確保を考慮すると、光散乱粒子の添加量としては、外付け%で、樹脂成分に対して0.05重量%〜20重量%、0.1重量%〜10重量%、0.5重量%〜5重量%が好ましい。ここで上記した樹脂成分としては、紫外線吸収性官能基を有する場合には、紫外線吸収性官能基を有する樹脂成分とする。
【0032】
また場合によっては、光散乱粒子の添加量としては、樹脂、光散乱粒子、カップリング剤等を含む紫外線遮蔽皮膜の全体を100%とすると、内付け%で、一般的には、0.05重量%〜17重量%、殊に0.1重量%〜9重量%、0.5重量%〜5重量%とする実施形態を採用することもできる。
【0033】
光散乱粒子の添加量が過剰であれば、紫外線吸収性官能基をもつ樹脂や紫外線吸収微粒子の割合が相対的に減少するため、満足できる紫外線遮蔽効果が得られにくい。光散乱粒子の添加量が過少であれば、光散乱性が低下し、太陽や照明器具の反射光を色素増感型太陽電池の表面上で散乱させにくくなり、色素増感型太陽電池の表面における眩しさを感じやすくなる。光散乱粒子を添加する場合には、上記した塗布液に光散乱粒子に配合することが好ましい。
【0034】
・紫外線遮蔽皮膜は導電性物質を含む実施形態を採用することができる。この場合、紫外線遮蔽皮膜に含まれている導電性物質による帯電防止効果により、紫外線遮蔽皮膜における静電気の帯電を抑制でき、静電気に起因する埃等の付着を抑制でき、色素増感型太陽電池への入射光の光量を確保するのに有利となる。
【0035】
紫外線遮蔽皮膜の表面抵抗率としては適宜選択でき、帯電防止効果の確保等を考慮すると、103Ω/□〜1012Ω/□、殊に105Ω/□〜1011Ω/□を採用することができるが、これに限定されるものではない。導電性物質としては、導電性を有する金属酸化物微粒子、金属粒子が挙げられ、ITO、アンチモンドープ酸化錫、および、これらが被覆された金属酸化物微粒子の少なくとも1種を採用することができる。導電性物質が粒状である場合には、平均粒子径としては、導電性の確保、紫外線遮蔽皮膜に埋設すること等を考慮すると、1nm〜1000nm、2nm〜500nm、2nm〜200nmが好ましい。
【0036】
導電性の確保、紫外線遮蔽皮膜に埋設すること等を考慮すると、導電性物質の添加量としては、外付け%で、樹脂成分に対して1重量%〜100重量%、20重量%〜80重量%、殊に50重量%〜80重量%が好ましい。ここで上記樹脂成分としては、紫外線吸収性官能基を有する場合には、紫外線吸収性官能基を有する樹脂とする。
【0037】
また場合によっては、導電性物質の添加量としては、紫外線遮蔽皮膜の全体を100%とすると、内付け%で、一般的には、1重量%〜50重量%、16重量%〜45重量%、殊に33重量%〜45重量%とする実施形態を採用することもできる。
【0038】
導電性物質の添加量が過剰であれば、紫外線吸収性官能基をもつ樹脂や紫外線吸収微粒子の割合が相対的に減少するため、満足できる紫外線遮蔽効果が得られにくい。導電性物質の添加量が過少であれば、帯電防止効果が低減する。導電性物質を紫外線遮蔽皮膜に配合する場合には、上記した塗布液に、導電性金属酸化物微粒子等の導電物質を分散させることができる。
【0039】
【実施例】
(実施例1)
以下、本発明に係る実施例1について説明する。本実施例に係る色素増感型太陽電池は、図1にその模式図を示すように、透光性を有する光極1と、光極1に対して所定の間隔を隔てて設けられた導電性を有する対極3と、光極1と前記対極3との間に封入された電荷輸送層7とをもつ。光極1は、光透過性をもつ透明な無機ガラスを基材とする第1基板11を用いて構成されている。第1基板11は、光入射側の表面11aと、光入射側の表面11aに背向する背向面11bとをもつ。第1基板11の背向面11bには第1透明導電層10(厚み:1.0μm)が積層されている。更に光極1は、第1基板11の第1透明導電層10に積層されたn型の半導体層13と、半導体層13に担持された色素14とを有する。光極1を構成する第1基板11のうち第1透明導電層10と反対側に位置する光入射側の表面11aには、紫外線遮蔽皮膜5が積層されている。紫外線遮蔽皮膜5は、紫外線吸収性をもつアクリル樹脂と、アクリル樹脂及び第1基板11の密着性を高めるシランカップリング剤とを含む。
【0040】
本実施例に係る色素増感型太陽電池の製造過程について説明する。まず、光極1(アノード電極)の作成方法を説明する。透明導電性を有する第1基板11を用意した。この第1基板11は、透明な無機ガラス(材質:ソーダカラス,厚み:1.8mm)で形成された透明ガラス板と、透明ガラス板の背向面11bに積層された第1透明導電層10とで形成されている。第1透明導電層10はフッ素がドープされた酸化錫の薄膜で形成されている。
【0041】
そして、第1基板11のうち第1透明導電層10が積層された側に、アナターゼ型の酸化チタン層(厚み:10μm)で形成されたn型の半導体層13を積層させた。この場合、アナターゼ型の酸化チタン微粒子(デグサ社製,P25)を主原料としたペーストを用い、このペーストをスクリーン印刷で第1基板11の第1透明導電層10の上に成膜し、その後、高温領域(約450℃)でペーストを所定時間(一般的には1時間)焼成することにより作成した。
【0042】
次に、上記したように半導体層13を積層した第1基板11ごと、ルテニウム金属錯体を主要成分とする溶液(溶媒:エタノール)に浸漬した。浸漬した状態で室温において4日間放置し、色素14として機能するルテニウム金属錯体を半導体層13である酸化チタン層に担持させた。このような方法で、光極1(アノード極)を作成した。
【0043】
次に、対極3の作成方法を説明する。対極3用の導電基材として、光極1(アノード極)の第1基板11と同様の第2基板31を準備した。この第2基板31は、第1基板11と同様に、透明な無機ガラス(材質:ソーダカラス,厚み:1.8mm)で形成された透明ガラス板で構成されており、背向面31bには第2透明導電層30が積層されている。第2基板31の一部にこれを厚み方向に貫通するように電解液注入用の注入口31c(直径1mm)をドリルにて作成した。
【0044】
次に、第2基板31の第2透明導電層30に、触媒微粒子33(白金触媒)を担持させた。担持方法は、白金溶液をスプレー法で第2基板31の第2透明導電層30に塗布し、その後焼成温度(約400℃)で焼成した。このような方法で対極3を作成した。
【0045】
これら光極1(アノード極)と対極3とを向かい合わせた状態で、光極1(アノード極)と対極3とを貼り合わせた。貼り合わせは、対極3を構成する第2基板31の外周部に接着剤(エポキシ接着剤)をシール部40として塗布し、上から光極1(アノード極)を貼り合せ、シール部40を硬化温度(約80℃)に加熱して接着剤を硬化させ、シール部40を形成した。
【0046】
次に、これらの光極1と対極3との隙間に電解質相(ヨウ素系有機電解液)を第2基板31の注入口31cから注入した。注入方法は、注入口31cを電解質相(ヨウ素系有機電解液)に浸漬させた状態で真空引きすることにより、光極1と対極3との隙間の空気が抜け、ゆっくり大気圧状態に戻すことにより、電解質相(ヨウ素系有機電解液)が前記隙間に注入される。注入した後、第2基板31の注入口31cを熱溶着フィルム31fで封止し、電解質相(ヨウ素系有機電解液)を光極1と対極3との隙間に封入し、これにより電荷輸送層7を構成した。上記した方法で色素増感型太陽電池の電池本体を作成した。
【0047】
そして、上記した色素増感型太陽電池の電池本体の光極1の第1基板11の光入射側の表面11aに紫外線遮蔽皮膜5を下記方法で作成した。この場合、ベンゾトリアゾール基(紫外線吸収剤)をもつアクリル樹脂((株)日本触媒製,UV−G13)が酢酸エチル(溶媒)に溶解した溶液を用いた。そして、ベンゾトリアゾール基を有する樹脂成分に対して、エポキシ基付きシランカップリング剤(チッソ(株)社製,S510)をこの溶液に混合した。この場合、エポキシ基付きシランカップリング剤は、外付け%で、ベンゾトリアゾール基を有する樹脂成分に対して5重量%配合されている。この溶液を室温で1時間攪拌することにより塗布液とした。
【0048】
この塗布液をバーコーターで上記電池本体の光極1の第1基板11のうち第1透明導電層10と反対側の表面11aに塗布した。そして室温で溶媒を蒸発させた後、所定温度(80℃)で1時間加熱し、紫外線遮蔽皮膜5を硬化させた。このようにして色素増感型太陽電池を製造した。第1基板11のガラス本体の表面11aに形成した紫外線遮蔽皮膜5の厚みは、約5μmである。
【0049】
上記した配合割合は外付け%で示しているが、外付け%からの計算に基づいて、内付け%で示すと、アクリル樹脂、エポキシ基付きシランカップリング剤を含む紫外線遮蔽皮膜5の全体を100%としたとき、エポキシ基付きシランカップリング剤は4.8重量%含まれている。シランカップリング剤は、光極1の第1基板11となる無機ガラスと、紫外線遮蔽皮膜5の基材である樹脂との密着性を高めるものであり、無機ガラスの表面とアクリル樹脂との密着性を向上させるのに効果がある。図2に示すように、シランカップリング剤は、シリコン元素と、有機物と結合する有機官能基であるエポキシ基と、無機物と反応する加水分解性基であるアルコキシル基とを一分子中に有している。アルコキシル基が加水分解を受けガラス表面と結合をつくる一方、有機官能基であるエポキシ基がアクリル樹脂と反応することによって、お互いを強固に結合させる。これにより紫外線遮蔽皮膜5の基材であるアクリル樹脂と、第1基板11の基材である無機ガラスとの密着性が改善される。
【0050】
上記のようにして形成した紫外線遮蔽皮膜5について、耐紫外線試験、耐湿試験、耐煮沸試験を行い、紫外線遮蔽皮膜5の密着性を評価した。また、この紫外線遮蔽皮膜5を積層した色素増感型太陽電池について屋外放置試験を行い、色素増感型太陽電池の外観および性能を評価した。紫外線照射試験においては、メタルハイライドランプを光源として用い、紫外線強度60mw/cm2 で100時間、紫外線遮蔽皮膜5に向けて照射した。耐湿試験においては、85℃で95%RH(湿度)の恒温槽内で100時間放置した。耐煮沸試験においては、煮沸しているイオン交換水中に紫外線遮蔽皮膜5を2時間放置した。上記した紫外線照射試験及び屋外放置試験では紫外線遮蔽皮膜5を積層した電池を用いた。耐湿試験及び耐煮沸試験では基板(ソーダガラス)に紫外線遮蔽皮膜5を積層したモデル試験片を用いた。試験結果によれば、上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5は各試験において、良好なる密着性を確保していた。また屋外放置試験においても、紫外線遮蔽皮膜5による紫外線遮蔽効果が良好に維持されており、色素増感型太陽電池の性能の維持率が確保されていた。
【0051】
(比較例)
比較例では、実施例1の場合と同様に色素増感型太陽電池の電池本体を作成し、紫外線遮蔽皮膜5を下記方法で電池本体に積層した。即ちベンゾトリアゾール基をもつアクリル樹脂を酢酸エチル(溶媒)に溶解した溶液を塗布液とし、この塗布液をバーコーターで上記電池本体の光極1の第1基板11のうち第1透明導電層10と反対側の表面11aに塗布した。そして、室温で溶媒を蒸発させた後、所定温度(80℃)で1時間加熱し、紫外線遮蔽皮膜を形成した。上記のようにして色素増感型太陽電池を製造する。
【0052】
比較例では、紫外線遮蔽皮膜の配合は実施例1と同様としたが、シランカップリング剤は含まれていない点が異なる。上記のように作成した比較例に係る紫外線遮蔽皮膜について、耐紫外線照射試験、耐湿試験、耐煮沸試験を実施例1の場合と同様に実施した。試験結果によれば、上記のように作成した比較例に係る紫外線遮蔽皮膜は各試験において密着性が充分ではなかった。殊に、耐湿試験、耐煮沸試験によれば、紫外線遮蔽皮膜の剥離が発生した。
【0053】
(実施例2)
本発明に係る実施例2によれば、基本的には実施例1の場合と同様に色素増感型太陽電池の電池本体を作成した。そして、電池本体の光極1の第1基板11の表面11aに紫外線遮蔽皮膜5を下記方法で作成した。即ち、アクリル樹脂が酢酸エチル(溶媒)に溶解した溶液に酸化セリウム微粒子(紫外線吸微粒子;平均粒子径8nm;多木化学(株)社製,W−00)、エポキシ基付きシランカップリング剤を配合した。実施例2に係るアクリル樹脂は、紫外線吸収性官能基であるベンゾトリアゾール基を有する。酸化セリウム微粒子は、紫外線遮吸収特性をもつ紫外線吸収微粒子として機能することができる。この場合ベンゾトリアゾール基を有するアクリル樹脂に対して、酸化セリウム微粒子を外付け%で2重量%、エポキシ基付きシランカップリング剤を外付け%で3重量%を配合した。そしてこれらを超音波分散機で混合し、塗布液とした。この塗布液をバーコーターで電池本体の光極1の第1基板11のうち第1透明導電層10と反対側の光入射側に位置する表面11aに塗布した。そして、所定温度(80℃)で1時間の加熱し、紫外線遮蔽皮膜5を形成した。第1基板11の表面11aに形成した紫外線遮蔽皮膜5の厚みは、約5μmであった。
【0054】
図3は実施例2に係る紫外線遮蔽皮膜5の状況を模式的に示す。紫外線遮蔽皮膜5の内部には酸化セリウム微粒子が分散されて埋設されている。
【0055】
上記した配合割合は外付け%で示しているが、外付け%からの計算に基づいて、内付け%で示すと、アクリル樹脂、酸化セリウム微粒子、エポキシ基付きシランカップリング剤を含む紫外線遮蔽皮膜5の全体を100%としたとき、酸化セリウム微粒子は1.9重量%含まれており、エポキシ基付きシランカップリング剤は2.9重量%含まれている。
【0056】
上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5について、実施例1の場合と同様に耐紫外線試験、耐湿試験、耐煮沸試験を実施した。また、この紫外線遮蔽皮膜5を用いた太陽電池について屋外放置試験を実施した。上記した紫外線照射試験及び屋外放置試験では紫外線遮蔽皮膜5を積層した電池を用いた。耐湿試験及び耐煮沸試験では基板(ソーダガラス)に紫外線遮蔽皮膜5を積層したモデル試験片を用いた。試験結果によれば、上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5は各試験において、良好なる密着性を確保していた。また屋外放置試験においても、紫外線遮蔽皮膜5による紫外線遮蔽効果が良好に維持されており、色素増感型太陽電池の電池性能の維持率が確保された。
【0057】
(実施例3)
本発明に係る実施例3によれば、実施例1の場合と同様に色素増感型太陽電池の電池本体を作成し、紫外線遮蔽皮膜5を下記方法で電池本体に積層した。
【0058】
紫外線遮蔽効果がある官能基(ベンゾトリアゾール基)をもつアクリル樹脂が酢酸エチル(溶媒)に溶解した溶液に、粒径が小さな二酸化シリコン微粒子(潤滑硬質微粒子;平均粒子径12nm;日本アエロジル(株)社製,AEROSIL 200)、エポキシ基付きシランカップリング剤を配合する。この場合、紫外線遮蔽効果がある官能基をもつアクリル樹脂に対して、二酸化シリコン微粒子を外付け%で2重量%、エポキシ基付きシランカップリング剤を外付け%で2重量%配合する。そしてこれを超音波分散機で混合し、塗布液とした。この塗布液をバーコーターで電池本体の光極1の第1基板11のうち第1透明導電層10と反対側の表面11aに塗布し、室温で溶媒を蒸発させた後、所定温度(80℃)で1時間加熱し、紫外線遮蔽皮膜5とした。紫外線遮蔽皮膜5の厚みは5μmであった。
【0059】
上記した割合は外付け%で示しているが、外付け%からの計算に基づいて、内付け%で示すと、アクリル樹脂、二酸化シリコン微粒子、エポキシ基付きシランカップリング剤を含む紫外線遮蔽皮膜5の全体を100%としたとき、二酸化シリコン微粒子は1.8重量%含まれており、エポキシ基付きシランカップリング剤は7.3重量%含まれている。
【0060】
図4は実施例3に係る紫外線遮蔽皮膜5の状況を模式的に示す。紫外線遮蔽皮膜5の内部には二酸化シリコン微粒子(潤滑硬質粒子)が分散されて埋設されている。
【0061】
上記のように形成した紫外線遮蔽皮膜5のヘーズ(JIS−K7105)は5%以下であった。このように形成した紫外線遮蔽皮膜5については、乾燥布で強く擦っても、二酸化シリコンの微粒子の影響で紫外線遮蔽皮膜5に傷が入ることも抑制でき、耐傷付き性が大いに向上していた。更に上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5について、耐紫外線照射試験、耐湿試験、耐煮沸試験を実施例1の場合と同様に実施した。紫外線照射試験及び屋外放置試験では紫外線遮蔽皮膜5を積層した電池を用いた。耐湿試験及び耐煮沸試験では基板(ソーダガラス)に紫外線遮蔽皮膜5を積層したモデル試験片を用いた。試験結果によれば、上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5は各試験において、良好なる密着性を確保した。
【0062】
(実施例4)
本発明に係る実施例4によれば、実施例1の場合と同様に色素増感型太陽電池の電池本体を作成し、紫外線遮蔽皮膜5を下記方法で電池本体に積層した。紫外線遮蔽効果がある官能基(ベンゾトリアゾール基)をもつアクリル樹脂が酢酸エチル(溶媒)に溶解した溶液に、二酸化シリコン微粒子(光散乱粒子,平均粒子径:100nm)、エポキシ基付きシランカップリング剤を配合した。この場合、ベンゾトリアゾール基を有するアクリル樹脂に対して、二酸化シリコン微粒子を外付け%で3重量%、エポキシ基付きシランカップリング剤を外付け%で7重量%配合した。これらを超音波分散機で混合し、塗布液とした。
【0063】
上記した塗布液をバーコーターで電池本体の光極1の第1基板11のうち透明導電層と反対側の表面11aに塗布する。そして、室温で溶媒を蒸発させた後、所定温度(80℃)で1時間加熱し、塗布液を硬化させ、紫外線遮蔽皮膜5を形成する。上記した配合割合は外付け%で示しているが、外付け%からの計算に基づいて、内付け%で示すと、ベンゾトリアゾール基を有するアクリル樹脂、二酸化シリコン微粒子、エポキシ基付きシランカップリング剤を含む紫外線遮蔽皮膜5の全体を100%としたとき、二酸化シリコン微粒子は1.8重量%含まれており、エポキシ基付きシランカップリング剤は7.3重量%含まれている。
【0064】
上記のように形成した紫外線遮蔽皮膜5は厚みは約5μm、ヘーズは約10%であった。図5は実施例4に係る紫外線遮蔽皮膜5の状況を模式的に示す。紫外線遮蔽皮膜5の内部には、粒径が大きい二酸化シリコン微粒子(光散乱粒子)が分散されて埋設されている。
【0065】
上記した紫外線遮蔽皮膜5に含まれている光散乱粒子として機能する二酸化シリコン微粒子による効果により、太陽や照明器具の反射光を色素増感型太陽電池の表面11a上で散乱させるため、色素増感型太陽電池の表面11aにおける眩しさを低減する効果があった。更に、上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5について、耐紫外線照射試験、耐湿試験、耐煮沸試験を実施した。紫外線照射試験及び屋外放置試験では紫外線遮蔽皮膜5を積層した電池を用いた。耐湿試験及び耐煮沸試験では基板(ソーダガラス)に紫外線遮蔽皮膜5を積層したモデル試験片を用いた。試験結果によれば、上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5は各試験において密着性を確保していた。
【0066】
(実施例5)
本発明に係る実施例5によれば、実施例1の場合と同様に色素増感型太陽電池の電池本体を作成し、紫外線遮蔽皮膜5を下記方法で電池本体に積層する。実施例5では、紫外線遮蔽効果がある官能基(ベンゾトリアゾール基)をもつアクリル樹脂が酢酸エチル(溶媒)に溶解した溶液に、アンチモンドープ酸化錫の微粒子(導電物質:平均粒子径20nm;石原産業(株)社製,SN−100P)、エポキシ基付きシランカップリング剤を配合した。この場合、ベンゾトリアゾール基を有するアクリル樹脂に対して、アンチモンドープ酸化錫の微粒子を外付け%で73重量%、エポキシ基付きシランカップリング剤を外付け%で7重量%配合した。これらを超音波分散機で混合し、塗布液とする。この塗布液をバーコーターで太陽電池のガラス表面11aに塗布し、室温で溶媒を蒸発させた後、所定温度(80℃)で1時間の加熱して塗布液を硬化させ、紫外線遮蔽皮膜5を形成した。
【0067】
上記した配合割合は外付け%で示しているが、外付け%からの計算に基づいて、内付け%で示すと、ベンゾトリアゾール基を有するアクリル樹脂、アンチモンドープ酸化錫の微粒子、エポキシ基付きシランカップリング剤を含む紫外線遮蔽皮膜5の全体を100%としたとき、アンチモンドープ酸化錫は40.6重量%含まれており、エポキシ基付きシランカップリング剤は3.9重量%含まれている。図6は実施例5に係る紫外線遮蔽皮膜5の状況を模式的に示す。紫外線遮蔽皮膜5の内部には、アンチモンドープ酸化錫の微粒子(導電物質)が分散されて埋設されている。
【0068】
上記のような紫外線遮蔽皮膜5を形成した色素増感型太陽電池によれば、紫外線遮蔽皮膜5には導電物質としてのアンチモンドープ酸化錫の微粒子が含まれている。このため紫外線遮蔽皮膜5に導電性を付与させることができ、紫外線遮蔽皮膜5における帯電防止を図り得、これにより埃付着を低減できる。
【0069】
本実施例によれば、紫外線遮蔽皮膜5は厚みは約5μm、ヘーズは20%以下、紫外線遮蔽皮膜5の抵抗率は107Ω/口であった。上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5について、耐紫外線照射試験、耐湿試験、耐煮沸試験、屋外放置試験を実施例1の場合と同様に実施した。紫外線照射試験及び屋外放置試験では紫外線遮蔽皮膜5を積層した電池を用いた。耐湿試験及び耐煮沸試験では基板に紫外線遮蔽皮膜を積層したモデル試験片を用いた。試験結果によれば、上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5は各試験において良好なる密着性を確保していた。
【0070】
(実施例6)
本発明に係る実施例6によれば、実施例1の場合と同様に色素増感型太陽電池の電池本体を作成し、紫外線遮蔽皮膜5を下記方法で電池本体の光極1の第1基板11に積層した。即ち、ベンゾトリアゾール基(紫外線吸収剤)をもつアクリル樹脂(樹脂)が酢酸エチル(溶媒)に溶解した溶液を用いた。この場合、ベンゾトリアゾール基を有する樹脂成分に対してエポキシ基付きシランカップリング剤を外付け%で10重量%と、ベンゾトリアゾール基を有する樹脂成分に対してアナターゼ型の酸化チタンの微粒子(光散乱粒子,平均粒子径:30nm)を外付け%で5重量%配合して混合し、1次混合物を形成する。1次混合物では酸化チタンの微粒子はカップリング剤で覆われる。
【0071】
そしてこの1次混合物と前記溶液とを混ぜた後、攪拌することにより塗布液とした。この塗布液をバーコーターで上記電池本体の光極1の第1基板11のガラス本体のうち透明導電層と反対側の表面11aに塗布する。そして室温で溶媒を蒸発させた後、所定温度(80℃)で1時間の加熱し紫外線遮蔽皮膜5を形成した。上記のようにして色素増感型太陽電池を製造した。
【0072】
上記した配合割合は外付け%で示しているが、外付け%からの計算に基づいて、内付け%で示すと、アクリル樹脂、酸化チタンの微粒子、エポキシ基付きシランカップリング剤を含む紫外線遮蔽皮膜5の全体を100%としたとき、酸化チタンは4.3重量%含まれており、エポキシ基付きシランカップリング剤は8.7重量%含まれている。
【0073】
ところで上記した酸化チタンは光散乱効果を有するものの、光触媒性も有している。この場合、酸化チタンは、光触媒機能により有機物の汚れを取り除くことができるものの、紫外線遮蔽皮膜5の基材である樹脂も劣化させるおそれがある。この点本実施例によれば、エポキシ基付きシランカップリング剤と、酸化チタンの微粒子とを予め混合して1次混合物を形成する。1次混合物では酸化チタンの微粒子はカップリング剤で覆われる。その後に、アクリル樹脂を含む溶液とこの1次混合物とを混ぜることにしている。このため紫外線遮蔽皮膜5においても、紫外線遮蔽皮膜5に含まれている酸化チタンの微粒子は、紫外線遮蔽皮膜5の樹脂の内部に存在しつつも、カップリング剤で覆われている頻度が高い。このため、酸化チタンと樹脂との直接的な接触の頻度が低減し、紫外線遮蔽皮膜5の樹脂の劣化を抑えるのに有利である。
【0074】
第1基板11のガラス本体の表面11aに形成した紫外線遮蔽皮膜5の厚みは、約5μmであった。上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5について、耐紫外線照射試験、耐湿試験、耐煮沸試験、屋外放置試験を実施例1の場合と同様に実施した。紫外線照射試験及び屋外放置試験では紫外線遮蔽皮膜5を積層した電池を用いた。耐湿試験及び耐煮沸試験では基板(ソーダガラス)に紫外線遮蔽皮膜5を積層したモデル試験片を用いた。試験結果によれば、上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5は各試験において良好なる密着性を確保していた。試験結果によれば、上記のように作成した紫外線遮蔽皮膜5は各試験において良好なる密着性を確保していた。
【0075】
(実施例7)
本発明に係る実施例7によれば、基本的には実施例1の場合と同様の構成である。但し、色素増感型太陽電池の電池本体の外縁側には防湿層8が被覆されている。防湿層8は第1基板11及び第2基板31の端側を被覆している。また防湿層8の入射面側における内方の端部8cは、紫外線遮蔽皮膜5の端部5cをこれの外側から被覆してシールしている。防湿層8により湿度、水分が電池本体の内部に進入することが抑制される。更に防湿層8により紫外線遮蔽皮膜5の剥離は確実に抑えられる。防湿層8としては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂で形成することができる。
【0076】
(その他)
上記した実施例1〜実施例6に係る色素増感型太陽電池の電池本体の外縁側を防湿層8で被覆することにしても良い。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、紫外線遮蔽皮膜の配合割合等は上記した実施例のみに限定されるものではなく、適宜変更して実施できるものである。
【0077】
(付記)
上記した記載から次の技術的思想も把握することができる。
(付記項1)請求項1において、上記した紫外線遮蔽皮膜は、紫外線吸収性官能基をもつアクリル系樹脂等の樹脂、有機溶媒などの溶媒、シラン系カップリング剤等のカップリング剤を主要成分とする塗布液を、基板となるガラスに塗布し、固化させることにより形成されている色素増感型太陽電池。
(付記項2)請求項2において、上記した紫外線遮蔽皮膜は、紫外線吸収特性をもつ金属酸化物微粒子等の紫外線吸収微粒子、アクリル系樹脂等の樹脂、有機溶媒等の溶媒、シラン系カップリング剤等のカップリング剤を主要成分とする塗布液を、基板となるガラスに塗布し、固化させることにより形成されていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
(付記項3)請求項1または2において、紫外線遮蔽皮膜に、潤滑硬質微粒子、光散乱性を有する光散乱粒子、導電性物質の少なくとも1種が含まれていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
(付記項4)請求項1に係る色素増感型太陽電池の製造方法であって、潤滑硬質微粒子、光散乱粒子、導電性物質の少なくとも1種とカップリング剤とを混合した1次混合物を用いると共に、ベンゾトリアゾール基等の紫外線吸収剤をもつ樹脂が溶媒に溶解した溶液を用い、1次混合物及び溶液を混ぜた塗布液を光極の基板の光入射側の表面に塗布し、固化させることにより、紫外線遮蔽皮膜を形成することを特徴とする色素増感型太陽電池の製造方法。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る色素増感型太陽電池によれば、光極を構成する基板には紫外線遮蔽皮膜が積層されている。このため、色素増感型太陽電池の重要要素である色素等の有機物を紫外線から保護することができ、色素増感型太陽電池の耐久性、長寿命化に貢献できる。更に紫外線遮蔽皮膜は、紫外線遮蔽皮膜の基材である樹脂及び基板の密着性を高めるシラン系カップリング剤等のカップリング剤を含むため、光極の基板と紫外線遮蔽皮膜との密着性が確保される。このため紫外線劣化で紫外線遮蔽皮膜が光極の基板から剥離するおそれを少なくすることができる。
【0079】
また紫外線遮蔽皮膜に二酸化シリコン微粒子等の潤滑硬質微粒子が含まれている場合には、紫外線遮蔽皮膜の表面の滑り性が良くなり、紫外線遮蔽皮膜の耐傷付き性の向上、紫外線遮蔽皮膜の表面が汚れにくく、付いた汚れも取れやすくなるといった効果を奏することができる。
【0080】
また紫外線遮蔽皮膜に光散乱性を有する光散乱粒子が含まれている場合には、光散乱粒子の効果により、太陽や照明器具の反射光を色素増感型太陽電池の紫外線遮蔽皮膜の表面上で散乱させるため、色素増感型太陽電池の表面における眩しさを低減する効果が得られる。
【0081】
更に紫外線遮蔽皮膜に導電性物質が含まれている場合には、導電性物質による帯電防止効果により、紫外線遮蔽皮膜における静電気の帯電を抑制でき、静電気に起因する埃等の付着を抑制できる。従って色素増感型太陽電池の光極への光透過性を確保するのに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に係り、色素増感型太陽電池の断面を模式的に示す構成図である。
【図2】実施例1に係り、色素増感型太陽電池の第1基板に、紫外線遮蔽皮膜が接合されている形態を模式的に示す構成図である。
【図3】実施例2に係り、色素増感型太陽電池の第1基板に、紫外線吸収微粒子を含む紫外線遮蔽皮膜が接合されている形態を模式的に示す構成図である。
【図4】実施例3に係り、色素増感型太陽電池の第1基板に、潤滑硬質粒子が含まれている紫外線遮蔽皮膜が接合されている形態を模式的に示す構成図である。
【図5】実施例4に係り、色素増感型太陽電池の第1基板に、光散散乱粒子を含む紫外線遮蔽皮膜が接合されている形態を模式的に示す構成図である。
【図6】実施例5に係り、色素増感型太陽電池の第1基板に、導電性物質を含む紫外線遮蔽皮膜が接合されている形態を模式的に示す構成図である。
【図7】実施例7に係り、シール層を有する色素増感型太陽電池の断面を模式的に示す構成図である。
【符号の説明】
図中、1は光極、10は第1透明導電層、11は第1基板、13は半導体層、14は色素、3は対極、30は第2透明導電層、31は第2基板、5は紫外線遮蔽皮膜、7は電荷輸送層を示す。

Claims (5)

  1. 光透過性をもつ無機ガラスを基材とする基板と、前記基板に積層された透明導電層と、前記透明導電層に積層された半導体層と、前記半導体層に担持された色素とを有する光極と、
    前記光極に対して所定の間隔を隔てて設けられた導電性を有する対極と、
    前記光極と前記対極との間に封入された電荷輸送層とをもつ色素増感型太陽電池において、
    前記光極を構成する前記基板には、
    紫外線吸収性官能基をもつ樹脂と、前記樹脂及び前記基板の密着性を高めるカップリング剤とを含む紫外線遮蔽皮膜が積層されていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  2. 光透過性をもつ無機ガラスを基材とする基板と、前記基板に積層された透明導電層と、前記透明導電層に積層された半導体層と、前記半導体層に担持された色素とを有する光極と、
    前記光極に対して所定の間隔を隔てて設けられた導電性を有する対極と、
    前記光極と前記対極との間に封入された電荷輸送層とをもつ色素増感型太陽電池において、
    前記光極を構成する基板には、
    紫外線吸収特性をもつ紫外線吸収微粒子と、樹脂と、前記樹脂及び前記基板の密着性を高めるカップリング剤とを含む紫外線遮蔽皮膜が積層されていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  3. 請求項1または請求項2のいずれかにおいて、前記紫外線遮蔽皮膜には、潤滑硬質微粒子が含まれていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、前記紫外線遮蔽皮膜には、光散乱性を有する光散乱粒子が含まれていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、前記紫外線遮蔽皮膜には導電性物質が含まれていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
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