JP2004349129A - 色素増感型太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アナターゼ型酸化チタンと色素とを構成材料として含有し受光面F2を有する半導体電極2と、半導体電極2の受光面F2上に配置され該半導体電極2に接する面の反対側に受光面F1を有する透明電極1と、を有する光電極10と、対極CEとを有しており、半導体電極2と対極CEとが電解質Eを介して対向配置された色素増感型太陽電池20であって、電解質Eに溶媒としてエステル結合を有する化合物が含有され、光電極10の受光面F1に隣接して、290nm以上385nm以下の波長を有する光の透過率が0.2%以下であり、450nm以上900nm以下波長を有する光の透過率が85%以上である光透過特性を有する光吸収部材Aを備えていることを特徴とする色素増感型太陽電池20。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は色素増感型太陽電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化やエネルギー問題に対する関心の高まりとともにシリコンpn接合型太陽電池や色素増感型太陽電池等の太陽電池の様々な開発が進められている。その太陽電池の中でも、色素増感型太陽電池はグレッツェルらにより提案されて以来(例えば特許文献1,2参照)、使用する材料が安価であること、比較的シンプルなプロセスで製造できること等の利点からその実用化が期待されている。
【0003】
このような色素増感型太陽電池においては、光電変換効率の向上を図りつつも、そのような優れた光電変換効率を長期に亘り維持する耐久性を高めることが実用化に向けた課題となっている。
【0004】
上記耐久性が不十分な原因の一つとして、非特許文献1においても指摘されているように、太陽光に含まれる紫外領域の波長を有する光(以下、「紫外線」という)が増感色素(以下、必要に応じて「色素」ともいう。)の安定性を低下させていることが挙げられる。これは、紫外線がn型半導体電極である酸化チタン(TiO2)等の化合物に照射されると、該酸化チタン等が光触媒作用を発現し、その酸化チタン等に吸着している色素(金属錯体色素、有機色素)を徐々に分解していくことが原因となっていると一般的に考えられている。更には、該色素が直接紫外線の照射を受けて劣化してしまうとも考えられている。このような考察の下、半導体電極である酸化チタン等を光触媒として作用させないために、或いは、色素が直接紫外線を照射されないようにするために、色素増感型太陽電池への入射光のうち紫外線成分のみを遮光する種々の手段の提案がなされている。
【0005】
例えば特許文献3では、紫外線による特性劣化の少ない色素増感型太陽電池を提供することを意図して、金属酸化物半導体のバンドギャップエネルギーに相当する波長以下の波長を有する光を吸収する紫外線吸収部材を用いることを特徴とする色素増感型太陽電池を提案している。この文献では、金属酸化物半導体としてTiO2を採用した場合に、酸化セリウム(CeO2)を含む鉛ガラス或いはヒドロキシベンゾフェノン系の化合物を含む樹脂からなる紫外線吸収部材等を用いて、380nm以下の波長を有する入射光を吸収することにより、紫外線による該太陽電池の特性劣化を少なくしようとしている。
【0006】
また、特許文献4では、光電変換効率及び光耐久性の改良を意図して、光電変換素子の感光層に、特定の有機紫外線吸収剤及び半導体微粒子を含有することを特徴とする色素増感型太陽電池を提案している。この文献では、紫外線吸収剤として420nmよりも短波長に吸収極大を有する化合物を、色素と共に感光層の酸化チタン等の半導体微粒子に吸着させて用いることにより、該太陽電池の光電変換効率及び光耐久性の改良を図っている。
【0007】
更に、特許文献5では、紫外線により色素が光触媒反応による分解等で電荷分離を行わなくなることの防止を意図して、n型半導体電極が特定の厚さ及び電極構造を有すること等を特徴とする色素増感型太陽電池を提案している。この文献では、TiO2等のn型半導体電極に少なくとも290nmから360nmの光を照射しないようにできれば長期信頼性を有する色素増感型太陽電池が実現できるとして、n型半導体電極を厚さ0.8μm以上20μm以下の緻密な紫外線カット層部分と多孔部分からなるように構成して、紫外線カット波長を約350nmに調整することにより(特許文献5の図8参照)、長期信頼性及び高光電変換効率の達成を図っている。
【0008】
そして、特許文献6では、紫外線による特性劣化が少ない太陽電池を得ることを意図して、特定の化学構造を有する重縮合体を含む紫外線吸収部材を用いた色素増感型太陽電池を提案している。この文献では、400nm以下の光を極選択的に吸収し、波長400nm以上の光を殆ど吸収しない紫外線吸収剤として主要基材がポリエチレンテレフタレートであるものを用いることにより、TiO2等の金属酸化物半導体電極等を備える光電変換素子の劣化防止を図っている。
【0009】
【特許文献1】
特開平1−220380号公報
【特許文献2】
米国特許第492721号明細書
【特許文献3】
特開平11−345991号公報
【特許文献4】
特開2000−223167号公報
【特許文献5】
特開2000−285979号公報
【特許文献6】
特開2002−25634号公報
【非特許文献1】
橋本和仁,藤嶋昭、「半導体光電極,光触媒反応」、セラミックス、社団法人日本セラミックス協会、平成8年、第31巻、第10号、p.815−820
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは特許文献3〜6に記載されている色素増感型太陽電池について詳細に検討を行ったところ、いずれの文献に記載の色素増感型太陽電池も、高い光電変換効率を維持しつつ優れた耐久性を有するには十分ではないことを見出した。
【0011】
すなわち、TiO2を含有するn型半導体電極に入射する紫外線を、紫外線吸収部材等により、より多く吸収するには、吸収すべき光の長波長端を長波長側に移行するように調整すればよく、これにより酸化チタンの光触媒作用若しくは色素の劣化を一層抑制することができると考えられるので、該光増感型太陽電池の耐久性は向上する傾向にある。しかし、吸収すべき光の長波長端を長波長側に移行するということは、吸収する光の波長領域幅を広げることにもなるので、半導体電極への入射光全体の光量は減少することになり、光電変換効率は低下する。逆に、該吸収すべき光の長波長端を概して短波長側に移行すれば、半導体電極への入射光の全体の光量が増加するので光電変換効率は向上するものの、半導体電極に入射する紫外線量も増加するため、酸化チタンの光触媒作用を抑制できなくなり、或いは、色素への直接の紫外線の照射を防止することはできなくなり、結果として該色素増感型太陽電池の耐久性の低下に繋がる。従って、光透過波長領域(或いは光吸収波長領域)について厳密に規定しなければ、高い光電変換効率を維持しつつ優れた耐久性を有する色素増感型太陽電池を得ることはできない。
【0012】
この点で、特許文献3は、波長の短い光(例えばTiO2の場合380nm以下)が紫外線吸収部材で吸収されればよい旨の記載しかなく、特許文献4は、紫外線吸収剤としては420nmよりも短波長に吸収極大を有する化合物が好ましい旨の記載しかなく、特許文献5は、290nmから360nmの光を照射しないセル構造が達成できればよい旨の記載しかなく、いずれも高い光電変換効率の維持を達成するための波長条件を明確に規定する旨の記載はない。更に、特許文献6は、400nm以下の光を極選択的に吸収し、波長400nm以上の光を殆ど吸収しない紫外線吸収剤を用いる旨の記載があり、その実施例においては、波長370nm及び380nmにおける光透過率が0.0%で、波長500nmにおける光波長が85%弱の紫外線吸収部材を用いたものを示しているが、かかる波長条件では、高い光電変換効率を達成するのに十分ではないことを本発明者らは見出した。
【0013】
ところで、色素増感型太陽電池の半導体電極に用いる金属酸化物半導体材料は、その種類によってバンドギャップエネルギーの大きさが異なるため、紫外線吸収剤で吸収すべき波長領域も該半導体電極に用いる金属酸化物半導体材料によって調整する必要があることはよく知られている。
【0014】
しかしながら、色素増感型太陽電池が高い光電変換効率を維持しつつ優れた耐久性を有するためには、該太陽電池に備えられる電解質中の溶媒の種類によっても、光吸収剤で吸収すべき波長領域を調整する必要があることを本発明者らは見出した。この点については、特許文献3〜6のいずれにも記載されておらず、その示唆も一切ない。
【0015】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、アナターゼ型酸化チタン(TiO2)を含有する半導体電極を備え、エステル結合(−COO−)を有する化合物を含有する電解質を備える色素増感型太陽電池であって、十分な光電変換効率を長期に亘り維持することのできる耐久性に優れた色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の半導体電極及び特定の電解質溶媒を用いた色素増感型太陽電池において、半導体電極に照射する光の波長条件を明確に規定することで、該色素増感型太陽電池に備えられる半導体電極に含有される色素の安定性が向上し、しかも、該色素増感型太陽電池に入射する光量を高く維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の色素増感型太陽電池は、アナターゼ型酸化チタンと色素とを構成材料として含有し受光面を有する半導体電極と、該半導体電極の受光面上に隣接して配置され該半導体電極に接する面の反対側に受光面を有する透明電極とを有する光電極と、対極とを有しており、半導体電極と対極とが電解質を介して対向配置された色素増感型太陽電池であって、電解質に溶媒としてエステル結合を有する化合物が含有され、該光電極の受光面に隣接して、290nm以上385nm以下の波長を有する光の透過率が0.2%以下であり、450nm以上900nm以下の波長を有する光の透過率が85%以上である光透過特性を有する光吸収部材を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、色素の安定性を向上させることで、該色素から半導体電極に注入される電子が減少しなくなるので、色素増感型太陽電池の耐久性は向上する。更に、該色素増感型太陽電池に入射する光量を高く維持できるので、光電変換効率も高い数値を維持できる。
【0019】
上述のように、色素増感型太陽電池の耐久性を向上でき、しかも高い光電変換効率を維持できる理由については明確には解明されていないが、本発明者らは以下のような理由を考えている。
【0020】
すなわち、TiO2は〜400nm付近の波長を有する光を吸収することから、TiO2が色素の分解反応に対する光触媒作用を発現する波長領域も〜400nm付近であると考えられる。更に385nmより短い波長領域では、波長が短くなるにつれてTiO2の紫外線吸収量が指数関数的に増加することから、TiO2上の色素分解反応に対する活性サイトも急激に増加するものと考えられる。従って、特に385nm以下の波長を有する光を光吸収部材により有効に吸収できれば、TiO2上の活性サイトの増加が抑制でき、色素の分解反応も十分に抑制できるので、色素の安定性が向上し、色素増感型太陽電池の耐久性も向上できると本発明者らは考えている。
【0021】
一方、色素増感型太陽電池において光電変換効率は、半導体電極に照射される光量が多いほど高くなる傾向にあるので、上述した色素の安定性を確保できる範囲で、可能な限り光量を増加させることが必要となる。本発明の色素増感型太陽電池は、色素の安定性に影響を与えない比較的長波長の光を可能な限り吸収しないような光吸収部材を備えているので、高い光電変換効率を維持できると本発明者らは考えている。
【0022】
更に、本発明においては、電解質溶媒としてエステル結合を有する化合物を用いた場合にのみ上記作用効果が得られることを見出した。電解質溶媒として用いるエステル結合を有する化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトンあるいは炭酸プロピレン等が挙げられる。その理由についても明確には解明されていないが、本発明者らは以下のような理由を考えている。
【0023】
すなわち、太陽光に含まれる紫外線が、特に、エステル結合を有する化合物を含有する電解質溶媒の安定性を低下させるのに対し、他の溶媒を用いた場合、紫外線がこのような影響を電解質溶媒に及ぼさないか、及ぼしたとしてもエステル結合を有する化合物を含有する電解質溶媒を用いた場合ほど顕著ではないと考えられる。
【0024】
紫外線がn型半導体電極である酸化チタン等の化合物に照射されると、該酸化チタン等が光触媒作用を発現し、その酸化チタン等に接している電解質溶媒を徐々に化学反応させ、或いは、該電解質溶媒が直接紫外線の照射を受けて化学反応を起こす。特に、その電解質溶媒にエステル結合を有する化合物を含有する場合は、この傾向が顕著であり、特にエステル結合部位がその化学反応に寄与すると考えられる。このように、該電解質溶媒が紫外線の照射を受けて化学反応を起こすことにより、その電解質自体の劣化、或いは、電解質溶媒若しくは電解質溶媒の反応生成物により誘発される色素の劣化等により、色素増感型太陽電池の耐久性が確保できないという問題が発生すると考えられる。これに対し、アセトニトリルあるいは3−メトキシプロピオニトリル等のエステル結合を有しない電解質溶媒を用いた場合、それらの電解質溶媒は、紫外線の照射を受けても、そのような化学反応をほとんど起こさないものと考えられる。
【0025】
または、エステル結合を有する化合物を用いた電解質溶媒が紫外線等により分解されて生成した化学種、又は、色素及び/若しくは色素の分解生成物等と該電解質溶媒及び/若しくは該電解質溶媒の分解生成物との化学反応により生じた化学種が、TiO2半導体電極に吸着するなどして該色素増感型太陽電池の酸化還元サイクルに影響を及ぼすが、他の溶媒がたとえ紫外線等により分解するなどしても、生成した化学種が該色素増感型太陽電池の酸化還元サイクルに影響を及ぼさないとも考えられる。
【0026】
ところが、本発明においては上述の波長領域の波長を有する入射光を有効に遮光することができるため、上記エステル結合を有する化合物を用いた電解質溶媒に関する紫外線等の影響が抑制され、結果として該色素増感型太陽電池の耐光性向上に繋がるものと本発明者らは考えている。
【0027】
更に、前記光吸収部材が、385nm超390nm以下の波長を有する光の透過率が5%以下であり、390nm超395nm以下の波長を有する光の透過率が25%以下であり、430nm以上450nm未満の波長を有する光の透過率が80%以上である光透過特性を有することにより、より一層の光電変換効率及び耐久性の向上を成し遂げることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の色素増感型太陽電池の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【0030】
図1に示す色素増感型太陽電池20は、主として光電極10と、対極CEと、スペーサSにより光電極10と対極CEとの間に形成される間隙に充填された電解質Eと、光電極上に配置された光吸収部材Aとから構成されている。また、図1に示す光電極10は、主として受光面F2を有する半導体電極2と、半導体電極2の受光面F2上に隣接して配置された透明電極1とから構成されている。そして、半導体電極2は、受光面F2と反対側の裏面F22において電解質Eと接触している。
【0031】
この色素増感型太陽電池20は、光吸収部材Aを透過して特定波長を有する光を吸収遮光された透過光が、透明電極1を透過して半導体電極2に照射され、その光によって半導体電極2内に吸着されている増感色素が励起され、この増感色素から半導体電極2へ電子が注入される。そして、半導体電極2において注入された電子は、透明電極1に集められて外部に取り出される。
【0032】
透明電極1の構成は特に限定されるものではなく、通常の色素増感型太陽電池に搭載される導電性電極を使用できる。例えば、図1に示す透明電極1は、ガラス基板等の透明基板4の半導体電極2の側にいわゆる透明導電膜3をコートした構成を有する。この透明導電膜3としては、液晶パネル等に用いられる透明電極用の透明導電膜を用いればよい。この透明導電膜3は、用いる構成材料により異なるが、少なくとも290nmより長波長を有する光を透過する。
【0033】
このような透明電極1としては、例えば、フッ素ドープSnO2コートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO2−Sb)等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものでもよい。
【0034】
また、透明基板4としては、液晶パネル等に用いられる透明基板を用いればよい。具体的には、透明なガラス基板、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したもの、すりガラス状の半透明のガラス基板など光を透過するものが透明基板材料として挙げられる。なお、光を透過するものであれば材質はガラスでなくてもよく、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などでもよい。この透明基板4は、用いる構成材料により異なるが、少なくとも約280nm以上の波長を有する光を透過する。
【0035】
図1に示す半導体電極2は、酸化物半導体粒子を構成材料とする酸化物半導体層からなる。本発明においては、半導体電極2に含有される酸化物半導体として、アナターゼ型TiO2を使用している。このアナターゼ型TiO2は、一般的に光活性がルチル型TiO2より高く、しかも、数十nmオーダーの直径を有する極微小粒子を得ることができ比表面積を大きくすることが可能であるので、色素増感型太陽電池の電極として非常に有効である。
【0036】
このアナターゼ型TiO2は、約3.2eVのバンドギャップエネルギーを有しており、このバンドギャップエネルギーは約380nmの波長に相当する。従って、理論的には約380nmの波長より短い波長を有する光を遮光して、アナターゼ型TiO2を構成材料とする半導体電極2に照射しなければ、半導体電極2に含有された上述したような色素の安定性は確保されるはずである。しかしながら、実際には約380〜約400nmの波長を有する光をも吸収することから、約400nm以下の波長を有する光であれば、アナターゼ型TiO2の光触媒作用を発現せしめるものと本発明者らは考えている。
【0037】
また、半導体電極2に含有される増感色素は、可視光領域及び/又は赤外光領域に吸収を持つ色素であれば特に限定されるものではない。より好ましくは、少なくとも200nm〜10μmの波長の光により励起されて電子を放出するものであればよい。このような増感色素としては、金属錯体や有機色素等を用いることができる。金属錯体としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィル又はその誘導体、ヘミン、ルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えば、シス−ジシアネート−N,N’−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))等が挙げられる。有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素等を用いることができる。
【0038】
また、対極CEは、電解質(電解質E)中の酸化還元対(例えば、I3−/I−等)に高効率で電子を渡すことができる材料から構成されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン太陽電池、液晶パネル等に通常用いられている対極と同じものを用いることが可能である。例えば、前述の透明電極1と同じ構成を有するものであってもよく、透明電極1と同様の透明導電膜3上にPt等の金属薄膜電極を形成し、金属薄膜電極を電解質Eの側に向けて配置させるものであってもよい。また、透明電極1の透明導電膜3に白金を少量付着させたものであってもよく、白金などの金属薄膜、炭素などの導電性膜などであってもよい。
【0039】
更に、電解質Eは、溶媒としてエステル結合を有する化合物を少なくとも含み、かつ、光励起され半導体への電子注入を果した後の色素を還元するための酸化還元種を含んでいれば特に限定されない。例えば、エステル結合を有する化合物を含む液状の電解質であってもよく、これに公知のゲル化剤(高分子或いは低分子のゲル化剤)を添加して得られるゲル状の電解質であってもよい。また、公知の溶融塩にエステル結合を有する化合物を添加して得られる室温で固体状の電解質であってもよい。これらの電解質E、ゲル状の電解質又は室温で固体状の電解質は、多孔質の半導体電極2の細孔内にも充填されている。更に、対極CEが多孔質の電子伝導性材料から構成されている場合には、この対極CEの内部の細孔内にも充填されている。
【0040】
例えば、エステル結合を有する化合物を用いた電解質Eの溶媒としてγ−ブチロラクトン(以下、[GBL]という。)が主に採用される。その理由として、GBLは、溶質成分を溶解できることに加えて、電気化学的に不活性であり、比誘電率が高く、粘度が低い溶媒である上に、沸点が200℃以上と比較的高いことが挙げられる。
【0041】
電解液Eに使用される溶質としては、半導体電極2に担持された色素や対極CEと電子の受け渡しを行える酸化還元対(I3−/I−系の電解質、Br3−/Br−系の電解質、Co2+/Co3+系の電解質、ハイドロキノン/キノン系の電解質などのレドックス電解質)や、この電子の受け渡しを助長する作用を有する化合物等が挙げられ、これらがそれぞれ単独あるいは複数組み合せて含まれていてもよい。
【0042】
より具体的には、酸化還元対を構成する物質としては、例えば,ヨウ素,臭素,塩素などのハロゲン,ヨウ化−1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム,ヨウ化テトラプロピルアンモニウムなどが挙げられる。なお、耐久性が大きく低下しない範囲の量(例えば、5mmol/L以下)のヨウ化リチウムを含有させてもよいが、ヨウ化リチウムは含有させない方が好ましい。
【0043】
また、電解質Eをゲル化させる場合のゲル化剤としては、例えば、天然高級脂肪酸、アミノ酸化合物などの多糖類の低分子ゲル化剤、ポリビニリデンフロオライド、ビニリデンフロオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子、及び、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどの高分子ゲル化剤を用いることが可能である。また、シリカ微粒子などの無機粉体によりゲル化させることも可能である。
【0044】
そして、本発明の色素増感型太陽電池においては、光吸収部材Aが備えられる。この光吸収部材は、透明電極1の受光面F1上に備えられ、290nm以上385nm以下の波長を有する光の透過率が0.2%以下であり、450nm以上900nm以下の波長を有する光の透過率が85%以上である光透過特性を有することを特徴とする。
【0045】
上述したように、透明導電膜3は少なくとも290nmより長波長を有する光を透過し、透明基板4は少なくとも約280nm以上の波長を有する光を透過する。一方で、アナターゼ型TiO2の光触媒作用は約400nm以下の波長を有する光を照射されることにより発現すると本発明者らは考えている。従って、本発明者らは、290〜400nm付近の波長を有する光を遮光できれば、アナターゼ型TiO2の光触媒作用を十分に抑制できるものと考えている。それと同時に、半導体電極2に照射される光量をなるべく減少させなくするためには、290〜400nm付記の波長を有する光を遮光する一方で、それ以外の波長を有する光を全く遮光しないような手段を用いることが理想的である。しかし、そのような光吸収特性(或いは光透過特性)を有する手段を色素増感型太陽電池に用いることは事実上不可能である。
【0046】
しかしながら、本発明にかかる光透過特性を有する光吸収部材Aを用いれば、色素の安定性を低下させることなく、しかも、光電変換に必要となる光を過剰に遮光することはない。このことにより、色素増感型太陽電池の耐久性を飛躍的に向上させ、しかも、高い光電変換効率を維持することが可能となる。
【0047】
更に、該光吸収部材Aが、385nm超390nm以下の波長を有する光の透過率が5%以下であり、390nm超395nm以下の波長を有する光の透過率が25%以下であり、430nm以上450nm未満の波長を有する光の透過率が80%以上である光透過特性を有することが好ましい。これにより、色素の安定性を低下させる原因となっている290〜400nm付近の波長を有する光を極めて選択的に遮光することができると同時に、光電変換に必要な光を遮光することなく半導体電極2に照射させることが可能となる。
【0048】
本発明にかかる光吸収部材Aが、上記光透過特性を有するためには、光吸収部材Aに含有される適切な光吸収剤の選択、光吸収部材A中の該光吸収剤の適当な濃度調整及び該光吸収部材Aの適当な厚さの調整を行う必要がある。
【0049】
該光吸収剤の具体例としては、例えば、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤、べンゾフェノン系紫外線吸収剤、メチン系紫外線吸収剤、モノアゾ系紫外線吸収剤及びアントラキノン系紫外線吸収剤、トリアゾール系紫外線吸収剤、べンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サルシレート系紫外線吸収剤、べンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、アクリルニトリル系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤及び金属錯塩系紫外線吸収剤からなる群より選択される少なくとも一種の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0050】
上述のアゾメチン系紫外線吸収剤としては、例えばボナソーブUA−3701(商品名、オリエント化学工業株式会社製)が挙げられる。また、インドール系紫外線吸収剤としては、例えばボナソーブUA−3901(商品名、オリエント化学工業株式会社製)が挙げられる。更に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えばユビナールD−49、ユビナールD−50(いずれも商品名、BASF社製)が挙げられる。
【0051】
また、メチン系紫外線吸収剤としては、例えば、アイゼンカチロンオレンジGLH(商品名、保土谷化学株式会社製)が挙げられる。モノアゾ系紫外線吸収剤としては、例えば、サポンファストイエローCGR(商品名、ヘキストジャパン株式会社製)が挙げられる。アントラキノン系紫外線吸収剤としては、例えば、ダイアレジンオレンジG(商品名、三菱化学株式会社製)が挙げられる。
【0052】
また、べンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えばアデカLA−31(商品名、旭電化工業株式会社製)が挙げられる。更に、トリアジン系紫外線吸収剤としては、チヌビン1577(商品名、日本チバガイギー株式会社製)が挙げられる。
【0053】
また、光吸収部材A中の光吸収剤の濃度は、光吸収部材Aの光透過特性が上述の波長範囲内となるように適宜調整すればよいが、0.05〜6g/m2であることが好ましい。該光吸収剤の濃度が0.05g/m2未満となると、380〜400nmの波長領域の紫外光を十分に遮光することができなくなる傾向が大きくなる。また、該光吸収剤の濃度が6g/m2を超えると、製膜性、外観、経済性に問題が生じることがある。
【0054】
また、この光吸収部材Aには、先に述べた具体例以外にも、例えば、サリチル酸誘導体、置換アクリロニトリル類、ニッケル錯体等を含有させることもできる。
【0055】
なお、光吸収部材Aの主成分となる構成材料としては、光吸収部材Aとして形成された場合に、該光吸収部材Aの光透過特性が上述の波長範囲内に入るように調整可能なものであれば特に限定されないが、機械的強度に優れ、かつ、耐候性、耐水性、耐光性等に優れるという観点から、アクリル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体又はこれらの組み合わせにより製造される樹脂が好ましい。また、シリカ系ガラス、ホウ酸系ガラス、ベーマイト系ガラス、アルミナ系ガラス又はアルミノシリケートガラスでもよい。
【0056】
このようなアクリル樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート及びブチルメタクリレートからなる群か選択される少なくとも一種のモノマーに基づく繰り返し単位を有する単独重合体又は共重合体であってもよい。
【0057】
また、必要に応じて炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルに基づく繰り返し単位を上記の単独重合体又は共重合体に導入してもよい。
【0058】
そして光吸収部材Aの厚さは、光吸収部材Aの光透過特性が上述の波長範囲内となるように適宜調整すればよいが、10〜1000μmであることが好ましい。光吸収部材Aの厚さが上記上限を超えると、主成分となる構成材料が必要量よりも多くなり、製造コストが高くなったり、光吸収部材A自体のフレキシビリティが不十分となる傾向が大きくなる。一方、光吸収部材Aの厚さが上記下限未満となると、光吸収部材Aの入射面F4と光出射面でもある対向面との間の光が通る光路中の光吸収剤の量が必要量より少なくなり、光吸収部材Aとして必要な光学特性が得られなくなる傾向が大きくなり、或いは機械的強度が不十分となる傾向が大きくなる。
【0059】
なお、光吸収部材Aは市販の紫外線吸収フィルム等を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、かかる市販のものの具体例としては、例えばアクリプレン(トリアゾール系紫外線吸収剤、商品名、三菱レイヨン株式会社製)、UVGuard(商品名、富士写真フイルム株式会社製)などを挙げることができる。
【0060】
また、スペーサSの構成材料は特に限定されるものではなく、例えば、シリカビーズ等を用いることができる。
【0061】
次に図1に示した色素増感型太陽電池20の製造方法の一例について説明する。
【0062】
まず、該色素増感型太陽電池20に備えられる光吸収部材Aの製造方法の一例について説明する。光吸収部材Aは、例えば、主成分となる先に述べた樹脂と光吸収剤とをブレンドした後、これをTダイ法、インフレーション法等の溶融押出法により製造することができる。ここで、必要に応じて、例えば、安定剤、光安定化剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤、抗菌剤等のいわゆる配合剤を含有させてもよい。或いは、光吸収部材Aは、市販の紫外線吸収フィルムなどを用いてもよい。
【0063】
次に、光電極10の製造方法の一例について説明する。先ず、透明電極1を製造する場合は、一方の面に光吸収部材Aを形成するガラス基板等の基板4の他方の面上に先に述べたフッ素ドープSnO2等の透明導電膜3をスプレーコートする等の公知の方法を用いて形成することができる。
【0064】
なお、光吸収部材Aを基板4上に形成する場合には、例えば、熱ラミネーションやインモールド成形、あるいは接着剤による接着などの手段で、光吸収部材Aを基板4に貼り合わせることができる。
【0065】
次に、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2の各層を形成する方法としては、例えば、以下の方法がある。すなわち、まず、TiO2の半導体粒子を分散させた分散液を調製する。この分散液の溶媒は水、有機溶媒、または両者の混合溶媒など酸化物半導体粒子を分散できるものなら特に限定されない。また、分散液中には必要に応じて界面活性剤、粘度調節剤を加えてもよい。
【0066】
次に、分散液を透明電極1の透明導電膜3上に塗布し、次いで乾燥する。このときの塗布方法としてはバーコーター法、印刷法などを用いることができる。そして、乾燥した後、空気中、不活性ガス或いは窒素中で加熱、焼成して半導体電極2を形成する。このときの焼成温度は300〜800℃が好ましい。焼成温度が300℃未満であると酸化物半導体粒子間の固着、基板への付着力が弱くなり十分な強度がでなくなるおそれがある。焼成温度が800℃を超えると酸化物半導体粒子間の固着が進み、半導体電極2の表面積が小さくなるおそれがある。
【0067】
次に、半導体電極2中に浸着法等の公知の方法により増感色素を含有させる。増感色素は半導体電極2に付着(化学吸着、物理吸着または堆積など)させることにより含有させる。この付着方法は、例えば色素を含む溶液中に半導体電極2を浸漬するなどの方法を用いることができる。この際、溶液を加熱し還流させるなどして増感色素の吸着、堆積を促進することができる。なお、このとき、色素の他に必要に応じて、銀等の金属やアルミナ等の金属酸化物を半導体電極2中に含有させてもよい。
【0068】
なお、半導体電極2内に含まれる光電変換反応を阻害する不純物を除去する表面酸化処理を、各層それぞれの形成時毎、或いは、各層全てを形成した時などに公知の方法により適宜施してもよい。
【0069】
また、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2を形成する他の方法としては、以下の方法がある。すなわち、透明電極1の透明導電膜3上にTiO2等の半導体を膜状に蒸着させる方法を用いてもよい。透明導電膜3上に半導体を膜状に蒸着させる方法としては公知の方法を用いることができる。
【0070】
例えば、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法を用いてもよく、酸素等の反応性ガス中で金属等を蒸発させ、反応生成物を透明導電膜3上に堆積させる反応蒸着法を用いてもよい。更に、反応ガスの流れを制御する等してCVD等の化学蒸着法を用いることもできる。
【0071】
このようにして光電極10を作製した後は、公知の方法により対極CEを作製し、これと光電極10と、スペーサSを図1に示すように組み上げて、内部に電解質Eを充填し、色素増感型太陽電池20を完成させる。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の色素増感型太陽電池は、複数の電池を併設したモジュールの形態を有していてもよい。
【0073】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
まず、アナターゼ型TiO2粒子(テイカ株式会社製、商品名:「AMT−600」、平均粒径:30nm)及びエチルセルロースを、それぞれ、20質量%及び10質量%の濃度になるようにターピネオールに懸濁させてペーストとした。次に、このペーストを、フッ素ドープ酸化スズ透明導電性ガラス基板(旭硝子株式会社製)上に塗布し、大気中、450℃で30分間焼成することにより増感色素を含有していない光電極を得た。なお、半導体電極の酸化物半導体からなる層の厚さは約10μmであった。
【0075】
次に、この半導体電極をルテニウム系赤色色素(Solaronix社製、商品名:「Ruthenium535 bis TBA」)のt−ブタノールとアセトニトリルの1:1混合溶液(色素濃度0.25mg/ml)に、室温下で72時間浸漬することにより、赤色色素を吸着させた半導体電極を得た。
【0076】
続いて、上記の光電極と同様の形状と大きさを有する対極を作製した。まず、フッ素ドープ酸化スズ透明導電性ガラス(日本板硝子株式会社製)の上に、塩化白金酸六水和物のイソプロパノール溶液を滴下し、大気中で乾燥した後に、400℃で10分間熱処理することにより、白金コート対極を得た。なお、この対極には電解液注入用の孔(直径1mm)を予め設けておいた。
【0077】
そして、エステル結合を有する溶媒であるγ−ブチロラクトン(富山薬品工業株式会社製)に、ヨウ素、ヨウ化リチウム及びイミダゾリウム塩を溶解することにより、ヨウ素系レドックス電解質を調製した。
【0078】
次に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有するスペーサ(エチレン/メタクリル酸ランダム共重合体アイオノマーフィルム(デュポン社製、商品名「スーリン」、厚さ50μm))を準備し、光電極と対極とをスペーサを介して対向させ、熱溶着により張り合わせて電池の筐体を得た後、その筐体内に上記の電解液を対極の孔から充填し、対極の孔をスペーサと同素材で充填し、熱溶融により封印した。
【0079】
そして、片面接着層付きの厚さ125μmを有する紫外線吸収フィルム(三菱レイヨン株式会社製、商品名「アクリプレン」、アクリル樹脂基材)を2層積層及び接着して光吸収部材を作成し、光電極のガラス基板の透明導電膜が形成されていない面上に、該光吸収部材を配置し接着して、実施例1の色素増感型太陽電池を完成させた。
【0080】
なお、上記光吸収部材の光透過特性として、分光光度計(U−3400、日立製作所社製)を用いて、290nm〜900nmの波長範囲における光に対する光透過率を測定した。その結果及び主な波長における光透過率の値を、以下に記載する実施例2及び比較例1,2にかかる光吸収部材についての結果と共に図2,3及び表1に示す。
【0081】
なお、図1,2及び表1中の「実施例1」とは「実施例1で用いた光吸収部材」のことをいう。同様に「実施例2」、「比較例1」及び「比較例2」とは、それぞれで用いた光吸収部材のことをいう。
【0082】
【表1】
【0083】
(実施例2)
光吸収部材として、片面接着層付きの紫外線吸収フィルム(富士写真フイルム株式会社製、商品名「UV Guard」、PET基材)を一層と上述のアクリプレン一層とを積層及び接着したものを用いた以外は、実施例1と同様の方法により実施例2の色素増感型太陽電池を完成させた。
【0084】
(比較例1)
光吸収部材として、上述のアクリプレン一層のみを用いた以外は、実施例1と同様の方法により比較例1の色素増感型太陽電池を完成させた。
【0085】
(比較例2)
光吸収部材として、Y44シャープカットフィルターガラスを用いた以外は、実施例1と同様の方法により比較例2の色素増感型太陽電池を完成させた。
【0086】
(比較例3)
電解液の溶媒として、GBLの代わりにアセトニトリル(Aldrich社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により比較例3の色素増感型太陽電池を完成させた。
【0087】
(比較例4)
電解液の溶媒として、GBLの代わりにアセトニトリル(Aldrich社製)を用いた以外は、比較例1と同様の方法により比較例4の色素増感型太陽電池を完成させた。
【0088】
[光電変換効率(エネルギー変換効率)確認試験]
上述の実施例1,2及び比較例1,2の色素増感型太陽電池について、それぞれの光電変換効率(エネルギー変換効率η)を確認すべく試験を行った。この確認試験は、ソーラーシミュレータ(ワコム電創株式会社製、商品名;「WXS−85−H型」)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cm2の疑似太陽光を照射することにより以下の手順で行った。
【0089】
完成直後の各色素増感型太陽電池について、I−Vテスターを用いて、室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び曲線因子(F.F.)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。なお、色素増感型太陽電池の光電変換効率(η(%))は、下記式(A)に基づいて算出した。
η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P …(A)
【0090】
ここで、Pは入射光強度[mW/cm−2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm−2]、F.F.は曲線因子を示す。これによって得た光電変換効率の結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
この結果より、実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池においては、高い光電変換効率を示したが、比較例2の色素増感型太陽電池においては、光電変換効率が低い値となることが明らかになった。
【0093】
[耐久性確認試験]
実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池について、以下の手順により耐久性確認試験を行った。なお、比較例2の色素増感型太陽電池については、完成直後において光電変換効率が既に低い値を示したため、耐久性確認試験は行わなかった。
【0094】
まず、完成直後の核色素増感型太陽電池について上述と同様の手順により初期の光電変換効率を求めた。次に、60℃の環境下に該色素増感型太陽電池を配置し、上述の試験と同様にAMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cm2の疑似太陽光を用いて、長時間の連続照射を行い、所定の時間毎に室温にて上記と同様の電流−電圧特性を測定することにより、所定時間経過後の光電変換効率ηを求めた。その結果を図4に示す。なお図4の「光電変換効率維持率」とは、照射時間0時間での光電変換効率の値に対する、所定の照射時間での光電変換効率の値の比を示したものである。
【0095】
この結果より、実施例1,2の色素増感型太陽電池は高い耐久性を有するが、比較例1の色素増感型太陽電池は、時間の経過と共に光電変換効率が急速に低下し、耐久性が低いものであることが分かった。一方、比較例2,3の色素増感型太陽電池は、実施例1のものと同程度の高い耐久性を有する傾向を示した。しかし、電解質溶媒として用いたアセトニトリルの沸点が約81℃と、GBLの沸点(約204℃)と比較して低いため、GBLを用いた場合には全く問題にならなかった色素増感型太陽電池からの電解質漏れが、時間の経過と共に多数発生した。その結果、比較例2,3の色素増感型太陽電池は、照射時間が約1000時間を超えると評価不可能となった。
【0096】
また、共にアセトニトリルを電解質溶媒とし、異なる光吸収部材を用いた比較例2,3の色素増感型太陽電池を比較すると、耐久性の差はほとんど認められなかった。このことから、GBL等のエステル結合を有する化合物を電解質溶媒に用いた色素増感型太陽電池のみが、照射される紫外線等の波長領域に影響を受けることが示唆される。
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、アナターゼ型酸化チタン(TiO2)を含有する半導体電極を備え、エステル結合を有する化合物を含有する電解質を備える色素増感型太陽電池であって、十分な光電変換効率を長期に亘り維持することのできる耐久性に優れた色素増感型太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の色素増感型太陽電池の実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【図2】実施例1,2及び比較例1,2で用いた光吸収部材の光吸収特性(光透過特性)を示すグラフである。
【図3】実施例1,2及び比較例1,2で用いた光吸収部材の光吸収特性(光透過特性)を示すグラフである。
【図4】実施例1,2及び比較例1で得られた色素増感型太陽電池の光電変換効率の経時変化を表すグラフである。
【符号の説明】
1…透明電極、2…半導体電極、3…透明導電膜、4…透明基板、10…光電極、20…色素増感型太陽電池、A…光吸収部材、CE…対極、E…電解質、F1,F2,F3…受光面、F4…入射面、F22…半導体電極2の電解質側の表面、S…スペーサ。
Claims (4)
- アナターゼ型酸化チタンと色素とを構成材料として含有し受光面を有する半導体電極と、当該半導体電極の前記受光面上に隣接して配置され当該半導体電極に接する面の反対側に受光面を有する透明電極と、を有する光電極と、
対極と、
を有しており、前記半導体電極と前記対極とが電解質を介して対向配置された色素増感型太陽電池であって、
前記電解質に溶媒としてエステル結合を有する化合物が含有され、
前記光電極の前記受光面に隣接して、290nm以上385nm以下の波長を有する光の透過率が0.2%以下であり、450nm以上900nm以下の波長を有する光の透過率が85%以上である光透過特性を有する光吸収部材を備えていることを特徴とする色素増感型太陽電池。 - 前記電解質に溶媒として含有されている少なくとも1つの化合物が100℃以上の沸点を有することを特徴とする請求項1記載の色素増感型太陽電池。
- 前記電解質に溶媒としてγ−ブチロラクトンあるいは炭酸プロピレンが含有されていることを特徴とする請求項1記載の色素増感型値用電池。
- 前記光吸収部材が、更に、385nm超390nm以下の波長を有する光の透過率が5%以下であり、430nm以上450nm未満の波長を有する光の透過率が80%以上である光透過特性を有することを特徴とする請求項1記載の色素増感型太陽電池。
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