JP4863997B2 - 油脂のドライ分別方法 - Google Patents
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Description
例えば、結晶化温度を低くすると、目的とするトリグリセリド成分のみならず、より融点の低いトリグリセリドが同時に結晶化し、目的とするトリグリセリド成分の純度が低下する。従って、目的とするトリグリセリドを選択的に分別するためには、高い温度でゆっくりと結晶化することが望ましいが、実用的な結晶化速度を得るために、より低温で結晶化せざるを得ない場合が多かった。
さらに、ドライ分別で生成する結晶は、微細な結晶が凝集し球状を成したものであるため、結晶内部に液状部が抱きこまれたり、結晶間隙に液状部が残存することにより、結晶部の純度が低下しやすいという欠点があった。
この発汗操作を利用した先行技術としては、特許文献1に、固体脂肪酸と液体脂肪酸からなる脂肪酸混合物を冷却して固体脂肪酸を晶析させ、得られた固体脂肪酸が晶析した脂肪酸混合物に、湿潤剤水溶液を混合し、これを固体脂肪酸が分散した水相と液体脂肪酸相に分相し、得られた固体脂肪酸が分散した水相を固体脂肪酸の融点以下の温度に加温保持しながら、液体脂肪酸を発汗させる方法が記載されている。しかし、この特許文献1の方法では、湿潤剤水溶液を除去する必要があった。
特許文献2には、ジグザグに曲がったスクリーン状支持構造体で結晶を支持しながら、結晶を加熱発汗させる方法が開示されている。しかし、この特許文献2の方法では、特殊な装置を必要とし、また、相当量の結晶を溶解しないと液状部が溶出してこないという欠点があった。
特許文献3には、結晶画分の一部のみを融解する昇温を行って発汗後、圧搾濾過する乾式分画方法が開示されている。しかし、この特許文献3の方法は、加熱により油脂結晶の構造が弱くなるため、続いて行なう圧搾操作によって容易に崩壊してしまい、濾過性(結晶部から液状部を分離すること)が極めて悪く、発汗後の十分な固液分離が困難であった。
また、得られた結晶部や液状部を更にドライ分別を行なって中融点部を得る場合、上述のとおり分離効率が悪いことに加え、1回目の分別工程が完全に分別が終了してからでないと2回目の分別工程に移行できないため、時間効率も悪いものであった。
このとき得られる結晶部2、液状部2、液状部1を融点の違いで区別すると、それぞれ高融点成分、中融点成分、低融点成分にあたるものである。
結晶化方法は、ドライ分別に用いられる結晶化方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、(1)攪拌しながら冷却結晶化する方法、(2)静置下で冷却結晶化する方法、(3)攪拌しながら冷却結晶化した後、さらに静置下で冷却結晶化する方法、(4)静置下で冷却結晶化した後、機械的攪拌により流動化する方法をあげることができる。
なお、上記方法の中でも、ラウリン系油脂や対称型トリグリセリドに富む油脂等、特にチョコレート用の油脂であるハードバター用に用いられる油脂を使用した場合、攪拌下で濾過性の良い結晶を多量に析出させることが難しいため、上記(3)又は(4)の方法で結晶化するのが好ましい。そして結晶化は回分式操作である必要はなく、連続的な結晶化操作、回分式結晶化を多段にしたカスケード操作でも良い。
なお、結晶部2(高融点成分)の分離のみを目的とする場合は、収率を向上させるためには、上記結晶化温度での固体脂含量(SFC)が、より好ましくは3〜40%、さらに好ましくは5〜35%とする。
また、液状部2(中融点部)の分離のみを目的とする場合は、収率を向上させるためには、上記結晶化温度での固体脂含量(SFC)が、より好ましくは20〜65%、さらに好ましくは40〜65%とする。
上記結晶化スラリーに含まれる油脂結晶は微細な結晶が凝集し球状を成したものであることが好ましく、その粒度分布(体積基準)において、油脂結晶の99%以上が、好ましくは5〜1500μm、より好ましくは50〜1000μmの範囲内であり、且つ、メジアン径が好ましくは200〜800μm、より好ましくは300から600μmであることが望ましい。油脂結晶が上記範囲外である場合、例えば、油脂結晶が針状である場合や、粒径が5μm未満の油脂結晶が1%以上存在する場合、あるいは、メジアン径が200μm未満の場合、濾過性が悪く結晶部1と液状部1を分離することが困難になる場合がある。また、粒径1500μmを超える油脂結晶が1%以上存在する場合、あるいは、メジアン径が800μmを超える場合、圧搾時に圧力により油脂結晶が崩壊してしまい、濾過性が悪く結晶部1と液状部1を分離することが困難になる場合がある。
特に、上記結晶化スラリーの結晶化温度での固体脂含量(SFC)が高く、極めて粘度の高いスラリーであったり、一見ブロック状に見える場合などにおいては、圧搾濾過時に圧力によりスラリー化するため、特に適している。
圧搾濾過を行なう場合の好ましい圧力は、0.2MPa以上、さらに好ましくは0.5〜5MPaであることが好ましい。なお、圧搾時の圧力は圧搾初期から圧搾終期にかけて徐々に上昇させることが好ましく、その圧力の上昇速度は1MPa/分以下、好ましくは0.5MPa/分以下、さらに好ましくは0.1MPa/分以下である。加圧速度が1MPa/分より大きいと、最終的に結晶部2の純度が低下する場合がある。
なお、結晶部2(高融点成分)の分離のみを目的とする場合は、収率を向上させるためには、さらに好ましくは結晶部1:液状部1=10:90〜50:50、より好ましくは結晶部1:液状部1=10:90〜40:60となるように行なう。
また、液状部2(中融点部)の分離のみを目的とする場合は、収率を向上させるためには、さらに好ましくは結晶部1:液状部1=50:50〜90:10、より好ましくは結晶部1:液状部1=60:40〜90:10となるように行なう。
なお、得られる結晶部1の油脂結晶の大きさは、上記結晶化スラリーに含まれる油脂結晶の大きさとほぼ同一である。
すなわち、本発明では、加熱を行なって後圧搾していた、従来の発汗操作と異なり、圧搾しながら加熱して発汗させることで、加熱による結晶部の溶解と、溶解した液状部の分離を並行して行なう点が異なる。
そして、圧搾しながら加熱して発汗させることにより、従来の発汗操作にくらべて、分離効率が高く、より純度の高い結晶部2を得ることができるものである。
ここで、圧搾しながら加熱する発汗操作が、なぜ、従来の加熱のみの発汗操作に比べて分離効率が高まり、高い純度の結晶部を得ることができるのかという理由は以下のとおりである。
第1の理由は、発汗により生じた液状部を漸次分離除去することにより、結晶部中の結晶量を高く保ち、結晶部の構造を強く、耐圧性のある状態に保つことができるためである。
第2の理由は、結晶部中の液状部の量を少なく保つことによって、固液平衡が固体側に偏るため、結晶部の溶解量を最小限に保つことができるためである。
圧搾する際の圧力は、好ましくは0.02から2MPa、さらに好ましくは0.03〜1.5MPa、最も好ましくは0.04〜1MPaとする。圧搾する際の圧力が0.02MPaよりも低いと、液状部2の溶出、分離に要する時間が長くなりやすく、結晶部2と液状部2に分別したとき、結晶部2に中融点成分が残存しやすいため、分離効率が悪くなりやすい。一方、圧搾する際の圧力が2MPaより高いと、結晶部1を圧搾しながら加熱して発汗させているときに、高融点成分がろ布を透過しやすく、結晶部2と液状部2の分離効率が悪くなりやすい。
また、圧搾する際の圧力は、発汗工程の初期より終期にかけて徐々に低下させてもよい。これは、結晶部1の油脂結晶の状態によっては、発汗操作により結晶の耐圧性が低下し、圧力により結晶が崩壊する恐れがあるためである。
この分別工程では、上記のように圧搾を行いながら加熱し発汗させ、分別を行なうので、圧搾と分別を同時に行なえる圧搾濾過機や、圧搾できるフィルタープレス(メンブレンフィルター)、ベルトプレス等を用いた圧搾濾過が好ましい。
このとき得られる液状部2を、液状部2が溶出してくる時間により、さらに分画してもよい。
これは、発汗の初期に除去される液状部は、液状部2でもより融点の低い成分であるため、これを除去した後に得られる液状部2は、より低融点部分の少ない、より純度の高い液状部2が得られるというものである。
また、より純度の高い液状部2を得るために、上記の結晶部1を圧搾しながら加熱して発汗させる際に、発汗工程の初期より終期にかけて加熱温度を多段的に上昇させ、複数の液状部2を得てもよい。
これは、発汗の初期に除去される液状部は、液状部2でもより融点の低い成分であるため、これを除去した後に加熱温度を上昇させることで、より低融点部分の少ない、より純度の高い液状部2が得られるというものである。
また、より純度の高い結晶部2を得るために、上記の結晶部1を圧搾しながら加熱して発汗させる際に、発汗工程の初期より終期にかけて加熱温度を連続的に上昇させてもよい。
これは、圧搾しながら加熱して発汗することにより、結晶部から徐々に液状部が除去されるため、結晶部をDSCで融解した場合に観察される融解ピークは徐々に高温側に移動するため、このとき融解ピークの高温側への移動に合わせて、発汗温度を連続的に上げていくことによって、より純度の高い結晶部2を得ることができるものである。
次に、本発明の分別方法により得られた結晶部2について述べる。
本発明の分別方法により得られた結晶部2は、結晶部1の結晶部(高融点成分)が、より濃縮されているものであり、特に、原料油脂としてチョコレート用の油脂であるハードバター用に用いられる油脂を使用した場合、トリ飽和グリセリドや対称型トリグリセリドがより濃縮されているという特徴を有する。
その場合、本発明の分別方法により得られた結晶部2の対称型トリグリセリドの含有量は、好ましくは75〜99重量%、さらに好ましくは80〜95重量%、最も好ましくは85〜95重量%である。
上記結晶部2の用途としては、チョコレート用油脂、ホワイトチョコレート用油脂、バタークリーム用油脂、サンドクリーム用油脂、マーガリン・ショートニングの原料油脂などが挙げられる。
次に、本発明の分別方法により得られた液状部2について述べる。
本発明の分別方法により得られた液状部2は、結晶部1の高融点成分が除去されているものであり、特に、原料油脂としてチョコレート用の油脂であるハードバター用に用いられる油脂を使用した場合、対称型トリグリセリドを多く含有しながら、トリ飽和グリセリド含量が低いという特徴を有する。
その場合、本発明の分別方法により得られた液状部2の対称型トリグリセリドの含有量は、好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは70〜95重量%である。そして、トリ飽和グリセリドの含有量は、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。
上記液状部2の用途としては、チョコレート用油脂、ホワイトチョコレート用油脂、バタークリーム用油脂、サンドクリーム用油脂、マーガリン・ショートニングの原料油脂をはじめ、チョコレートの硬さ調整やアイスクリームやアイスコーティング用油脂、ホイップクリームなどのO/W型乳化油脂の原料油などに使用することが可能である。
なお、下記の表1〜5において、DG:ジグリセライド、P:パルミチン酸、S:ステアリン酸、A:アラキジン酸、O:オレイン酸、L:リノール酸、s:飽和脂肪酸、u:不飽和脂肪酸を示すものとする。また、下記の表1〜5に記載の数値の単位は質量%である。
パームオレインをドライ分別して得たヨウ素価45のパーム中融点部500gをジャケット付ガラス製晶析槽に取り、60℃で完全に溶解した後、ゆっくり攪拌しながら22℃で8時間結晶化しSFCが10%(22℃)の結晶化スラリーを得た。該結晶化スラリーの粒度分布を調べたところ、60〜800μmの範囲内であり、メジアン径は650μmであった。22℃に調温した恒温槽内で、メンブレンフィルター(圧搾できるフィルタープレス)を用いて結晶化スラリーを濾過分別後、3MPaで圧搾し、結晶部1と液状部1を得た。メンブレンフィルター中の結晶部1を0.5MPaに加圧した状態で恒温槽の温度を40℃に上げ、この温度に8時間保持し溶出してきた液状部2とメンブレンフィルタープレス内の結晶として残存した結晶部2を得た。なお、結晶部1のDSC(示差走査熱量計)によるオンセット温度は25℃、オフセット温度は48℃であった。
この時の収率は、結晶部1が16.9質量%、液状部1が83.1質量%、結晶部2が4.5質量%、液状部2が12.4質量%であった。
各画分のトリグリセリド組成をHPLCで測定した結果を下記表1に示した。液状部2は中融点成分にあたるものであり、susは83.7質量%、sssは1.4質量%であった。結晶部2は高融点成分にあたるものであり、susは60.5質量%、sssは24.1質量%であった。
ヨウ素価56のパームオレイン500gをジャケット付ガラス製晶析槽に取り、60℃で完全に溶解した後、ゆっくり攪拌しながら18℃で5時間結晶化しSFCが10%(22℃)の結晶化スラリーを得た。該結晶化スラリーの粒度分布を調べたところ、60〜700μmの範囲内であり、メジアン径は400μmであった。18℃に調温した恒温槽内で、メンブレンフィルター(圧搾できるフィルタープレス)を用いて結晶化スラリーを濾過分別後、3MPaで圧搾し、結晶部1と液状部1を得た。メンブレンフィルター中の結晶部1を0.5MPaに加圧した状態で恒温槽の温度を35℃に上げ、8時間保持し溶出してきた液状部2とメンブレンフィルタープレス内の結晶として残存した結晶部2を得た。なお、結晶部1のDSC(示差走査熱量計)によるオンセット温度は25℃、結晶部1のオフセット温度は45℃であった。
この時の収率は、結晶部1が13.5質量%、液状部1が86.5質量%、結晶部2が3.6質量%、液状部2が9.9質量%であった。
各画分のトリグリセリド組成をHPLCで測定した結果を下記表2に示した。液状部2は中融点成分にあたるものであり、susは76質量%、sssは1質量%であった。結晶部2は高融点成分にあたるものであり、susは49.9質量%、sssは43質量%であった。
パームオレインをドライ分別して得たヨウ素価45のパーム中融点部500gをジャケット付ガラス製晶析槽に取り、60℃で完全に溶解した後、ゆっくり攪拌しながら22℃で8時間結晶化しSFCが10%(22℃)の結晶化スラリーを得た。該結晶化スラリーの粒度分布を調べたところ、70〜620μmの範囲内であり、メジアン径は500μmであった。22℃に調温した恒温槽内で、メンブレンフィルター(圧搾できるフィルタープレス)を用いて結晶化スラリーを濾過分別後、3MPaで圧搾し、結晶部1と液状部1を得た。メンブレンフィルター中の結晶部1を0.5MPaに加圧した状態で恒温槽の温度を40℃に上げ、1時間保持し溶出してきた液状部2−1とその後さらに7時間保持して溶出してきた液状部2−2およびメンブレンフィルター内の結晶として残存した結晶部2を得た。なお、結晶部1のDSC(示差走査熱量計)によるオンセット温度は25℃、結晶部1のオフセット温度は48℃であった。
この時の収率は、結晶部1が14.8質量%、液状部1が85.2質量%、結晶部2が3.6質量%、液状部2−1が0.5質量%、液状部2−2が10.7質量%であった。
各画分のトリグリセリド組成をHPLCで測定した結果を下記表3に示した。液状部2−1、2−2は中融点成分にあたるものであり、susは液状部2−1で71.9質量%、液状部2−2で88.6質量%、sssは液状部2−1で0.3質量%、液状部2−2で3.3質量%であった。結晶部2は高融点成分にあたるものであり、susは44.9質量%、sssは44.9質量%であった。
パームオレインをドライ分別して得たヨウ素価45のパーム中融点部500gをジャケット付ガラス製晶析槽に取り、60℃で完全に溶解した後、ゆっくり攪拌しながら22℃で4時間結晶化し、SFCが4%(22℃)の結晶化スラリーを得た。22℃に調温した恒温槽内で、メンブレンフィルター(圧搾できるフィルタープレス)を用いて結晶化スラリーを濾過分別後、3MPaで圧搾し、結晶部1と液状部1を得た。
液状部1を完全に溶解した後、ゆっくり攪拌しながら22℃で11時間結晶化し、SFCが6%(22℃)の結晶化スラリーを得た。22℃に調温した恒温槽内で、メンブレンフィルター(圧搾できるフィルタープレス)を用いて結晶化スラリーを濾過分別後、3MPaで圧搾し、結晶部2と液状部2を得た。
この時の収率は、結晶部1が6.9質量%、液状部1が93.1質量%、結晶部2が12.5質量%、液状部2が80.6質量%であった。
各画分のトリグリセリド組成をHPLCで測定した結果を下記表4に示した。結晶部2は中融点成分にあたるものであり、susは84.4質量%、sssは2.2質量%であった。結晶部1は高融点成分にあたるものであり、susは77.1質量%、sssは15.5質量%であった。
パームオレインをドライ分別して得たヨウ素価45のパーム中融点部500gをジャケット付ガラス製晶析槽に取り、60℃で完全に溶解した後、ゆっくり攪拌しながら22℃で8時間結晶化し、SFCが10%(22℃)の結晶化スラリーを得た。該結晶化スラリーの粒度分布を調べたところ、60〜800μmの範囲内であり、メジアン径は650μmであった。22℃に調温した恒温槽内で、メンブレンフィルター(圧搾できるフィルタープレス)を用いて結晶化スラリーを濾過分別後、3MPaで圧搾し、結晶部1と液状部1を得た。メンブレンフィルター中の結晶部1を加圧せずに恒温槽の温度を40℃に上げ、8時間保持後、0.1MPaで圧搾し、溶出してきた液状部2とメンブレンフィルター内の結晶として残存した結晶部2を得た。なお、結晶部1のDSC(示差走査熱量計)によるオンセット温度は24.5℃、結晶部1のオフセット温度は47℃であった。
この時の収率は、結晶部1が11.6質量%、液状部1が88.4質量%、結晶部2が7.8質量%、液状部2が3.8質量%であった。
各画分のトリグリセリド組成をHPLCで測定した結果を下記表5に示した。液状部2は中融点成分にあたるものであり、susは80.5質量%、sssは6.1質量%であった。結晶部2は高融点成分にあたるものであり、susは69.3質量%、sssは19.4質量%であった。
実施例1と比較例2を比較すると、実施例1では、発汗工程において圧搾を行なわない比較例2よりも、sssの含有量が多い高融点成分やsusの含有量が多い中融点成分が得られることがわかる。
実施例1と実施例3を比較すると、発汗工程において得られた液状部2をさらに溶出する時間により分画した実施例3の液状部2−2のほうが、実施例1の液状部2よりもよりsusの含有量が多い中融点成分が得られることがわかる。
ヨウ素価56のパームオレイン500gをジャケット付ガラス製晶析槽に取り、60℃で完全に溶解した後、ゆっくり攪拌しながら18℃で65時間結晶化しSFCが21%の結晶化スラリーを得た。該結晶化スラリーの粒度分布を調べたところ、100〜400μmの範囲内であり、メジアン径は280μmであった。18℃に調温した恒温槽内で、メンブレンフィルタープレス(圧搾できるフィルタープレス)を用いて結晶化スラリーを濾過分別後、1MPaで圧搾し、結晶部1と液状部1を得た。メンブレンフィルタープレス中の結晶部1を0.7MPaに加圧した状態で恒温槽の温度を1時間で26℃に、次いで11時間で28℃に、連続的に加熱温度を上昇させ、溶出してきた液状部2とメンブレンフィルタープレス内の結晶として残存した結晶部2を得た。なお、結晶部1のDSC(示差走査熱量計)によるオンセット温度温度は25℃、結晶部1のオフセット温度は36℃であった。また、発汗終了後の結晶部2のDSCによるオンセット温度は27℃、オフセット温度は36℃であった。
この時の収率は、結晶部1が23.8質量%、液状部1が76.2質量%、結晶部2が20.9質量%、液状部2が2.9質量%であった。
各画分のトリグリセリド組成をHPLCで測定した結果を下記表6に示した。液状部2は中融点成分にあたるものであり、susは59質量%、sssは0質量%であった。結晶部2は高融点成分にあたるものであり、susは86質量%、sssは3.0質量%であった。
ヨウ素価56のパームオレイン150kgをジャケット付製晶析槽に取り、60℃で完全に溶解した後、ゆっくり攪拌しながら17℃で48時間結晶化しSFCが22%の結晶化スラリーを得た。該結晶化スラリーの粒度分布を調べたところ、60〜820μmの範囲内であり、メジアン径は450μmであった。17℃に調温した恒温槽内で、メンブレンフィルタープレス(圧搾できるフィルタープレス)を用いて結晶化スラリーを濾過分別後、5MPaで圧搾し、結晶部1と液状部1を得た。メンブレンフィルタープレス中の結晶部1を0.7MPaに加圧した状態で恒温槽の温度を28℃で8時間加熱し溶出してきた液状部2−1を得た。次いで圧力を0.5MPaに下げ、35℃で16時間加熱し、溶出してきた液状部2−2とメンブレンフィルタープレス内の結晶として残存した結晶部2−2を得た。なお、結晶部1のDSC(示差走査熱量計)によるオンセット温度温度は25℃、オフセット温度は43℃であった。
この時の収率は、結晶部1が30.7質量%、液状部1が69.3質量%、結晶部2−2が0.9質量%、液状部2−1が17.3質量%、液状部2−2が12.5重量%であった。
各画分のトリグリセリド組成をHPLCで測定した結果を下記表7に示した。液状部2−1、液状部2−2は中融点成分にあたるものであり、液状部2−2のsusは87質量%、sssは1.2質量%であった。結晶部2は高融点成分にあたるものであり、susは53質量%、sssは33質量%であった。
脱酸、脱色したサル脂2kgを60℃で完全に溶解した後、トレイに取り、31℃まで放冷後、種晶を0.01%添加、混合し、そのまま31℃で22時間、静置結晶化し、SFCが52%の高粘度結晶化スラリーを得た。該結晶化スラリーの粒度分布を調べたところ、50〜450μmの範囲内であり、メジアン径は230μmであった。なお、種晶は予め分別して得たサル脂結晶部をオリーブ油に20%溶解し、5℃で冷却して得たスラリーを用いた。結晶化して得られた高粘度結晶化スラリーを31℃に調温した恒温槽内で、3MPaで圧搾し、結晶部1と液状部1を得た。圧搾機中の結晶部1を0.5MPaに加圧した状態で恒温槽の温度を35℃で8時間加熱し溶出してきた液状部2と、メンブレンフィルタープレス内の結晶として残存した結晶部2を得た。なお、結晶部1のDSC(示差走査熱量計)によるオンセット温度は32℃、オフセット温度は40℃であった。
この時の収率は、結晶部1が65質量%、液状部1が35質量%、結晶部2が54質量%、液状部2が11質量%であった。
各画分のトリグリセリド組成をHPLCで測定した結果を下記表8に示した。液状部2は中融点成分にあたるものであり、結晶部2のsusは91質量%、sssは0.2質量%であった。結晶部2は高融点成分にあたるものであり、susは51質量%、sssは0質量%であった。
カカオ脂2kgを60℃で完全に溶解した後、トレイに取り、5℃の冷蔵庫で4時間冷却、結晶化後、30℃の恒温槽内で40時間、静置結晶化し、SFCが60%の高粘度結晶化スラリーを得た。該結晶化スラリーの粒度分布を調べたところ、50〜450μmの範囲内であり、メジアン径は230μmであった。結晶化して得られた高粘度結晶化スラリーを30℃に調温した恒温槽内で、3MPaで圧搾し、結晶部1と液状部1を得た。圧搾機中の結晶部1を0.5MPaに加圧した状態で恒温槽の温度を33℃で5時間加熱し溶出してきた液状部2と、メンブレンフィルタープレス内の結晶として残存した結晶部2を得た。なお、結晶部1のDSC(示差走査熱量計)によるオンセット温度は28℃、オフセット温度は38℃であった。
この時の収率は、結晶部1が75質量%、液状部1が25質量%、結晶部2が55質量%、液状部2が20質量%であった。
各画分のトリグリセリド組成をHPLCで測定した結果を下記表9に示した。液状部2は中融点成分にあたるものであり、susは77質量%、sssは0.3質量%であった。結晶部2は高融点成分にあたるものであり、susは94質量%、sssは1.8質量%であった。
また、実施例5からわかるとおり、発汗させる際に、加熱温度を多段的に上昇させて得られた液状部2−2は、susの含有量が極めて高いことに加え、トリ飽和グリセリド含量が極めて低く、また高収率であることがわかる。
さらに、実施例7、8からわかるとおり、sus含量の高い油脂を使用して、本発明のドライ分別方法で得られた結晶部2は、sus含量がさらに濃縮されていることがわかる。
Claims (8)
- 油脂を溶解した後、冷却結晶化させ、結晶化スラリーとし、これを結晶部1と液状部1に分別し、得られた結晶部1を圧搾しながら加熱して発汗させ、結晶部2と液状部2に分別することを特徴とする油脂のドライ分別方法。
- 上記の結晶化スラリーの固体脂含量(SFC)が1〜65%である請求の範囲第1項記載の油脂のドライ分別方法。
- 上記の圧搾を0.02〜1MPaで行なう請求の範囲第1又は2項記載の油脂のドライ分別方法。
- 上記の結晶部1を圧搾しながら加熱して発汗させる際に、液状部2が溶出してくる時間により、さらに該液状部2を分画することを特徴とする請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の油脂のドライ分別方法。
- 上記の結晶部1を圧搾しながら加熱して発汗させる際に、加熱温度を多段的に上昇させ、複数の液状部2を得ることを特徴とする請求の範囲第1〜4項のいずれかに記載の油脂のドライ分別方法。
- 上記の結晶部1を圧搾しながら加熱して発汗させる際に、加熱温度を連続的に上昇させることを特徴とする請求の範囲第1〜4項のいずれかに記載の油脂のドライ分別方法。
- 請求の範囲第1〜6項のいずれかに記載のドライ分別方法により得られた結晶部2。
- 請求の範囲第1〜6項のいずれかに記載のドライ分別方法により得られた液状部2。
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