JP2014162859A - 油脂の乾式分別方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明の目的は、SUS含有油脂を分別してSUS型トリグリセリドに富むSUS高含有油脂を得るに際して、簡単な装置で製造場所のスペースも取らず短時間で多量の晶析が可能な、操作性にも優れる撹拌晶析及び圧搾濾過による環境にやさしい乾式分別によって、SSU型トリグリセリド含有量の低いSUS高含有油脂を得る乾式分別法を提供することにある。
【解決手段】
特定の品質のSUS含有油脂を原料として、特定の冷却及び撹拌条件で撹拌晶析を行い、得られた結晶スラリーを圧搾することにより、SSU型トリグリセリド含有量の低いSUS型トリグリセリドに富むSUS高含有油脂を簡便に得ることができる。
【選択図】なし
本発明の目的は、SUS含有油脂を分別してSUS型トリグリセリドに富むSUS高含有油脂を得るに際して、簡単な装置で製造場所のスペースも取らず短時間で多量の晶析が可能な、操作性にも優れる撹拌晶析及び圧搾濾過による環境にやさしい乾式分別によって、SSU型トリグリセリド含有量の低いSUS高含有油脂を得る乾式分別法を提供することにある。
【解決手段】
特定の品質のSUS含有油脂を原料として、特定の冷却及び撹拌条件で撹拌晶析を行い、得られた結晶スラリーを圧搾することにより、SSU型トリグリセリド含有量の低いSUS型トリグリセリドに富むSUS高含有油脂を簡便に得ることができる。
【選択図】なし
Description
本発明はSUS含有油脂の乾式分別によるSUS高含有油脂の製造法、特にパームオレインからパーム中融点画分を得る製造法に関する。
SUS(S:炭素数14〜22の飽和脂肪酸、U:炭素数18の1不飽和脂肪酸)含有油脂はSUSが1、3位に飽和脂肪酸、2位に不飽和脂肪酸を含有し、独特の体温付近でのシャープな融解性状を示す物理的な性質を有するため、製菓用油脂としてチョコレートやファットクリーム、冷菓などの分野で利用されている。
SUS含有油脂としては、パーム油、シア脂、サル脂、マンゴー脂、イリッペ脂及び2位に不飽和脂肪酸に富む油脂に酵素エステル交換により1,3位に飽和脂肪酸を選択的に導入して得られるSUS含有油脂が例示される。
SUS含有油脂としては、パーム油、シア脂、サル脂、マンゴー脂、イリッペ脂及び2位に不飽和脂肪酸に富む油脂に酵素エステル交換により1,3位に飽和脂肪酸を選択的に導入して得られるSUS含有油脂が例示される。
パーム油は常温で半固形の性状を示す油脂であるが、分別により主に高融点画分(パームステアリン)、中融点画分(PMF:Palm mid fraction)、低融点画分(パームオレイン)の3つに分けられ、様々な分野で利用されている。分別されたパーム中融点画分(以下PMFと略す。)は、P2O型トリグリセリド(POP型トリグリセリド+PPO型トリグリセリド、P:パルミチン酸、O:オレイン酸)を主成分とするため体温付近でシャープに融解する性状を示し、食品に利用した場合に口どけが良く、清涼感を与えることから製菓用油脂としてチョコレートやファットクリーム、冷菓などの分野で利用されている。
シア脂、サル脂、マンゴー脂、イリッペ脂や前記酵素エステル交換油及びそれらの分別油に例示されるSUSとしてStOSt(1,3-ステアロ,2−オレイン)、POSt(1−パルミト,2−オレオ,3−ステアリン)などを主成分として含有する油脂は、単独またはパーム中融点部と混合して、カカオ脂の代替脂や物性改良剤として利用されている。
上記のSUS含有油脂であるチョコレート用油脂(ハードバター)はその油脂の結晶性がチョコレートのテンパリングや型離れなどの作業性に大きな影響を及ぼすため、油脂の結晶性を左右する油脂中のジグリセリドやSSU型トリグリセリド(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸)含有量が非常に重要な要素となっている。
上記のSUS含有油脂であるチョコレート用油脂(ハードバター)はその油脂の結晶性がチョコレートのテンパリングや型離れなどの作業性に大きな影響を及ぼすため、油脂の結晶性を左右する油脂中のジグリセリドやSSU型トリグリセリド(S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸)含有量が非常に重要な要素となっている。
SUS含有油脂はトリグリセリドが部分加水分解を受けて生じたDG(ジグリセリド)を多く含んでいる。DGはSUS型対称トリグリセリドを主要成分とする油脂結晶の安定化を阻害することが明らかにされており、DG含有量が多いと該SUS含有油脂を使用して調製したチョコレートのテンパリング作業性が低下したり、成形固化後のチョコレートの耐熱保形性の低下を引き起こすなどの悪影響を与える。SUSの異性体であるSSUもDGと同様に、SUS型対称トリグリセリドを主要成分とする油脂結晶の固化に際して結晶化阻害作用を示すことが知られている。
SUS含有油脂はそのままでも製菓用油脂として利用可能であるが、さらに口どけや耐熱保形性の向上のために、分別による高SUS含有油脂の製造が広く行われている。かかる
SUS含有油脂から分別によりSUS型トリグリセリドをSUS高含有油脂中に濃縮しようとすると、トリグリセリド間の親和性、結晶化温度が近いため異性体であるSSU型トリグリセリドも同時に濃縮され、このSSU型トリグリセリドをSUS高含有油脂から分離することは非常に困難である。
SUS含有油脂から分別によりSUS型トリグリセリドをSUS高含有油脂中に濃縮しようとすると、トリグリセリド間の親和性、結晶化温度が近いため異性体であるSSU型トリグリセリドも同時に濃縮され、このSSU型トリグリセリドをSUS高含有油脂から分離することは非常に困難である。
SUS含有油脂の分別方法としては、1)アセトンやヘキサンのような有機溶剤を用いる溶剤分別法、2)界面活性剤を利用する乳化分別法、3)溶剤も乳化剤も用いずに分別原料油脂を冷却固化してから圧搾濾過で固液分離する乾式分別法がある。
溶剤分別法は、分別原料を溶剤で希釈して晶析するため、結晶部への低融点画分の抱き込みが非常に少なくなる結果、高い分別精度が得られる利点があるが、溶剤の回収コストが高く、溶剤使用のため安全性に問題がある方法であった。
乳化分別法は、界面活性剤水溶液による結晶部に残存する低融点画分の洗浄、抽出効果が不十分のため、分別精度がやや低い問題と界面活性剤水溶液の分離及び排水処理に手間がかかるという問題があった。
SUS含有油脂の乾式分別法としては、静置晶析法と撹拌晶析法に大別され、下記のような方法が提案されている。それぞれの特徴と長所及び短所は下記の通りである。
特許文献1には、伝熱性容器内に静置された均一な融解非ラウリン油脂を、空冷もしくは水冷して所望の結晶化率まで結晶化させ、得られた結晶塊を解砕後、圧搾して結晶画分と濾液画分に分別することを特徴とする非ラウリン油脂の乾式分別法が開示されている。本方法によると、パームオレイン(パーム分別低融点部)から高品質のPMFを高収率で得ることができるが、かかる静置晶析法でパームオレインから得られるPMF中には比較的高い含有量でSSU型トリグリセリドが濃縮される傾向があった。また、本方法では静置晶析のために多数の伝熱性容器を必要とすることから晶析設備が長大になり設備費用が大きくなるという問題もあった。
一方、静置晶析に代えて従来から利用されている撹拌晶析法を用いてパームオレインからPMFを分別すると、晶析後の結晶スラリーを次工程の圧搾濾過工程へポンプ輸送可能な範囲に制御する必要があり、結果としてPMFの分別収率が低くしかも結晶部への低融点画分の抱き込みによるPMF品質低下の問題があった。また、PMF中のSSU型トリグリセリド含有量も静置晶析法よりは低い傾向にあるもののまだ比較的高いレベルにあり、さらなるSSU型トリグリセリド含有量の低減方法が求められていた。
上記より、より簡便な撹拌晶析法によって、パームオレインなどのSUS含有油脂からSSU型トリグリセリド含有量の低いSUS高含有油脂を高分別収率で得ることができる分別方法が望まれていた。
本発明の目的は、SUS含有油脂を分別してSUS高含有油脂を得るに際して、簡単な装置で製造場所のスペースも取らず短時間で多量の晶析が可能な、操作性にも優れる撹拌晶析及び圧搾濾過による環境にやさしい乾式分別によって、SSU型トリグリセリド含有量の低いSUS型トリグリセリドに富むSUS高含有油脂を得る乾式分別法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、特定の品質のSUS含有油脂を特定の晶析条件下に動的状態で結晶化させる撹拌晶析法で晶析し、その後圧搾濾過により固液分離することにより、結晶画分としてSSU型トリグリセリド含有量の低減されたSUS型トリグリセリドに富むSUS高含有油脂を得る方法を見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明の第1はSUS型トリグリセリド含有量が25〜45重量%、SSS型トリグリセリド含有量が0.2〜0.7重量%であるSUS含有油脂を原料として、分別第1最下点温度までの急冷による結晶核生成工程とリヒート保持後に再度第2最下点まで冷却する結晶成長工程からなる撹拌晶析後に、圧搾濾過により結晶画分を得る、乾式分別によるSUS高含有油脂の製造方法(S:炭素数14〜22の飽和脂肪酸、U:炭素数18の1不飽和脂肪酸)
第2は分別第1最下点までの急冷速度が0.1〜10℃/分、リヒート保持温度が第1最下点温度より2〜5℃高く、リヒート保持温度から第2最下点温度までの冷却速度が0.5〜1.5℃/時間である第1記載のSUS高含有油脂の製造方法である。
第3はSUS高含有油脂のS2U含有量が45〜65重量%、SSS含有量が0.9〜1.5重量%であり、SSU/(SUS+SSU)が0.08〜0.12である第1または第2記載のSUS高含有油脂の製造方法である。
第4はSUS含有油脂がパームオレインである第1〜第3のいずれか1記載のSUS高含有油脂の製造方法である。
第5は、SUS高含有油脂がパーム中融点画分であり、その沃素価が42〜47である第4記載のSUS高含有油脂の製造方法である。
第2は分別第1最下点までの急冷速度が0.1〜10℃/分、リヒート保持温度が第1最下点温度より2〜5℃高く、リヒート保持温度から第2最下点温度までの冷却速度が0.5〜1.5℃/時間である第1記載のSUS高含有油脂の製造方法である。
第3はSUS高含有油脂のS2U含有量が45〜65重量%、SSS含有量が0.9〜1.5重量%であり、SSU/(SUS+SSU)が0.08〜0.12である第1または第2記載のSUS高含有油脂の製造方法である。
第4はSUS含有油脂がパームオレインである第1〜第3のいずれか1記載のSUS高含有油脂の製造方法である。
第5は、SUS高含有油脂がパーム中融点画分であり、その沃素価が42〜47である第4記載のSUS高含有油脂の製造方法である。
本発明によれば、SUS含有油脂を分別してSUS型トリグリセリドに富むSUS高含有油脂を得るに際して、簡単な装置で製造場所のスペースも取らず短時間で多量の晶析が可能な、操作性にも優れる撹拌晶析及び圧搾濾過による環境にやさしい乾式分別によって、SSU型トリグリセリド含有量の低いSUS型トリグリセリドに富むSUS高含有油脂を得る方法を提供することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のSUS含有油脂とは、1、3位に炭素数14〜22の飽和脂肪酸、2位に炭素数18の1不飽和脂肪酸を含有する、所謂、対称型トリグリセリドを含有する油脂であり、パーム油、シア脂、サル脂、マンゴー脂、イリッペ脂及び2位に炭素数18の1不飽和脂肪酸に富む油脂に酵素エステル交換により1,3位に飽和脂肪酸を選択的に導入して得られるSUS含有油脂が例示される。
本発明のSUS含有油脂とは、1、3位に炭素数14〜22の飽和脂肪酸、2位に炭素数18の1不飽和脂肪酸を含有する、所謂、対称型トリグリセリドを含有する油脂であり、パーム油、シア脂、サル脂、マンゴー脂、イリッペ脂及び2位に炭素数18の1不飽和脂肪酸に富む油脂に酵素エステル交換により1,3位に飽和脂肪酸を選択的に導入して得られるSUS含有油脂が例示される。
本発明のSSU型トリグリセリド含有量が少ないSUS高含有油脂の製造方法は、SUS含有油脂を原料として撹拌晶析と圧搾濾過による乾式分別において、分別第1最下点温度までの急冷による結晶核生成工程とリヒート保持後に再度第2最下点まで冷却する結晶成長工程からなる晶析後に、圧搾濾過により結晶画分を得るSUS高含有油脂の製造方法である。撹拌晶析とは、加熱により融解したSUS含有油脂を冷却開始から晶析完了まで終始撹拌しながら(間歇的な撹拌を含む。)結晶化を行う晶析の方法である。また、圧搾濾過とは、晶析した結晶スラリーに圧力をかけながら濾過して固液分離する方法で圧搾されたケーキ側が結晶画分、濾液側が濾液画分である。
結晶核生成工程において急冷の冷却速度は0.1〜10℃/分が好ましく、より好ましくは0.2〜5℃/分である。冷却速度が速すぎると細かすぎる結晶となり、固液分離操作で濾過漏れを起こしやすくなる。逆に遅すぎると結晶はSUS高含有油脂中に液体成分を抱き込んだ粗大結晶となり、SUS高含有油脂中のSUS型トリグリセリドを所望の濃度まで濃縮することが難しくなる。分別第1最下点温度はSUS含有油脂の種類に応じて適宜選択すればよいが、13〜25℃が好ましい。SUS含有油脂がパームオレインの場合は、13℃〜15℃が好ましく、より好ましくは14℃〜15℃である。分別第1最下点到達後は80〜110分間保持することが好ましく、より好ましくは90〜100分間である。分別第1最下点温度が低く、保持時間が長いと結晶核の発生量が増加するとともに結晶スラリー粘度が上昇するため、固液分離性が悪化する。
結晶核生成工程後はリヒート・保持後に再び第2最下点まで冷却して結晶析出を進める結晶成長工程に移るのであるが、リヒートせずにそのまま冷却した場合、結晶はSUS高含有油脂中に液体成分を抱き込んだ粗大結晶となり、SUS高含有油脂中のSUS型トリグリセリドを目標まで濃縮することが難しくなる。リヒート温度は第1最下点温度より2〜5℃高い温度であるのが好ましく、より好ましくは3〜5℃高い温度である。リヒート温度が5℃より高いと、生成された結晶核の再融解が生じる恐れがあり、また結晶成長速度が低下するため好ましくない。リヒート温度が2℃未満の高い温度であると、リヒートせずに冷却した場合と同様に、結晶はSUS高含有油脂中に液体成分を抱き込んだ粗大結晶となり固液分離性が低下する傾向のため好ましくない。SUS含有油脂がパームオレインの場合、リヒート温度は17℃〜19℃が好ましく、より好ましくは17℃〜18℃である。
分別第2最下点温度はSUS含有油脂の種類に応じて適宜選択すればよいが、8℃〜20℃が好ましい。SUS含有油脂がパームオレインの場合、8℃〜12℃が好ましく、より好ましくは9℃〜11℃である。リヒート保持温度から分別第2最下点までの冷却速度は0.5〜1.5℃/時間が好ましく、より好ましくは0.8℃〜1.1℃/時間である。分別第2最下点までの冷却速度が下限未満であると、晶析終了まで長時間を要し分別作業効率が低下するため好ましくない。逆に上限を超えると、得られた結晶がSUS高含有油脂中に液体成分を抱き込んだ粗大結晶となり固液分離性が低下する傾向のため好ましくない。
圧搾濾過における結晶スラリーの好ましい結晶量は、固体脂含有量として25〜35重量%、好ましくは28〜33重量%である。25%未満であると圧搾濾過での分離性は良好であるが、結晶画分の分別収率が低く効率的でない。35重量%を超えると結晶スラリーの粘度が高くなり圧搾濾過工程へのポンプ輸送が困難になるとともに圧搾濾過工程での結晶への濾液成分の抱き込みが高くなり固液分離性が低下するため好ましくない。
結晶画分と濾液画分の分離にはフィルタープレスやメンブランフィルターなどの圧搾濾過の方法を用いるのが好ましい。特にSUS含有量の高い画分を得るには最大圧力30Kg/cm2のような高圧圧搾により結晶画分への濾液残液率を低下させるのが望ましい。
本発明のSUS含有油脂のSUS型トリグリセリド含有量は、25〜45重量%であるのが好ましく、さらに好ましくは30〜40重量%である。SUS型トリグリセリド含有量が下限未満であると、SUS高含有油脂の分別収率が低下するため好ましくなく、逆に上限を超えると晶析後の結晶スラリーの固液分離性が低下するため好ましくない。
本発明のSUS含有油脂のSSS型トリグリセリド含有量は0.2〜0.7重量%が好ましく、より好ましくは0.4〜0.7重量%である。SSS型トリグリセリドは含有量が多いほど分別精度は良くなるが、分別により得られるSUS高含有油脂の口どけの低下やテンパリング作業性の低下のような悪影響が生じるため、0.7重量%を上限にすることが望ましい。逆に、下限未満であると分別工程での晶析時間が長くなりすぎて分別作業性が低下するため好ましくない。SUS含有油脂中のSSS型トリグリセリド含有量が0.7重量%を超える場合は、あらかじめSSS型トリグリセリドを主成分とする高融点部を晶析、除去して、SSS型トリグリセリド含量を0.2〜0.7重量%に調整したSUS含有油脂を調製して、本発明の乾式分別に供するのが好ましい。
圧搾濾過後のSUS高含有油脂中のS2U含有量は45〜65重量%であるのが好ましい。S2U含有量が下限未満であると、SUS高含有油脂の固化後の耐熱保形性の低下や硬さの低下が生じるため好ましくない。また、上限を超えるとSUS高含有油脂の分別収率が低下するため好ましくない。
本発明のS2UトリグリセリドはSUS型トリグリセリドとSSU型トリグリセリドの総和であり、SUS型トリグリセリドは1位及び3位に炭素数14〜22の飽和脂肪酸残基、2位に炭素数18の1不飽和脂肪酸残基を有する対称型トリグリセリドである。SSU型トリグリセリドは1及び2位に炭素数14〜22の飽和脂肪酸酸残基、3位に炭素数18の1不飽和脂肪酸残基を有する、または2位及び3位に炭素数14〜22の飽和脂肪酸酸残基、1位に炭素数18の1不飽和脂肪酸残基を有する非対称型トリグリセリドである。
また、本発明のSUS高含有油脂中のSSS型トリグリセリド含有量は0.9〜1.5重量%であるのが好ましく、より好ましくは1〜1.4重量%である。SSS型トリグリセリド含有量が上限を超えると、口どけの低下やテンパリング作業性の低下のような悪影響が生じるため好ましくない。SSS型トリグリセリド含有量が下限未満の場合は、SUS高含有油脂の分別収率が低下するため好ましくない。
本発明ではSUS高含有油脂中に分配されるSSU型トリグリセリドの含有量を少なくすることを特徴とするものであって、SUS高含有油脂中のSSU/(SUS+SSU)の割合は0.08〜0.12であるのが好ましく、さらに好ましくは0.09〜0.11である。0.12を超えると、SUS高含有油脂の耐熱保形性の低下やテンパリング作業性の低下のような悪影響が生じるため好ましくない。逆に、0.08未満であると品質は優れるもののSUS高含有油脂の分別収率が低下するため好ましくない。
SUS含有油脂がパームオレインの場合、SUSの主成分はPOPであり、SSUの主成分はPPOである。また、SUS含有油脂がパームオレインの場合のSUS高含有油脂はパーム中融点画分(以下PMFと略す。)であり、PMFの沃素価は好ましくは42〜47、さらに好ましくは44〜45である。PMFの沃素価が下限未満であると、口どけの低下とPMF分別収率の低下があり好ましくない。逆に、PMFの沃素価が上限を超えると、耐熱保形性の低下があり好ましくない。
以下に実施例を記載するが、この発明の技術思想がこれらの例示によって限定されるものではない。
(1)晶析スラリーの結晶量は油脂のSFC(結晶スラリーの固体脂含有量%)で求めた。SFCは結晶スラリー約3gを長さ180mm、直径10mmの試験管に採取して、可及的速やかにNMR分析装置(BRUKER社製SFC測定装置)にて測定した。
(2)S2U型トリグリセリド含有量の測定は高速液体クロマトグラフィーにより行った。
融解した油脂をアセトンと混合して分析試料を調整した。移動相にアセトン/アセトニトリル=80/20の溶剤を使用してODSカラムで分離し、RI検出器で検出して得られたピーク面積%をそれぞれのトリグリセリド含有量とした。SSS含有量は、MPP,PPP及びPPStの総和で算出し、S2U含有量は、MOP,POP,POSt及びStOStの総和で算出した。
M:ミリスチン酸、P:パルミチン酸、St:ステアリン酸、O:オレイン酸
(3)SSU/(SUS+SSU)の測定は、TLC展開法で行った。TLCプレート(HPTLC−Kieselgel160 F254)、展開溶剤としてベンゼン/ヘキサン/ジエチルエーテル=75/25/2を用いて試料油脂を展開し、乾燥後に臭素及び塩化スルフリルで発色し、S2U(SUS+SSU)画分中のSUS画分及びSSU画分を定量した。
(1)晶析スラリーの結晶量は油脂のSFC(結晶スラリーの固体脂含有量%)で求めた。SFCは結晶スラリー約3gを長さ180mm、直径10mmの試験管に採取して、可及的速やかにNMR分析装置(BRUKER社製SFC測定装置)にて測定した。
(2)S2U型トリグリセリド含有量の測定は高速液体クロマトグラフィーにより行った。
融解した油脂をアセトンと混合して分析試料を調整した。移動相にアセトン/アセトニトリル=80/20の溶剤を使用してODSカラムで分離し、RI検出器で検出して得られたピーク面積%をそれぞれのトリグリセリド含有量とした。SSS含有量は、MPP,PPP及びPPStの総和で算出し、S2U含有量は、MOP,POP,POSt及びStOStの総和で算出した。
M:ミリスチン酸、P:パルミチン酸、St:ステアリン酸、O:オレイン酸
(3)SSU/(SUS+SSU)の測定は、TLC展開法で行った。TLCプレート(HPTLC−Kieselgel160 F254)、展開溶剤としてベンゼン/ヘキサン/ジエチルエーテル=75/25/2を用いて試料油脂を展開し、乾燥後に臭素及び塩化スルフリルで発色し、S2U(SUS+SSU)画分中のSUS画分及びSSU画分を定量した。
実施例1
下記表2記載のパームオレイン(沃素価55.9、酸価0.1、SSS含有量0.6重量%)を原料として撹拌晶析法による晶析を行った。撹拌晶析法による晶析においては油温を監視しながら晶析を進める方法と、冷却水の温度プロファイルを固定して晶析を進める方法があるが、今回のテストでは後者の方法で行った。
1)パームオレインを60℃、60分間加熱、融解後、撹拌回転数40rpmで第1最下点温度14℃まで0.8℃/分の冷却速度で、撹拌冷却した。(60℃から第1最下点温度 14℃までの所要時間は1時間)
2)その後、冷却水温度を変更して、14℃から18℃まで撹拌回転数30rpmで撹拌しながら加熱速度2℃/時間でリヒートを行った。(第1最下点温度からリヒート温度18℃までの所要時間2時間)
3)18℃にリヒート後、18℃で90分間、撹拌回転数30rpmで撹拌し、さらに18℃で13.5時間、撹拌回転数20rpmで撹拌を継続した。(リヒート温度18℃での保持時間は合計15時間)
4)リヒート温度18℃から、撹拌回転数20rpmで撹拌しながら、0.56℃/時間の冷却速度で11.1℃まで冷却した。(リヒート温度から第2最下点温度11.1℃までの所要時間は16時間)
晶析に要した合計時間は34時間であり、晶析終了後の結晶スラリーSFCは24.2%であった。
5)上記で得られた結晶スラリーの圧搾を行い、PMF画分と濾液画分(低融点画分)を得た。圧搾条件は、3分間で0→0.8MPaまで直線的に昇圧し、0.8MPaを7分間保持。0.8MPa→3.0MPaまで2分で直線的に昇圧し、3.0MPaを18分間保持の条件とした。表1に晶析条件を纏めた。
下記表2記載のパームオレイン(沃素価55.9、酸価0.1、SSS含有量0.6重量%)を原料として撹拌晶析法による晶析を行った。撹拌晶析法による晶析においては油温を監視しながら晶析を進める方法と、冷却水の温度プロファイルを固定して晶析を進める方法があるが、今回のテストでは後者の方法で行った。
1)パームオレインを60℃、60分間加熱、融解後、撹拌回転数40rpmで第1最下点温度14℃まで0.8℃/分の冷却速度で、撹拌冷却した。(60℃から第1最下点温度 14℃までの所要時間は1時間)
2)その後、冷却水温度を変更して、14℃から18℃まで撹拌回転数30rpmで撹拌しながら加熱速度2℃/時間でリヒートを行った。(第1最下点温度からリヒート温度18℃までの所要時間2時間)
3)18℃にリヒート後、18℃で90分間、撹拌回転数30rpmで撹拌し、さらに18℃で13.5時間、撹拌回転数20rpmで撹拌を継続した。(リヒート温度18℃での保持時間は合計15時間)
4)リヒート温度18℃から、撹拌回転数20rpmで撹拌しながら、0.56℃/時間の冷却速度で11.1℃まで冷却した。(リヒート温度から第2最下点温度11.1℃までの所要時間は16時間)
晶析に要した合計時間は34時間であり、晶析終了後の結晶スラリーSFCは24.2%であった。
5)上記で得られた結晶スラリーの圧搾を行い、PMF画分と濾液画分(低融点画分)を得た。圧搾条件は、3分間で0→0.8MPaまで直線的に昇圧し、0.8MPaを7分間保持。0.8MPa→3.0MPaまで2分で直線的に昇圧し、3.0MPaを18分間保持の条件とした。表1に晶析条件を纏めた。
実施例2
実施例1の4)の第2最下点を9.3℃に変更し、リヒート温度18℃から、撹拌回転数20rpmで撹拌しながら、0.44℃/時間の冷却速度で9.3℃まで冷却した。(リヒート温度から第2最下点温度9.3℃までの所要時間は20時間)この操作の油脂の晶析温度曲線を図1に示したが、晶析に要した合計時間は40時間であり、晶析終了後の結晶スラリーSFCは28.9%であった。得られた結晶スラリーを実施例1同様に圧搾を行い、PMF画分と濾液画分(低融点画分)を得た。表1に晶析条件、晶析条件及び圧搾により得られたPMF画分と低融点画分の分析結果を表2に纏めた。
実施例1の4)の第2最下点を9.3℃に変更し、リヒート温度18℃から、撹拌回転数20rpmで撹拌しながら、0.44℃/時間の冷却速度で9.3℃まで冷却した。(リヒート温度から第2最下点温度9.3℃までの所要時間は20時間)この操作の油脂の晶析温度曲線を図1に示したが、晶析に要した合計時間は40時間であり、晶析終了後の結晶スラリーSFCは28.9%であった。得られた結晶スラリーを実施例1同様に圧搾を行い、PMF画分と濾液画分(低融点画分)を得た。表1に晶析条件、晶析条件及び圧搾により得られたPMF画分と低融点画分の分析結果を表2に纏めた。
比較例1
パームオレイン(沃素価56.0、酸価0.1、PPP含有量0.9重量%)を用いて、実施例2同様に撹拌晶析を行った。 晶析に要した合計時間は40時間であり、晶析終了後の結晶スラリーSFCは30.5%であった。得られた結晶スラリーを実施例2同様に圧搾を行い、PMF画分及び低融点画分を得た。表1に晶析条件、得られたPMF画分及び低融点画分の分析結果を表2に纏めた。
パームオレイン(沃素価56.0、酸価0.1、PPP含有量0.9重量%)を用いて、実施例2同様に撹拌晶析を行った。 晶析に要した合計時間は40時間であり、晶析終了後の結晶スラリーSFCは30.5%であった。得られた結晶スラリーを実施例2同様に圧搾を行い、PMF画分及び低融点画分を得た。表1に晶析条件、得られたPMF画分及び低融点画分の分析結果を表2に纏めた。
比較例2
パームオレイン(沃素価56.6、酸価0.1、PPP含有量0.7重量%)を用いて静置晶析法による晶析を行った。60℃、60分間、加熱融解したパームオレイン4kgを10Lバットに入れ、その10Lバットを水槽に浸した。その後、水槽温度を20〜30°に保ちながら油脂を撹拌冷却により60℃から45℃まで予備冷却した後、30cm(L)×30cm(W)×8cm(H)のステンレストレイに液深5cmまで張り込み、冷風温度12℃のエアチャンバー内で16時間冷却し静置晶析を行った。その後、晶析された油脂を解砕/スラリー化を行った後フィルタープレスで圧搾した。
圧搾条件は、実施例1と同条件で実施し、実施例1同様にPMF画分及び低融点画分を得た。得られたPMF画分及び低融点画分の分析結果を表2に纏めた。
パームオレイン(沃素価56.6、酸価0.1、PPP含有量0.7重量%)を用いて静置晶析法による晶析を行った。60℃、60分間、加熱融解したパームオレイン4kgを10Lバットに入れ、その10Lバットを水槽に浸した。その後、水槽温度を20〜30°に保ちながら油脂を撹拌冷却により60℃から45℃まで予備冷却した後、30cm(L)×30cm(W)×8cm(H)のステンレストレイに液深5cmまで張り込み、冷風温度12℃のエアチャンバー内で16時間冷却し静置晶析を行った。その後、晶析された油脂を解砕/スラリー化を行った後フィルタープレスで圧搾した。
圧搾条件は、実施例1と同条件で実施し、実施例1同様にPMF画分及び低融点画分を得た。得られたPMF画分及び低融点画分の分析結果を表2に纏めた。
表2の対比で明らかなように、実施例2で得られたPMF画分のSSU/(SUS+SSU)の値は比較例1及び比較例2で得られたPMF画分の値より低いものであった。また、PMF画分へのSSU分配率も明らかに実施例2の方が比較例1及び比較例2よりも低いものであった。
本発明は、SUS含有油脂を原料としてSSU型トリグリセリド含有量の低いSUS高含有油脂、特にパームオレインからSSU型トリグリセリド含有量が低いSUS型トリグリセリドに富むPMFを得る乾式分別法に関するものである。
Claims (5)
- SUS型トリグリセリド含有量が25〜45重量%、SSS型トリグリセリド含有量が0.2〜0.7重量%であるSUS含有油脂を原料として、分別第1最下点温度までの急冷による結晶核生成工程とリヒート保持後に再度第2最下点まで冷却する結晶成長工程からなる撹拌晶析後に、圧搾濾過により結晶画分を得る、乾式分別によるSUS高含有油脂の製造方法。(S:炭素数16〜22の飽和脂肪酸、U:炭素数18の1不飽和脂肪酸)
- 分別第1最下点までの急冷速度が0.1〜10℃/分、リヒート保持温度が第1最下点温度より2〜5℃高く、リヒート保持温度から第2最下点温度までの冷却速度が0.5〜1.5℃/時間である請求項1記載のSUS高含有油脂の製造方法。
- SUS高含有油脂のS2U含有量が45〜65重量%、SSS含有量が0.9〜1.5重量%であり、SSU/(SUS+SSU)が0.08〜0.12である請求項1または請求項2記載のSUS高含有油脂の製造方法。
- SUS含有油脂がパームオレインである請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のSUS高含有油脂の製造方法。
- SUS高含有油脂がパーム中融点画分であり、その沃素価が42〜47である請求項4記載のSUS高含有油脂の製造方法。
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JP2016077175A (ja) * | 2014-10-10 | 2016-05-16 | 株式会社Adeka | ハードバターの製造方法 |
WO2019103667A1 (en) * | 2017-11-22 | 2019-05-31 | Aak Ab (Publ) | Process for dry fractionation of a palm oil olein |
-
2013
- 2013-02-26 JP JP2013035483A patent/JP2014162859A/ja active Pending
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