JP2004123839A - 油脂の乾式分画方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は油脂を分画して得られる、高融点画分、中融点画分、低融点画分の分画精度を高めることで、特に中融点画分を使用したチョコレート等のハードバター製品として、チョコレートの口溶けを良好にする油脂の乾式分画法を提供することを目的とする。
【解決手段】原料油脂を、少なくとも、結晶画分(F)と液状画分(L)に分画する工程及び液体画分(L)をさらに結晶画分(LF)と液状画分(LL)に分画する工程とを経て、高融点画分、中融点画分、低融点画分に分画する方法において、F画分またはLF画分の一部のみを融解する昇温をしたのちに当該画分(FまたはLF)をさらに固液分離することを特徴とする油脂の乾式分画方法。
【選択図】なし。
【解決手段】原料油脂を、少なくとも、結晶画分(F)と液状画分(L)に分画する工程及び液体画分(L)をさらに結晶画分(LF)と液状画分(LL)に分画する工程とを経て、高融点画分、中融点画分、低融点画分に分画する方法において、F画分またはLF画分の一部のみを融解する昇温をしたのちに当該画分(FまたはLF)をさらに固液分離することを特徴とする油脂の乾式分画方法。
【選択図】なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は油脂の分画工程で得られる高融点画分、中融点画分、低融点画分の分画精度の高い油脂の乾式分画方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
油脂の代表的な分画方法としては、原料油脂をアルコールやアセトン、ヘキサン等の有機溶剤にて分画する溶剤分別法と溶媒を用いずに行う乾式分別法が知られている。乾式分別法はコストや安全性の面で溶剤分別法より好ましい方法であるが、溶剤分別法に比べて結晶画分と液状画分の分離精度が低く、結晶画分にかなりの液状画分が混入するという問題がある。このため、原油の分画に採用されることはあっても、硬化やエステル交換といった加工工程を経て分子種の多くなった段階でハードバターを得る段階の分別方法として乾式分別は殆ど採用されなかった。一方、溶剤分別法の固液分離精度は高いが、本発明者の知見によれば、特に連続した融点、近似した分子種をもつ異性化硬化油の分別に関しては、結晶画分の取り残しや液状画分の混入といった問題があり、未だ不十分である。
【0003】
一般に二段の分別工程により油脂の高融点画分および低融点画分を除去し、中融点画分を得ることが知られている。特にパーム油等を異性化硬化した油脂を分別することにより得られた中融点画分は、ココアバター代替脂としてチョコレートの物性改良に使用されている。チョコレート類に使用される油脂はハードバターと言われ、ココアバターや異性化硬化油の他にラウリン系油脂等がある。異性化硬化油から溶剤分別により得られた中融点画分はココアバターやラウリン系油脂と比較して口溶けが概して悪く、シャープな融解曲線を有しない。また、中融点画分は経時的に高融点画分、低融点画分に分離し、口溶けが悪化したり、低温ブルームが生じやすいという欠点がある。これは本発明者の知見によれば、結晶化時に起こる結晶中への液状油の抱き込みや濾過時の分離精度、および近似した融点のトリグリセリドの相互溶解等の影響で分画が不十分であることが原因である。これは、中融点画分に高融点画分・低融点画分が混入するため、結晶化当初の分子が均一に分散している混晶状態から、融点の近いもの同士が集まる共晶状態に経時的に変化するため、口溶けの悪化や軟化が生じるのではないかということが推定される。
【0004】
上記欠点の改善を目的として吸着剤や結晶改質剤を用い、乾式分別における固液分離効率を高める方法が特開平4−154897号公報および特表平10−511420号公報に開示されているが、そのような方法は吸着剤処理による油脂分の損失および結晶改質剤の除去が困難であるという問題がある。また、特開平4−306296公報では液状脂肪酸を含む固体脂肪酸を融点以下の温度で加温し、液状成分を発汗させることで、固液分離の効率を高める方法が開示されているが、これは湿潤剤分別法、つまり溶媒使用の分別法である点、及び近似したトリグリセリド間の分離でない点で本発明とは異なるものである。また特開平6−234695公報では圧力晶析後に加圧し、次に降圧することにより発汗を行い、更に圧搾を行うことで固液分離効率を高め、高純度の結晶を得る方法を開示しているが、これも脂肪酸の精製法に関するものであって、本発明とは異なるものである。
【特許文献1】特開平04−154897号公報
【特許文献2】特表平10−511420号公報
【特許文献3】特開平04−306296号公報
【特許文献4】特開平06−234695号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は油脂を分画して得られる、高融点画分、中融点画分、低融点画分の分画精度を高めることで、特に中融点画分の口溶けや経時的な融点低下を防ぎ、ひいてはこれを使用したチョコレート等のハードバター製品用として、チョコレートの口溶けを良好にする油脂の乾式分画法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達するために、鋭意研究を行った結果、油脂を分画する方法において、乾式分別により得られた画分、特に中融点画分中に混在する高融点画分、及び低融点画分を効率よく分離する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、原料油脂を、少なくとも、結晶画分(F)と液状画分(L)に分画する工程及び液状画分(L)をさらに結晶画分(LF)と液状画分(LL)に分画する工程とを経て、高融点画分、中融点画分、低融点画分に分画する方法において、F画分またはLF画分の一部のみを融解する昇温をしたのちに当該画分(FまたはLF)をさらに固液分離する油脂の乾式分画方法である。好ましくは、F画分から得られた液状画分(FL)とLF画分から得られた結晶画分(LFF)とを混合して中融点画分とし、或いは、F画分またはLF画分の一部を融解する昇温をしたのち、かつ当該画分を固液分離する前に、降温処理を実施すること、さらには昇温と降温処理、並びに要すれば結晶画分の分取を反復して行う方法を包含する。上記各工程で分画乃至固液分離される結晶画分と液状画分の重量比率は8〜2/2〜8が好ましく、7〜3/3〜7がより好ましい。各分画の工程により得られる結晶画分中に残存する液体成分が15重量%以下、好ましくは10重量%以下とするのがよい。この発明において、原料油脂の代表例はが異性化硬化油でトランス酸含量が30%以上の油脂の乾式分画方法を骨子とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について説明する。本発明の原料油脂はパーム油、大豆油、菜種油、米油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、カカオ脂、シア脂、サル脂、マンゴ脂、コクム脂、イリッペ脂等の食用植物油、および乳脂、牛脂、豚油等の食用動物油が例示される。また、これらの油脂を一種以上、エステル交換、分別等の加工工程を経たものであってもよい。
【0009】
本発明でとりわけ効果があるのは、原料油脂として異性化効果油を用いた場合である。異性化硬化油とは油脂を水素添加(硬化)する際に、シス型不飽和脂肪酸をトランス型不飽和脂肪酸に異性化すること、或いは、高度不飽和脂肪酸がモノ不飽和脂肪酸に水素添加される際に得られる油脂をさす。例えば、天然のオレイン酸はシス型であるが、トランス型になったオレイン酸はエライジン酸であり、融点はオレイン酸が約10℃であるのに対し、エライジン酸は約45℃と高くなる。つまり、異性化硬化により分子種も増え組成も複雑になるが、トランス体はシス体の脂肪酸よりも飽和脂肪酸に近い構造をとり、融点も高くなるためシャープな融解曲線を有する油脂を作製することができる。異性化硬化油のトランス酸含量は30%以上が好ましく、30%未満ではシャープな融解曲線を有する油脂として得る中融点画分の収量を期待し難い。このトランス酸含量の測定法はAOCS official Method Ce 1c−89に準ずる。
【0010】
乾式分別と油脂を有機溶剤や水溶液等の溶媒を用いずに調温して固液分離し、原料油とは硬さ、融点の異なる油脂を生成分画させ、物性の多様化や応用の拡大が図れる。固液分離とは結晶画分から液状画分を分離することであって、結晶画分中に一部液状画分が残存することは構わない。元来、中融点画分は、分別により結晶画分と液状画分が得られ、次に液状画分を更に分画することで得られる高融点画分であるのが通常であり、チョコレートやコーティング用等のハードバターへの使用が代表的である。そのため体温付近の融点を有するように中融点画分を分画することで、チョコレート等のハードバターとして口溶けがよく、利用価値の高い油脂として用いられる。
【0011】
原料油脂、特に異性化硬化油を原料とした乾式分別における結晶画分と液状画分は、固液分離させた後、自然濾過、吸引濾過、圧搾濾過、遠心分離等により分画することができ、固液分離の方法については特に限定しない。
【0012】
固液分離を行う際、調温物は静置でも攪拌でもよいが、攪拌を行う場合は結晶を崩さない程度の回転数で行う。本発明の各分画工程を図1に例示する。工程(1)で、原料油脂を結晶画分(F)と液状画分(L)に分画する。工程(2)で、液状画分(L)をさらに結晶画分(LF)と液状画分(LL)に分画して、高融点画分、中融点画分、低融点画分を得る方法において、F画分中に残存する液状画分(FL)、またはLF画分中に残存する液状画分(LFL)を除いた結晶画分(LFF)を混合して中融点画分を得る方法である。本発明の分画工程時、結晶画分と液状画分の重量比率が8〜2/2〜8、好ましくは7〜3/3〜7になるようにする。結晶画分の重量比率が8割を超える場合は、結晶画分中の液状画分が分離し難く、または液状画分の重量比率が8割を超える場合は、液状画分中で結晶画分が相互溶解により結晶化し難く、分画することが容易ではない。
【0013】
この発明において工程(1)で得られた結晶画分(F)、または、工程(2)で得られた液状画分(L)は、各画分の一部を融解する昇温をして固液分離させるものである。各画分の一部のみを融解する昇温すると、F画分の場合、F画分中の結晶画分(FF)が固体として、またF画分中の液状画分(FL)が液体として固液分離される。これを分画することで、各画分中の他の画分の残存率を低下させることができる。また、LF画分の場合も同様の処理をすることで各画分中の他の画分の残存率を低下させることができる。各画分の工程により得られる結晶画分中に残存する液体成分は15重量%以下となるまで、好ましくは10重量%以下となるまで固液分離することが好適である。各画分中の他の画分の残存率、特に中融点画分中の高融点画分、及び低融点画分の残存率を低下させることで、中融点画分をチョコレート等のハードバター製品として、チョコレートの口溶け、及びチョコレートの経時的軟化を防ぐことができる。各画分の工程により得られる結晶画分中に残存する液体成分は15重量を超えると、チョコレートの口溶け、及びチョコレートの経時的軟化の防止効果が低下してしまう。
【0014】
結晶画分(F)、または結晶画分(LF)の各画分の一部を融解する昇温をして固液分離する方法は、分画した結晶の一部のみが融解する状態に昇温させることで液体成分を新たに生成させ、圧搾濾過、吸引濾過等の方法で分画する。特に、原料油脂が異性化硬化油の場合は、エライジン酸が生じたため多種の分子種を有しており、F画分、またはLF画分の一部を融解する昇温をしたのち、当該画分を固液分離する前に降温処理を実施するとより分画精度を高めることができる。一部を融解する昇温、及び当該画分を固液分離する前に降温処理する温度サイクルとしては、例えば、1日1サイクル、下限温度に11.5時間保持し、0.5時間で上限温度まで昇温した後、11.5時間上限温度に保持し、次に0.5時間で下限温度に降温する等あるが、上限、下限温度に充分晒される時間保存できればよく、1周期時間は例えば、数10分〜数日で実施でき、特には限定されない。
【0015】
サイクルを実施する場合の上限、下限温度は、例えばDSC(示差走査熱量計)により決定することができる。例えば、上限温度は結晶画分(F)(融解せずに結晶のままDSCにてピーク温度を確認する)に含まれる高融点画分ピークの温度とし、下限温度は求める中融点画分の融点(チョコレート等のハードバター製品として約35℃)とする。また、結晶画分(LF)の上限温度は、融解せずに結晶のままDSCにてピーク温度を確認した結晶画分(LF)に含まれる中融点画分ピークの温度とし、下限温度はチョコレートの軟化要因となる成分の融点とする。上限、下限温度は、各画分中に残存する他の画分の融点に合わせて設定することで、分画精度が高くなっていくものである。
【0016】
異性化硬化油の場合は、温度サイクルは1回以上行うのが好ましく、その好ましい回数もDSCの結果から判断することができる。すなわち、サイクル後分離分画を行った結晶に再度同条件の温度サイクルをかけるかの判断は、DSCを測定することにより可能である。図2に示す分画後のピークにおいて下限温度以下のピーク面積(A)比率が分画後のピーク面積全体(A+B)に対して15%以下((A÷(A+B)×100≦15を満たす)であれば再度分画する必要はないが、15%を超えるようであれば繰り返し温度サイクルにより15%以下になるまで昇温と降温処理、並びに要すれば分離分画することが好ましい。また、さらに好ましくは、10%以下となるよう分画することがよい。15%を超えるものは、チョコレート等のハードバター製品として中融点画分を使用した場合、チョコレートの口溶けが悪化し、チョコレートの経時的軟化の問題も解消し難い。
【0017】
昇温、降温処理、並びに結晶画分の分取は、結晶画分中の残存する液体成分が15重量%以下になるまで反復することが好ましい。特に、降温処理を行った際は、当該画分を降温処理の環境温度に保存後(2時間以上保存が好ましい)、圧搾濾過にて分画を行うことができる。圧搾濾過とは圧力をかけて結晶画分から液状画分を分画する方法であり、フィルタープレスもこれに含まれる。圧力は結晶量にあわせて適宜調節すればよい。
【0018】
本発明の中融点画分は、チョコレート等のハードバター製品として使用することができる。
ハードバター製品として使用する場合の中融点画分の融点は30℃〜35℃が好ましい。
また、異性化硬化油を原料とした中融点画分のハードバター製品は、ノーテンパリング型チョコレートに用いられることができ、板状チョコレート、ビスケット等の焼き菓子へのコーティングチョコレート等に利用できる。本発明の中融点画分を使用した板状チョコレート、コーティングチョコレート等は良好な口溶けを有し、経時的軟化の起こらないものを得ることができる。
【0019】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の実施例はこれに限られるものではない。
<実施例1>
油脂としてパームオレインを用い、異性化硬化処理を行って、トランス酸を40.3%含有する異性化硬化パーム油(IV=52.9)を得た。異性化硬化処理は、水素圧0.2Kg/cm2、温度200℃、硬化触媒にメチオニンを使用して行った。異性化硬化パーム油を60℃で完全融解した後、23rpmで攪拌させながら25℃に12時間放置し、吸引濾過にて分画を行い、結晶画分(F)と液状画分(L)を得た。結晶画分(F)の収率は54%だった。
この結晶画分をDSC測定(サンプル量:10mg、測定温度:0℃〜60℃、昇温速度:5℃/min、測定装置:SHIMAZU DSC50)を行った結果から、温度サイクル(35℃〜45℃)の環境下において、1日1サイクル(下限温度に11.5時間保存し、0.5時間で上限温度まで昇温した後、11.5時間上限温度に保存し、次に0.5時間で下限温度に降温する)行った後、下限温度で結晶画分を2時間以上保存した後、35℃で圧搾濾過を行い、中融点画分量の減少した高融点画分の結晶画分(FF)と液状画分(FL)が得られた。次に液状画分(L)を60℃で完全融解した後、23rpmで攪拌させながら15℃に12時間放置し、吸引濾過にて分画を行い、結晶画分(LF)と液状画分(LL)を得た。結晶画分の収率は60%だった。同様にDSC測定結果から、温度サイクル(18℃〜28℃)の環境下において、1日1サイクル行った後、18℃で圧搾濾過を行い、低融点画分量の減少した中融点画分の結晶が得られた。温度サイクルは2回行った。最初に得られた液状画分(FL)と次に得られた結晶画分(LF)を混合したものを中融点画分とした。得られた高融点画分(FF)、中融点画分(FL+LF)、低融点画分(LL)の収率は順に26%、43%、31%であった。
【0020】
<比較例1>
実施例1と同様の原料を60℃にて完全融解させた。原料油脂:N−ヘキサン=1:4(重量比)の割合で混合し、5℃まで冷却した後分離分画を行い、結晶画分(高融点画分)と液状画分を得た。次に分画した液状画分を−23℃まで冷却した後分離分画を行い、結晶画分(中融点画分)と液状画分(低融点画分)を得た。得られた高融点画分、中融点画分、低融点画分の収率は順に20%、55%、25%であった。
【0021】
<比較例2>
実施例1と同様の原料を60℃にて完全融解させた。原料油脂:N−ヘキサン=1:4(重量比)の割合で混合し、0℃まで冷却した後分離分画を行い、結晶画分と液状画分を得た。
次に分画した液状画分を−19℃まで冷却した後分離分画を行い、結晶画分と液状画分を得た。得られた高融点画分、中融点画分、低融点画分の収率は順に40%、28%、32%であった。
【0022】
<比較例3>
実施例1と同様の原料を60℃にて完全融解させた。これを23rpmで攪拌させながら34℃に12時間放置し、吸引濾過にて分画を行い、結晶画分と液状画分を得た。次に液状画分を60℃で完全融解し、液状画分:低融点画分(実施例1で得られたもの)=2:3(重量比)の割合で混合し、23rpmで攪拌させながら20℃に12時間放置し、吸引濾過にて分画を行い、結晶画分と液状画分を得た。得られた高融点画分、中融点画分、低融点画分の収率は順に23%、47%、30%であった。
【0023】
実施例1、比較例1、2、3より得られた中融点画分を温度サイクル(17℃〜30℃、25℃〜35℃)のかかる環境下において、1日1サイクルで昇温と降温を行った後、5℃に冷却したサンプルにつき、DSCにて中融点画分に混在する高融点画分および低融点画分の重量比率を確認した。結果は表1に示すとおりであり、実施例1の中融点画分に混在する高融点部、低融点部量は比較例1,2,3に比べて少ないものであった。
【0024】
【0025】
上記、実施例1、比較例1、比較例2、比較例3の中融点画分を用いて表2の配合にて常法に従ってそれぞれチョコレート生地を調製した。45℃でモールドに型流しし、5℃、30分冷却して、チョコレートを得た。その後、1週間、20℃保存後、官能評価(口溶け)と耐ブルーム性テストを行った。耐ブルーム性テストは1日1サイクル(17〜30.5℃)変化する環境下でブルーム発生の状態を確認した。結果は表3に示すとおりであり、また実施例1の中融点画分は溶剤分別により得られた比較例1、2、3と比べて明らかに口溶けの良好なものであった。
【0026】
【0027】
【0028】
以上の結果から原料油脂を分画する工程において、高融点画分、中融点画分、低融点画分の分画精度を高めることで、特に中融点画分を使用したチョコレート等のハードバター製品として、チョコレートの口溶けを良好にする油脂を作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】乾式分画の流れ図。
【図2】温度サイクル工程を経た実施例1の結晶画分(FF)結晶画分のDSC測定結果の図。
【発明の属する技術分野】
本発明は油脂の分画工程で得られる高融点画分、中融点画分、低融点画分の分画精度の高い油脂の乾式分画方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
油脂の代表的な分画方法としては、原料油脂をアルコールやアセトン、ヘキサン等の有機溶剤にて分画する溶剤分別法と溶媒を用いずに行う乾式分別法が知られている。乾式分別法はコストや安全性の面で溶剤分別法より好ましい方法であるが、溶剤分別法に比べて結晶画分と液状画分の分離精度が低く、結晶画分にかなりの液状画分が混入するという問題がある。このため、原油の分画に採用されることはあっても、硬化やエステル交換といった加工工程を経て分子種の多くなった段階でハードバターを得る段階の分別方法として乾式分別は殆ど採用されなかった。一方、溶剤分別法の固液分離精度は高いが、本発明者の知見によれば、特に連続した融点、近似した分子種をもつ異性化硬化油の分別に関しては、結晶画分の取り残しや液状画分の混入といった問題があり、未だ不十分である。
【0003】
一般に二段の分別工程により油脂の高融点画分および低融点画分を除去し、中融点画分を得ることが知られている。特にパーム油等を異性化硬化した油脂を分別することにより得られた中融点画分は、ココアバター代替脂としてチョコレートの物性改良に使用されている。チョコレート類に使用される油脂はハードバターと言われ、ココアバターや異性化硬化油の他にラウリン系油脂等がある。異性化硬化油から溶剤分別により得られた中融点画分はココアバターやラウリン系油脂と比較して口溶けが概して悪く、シャープな融解曲線を有しない。また、中融点画分は経時的に高融点画分、低融点画分に分離し、口溶けが悪化したり、低温ブルームが生じやすいという欠点がある。これは本発明者の知見によれば、結晶化時に起こる結晶中への液状油の抱き込みや濾過時の分離精度、および近似した融点のトリグリセリドの相互溶解等の影響で分画が不十分であることが原因である。これは、中融点画分に高融点画分・低融点画分が混入するため、結晶化当初の分子が均一に分散している混晶状態から、融点の近いもの同士が集まる共晶状態に経時的に変化するため、口溶けの悪化や軟化が生じるのではないかということが推定される。
【0004】
上記欠点の改善を目的として吸着剤や結晶改質剤を用い、乾式分別における固液分離効率を高める方法が特開平4−154897号公報および特表平10−511420号公報に開示されているが、そのような方法は吸着剤処理による油脂分の損失および結晶改質剤の除去が困難であるという問題がある。また、特開平4−306296公報では液状脂肪酸を含む固体脂肪酸を融点以下の温度で加温し、液状成分を発汗させることで、固液分離の効率を高める方法が開示されているが、これは湿潤剤分別法、つまり溶媒使用の分別法である点、及び近似したトリグリセリド間の分離でない点で本発明とは異なるものである。また特開平6−234695公報では圧力晶析後に加圧し、次に降圧することにより発汗を行い、更に圧搾を行うことで固液分離効率を高め、高純度の結晶を得る方法を開示しているが、これも脂肪酸の精製法に関するものであって、本発明とは異なるものである。
【特許文献1】特開平04−154897号公報
【特許文献2】特表平10−511420号公報
【特許文献3】特開平04−306296号公報
【特許文献4】特開平06−234695号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は油脂を分画して得られる、高融点画分、中融点画分、低融点画分の分画精度を高めることで、特に中融点画分の口溶けや経時的な融点低下を防ぎ、ひいてはこれを使用したチョコレート等のハードバター製品用として、チョコレートの口溶けを良好にする油脂の乾式分画法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達するために、鋭意研究を行った結果、油脂を分画する方法において、乾式分別により得られた画分、特に中融点画分中に混在する高融点画分、及び低融点画分を効率よく分離する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、原料油脂を、少なくとも、結晶画分(F)と液状画分(L)に分画する工程及び液状画分(L)をさらに結晶画分(LF)と液状画分(LL)に分画する工程とを経て、高融点画分、中融点画分、低融点画分に分画する方法において、F画分またはLF画分の一部のみを融解する昇温をしたのちに当該画分(FまたはLF)をさらに固液分離する油脂の乾式分画方法である。好ましくは、F画分から得られた液状画分(FL)とLF画分から得られた結晶画分(LFF)とを混合して中融点画分とし、或いは、F画分またはLF画分の一部を融解する昇温をしたのち、かつ当該画分を固液分離する前に、降温処理を実施すること、さらには昇温と降温処理、並びに要すれば結晶画分の分取を反復して行う方法を包含する。上記各工程で分画乃至固液分離される結晶画分と液状画分の重量比率は8〜2/2〜8が好ましく、7〜3/3〜7がより好ましい。各分画の工程により得られる結晶画分中に残存する液体成分が15重量%以下、好ましくは10重量%以下とするのがよい。この発明において、原料油脂の代表例はが異性化硬化油でトランス酸含量が30%以上の油脂の乾式分画方法を骨子とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について説明する。本発明の原料油脂はパーム油、大豆油、菜種油、米油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、カカオ脂、シア脂、サル脂、マンゴ脂、コクム脂、イリッペ脂等の食用植物油、および乳脂、牛脂、豚油等の食用動物油が例示される。また、これらの油脂を一種以上、エステル交換、分別等の加工工程を経たものであってもよい。
【0009】
本発明でとりわけ効果があるのは、原料油脂として異性化効果油を用いた場合である。異性化硬化油とは油脂を水素添加(硬化)する際に、シス型不飽和脂肪酸をトランス型不飽和脂肪酸に異性化すること、或いは、高度不飽和脂肪酸がモノ不飽和脂肪酸に水素添加される際に得られる油脂をさす。例えば、天然のオレイン酸はシス型であるが、トランス型になったオレイン酸はエライジン酸であり、融点はオレイン酸が約10℃であるのに対し、エライジン酸は約45℃と高くなる。つまり、異性化硬化により分子種も増え組成も複雑になるが、トランス体はシス体の脂肪酸よりも飽和脂肪酸に近い構造をとり、融点も高くなるためシャープな融解曲線を有する油脂を作製することができる。異性化硬化油のトランス酸含量は30%以上が好ましく、30%未満ではシャープな融解曲線を有する油脂として得る中融点画分の収量を期待し難い。このトランス酸含量の測定法はAOCS official Method Ce 1c−89に準ずる。
【0010】
乾式分別と油脂を有機溶剤や水溶液等の溶媒を用いずに調温して固液分離し、原料油とは硬さ、融点の異なる油脂を生成分画させ、物性の多様化や応用の拡大が図れる。固液分離とは結晶画分から液状画分を分離することであって、結晶画分中に一部液状画分が残存することは構わない。元来、中融点画分は、分別により結晶画分と液状画分が得られ、次に液状画分を更に分画することで得られる高融点画分であるのが通常であり、チョコレートやコーティング用等のハードバターへの使用が代表的である。そのため体温付近の融点を有するように中融点画分を分画することで、チョコレート等のハードバターとして口溶けがよく、利用価値の高い油脂として用いられる。
【0011】
原料油脂、特に異性化硬化油を原料とした乾式分別における結晶画分と液状画分は、固液分離させた後、自然濾過、吸引濾過、圧搾濾過、遠心分離等により分画することができ、固液分離の方法については特に限定しない。
【0012】
固液分離を行う際、調温物は静置でも攪拌でもよいが、攪拌を行う場合は結晶を崩さない程度の回転数で行う。本発明の各分画工程を図1に例示する。工程(1)で、原料油脂を結晶画分(F)と液状画分(L)に分画する。工程(2)で、液状画分(L)をさらに結晶画分(LF)と液状画分(LL)に分画して、高融点画分、中融点画分、低融点画分を得る方法において、F画分中に残存する液状画分(FL)、またはLF画分中に残存する液状画分(LFL)を除いた結晶画分(LFF)を混合して中融点画分を得る方法である。本発明の分画工程時、結晶画分と液状画分の重量比率が8〜2/2〜8、好ましくは7〜3/3〜7になるようにする。結晶画分の重量比率が8割を超える場合は、結晶画分中の液状画分が分離し難く、または液状画分の重量比率が8割を超える場合は、液状画分中で結晶画分が相互溶解により結晶化し難く、分画することが容易ではない。
【0013】
この発明において工程(1)で得られた結晶画分(F)、または、工程(2)で得られた液状画分(L)は、各画分の一部を融解する昇温をして固液分離させるものである。各画分の一部のみを融解する昇温すると、F画分の場合、F画分中の結晶画分(FF)が固体として、またF画分中の液状画分(FL)が液体として固液分離される。これを分画することで、各画分中の他の画分の残存率を低下させることができる。また、LF画分の場合も同様の処理をすることで各画分中の他の画分の残存率を低下させることができる。各画分の工程により得られる結晶画分中に残存する液体成分は15重量%以下となるまで、好ましくは10重量%以下となるまで固液分離することが好適である。各画分中の他の画分の残存率、特に中融点画分中の高融点画分、及び低融点画分の残存率を低下させることで、中融点画分をチョコレート等のハードバター製品として、チョコレートの口溶け、及びチョコレートの経時的軟化を防ぐことができる。各画分の工程により得られる結晶画分中に残存する液体成分は15重量を超えると、チョコレートの口溶け、及びチョコレートの経時的軟化の防止効果が低下してしまう。
【0014】
結晶画分(F)、または結晶画分(LF)の各画分の一部を融解する昇温をして固液分離する方法は、分画した結晶の一部のみが融解する状態に昇温させることで液体成分を新たに生成させ、圧搾濾過、吸引濾過等の方法で分画する。特に、原料油脂が異性化硬化油の場合は、エライジン酸が生じたため多種の分子種を有しており、F画分、またはLF画分の一部を融解する昇温をしたのち、当該画分を固液分離する前に降温処理を実施するとより分画精度を高めることができる。一部を融解する昇温、及び当該画分を固液分離する前に降温処理する温度サイクルとしては、例えば、1日1サイクル、下限温度に11.5時間保持し、0.5時間で上限温度まで昇温した後、11.5時間上限温度に保持し、次に0.5時間で下限温度に降温する等あるが、上限、下限温度に充分晒される時間保存できればよく、1周期時間は例えば、数10分〜数日で実施でき、特には限定されない。
【0015】
サイクルを実施する場合の上限、下限温度は、例えばDSC(示差走査熱量計)により決定することができる。例えば、上限温度は結晶画分(F)(融解せずに結晶のままDSCにてピーク温度を確認する)に含まれる高融点画分ピークの温度とし、下限温度は求める中融点画分の融点(チョコレート等のハードバター製品として約35℃)とする。また、結晶画分(LF)の上限温度は、融解せずに結晶のままDSCにてピーク温度を確認した結晶画分(LF)に含まれる中融点画分ピークの温度とし、下限温度はチョコレートの軟化要因となる成分の融点とする。上限、下限温度は、各画分中に残存する他の画分の融点に合わせて設定することで、分画精度が高くなっていくものである。
【0016】
異性化硬化油の場合は、温度サイクルは1回以上行うのが好ましく、その好ましい回数もDSCの結果から判断することができる。すなわち、サイクル後分離分画を行った結晶に再度同条件の温度サイクルをかけるかの判断は、DSCを測定することにより可能である。図2に示す分画後のピークにおいて下限温度以下のピーク面積(A)比率が分画後のピーク面積全体(A+B)に対して15%以下((A÷(A+B)×100≦15を満たす)であれば再度分画する必要はないが、15%を超えるようであれば繰り返し温度サイクルにより15%以下になるまで昇温と降温処理、並びに要すれば分離分画することが好ましい。また、さらに好ましくは、10%以下となるよう分画することがよい。15%を超えるものは、チョコレート等のハードバター製品として中融点画分を使用した場合、チョコレートの口溶けが悪化し、チョコレートの経時的軟化の問題も解消し難い。
【0017】
昇温、降温処理、並びに結晶画分の分取は、結晶画分中の残存する液体成分が15重量%以下になるまで反復することが好ましい。特に、降温処理を行った際は、当該画分を降温処理の環境温度に保存後(2時間以上保存が好ましい)、圧搾濾過にて分画を行うことができる。圧搾濾過とは圧力をかけて結晶画分から液状画分を分画する方法であり、フィルタープレスもこれに含まれる。圧力は結晶量にあわせて適宜調節すればよい。
【0018】
本発明の中融点画分は、チョコレート等のハードバター製品として使用することができる。
ハードバター製品として使用する場合の中融点画分の融点は30℃〜35℃が好ましい。
また、異性化硬化油を原料とした中融点画分のハードバター製品は、ノーテンパリング型チョコレートに用いられることができ、板状チョコレート、ビスケット等の焼き菓子へのコーティングチョコレート等に利用できる。本発明の中融点画分を使用した板状チョコレート、コーティングチョコレート等は良好な口溶けを有し、経時的軟化の起こらないものを得ることができる。
【0019】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の実施例はこれに限られるものではない。
<実施例1>
油脂としてパームオレインを用い、異性化硬化処理を行って、トランス酸を40.3%含有する異性化硬化パーム油(IV=52.9)を得た。異性化硬化処理は、水素圧0.2Kg/cm2、温度200℃、硬化触媒にメチオニンを使用して行った。異性化硬化パーム油を60℃で完全融解した後、23rpmで攪拌させながら25℃に12時間放置し、吸引濾過にて分画を行い、結晶画分(F)と液状画分(L)を得た。結晶画分(F)の収率は54%だった。
この結晶画分をDSC測定(サンプル量:10mg、測定温度:0℃〜60℃、昇温速度:5℃/min、測定装置:SHIMAZU DSC50)を行った結果から、温度サイクル(35℃〜45℃)の環境下において、1日1サイクル(下限温度に11.5時間保存し、0.5時間で上限温度まで昇温した後、11.5時間上限温度に保存し、次に0.5時間で下限温度に降温する)行った後、下限温度で結晶画分を2時間以上保存した後、35℃で圧搾濾過を行い、中融点画分量の減少した高融点画分の結晶画分(FF)と液状画分(FL)が得られた。次に液状画分(L)を60℃で完全融解した後、23rpmで攪拌させながら15℃に12時間放置し、吸引濾過にて分画を行い、結晶画分(LF)と液状画分(LL)を得た。結晶画分の収率は60%だった。同様にDSC測定結果から、温度サイクル(18℃〜28℃)の環境下において、1日1サイクル行った後、18℃で圧搾濾過を行い、低融点画分量の減少した中融点画分の結晶が得られた。温度サイクルは2回行った。最初に得られた液状画分(FL)と次に得られた結晶画分(LF)を混合したものを中融点画分とした。得られた高融点画分(FF)、中融点画分(FL+LF)、低融点画分(LL)の収率は順に26%、43%、31%であった。
【0020】
<比較例1>
実施例1と同様の原料を60℃にて完全融解させた。原料油脂:N−ヘキサン=1:4(重量比)の割合で混合し、5℃まで冷却した後分離分画を行い、結晶画分(高融点画分)と液状画分を得た。次に分画した液状画分を−23℃まで冷却した後分離分画を行い、結晶画分(中融点画分)と液状画分(低融点画分)を得た。得られた高融点画分、中融点画分、低融点画分の収率は順に20%、55%、25%であった。
【0021】
<比較例2>
実施例1と同様の原料を60℃にて完全融解させた。原料油脂:N−ヘキサン=1:4(重量比)の割合で混合し、0℃まで冷却した後分離分画を行い、結晶画分と液状画分を得た。
次に分画した液状画分を−19℃まで冷却した後分離分画を行い、結晶画分と液状画分を得た。得られた高融点画分、中融点画分、低融点画分の収率は順に40%、28%、32%であった。
【0022】
<比較例3>
実施例1と同様の原料を60℃にて完全融解させた。これを23rpmで攪拌させながら34℃に12時間放置し、吸引濾過にて分画を行い、結晶画分と液状画分を得た。次に液状画分を60℃で完全融解し、液状画分:低融点画分(実施例1で得られたもの)=2:3(重量比)の割合で混合し、23rpmで攪拌させながら20℃に12時間放置し、吸引濾過にて分画を行い、結晶画分と液状画分を得た。得られた高融点画分、中融点画分、低融点画分の収率は順に23%、47%、30%であった。
【0023】
実施例1、比較例1、2、3より得られた中融点画分を温度サイクル(17℃〜30℃、25℃〜35℃)のかかる環境下において、1日1サイクルで昇温と降温を行った後、5℃に冷却したサンプルにつき、DSCにて中融点画分に混在する高融点画分および低融点画分の重量比率を確認した。結果は表1に示すとおりであり、実施例1の中融点画分に混在する高融点部、低融点部量は比較例1,2,3に比べて少ないものであった。
【0024】
【0025】
上記、実施例1、比較例1、比較例2、比較例3の中融点画分を用いて表2の配合にて常法に従ってそれぞれチョコレート生地を調製した。45℃でモールドに型流しし、5℃、30分冷却して、チョコレートを得た。その後、1週間、20℃保存後、官能評価(口溶け)と耐ブルーム性テストを行った。耐ブルーム性テストは1日1サイクル(17〜30.5℃)変化する環境下でブルーム発生の状態を確認した。結果は表3に示すとおりであり、また実施例1の中融点画分は溶剤分別により得られた比較例1、2、3と比べて明らかに口溶けの良好なものであった。
【0026】
【0027】
【0028】
以上の結果から原料油脂を分画する工程において、高融点画分、中融点画分、低融点画分の分画精度を高めることで、特に中融点画分を使用したチョコレート等のハードバター製品として、チョコレートの口溶けを良好にする油脂を作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】乾式分画の流れ図。
【図2】温度サイクル工程を経た実施例1の結晶画分(FF)結晶画分のDSC測定結果の図。
Claims (10)
- 原料油脂を、少なくとも、結晶画分(F)と液状画分(L)に分画する工程及び液状画分(L)をさらに結晶画分(LF)と液状画分(LL)に分画する工程とを経て、高融点画分、中融点画分、低融点画分に分画する方法において、F画分またはLF画分の一部のみを融解する昇温をしたのちに当該画分(FまたはLF)をさらに固液分離することを特徴とする油脂の乾式分画方法。
- F画分から得られた液状画分(FL)とLF画分から得られた結晶画分(LFF)とを混合して中融点画分とする請求項1記載の分画方法。
- F画分またはLF画分の一部を融解する昇温をしたのち、かつ当該画分を固液分離する前に、降温処理を実施する請求項1記載の分画方法。
- 昇温と降温処理、並びに要すれば結晶画分の分取を反復する請求項3記載の分画方法。
- 各工程で分画乃至固液分離される結晶画分と液状画分の重量比率が8〜2/2〜8である請求項1記載の分画方法。
- 結晶画分と液状画分の重量比率が7〜3/3〜7である請求項5記載の分画方法。
- 各分画の工程により得られる結晶画分中に残存する液体成分が分画温度において15重量%以下である請求項1記載の分画方法。
- 各分画の工程により得られる結晶画分中に残存する液体成分が分画温度において10重量%以下である請求項7記載の分画方法。
- 原料油脂が異性化硬化油である請求項1記載の分画方法。
- 異性化硬化油のトランス酸含量が30%以上である請求項9記載の分画方法。
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