JP4861562B2 - 連結構造用変形量表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2つの連結対象物を連結すると共にこれら連結対象物の相対移動によって変形し相対移動のエネルギーを吸収可能な連結構造に用いられる連結構造用変形量表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
橋等の固定構造物を構成する橋脚、橋台、橋桁等は、いわゆるゴム支承やゴム被覆チェーン等の連結構造を使用して、地盤にあるいは固定構造物同士が連結される。このような連結構造を採用することで、例えば、地震等が発生した場合でも、この相対移動のエネルギーをゴム(弾性部材)の変形によって吸収することで、固定構造物の落下等を防止することができる。
【0003】
ところで、このように弾性変形する連結構造では、例えば大地震の後などには、大きな変形を受けているにも関わらずその形状が変形前のものに復帰して形状等の変化が認められないため、どの程度変形したかを外観で認識することが困難だった。したがって、例えば、個々の連結構造の変形量が許容範囲内であったのか否か(換言すれば、許容範囲を超えた変形をしていたのか否か)を簡単に知ることが難しく、個々の連結構造の交換が必要であるか否かの判断も難しかった。特に、一例として橋桁の落下を防止する落橋防止装置として、上記の連結構造を採用した場合には、落橋防止装置は橋脚上端の狭い空間に設置されることが多いため、目視にて個々の落橋防止装置の交換の必要性の有無を判断することが難しかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事実を考慮し、連結構造の弾性復元後であってもその変形量を容易に知ることが可能な連結構造用変形量表示装置を得ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明では、2つの連結対象物を連結する連結構造に用いられ、前記2つの連結対象物の相対移動による前記連結構造の最大変位量を表示する連結構造用変形量表示装置であって、前記連結対象物のそれぞれに対する前記連結構造の連結部分に設けられた固定部と、前記固定部の一方に固定された長尺状の紐部材と、前記固定部の他方に直接又は他の部材を介して取り付けられ、前記紐部材が挿通し相対移動可能に保持される保持部材と、を有し、前記保持部材は、前記2つの固定部の離間による紐部材の保持部材に対する相対移動は許容し、その許容後にこれら固定部の接近による紐部材の保持部材に対する相対移動を制限して紐部材に弛みを生じさせる、ことを特徴とする。
【0006】
連結対象物が相対移動すると、連結構造用変形量表示装置に設けられた2つの固定部が相対移動する。これに伴い、紐部材と保持部材も互いに相対移動しようとする。
【0007】
ここで、2つの固定部が離間した場合、保持部材は、紐部材の保持部材に対する相対移動は許容する。これに対し、2つの固定部が接近した場合には、保持部材は紐部材の保持部材に対する相対移動は制限して紐部材に弛みを生じさせる。このため、連結構造が弾性復元しても、紐部材と保持部材との相対移動量は、連結構造が最も大きく変形したときの移動量に維持される。連結構造の最大変形量が、紐部材と保持部材との相対移動量として記録され表示されていることになるので、連結構造の弾性復元後にこの相対移動量(ズレ)を読み取ることで、連結構造の最大変形量を容易に知ることができる。
【0008】
なお、ここでいう「連結対象物」とは、上記した連結構造によって連結されるものであればよい。例えば、例えば一般的な橋脚や橋台と橋桁とを連結する場合には、橋脚や橋台と橋桁との双方が連結対象物となる。また、橋桁どうしを連結する場合には、それぞれの橋桁が連結対象物となる。
【0009】
なお、保持部材を固定部の他方に取り付ける構造は特に限定されず、たとえば、請求項2に記載のように、前記保持部材が、前記他の部材として、前記固定部に対し可撓性を有する延長部材を介して固定部に取り付けられている構造であってもよいし、前記保持部材が、前記固定部の他方に直接固定されている構造であってもよい。請求項2に記載の構成では、延長部材を介して保持部材を取り付けるので、取り付けや視認の自由度が増す。また、例えば、紐部材の一端を固定部の一方に固定すると共に他端に保持部材を取り付け、この保持部材に紐部材の中間部分が保持されるように紐部材を部分的に環状にする(紐部材は全体として略「6」字状になる)とすれば、環状部材の一部として延長部材が構成されていることになるので、部品点数の増加を招かない。これに対し、保持部材が固定部の他方に直接固定されている構成では、請求項2に記載の延長部材等が不要となるので、より少ない部品点数で、保持部材を固定部に強固に固定することができる。
【0010】
請求項3記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記固定部の相対移動量が一定範囲を超えると前記保持部材から前記紐部材が離脱するように紐部材の長さが設定されていることを特徴とする。
【0011】
すなわち、紐部材が保持部材から離脱したことで、2つの固定部の相対移動量が一定範囲を超えたことを容易に知ることができる。
【0012】
なお、紐部材の弾性特性や長さ等によっては、完全に保持部材から離脱する前に、紐部材自体が破断されてしまうことがある。このように、紐部材自体が破断されてしまうような構成であっても、結果的に、紐部材の一部が保持部材から離脱するため、請求項3の発明に含まれる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記保持部材が、前記紐部材を挿通可能な筒状に形成された筒部材とされ、前記筒部材が、前記紐部材の前記保持部材に対する相対移動を許容する方向に沿った前記筒部材の開口断面積が漸減し、この方向の先端で紐部材の少なくとも一部に接触する形状とされることにより、前記紐部材の前記保持部材に対する相対移動が制限されることを特徴とする。
【0014】
したがって、2つの固定部が互いに離間する方向へ移動すると、紐部材は筒部材に対し、開口断面積が漸増する方向へと移動する。このため、紐部材の筒部材に対する移動が制限されることはない。
【0015】
これに対し、2つの固定部が互いに接近する方向へ移動すると、紐部材は筒部材に対し、開口断面積が漸減する方向へと移動する。筒部材は、この方向の先端で紐部材の少なくとも一部に接触する形状とされているので、紐部材の移動は摩擦により制限される。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記紐部材が、長手方向の張力に対する伸びが小さい材料により構成されていることを特徴とする。
【0017】
このため、紐部材に作用した張力による紐部材自体の伸びが防止され、これに起因する測定誤差を少なくすることができる。
【0018】
なお、請求項5に記載の構成において、「長手方向の張力に対する伸びが小さい」とは、具体的には、弾性率が1N/mm2以上であることをいう。
【0019】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記紐部材が、温度変化に対する伸縮が小さい材料により構成されていることを特徴とする。
【0020】
このため、温度変化による紐部材の伸びが防止され、これに起因する測定誤差を少なくすることができる。
【0021】
請求項5及び請求項6に記載の構成において、紐部材の具体的構成としては、例えば請求項7に記載にように、前記紐部材が、有機繊維又は金属繊維の少なくとも一方を含む紐部材とされている構成のものを挙げることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、請求項1〜請求項7に記載の発明において、前記紐部材に設けられ、その長手方向への長さを表示する識別表示、を有することを特徴とする。
【0023】
これにより、保持部材に対する紐部材の移動量をより正確に知ることができるので、2つの固定部の相対移動量もより正確に知ることができる。なお、「識別標識」としては、紐部材の長さを定量的に示すものだけでなく、例えば連結構造の変形量が所定範囲を超えたか否かを定性的に示すものであってもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1には、本発明の第1実施形態の連結構造用変形量表示装置(以下、単に「変形量表示装置」と略す)20を備えた落橋防止装置18が示されている。また、図2には、落橋防止装置18が適用された橋桁16が部分的に拡大して示されている。
【0025】
落橋防止装置18は、断面が八角形状のゴム体10を備えている。このゴム体10の中には、複数(本実施形態では5つ)のリングを交差してリンクした鎖12が埋め込まれており、全体として、平面視にて略U字状に形成されている。端部リング12A(鎖12の長手方向両端のリング)は、ゴム体10から略半分露出した状態でリング部材14にリンクされている。
【0026】
また、橋桁16の側面16Aには、ボルト15と一体となった長円状のリング部材14がナット17で固定されている。このリング部材14の一部は切欠かれており、この切欠部14Aから端部リング12A(図1参照)を挿通して溶接し、リング形状とする。
【0027】
それぞれの端部リンク12Aの先端近傍には、固定環22、24が取り付けられており、この固定環22、24の取り付け部分が固定部26、28とされている。一方の固定環22には、可撓性を有する材料で構成された紐部材30の一端30Aが固定されている。他方の固定環24には、同様に可撓性を有する材料で構成された紐部材32の一端32Aが固定されている。紐部材32の他端32B側には、図3にも示すように略筒状に形成された筒部材34が取り付けられており、筒部材34の内部に、紐部材30が挿通されている。
【0028】
筒部材34は、図3に詳細に示すように、紐部材32の一端32A側から離間するに従って径が漸減するように形成されており、一端側では紐部材30よりも大径で、他端側では紐部材30よりも小径(従って、筒部材34は紐部材30に対し周囲から接触する)ように、その内径が設定されている。従って、紐部材30は筒部材34に対し、矢印A方向へは比較的小さな摩擦力しか作用しないため相対移動が許容されるが、その反対方向へは大きな摩擦力が作用して相対移動を制限するようになっている。
【0029】
紐部材30には、その長手方向の所定位置ごとに、所定の色で着色された識別表示36が設けられている。このように、紐部材30を着色することで、例えば、従来であれば紐部材30の位置を視認しづらいような状況であっても、紐部材30の位置を目視にて確認することが容易になる。また、識別表示36は、固定部26、28が離間し筒部材34に対し紐部材30が矢印A方向に移動すると、その移動量におうじて、落橋防止装置18がどの程度変形したかを表示できるように、部分ごとに分けて異なる色で着色されている。本実施形態では一例として、落橋防止装置18の変形量が安全範囲内である場合を青、注意範囲である場合を黄、交換範囲である場合を赤で表示し、紐部材30の移動量を、落橋防止装置18の変形の程度と対応させて定性的に知ることができるようにしている。このような着色に代えて、例えば紐部材30の移動量を示す目盛りを付け、移動量を定量的に知ることができるようにしてもよい。
【0030】
次に、本実施形態の変形量表示装置20の作用を説明する。
【0031】
落橋防止装置18は、通常状態では、図1(A)に示すように変形していない。この通常状態で、変形量表示装置20の紐部材30は、筒部材34に対して、矢印Aと反対の方向へ最も変位した位置とされている。換言すれば、固定部26、28の間の最短経路に沿って紐部材30と紐部材32の一部とが直線状に位置している。
【0032】
地震等によって橋桁16どうしが振動し、これらの相対距離が変化すると、これに伴って落橋防止装置18のゴム体10も弾性変形し、橋桁16の相対移動(振動)のエネルギーを吸収する。これにより、橋桁16等の橋構造物の相対位置ずれが一定範囲に制限され、落下等が防止される。
【0033】
橋桁16どうしの振動により、固定部26、28も離間と接近を繰り返すことがある。このとき、紐部材30は筒部材34に対して矢印A方向の相対的な移動のみ許容されているので、図1(B)に示すように、固定部26、28が最も離間した位置、すなわち、紐部材30が筒部材34に対して矢印A方向へ最も移動した位置に維持される。そして、固定部26、28が接近しても、紐部材30は筒部材34に対して矢印Aと反対方向へ移動してしまうことはなく弛む。
【0034】
地震等が終息すると、図1(C)に示すように、ゴム体10が弾性復元し、落橋防止装置18は通常状態(あるいは通常状態に近い状態)になることがある。このとき、ゴム体10のみを観察しても、ゴム体10が最大でどの程度変形していかたを知ることは困難である(実質的に不可能の場合も多い)が、本実施形態の変形量表示装置20では、固定部26、28が最も離間した位置、すなわち、ゴム体10が最も変形し、紐部材30が筒部材34に対して矢印A方向に最大量移動した状態で固定されているので、この紐部材30の位置によって、ゴム体10の最大変位量が記録されていることになる。従って、筒部材34に対する紐部材30の位置から、ゴム体10の最大変位量を知ることができる。
【0035】
特に、本実施形態では、紐部材30に識別表示36が設けられているので、筒部材34に対する紐部材30の移動量から、落橋防止装置18のゴム体10の変形量がどの程度であったかを知る指標とすることができる。例えば、青に着色された部分が筒部材34に達している場合には、ゴム体10の変形は比較的小さく、落橋防止装置18を交換する必要はないことが分かる。黄に着色された部分が筒部材34に達している場合には、ゴム体10の変形が比較的大きかったことが分かる。赤に着色された部分が筒部材34に達している場合には、ゴム体10の変形がさらに大きいため、落橋防止装置18を交換する必要が生じていることが分かる。
【0036】
図4には、本発明の第2実施形態の変形量表示装置50を備えた落橋防止装置48が示されている。第2実施形態に係る落橋防止装置48の基本的構成及び橋桁16への取付構造は、第1実施形態の落橋防止装置18と同一とされている。また、第2実施形態の変形量表示装置50に関し、第1実施形態の落橋防止装置18と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
第2実施形態の変形量表示装置50では、筒部材34が固定部28に対し、紐部材32を使用することなく直接的に取り付けられている。そして、第1実施形態の落橋防止装置18と同様に、筒部材34の内部に紐部材30が挿通されており、紐部材30は筒部材34に対し矢印A方向にのみ相対的に移動するようになっている。
【0038】
このような構成とされた第2実施形態の変形量表示装置50においても、第1実施形態の変形量表示装置20と同様、固定部26、28が最も離間した位置、すなわち、ゴム体10が最も変形した状態で、紐部材30が筒部材34に対して固定されているので、この紐部材30の位置を目視するだけで、ゴム体10の最大変位量を知ることができる。
【0039】
このように、第1実施形態の変形量表示装置20であっても、第2実施形態の変形量表示装置50であっても、ゴム体10が弾性復元した後に、その最大変位量を容易に知ることができる。ゴム体10の最大変位量を知るためのセンサや記録装置等を設ける必要がないので、コスト高を招くこともない。特に、第2実施形態の変形量表示装置50では、第1実施形態の変形量表示装置20と比較して、紐部材32及び固定環24を省略できるので、部品点数が少なくなり、より低コストとなる。これに対し、第1実施形態の変形量表示装置20では、第2実施形態の変形量表示装置50と比較して、紐部材30の長さ等を調整することで、筒部材34の位置を最適な位置とすることができ、自由度が増す。例えば、筒部材34の位置を、固定部26、28の間で最も視認しやすい位置とすることができる。
【0040】
図5には、本発明の第3実施形態の変形量表示装置30を備えたゴム支承144が示されている。
【0041】
橋脚112の上面には、正面視にて中央に、アンカーボルト146によって取付プレート148が固定され、さらに、取付プレート148には、ゴム支承144が固定されている。
【0042】
ゴム支承144は、固定ボルト150によって取付プレート148に固定される台板152と、この台板152に取り付けられた変形部154、及び変形部154の上方のソールプレート172を含んで構成されている。変形部154は、板状に形成されたゴム板と内部鋼鈑とが交互に厚み方向に積層されて加硫接着等により固定され、さらにその上下に、内部鋼鈑よりも板厚を厚くされた連結鋼鈑160(図5では上側の連結鋼鈑160のみ部分的に示し、下側の連結鋼鈑160は図示省略)が、同じく加硫接着等により固定されることによって構成されている。下側の連結鋼鈑には雌ねじ(図示省略)が形成されており、この雌ねじに取付ボルト162が螺合されることで、変形部154が台板152に取り付けられて一体となっている。また、台板152と下側の連結鋼鈑の対向面には、それぞれ対応する位置(中央)に固定用凹部166が形成され、この固定用凹部166に隙間無く、固定キー164がはめこまれている。これにより、変形部154と台板152との水平方向(接触面に沿った方向)へのズレが阻止されるようになっている。
【0043】
上側の連結鋼鈑160の上面中央には接合凹部168が形成されており、この接合凹部168に、金属製あるいは硬質合成樹脂製で円柱状のせん断キー170の下部が埋め込まれて接合されている。
【0044】
一方、横桁120の底面には金属製で平板状のソールプレート172がボルト174によって固定されている。ソールプレート172の底面には、せん断キー170と略同径またはせん断キー170より若干大径の収容凹部176が形成されている。
【0045】
台板152及びソールプレート172にはそれぞれ、固定環22、24が取り付けられて、固定部26、28が構成されている。第1実施形態の変形量表示装置20と同様、一方の固定環22には、紐部材30の一端30Aが固定され、他方の固定環24には、紐部材32の一端32Aが固定されている。紐部材32の中間部には、筒部材34が固定されており、筒部材34の内部に、紐部材30が挿通されている。第1実施形態と同様、紐部材30は筒部材34に対して、矢印A方向への相対的な移動のみが許容されるようになっている。
【0046】
このような構成とされた第3実施形態に係るゴム支承144は、通常の状態では、図5(A)に示すように、横桁120は、橋脚112に固定された図示しない支承等によって支持されている。せん断キー170の上面170Aと収容凹部176の底面176Aとの間、及び上側の連結鋼鈑160の上面160Aとソールプレート172の底面172Aとの間には所定の隙間があいており、また、横桁120の垂直荷重がゴム支承144に作用しない程度に、ソールプレート172とせん断キー154及び上側の連結鋼鈑160とがほぼ非接触状態となっている。従って、横桁120の荷重は図示しない支承のみに作用し、ゴム支承144には作用せず、ゴム支承144を構成するゴム板は、鉛直方向に全く変形していない。
【0047】
このとき、変形量表示装置70の紐部材30は、筒部材34に対して、矢印Aと反対の方向へ最も変位した位置とされている。
【0048】
地震等によって橋脚112に横揺れが生じると、横桁120には慣性力が作用するため、横桁120と橋脚112とは水平方向に相対的に振動しようとする。これにより、収容凹部176の内周面がせん断キー170の外周面を押圧するため、図5(B)に示すように、せん断キー170が台板152に対して水平方向の力を受け、変形部154(特に、ゴム板と内部鋼鈑とが積層された部分)がせん断変形する。このとき、ゴム板は鉛直方向に全く変形していないので、この水平方向の力によって充分にせん断変形する。
【0049】
この変形部154のせん断変形により固定部26、28が離間すると、紐部材30は筒部材34に対して矢印A方向の相対的な移動のみ許容されているので、固定部26、28が最も離間した位置、すなわち、変形部154が最もせん断変形した状態での位置に維持される。固定部26、28が接近しても、紐部材30は筒部材34に対して矢印Aと反対方向へ移動してしまうことはなく弛む。従って、地震等の終息後に変形部154が弾性復元し、通常状態になっても、紐部材30の筒部材34に対する相対位置を目視するだけで、ゴム体10の最大変位量を知ることができる。
【0050】
以上説明したように、本発明のいずれの実施形態の変形量表示装置においても、落橋防止装置18、48やゴム支承144などの弾性復元後に、容易に弾性変形部分の最大変形量を知ることができる。
【0051】
なお、上記説明から分かるように、紐部材30は、落橋防止装置18、48やゴム支承144などの弾性変形で固定部26、28の距離が最も離れた状態を想定し、その場合であっても筒部材34から離脱しない程度に十分な長さを有していればよいが、固定部26、28が一定距離以上に離間すると、紐部材30が筒部材34から離脱するように紐部材30の長さを設定してもよい。例えば、落橋防止装置18、48やゴム支承144が交換を必要とする程度に変形した場合には、そのときの固定部26、28の距離で紐部材30が筒部材34から離脱するようにその長さを設定する(図3において、紐部材30の赤に着色した部分を省略する)。この構成では、地震等の終息後に筒部材34から紐部材30が離脱していることが確認されると、落橋防止装置18、48やゴム支承144が交換を必要とする程度に変形していたことが分かる。
【0052】
また、固定部26、28が一定距離以上に離間すると、可撓性部材が破断されるような強度とし、破断によって結果的に、落橋防止装置18、48やゴム支承144が交換を必要とする程度に変形していたことを知るようにしてもよい。
【0053】
本発明の可撓性部材は、紐部材30に限定されない。例えば、一般的に使用されているロープ、ワイヤー、ベルト等でもよい。上記したように、可撓性を有する材料で構成された紐部材30を使用すると、固定部26、28の相対移動にスムーズに追従し、しかも不用意に座屈等しないので好ましい。また、長手方向の張力に対する伸びが少ない材料で構成すると、紐部材30自体の伸びによる誤差が少なくなるので好ましい。さらに、温度変化に対する伸縮の小さい材料で構成すると、温度変化に起因する誤差が小さくなるので好ましい。このような条件を満たすためには、例えば、紐部材30を樹脂繊維(有機繊維)や金属繊維を含んで構成すればよい。特に、金属繊維は、耐温度性が高いので、例えば過度の温度上昇が想定されるような箇所に本発明の変形量表示装置を設ける場合に好ましい。
【0054】
本発明の保持部材としても、上記した筒部材34に限定されない。要するに、紐部材を部分的に保持し、固定部26、28が離間した場合の紐部材30の移動のみを許容するようになっていればよい。例えば、紐部材30の外径よりも小さな内径を有する円筒状(円筒部材)に形成されていてもよいし、図6に示すように、紐部材30の外径よりも小さな内径を有する小環72を紐部材32に形成し、この小環72を保持部材としてもよい。これらの構成では、円筒部材又は小環72と紐部材30とに摩擦力が作用するので、この摩擦力に抗して紐部材30が矢印A方向に移動する。また、紐部材30の矢印Aと反対方向への移動は、この摩擦力により制限される。
【0055】
本発明の可撓性部材の全体的構成として、図7(A)及び(B)に示すものを使用することも可能である。この構成では、1本の紐部材82を使用しており、この紐部材82の一端(あるいはその近傍)が固定部26(図1等参照)に固定される。また、紐部材82の他端には、保持部材(図7(A)では保持部材として筒部材34を採用し、図7(B)では保持部材として小環72を採用しているが、特に限定されない)が、設けられている。この保持部材に紐部材82の中間部分が挿通され保持されることで、紐部材82には部分的に環状とされた大環部84が形成され、全体として略「6」字状になっている。大環部84において紐部材82を例えば固定環24に挿通することで、紐部材82が固定部26、28に掛け渡される。
【0056】
なお、筒部材34の変形例として、図8に示すような円板状の連結リング81も考えられる。この連結リング81の中央孔83へ紐部材30を通し、外周部に形成された止め孔85へ紐部材32を連結することで、連結構造物の変形量を計ることができる。また、図9に示すように、紐部材30を通す筒部材87は、完全な管状である必要はなく、スリット89が形成されたものであってもよい。
【0057】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、弾性復元後であってもその変形量を容易に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の連結構造用変形量表示装置が適用された落橋防止装置を示す平面図であり、(A)は変形前、(B)は最大変形状態、(C)は弾性復元状態である。
【図2】本発明の第1実施形態の連結構造用変形量表示装置が適用された落橋防止装置を橋桁へ取り付け状態で示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態の連結構造用変形量表示装置の筒部材近傍を拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態の連結構造用変形量表示装置が適用された落橋防止装置を示す平面図であり、(A)は変形前、(B)は最大変形状態、(C)は弾性復元状態である。
【図5】本発明の第3実施形態の連結構造用変形量表示装置が適用された落橋防止装置を示す平面図であり、(A)は変形前、(B)は最大変形状態、(C)は弾性復元状態である。
【図6】本発明の連結構造用変形量表示装置を構成する保持部材のさらに別の例を示す斜視図である。
【図7】(A)及び(B)はそれぞれ、本発明の連結構造用変形量表示装置を構成する可撓性部材のさらに別の例を示す斜視図である。
【図8】連結構造用変形量表示装置の筒部材の変形例を示す斜視図である。
【図9】連結構造用変形量表示装置の筒部材の他の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
16 橋桁(連結対象物)
18 落橋防止装置(連結構造)
20 変形量表示装置
26 固定部
28 固定部
30 紐部材(可撓性部材)
32 紐部材(延長部材)
34 筒部材(保持部材)
36 識別表示
48 落橋防止装置(連結構造)
50 変形量表示装置
70 変形量表示装置
72 小環(保持部材)
144 ゴム支承(連結構造)
Claims (8)
- 2つの連結対象物を連結する連結構造に用いられ、前記2つの連結対象物の相対移動による前記連結構造の最大変位量を表示する連結構造用変形量表示装置であって、
前記連結対象物のそれぞれに対する前記連結構造の連結部分に設けられた固定部と、
前記固定部の一方に固定された長尺状の紐部材と、
前記固定部の他方に直接又は他の部材を介して取り付けられ、前記紐部材が挿通し相対移動可能に保持される保持部材と、
を有し、
前記保持部材は、前記2つの固定部の離間による紐部材の保持部材に対する相対移動は許容し、その許容後にこれら固定部の接近による紐部材の保持部材に対する相対移動を制限して紐部材に弛みを生じさせる、
ことを特徴とする連結構造用変形量表示装置。 - 前記保持部材が、前記他の部材として、前記固定部に対し可撓性を有する延長部材を介して固定部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の連結構造用変形量表示装置。
- 前記固定部の相対移動量が一定範囲を超えると前記保持部材から前記紐部材が離脱するように紐部材の長さが設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の連結構造用変形量表示装置。
- 前記保持部材が、前記紐部材を挿通可能な筒状に形成された筒部材とされ、
前記筒部材が、前記紐部材の前記保持部材に対する相対移動を許容する方向に沿った前記筒部材の開口断面積が漸減し、この方向の先端で紐部材の少なくとも一部に接触する形状とされることにより、前記紐部材の前記保持部材に対する相対移動が制限されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の連結構造用変形量表示装置。 - 前記紐部材が、長手方向の張力に対する伸びが小さい材料により構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の連結構造用変形量表示装置。
- 前記紐部材が、温度変化に対する伸縮が小さい材料により構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の連結構造用変形量表示装置。
- 前記紐部材が、有機繊維又は金属繊維の少なくとも一方を含む紐部材とされていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の連結構造用変形量表示装置。
- 前記紐部材に設けられ、その長手方向への長さを表示する識別表示、
を有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の連結構造用変形量表示装置。
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