以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態による建設機械の作動流体冷却制御システムを油圧駆動装置(油圧システム)と共に示す図である。
図1において、油圧駆動装置は2つの可変容量型油圧ポンプ11,12と2つのコントロールバルブ群20,21とを備えている。油圧ポンプ11,12にはそれぞれの傾転角を制御する傾転制御機構13,14が備えられている。
コントロールバルブ群20はセンタバイパスタイプのコントロールバルブ22,23,24を含む複数のコントロールバルブにより構成され、油圧ポンプ11に接続されている。コントロールバルブ群21はセンタバイパスタイプのコントロールバルブ26,27,28を含む複数のコントロールバルブにより構成され、油圧ポンプ12に接続されている。それぞれのコントロールバルブは被駆動体を構成する各種の油圧アクチュエータに接続され、油圧ポンプ11,12から吐出される圧油の流れを制御し、対応する油圧アクチュエータを駆動制御する。
コントロールバルブ群20のコントロールバルブ22は例えばブーム用であり、対応する油圧アクチュエータとして、ブームシリンダ214(図5参照)に接続されている。
コントロールバルブ群21のコントロールバルブ26は走行用であり、対応する油圧アクチュエータとして、油圧モータ32と接続されている。コントロールバルブ26と油圧モータ32をつなぐ管路上には、カウンタバランス弁34とクロスオーバーリリーフ弁33,33が設けられている。
コントロールバルブ群20のコントロールバルブ23とコントロールバルブ群21のコントロールバルブ27は予備のコントロールバルブであり、バケット以外の作業機アタッチメント(以下オプションアタッチメントという)を装着した場合に使用されるバルブである。オプションアタッチメントとしてはクラッシャー(破砕機)、ブレーカ等種々のものがある。これらのオプションアタッチメントを装着するときは、コネクタ29,30を用いて各オプションアタッチメントの油圧アクチュエータをコントロールバルブ23,27に接続する。図1では、コントロールバルブ23,27にクラッシャーの油圧シリンダ218が接続されている場合を示している。クラッシャーは大流量、高馬力を必要とするアタッチメントであり、このようなクラッシャー等の大流量、高馬力を必要とするアタッチメントを用いる場合のためにオプション選択スイッチ103が設けられている。また、コントロールバルブ23,27のアクチュエータライン側には合流切替弁36が設けられている。オプション選択スイッチ103は運転モードの切換手段であり、オプション選択スイッチ103が押されると破砕モードが選択され、図示しないモード切換コントロールから合流切替弁36に切り換え信号が送られ、合流切替弁36は合流位置(開位置)に切り換わり、クラッシャーの油圧シリンダ218には油圧ポンプ11,12の吐出圧が合流して供給される。同時にモード切換コントロールからエンジン10の燃料噴射量制御装置(図示せず)に信号が送られ、エンジン10の回転数がアップする。
ブーム用のコントロールバルブ22に対する操作手段として、操作レバー装置50が設けられ、走行用のコントロールバルブ26に対する操作手段として、走行ペダル装置51が設けられ、クラッシャー用に使用される予備のコントロールバルブ23,27に対する操作手段として、クラッシャー用の操作レバー装置52が設けられている。
操作レバー装置50は操作レバー50aとパイロットバルブ部50bとを有し、操作レバー50aの操作方向と操作量に応じて、パイロットライン50c,50dのいずれかに操作パイロット圧を発生させ、コントロールバルブ22はその操作パイロット圧により切り換えられる。
走行ペダル装置51は走行ペダル51aとパイロットバルブ部51bを有し、走行ペダル51aの踏込量に応じてパイロットライン51c、51dのいずれかに操作パイロット圧を発生させ、コントロールバルブ26はその操作パイロット圧により切り換えられる。
クラッシャー用の操作レバー装置52は操作レバー52aとパイロットバルブ部52bとを有し、操作レバー52aの操作方向と操作量に応じて、パイロットライン52c,52dのいずれかに操作パイロット圧を発生させ、コントロールバルブ23,27はそのパイロット圧により切り換えられる。
他のコントロールバルブ24・・・,28・・・に対しても操作レバー装置50と同様な操作レバー装置が設けられている。
操作レバー装置50のパイロット圧が出力されるパイロットライン50c,50dにはブーム操作量の検出手段としてシャトル弁60が設けられ、走行ペダル装置51のパイロット圧が出力されるパイロットライン51c,51dには走行操作量の検出手段としてシャトル弁61が設けられ、操作レバー装置52のパイロット圧が出力されるパイロットライン52c,52dにはクラッシャー操作量の検出手段としてシャトル弁62が設けられている。他の操作レバー装置にも同様のシャトル弁が設けられている。
上記シャトル弁60,61,62・・・のうち、コントロールバルブ群20に係わるシャトル弁60,62・・・により検出されたパイロット圧は信号油路71を介して高圧選択弁ブロック63に導かれ、高圧選択弁ブロック63でそれらの圧力のうち最高圧力が選択され、その最高圧力がポジティブ制御のポンプ指令圧力P1Pとして、信号油路73に出力される。
同様に、コントロールバルブ群21に係わるシャトル弁26,27・・・により検出されたパイロット圧は信号油路72を介して高圧選択弁ブロック64に導かれ、高圧選択弁ブロック64でそれらの圧力のうち最高圧力が選択され、その最高圧力がポジティブ制御のポンプ指令圧力P2Pとして、信号油路74に出力される。
傾転制御機構13は信号油路75からポジティブ制御の指令圧力P1Pを入力し、その指令圧力が上昇するに従って油圧ポンプ11の傾転角(押しのけ容積)が増大するように油圧ポンプ11の傾転角を制御する。また、傾転制御機構13は信号油路76から自身に係わる油圧ポンプ11の吐出圧力を入力し、信号油路77から他方の油圧ポンプ12の吐出圧力を入力し、油圧ポンプ11,12の平均吐出圧力が設定値を超えるとその平均吐出圧力が上昇するに従って油圧ポンプ11の傾転角を減少させ、油圧ポンプ11,12の吸収トルクを一定に保つように油圧ポンプ11の傾転角を制御する。
傾転制御機構14も同様であり、信号油路78からポジティブ制御の指令圧力P2Pを入力し、その指令圧力が上昇するに従って油圧ポンプ12の傾転角(押しのけ容積)が増大するように油圧ポンプ12の傾転角を制御する。また、傾転制御機構14は信号油路79から自身に係わる油圧ポンプ12の吐出圧力を入力し、信号油路80から他方の油圧ポンプ11の吐出圧力を入力し、油圧ポンプ11,12の平均吐出圧力が設定値を超えるとその平均吐出圧力が上昇するに従って油圧ポンプ12の傾転角を減少させ、油圧ポンプ11,12の吸収トルクを一定に保つように油圧ポンプ12の傾転角を制御する。
油圧ポンプ11,12から吐出されコントロールバルブ群20,21を通過した圧油(作動油流体)は直接又は油圧モータ32、ブームシリンダ218等の油圧アクチュエータからの戻り油として、排出ライン43から作動油タンク42に戻される。排出ライン43には作動油タンク42に戻される圧油を冷却するためのオイルクーラ40が設けられている。オイルクーラ40は冷却ファン41により冷却される。冷却ファン41は油圧ポンプ11,12とともにエンジン10により回転駆動される。
以上のような油圧駆動装置に本実施の形態の作動流体冷却制御システムが設けられている。このシステムは、走行モータ回転数ピックアップ101と、圧力センサ102と、オプション選択スイッチ103の信号取り込みライン103aと、温度センサ104とを備えている。走行モータ回転数ピックアップ101と、圧力センサ102と、オプション選択スイッチ103の信号取込ライン103aは回路中の作動油流体の温度が高くなる運転パターンを検出する検出手段として設けられているものであり、走行モータ回転数ピックアップ101は油圧モータ32の回転数を検出することで車速を検出し、圧力センサ102は信号油路72のパイロット圧を検出することで、走行ペダル51aの操作量(踏込量)を検出し、オプション選択スイッチ103の信号取込ライン103aはオプション選択スイッチ103のモード切換信号を取込むことで大流量、高馬力を必要とするアタッチメント(例えばクラッシャー)を使用する運転パターンであることを検出する。温度センサ104は作動油タンク42に設けられ、回路中の作動油流体の温度(油温)を検出する。
また、本実施の形態の作動流体冷却制御システムはコントローラ100と、比例電磁弁105,106と、シャトル弁109,110とを備えている。コントローラ100は走行モータ回転数ピックアップ101、圧力センサ102、オプション選択スイッチ103の信号取込ライン103a、温度センサ104の各検出信号を入力し、所定の処理を行い、比例電磁弁105,106のソレノイド部105a,106aに制御電流I1c,I2c(制御信号)を出力する。比例電磁弁105,106はその制御信号に応じた制御圧力P1C,P2Cを信号油路107,108に出力する。シャトル弁109は高圧選択弁ブロック63の出力側の信号油路73と上記信号油路107との間に設けられ、高圧選択弁ブロック63で選択されたポジティブ制御のポンプ指令圧力P1Pと、比例電磁弁105から出力された制御圧力P1Cとの高圧側を選択し、傾転制御機構13の信号油路75に出力する。
同様に、シャトル弁110は高圧選択弁ブロック64の出力側の信号油路74と上記信号油路108との間に設けられ、高圧選択弁ブロック64で選択されたポジティブ制御のポンプ指令圧力P2Pと、比例電磁弁106から出力された制御圧力P2Cとの高圧側を選択し、傾転制御機構14の信号油路78に出力する。
図2は操作レバー装置50、走行ペダル装置51、クラッシャー用の操作レバー装置52等の操作手段における操作レバーあるいはペダルの操作量と出力パイロット圧(操作パイロット圧)との関係を示す図である。
図2において、操作量が不感帯のA1にある間は操作パイロット圧はゼロ(タンク圧)であり、操作量がA1を超えると、操作量がA2になるまでは最小のパイロット圧PminOPから、最大のパイロット圧PmaxOPまで出力パイロット圧が上昇し、操作量がA2を超えると、操作パイロット圧は最大圧PmaxOPで一定となる。
図3は傾転制御機構13,14のポジティブ制御機能を示す図であり、横軸に傾転制御機構13,14に入力される圧力を示し、縦軸に傾転制御機構13,14により制御される油圧ポンプ11,12の傾転角を示している。
図3において、入力圧力がPmin1(P1min1,P2min1)までの間は、油圧ポンプ11,12の傾転角はqmin1(q1min1,q2min1)で一定であり、入力圧力がPmin1を超えると、入力圧力がPmaxになるまでは最小の傾転角qmin1から最大の傾転角qmax(q1max,q2max)まで傾転角が増大し、入力圧力がPmaxを超えると、傾転角は最大値qmaxで一定となる。
最小傾転角qmin1は油圧ポンプ11,12の自己潤滑性確保の目的で設定される最小傾転角であり、最大傾転角qmaxは油圧ポンプ11,12の仕様で決まる最大傾転角である。
図4は傾転制御機構13,14の吸収トルク制限制御機能を示す図であり、横軸に油圧ポンプ11,12の吐出圧力の平均値を示し、縦軸は油圧ポンプ11,12の最大傾転角(最大押しのけ容積)を示している。最大傾転角とは傾転角の制限値を意味する。
図4において、油圧ポンプ11,12の吐出圧力の平均値がPaまでの間は油圧ポンプ11,12の最大傾転角はqmax(q1max,q2max)で最大であり、油圧ポンプ11,12の吐出圧力の平均値がPaを超えると、油圧ポンプ11,12の吐出圧力の上昇に応じて、油圧ポンプ11,12の傾転角が減少する。Pmaxは油圧ポンプ11,12の吐出油路に接続された図示しないメインリリーフ弁のリリーフ圧である。
傾転制御機構13,14は図3のポジティブ制御機能による目標傾転角が図4の吸収トルク制限制御機能による、そのときのポンプ圧平均値に対応する最大傾転角より小さいときは、油圧ポンプ11,12の傾転角がポジティブ制御機能による傾転角となるよう油圧ポンプ11,12の傾転角を制御し、ポジティブ制御機能による傾転角が吸収トルク制限制御機能による最大傾転角を越えると、油圧ポンプ11,12の傾転角がその最大傾転角に制限されるよう油圧ポンプ11,12の傾転角を制御する。その結果、油圧ポンプ11,12の合計の吸収トルクは図4のトルク曲線Tnを超えないよう制御される。図4のトルク曲線Tnはエンジン10のレギュレーション領域の最大出力トルク付近を示す曲線である。これにより、エンジン10の過負荷によるエンジンストールが防止できる。
なお、図4の縦軸をポンプ流量に置き換えると馬力制御となり、Tnは馬力曲線となる。また、図4の横軸を油圧ポンプ11,12の吐出圧力の平均値とした制御は全馬力制御と呼ばれる。
図5は、本実施の形態に係わる油圧駆動装置が搭載されるホイールショベルの側面図である。
図5において、ホイールショベル201は、下部走行体202と、下部走行体202の上部に回転可能に搭載された上部旋回体203と、フロント作業機204とを備えている。下部走行体202は前輪205と後輪206を備え、後輪206は図1に示した油圧モータ32により駆動される。
上部旋回体203はいわゆるキャビンタイプの運転室209と、上部旋回体203の運転室209以外の大部分を覆う外装カバー210とを備えている。外装カバー210の内部には、図1に示したエンジン10、油圧ポンプ21,22等が搭載されている。
フロント作業機204はブーム211と、ブーム211に回動可能に結合されたアーム212と、アーム212に回動可能に結合されたバケット213を備え、ブーム211、アーム212、及びバケット213は、それぞれブームシリンダ214、アームシリンダ215、及びバケットシリンダ216により駆動される。
図6は作業機アタッチメントとしてバケット213の代わりにクラッシャー217を装着したフロント作業機204の一部を示す図である。
クラッシャー217は作業機アタッチメントの一つであり、作業機の先端にバケット213の代わりに装着され、図1に示したアクチュエータ218を内臓している。図1に示したアクチュエータ218はバケットシリンダ216に比較して、大流量(例えば2ポンプ分)、高馬力を必要とする。
図7及び図8はコントローラ100の演算処理の詳細を示す機能ブロック図である。
コントローラ100は、図7に示すように、走行モータ回転数ピックアップ101、圧力センサ102、オプション選択スイッチ103の信号取り込みライン103a、温度センサ104からの各検出信号を入力し、油圧ポンプ11の最小傾転角を増加させるための制御信号を比例電磁弁105に出力する第1最小ポンプ傾転演算部111と、図8に示すように、走行モータ回転数ピックアップ101、オプション選択スイッチ103の信号取り込みライン103a、温度センサ104からの各検出信号を入力し、油圧ポンプ12の最小傾転角を増加させるための制御信号を比例電磁弁106に出力する第2最小ポンプ傾転演算部112とを有している。
図7において、第1最小ポンプ傾転演算部111は、車速による最小傾転演算部111aと、走行操作量による最小傾転演算部111bと、モード切換信号による最小傾転演算部111cと、油温による最小傾転演算部111dと、最大値選択部111eと、制御信号生成部111fとを有している。
車速による最小傾転演算部111aは、走行モータ回転数ピックアップ101から油圧モータ32の回転数を車速情報として入力し、この情報を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、そのときの車速に対応した油圧ポンプ11の最小傾転角q1minaを算出する。メモリに記憶されたテーブルには、図7に示すように、車速が遅いV1までの間は、最小傾転角q1minaは傾転制御機構13に設定された図3に示す最小傾転角q1min1と同じ一定の値であり、車速がV1からV2に増加するに従って最小傾転角q1minaはq1min1からq1min2まで増加し、車速がV2以上の高速になると最小傾転角q1minaはq1min2で一定となるように、車速と最小傾転角q1minaとの関係が設定されている。
走行操作量による最小傾転演算部111bは、圧力センサ102から信号油路72のパイロット圧を走行ペダル51aのペダル操作量(踏込量)情報として入力し、この情報を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、そのときのペダル操作量に対応した油圧ポンプ11の最小傾転角q1minbを算出する。メモリに記憶されたテーブルには、図7に示すように、ペダル操作量が少ないA1までの間は、最小傾転角q1minbは傾転制御機構13に設定された図3に示す最小傾転q1min1と同じ一定の値であり、ペダル操作量がA1からA2に増加するに従って最小傾転q1minbはq1min1からq1min2まで増加し、ペダル操作量がA2以上になると最小傾転角q1minbはq1min2で一定となるように、ペダル操作量と最小傾転角q1minbとの関係が設定されている。
モード切換信号による最小傾転演算部111cは、オプション選択スイッチ103の信号取込ライン103aからモード切換信号(オプションスイッチ信号)を入力し、この信号を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、モード切換信号情報に対応した油圧ポンプ11の最小傾転角q1mincを算出する。メモリに記憶されたテーブルには、図7に示すように、オプション選択スイッチ103の信号がOFFの時には、最小傾転角q1mincは傾転制御機構13に設定された図3に示す最小傾転角q1min1と同じ値であり、オプション選択スイッチ103の信号がONの時には、最小傾転角q1mincがq1min2となるようにモード切換信号と最小傾転角q1mincとの関係が設定されている。
油温による最小傾転演算部111dは、温度センサ104から作動油タンク42の油温情報を入力し、この情報を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、そのときの油温に対応した油圧ポンプ11の最小傾転角q1mindを算出する。メモリに記憶されたテーブルには、図7に示すように、油温が正常温度範囲の上限であるT1までの間は、最小傾転角q1mindは傾転制御機構13に設定された図3に示す最小傾転角q1min1と同じ一定の値であり、油温がT1からT2に増加するに従って最小傾転角q1mindはq1min1からq1min2まで増加し、油温がT2以上の高温になると、最小傾転角q1mindはq1min2で一定となるように、油温と最小傾転角q1mindとの関係が設定されている。
最大値選択部111eは、車速による最小傾転演算部111a、走行操作量による最小傾転演算部111b、モード切換信号による最小傾転演算部111c、油温による最小傾転演算部111dのそれぞれで算出された油圧ポンプ11の最小傾転角q1mina,q1minb,q1minc,q1mindを入力し、それらのうちの最大値をq1minxとして選択し、制御信号生成部111fに出力する。
図9は制御信号生成部111fの演算処理の詳細を示す機能ブロック図である。制御信号生成部111fは制御圧力演算部151と、制御電流演算部152と、増幅部153とを有している。制御圧力演算部151は最大値q1minxを入力し、この情報を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、対応した目標制御圧力P1COを算出する。メモリに記載されたテーブルには、図9に示すような最大値q1minxと目標制御圧力P1COの関係が設定されている。この関係は、図3に示す、操作パイロット圧と制御される油圧ポンプ11,12の傾転角との関係の逆関数である。
制御電流演算部152は、目標制御圧力P1COを入力し、この情報を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、そのときの目標制御圧力P1COに対応した目標制御電流I1COを算出する。メモリのテーブルには目標制御圧力P1COが増加するに従って目標制御電流I1COも増加するよう目標制御圧力P1COと目標制御電流I1COとの関係が設定されている。
増幅部153は目標制御電流I1COを増幅して制御電流I1Cとし、これを比例電磁弁105のソレノイド105aに出力する。
比例電磁弁105はソレノイド105aに入力された制御電流I1Cにより作動し、対応する制御圧力P1Cを出力する。この制御圧力P1Cは、そのとき制御圧力演算部151で演算された目標制御圧力P1COに対応する圧力である。
図8において、第2最小ポンプ傾転演算部112は、車速による最小傾転演算部112aと、モード切換信号による最小傾転演算部112cと、油温による最小傾転演算部112dと、最大値選択部112eと、制御信号生成部112fとを有している。
車速による最小傾転演算部112aは、走行モータ回転数ピックアップ101から油圧モータ32の回転数を車速情報として入力し、この情報を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、そのときの車速情報に対応した油圧ポンプ12の最小傾転角q2minaを算出する。メモリに記憶されたテーブルには、図8に示すように、車速が遅いV1までの間は、最小傾転角q2minaは傾転制御機構14に設定された図3に示す最小傾転角q2min1と同じ一定の値であり、車速がV1からV2に増加するに従って最小傾転角q2minaはq2min1からq2min2まで増加し、車速がV2以上の高速になると最小傾転角q2minaはq2min2で一定となるように、車速と最小傾転角q2minaとの関係が設定されている。
モード切換信号による最小傾転演算部112cは、オプション選択スイッチ103の信号取込ライン103aからモード切換信号(オプションスイッチ信号)を入力し、この信号を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、モード切換信号情報に対応した油圧ポンプ12の最小傾転角q2mincを算出する。メモリに記憶されたテーブルには、図8に示すように、オプション選択スイッチ103がOFFの時には、最小傾転角q2mincは傾転制御機構14に設定された図3に示す最小傾転角q2min1と同じ値であり、オプション選択スイッチ103がONの時には、最小傾転角q2mincがq2min2となるようにモード切換信号と最小傾転角q2mincとの関係が設定されている。
油温による最小傾転演算部112dは、温度センサ104から作動油タンク42の油温情報を入力し、この情報を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、そのときの油温情報に対応した油圧ポンプ11の最小傾転角q2mindを算出する。メモリに記憶されたテーブルには、図8に示すように、油温が最低のT1までの間は、最小傾転角q2mindは傾転制御機構14に設定された図3に示す最小傾転角q2min1と同じ一定の値であり、油温がT1からT2に増加するに従って最小傾転角q2mindはq2min1からq2min2まで増加し、油温がT2以上の高温になると、最小傾転角q2mindはq2min2で一定となるように、油温と最小傾転角q1mindとの関係が設定されている。
最大値選択部112eは、車速による最小傾転演算部112a、モード切換信号による最小傾転演算部112c、油温による最小傾転演算部112dのそれぞれで算出された油圧ポンプ12の最小傾転角q2mina,q2minc,q2mindを入力し、それらのうちの最大値をq2minyとして選択し、制御信号生成部112fに出力する。
図10は制御信号生成部112fの演算処理の詳細を示す機能ブロック図である。制御信号生成部112fは制御圧力演算部161と、制御電流演算部162と、増幅部163とを有している。制御圧力演算部161は最大値q2minyを入力し、この情報を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、対応した目標制御圧力P2COを算出する。メモリに記載されたテーブルには、図10に示すような最大値q2minyと目標制御圧力P2COの関係が設定されている。この関係は、図3に示す、操作パイロット圧と制御される油圧ポンプ11,12の傾転角との関係の逆関数である。
制御電流演算部162は、目標制御圧力P2COを入力し、この情報を予めメモリに記憶されたテーブルに参照し、そのときの目標制御圧力P2COに対応した目標制御電流I2COを算出する。メモリに記載されたテーブルには目標制御圧力P2COが増加するに従って目標制御電流I2COも増加するよう目標制御電圧P2COと目標制御電流I2COとの関係が設定されている。
増幅部163は目標制御電流I2COを増幅して制御電流I2Cとし、これを比例電磁弁106のソレノイド106aに出力する。
比例電磁弁106はソレノイド106aに入力された制御電流I2Cにより作動し、対応する制御圧力P2Cを出力する。この制御圧力P2Cは、そのとき制御圧力演算部161で演算された目標制御圧力P2COに対応する圧力である。
以上において、油圧ポンプ11及び12は、それぞれ、第1の可変容量式油圧ポンプ及 び第2の可変容量式油圧ポンプを構成し、油圧アクチュエータ218(クラッシャーの油 圧シリンダ)は第1の可変容量式油圧ポンプで駆動される第1の被駆動を構成し、油圧ア クチュエータ32(走行用の油圧モータ)は、第2の可変容量式油圧ポンプで駆動される 第2の被駆動を構成する。走行モータ回転数ピックアップ101と圧力センサ102は、第1及び第2の被駆動体32,214,218,…に係わる運転パターンの中から、作動油流体の温度が上昇する運転パターンを検出する第1検出手段を構成し、コントローラ100と、比例電磁弁105,106と、シャトル弁109,110と、傾転制御機構13,14は、上記第1検出手段により作動流体の温度が上昇する運転パターンが検出された ときに、第1及び第2の可変容量式油圧ポンプのうち、少なくとも、作動流体の温度が上 昇する運転パターンで使用される油圧ポンプ(油圧ポンプ12)以外の油圧ポンプ(油圧ポンプ11)の最小容量を増加させオイルクーラ(熱交換器)40を通過する作動油流体の平均流量を増加させるポンプ流量増加手段を構成する。
また、上記ポンプ流量増加手段は、第2の被駆動体(走行モータ32)に係わる運転パターンに基づいて、上記作動流体の温度が上昇する運転パターンで使用される油圧ポンプ(油圧ポンプ12)以外の油圧ポンプである油圧ポンプ11のみの最小容量を増加させるように構成してもよく、この場合、コントローラ100と、比例電磁弁105と、シャト ル弁109と、傾転制御機構13は、上記第1検出手段により作動流体の温度が上昇する 運転パターンが検出されたときに、第1及び第2の可変容量式油圧ポンプのうち、作動流 体の温度が上昇する運転パターンで使用される油圧ポンプ(油圧ポンプ12)以外の油圧 ポンプ(油圧ポンプ11)の最小容量を増加させオイルクーラ(熱交換器)40を通過す る作動油流体の平均流量を増加させるポンプ流量増加手段を構成する。
次に本実施の形態の動作について説明する。
まず、フロント作業機204にバケット213を装備して行う通常作業時について説明する。
通常作業時において、操作レバー装置50、走行ペダル装置51等の全ての操作手段が操作されない無操作状態にあるときは、操作手段の出力するパイロット圧はゼロ(タンク圧)であり、信号油路73,74の圧力もゼロ(タンク圧)である。
一方、通常作業時はオプション選択スイッチ103はOFF(通常作業モード)であり、また、無操作状態であるため走行モータ回転数ピックアップ101,圧力センサ102からの検出信号の値もゼロである。また、作動油タンク42の油温が正常の温度範囲にある場合は、温度センサ104の検出信号もそれに応じた値となる。よって、この場合はコントローラ100の第1最小ポンプ傾転演算部111及び第2最小ポンプ傾転演算部112においては、最小傾転角としてq1min1,q2min1が演算され、それに対応する制御電流I1C,I2Cが比例電磁弁105,106に出力され、比例電磁弁105,106からはq1min1,q2min1に対応する制御圧力P1C,P2Cが出力される。この制御圧力P1C,P2Cは図9、図10の制御圧力演算部151,161で演算される目標制御圧力P1min1,P2min1に相当する圧力である。その結果、シャトル弁109,110では、制御圧力P1C,P2Cが選択され、傾転制御機構13,14にはその制御圧力P1C,P2Cが入力され、油圧ポンプ11,12の傾転角はq1min1,q2min1となるように制御される。これは信号油路73,74の圧力(ゼロ)がポンプ指令圧力として傾転制御機構13,14に入力される場合(従来技術)と同じ制御結果となる。
この状態から、例えばオペレータがブーム211を動かすことを意図して操作レバー装置50の操作レバー50aを操作すると、パイロットライン50c,50dのいずれかに操作パイロット圧が発生し、コントロールバルブ22はそのパイロット圧により切り換えられる。これと同時に、その圧力がシャトル弁60により検出され、更に高圧選択弁ブロック63により選択されて、ポンプ指令圧力P1Pとして、信号油路73に出力される。
一方、このときのコントローラ100に入力されるオプション選択スイッチ103の信号取り込みライン103aからの信号及び走行モータ回転数ピックアップ101、圧力センサ102、温度センサ104からの検出信号の値は前述した無操作状態における値と同じであり、信号油路107,108には目標制御圧力P1min1,P2min1に相当する圧力(<P1P)が出力される。その結果、シャトル弁109ではポンプ指令圧力P1Pが選択される。傾転制御機構13では、このポンプ指令圧力P1Pと油圧ポンプ11,12の吐出圧平均値に基づいて前述したポジティブ流量制御(図3)と吸収トルク制限制御(図4)により油圧ポンプ11の傾転が制御される。
コントロールバルブ群20に係わる他の操作手段を操作した場合、コントロールバルブ群21に係わる走行ペダル装置51以外の操作手段を操作した場合も上記通常作業時と同様である。
次に走行ペダル装置51の走行ペダル51aを操作して行う走行時について説明する。
走行ペダル51aの操作量が小さく車速が遅い低速走行の場合(車速<V1)は、コントローラ100の第1最小ポンプ傾転演算部111及び第2最小ポンプ傾転演算部112において最小傾転角としてq1min1,q2min1が演算されるため、上記通常作業時と同様である。つまり、傾転制御機構14では、ポンプ指令圧力P2Pと油圧ポンプ11,12の吐出圧平均値に基づいて前述したポジティブ流量制御(図3)と吸収トルク制限制御(図4)により油圧ポンプ12の傾転が制御される。
平坦路で高速走行を意図して走行ペダル51aをフル操作した場合は、操作ペダル装置51からパイロットライン51c、51dのいずれかに高圧のパイロット圧が出力され、コントロールバルブ26はそのパイロット圧により切り換えられる。これと同時に、その圧力がシャトル弁61により検出され、更に高圧選択弁ブロック64により選択されて、ポンプ指令圧力P2Pとして、信号油路74に出力される。このポンプ指令圧力P2Pは、シャトル弁110で制御圧力P2Cと比較されるが、このときは走行ペダル51aはフル操作でありP2P>P2min2であるため、P2P>P2Cとなり、シャトル弁110ではポンプ指令圧力P2Pが選択され、傾転制御機構14には、そのポンプ指令圧力P2Pが入力される。
傾転制御機構14では、このポンプ指令圧力P2Pと油圧ポンプ11,12の吐出圧平均値に基づいて前述したポジティブ流量制御(図3)と吸収トルク制限制御(図4)により油圧ポンプ12の傾転が制御される。
例えば、加速時であれば走行負荷は高いため、油圧ポンプ12の吐出圧力は図4のPa以上の高圧となり、ポンプ指令圧力P2Pのポジティブ制御による目標傾転が例えば図3のqmaxであっても、油圧ポンプ12の傾転角はqmaxよりも小さい傾転角に制限され、油圧ポンプ12から走行の油圧モータ32にその傾転角に応じた流量の圧油が供給され、車体はその流量に応じた速度で走行する。
加速終了後の定常走行時は、油圧ポンプ12の吐出圧力は図4のPa以下付近の低圧となると、吸収トルク制限制御による最大傾転角もポンプ指令圧力P2pのポジティブ制御による目標傾転と同じqmaxとなるため、油圧ポンプ12の傾転角はポジティブ制御によりqmaxとなるよう制御され、油圧ポンプ12からはそれに応じた大流量の圧油が吐出される。これにより走行の油圧モータ32は高速で回転し、車体は高速で走行する。
一方、このときコントローラ100に入力される信号のうち、圧力センサ102からの検出信号の値は、走行ペダル51aがフル操作状態であるため図7のA2以上となり、第1最小ポンプ傾転演算部111の走行操作量による目標傾転演算部111bにおいて最小傾転角q1minbとしてq1min2が演算され、そのq1min2が最大値選択部111eでq1minxとして選択され、制御信号生成部111fに出力される。制御信号生成部111fからはq1minx(q1min2)に対応する制御電流I1Cが比例電磁弁105に出力され、比例電磁弁105は制御油路107にそれに対応する制御圧力P1Cを出力する。この制御圧力P1Cは図9の制御圧力演算部151で演算されるP1min2に相当する圧力である。一方、このとき信号油路73の圧力はタンク圧である。
その結果、シャトル弁109では制御圧力P1Cが選択され、傾転制御機構13には、その制御圧力P1Cが入力され、油圧ポンプ11の傾転角はP1min2に対応するq1min2となるように制御される。つまり、油圧ポンプ11の最小傾転角はq1min1からq1min2に増大する。これにより排出ライン43を介してタンク42に戻される圧油の平均流量が増加し、オイルクーラ40における平均放熱量が増加し、作動油流体の平衡温度を下げることができる。
上り坂での走行を意図して走行ペダル51aをフル操作した場合には、油圧ポンプ12側においては、平坦路での高速走行時の場合と同様に走行ペダル装置51からの高圧のパイロット圧に基づくポンプ指令圧力P2Pがシャトル弁110で選択され、傾転制御機構14に入力される。傾転制御機構14では、このポンプ指令圧力P2Pと油圧ポンプ11,12の吐出圧平均値に基づいて前述したポジティブ流量制御(図3)と吸収トルク制限制御(図4)により油圧ポンプ12に傾転が制御される。
ここで、このときは登坂走行であるため走行負荷は高く、油圧ポンプ12の吐出圧力は図4のPa以上の高圧である。このためポンプ指令圧力P2Pのポジティブ制御による目標傾転が例えば図3のqmaxであっても、油圧ポンプ12の傾転角はqmaxよりも小さい傾転角に制限され、油圧ポンプ12から走行の油圧モータ32にその傾転角に応じた流量の圧油が供給され、車体は低速で走行する。
一方、このとき油圧ポンプ11側においては、平坦路での高速走行時の場合と同様にコントローラ100の第1最小ポンプ傾転演算部111における走行操作量による目標傾転演算部111bで最小傾転角q1minbとしてq1min2が演算され、比例電磁弁105から信号油路107にそれに対応する制御圧力P1Cが出力される。その結果、シャトル弁109ではその制御圧力P1Cが選択され、傾転制御機構13にはその制御圧力P1Cが入力され、油圧ポンプ11の傾転角はq1min2となるように制御される。つまり、この場合も、油圧ポンプ11の最小傾転角はq1min1からq1min2に増大し、これにより排出ライン43を介してタンク42に戻される圧油の平均流量が増加し、オイルクーラ40における平均放熱量が増加し、作動油流体の平衡温度を下げることができる。
下り坂での走行を意図して走行ペダル51aを軽く操作した場合には、走行ペダル装置51からパイロットライン51c、51dのいずれかに低圧のパイロット圧が出力され、コントロールバルブ26はそのパイロット圧により切り換えられる。これと同時に、その圧力がシャトル弁61により検出され、更に高圧選択弁ブロック64により選択されて、ポンプ指令圧力P2Pとして、信号油路74に出力される。
一方、このときコントローラ100に入力される信号のうち走行モータ回転数ピックアップ101からの検出信号の値は下り坂での走行であるため図8のV2以上となることがある。よって、この場合は第2最小ポンプ傾転演算部112の車速による目標傾転演算部112aにおいて最小傾転角のq2minaとしてq2min2が算出され、信号油路108にはそのq2min2に対応する制御圧力P2Cが出力される。この制御圧力P2Cは図10の制御圧力演算部161で演算されるP2min2に相当する圧力である。
その結果、走行ペダルの操作量が小さくてP2P<P2Cである場合は、シャトル弁110で制御圧力P2Cが選択され、傾転制御機構14には、その制御圧力P2Cが入力され、油圧ポンプ12の傾転角は傾転角q2min2となるように制御される。つまり、油圧ポンプ12の傾転角は、ポンプ指令圧力P2Pによるポジティブ制御の傾転角からq2min2に増大する。この場合、油圧ポンプ12から吐出された圧油の余剰流量はコントロールバルブ26のセンタバイパス通路を通り、排出ライン43を介してタンク42へと戻る。
油圧ポンプ11側においても、車速がV2以上の場合は、油圧ポンプ12側と同様にコントローラ100の第1最小ポンプ傾転演算部111における車速による目標傾転演算部111aで最小傾転角q1minaとしてq1min2が演算され、比例電磁弁105から信号油路107にそれに対応する制御圧力P1C(図9の制御圧力演算部151で演算されるP1min2に相当)が出力される。その結果、シャトル弁109ではその制御圧力P1Cが選択され、傾転制御機構13にはその制御圧力P1Cが入力され、油圧ポンプ11の傾転角はq1min2となるように制御される。つまり、油圧ポンプ11側においても、最小傾転角はq1min1からq1min2に増大する。
以上のように下り坂の走行時は、運転状況によっては、油圧ポンプ11だけでなく油圧ポンプ12の傾転角もポンプ指令圧力P2Pが指示する傾転角より増大し、これにより油圧ポンプ11側からの圧油だけでなく、油圧ポンプ12側からの圧油によっても排出ライン43を介してタンク42に戻される圧油の平均流量が増加し、オイルクーラ40における平均放熱量が増加し、作動油流体の平衡温度を下げることができる。
なお、油圧ポンプ11側では車速がV2以上になった場合について説明したが、車速がV1〜V2の間にある場合でも、車速による目標傾転演算部111a,112aで演算される最小傾転はqmin1とqmin2との間でqmin1よりは増加するため、それに応じて油圧ポンプ11,12の傾転角増加(吐出流量増加)による冷却性能アップの効果を得ることができる。
次にバケット213をクラッシャー217に交換して破砕作業を行う場合について説明する。クラッシャー217を用いて行う破砕作業は、標準作業に対して負荷頻度の高い作業である。
オペレータが解体作業等の破砕作業を意図して、オプション選択スイッチ103を押すと、モード切換信号がOFFからONに切り換わり、信号取込ライン103aからコントローラ100にそのON信号が入力される。コントローラ100の第1最小ポンプ傾転演算部111、第2最小ポンプ傾転演算部112におけるモード切換信号による最小傾転演算部111c,112cにおいてはそのON信号により最小傾転角q1minc,q2mincとして、q1min2,q2min2が、演算され、信号油路107,108にそれに相当する制御圧力P1C,P2Cが出力される。
その結果、1つの破砕作業から他の破砕作業への移行時など、クラッシャー用の操作レバー装置52を含めて全ての操作手段を操作していない無操作時は、油圧ポンプ11,12の最小傾転角はq1min1からq1min2に増大する。これにより排出ライン43を介してタンク42に戻される圧油の平均流量が増加し、オイルクーラ40における平均放熱量が増加し、作動油流体の平衡温度を下げることができる。
次に通常作業時に、万一、作動油タンク42の油温が正常の温度範囲を超えて上昇してしまった場合を説明する。
雰囲気温度の非常に高い場所での稼動、機械の劣化等により通常作業時であるにも係わらず油圧システムの回路内の作動油温度が上がる場合がある。
通常作業時に、例えば油温がT2以上となった場合は、コントローラ100の第1最小ポンプ傾転演算部111、第2最小ポンプ傾転演算部112における油温による目標傾転演算部111d,112dにおいては、作動油タンク42の温度センサ104の検出信号に基づいて最小傾転角q1mind,q2mindとしてq1min2,q2min2が算出され、それに対応する制御圧力P1C,P2Cが出力される。
その結果、全ての操作手段を操作していない無操作時に、油圧ポンプ11,12の最小傾転角はq1min1からq1min2に増大し、これにより排出ライン43を介してタンク42に戻される圧油の平均流量が増加し、オイルクーラ40における平均放熱量が増加し、作動油流体の平衡温度を下げることができる。
本実施の形態によれば、次の効果が得られる。
(1)走行モータ回転数ピックアップ101、圧力センサ102、オプション選択スイッチ103の信号取り込みライン103aからの各信号をコントローラ100に入力し、標準作業に対して負荷頻度の高い走行時やクラッシャーを用いた破砕作業(例えば解体作業)時に、そのような運転パターンを検出し、油圧ポンプ11,12の最小傾転角を増大するため、オイルクーラ(熱交換器)40の作動油流体の平均通過流量を予め多くすることができ、これにより作動油流体の平衡温度を下げ、作動流体の温度上昇を未然に防止することができる。
(2)温度センサ104からの検出信号をコントローラ100に入力し、雰囲気温度の非常に高い場所での稼動、機械の劣化等により、通常作業時であるにも係わらず、万一、油圧システムの回路内の作動油温度が上がった場合にも、そのことを検出し、油圧ポンプ11,12の最小傾転角を増大するため、オイルクーラ(熱交換器)40の作動油流体の平均通過流量を予め多くすることができ、これにより作動油流体の平衡温度を下げ、上昇した作動流体の温度を速やかに低下させることができる。
(3)上記(1)及び(2)の結果、作動油流体の温度が正常範囲を超えて上昇する頻度が大幅に低減するので、油温上昇によるシール部品の劣化や作動油の低粘性化による摺動部の摩耗の増加が低減し、油圧機器の故障低減や寿命向上が可能となる。
(4)操作手段中立時である無操作状態での油圧ポンプ11,12の容量がqmin1,qmin2のいずれかの最小容量(最小傾転角)に制御され、当該容量が最適化されるため、無操作状態での圧損増加による燃費の悪化や発熱量の増大を低減することができる。また、被駆動体の起動ショックを最小限にすることができる。
(5)オイルクーラ(熱交換器)40の冷却能力アップの要否をコントローラ100が判断して制御を行うため、オペレータの判断や手動操作は不要となり、使い勝手(操作性)が良い。
(6)走行時は、走行に直接関わらない油圧ポンプ11(空いている油圧ポンプ)を利用し、その最小傾転角も増大してオイルクーラ(熱交換器)40の作動油流体の平均通過流量を予め多くするので、より効果的に冷却能力をアップし、作動油流体の温度上昇を未然に防止することができる。
なお、以上の実施の形態では、負荷頻度が高い運転モードとしてクラッシャーで破砕作業を行う運転モードについて説明したが、重掘削モード(パワーモード)、微操作モード等の運転モードを有するシステムにあっては、重掘削モード(パワーモード)であってもよい。
また、走行モータ回転数ピックアップ101、圧力センサ102、オプション選択スイッチ103の信号取り込みライン103a、温度センサ104からの各信号をコントローラ100に入力し、作動油温度の上昇が予想される場合(事前)と作動油の温度上昇した場合(事後)の両方で油圧ポンプ11,12の最小傾転角を増大させ、冷却能力をアップする構成としたが、作動油温度の上昇が予想される場合(事前)だけに油圧ポンプ11,12の最小傾転角を増大させる構成としてもよく、この場合でも上記(2)以外の効果を得ることができる。また、場合によっては、作動油の温度上昇した場合(事後)だけに油圧ポンプ11,12の最小傾転角を増大させる構成としてもよく、この場合は、上記(1)以外の効果が得られる。
更に、上記実施の形態では、走行モータ回転数ピックアップ101の信号に基づいて油圧ポンプ11,12の両方の最小容量(最小傾転角)を増加させたが、走行に係わる油圧ポンプ以外の油圧ポンプである油圧ポンプ11のみの最小容量(最小傾転角)を増加させるようにしてもよく、この場合も上記(2)以外の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態では、コントローラ100の車速による最小傾転演算部111a、走行操作量による最小傾転演算部111b、モード切換信号による最小傾転演算部111c、油温による最小傾転演算部111d、車速による最小傾転演算部112a、モード切換信号による最小傾転演算部112c、油温による最小傾転演算部112dにおいて、作動油流体の温度が上昇する運転パターンが検出された場合の最小傾転角q1min2,q2min2の同じ値としたが、それらはそれぞれの運転パターンの特性に応じて任意に異ならせてもよい。例えば、下り坂で車速が速くなった場合は、クロスオーバリリーフ弁33でのリリーフによる温度上昇が顕著となる場合が多いので、その場合の演算部である車速による最小傾転演算部111a,112aで演算される最小傾転角q1min2,q2min2をより大きめにすると、それに応じて冷却性能もアップし、効果的である。