JP3804487B2 - 油圧ショベルの油圧回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は油圧ショベルの油圧回路に関するものであり、特に油圧ショベルを構成する各作動部のうち、単独で駆動される作動部を駆動する際に、この作動部を駆動する特殊油圧アクチュエータからの戻り油を効率的に冷却できるようにした油圧回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
油圧ショベルは、車両の走行、上部旋回体の旋回、フロント作業機構等の作動部は、油圧モータや油圧シリンダからなる油圧アクチュエータにより駆動されるようになっている。これら油圧アクチュエータに圧油の供給制御を行うための油圧回路としては、一般に、図4に示した構成となっている。
【0003】
図中において、1a,1bは可変容量型の油圧ポンプを示し、これら各油圧ポンプ1a,1bにはコントロールバルブ2a,2bがそれぞれ接続されている。コントロールバルブ2a,2bは、それぞれ複数のセンターバイパス式の方向切換弁3a,3bを備えている。これら各方向切換弁3a,3bには、図示は省略するが、左右の走行用油圧モータ,旋回用油圧モータ,ブームシリンダ,アームシリンダ,バケットシリンダ等が接続される。ここで、ブームシリンダ及びアームシリンダについては、大流量が必要なために、コントロールバルブ2a,2bから供給される圧油を合流させている。また、フロント作業機構においては、フロントアタッチメントとして、バケットの他に、ブレーカや破砕機等を交換的に装着できるようになっている。これらブレーカや破砕機等も油圧により駆動されるものであって、その駆動を行うために、コントロールバルブ2aには方向切換弁3xが設けられる。方向切換弁3xは、土砂の掘削時等のように、フロントアタッチメントとしてバケットを用いる場合には使用せず、バケットに代えて、ブレーカ等が装着された時に、それを駆動するための特殊な油圧アクチュエータに接続されることになる。
【0004】
コントロールバルブ2a,2bのセンターバイパス流路及び各方向切換弁3a,3bのタンクポートは合流させて作動油タンク4に還流されるが、この作動油タンク4への還流流路5は途中で非冷却流路5aと冷却流路5bとに分配させた後に作動油タンク4に流入させている。非冷却流路5a及び冷却流路5bには、還流流路5に所定のメイクアップ特性を持たせるために、リリーフ弁6a,6bが設けられ、また冷却流路5b側には、リリーフ弁6bの下流側に戻り油を冷却するためのオイルクーラ7が設けられている。なお、図中において、8は油圧回路全体の最高圧を設定するためのリリーフ弁である。
【0005】
以上のように構成することによって、車両の走行や、上部旋回体の旋回、さらにフロント作業機構の作動を行わせる際には、操作レバー等の操作手段によりコントロールバルブ2a,2bを構成する適宜の方向切換弁3a,3bを切り換えて、油圧ポンプ1a,1bから供給される圧油がそれぞれの油圧アクチュエータに供給される。また、油圧アクチュエータからの戻り油はそれぞれの方向切換弁から還流流路5を介して作動油タンク4に還流する。
【0006】
油圧ポンプ1a,1bや各油圧アクチュエータ等の作動を円滑に行わせ、油圧回路を構成する各種の機器や部品、ゴムホース、シール部材等の保護を図るために、作動油の粘度変化その他の物理的変化等を極力抑制する必要がある。また、高温状態に長時間置かれると作動油の劣化も進行しやすい。このために油圧回路を循環する作動油は、所定の適正温度範囲となるように制御される。作動油は油圧アクチュエータの仕事量に応じて加熱されることから、作動油タンク4への戻り油は高温状態となる。従って、戻り油をオイルクーラ7により冷却するが、過不足のない状態の冷却を行い、作動油のヒートバランスを良好にするために、全戻り油量を冷却するのではなく、オイルクーラ7を介する流れと、オイルクーラ7を介さない流れに分配するようにしている。
【0007】
このために、還流流路5を2つの流路に分岐させ、一方の流路をオイルクーラ7を介さない非冷却流路5aとなし、また他方の流路はオイルクーラ7を介する冷却流路5bとする。そして、非冷却流路5aと冷却流路5bとにそれぞれ設けたリリーフ弁6a,6bのリリーフ設定圧を調整することにより、このリリーフ設定圧により所望の分配比率が与えられる。
【0008】
ここで、油圧ショベルの代表的な作業は土砂の掘削であり、このためにフロントアタッチメントとしてバケットが用いられる。そして、土砂の掘削作業時には、通常、フロント作業機構を構成するブーム,アーム及びバケットが複合操作される。従って、ブームシリンダ,アームシリンダ及びバケットシリンダが作動するので、油圧ショベルの作動時には、瞬間的にはともかく、通常は2つの油圧ポンプ1a,1bから全流量で作動油が油圧回路内を流通する。このために、通常の状態では、リリーフ弁6a,6bにより戻り油を冷却しない非冷却流量と、オイルクーラ7で冷却する冷却流量とが適正な流量分配比率となり、作動油のヒートバランスが良好に保たれる。
【0009】
ところで、フロントアタッチメントとして、前述したバケットに代えて、図4に符号9で示したブレーカが装着される場合がある。ブレーカ9は操作レバー10の操作により作動するものであり、その具体的構成は図5に示したようになっている。即ち、ブレーカ9はブレーカ本体11にシリンダ12が形成されており、このシリンダ12内にピストン13が摺動可能に装着されている。また、ブレーカ本体11からはロッド14が突出させて設けられており、ピストン13を往復動させることによって、ロッド14に打撃を加えるように構成されている。ピストン13を往復動させるために、供給ポート15と排出ポート16と、往復動切換手段17とがブレーカ本体11に設けられており、これら供給ポート15,排出ポート16との間に複数の油路が接続されている。従って、供給ポート15から供給される圧油によって、ピストン13がシリンダ12内を摺動するが、この往復動ストロークの間に、往復動切換手段17によりピストン後室とピストン前室と、供給ポート15及び排出ポート16との間の接続状態が切り換わることになる。
【0010】
ブレーカ9を作動させる場合には、方向切換弁3xは一方向にのみ切り換えるようになし、この方向切換弁3xの切り換え位置において、供給ポート15が油圧ポンプ1aと接続され、また排出ポート16が作動油タンク4に接続される状態とすることによりシリンダ12に駆動圧が供給される。そして、ブレーカ9はブレーカ本体11によりコンクリート等に打撃を加えて破壊するためのものであり、例えば1分間に数十回以上というように、高速で打撃が加えられる。このために、ブレーカ9からの戻り油は脈動が発生する状態となる。また、ピストン13がシリンダ12内で激しく摺動すること等から、金属の摩耗粉等の異物が発生し、この異物は戻り油と共に排出されることになる。
【0011】
以上のように、ブレーカ9におけるシリンダ12は、ブームシリンダ,アームシリンダ,バケットシリンダ等、他の油圧アクチュエータとは異なる特殊油圧アクチュエータであり、方向切換弁3xから還流流路5に戻り油を流通させると、戻り油に含まれる異物により方向切換弁3xが損傷すると共に、オイルクーラ7が戻り油の脈動によりダメージを受けることになる。ここで、ブレーカ9からの戻り油の流路には、通常、アキュムレータを設けて脈動を吸収するようにしているが、オイルクーラ7の保護をより確かなものとするために、また方向切換弁3xを通過させないようにするために、ブレーカ9のシリンダ12からの戻り油は還流流路5とは異なる経路を通って作動油タンク4に還流させる構成とするのが一般的である。即ち、ブレーカ9の排出ポート16には独立した還流流路18が接続され、ブレーカ9からの戻り油はこの還流流路18を介して直接作動油タンク4に還流させる構成としている。また、ブレーカ9からの戻り油に含まれる金属粉等の異物を除去するために、この還流流路18にはフィルタ19が装着されており、このフィルタ19により異物を除去した後に作動油タンク4に流入させるようにしている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ブレーカ9はコンクリート等に高速で打撃が加えられることから、消費エネルギが大きく、当然発熱も大きくなる。このために、ブレーカ9のシリンダ12からの戻り油の油温が著しく上昇することになる。しかも、ブレーカ9を作動させる際には、ブーム及びアームは殆ど固定した状態に保持され、また上部旋回体の旋回及び車両の走行は行われず、ほぼブレーカ9の単独操作状態となり、油圧ポンプ1aのみが作動状態になる。そして、ブレーカ9の作動時には、その戻り油の全量がオイルクーラ7による冷却を経ないで直接作動油タンク4に戻される。しかも、ブレーカ9は数分乃至それ以上というように、かなり長い時間作動する。以上のことから、ブレーカ9からの戻り油によって作動油タンク4内の油温が上昇して、作動油のヒートバランスが悪くなり、甚だしい場合には、作動油としての適正温度範囲を越えて上昇してしまうおそれがある。
【0013】
作動油の温度が適正温度範囲より高くなると、粘度低下により容積効率の低下等が生じ、内部油漏れ、局部的な発熱等に起因する摺動各部の焼き付き、作動油の劣化が発生するといった不都合がある。さらに、油圧機器の各部に設けたシール部材の劣化を生じたり、さらには油圧アクチュエータへの配管の一部として用いられるホースを早期に劣化させるおそれもある等といった問題点も生じる。
【0014】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ブレーカ等の特殊油圧アクチュエータを備えたフロントアタッチメントを用いる場合に、作動油のヒートバランスを良好に保てるようにすることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明は、エンジンにより駆動される複数の可変容量型油圧ポンプに、それぞれコントロールバルブを介して複数の油圧アクチュエータに接続して、これら各油圧アクチュエータにより油圧ショベルを構成する作動各部を作動させ、また各油圧アクチュエータからの戻り油はオイルクーラを介して作動油タンクに還流させるようにした油圧ショベルの油圧回路であって、前記複数の油圧ポンプのうちの1つの油圧ポンプに接続した油圧アクチュエータは、実質的に単独駆動されるものであって、その戻り油はコントロールバルブ及びオイルクーラを介さずに作動油タンクに還流させるようにした特殊油圧アクチュエータとし、前記特殊油圧アクチュエータには、それが駆動されているか否かを検出する検出手段を設け、前記検出手段により前記特殊油圧アクチュエータが作動していると判定された時に、この特殊油圧アクチュエータが接続されている油圧ポンプとは異なる他の油圧ポンプに接続したコントロールバルブのセンターバイパス流路から前記オイルクーラを通すことにより、この作動油を冷却油として前記作動油タンクに流入させる作動油冷却制御手段を備えており、この作動油冷却制御手段は、前記他の油圧ポンプによるセンターバイパス流路への吐出流量を、前記特殊油圧アクチュエータが接続されている油圧ポンプからの吐出流量と比例して増大させるが、最大吐出流量まで上昇する前の段階での吐出流量状態を維持させるように制御する構成としたことをその特徴とするものである。
【0016】
特殊油圧アタッチメントからの戻り油は冷却されることなく、そのまま作動油タンクに還流されるが、これと共に冷却油を作動油タンクに流入させることにより作動油タンク内での油温上昇を抑制する。ここで、特殊油圧アクチュエータとしては、例えばブレーカを構成するシリンダ等の駆動用アクチュエータがある。油圧ショベルの油圧回路としては、少なくとも2個の油圧ポンプが設けられ、ブレーカの駆動用油圧アクチュエータ等の特殊油圧アクチュエータは、これら複数の油圧ポンプのうちの1つの油圧ポンプから圧油が供給される。
【0017】
油圧アクチュエータが作動しない時には、油圧ポンプは無負荷運転状態となる。即ち、油圧ポンプを停止状態とするのではなく、油圧ポンプを最小傾転角とすることにより容量を最小限にして、作動油を油圧回路内を循環させる。このために、コントロールバルブにはセンタバイパス流路を設けられて、作動油はこのセンタバイパス流路から還流流路を介して作動油タンクに戻される。ここで、戻り油はオイルクーラを通過するから、このオイルクーラにより冷却される。しかも、この他の油圧ポンプを設けた油圧回路を流れる作動油は、何等の仕事もしていないので、その油温は実質的に上昇しない。従って、オイルクーラにより冷却される分だけ油温が低下し、作動油タンク内より低い温度となる。そこで、他の油圧ポンプを作動させて、油圧回路内に作動油を循環させるようになし、この作動油を冷却油として、特殊油圧アクチュエータからの戻り油を冷却する機能させるようにする。
【0018】
油圧アクチュエータが停止状態になっていても、油圧ポンプが作動状態を維持し、油圧回路内には作動油が常に流れるが、その流量は最小限に抑制されるために、この流量では冷却油としての機能を発揮できない。作動油冷却制御手段は油圧ポンプが無負荷時にセンターバイパス流路を流れる作動油の流量より増量するように制御するものであり、好ましくは冷却油の供給時には、他の油圧ポンプの無負荷時に流れる作動油の流量の2倍乃至それ以上の流量とするように、この他の油圧ポンプの傾転角を大きくする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に本発明の第1の実施の形態を示す。ここで、図1においても、図4と同様、フロントアタッチメントとしてブレーカ9が装着されており、このブレーカ9は操作レバー10の操作により作動するものであり、図5に示されているように、そのブレーカ本体11にシリンダ12が形成されており、このシリンダ12は特殊油圧アクチュエータを構成する。以上の点については、従来技術の構成と格別の差異はないので、図4における油圧回路と同一または均等な構成部材については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0020】
操作レバー10は図示しないパイロットポンプに接続したパイロットバルブ20を備えており、操作レバー10が操作されると、パイロットバルブ20からパイロット流路21を介して方向切換弁3xにパイロット圧が供給される。その結果、この方向切換弁3xが切り換わり、油圧ポンプ1aの吐出油が方向切換弁3xを介してブレーカ9に供給される。一方、ブレーカ9からの戻り油は方向切換弁3xを介さずに、しかもオイルクーラ7も介さず、還流流路18から直接作動油タンク4に還流される。また、この還流流路18の途中にはフィルタ19が介装されているので、ブレーカ9において発生する金属摩耗粉等の異物はこのフィルタ19に捕捉されて清浄化された後に作動油タンク4に戻される。ブレーカ9からの戻り油は、特に温度上昇が激しいが、脈動が発生する等の点で、オイルクーラ7を介さずに、つまり冷却することなくそのまま作動油タンク4に戻されることになる。
【0021】
作動するのがブレーカ9である場合、通常の状態では単独操作となる。油圧ポンプ1a,1bを含む油圧回路において、ブームシリンダ及びアームシリンダについては、コントロールバルブ2a,2bを合流させているが、これらブームシリンダ及びアームシリンダが作動していないので、油圧ポンプ1aを含む油圧回路の部分のみが作動状態となり、もう一方の油圧ポンプ1bを含む油圧回路の部分は格別の仕事が行われてはいない。しかしながら、このような状況下においては、油圧ポンプ1bは停止するのではなく無負荷状態で作動している。
【0022】
油圧ポンプ1a,1bは可変容量型のものであり、従ってこれら油圧ポンプ1a,1bはポンプレギュレータ22a,22bを備えており、これらポンプレギュレータ22a,22bにより油圧ポンプ1a,1bの吐出流量が制御される。油圧ポンプの無負荷運転は油圧ポンプからの吐出油は何等の仕事をすることなく作動油タンクに戻される状態であり、この時には消費エネルギを最小限に抑制するために、ポンプレギュレータによる油圧ポンプの傾転角を最小とする。コントロールバルブを複数のセンターバイパス式の方向切換弁としたのは、油圧ポンプを無負荷運転とした時に、この油圧ポンプからの吐出油を油圧アクチュエータを介さずに作動油タンクに戻すためである。従って、前述した状況、つまり油圧ポンプ1bを含む油圧回路では、何等の仕事も行わない時には、本来であれば油圧ポンプ1bの傾転角が最小となる。
【0023】
油圧ポンプ1a,1bの吐出流量は方向切換弁の切り換え操作を行う操作レバーのストロークにより変化する。操作レバー10のみが操作されている際には、通常の状態では、油圧ポンプ1aが図2(b)に示したように、操作レバー10の操作ストロークに応じて吐出流量が最低吐出流量(Qmin)から最大吐出流量(Qmax)まで増大する。これに対して、コントロールバルブ2bの各方向切換弁3bの各操作レバー(図示せず)は全て中立位置に保持されて、油圧ポンプ1bは油圧アクチュエータを駆動していないのであるから、同図(a)に示したように、この油圧ポンプ1bからの吐出流量は最低流量(Qmin)の状態に保持される。
【0024】
しかしながら、特殊油圧アクチュエータを備えたフロントアタッチメントとして、ブレーカ9を用いる場合において、油圧ポンプ1a側では図3(b)に示したように、図2(b)と同様に、操作レバー10の操作ストロークに応じて吐出流量が最低吐出流量(Qmin)から最大吐出流量(Qmax)まで増大するようにポンプレギュレータ22aが制御される。これに対して、もう一方の油圧ポンプ1b側では、図3(a)に示したように、操作レバー10が操作されてポンプレギュレータ22aによる油圧ポンプ1aの吐出流量が増大すると、ポンプレギュレータ22bもこれに連動して吐出流量がQ1にまで増大して、それ以降は油圧ポンプ1bの吐出流量はこの値を維持するように制御される。ここで、吐出流量Q1は、好ましくは最低吐出流量(Qmin)の概略2倍程度とする。
【0025】
以上のような制御を行うには、操作レバー10が操作されたことを検出する必要がある。このために、操作レバー10に設けたパイロットバルブ20から方向切換弁3xの油圧パイロット部に供給されるパイロット流路21には圧力センサ23が設けられている。そして、この圧力センサ23の信号は配線24を介してコントローラ25に取り込まれる。このように圧力センサ23で圧力が生じたことを検出した時に、操作レバー10が操作されたと判定するようにしている。即ち、圧力センサ23は特殊油圧アクチュエータとしてのブレーカ9のシリンダが駆動されているか否かを検出する検出手段として機能するものである。
【0026】
また、コントローラ25には、図3(a),(b)に示した油圧ポンプ1a,1bの吐出流量特性に関するデータが記憶されており、このコントローラ25と各油圧ポンプ1a,1bのポンプレギュレータ22a,22bとの間は信号ライン26,27で接続されている。従って、操作レバー10が操作されたことが圧力センサ23で検出されて、この検出信号がコントローラ25に取り込まれると、ブレーカ9が接続されている油圧ポンプ1aに付設したポンプレギュレータ22aの傾転角を大きくして、この油圧ポンプ1aからの吐出流量を増大させる。これと共に、コントローラ25からの制御信号がポンプレギュレータ22bにも入力されて、本来であれば、何等の仕事も行っていない油圧ポンプ1b側のポンプレギュレータ22bについても、傾転角を増大させるように制御される。その結果、油圧ポンプ1bの吐出流量がQ1にまで増大する。ここで、ブレーカ9を作動させる際には、通常、操作レバー10はフルストローク状態とするので、図3(a)に示したように、油圧ポンプ1bの吐出流量は、無負荷運転時より増大する。従って、後述するように、コントローラ25及びポンプレギュレータ22bが作動油冷却制御手段としての機能を発揮する。
【0027】
ブレーカ9の作動時には、このブレーカ9からの還流流路18を流れる戻り油の温度は著しく高くなるが、この戻り油の流れに脈動が発生する等の理由で、オイルクーラ7を通らずに、つまり冷却されないまま作動油タンク4に戻される。ただし、これと共にもう一方の油圧ポンプ1bからの吐出流量が増大することになり、この油圧ポンプ1bからの戻り油が冷却油として作動油タンク4内に流入する。その結果、作動油タンク4内の油温上昇を抑制することができて、作動油のヒートバランスが良好に保たれる。
【0028】
油圧ポンプ1bに接続されているコントロールバルブ2bを構成する全ての方向切換弁3bは中立位置にあるので、この油圧ポンプ1bの吐出油はセンタバイパス流路28を通って還流流路5から作動油タンク4に戻される。この還流流路5にはオイルクーラ7が設けられているので、このオイルクーラ7により戻り油が冷却される。油圧ポンプ1bからの吐出油は、もともと油圧回路内を循環するだけで、格別仕事をしていないのであるから、油温は殆ど上昇することがないだけでなく、オイルクーラ7を通過する際に冷却されて、むしろ油温が低下することになる。従って、この油圧ポンプ1bからの戻り油は冷却油として有効に機能する。
【0029】
ここで、作動油の温度を管理するという場合、適正な温度範囲が設定され、この設定温度範囲を越えて作動油が上昇しないように保持するだけでなく、設定温度範囲以下にまで油温が低下しないように維持する必要もある。また、油圧ポンプ1bの吐出流量を増大させると、その分だけエネルギロスが増大する。以上のことから、油圧ポンプ1bの作動による冷却油の生成量は多ければ多いほど良いとうものではなく、適正な流量としなければならない。そこで、ブレーカ9からの戻り油の流量及び温度と、オイルクーラ7の作用による油圧ポンプ1bからの戻り油の冷却効率とを総合勘案して、油圧ポンプ1bのポンプレギュレータ22bによる傾転角を適正な値となるように、つまり冷却油の流量を適正になるように調整する。具体的には、油圧ポンプ1bの無負荷運転時における流量の概略2倍程度の流量に設定するのが望ましい。
【0030】
なお、還流流路5においては、戻り油がオイルクーラ7を介する流路と、直接作動油タンク4に戻す流路とに分けて、それぞれリリーフ弁6a,6bにより戻り油を冷却しない非冷却流量と、オイルクーラ7で冷却する冷却流量とに流量分配比率が与えられている。ブレーカ9の操作時には、還流流路5を流れる作動油はブレーカ9からの戻り油に対する冷却油として機能させるものであるから、その本来の機能を発揮させるには、全量がオイルクーラ7を通る流路を取らせる方が好ましい。このためには、例えばリリーフ弁6bと並列に開閉弁を設けて、圧力センサ23により操作レバー10が操作されたことを検出した時に、開閉弁を開くように構成すれば良い。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、特殊油圧アクチュエータが作動しているときには、他の油圧ポンプの吐出流量を増大させて、この吐出油をオイルクーラを通って冷却油として作動油タンクに流入させることによって、作動油のヒートバランスを良好に保つことができるようになり、油圧回路を構成する各種の機器や部品、ゴムホース、シール部材等を長寿命化させることができ、かつ作動油冷却制御手段は、他の油圧ポンプによるセンターバイパス流路への吐出流量を、特殊油圧アクチュエータが接続されている油圧ポンプからの吐出流量と途中までは比例して増大させるが、最大吐出流量まで上昇する前の段階での吐出流量状態を維持させるように制御することによって、エネルギロスを最小限に抑制できる等の諸効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示す油圧ショベルの油圧回路図である。
【図2】2つの油圧ポンプを設けた場合において、一方のみの油圧ポンプにより通常の油圧アクチュエータを作動させた時における操作レバーの操作量と油圧ポンプからの吐出流量との関係を示す線図である。
【図3】2つの油圧ポンプを設けた場合において、一方のみの油圧ポンプにより特殊油圧アクチュエータを作動させた時における操作レバーの操作量と油圧ポンプからの吐出流量との関係を示す線図である。
【図4】従来技術による油圧ショベルの油圧回路図である。
【図5】ブレーカの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1a,1b 油圧ポンプ
2a,2b コントロールバルブ
3a,3b,3x 方向切換弁
4 作動油タンク
5,18 還流流路
7 オイルクーラ
9 ブレーカ
10 操作レバー
19 フィルタ
20 パイロットバルブ
21 パイロット流路
22a,22b ポンプレギュレータ
23 圧力センサ
25 コントローラ
Claims (3)
- エンジンにより駆動される複数の可変容量型油圧ポンプに、それぞれコントロールバルブを介して複数の油圧アクチュエータに接続して、これら各油圧アクチュエータにより油圧ショベルを構成する作動各部を作動させ、また各油圧アクチュエータからの戻り油はオイルクーラを介して作動油タンクに還流させるようにした油圧ショベルの油圧回路において、
前記複数の油圧ポンプのうちの1つの油圧ポンプに接続した油圧アクチュエータは実質的に単独駆動されるものであって、その戻り油はコントロールバルブ及びオイルクーラを介さずに作動油タンクに還流させるようにした特殊油圧アクチュエータとし、
前記特殊油圧アクチュエータには、それが駆動されているか否かを検出する検出手段を設け、
前記検出手段により前記特殊油圧アクチュエータが作動していると判定された時に、この特殊油圧アクチュエータが接続されている油圧ポンプとは異なる他の油圧ポンプに接続したコントロールバルブのセンターバイパス流路から前記オイルクーラを通すことによりこの作動油を冷却油として前記作動油タンクに流入させる作動油冷却制御手段を備えており、この作動油冷却制御手段は、前記他の油圧ポンプによるセンターバイパス流路への吐出流量を、前記特殊油圧アクチュエータが接続されている油圧ポンプからの吐出流量と比例して増大させるが、最大吐出流量まで上昇する前の段階での吐出流量状態を維持させるように制御する
構成としたことを特徴とする油圧ショベルの油圧回路。 - 前記特殊油圧アクチュエータはフロントアタッチメントとしてのブレーカの駆動用油圧アクチュエータであり、その戻り油はフィルタを介して前記作動油タンクに還流させるようになし、また前記検出手段はこのブレーカの操作レバーの操作により発生するパイロットバルブのパイロット圧を検出する圧力センサであることを特徴とする請求項1記載の油圧ショベルの油圧回路。
- 前記冷却油の供給時には、前記他の油圧ポンプの無負荷時に流れる作動油の流量の2倍乃至それ以上の流量とすることを特徴とする請求項1記載の油圧ショベルの油圧回路。
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