JP4859309B2 - ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出し成形において、Tダイを用いた流延方法によるポリイミドフィルムの製造方法に関する。詳しくは、 Tダイ法において、ダイから押出される樹脂溶液(本明細書において、カーテンという。)の、泡巻き込みを防止し、さらに厚みムラを防止し、かつ得られるポリイミドフィルムの機械物性、特に抗張力の低下を防止するポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミドは、プラスチック材料の中でも、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性、及び耐低温特性に優れた特性を備えており、電気及び電子部品材料として用いられている。特に、フレキシブルプリント配線板、TAB用キャリアテープのベースフィルム、航空機等の電線被覆剤、磁気記録用テープのベースフィルム、超伝導コイルの線材被覆剤等が挙げられる。これらの各種用途には、それぞれの用途に適したポリイミドフィルムが適宜選択される。
【0003】
電気・電子部品は、小型化、薄層化に伴い、回路の細線化が進み、使用部材の寸法変化は、細線化した回路構成に対して、断線や短絡などの故障を招来する危惧がある。従って、電気・電子部品に使用される部材においては、高い精度での寸法安定性が要求されている。
【0004】
ところで、第1図に示すように、ポリイミドフィルムの製造は、そのポリイミド前駆体であるポリアミック酸溶液組成物を、押出し機2中で化学イミド化剤溶液と混合し、押出し機2から幅方向に広げた後、スリットダイ4の狭いスリット状の間隙を通して、エンドレスベルト上に平滑な薄膜上に連続的に押出し、イミド化を進めながら、乾燥、冷却によって自己支持性を有する程度に固化させ、その後さらに加熱処理する方法により製造されている。
【0005】
しかしながら、上記ポリイミドフィルムの製造方法においては、通常原料である酸二無水物成分およびジアミン成分の成分をほぼ等モル、具体的には約1:0.995〜1:1.005の成分比の範囲において、混合してポリアミック酸組成物が得られる。このポリアミック酸組成物は通常2500ポイズ以上の粘調液体であり、化学イミド化剤溶液混合後のスリットダイから押出される液体状、スラリー状の樹脂溶液組成物の粘度は、通常500〜2000ポイズの範囲である。
【0006】
また、ポリイミドフィルムは、通常ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸組成物をTダイによる流延法により、流延しその後フィルム成形・加熱・乾燥を経て、イミド化を完成してポリイミドフィルムとする。この流延工程において、イミド化反応が急激に進行すると、樹脂膜に部分的イミド化が発生し、フィルムにゲル状欠陥が生じたり、部分イミド化ゲル状物がスリットダイに詰まって塗工スジになるという問題がある。従って、イミド化反応を制御する必要のため、ポリアミック酸溶液組成物は0℃以下に冷却することが一般的であり、この冷却のためにポリアミック酸溶液組成物の粘度が特に高くなる傾向がある。
【0007】
また、上記粘度範囲、即ち、通常500〜2000ポイズの範囲のような比較的粘度の高い樹脂溶液組成物を用いた場合、樹脂溶液組成物は弾性を有する。従って、第2図に示すように、スリットダイ20から押出された流動性を有する樹脂溶液組成物のカーテン22は、ベルト速度が高速になるに従って、進行方向に引っ張られる。カーテン22が進行方向に引っ張られると、カーテン22とエンドレスベルト24の間の着地角度シートθが小さくなり、カーテン22がベルト24の表面に着地した際に、周辺の空気を抱き込みやすくなる。
【0008】
その結果、樹脂膜26とベルト24との間に、空気が封入されて、樹脂膜26の表面に、大小の泡状の突起部分が残留する。この泡の巻き込み現象は樹脂膜の乾燥工程において、樹脂膜の膜厚が薄くなったり、巻き込まれた空気が膨張して樹脂膜を破り欠損部分を作るなど、樹脂膜表面性を著しく損なう原因となる。
【0009】
また、上述のような粘度の高いカーテンは、粘度の低いカーテンに比較して弾性力が強く、さらにベルトへの接着力が大きいため、ベルトの動きによって進行方向に引っ張られる。しかし、カーテンがベルトにより進行方向へ一定の距離以上引っ張られると、樹脂膜の弾性力により進行方向と逆の力が働くため、カーテンの着地点が周期的に変動する。この周期変動によって、製造される樹脂膜の厚みが変動し、その結果、進行方向に周期的な厚みムラが発生し、最終製品であるフィルムの形状に縞模様となって顕れる問題がある。
【0010】
この問題に対し、特開平11−198157号では、高速での流延製膜法においても、樹脂膜の流延時における泡の巻き込みを防止し、厚みムラを改善し、フィルムの生産効率を上げられることを目的として、ダイ中の粘度を低粘度化する流延製膜方法を開示している。そして、ダイ中の粘度を低粘度化する方法として、樹脂溶液組成物の重合度を下げる方法、および樹脂溶液組成物の溶剤比率を高くする方法が記載されている。
【0011】
しかしながら、特開平11−198157号に開示している重合度を下げる方法で得られるポリイミドフィルムは、等モル量のジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分から得られるポリイミドフィルムと比較すると、フィルムの機械物性が大きく低下する問題があった。また、特開平11−198157号に開示している樹脂溶液組成物の溶剤比率を高くする方法では、エンドレスベルト上で自己支持性を有するまで乾燥させるためにはベルトの温度を大きく上げる必要があり、結果として得られるポリイミドフィルムの機械物性は低下する問題があった。
【0012】
以上のように、特開平11−198157号で開示された、樹脂膜の流延時における泡の巻き込みを防止し、厚みムラを改善する延製膜方法では、得られるポリイミドフィルムの機械物性は大きく低下する問題があった。この機械物性の低下は、フレキシブルプリント配線板、TAB用キャリアテープのベースフィルム、航空機等の電線被覆剤、磁気記録用テープのベースフィルム、超伝導コイルの線材被覆剤等の製造工程において、フィルムの伸びによるたるみの発生により、安定生産を妨げてしまう原因となる。また、その製品では機械耐性が低下し、製品の信頼性を失うことにもなる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような特に高速でポリイミドフィルムを製造する流延製膜方法において、樹脂膜の流延時における泡の巻き込みを防止し、厚みムラを改善し、さらに特開平11−198157で開示された流延製膜方法でおこる機械物性の低下が発生することのない、ポリイミドフィルムの製造方法を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、そのポリイミドフィルムの製造方法の要旨は、ポリアミック酸ワニスを含む樹脂溶液組成物を押し出し流延して製膜するポリイミドフィルムの製造方法であって、
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を、成分比がモル比で1:1.01〜1:1.05または1:0.95〜1:0.99の割合で重合させて低粘度ワニスであるポリアミック酸ワニスを製造する工程、
アミック酸1モルに対して脱水剤をモル比で1倍以上、および化学イミド化触媒をモル比で0.5倍以上をポリアミック酸ワニスに添加して樹脂溶液組成物を製造する工程を含む、ポリイミドフィルムの製造方法を内容とする。
【0015】
また、発明のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリアミック酸ワニスの粘度を20℃において2000ポイズ以下に、さらには1500ポイズ以下に、特には100〜100ポイズに調整し得ることを内容とする。
【0016】
また、前記ポリイミドフィルムの製造方法において、ポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対して脱水剤モル比で1.2〜5倍および化学イミド化触媒をモル比で0.6〜2.0倍を添加してなる樹脂溶液組成物を押出し流延製膜することを内容とする。
【0017】
さらに、前記化学イミド化触媒が、3級アミンであることにある。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるポリイミドフィルムの製造方法について、実施の形態の1例を説明する。なお、本明細書中の用語、「カーテン」とは、流動性を有する樹脂溶液組成物が、スリットダイから押出され、ベルトに着地するまでのエアギャップの間隙に存在するカーテン上の形状を有するものをいう。
【0019】
本発明にかかるポリイミドフィルムの製造方法は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を混合し、重合反応により生成されたポリアミック酸からなるポリアミック酸ワニスを含む樹脂溶液組成物を、押し出し流延し、製膜しつつ、ポリアミック酸をイミド化してポリイミドからなるフィルムを製造する。ここで、本発明は、ポリアミック酸ワニスがテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の成分比を特定の範囲に調整して重合反応させ、低粘度ワニスを製造する工程を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、得られたポリアミック酸のイミド化反応は、ポリアミック酸ワニスに脱水剤および化学イミド化触媒を添加する化学的方法により行う。イミド化に用いる脱水剤およびイミド化触媒のポリアミック酸ワニス中のアミック酸1モルに対する割合を特定して樹脂溶液組成物を調整することを特徴とする。この樹脂溶液組成物を押出し流延製膜することで、機械物性の低下の発生がなく、かつ樹脂膜の流延時における泡の巻き込みを防止し、厚みムラを改善するポリイミドフィルムを得ることができる。
【0021】
以下、本発明のポリイミドフィルムの製造方法について、具体的に、実施の形態を説明する。
【0022】
ポリアミック酸の原料である、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の成分比は、モル比で、1:1.01〜1:1.05または1:0.95〜1:0.99の範囲内であることが好ましい。前記モル比は、1:1.01〜1:1.03または1:0.97〜1:0.99の範囲内であることがより好ましい。ジアミン成分がテトラカルボン酸二無水物成分1モルに対し、1.01モルより少なく1.00モルに近似した場合、あるいはジアミン成分が0.99モルより多く1.00モルに近似した場合には、得られるポリアミック酸ワニスの粘度が高くなり、そのままでは樹脂膜の流延時に泡が巻き込んだり、厚みムラが発生し良好なポリイミドフィルムを得ることができない。高粘度となったワニスを希釈するとしても、得られた低粘度ワニスでは、溶媒比率が多くなる。従って、エンドレスベルト上で自己支持性を有するまで乾燥させるためには、ベルト温度を上げる必要があり、結果として得られるポリイミドフィルムの機械物性が大きく低下する。具体的には得られるポリイミドフィルムの抗張力が、希釈前のポリアミック酸ワニスから得られるポリイミドフィルムの抗張力の90%より低下することになる。
【0023】
また、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の成分比が、ジアミン成分がテトラカルボン酸二無水物成分1モルに対し、1.05モルより多くなる場合、あるいはジアミン成分が0.95より少なくなる場合には、得られるポリアミック酸ワニスの重合度が低く、得られるポリイミドフィルムの機械物性が大きく低下する。具体的には得られるポリイミドフィルムの抗張力は、従来のポリアミック酸ワニスがテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の成分比がほぼ等モル、具体的にはモル比で1:1〜1:1.005または1:0.995で重合され、高速でない通常のキャスティング法により得られるポリイミドフィルムが有する抗張力の90%を下まわることとなる。
【0024】
ポリアミック酸ワニスは、基本的には、ピロメリット酸二無水物を代表とする芳香族テトラカルボン酸二無水物、および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミンを代表とする芳香族ジアミンを、有機極性溶媒中で重合反応させたポリアミド酸組成物が有機極性溶媒中に均一に溶解して得られる。テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との重合方法は特に制限されず、公知の方法により行うことができる。重合方法の1例を挙げると、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、1種あるいは2種のジアミンを有機溶剤に溶液、あるいはスラリー状に拡散させる。この溶液に少なくとも1種以上のテトラカルボン酸二無水物を固体の状態または有機溶剤溶液の状態あるいは、スラリー状態で添加し、ポリアミド酸ワニスを得る。このときの反応温度は、−20℃から50℃、望ましくは、20℃以下である。反応時間は、1時間から2時間である。
【0025】
また、この反応において、上記添加順序とは逆に、まずテトラカルボン酸二無水物を有機溶剤に溶解または拡散させ、この溶液中に前記ジアミンの固体または有機溶剤による溶液あるいは、スラリーを添加させてもよい。また、同時に反応させてもよく、酸二無水物成分、ジアミン成分の添加順序は限定されない。
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、特に好ましい重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
などのような方法である。
いかなる方法を用いても、最終的に重合に用いられる酸無水物成分とジアミン成分のモル比が1:1.01〜1:1.05または1:0.95〜1:0.99の割合の範囲にあれば本発明の効果が得られる。
【0026】
芳香族テトラカルボン酸二無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,4−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,6−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4’−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)等の芳香族ジエステルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられ、これらのうち1種類または2種類以上用いてもよい。
また、脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸などが挙げられ、これらのうち1種類または2種類以上用いてもよい。
【0027】
得られるフィルムの耐熱性、高強度、高寸法安定性、耐低温特性等の特性を発現させるのに最も適当な酸二無水物はピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)であり、これらの単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。
【0028】
芳香族ジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ジメトキシベンジジン、ジアミノナフタレンなどが挙げられ、これらのうち1種類または2種類以上用いてもよい。
【0029】
脂肪族ジアミン成分としては、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシロキサンが挙げられ、これらのうち1種類または2種類以上用いてもよい。
【0030】
得られるフィルムの耐熱性、高強度、高寸法安定性、耐低温特性等の特性を発現させるには4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びp−フェニレンジアミンが特に好ましく、また、これらをモル比で100:0から0:100、好ましくは100:0から10:90の割合で混合した混合物が好ましく用い得る。
【0031】
ポリアミック酸の重合反応に用いる有機極性溶剤としては、例えばジアミノエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、 N,N−ジメチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、 N,N−ジメチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒、ピロリドン系溶媒、フェノール系溶媒等を挙げることができ、これらを、1種類、または2種類以上からなる混合溶媒で用いたり、さらに芳香族炭化水素を混合して用いることもできる。
【0032】
ワニス中のポリアミック酸固形物の濃度は、12.5〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは15〜25重量%、さらには15〜20重量%が好ましい。ワニス中のポリアミック酸固形物の濃度がこの範囲を下まわった場合には、エンドレスベルト上で自己支持性を有するまで乾燥させるためにベルト温度を上げる必要があるため、結果として得られるポリイミドフィルムの機械物性が大きく低下する。このとき得られるポリイミドフィルムの抗張力が、従来のポリアミック酸ワニスがテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の成分比がほぼ等モル、具体的にはモル比で等モル、具体的には1:1〜1.005または1:1〜0.995で重合され、通常の高速でないキャスティング法により得られるポリイミドフィルムの抗張力の、90%を下まわってしまう。一方、ワニス中のポリアミック酸固形物の濃度がこの範囲を上まわった場合には、目的の低粘度ワニスを得ることができず、MD方向の膜厚のばらつきが顕著に高くなり、また、泡の巻き込み現象が起こりやすくなる。
【0033】
ここで、本発明の方法においては、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を、成分比が、モル比で1:1.01〜1:1.05または1:0.95〜1:0.99に調整し重合反応させて得られたポリアミック酸ワニスが、20℃で2000ポイズ以下の粘度であること、さらには1500ポイズ以下が好ましく、特に、100〜1500ポイズであることが好ましい。この範囲内で調整されて重合されるポリアミック酸は比較的低重合度である。粘度が2000ポイズを超える場合、製造されたポリイミドフィルムのMD方向での膜厚のばらつきは顕著に高くなる。また、泡の巻き込み現象が起こりやすくなり好ましくない。一方、粘度が、100ポイズ未満であると、ダイを用いた流延方法を用いる本発明方法においては、ダイから吐出したフィルム状のカーテンの安定性が保持できず、安定的に製膜することが困難となる。なお、この粘度は、B型粘度計で測定した値である。
【0034】
上記ポリアミック酸ワニスの粘度の調整は、ポリアミック酸の原料である酸二無水物成分とジアミン成分のモル比を特定範囲として重合度を制御すること、および固形分濃度の調整により行う。
【0035】
次に、上記得られたポリアミック酸を化学的方法によるイミド化反応によりポリイミドとしつつ、フィルム成形する。化学的方法によるイミド化には、ポリアミック酸に脱水剤および化学的イミド化触媒からなる化学イミド化剤を添加する。本発明においては、上記得られたポリアミック酸ワニスに、アミック酸1モルに対してモル比で1倍以上の脱水剤とモル比で0.5倍以上の化学イミド化触媒を、添加して樹脂溶液組成物を製造する。ポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対してモル比で好ましくは1.2〜5倍、さらには1.0〜4倍、特には1.2〜3倍の脱水剤と、モル比で0.6〜2.0倍、さらには0.5〜1.5倍、特には0.5〜1.2倍の化学イミド化触媒を用いる。
【0036】
脱水剤の量がこの範囲を外れるとフィルムの機械的特性が低下する傾向にあり、化学イミド化触媒の量がこの範囲よりも小さいとフィルムの機械的特性が低下する傾向にあり、この範囲よりも大きいと化学イミド化が急激に進み、例えばダイから流延することが困難になることがある。
【0037】
用いられる脱水剤は、例えば、有機カルボン酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、及びチオニルハロゲン化物が挙げられ、これらのなかで、有機カルボン酸無水物が好ましい。
【0038】
有機カルボン酸無水物として、例示すると、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物、及びこれらの分子間無水物、有機カルボン酸無水物の混合物を含む。また、芳香族モノカルボン酸例えば安息香酸、ナフトエ酸等の無水物、これらの混合物および有機カルボン酸無水物の混合物、及び炭酸及び蟻酸並びに脂肪族ケテン類(ケテン、及びジメチルケテン)の無水物、これらの混合物および有機カルボン酸無水物などが挙げられる。これらのなかで、無水酢酸が好ましい。
【0039】
脱水剤の量は、ポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対してモル比で1倍以上が好ましく、特には1.2〜5倍であることが好ましい。脱水剤の量がポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対してモル比で1倍より少ない場合には、イミド化反応が十分に進行せず、得られるポリイミドフィルムの機械物性が大きく低下する。一方、脱水剤の量が5倍より多い場合には、余分な脱水剤を蒸発させるためにベルト温度を上げる必要があるため、結果として得られるポリイミドフィルムの機械物性が大きく低下する。具体的には得られるポリイミドフィルムの抗張力が、従来のテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の成分比が等モル、具体的にはモル比で約1:1〜1:1.005または1:1〜1:0.995で重合されたポリアミック酸ワニスから得られ、高速でないキャクティング法によるポリイミドフィルムの抗張力の90%を下まわってしまう。
【0040】
また、本発明に用いられる化学イミド化触媒としては、第3級アミンが好ましくトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ルチジン等があげられ、さらに好ましくは、ピリジン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリンが挙げられる。
【0041】
また、化学イミド化触媒の量は、ポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対してモル比で0.5倍以上、さらに好ましくは0.6〜2倍である。化学イミド化触媒の量がポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対してモル比で0.5倍より少ない場合には、得られるポリイミドフィルムの機械物性が大きく低下する。具体的には得られるポリイミドフィルムの抗張力が、ポリアミック酸ワニスがテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の成分比がほぼ等モル、具体的にはモル比で1:1〜1:1.005または1:1〜1:0.995で重合されて高速でないキャクティング法により得られるポリイミドフィルムの抗張力の90%を下まわってしまう。化学イミド化触媒の上限の量は、2.0倍が好ましい。2.0倍を超える量の化学イミド化触媒を添加しても、イミド化の効果は2倍量のものと大きく変化せず、2.0倍を超える量ではフィルム中に化学イミド化触媒が残留し、プリント基板等の加工工程で不純物として工程ラインを汚染する可能性があり、2.0倍以下が好ましい。
【0042】
脱水剤および化学的イミド化触媒で構成される化学イミド化剤は、ポリアミック酸ワニスに直接添加してもよいが、ポリアミック酸ワニスとの混合を容易にするため、有機溶媒に溶解して用いてもよい。用いる有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、 N,N−ジメチルアセトアミド、 N,N−ジエチルホルムアミド、 N,N−ジエチルアセトアミド、 N−メチルメトキシアセトアミド、N−メチル−カプロラクタム、 N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素等が挙げられ、ベンゼン、ベンゾニトリル、ジオキサン、キシレン、トルエンおよび、シクロヘキサン等を組み合わせて用いることもできる。
【0043】
また、安定してポリイミドフィルムを形成する目的で、上記ポリアミック酸ワニスに、さらにリン酸水素カルシウム、シリカ、マイカ、酸化チタン、アルミナ、ガラスビーズ等のフィラー等を添加してもよい。
【0044】
次に、上記得られたポリアミック酸ワニスと化学イミド化剤を混合した樹脂溶液組成物は、スリットダイから平滑な薄膜状のカーテンとして連続的に押出され、エンドレスベルト上にキャストされる。その後、乾燥冷却により自己支持性を有するポリイミドアミック酸膜が形成される。その後、このポリイミドアミック酸膜は、さらに加熱処理され、本発明の目的の機械物性を有するポリイミドフィルムが製造される。
【0045】
この加熱処理の際、最終的に好ましくは400〜650℃、より好ましくは450〜600℃、更に好ましくは480〜580℃の温度で、好ましくは1〜600秒、より好ましくは5〜400秒、更に好ましくは5〜300秒加熱するのが好ましい。この温度より高い及び/または時間が長いと、フィルムの熱劣化が起こりやすくなり、この温度範囲より低い及び/又は時間が短いと機械的強度等の諸特性が低下する傾向にある。
【0046】
上記方法において、ポリアミック酸ワニスと化学イミド化剤を混合した樹脂溶液組成物のダイ中での粘度は、450ポイズ以下が好ましく、さらに300ポイズ以下が好ましく、特に好ましくは50〜300ポイズである。この範囲以上の粘度であると膜厚のばらつきが顕著に高くなり、また泡の巻き込み現象が起こりやすくなり好ましくない。一方、樹脂溶液組成物の粘度が50ポイズ以下であると、ダイを用いた流延方法を用いる本発明においては、安定的に製膜することが困難になる。なお、この粘度はB型粘度計で測定した値である。
【0047】
このダイ中の粘度は、ポリアミック酸ワニスと化学イミド化剤を混合した後2分以内での粘度を測定したものである。
【0048】
また、ポリアミック酸ワニスと化学イミド化剤を混合した樹脂溶液組成物のダイ中での温度は、20℃以下、好ましくは−10℃〜10℃である。20℃以上の場合、樹脂膜に部分的イミド化が発生しフィルムにゲル状欠陥が生じたり、部分イミド化ゲル状物がスリットダイに詰まって塗工スジになる問題が起こる。また、−10℃を下まわる温度では、ダイ中の粘度が目的の粘度である450ポイズを越えてしまう。
【0049】
発明にかかる方法で製造することができるポリイミドフィルムの厚みは、特に限定されず、通常約5〜250μm程度の範囲で実施することができるが、好ましくは約5〜100μmの範囲の厚みのものに適用される。この範囲より薄いフィルムは、カーテンが薄くなるために、風等の影響を受けやすく、泡が入りやすくなる。またこの範囲を越える膜厚のフィルムは、吐出量が多くカーテンが厚く重いため、泡の巻き込みの問題が発生しない。
このようにしてMD方向の厚みムラR値が、2.0μm以下、好ましくは1.8μm以下更に好ましくは1.6μm以下と、MD方向の厚みムラの小さいポリイミドフィルムを得ることができる。
【0050】
以上、本発明にかかるポリイミドフィルムの製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されること無く、その趣旨を逸脱しない範囲内において、当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施し得る。
【0051】
以下、具体的に実施例について説明するが、本発明は、これら実施例によって、限定されるものではない。
【0052】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例の内容に限定される物ではない。実施例中の「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
(比較例1)
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物を、芳香族ジアミンとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとのモル比で、1:1.02の比率で重合したポリアミック酸DMF溶液(固形分濃度20%、20℃での粘度800ポイズ)に、無水酢酸300gとイソキノリン40gとDMF150gからなる化学イミド化剤をポリアミック酸DMF溶液に対して重量比40%ですばやくミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下20mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。このときのTダイ中の樹脂溶液の粘度は、0℃で150ポイズであった。また、このときの脱水剤である無水酢酸のポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対するモル比は、脱水剤である無水酢酸が2.51倍、触媒であるイソキノリンが0.27倍であった。この樹脂膜を130℃×100秒、300℃×20秒、450℃×20秒、500℃×20秒で乾燥・イミド化させ25μmのポリイミドフィルムを得た。このフィルムの機械方向の抗張力を測定したところ、185MPaであり、R値は1.5μmであった。
(比較例2)
芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を、芳香族ジアミンとしてモル比で3:1の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとパラフェニレンジアミンを、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとのモル比で、1:0.98の比率で重合したポリアミック酸DMF溶液(固形分濃度20%、20℃での粘度1000ポイズ)に、無水酢酸300gとイソキノリン40gとDMF150gからなるイミド化剤をポリアミック酸DMF溶液に対して重量比40%ですばやくミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下20mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。このときのTダイ中の樹脂溶液の粘度は、0℃で200ポイズであった。また、このときの脱水剤である無水酢酸のポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対するモル比は、脱水剤である無水酢酸が2.37倍、触媒であるイソキノリンが0.27倍であった。この樹脂膜を130℃×100秒、250℃×20秒、400℃×20秒、520℃×20秒で乾燥・イミド化させ25μmのポリイミドフィルムを得た。このフィルムの機械方向の抗張力を測定したところ、210MPaであり、R値は1.7μmであった。
(比較例3)
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物を、芳香族ジアミンとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとのモル比で、1:1.005の比率で重合したポリアミック酸DMF溶液(固形分濃度20%、20℃での粘度4000ポイズ)に、DMFを重量比で100%添加希釈し、ポリアミック酸DMF溶液を調整した。(固形分濃度10%、20℃での粘度1000ポイズ)この溶液に、無水酢酸300gとイソキノリン40gとDMF150gからなるイミド化剤をポリアミック酸DMF溶液に対して重量比20%ですばやくミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下20mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。このときのTダイ中の樹脂溶液の粘度は、0℃で200ポイズであった。
【0053】
また、このときの脱水剤である無水酢酸のポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対するモル比は、脱水剤である無水酢酸が2.5倍、触媒であるイソキノリンが0.26倍であった。このとき、エンドレスベルト上で自己支持性を有するまで乾燥させるには、エンドレスベルト上での乾燥温度を高くする必要があり、比較例1が130℃であるのに対して、この場合には160℃必要であった。この樹脂膜を160℃×100秒、300℃×20秒、450℃×20秒、500℃×20秒で乾燥・イミド化させ25μmのポリイミドフィルムを得た。このフィルムの機械方向の抗張力を測定したところ、210MPaでり、R値は1.6μmであった。
【0054】
(比較例4)
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物を、芳香族ジアミンとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとのモル比で、1:1.005の比率で重合したポリアミック酸DMF溶液(固形分濃度20%、20℃での粘度4000ポイズ)に、無水酢酸300gとイソキノリン40gとDMF150gからなるイミド化剤をポリアミック酸DMF溶液に対して重量比40%ですばやくミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下20mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。このときのTダイ中の樹脂溶液の粘度は、0℃で880ポイズであった。
【0055】
また、このときの脱水剤である無水酢酸のポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対するモル比は、脱水剤である無水酢酸が2.51倍、触媒であるイソキノリンが0.27倍であった。この樹脂膜を130℃×100秒、300℃×20秒、450℃×20秒、500℃×20秒で乾燥・イミド化させ25μmのポリイミドフィルムを得た。このフィルムの中央部をMD方向に5mサンプリングしMD厚みのR値を測定したところ、3.3μmであった。また、このフィルムを調べたところ、フィルムの両端に直径5mm程度の泡の巻き込みが無数に見られた。このフィルムの機械方向の抗張力を測定したところ、255MPaであり、R値は3.3μmであった。
【0056】
(実施例1)
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物を、芳香族ジアミンとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとのモル比で、1:1.02の比率で重合したポポリアミック酸DMF溶液(固形分濃度20%、20℃での粘度800ポイズ)に、無水酢酸200gとイソキノリン100gとDMF190gからなるイミド化剤をポリアミック酸DMF溶液に対して重量比40%ですばやくミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下20mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。このときのTダイ中の樹脂溶液の粘度は、0℃で150ポイズであった。
【0057】
また、このときの脱水剤である無水酢酸のポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対するモル比は、脱水剤である無水酢酸が1.67倍、触媒であるイソキノリンが0.66倍であった。この樹脂膜を130℃×100秒、300℃×20秒、450℃×20秒、500℃×20秒で乾燥・イミド化させ25μmのポリイミドフィルムを得た。このフィルムの機械方向の抗張力を測定したところ、255MPaであり、R値は1.5μmであった。
【0058】
(実施例2)
芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を、芳香族ジアミンとしてモル比で3:1の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとパラフェニレンジアミンを、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとのモル比で、1:0.98の比率で重合したポリアミック酸DMF溶液(固形分濃度20%、20℃での粘度1000ポイズ)に、無水酢酸200gとイソキノリン110gとDMF180gからなるイミド化剤をポリアミック酸DMF溶液に対して重量比40%ですばやくミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下20mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。このときのTダイ中の樹脂溶液の粘度は、0℃で180ポイズであった。
【0059】
また、このときの脱水剤である無水酢酸のポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対するモル比は、脱水剤である無水酢酸が1.58倍、触媒であるイソキノリンが0.69倍であった。この樹脂膜を130℃×100秒、250℃×20秒、400℃×20秒、520℃×20秒で乾燥・イミド化させ25μmのポリイミドフィルムを得た。このフィルムの機械方向の抗張力を測定したところ、310MPaであり、R値は1.7μmであった。
(実施例3)
芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を、芳香族ジアミンとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとのモル比で、1:1.02の比率で重合したポリアミック酸DMF溶液(固形分濃度20%、20℃での粘度800ポイズ)に、無水酢酸180gとイソキノリン130gとDMF190gからなるイミド化剤をポリアミック酸DMF溶液に対して重量比50%ですばやくミキサーで攪拌しTダイから押出してダイの下15mmを走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。このときのTダイ中の樹脂溶液の粘度は、0℃で100ポイズであった。
【0060】
また、このときの脱水剤である無水酢酸のポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対するモル比は、脱水剤である無水酢酸が1.76倍、触媒であるイソキノリンが1.01倍であった。この樹脂膜を140℃×100秒、300℃×20秒、450℃×20秒、500℃×20秒で乾燥・イミド化させ25μmのポリイミドフィルムを得た。このフィルムの機械方向の抗張力を測定したところ、255MPaであり、R値は1.7μmであった。
【0061】
比較例4を除いて、比較例1〜比較例3および実施例1〜実施例3は、いずれもキャスト時の泡の巻き込みが無く、かつ厚みムラがMD厚みのR値で2.0μm以下の厚みムラの小さいものであった。
(評価方法)
1)抗張力の測定
ASTM D882に準じて測定した。
2)MD方向の厚みの測定
得られたポリイミドフィルムの中央部をMD方向に5mサンプリングし、接触式の連続厚み計(アンリツ(株)社製、フィルムシックネステスタ KG601A)を用い、最高厚みと最低厚みをチャートから読み取った。厚みムラを示す指標をR値として、
R値=[最高厚み]−[最低厚み]
により求めた。単位はμmである。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、本発明によるポリイミドフィルムの製造方法は、粘度を低く調整することにより、泡の巻き込みを防止し、MD方向の厚みムラの発生を防止する特に高速キャスティングを行うダイキャスト法によるポリイミドフィルムの製造方法において発生していたポリイミドフィルムの機械特性、特に抗張力の低下を防止することができる、加工性が高く安定した流延製膜方法により生産効率が上昇し得るポリイミドフィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ポリイミドフィルムの製造工程を示す図である。
【図2】 流延製膜方法によりダイリップから押出されたカーテンの状態を示す図である。
【符号の説明】
2;押出し機
4;スリットダイ
6、20;ダイリップ
8、26;樹脂膜
24;コンベアベルト
22;カーテン
Claims (6)
- ポリアミック酸ワニスを含む樹脂溶液組成物を押し出し流延して製膜するポリイミドフィルムの製造方法であって、
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を、成分比がモル比で1:1.01〜1:1.05または1:0.95〜1:0.99の割合で重合させて低粘度ワニスであるポリアミック酸ワニスを製造する工程、
ポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対して脱水剤をモル比で1倍以上、および化学イミド化触媒をモル比で0.5倍以上をポリアミック酸ワニスに添加して樹脂溶液組成物を製造する工程を含む、ポリイミドフィルムの製造方法。 - 前記ポリアミック酸ワニスの粘度が、20℃において2000ポイズ以下である、請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法。
- 前記ポリアミック酸ワニスの粘度が、20℃において1500ポイズ以下である、請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法。
- 前記ポリアミック酸ワニスの粘度が、20℃において100〜1500ポイズである、請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法。
- 前記樹脂組成物がポリアミック酸ワニスのアミック酸1モルに対して脱水剤をモル比で1.2〜5倍、および化学イミド化触媒をモル比で0.6〜2.0倍添加してなる請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
- 前記化学イミド化触媒が、3級アミンであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
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