以下、本発明の実施の形態によるプラズマディスプレイ装置について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、PDP10の構造を示す斜視図である。第1の基板であるガラス製の前面板20上には、ストライプ状の走査電極22とストライプ状の維持電極23とで対をなす表示電極が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層24が形成され、その誘電体層24上に保護層25が形成されている。
第2の基板である背面板30上には、走査電極22および維持電極23と立体交差するように、誘電体層33で覆われた複数のストライプ状のデータ電極32が形成されている。誘電体層33上にはデータ電極32と平行に複数の隔壁34が配置され、この隔壁34間の誘電体層33上に蛍光体層35が設けられている。また、データ電極32は隣り合う隔壁34の間の位置に配置されている。
これら前面板20と背面板30とは、走査電極22および維持電極23とデータ電極32とが直交するように、微小な放電空間を挟んで対向配置されるとともに、その外周部がガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、例えばネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスが放電ガスとして封入されている。放電空間は、隔壁34によって複数の区画に仕切られており、各区画には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が順次配置されている。そして、走査電極22および維持電極23とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成され、各色に発光する蛍光体層35が形成された隣接する3つの放電セルにより1つの画素が構成される。この画素を構成する放電セルが形成された領域が画像表示領域となり、画像表示領域の周囲は、ガラスフリットが形成された領域等のように画像表示が行われない非表示領域となる。
そして、走査電極22、維持電極23、データ電極32はそれぞれの電極端子がガラス基板の端部に引き出されストライプ状に配列されている。
図2は、PDP10の電極配列図である。行方向にn行の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)とn行の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)とが交互に配列され、列方向にはm列のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、一対の走査電極SCi、維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とを含む放電セルCi,jが放電空間内に形成され、放電セルCの総数は(m×n)個になる。
このような構成のPDP10においては、ガス放電により紫外線を発生させ、その紫外線でR、G、Bの各色の蛍光体を励起して発光させることによりカラー表示を行っている。また、PDP10は、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、発光させるサブフィールドの組み合わせによって駆動されることにより階調表示を行う。各サブフィールドは初期化期間、書込み期間および維持期間からなり、画像データを表示するために、初期化期間、書込み期間および維持期間でそれぞれ異なる信号波形を各電極に印加している。
図3は、PDP10の各電極に印加する駆動電圧波形を示す図である。図3に示すように、各サブフィールドは初期化期間、書込み期間、維持期間を有している。また、それぞれのサブフィールドは発光期間の重みを変えるため維持期間における維持パルスの数を異ならせている以外はほぼ同様の動作を行い、各サブフィールドにおける動作原理もほぼ同様である。したがって、ここでは1つのサブフィールドについてのみ動作を説明する。
まず、初期化期間では、正のパルス電圧を全ての走査電極SC1〜SCnに印加し、走査電極SC1〜SCnおよび維持電極SU1〜SUnを覆う誘電体層24上の保護層25および蛍光体層35上に必要な壁電荷を蓄積する。加えて、放電遅れを小さくして書込み放電を安定して発生させるためのプライミング(放電のための起爆剤=励起粒子)を発生させるという働きを持つ。
具体的には、初期化期間前半部では、データ電極D1〜Dm、維持電極SU1〜SUnをそれぞれ0(V)に保持し、走査電極SC1〜SCnには、データ電極D1〜Dmに対して放電開始電圧以下の電圧Vi1から、放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧を印加する。この傾斜波形電圧が上昇する間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ1回目の微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、データ電極D1〜Dm上部および維持電極SU1〜SUn上部には正の壁電圧が蓄積される。ここで、電極上部の壁電圧とは電極を覆う誘電体層上に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
初期化期間後半部では、維持電極SU1〜SUnを正電圧Veに保ち、走査電極SC1〜SCnには、維持電極SU1〜SUnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi3から放電開始電圧を超える電圧Vi4に向かって緩やかに下降する傾斜波形電圧を印加する。この間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ2回目の微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC1〜SCn上部の負の壁電圧および維持電極SU1〜SUn上部の正の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。以上により初期化動作が終了する(以下、初期化期間に各電極に印加される駆動電圧波形を「初期化波形」と略記する)。
次に、書込み期間では、全ての走査電極SC1〜SCnに順次負の走査パルスを印加することによって走査を行う。そして、走査電極SC1〜SCnを走査している間に、表示データにもとづきデータ電極D1〜Dmに正の書込みパルス電圧を印加する。こうして走査電極SC1〜SCnとデータ電極D1〜Dmとの間に書込み放電が発生し、走査電極SC1〜SCn上の保護層25の表面に壁電荷が形成される。
具体的には、書込み期間では、走査電極SC1〜SCnを一旦電圧Vsに保持する。次に、放電セルCp,1〜Cp,m(pは1〜nの整数)の書込み動作では、走査電極SCpに走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうちp行目に表示すべき映像信号に対応するデータ電極Dq(DqはD1〜Dmのうち映像信号にもとづき選択されるデータ電極)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。こうして、書込みパルス電圧が印加されたデータ電極Dqと走査パルス電圧が印加された走査電極SCPとの交差部に対応する放電セルCp,qで書込み放電が発生する。この書込み放電により放電セルCp,qの走査電極SCp上部に正電圧が蓄積され、維持電極SUp上部に負電圧が蓄積されて、書込み動作が終了する。以下、同様の書込み動作をn行目の放電セルCn,qに至るまで行い、書込み動作が終了する。
続く維持期間では、一定の期間、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に放電を維持するのに十分な電圧を印加する。これにより、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に放電プラズマが生成され、一定の期間、蛍光体層を励起発光させる。このとき、書込み期間において書込みパルス電圧が印加されなかった放電空間では、放電は発生せず蛍光体層35の励起発光は起こらない。
具体的には、維持期間では、走査電極SC1〜SCnを0(V)に一旦戻した後、維持電極SU1〜SUnを0(V)に戻す。その後、走査電極SC1〜SCnに正の維持パルス電圧Vuを印加する。このとき、書込み放電を起こした放電セルCp,qにおける走査電極SCp上部と維持電極SUp上部との間の電圧は、正の維持パルス電圧Vuに加えて、書込み期間において走査電極SCp上部および維持電極SUp上部に蓄積された壁電圧が加算されて、放電開始電圧より大きくなり、1回目の維持放電が発生する。そして、維持放電を起こした放電セルCp,qでは、維持放電発生時における走査電極SCPと維持電極SUpとの電位差を打ち消すように走査電極SCp上部に負電圧が蓄積され、維持電極SUp上部に正電圧が蓄積される。こうして、1回目の維持放電が終了する。1回目の維持放電の後、走査電極SC1〜SCnを0(V)に戻し、その後、維持電極SU1〜SUnにVuを印加する。このとき、1回目の維持放電を起こした放電セルCp,qにおける走査電極SCp上部と維持電極SUp上部との間の電圧は、正の維持パルス電圧Vuに加えて、1回目の維持放電において走査電極SCp上部および維持電極SUp上部に蓄積された壁電圧が加算されて放電開始電圧より大きくなり、2回目の維持放電が発生する。以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに維持パルスを交互に印加することにより、書込み放電を起こした放電セルCp,qに対して維持パルスの回数だけ維持放電が継続して行われる。
図4は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置の電気的構成を示すブロック図である。図4に示すプラズマディスプレイ装置は、A/Dコンバータ1、映像信号処理回路2、サブフィールド処理回路3、データ電極駆動回路4、走査電極駆動回路5、維持電極駆動回路6、PDP10を備えている。
A/Dコンバータ1は、入力されたアナログの映像信号をデジタルの映像信号に変換する。映像信号処理回路2は、入力されたデジタルの映像信号を発光期間の重みの異なる複数のサブフィールドの組み合わせによってPDP10に発光表示するため、1フィールドの映像信号から各サブフィールドの制御を行うサブフィールドデータに変換する。また、映像信号処理回路2は内部に点灯率予測手段としての点灯率検出回路21を有しており、点灯率検出回路21は、入力されたデジタルの映像信号の輝度値を1フィールド期間または1フレーム期間に亘って累積する等の一般に知られた手法を用いることによって平均的な明るさ、すなわちAPLを検出し、それを点灯率データとして出力する。点灯率とは、維持放電によって発光を生じさせる放電セルの全放電セルに対する割合を表しており、APLとは密接な関係がある。したがって、本発明の実施の形態1においては、映像信号からAPLを検出し、それを点灯率データとして用いている。
サブフィールド処理回路3は、映像信号処理回路2で作成されたサブフィールドデータおよび点灯率データからデータ電極駆動回路用制御信号、走査電極駆動回路用制御信号および維持電極駆動回路用制御信号を生成し、データ電極駆動回路4、走査電極駆動回路5、維持電極駆動回路6へそれぞれ出力する。また、サブフィールド処理回路3は、走査電極駆動回路5および維持電極駆動回路6に設けられた維持パルス発生回路51、61を制御する制御信号を生成する。このとき、サブフィールド処理回路3は、維持パルス発生回路51、61において2種類の維持パルスを周期的に切り替えて発生させるように制御信号を生成することができる。そして、サブフィールド処理回路3は、点灯率データと点灯率判定用しきい値とを比較し、その比較の結果にもとづきその切り替えの周期を変更し、それら2種類の維持パルスのパルス数の割合を変えて発生させることができる。これら点灯率データと2種類の維持パルスとの関係については、後で詳しく説明する。
PDP10は、上述したとおり、行方向にn行の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)とn行の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)とが交互に配列され、列方向にm列のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、一対の走査電極SCi、維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とを含む放電セルCi,jが放電空間内に(m×n)個形成され、赤色、緑色および青色の各色に発光する3つの放電セルにより1つの画素が構成される。
データ電極駆動回路4は、データ電極駆動回路用制御信号にもとづいて各データ電極Djを独立して駆動する。
走査電極駆動回路5は、維持期間に走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路51を内部に備え、各走査電極SC1〜SCnをそれぞれ独立して駆動することができる。そして、走査電極駆動回路用制御信号にもとづいて各走査電極SC1〜SCnを独立して駆動する。
維持電極駆動回路6は、維持期間に維持電極SU1〜SUnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路61を内部に備え、PDP10の全ての維持電極SU1〜SUnをまとめて駆動することができる。そして、維持電極駆動回路用制御信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnを駆動する。
図5は、本発明の実施の形態1のプラズマディスプレイ装置における走査電極駆動回路5の維持パルス発生回路51および維持電極駆動回路6の維持パルス発生回路61を示した回路図である。
以下、維持パルス発生回路51について説明するが、維持パルス発生回路61も同様の動作を行う。
維持パルス発生回路51は、コイルL1と回収コンデンサC1とスイッチング素子S1、S2と逆流防止用ダイオードD1、D2とを有する電力回収部と、電圧値Vuの定電圧電源V1と、一端が定電圧電源V1に接続された電源クランプスイッチであるスイッチング素子S5および一端が接地電位に接続された接地クランプスイッチであるスイッチング素子S6を有する電圧クランプ部とからなる。電力回収部では、インダクタンス素子であるコイルL1を用いることによりPDP10の容量性負荷(走査電極SC1〜SCnに生じた容量性負荷)とコイルL1のインダクタンスとをLC共振させて、電力の回収および供給を行う。電力の回収時には、PDP10の容量性負荷に蓄えられた電力を、逆流防止用ダイオードD2およびスイッチング素子S2を介して回収コンデンサC1に移動させる。電力の供給時には、回収コンデンサC1に蓄えられた電力を、スイッチング素子S1および逆流防止用ダイオードD1を介してPDP10(走査電極SC1〜SCn)に移動する。こうして維持期間における走査電極SC1〜SCnの駆動を行う。したがって電力回収部では、維持期間において、電源から電力を供給されることなくLC共振によって走査電極SC1〜SCnの駆動を行うため、実質的な消費電力は0となる。
一方、電圧クランプ部は、電圧値Vuの定電圧電源V1からスイッチング素子S5を介して走査電極SC1〜SCnに電力を供給して走査電極SC1〜SCnを電圧値Vuにクランプし、また、走査電極SC1〜SCnをスイッチング素子S6を介して接地電位にクランプすることによって、走査電極SC1〜SCnの駆動を行う。したがって、電圧クランプ部による走査電極SC1〜SCnの駆動時においては、電力供給のインピーダンスが非常に小さく維持パルスの立ち上がり立ち下がりは急峻になるが、定電圧電源V1から電力が供給されることによる消費電力が発生する。
こうして維持パルス発生回路51は、スイッチング素子S1、S2、S5、S6の切り替えによって、電力回収部と電圧クランプ部とを切り替え、走査電極SC1〜SCnに印加するための維持パルスを発生する。このとき、維持パルス発生回路51では、維持パルスの電圧が極大値になるまで電力回収部によってLC共振を利用した電力供給を行い、その後電圧クランプ部に切り替えることで、実質的な消費電力が0である電力回収部を最大限に利用した駆動を行うことができ、走査電極駆動回路5の消費電力を低減することができる。
なお、スイッチング素子S1、S2、S5、S6は、MOSFET等のスイッチング動作を行う一般に知られた素子からなる。
また、維持電極駆動回路6における維持パルス発生回路61は、電圧値Vuの定電圧電源V2と、コイルL2と回収コンデンサC2とスイッチング素子S3、S4と逆流防止用ダイオードD3、D4とを有する電力回収部と、スイッチング素子S7、S8を有する電圧クランプ部とからなり、PDP10の容量性負荷(維持電極SU1〜SUnに生じた容量性負荷)とコイルL2のインダクタンスとを共振させて、回収コンデンサC2に電力の回収を行う構成であり、その動作は維持パルス発生回路51と同様であるので説明を省略する。
このように、維持パルス発生回路51および維持パルス発生回路61によるPDP10の駆動では、PDP10の容量性負荷に蓄えられた電力を回収しそれを再利用することにより消費電力の削減を実現することができる。
また、上述したように、維持パルス発生回路51および維持パルス発生回路61は、2種類の維持パルスを周期的に切り替えて発生することができる。そして、サブフィールド処理回路3における点灯率データと点灯率判定用しきい値との比較の結果にもとづきその切り替えの周期を変更し、それら2種類の維持パルスのパルス数の割合を変えて出力する。
次に、この維持パルス発生回路51、61において発生される2種類の維持パルス、すなわち第1の維持パルスである維持パルスAと第2の維持パルスである維持パルスBについて説明する。以下、維持パルス発生回路51を例に動作説明を行うが、維持パルス発生回路61も同様の動作により2種類の維持パルスを発生する構成であるので、重ねての説明を省略する。
図6は、本発明の実施の形態1のプラズマディスプレイ装置における維持パルス発生回路51が発生する維持パルスAの電圧波形とスイッチング素子S1、S2、S5、S6の導通状態を示す図である。
まず、tA1期間では、スイッチング素子S1を導通状態(ON)にし、スイッチング素子S2、S5、S6を非導通状態(OFF)にして、電力回収部のコイルL1のインダクタンスとPDP10の容量性負荷(走査電極SC1〜SCnの容量性負荷)とのLC共振によって回収コンデンサC1からPDP10の容量性負荷へ電力供給を行う。このとき、回収コンデンサC1の容量はPDP10の容量性負荷と比較して十分大きく、また回収コンデンサC1は定電圧電源V1の電圧値Vuに対して半分の電圧値である1/2Vuに充電されている。
スイッチング素子S1が導通すると、コイルL1とPDP10の容量性負荷とのLC共振によってコイルL1を通して回収コンデンサC1からPDP10に電流が流れ始め、PDP10の容量性負荷を充電し始める。そして維持パルス発生回路51からの出力電圧が極大値V1に達した時点で回収コンデンサC1からPDP10に流れる電流は0となる。
この極大値V1は放電セルにおける放電開始電圧Vfよりも大きく、したがって、維持パルスAにおいては、電力回収部による電力供給期間中に放電セルに放電が発生する構成となっている。また、極大値V1は回収コンデンサC1の電圧値の2倍に近い値となるが、放電による電力消費、駆動インピーダンスの電圧降下等のためVuには達しない。本発明の実施の形態1では、このtA1期間を550nsecに設定している。
続くtA2期間では、維持パルス発生回路51からの出力電圧が極大値V1になった時点でスイッチング素子S5をONにし、スイッチング素子S1をOFFにして、電圧クランプ部による電圧印加に切り替える。これにより、定電圧電源V1からPDP10へスイッチング素子S5を介して電力が供給され、維持パルスは速やかに電圧値Vuまで引き上げられる。
続くtA3期間では、再び電力回収部に切り替え、PDP10の容量性負荷に蓄積された電力を回収コンデンサC1に回収する。すなわち、スイッチング素子S2をONにし、スイッチング素子S5をOFFにすることで、再びコイルL1のインダクタンスとPDP10の容量性負荷とがLC共振し、今度はコイルL1を通してPDP10から回収コンデンサC1に電流が流れ始め、その電力が回収コンデンサC1に充電される。そしてPDP10の電圧が極小値V0に達した時点でPDP10から回収コンデンサC1に流れる電流は0となる。この極小値V0は駆動インピーダンス等のため接地電位にはならない。
続くtA4期間では、PDP10の電圧が極小値V0になった時点でスイッチング素子S6をONにし、スイッチング素子S2をOFFにして、再び電圧クランプ部による駆動に切り替える。これによりPDP10の容量性負荷に残留した電力は接地電位へ放出され、維持パルスの電圧は速やかに0(V)に引き下げられる。
このように、維持パルスAは、維持パルスの電圧が放電開始電圧Vfよりも大きい極大値V1になった時点で電圧クランプ部に切り替えるため、実質的な消費電力が0である電力回収部による駆動を最大限に利用した駆動波形となり、維持パルス発生に要する消費電力を最小にすることができる。
図7は、本発明の実施の形態1のプラズマディスプレイ装置における維持パルス発生回路51が発生する維持パルスBの電圧波形とスイッチング素子S1、S2、S5、S6の導通状態を示す図である。なお、図7に示した維持パルスの電圧波形は、図6に示した維持パルスの電圧波形と立ち上がり期間が異なるだけで、スイッチング素子S1、S2、S5、S6の制御方法は図6と同様である。
まず、tB1期間は、維持パルスAのtA1期間と同様の動作により、回収コンデンサC1からPDP10の容量性負荷(走査電極SC1〜SCnの容量性負荷)へ電力供給を行う。ここで、維持パルスBでは、tB1を、図6に示したtA1の550nsecから350nsecに短縮している。すなわち、維持パルスBでは、維持パルス発生回路51からの出力電圧が放電開始電圧Vfより低いV2の時点でスイッチング素子S5をONにし、スイッチング素子S1をOFFにして、電圧クランプ部による電圧印加に切り替えている。このように、維持パルスBが維持パルスAと異なる点は、tB1の長さをtA1より短く設定し、電力回収部による電力供給期間中に放電セルに放電が発生しないように構成した点にある。なお、tB1期間を短くし過ぎると回収電力の利用量が減り消費電力が増加するので、本実施の形態においては、放電開始電圧Vfのばらつき範囲にV2が到達しない程度の長さである350nsecにtB1を設定している。
これにより、続くtB2期間では、電力回収部から電圧クランプ部による電圧印加に切り替えられ、PDP10の容量性負荷へ定電圧電源V1から低いインピーダンスで電力が供給される。そして、維持パルスBの電圧は放電開始電圧Vfより低い電圧V2から、放電開始電圧Vfを超え、定電圧電源V1の電圧値Vuまで速やかに引き上げられる。したがって、維持パルスBにおいては、電力回収部による電力供給期間中ではなく、電圧クランプ部による電力供給により電圧の変化が急峻な状態で放電セルに放電が発生する構成となっている。また、tB2を図6に示したtA2よりも200nsec長くして、維持パルスの周期が変わらないようにしている。
続くtA3期間とtA4期間については維持パルスAと同様の動作を行うため、説明を省略する。
通常、画像表示中の放電セルの点灯率は一対の走査電極SCiと維持電極SUi(i=1〜n)とを有する一対の表示電極(以下、「ライン」と略記する)毎に異なるため、駆動負荷はライン毎に異なる。このとき電圧印加手段のインピーダンスが高いと、維持パルスの立ち上がり波形にライン間のばらつきが生じ、放電開始時間がばらつく。また、放電セル間に放電開始電圧の差があると、放電開始時間の差はさらに大きくなる。隣接する放電セルにおいて放電開始時間に差があれば、後に放電する放電セルは、先に放電する放電セルの影響を受け、壁電荷が奪われて放電が弱くなり、輝度のばらつきが生じる。また、放電セルの中には、隣接する放電セルの放電の影響を受けることによって一度開始された放電が停止し、印加電圧の上昇によって再び放電を生じるものがある。放電セルの明るさは放電の回数および放電1回あたりの発光強度と相関があるので、これらの現象によって放電セル間に輝度のばらつきが発生する。そして、これらの現象は、維持パルスの立ち上がりが緩やかになるほど顕著になる。逆に、電圧の変化が急峻な状態で放電を生じさせると、放電開始電圧のばらつきが吸収され、放電セル間の放電開始時間のばらつきが小さくなり、輝度のばらつきの発生を抑えることができる。
維持パルスBは、上述したように定電圧電源V1からの電力供給によって低いインピーダンスでPDP10の容量性負荷に電力を供給して放電を発生させるため、その分の消費電力は発生するが、立ち上がり波形が急峻になるので電圧の変化が急峻な状態で維持放電を発生させることができ、放電セルにおける放電のばらつきを抑えることのできる駆動波形となる。
本発明の実施の形態1における維持パルス発生回路51および維持パルス発生回路61では、これら2種類の維持パルスを周期的に切り替えて発生することが可能である。そして、サブフィールド処理回路3における点灯率データと点灯率判定用しきい値との比較の結果にもとづきその切り替えの周期を変更し、それら2種類の維持パルスのパルス数の割合を変えて出力することができる。
次に、サブフィールド処理回路3における点灯率データと点灯率判定用しきい値との比較の結果と2種類の維持パルスのそれぞれのパルス数の割合との関係について説明する。
上述したように維持パルスAは、電圧印加時のインピーダンスが高いtA1期間中に放電を発生するように構成しているので、消費電力を抑えた駆動を行うことができるといった特徴を有する反面、放電セルが放電を開始するときの維持パルスの立ち上がりは緩やかである。
一方、維持パルスBは、電力供給のインピーダンスが低い電圧クランプ部による電力供給によってPDP10に印加する電圧の変化が急峻な状態で放電を生じさせるので、放電に要する電力を定電圧電源V1から供給することによる消費電力が発生するが、放電セル間の放電開始時間の差(ばらつき)を小さく抑えることができ、放電セル間の輝度のばらつきを抑えることができる。
維持期間において、これらそれぞれ特徴の異なる維持パルスAおよび維持パルスBのどちらか一方だけによる駆動としてしまうと、他方の持つ特徴は損なわれてしまう。例えば、維持期間において維持パルスAだけによる駆動とした場合には、消費電力の削減効果を得られる反面、放電のばらつきを抑えた駆動とすることは難しい。また、維持パルスBだけによる駆動とした場合には、放電のばらつきを抑えた画像表示を行うことはできるが、消費電力の削減効果を得ることは難しい。
また、PDP10に表示される画像のAPLが高いか低いかによって、画像を表示する際に次のような違いがある。
高いAPLの画像を表示する場合には、同時に点灯する放電セルの数が多くなり、それに伴い電力の消費量も増えるが、一方でAPLが高い画像は全体的に輝度値の高い画像となるため、放電のばらつきによって輝度のばらつきが発生したとしても、そのばらつきがPDP10の表示面上では確認されにくい。
一方、低いAPLの画像を表示する場合には、全体的に輝度値が低くかったり、また、全体的に輝度値が低い中に一部輝度値の高い領域が存在するような画像であることが多いため、見た目のダイナミックさに与える影響の大きい暗い部分と明るい部分との輝度差がPDP10の表示面上で確認されやすい。そのため、放電のばらつきを抑えて輝度のばらつきを抑え、表示される画像の階調性を高めてやることで、よりダイナミックな迫力のある画像を表示することが可能となる。また、APLが低い画像では同時に点灯する放電セルの数も多くはなく、消費電力の増加もそれほど大きいものとはならない。
そこで、本発明の実施の形態1においては、維持パルスA、維持パルスBのそれぞれが有する特徴を活かすため、いずれか一方の維持パルスのみの駆動とするのではなく、維持パルスAと維持パルスBとを周期的に切り替えて発生させることで、それぞれの特徴を活かした駆動を行う構成とする。また、表示される画像のAPLによる上述したような違いに照らし合わせ、点灯率検出回路21において検出された点灯率データと点灯率判定用しきい値との比較によって点灯率が高い画像か低い画像かを判断し、それら2種類の維持パルスを切り替える周期をその比較の結果にもとづいて変更し、維持パルスAのパルス数に対する維持パルスBのパルス数の割合を変えて出力する構成とする。
図8は、本発明の実施の形態1のプラズマディスプレイ装置における駆動電圧波形の維持期間における維持パルス波形を拡大して表した図である。図8は、図3に示した駆動電圧波形の維持期間における維持パルス波形を拡大して表したものであり、図8(a)は、表示する画像の点灯率が低い場合の維持パルス波形の拡大図、図8(b)は、表示する画像の点灯率が高い場合の維持パルス波形の拡大図である。そして、図8(a)、(b)において、上段は走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルス波形であり、下段は維持電極SU1〜SUnに印加する維持パルス波形である。また、立ち上がり部分を濃く示している方が維持パルスBであり、そうでないのが維持パルスAである。
本発明の実施の形態1においては、図8(a)に示すように、点灯率検出回路21において検出された点灯率データ(ここでは、表示される画像のAPL)が50%より小さい場合を点灯率が低い画像とし、点灯率が低い画像の場合には、維持パルスAと維持パルスBとのパルス数の割合が2:1となるように、それぞれの維持パルスを切り替える周期を設定している。また、図8(b)に示すように、点灯率検出回路21において検出された点灯率データが50%以上の場合を点灯率が高い画像とし、点灯率が高い画像の場合には、維持パルスAと維持パルスBとのパルス数の割合が3:1となるように、それぞれの維持パルスを切り替える周期を設定している。
このように、維持パルスAと維持パルスBとを周期的に切り替えて生成し、維持パルスAと維持パルスBとが所定の割合で織り交ざるように構成することで、維持パルスBによる維持放電を定期的に発生させ、放電のばらつきを抑えて輝度のばらつきを抑えた駆動とすることができる。上述したように、放電セル間に放電のばらつきがあると、先に放電する放電セルの影響を受け、後から放電する放電セルでは壁電荷が奪われて放電が弱くなる等して、放電開始時間の差はさらに大きくなる。しかし、放電のばらつきが抑えられた維持放電を定期的に発生させることによりそういった放電開始時間の差の拡大を抑制することができ、放電のばらつきを低減することができる。さらに、維持パルスAによる駆動によって消費電力の削減の効果も同時に得ることができる。
そして、点灯率の低い画像を表示する場合は、輝度のばらつきを抑えることのできる維持パルスBのパルス数の割合を増やすことで、表示される画像の階調性をより高め、ダイナミックな迫力のある画像を表示する。また、点灯率の低い画像では同時に点灯する放電セルの数が少ないため、維持パルスBのパルス数の割合が増えても、消費電力の増加はそれほど大きいものとはならない。
点灯率の高い画像を表示する場合は、同時に点灯する放電セルの数が多いため消費電力を増加させてしまう維持パルスBによる駆動の割合を減らし、維持パルスAによる駆動の割合を増やして消費電力を抑えた駆動とする。また、点灯率(APL)が高い画像は全体的に輝度値の高い画像となるため、維持パルスBによる駆動の割合を減らして輝度のばらつきを抑える効果が減少したとしても、維持パルスBの割合を減らさない場合との差がPDP10の表示面上ではわかりにくいため、あまり問題とはならない。
以上述べたように、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置においては、消費電力を削減することができる維持パルスAおよび放電のばらつきを抑えることができる維持パルスBの2種類の維持パルスを周期的に切り替えて発生させてPDP10を駆動することで、放電のばらつきに起因する輝度のばらつきの抑制と消費電力の削減とを両立させる。また、点灯率検出回路21において検出される点灯率データと点灯率判定用しきい値との比較にもとづきその切り替えの周期を変更し、維持パルスAのパルス数に対する維持パルスBのパルス数の割合を変えて生成する構成とする。そして、点灯率の低い画像を表示する場合には輝度のばらつきを抑えることのできる維持パルスBのパルス数の割合を増やし、点灯率の高い画像を表示する場合には、消費電力の削減効果の高い維持パルスAのパルス数の割合を増やした駆動とする。これにより、点灯率の低い画像を表示する場合には輝度のばらつきを抑え表示される画像の階調性を高めてよりダイナミックで迫力のある画像を表示することができ、点灯率の高い画像を表示する場合には消費電力の削減効果を高めた駆動を行うことができるようになる。
なお、本発明の実施の形態1においては、点灯率判定用しきい値を50%とし、維持パルスAと維持パルスBとのパルス数の割合を2:1と3:1とで切り替える構成とした。また、維持パルスAの立ち上がり期間tA1を550nsecとし、維持パルスBの立ち上がり期間tB1を350nsecとした。しかし、これらの数値は、本発明者が消費電力および表示画像の評価を行い、最適値を求めた結果に過ぎず、何等これらの数値に限定するものではない。これら点灯率判定用しきい値やパルス数の割合等の最適値はPDPや駆動回路の特性によって異なるので、プラズマディスプレイ装置の機種毎に最適化することが望ましい。
また、本発明の実施の形態1では維持パルスBを発生させるときに出力電圧が極大値V1に達する前に電力回収部から電圧クランプ部に切り替えることで維持パルス波形の立ち上がりを急峻にする構成を説明した。しかし、何等この構成に限定するものではなく、例えば、インダクタンスの異なる2種類のコイルを用いて維持パルス発生回路を構成し、共振周波数の異なる2種類の維持パルスを発生させるようにすることで、上述と同様の効果を得ることができる。
図9は、本発明の実施の形態1のプラズマディスプレイ装置における維持パルス発生回路の他の例を示した図である。図9に示した維持パルス発生回路52は、図5に示した維持パルス発生回路51の構成に加え、電力回収部にスイッチング素子S10、逆流防止用ダイオードD10、コイルL10をさらに設けた構成となっている。
図9に示した維持パルス発生回路52が維持パルス発生回路51と異なる点は、回収コンデンサC1に蓄えられた回収電力を再利用するための経路を2つ持たせた点である。コイルL10は、コイルL1とインダクタンスが異なり、コイルL10とPDP10の容量性負荷とのLC共振周波数が、コイルL1による場合よりも高くなるように設定されている。したがって、維持パルスAを発生させる手順は上述した図5を用いての説明と同様であるが、維持パルスBを発生させる場合には、スイッチング素子S1に代えてスイッチング素子S10をONにすることで、コイルL10とPDP10の容量性負荷とをLC共振させて電力の供給を行うことができ、コイルL1を用いた場合よりも高い共振周波数、すなわち立ち上がりの急峻な維持パルスを発生させることができる。また、この構成では、クランプ部に切り替え定電圧電源V1からの電力供給によって維持放電を発生させるのではなく、常に電力回収部からの電力供給によって維持放電を発生させるので、消費電力の削減効果をさらに高めることができる。
また、本発明の実施の形態では点灯率を予測する手段として、表示される画像のAPLを検出する構成を説明した。しかし、本発明の実施の形態1においては、何等この構成に限定するものではなく、それ以外の手法によって点灯率を予測する構成としてもよい。例えば、サブフィールドデータから各サブフィールドにおける発光を生じさせる放電セルの数を求め、それにより点灯率データを算出する構成としてもよい。この構成では、各サブフィールド毎の点灯率データを算出することができるので、各サブフィールド毎に維持パルスAと維持パルスBとの割合を変えることもできるようになる。あるいは、映像信号の1水平走査期間毎の平均輝度レベルを検出し、それにもとづき点灯率を予測するように構成してもよい。
図10は、本発明の実施の形態1における点灯率を予測する方法の他の例を説明するための概略図である。例えば、図10(a)に示すように、左半分が輝度値100%、右半分が輝度値0%の画像をPDP10に表示した場合、APLは50%となる。また、図10(b)に示すように、上半分が輝度値100%、下半分が輝度値0%の画像をPDP10に表示した場合も同様にAPLは50%となる。
しかし、維持放電を発生させる走査電極SC1〜SCnおよび維持電極SU1〜SUnは、PDP10の表示面に対して水平方向に配置されているため、表示電極対を構成する一対の走査電極SCiおよび維持電極SUi(i=1〜n)のそれぞれにおける放電の発生率で見てみると、図10(a)では、全ての表示電極対のそれぞれが等しく50%の放電発生率である。一方、図10(b)では、上半分の表示電極対における放電発生率はそれぞれ100%であり、下半分の表示電極対における放電発生率はそれぞれ0%となる。このように、同じAPL50%の画像であっても、その表示パターンによって、表示電極対におけるそれぞれの放電発生率は異なる場合がある。
表示電極対上の放電の発生率が高いほど駆動に必要な電力は多くなり駆動インピーダンスも大きくなるため、放電のばらつきも大きくなる。一方、表示電極対上の放電の発生率が低ければ駆動に必要な電力も少なくて済み駆動インピーダンスも小さくなるため、放電のばらつきも抑えられる。したがって、全ての表示電極対における放電の発生率が50%である図10(a)のパターンよりも、上半分の表示電極対における放電の発生率が100%である図10(b)の方が放電のばらつきが大きくなる恐れが大きい。この点に着目し、表示電極対毎に点灯率を予測し、点灯率が高いと予想される表示電極対の総和によって、1画面の点灯率を予測する構成としてもよい。すなわち、1水平走査期間(1ライン)毎に平均輝度レベルを検出し、検出された平均輝度レベルをそれぞれ水平走査期間点灯率判定用のしきい値と比較して点灯率の高いラインかどうかを判断し、点灯率の高いラインの1垂直走査期間における総数を求める。そして、その総数を総数判定用のしきい値と比較することで、APLを検出する構成に代わる点灯率を予測する手段としてもよい。
また、放電のばらつきの現れ方はPDPの特性や駆動回路の特性により、偏りが生じる場合がある。例えば、点灯率が小、中、大となるにつれて放電のばらつきの出方が小、大、小となるような場合もある。したがって、これらPDPの特性や駆動回路の特性およびそれらを組み合わせたプラズマディスプレイ装置としての特性等にもとづき、維持パルスAと維持パルスBとを切り替える周期およびそれぞれのパルス数の割合を最適に設定することが望ましい。
また、本発明の実施の形態においては、維持パルス波形の立ち上がりにおいて放電を発生さえる構成にもとづき説明を行ったが、維持パルス波形の立ち下がりにおいて放電を発生させる場合においても実施の形態と同様の構成により同様の効果を得ることができる。