JP4856842B2 - 差引きハイブリダイゼーションを実施する方法 - Google Patents
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Description
【発明の背景】
(技術分野)
本発明は、核酸単離の改善に関し、より特定すると、差引き(subtractive)ハイブリダイゼーション法の修正及びかかる方法を実施するときに有用であるオリゴヌクレオチドのような試薬に関する。
【0002】
(背景情報)
特定の核酸の存在変化、レベルの変化または配列の変化は、その核酸が存する宿主に重要な影響を及ぼしうる。そのような核酸配列の同定と単離は、それらの分析と理解にとって不可欠である。このために、遺伝学、感染性試験、比較核酸フィンガープリンティング、及び差引きハイブリダイゼーションのアプローチが使用されてきた。
【0003】
差引きハイブリダイゼーション法は、あるサンプル中には存在するが、さもなければ同一であるサンプル中では存在しないか、低下又は変化している核酸配列を濃縮する。総説については、O.D.Ermolaevaら、Genetic Anal.:Biomol.Eng.13:49−58(1996)参照。このような方法における「標的」は濃縮された核酸配列のセットであり、「テスターとドライバー」は、好ましくはそれぞれ標的配列の存在又は不在によってのみ相互に異なる、ほぼ同一の核酸サンプルである。
【0004】
一般に、差引きハイブリダイゼーションにおいては、ドライバー及びテスター核酸をサンプルから抽出する。次に対象とする核酸がRNAであればcDNAを調製する。ドライバーDNAとテスターDNAを断片化し、どちらか一方をその後の精製が可能であるように修飾する。そして最後に、ドライバーがテスターよりも実質的に過剰である、断片化したDNAの混合物を、熱変性させ、相補的な一本鎖をアニーリングさせる。ドライバーがテスターに対して過剰であることにより、ドライバーと共通に保持されているテスター配列の大部分は、テスター/ドライバーハイブリッドとして存在している。ドライバーとテスターとに共通する配列を含む種を上述した修飾によって除去し、標的配列に富むテスターだけの群を残す。さらに濃縮が必要であれば、さらなるラウンドの差引き(subtraction)を実施する。最終的に、差引き産物からクローン化した個々のフラグメントを標的配列(すなわち、テスターには存在するが、ドライバーには存在しないか又は有意に少ない配列)をスクリーニングする(O.D.Ermolaevaら、前出)。
【0005】
Representational Difference Analysis(RDA)は、他の最近の差引きハイブリダイゼーションと同様に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を手順の一部として組み込んでいる(米国特許第4,683,195号;Saikiら、Science 230:1350−1354(1985))。PCRに基づく差引きハイブリダイゼーションが成功するかどうはか、一部には、初期アンプリコンの複雑度及び/又はアンプリコン内の標的配列の相対的豊富さに依存している。(アンプリコンは、PCRによって増幅された核酸配列のセットを含む単位と定義しうる。)複雑度があまりに高い場合、あるいは標的配列の濃度があまりに低い場合には、ハイブリダイゼーションの反応速度が有効な濃縮を妨げ、この方法は失敗に終わる。
【0006】
アンプリコンの複雑度は、RDA手順においてドライバーとテスターからのすべての可能なフラグメントの代表サブセットだけを増幅することによって低下する。そのようなサブセットは、サイズに基づく核酸フラグメントの選択増幅によって実現される。あるいは、差引きの前に部分的精製によって出発核酸を標的配列に関して濃縮することができる。この部分的精製は、抽出の前にサンプルを2ミクロンのフィルターに通し、それによってサンプル中に存在する細胞性核酸の大部分を排除してアンプリコンの複雑度を低下させる必要を軽減することによって達成される(Simonsら、Proc.Natl.Aca.Sci.USA 92:3401−3405(1995))。
【0007】
また他の因子もこの方法の成果に影響を及ぼしうる。例えば、フラグメント間の再会合速度やPCR効率の相違は、配列がテスターにユニークであるか否かに関わらず、最も容易に形成される産物について強い選択をもたらす。そのような配列がユニークでなければ、特に後期のラウンドにおいてドライバーの差引き能力を圧倒し、テスター対ドライバーに特異的でない又は頻度が高くない配列の単離をもたらしうる。それらのソースに関わりなく、そのような「優先」配列は濃縮フラグメント群より優位となる傾向があり、形成される効率がより低いテスターユニーク産物と過剰競合して、テスターユニーク産物の検出を困難にする。この問題については、最近、一連の差引き後に得られた主要濃縮産物を単離し、それらを個々にドライバーに戻し加えて、それによってそれらの配列の差引き能力を押し上げるというアプローチが試みられた(Ushijimaら、Proc.Natl.Aca.Sci.USA 94:2284−2289(1997)及びHubankら、Nucleic Acids Res.22:5640−5648(1994))。しかし、コピー数がより低い配列又は比較的わずかしか増幅されない配列のような、それまでに得られていないテスターユニーク配列を単離するためには、その後2回目のシリーズの差引きを実施しなければならない。
【0008】
高いアンプリコンの複雑度及びテスターにおける低いコピー数に伴う問題は十分には検討されておらず、まだ解決されていない。これらの因子は、差引き手順の感受性を低下させることによって配列の単離にマイナスの影響を及ぼしうる。
【0009】
上記の考察に鑑みて、高いアンプリコンの複雑度及びテスターにおける低いコピー数に関連する問題を対象とした、RDAを含む差引きハイブリダイゼーション法の修正を提供することは確実に有益であろう。
【0010】
すべての米国特許及び公表文献はそれらの全体が参照してここに組み込まれる。
【0011】
(発明の概要)
本発明は、ドライバー対テスター差引き段階と平行して実施するドライバー対ドライバー差引き対照を利用する、選択プライム適応ドライバー−RDA(Selectively Primed Adaptive Driver−RDA、「SPAD−RDA」)と称する修正差引きハイブリダイゼーション法を提供する。各ラウンドからのドライバー対照差引きの産物はその後のラウンドのドライバーとして使用することができる。
【0012】
差引きハイブリダイゼーションを実施するためのこの方法は、テスターサンプル中に核酸配列の相違が存在するかどうかを調べるためにテスターサンプルとドライバーサンプルを使用する。詳細には、かかる方法は:(a)テスターサンプルとドライバーサンプルから別々に全核酸を単離し、テスターサンプルとドライバーサンプルからの全核酸から二本鎖cDNA/DNAを調製する段階;(b)段階(a)のテスターサンプルとドライバーサンプルから調製した二本鎖cDNA/DNAを制限エンドヌクレアーゼで消化し、各サンプルについての制限フラグメントのセットを作製する段階;(c)段階(b)の各セットのドライバー及びテスター制限フラグメントをオリゴヌクレオチドアダプターセット1に連結し、生じた産物を段階(b)の制限フラグメントのサブセットが増幅されるように選択プライマーで増幅する段階;(d)選択プライマー配列を制限エンドヌクレアーゼ消化によって除去し、テスター及びドライバーアンプリコンを作製する段階、該ドライバー及びテスターアンプリコンの5’末端をオリゴヌクレオチドアダプターセット2に連結してドライバー対照とテスターを形成し、ドライバー対照とテスターを別々に各々過剰の連結していないドライバーアンプリコンと混合し、生じた混合物を変性し、各々の混合物内の変性核酸鎖をハイブリダイズさせる段階;(e)アニーリングしたドライバー/テスター及びアニーリングしたドライバー/ドライバー対照の3’末端を熱安定なDNAポリメラーゼを使用して充填し、生じた配列を増幅する段階;(f)一本鎖DNAヌクレアーゼで消化し増幅することにより残存する一本鎖DNAを除去する段階;(g)ヌクレアーゼ消化後残存する二本鎖DNAを増幅する段階;および(h)ドライバー/テスター及びドライバー/ドライバー対照の差引き産物を制限エンドヌクレアーゼで開裂してオリゴヌクレオチドアダプターを除去する段階、および段階(c)から(h)までを反復する段階、を含み、ここにおいて、段階(c)から(h)では、RDAのそれまでのラウンドにおいて使用していないオリゴヌクレオチドアダプターセットを使用し、ここにおいて1つのラウンドは、段階(c)から(h)のRDAの実施から成り、およびRDAの各々の新ラウンドのRDAについて、直前の段階(c)から(h)からのドライバー/ドライバー対照差引き産物の制限エンドヌクレアーゼ開裂産物をドライバーとして使用する。(段階(c)から(h)までは所望する回数反復することができる)。この方法では、段階(b)及び/又は段階(h)の制限エンドヌクレアーゼは4−6塩基対認識部位(突出5’末端を持ち、好ましくは4塩基対認識部位)でありうる。制限エンドヌクレアーゼは、例えば、Sau3AIでありうる。あまり好ましくはないが、パリンドローム構造のテトラ又はヘキサヌクレオチド認識配列を持ついかなる制限酵素も使用しうる。酵素の選択はアンプリコンの複雑度とオリゴヌクレオチドアダプターの設計の両方に影響を及ぼす。4bp認識部位を持つ制限エンドヌクレアーゼを使用するときには、6bp認識部位を持つ制限エンドヌクレアーゼを使用するときに得られる複雑度に比べてアンプリコンの複雑度が上昇する。これは、後者に比べて前者では増幅可能な配列の数がより多いことによる。さらに、効率的な連結が起こるためにはオリゴヌクレオチドアダプターが制限エンドヌクレアーゼ消化したDNAの末端上に存在する配列及び構造と適合性でなければならないので、制限エンドヌクレアーゼの選択はオリゴヌクレオチドアダプターの設計にも影響を及ぼす。
【0013】
本発明はまた、ユニークテスター配列の視覚的同定のための方法を包含する。かかる方法は次の段階を含む:(a)テスターサンプルとドライバーサンプルから別々に全核酸を単離し、テスターサンプルとドライバーサンプルからの全核酸から二本鎖cDNA/DNAを調製する段階;(b)段階(a)のテスターサンプルとドライバーサンプルから調製した該二本鎖cDNA/DNAを制限エンドヌクレアーゼで消化し、各サンプルについての制限フラグメントのセットを作製する段階;(c)段階(b)のドライバー及びテスター制限フラグメントをオリゴヌクレオチドアダプターセット1に連結し、生じた産物を段階(b)の制限フラグメントサブセットが増幅されるように選択プライマーを用いて増幅する段階;(d)該選択プライマー配列を制限エンドヌクレアーゼ消化によって除去し、テスター及びドライバーアンプリコンを作製し、該ドライバー及びテスターアンプリコンの5’末端をオリゴヌクレオチドアダプターセット2に連結してドライバー対照とテスターを形成し、ドライバー対照とテスターを別々に各々過剰の連結していないドライバーアンプリコンと混合し、生じた混合物を変性し、各々の混合物内の変性核酸鎖をハイブリダイズさせる段階;(e)アニーリングしたドライバー/テスター及びアニーリングしたドライバー/ドライバー対照の3’末端を熱安定なDNAポリメラーゼを使用して充填し、生じた配列を増幅する段階;(f)一本鎖DNAヌクレアーゼで消化し増幅することにより残存する一本鎖DNAを除去する段階;(g)ドライバー−テスター及びドライバー対照産物を固体基質上に置く段階;および(j)ドライバー対照バンドに存在しないドライバーテスターバンドを視覚的に同定する段階。
【0014】
(図面の簡単な説明)
図1は、Lisitsynら(Science 259:946−951(1993))の伝統的方法と本発明において述べるような選択プライミングによるRDAアンプリコン作製の比較を示す。
さらに、図1Aは最初に、それぞれ5’から3’までと3’から5’までの配列番号1及び19を示す。図1Bは最初に、それぞれ5’から3’までと3’から5’までの配列番号20及び21を示す。
図2は、本発明のSPAD−RDA手順の概要図を示す。
図3は、Lisitsynら(Science 259:946−951(1993))の伝統的なRDA法と本発明のSPAD−RDA法によるHCV配列についての濃縮を実証するサザンブロットを示す。
図4は、実施例9で述べたようなディファレンシャルハイブリダイゼーションによる標的配列の同定に含まれる段階の概要図を示す。
図5は、提案する「単一ハイブリダイゼーション」RDA修正法に含まれる段階の概要図を示す。
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ここで選択プライム適応ドライバー−RDA(Selectively Primed Adaptive Driver−RDA、「SPAD−RDA」)と称する改善されたRDA法をもたらす、差引きハイブリダイゼーション法、特にRDA法の新規修正法を提供する。この改善された方法は単一プロトコール内にいくつかの修正を組み込む。かかる方法はまた、非修正RDAと比べてSPAD−RDAの改善された有用性及びSPAD−RDAと組み合わせた非対合ドライバー及びテスターサンプルの有効な使用を明らかにする。
【0016】
特に、本発明は、差引きハイブリダイゼーション法について、とりわけRDAについて、標的配列がテスターアンプリコン中に存在する確率を最大にしつつ、アンプリコンの複雑度を制御するための選択プライミングの使用を示す。(3’末端に選択塩基を含むオリゴヌクレオチドプライマーの例をここで提供する。そのようなプライマーは、アンプリコンの複雑度がプライマーの設計を通して制御できることを示す。)各々のラウンドのRDA差引きのための異なるオリゴヌクレオチドアダプターセットも、そのようなアダプターセットの特定例及びそれらの使用と共に、本発明によって提供される。さらに、アンプリコンの選択的プライミングに先立って競合プライマーを除去するため、及び開裂したアダプター配列が新しいアダプターセットの連結に干渉するのを防ぐためにそれらを除去するための、RDA法におけるゲルろ過クロマトグラフィーの有用性を示す。さらに、ドライバー対ドライバー対照差引きの産物をその後のラウンドのためのドライバーとして使用する、差引きハイブリダイゼーション法のための、特にRDAのための適応ドライバー戦略を提供する。また、テスターユニークフラグメントの同定を助ける視覚的標準としてのドライバー対照の使用も提供する。
【0017】
さらに、本発明では、免疫スクリーニング及びディファレンシャルハイブリダイゼーション戦略を差引き産物におけるテスターユニーク配列の検出に適用することにより、生成物分析の役割を拡大する。
【0018】
本発明の方法にはいくつかの用途がある。接種前(又は感染前)サンプルをドライバーとして使用し、接種後(又は感染後)サンプルをテスターとして使用することにより、試験サンプル中に病原菌が存在するかどうかを判定するために利用できる。さらに、ここで述べる方法は、疾患に対する個体の素因に関連したマーカーを同定する、又は遺伝子の変化の検出それ自体が疾患の診断となるような遺伝子の変化を検出する遺伝学的試験のために使用できる。これらの測定においては、プール正常サンプルをドライバーとして使用し、患者のサンプルをテスターとして使用する。
【0019】
本発明によって使用できる様々な試験サンプルは、全血、血清、血漿、及び尿のような体液を含むが、これらに限定されない。組織のような他のサンプルも使用でき、あるいは核酸から何らかのサンプルを抽出することもできる。細胞培養及び/又は細胞上清を使用しうることも本発明の範囲内である。
【0020】
本発明を例証する実施例を提示する前に、実施例において使用する実験材料及び方法についての詳細を下記に述べる:
実験材料及び方法
全般的手法。特に異なる記載がない限り、分子生物学、微生物学、及び組換えDNAテクノロジーの分野における慣例的な周知の手法及び方法を本発明の実施の際に使用する。これらの手法及び方法は文献及び標準テキストにおいて詳細に説明されており、それ故当業者には既知である。(例えば、J.Sambrookら、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”、第2版、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)参照)。従来のRDA手順は、Lisitsynら、Science 259:946−951(1993)の、二本鎖DNAと複雑であるが類似するDNA背景間だけの同定びクローニングの相違に限られている。これらの相違は、細胞系、血液、血漿又は組織サンプルのような試験サンプル中に存在する何らかの大きなDNAウイルス(例えば>25,000塩基対[「bp」]DNA)を含みうる。Simonsら(前出)及びHubankら(前出)が述べたRDAの修正法は、RNA及び/又は一本鎖DNAを二本鎖DNAに変換し、それらをドライバーとテスターに組み込むことにより、従来のRDA手順をRNA及び/又は一本鎖DNAを含むように拡大した。この先行修正法はまた、従来のRDAで使用されていた6bp認識部位を持つ制限酵素に対し、4bp認識部位を持つ制限酵素でDNAを断片化することにより、RDAに供される核酸配列の複雑度を上昇させた。これらの修正法は、より小さなウイルスゲノム(例えば15,000塩基)、特にRNA又は一本鎖DNAのウイルスゲノムの検出/単離の確率を上昇させた。
【0021】
少なくとも1つのこれまでの報告(Lisitsynら、前出(1993))は、高い複雑度がテスター特異的配列の検出の感受性低下をもたらしうることを示しており、低力価ウイルスのような低いコピー数で存在する配列は検出が困難であることを示唆した。本発明は、より低い力価のウイルス又は小さなゲノムを持つウイルスの直接的な検出を可能にすることにより、従来のRDA手順及びSimonsらとHubankらによる修正法の問題を克服する。
【0022】
本発明の方法を図2に示す。ここで提供する1つの実施例では、C型肝炎ウイルス(すなわちRNAウイルス)を含むことが既知であるサンプルからウイルス配列を単離した。Lisitsynら、前出(1993)が述べたように従来のRDA手順を修正することにより、HCV配列の単離とクローニングが達成された。
【0023】
図2を参照して、評価する2つのゲノムを「テスター」(HCVを含むことがわかっている感染後血清)及び「ドライバー」(HCVを含まない同じ個体からの感染前血清)と称した。最初に、全核酸単離のための市販のキット(United States Biochemical[USB]、Cleveland,OHより入手可能)を使用して、テスターサンプルとドライバーから全核酸(DNA及びRNA)を単離した(図には示していない)。あるいは当該技術において既知であり、記述されているように、DNA単独又はRNA単独抽出法が使用できる。
【0024】
従来のRDA手順では、この方法の基礎が共通核酸の比較と差引きにあるので、ドライバーとテスターのサンプルは同じソースから入手される。しかしこれに対して、本発明に従えば、高度に関連するが同一ではない物質をテスターとドライバー核酸のソースに使用することが可能であり得る。「高度に関連するが同一ではない」とは、当該技術において既知の標準プログラムを使用して>95%の配列同一性を意味する。
【0025】
RNAのランダムプライム逆転写とそれに続くランダムプライムDNA合成により、全核酸から二本鎖DNAを調製した。この処理により、RNA及び一本鎖DNAをRDAに供しうる二本鎖DNAに変換した。
【0026】
次に、二本鎖テスター及びドライバーDNAを増幅して、豊富な量の出発物質を生成した。これは、上述したように調製した二本鎖DNAを、4bp認識部位を持つ制限エンドヌクレアーゼ(この実施例では、Sau3AI)で開裂することによって実施した。DNAフラグメント(図2、上部)をオリゴヌクレオチドアダプター(「セットNo.1」と称する)に連結して、末端充填し、選択プライマーを使用してPCR増幅した。この選択プライマー(すなわちR−Bam 19C及びR−Bam 19G)は、この制限フラグメントのサブセットの存在するすべてだけが増幅されるように設計し、それによってアンプリコンの複雑度を低下させた。図1は、(i)オリゴヌクレオチドプライマーR−Bam24による、又は(ii)選択オリゴヌクレオチドR−Bam19Nによる、R−Bamアダプターセットに連結したSAU3AI DNAフラグメントのPCRプライミングを例示する概要図である。図1に示す箱で囲んだ配列は4bp Sau3AI認識部位であり、(n)は4つのヌクレオチドのいずれかを示し、(N)は選択塩基、(n)の相補物を表わす。図2にもどって、PCR増幅後、制限エンドヌクレアーゼ消化(この実施例では、Sau3AI)によって選択プライマー配列を除去し、これにより多量のテスター及びドライバー核酸(すなわちアンプリコン)を遊離する。その後それらを最初のラウンドの差引きハイブリダイゼーションにおいて使用することができた。
【0027】
図2に示されている残りの段階は、テスターにユニークなDNA配列を濃縮するように設計した。これは、差引きハイブリダイゼーションとキネティック濃縮を1つの段階に結合することによって実施した。簡単に述べると、オリゴヌクレオチドアダプター(「セットNo.2」と称する)をドライバー及びテスターアンプリコンの部分の5’末端に連結した(前者を以下「ドライバー対照」と称する)。次に、アダプターセットNo.2に連結したドライバー対照とテスターを別々に、過剰の連結していないドライバーアンプリコンと混合し、変性して、標準条件下で少なくとも20時間ハイブリダイズさせた。テスターとドライバーアンプリコンの間で共通して保持される配列の大部分がこの期間中にアニーリングするであろうと仮定した。同じことがドライバー/ドライバー対照ハイブリダイゼーション混合物にも当てはまるであろうと考えられた。また、テスターアンプリコンにユニークである配列はアニーリングするであろうと考えられた。
【0028】
アニーリングしたドライバー/テスターDNAハイブリダイゼーション及びアニーリングしたドライバー/ドライバー対照DNAハイブリダイゼーションの3’末端を、当該技術において記述され既知である熱安定なDNAポリメラーゼを使用して高温で充填した。テスターにユニークであるこのアニーリング配列は、アニーリングした配列の両方の鎖上に連結したアダプターを含んだ。それ故、これらの分子の3’末端充填は、両方のDNA鎖上にPCRプライマーに相補的な配列を創造した。このように、これらのDNA種は、PCRに供したとき指数的に増幅された。ドライバーと共通して保持されている配列に関して、低いレベルのテスター:テスター又はドライバー対照:ドライバー対照のハイブリッドが形成された。これらのDNA種も指数的に増幅された。これに対し、1本の鎖がテスター又はドライバー対照由来であり、1本の鎖がドライバーアンプリコン由来である、比較的多量のハイブリッド分子は、PCRに供したとき直線的に増幅された。これは、一本の鎖(テスター又はドライバー対照由来)だけが前記連結したアダプター配列を含み、3’末端充填だけがドライバーアンプリコン由来の鎖上にPCRプライマーに相補的な配列を生成することから生じたものである。
【0029】
次に、対象とする二本鎖DNA(すなわち主としてテスターユニーク配列)を、PCRを用いて10サイクルの増幅で定量的に濃縮した。当該技術において以前に述べられているように、大豆ヌクレアーゼを使用した一本鎖DNAヌクレアーゼ消化によって残存する一本鎖DNAを除去した。ヌクレアーゼ消化後に残存する二本鎖DNAをさらに17−27サイクルPCR増幅した。
【0030】
最後に、ドライバー/テスター及びドライバー/ドライバー対照ハイブリダイゼーションの差引き産物を制限エンドヌクレアーゼ(例えばSau3AI)で開裂して、オリゴヌクレオチドアダプターを除去した(図2、下部)。次にこれらのDNA産物の一部をさらなるラウンドの差引きと増幅(それまでのラウンドのRDAで使用していないオリゴヌクレオチドアダプターの連結から始まる)に供した。各々の新しいラウンドのRDAのためのドライバーは、それまでのラウンドからのドライバー/ドライバー対照差引きの制限エンドヌクレアーゼ開裂産物であった(例えば最初のラウンドのドライバー/ドライバー対照産物を2回目のラウンドにおけるドライバーとして再使用する、等々)。
【0031】
既知のRDA手順への上述したこれらの修正は、テスター及びドライバーDNAの両方について複雑度の低いアンプリコンの調製、付加的なRDAアダプターセット、制限エンドヌクレアーゼ消化物のスピンカラム精製、及び再使用可能なドライバーの使用に関する。RDAの感度はアンプリコンの複雑度に逆比例することが報告されているので、複雑度をいかにして制御するかはこの手順の1つの重要な側面である。RDAアンプリコンはこれまで、4塩基又は6塩基認識部位を持つ制限エンドヌクレアーゼで消化されたDNAから誘導されていた。このように、PCRによって効率的に増幅されるのに十分な短さのフラグメントだけがアンプリコン中に良好に表され、それによってアンプリコンの複雑度が低下した。理論的には、アンプリコンの複雑度が比較的高いままであると(4塩基認識酵素を用いた場合のように)、RDAの感度は低下するであろう。逆に、6塩基認識酵素を使用すれば、より少ないフラグメントが精製され、それらの平均長はより大きくなるであろう。これにより、複雑度の低いアンプリコンを生じるが、同時に、標的フラグメントがテスターアンプリコンにおいて機能的に表されるのに十分なだけ増幅されない確率を上昇させる。そこで、より短い配列の増幅を促進するというPCRの傾向から、より長いテスターユニーク配列はアンプリコン内に存在する他の配列に比べてコピー数があまりに少なく、その結果アンプリコンからのそのような長い配列の喪失を導く可能性がある。それ故、これまでに記述されているRDA法は、標的配列が低いコピー数で存在した場合(例えば低力価のウイルス)又は制限部位の間隔があまりに遠く離れていた場合には、標的配列を検出しなかったと考えられる。
【0032】
上記に鑑みて、1又はそれ以上の選択的PCRプライマーの使用は、本発明の方法においてアンプリコンの複雑度のより正確な調節を可能にするであろう。この調節は、それ故、開裂頻度の低い制限酵素(すなわち6塩基認識部位)に類似したより低いアンプリコン複雑度を維持しながら、開裂頻度の高い制限酵素(すなわち4塩基認識部位)を使用してアンプリコンを作製することを可能にするであろう。それ故、選択的プライミングは、アンプリコンを作製するために使用されるPCRプライマー上の特異的3’塩基(「選択塩基」と称する)の使用を通して達成されるであろう。理論的には、両方の鎖の3’末端の選択塩基に相補的な塩基を持つ制限フラグメントだけが増幅されることになる(表1及び図1)。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示す結果を考慮すると、アンプリコンの複雑度は、PCR効率に基づくサイズ選択によってではなく、すべての可能な制限フラグメントのサブセットの特異的増幅を通して低下させるべきである。
【0035】
これまで、RDAには3つのオリゴヌクレオチドアダプターセットだけが使用されていた。1つのセットはアンプリコンの作製のためであり、その他の2セットはRDAの連続するラウンド間で交互に使用された。それ故、3回以上のラウンドの差引きを実施する場合には常に、それまでのラウンドからのアダプターセットを再使用しなければならない。RDA差引き産物には、以前のラウンドからのオリゴヌクレオチドアダプターセットが結合していることがある。相同なアダプターセットを再使用するときには必ずそのような持ち越し産物が増幅されることになり、そのため適切なハイブリッド形成の必要条件が遵守されず、それによって差引きの効率が低下するので、これは問題となりうる。この理由から、各々のラウンドのRDAについて新しいオリゴヌクレオチドセットが使用された。その結果、アダプターセットの持越しが起こった場合でも、これらのフラグメントは、それらが差引きハイブリダイゼーション段階に関与する場合にしか増幅されない。
【0036】
上述したアダプターセットの持ち越しの問題に対する部分的な対応として、すべての制限酵素消化物を新しいアダプターセットの連結の前にゲルろ過スピンカラムに通すことによって精製した。これは制限酵素によって開裂された遊離アダプターの濃度を大きく低下させ、その結果、それらがその後の連結反応に関与するのを防ぐと考えられた。さらに、ドライバー及びテスターアンプリコンの最初の作製の際に、連結していないオリゴヌクレオチドセットNo.1が選択PCRプライマーと競合しないよう、そのレベルを下げるためにスピンカラム精製を使用した。最後に、スピンカラム精製は、より大きな所望産物と過剰競合する可能性がある、プライマー二量体のような非常に小さなPCR産物を排除するのを助けると考えられた。これに関して、このようなスピンカラム精製は、小さなPCR産物に対する選択が最初だけでなく手順全体を通じて維持されるという点を除いて、当該技術においてこれまでに記述されているテスターアンプリコンに関するゲル電気泳動によって実施されるサイズ選択段階と目的は同様である。小さなPCR産物に対する選択能力は、これまで既知のRDA法では実現されなかった改善である。
【0037】
現在RDAを実施するとき、手順の開始時に1回ドライバーアンプリコンを作製し、テスターアンプリコンとその後のすべてのラウンドからの相違産物の両方に対する差引きのために使用する。しかし、RDAの最初のラウンド以後、ドライバーはもはや共通配列に関して差引き産物の対応組成物を正確に反映しない。現在のRDA法を使用すると、各々の差引きに関して、ドライバーが段々有効でなくなっていくことになる。それ故、現在既知のRDA法の欠点は、効率よく差引きされないドライバーとテスターに共通する配列が、RDAによってテスターユニーク配列として正しく単離できないことである。
【0038】
各々のラウンド後に差引き産物の組成物をより正確に表することができるドライバーが必要であると結論された。これを実現するために、ドライバー対テスター差引きと平行して実施する対照差引き(ドライバー対ドライバー)を開発した(図2参照)。この対照差引きの産物をその後のラウンドのためのドライバーとして使用した。対照差引きを利用するというこの能力は、ドライバー/テスター差引き産物に共通して保持されるフラグメントを正確に表す可変的なドライバーのソースを手順全体を通じて提供する。さらなる利点は、ドライバー/テスター差引き産物との比較により、ドライバー対照がテスター特異的なフラグメントの同定を助ける視覚的標準を提供することである。これは、サンプルの1つにユニークな配列を同定するために核酸フィンガープリンティング手順において実施される2つのサンプルのサイドバイサイド比較に類似しており、これまではRDAのためにそのような標準がいかにして作製できるかが不明であったため、RDA法では現在まで使用できなかった選択肢である。
【0039】
ここから実施例によって本発明を説明するが、実施例は本発明の精神と範囲を例示することを意図するものであり、限定を意図しない。
【0040】
実施例
下記に提示する実施例は、本発明のSPAD−RDA法及びそれに続く生成物スクリーニング手順の、血漿からのウイルス配列の単離への適用を詳細に述べる。最初に、既知のウイルスを含む血漿サンプルに関してSPAD−RDAの実証を行い、その後差引き産物を様々な手法によってウイルスの存在に関してスクリーニングした。混合法の有効性を、同じサンプルに適用したときのウイルス配列の単離に関して、Lisitsynの修正していない従来のRDA法と比較する。さらに、これまで未知のウイルスゲノムの配列を単離する際のSPAD−RDA法の有用性を明らかにする。
【0041】
実施例1.HVCサンプル
A.動物の接種(Colonel)
HCV(Hutchinson系統)に感染させた第二継代のチンパンジーからの急性期肝ホモジネートをチンパンジーCH117に静脈内接種した。これによりCH117において慢性感染が生じた。感染後945日目にこの動物から採取したCH117血清(10ml)を、次にチンパンジーCH427に静脈内接種した。これによりCH427において急性感染が起こったが、3ヶ月以内に消散した。初期接種の前及びその後2−3日ごとの間隔でCH427から血漿サンプルを採集した。その間ALTレベルは有意に上昇した(G.G.Schlauderら、J.Clin.Microbiol.29:2175−2179(1991))。
【0042】
B.HCV配列
CH427からのウイルス由来のcDNAの完全なHCVゲノムを配列決定し、HCV Colonelアクセス番号AF290978の下にGenBankに寄託した。
【0043】
実施例2.複雑度の低いアンプリコンと再使用ドライバー対照を使用する対合サンプルの差引きハイブリダイゼーション
A.アンプリコンのための二本鎖DNAの調製
「実験材料及び方法」において上述したアンプリコン手順を用いて、接種後49、54、56、61、66、68、77、及び84日目に採取した、既にRT−PCRによってHCV RNAを含むことが示されている、急性期のCH427血漿サンプルのプールより得た全核酸からテスターアンプリコンを作製した(G.G.Schlauerら、前出)。次に、下記のようにして、接種前のCH427血漿サンプルより得た全核酸からドライバーアンプリコンを調製した。簡単に述べると、市販のキット(例えばUnited States Biochemical[USB],Cleveland,OH,カタログ番号73750より入手可能なキット)を用いて各々の血漿100μlを抽出し、10μgの酵母tRNAを担体として加えた。この核酸混合物をランダムプライム逆転写及びそれに続くランダムプライムDNA合成に供した。簡単に述べると、RNA PCRキット(Perkin Elmer,Norwalk,CT、カタログ番号N808−0017より入手可能)を用いて製造者が指示するように80μlの逆転写反応を実施し、ランダム六量体を使用して、反応物を20℃で10分間、次いで42℃で1時間インキュベートした。その後反応を終了させ、cDNA/RNA二重鎖を99℃で2分間インキュベートして変性させた。反応物に10μlの10×RP緩衝液(100mM NaCl、420mM Tris[pH 8.0]、50mM DTT、100mg/ml BSAを含む)、250pmolのランダムヘキサマー及び13単位のSequenase(登録商標)バージョン2.0ポリメラーゼ(USB、カタログ番号70775より入手可能)を補足して総容量100μlとした。反応物を20℃で10分間、次いで37℃で1時間インキュベートした。フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿後、これらの反応の二本鎖DNA産物を、30μlの反応容量中4単位の制限エンドヌクレアーゼSau3AI(New England Biolabs[NEB]、Beverly,MA,カタログ番号169Lより入手可能)で30分間、供給者によって指示されているように消化した。
【0044】
B.アンプリコンの作製
Sau3AI消化したDNAを上述したように抽出し、沈殿させた。1×T4 DNAリガーゼ緩衝液(NEBより入手可能)で緩衝した30μlの反応容量中で、反応物を50−55℃の乾熱遮断下に置き、その後4℃で1時間インキュベートすることにより、Sau3AI消化産物全体を465pmolのR−Bam24(配列番号:1)と465pmolのR−Bam12(配列番号:2)にアニーリングした。アニーリングした産物に400単位のT4 DNAリガーゼ(NEB、カタログ番号202Sより入手可能)を加えて連結した。16℃で14時間インキュベートしたあと、連結反応物に水20μlを加え、50μlの反応物全体を、PCR SELECT(登録商標)−IIスピンカラム(5 Prime,3 Prime,Boulder,CO,カタログ番号1−829527より入手可能)で供給者が述べているように精製した。スピンカラムからの溶出液に関して、小規模PCRを次のように実施した。簡単に述べると、スピンカラムからの溶出液20μlを、42μlのH2O、18μlの5×PCR緩衝液(335mM Tris、pH8.8、80mM [NH4]2SO4、20mM MgCl2、0.5mg/mlウシ血清アルブミン、及び50mM 2−メルカプトエタノール)、8μlのdNTPストック(各々4mM)、1μl(62pmol)のR−Bam 19C(配列番号:3)及び1μl(62pmol)のR−Bam 19G(配列番号:4)に加えた。
【0045】
GeneAmpR 9600サーモサイクラー(Perkin Elmer,Foster City,CAより入手可能)でPCR増幅を実施した。サンプルを72℃で3分間インキュベートした後、Amplitaq希釈溶液10μl(1×PCR緩衝液中3.75単位のAmplitaq(登録商標)[Perkin Elmer、カタログ番号N808−1012より入手可能])(上記参照)を加えた。72℃で5分間インキュベーションを継続し、連結したアダプターの陥凹3’末端に充填した。サンプルを30サイクル増幅し(95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間)、次いで最後に72℃で10分間伸長した。
【0046】
アンプリコンの作製が成功したこと(すなわち、産物が約100bpから1500bpの範囲である)をアガロースゲルで確認した後、テスター及びドライバーアンプリコンの大規模増幅を実施した。Amplitaqueポリメラーゼを室温で加えたことを除いて、それぞれ小規模でのドライバー及びテスターアンプリコンの調製に関して上述したように、12回の100μlポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び8回の100μl PCRを実施した。反応容量100μlにつき小規模PCR産物からの2μlを大規模アンプリコン生産のための鋳型として使用した。72℃での末端充填段階を省いたことを除いて、さらに20サイクルの増幅のために上述したように熱サイクルを実施した。次にドライバー及びテスターDNAの両方についてのPCR反応物をフェノール/クロロホルムで2回抽出し、イソプロパノール沈殿させ、70%エタノールで洗って、Sau3AIで消化して選択プライマー配列を除去し、再び抽出して沈殿させ、洗浄した。各々10μgを上述したようにスピンカラム精製した。スピンカラムを通して精製したドライバーをドライバー対照(DC)と称し、カラム精製の前のSau3AI消化したドライバーをDと称する。
【0047】
C.アンプリコンのハイブリダイゼーション及び選択増幅
テスター(T)及びDCからのスピンカラム溶出液1μgを別々に、上述したようにJ−Bam 24(配列番号:5)及びJ−Bam 12(配列番号:6)に連結した。反応の完了後、サンプルを67℃で10分間インキュベートしてリガーゼ活性を排除した。最初の差引きハイブリダイゼーションのために、Dアンプリコン(40μg)をJ−Bamアダプターセットに連結したDC(0.5μg)及びT(0.5μg)アンプリコンの両方に加えて、それぞれDC−1及びD/T−1混合物(80/1比)を形成した。DC−1及びD/T−1をフェノール/クロロホルム抽出し、エタノール沈殿させて上述したように洗い、DNAをEE×3緩衝液4μl(30mM EPPS、20℃でpH8.0[Sigma,St.Louis,MOより入手可能]、3mM EDTA)に再懸濁し、鉱油40μlを重ねた。熱変性(99℃で3分間)後、5M NaCl 1μ(l)を加え、DNAを67℃で22時間ハイブリダイズさせた。
【0048】
水相を新しい試験管に移し、TE緩衝液95μl(10mM Tris、pH7.4及び1mM EDTA)をサンプルに加えて混合した。希釈したハイブリダイゼーション混合物11μlを293.7μlのH2O、88μlの5×PCR緩衝液(上記)、35.2μlのdNTPストック(各々4mM)及び3.3μl(16.5単位)のAmplitaq(登録商標)ポリメラーゼに加えた。この溶液を2つのアリコート(各々196μl)に分け、72℃で5分間インキュベートして、連結したJ−Bam 24プライマーによって創造された5’突出末端に充填した。試験管ごとにJ−Bam 24 4μl(配列番号:5、248pmol)を加え、各々200μlの反応物を72℃で2つのアリコート(各々100μl)に分けた。サンプルを10サイクル(95℃で30秒間、70℃で1分間)増幅し、次いで最後に72℃で10分間伸長した。DC−1とD/T−1を別々にプールし、2回フェノール/クロロホルム抽出して、イソプロパノール沈殿させ、70%エタノールで洗って、その後34μlのH2Oに再懸濁した。
【0049】
大豆ヌクレアーゼ(MBN)により、次のようにして一本鎖DNAを除去した。簡単に述べると、増幅したDNAを、供給者が述べているように40μlの反応物中、20単位のMBN(NEB、カタログ番号250Sより入手可能)で消化した。160μlの50mM Tris、pH8.9をMBN消化物に加え、酵素を99℃で5分間不活性化した。41μlのMBN消化したDNAを242.9μlのH2O、82μlの5×PCR緩衝液(上記)、32.8μlのdNTPストック(各々4mM)及び3.1μl(15.5単位)のAmplitaq(登録商標)ポリメラーゼならびに8.2μlのJ−Bam 24(配列番号:5、508pmol)に加えた。この溶液を4つのアリコート(各々100μl)に分け、17サイクル(95℃で30秒間、70℃で1分間)増幅し、次いで最後に72℃で10分間伸長した。増幅したDC−1及びD/T−1をプールし、生成物をアガロースゲル電気泳動によって視覚化した。プールしたサンプルをフェノール/クロロホルムで2回抽出し、イソプロパノール沈殿させて、上記のように洗い、その後H2Oに再懸濁した。増幅したDNA(40μg)をSau3AIで消化し、上述したように抽出して、沈殿させた。ペレットを各々26μlのH2Oに再懸濁した。各々10μgを上述したようにスピンカラム精製した。
【0050】
次に、2回目のラウンドの差引きにおけるドライバーとして使用するために大規模DC−1試料を調製した。特に、DC−1大豆ヌクレアーゼ消化物(162μl)を960μlのH2O、324μlの5×PCR緩衝液(上記)、129.6μlのdNTPストック(各々4mM)及び12.25μl(15.5単位)のAmplitaq(登録商標)ポリメラーゼならびに32.4μlのJ−Bam 24(配列番号:5、2000pmol)に加えた。この溶液を16のアリコート(各々100μl)に分け、上述したように17サイクル増幅した。上述したように反応物をプールし、2回フェノール/クロロホルム抽出して、イソプロパノール沈殿させ、洗って、H2Oに再懸濁し、Sau3AIで消化して、再び抽出し、沈殿させた。最終的なペレットを256μlのH2Oに再懸濁した。
【0051】
D.その後のハイブリダイゼーション/増幅段階
先のハイブリダイゼーション/選択増幅からのスピンカラム精製したDNA(DC−1及びD/T−1)1μgを、前述したようにN−Bamアダプターセット(配列番号:7及び配列番号:8)に連結した。2回目の差引きハイブリダイゼーションのために、先にN−Bamアダプターセットに連結したDC−1(50ng)及びD/T−1(50ng)の両方にDC−1ドライバー(40μg)を加えて、それぞれDC−2及びD/T−2混合物(800/1比)を形成した。ハイブリダイゼーションを67℃で90時間実施したこと、使用したPCRプライマーがN−Bam 24(配列番号:7)であったこと、熱サイクルの際の伸長温度が72℃であり、最終増幅(MBN消化後)が20サイクルであったことを除いて、上述したようにハイブリダイゼーションと増幅の工程を反復した。上記のDC−1ドライバーに類似した大規模DC−2試料を、3回目のラウンドのドライバーとして使用するために調製した。
【0052】
先のハイブリダイゼーション/選択増幅からのスピンカラム精製したDNA(DC−2及びD/T−2)1μgを、前述したようにF−Bamアダプターセット(配列番号:9及び配列番号:10)に連結した。3回目の差引きハイブリダイゼーションのために、F−Bamアダプターセットに連結したDC−2(4ng)及びD/T−2(4ng)の両方にDC−2ドライバー(40μg)を加えて、それぞれDC−3及びD/T−3混合物(104/1比)を形成した。ハイブリダイゼーションを67℃で21時間実施したこと、使用したPCRプライマーがF−Bam 24(配列番号:9)であったこと、熱サイクルの際の伸長温度が72℃であり、最終増幅(MBN消化後)が23サイクルであったことを除いて、上述したようにハイブリダイゼーションと増幅の工程を反復した。上記のDC−1ドライバーに類似した大規模DC−3試料を、4回目のラウンドのドライバーとして使用するために調製した。
【0053】
先のハイブリダイゼーション/選択増幅からのスピンカラム精製したDNA(DC−3及びD/T−3)1μgを、前述したようにS−Bamアダプターセット(配列番号:11及び配列番号:12)に連結した。4回目の差引きハイブリダイゼーションのために、S−Bamアダプターセットに連結したDC−3(400pg)及びD/T−3(400pg)の両方にDC−3ドライバー(40μg)を加えて、それぞれDC−4及びD/T−4混合物(105/1比)を形成した。ハイブリダイゼーションを67℃で94時間実施したこと、使用したPCRプライマーがS−Bam 24(配列番号:11)であったこと、熱サイクルの際の伸長温度が72℃であり、MBN消化後の最終増幅段階が27サイクルであったことを除いて、上述したようにハイブリダイゼーションと増幅の工程を反復した。
【0054】
E.相違生成物のクローニング
D/T−4には存在するがDC−4には存在しないと思われる、4回目のラウンドの差引きからの3つのバンドを、「実験材料及び方法」、前出において述べたように2%アガロースゲルから切り出し、GENECLEAN IIキット(BIO 101、San Diego,CA、カタログ番号1001−400)を用いて供給者が指示するように精製した。先にSau3AIで消化したこれらの相違生成物を、Ready−To−Go連結キット(Pharmacia,Piscataway,New Jersey、カタログ番号27−5260−1)を用いて供給者の指示に従ってpUC18のBamHI部位にクローニングした。連結反応物0.5μlを使用して、供給者が指示するように大腸菌(E.coli)コンピテントXL−1 Blue細胞(Stratagene,La Jolla,CA,カタログ番号200236より入手可能)を形質転換した。アンプリコン(150μg/ml)を補足したLB平板上に形質転換混合物を置き、37℃で一晩インキュベートした。生じたコロニーの36個を液体培養中で増殖させ、Wizard 373 DNA Purification System(Promega,Madison,WI,カタログ番号A7030より入手可能)を用いて指示されているようにプラスミドミニプレップDNAを調製した。
【0055】
上述した4回目のラウンドの産物からの3つのSau3AIフラグメントのクローニングに加えて、4回目のラウンドからの産物群全体(切断していない)50ngを、pT7Blue T−Vector Kit plus Ligase(Novagen,Madison,WI,カタログ番号6983−1より入手可能)を用いて供給者が指示するようにPCR産物クローニングベクターに連結した。連結産物1μlを使用して、上記のように大腸菌コンピテントXL−1 Blue細胞を形質転換し、上述したように生じたコロニーから別の36個のプラスミドミニプレップを調製した。
【0056】
実施例3.HCVクローンの同定とDNA配列分析
一般に、実施例2からの72のミニプレップすべてのドットブロットを調製し、HCVゲノムプローブに対してハイブリダイズさせた。簡単に述べると、各々のプラスミド試料0.5μlを、供給者が指示するようにHybond−Nフィルター(Amersham,Arlington Heights,IL,カタログ番号RPN2020Bより入手可能)にスポットし、変性して、中和し、UV架橋して、真空下で熱乾燥した。当該技術において既知であり、記述されているように、ドットブロットをプレハイブリダイズさせ、HCVゲノム全体をカバーする32P−標識プローブとハイブリダイズさせ、洗浄し、暴露した。
【0057】
HCV挿入断片に関して陽性のクローン(43のうち13)のサブセットを、当該技術において周知のように(例えば、Muerhoffら、J.Virol.71:6501−6508(1997)参照)ABI自動シークエンシング法を用いたDNA塩基配列決定によってさらに分析した。これらの配列は5つの非オーバーラップコンセンサス群に分けられ、その各々をBLASTNアルゴリズム(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−410[1990])を用いてGenBankデータベースで検索した。BLASTN検索(Wisconsin Sequence Analysis Package,Genetics Computer Group,Madison,WI;デフォールトパラメーター(すなわちワードサイズ=11、マッチ=1、ミスマッチ=−3、ギャップウエイト=10、レングスウエイト=1))は、5群すべてについてC型肝炎ウイルスとの高度の配列類似性を明らかにした。コンセンサス配列は、CH427 HCV GenBank配列から予想された、次の5つのSau3AIフラグメントと相同であった:塩基3515−3955、(2)3952−4161、(3)6470−6683、(4)6680−6867、及び6864−7101。これらの配列(合計1285ヌクレオチド)はCH427 HCVゲノムの13.7%を含んでいた。
【0058】
CH427 HCV配列内に存在する25のSau3AIフラグメントのうちで、4つが選択プライマー配列と完全に適合性であった(すなわち、フラグメントの両端がいずれかの選択プライマーの3’末端と正しく対合する)。これら4つのうちの1つはおそらくその大きさ(1800bp)ゆえに効率的に増幅されず、そのため最初のアンプリコンでは表されないであろうとの理論が立てられた。これによりSPAD−RDAによって単離されると予測される3つのフラグメントが残り、そのうち2つが得られた(67%)。本発明の方法によって単離された残りの3つのSau3AIフラグメントは予測されなかったものであり、選択プライミングが100%特異的ではなかったことを示唆すると考えられる。しかしこれらの各々について、一方の末端は選択プライマーと適合性であり(12のうち3、又は25%)、両方の末端がいずれも適合性でない残りの9つのフラグメントは単離されなかった(0%)。それ故、Sau3AIフラグメントの選択プライミングによるアンプリコン複雑度の低下は有効であったと思われる。これに対し、アンプリコンがBglII、BamHI又はHindIIIフラグメントから成る場合には[Lisitsynら、前出(1993a)が述べているように]、HCVフラグメントは単離されなかったであろう。CH427配列は、これらの酵素認識部位の各々のうち1つ(BamHI、HindIII)又は2つ(BglII)だけを含むことが知られており、予測されるフラグメントのいずれも増幅可能ではない。
【0059】
実施例4.複合アンプリコンと単一ドライバーを使用する対合サンプルの差引きハイブリダイゼーション
A.アンプリコンのための二本鎖DNAの作製
D及びTについての二本鎖DNAを、実施例2において上述したように作製した。
【0060】
B.アンプリコンの作製
3つの例外を除いて、D及びTアンプリコンを実施例2において上述したように作製した。第一に、小規模と大規模アンプリコンの両方においてPCRプライミングのためにR−Bam 24(配列番号:1)をPCR100μlにつき124pmolの濃度で(先に実施例2で使用した濃度である、R Bam 19CとR Bam 19Gの各々62pmolではない)使用した。第二に、大規模Dアンプリコン試料は16×100μl PCR反応物から成った(先に実施例2で述べたように12ではない)。第三に、TだけをJ Bamアダプターセットに連結した(先に実施例2で実施したように、DC差引きを平行して実施しなかった)。
【0061】
C.アンプリコンのハイブリダイゼーションと選択増幅
各々ラウンドのためのドライバーがDであった(先のラウンドからのDC差引き産物ではない)ことを除いて、実施例2において上述したように4回のラウンドの差引きハイブリダイゼーションを実施した。
【0062】
実施例5.RDA法の比較
当該技術において記述されているような(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)参照)標準手順に従ってサザンブロットハイブリダイゼーションを実施し、ここで述べるSPAD−RDAの性能を、これまでにLisitsynら、Science 259:946−951(1993)によって記述されているRDA法の性能と比較した。簡単に述べると、Sau3AI消化したドライバー、テスター及び4回のラウンド全部の差引きからの産物の400−500ng DNAを3つの別々の2%アガロースゲルで電気泳動した:2つの異なる方法について各々1つのゲル及びサイドバイサイド比較のための1つのサマリーゲル。フィルターに写した後、ブロットをプレハイブリダイズし、HCVゲノム全体をカバーする32P−標識プローブとハイブリダイズして、洗浄し、暴露した。
【0063】
両方の方法について、特に後期のラウンドにおいて、HCVプローブにハイブリダイズする配列の増加が認められた(図3)。しかし、従来のRDA産物で見られたエチジウムブロマイド(EtBr)染色バンドのいずれもが、HCVハイブリダイズ配列に対応するとは思われず、そのような配列は4回のラウンドの濃縮後もまだまれであることを示唆した。これに対し、SPAD−RDA法で認められた3つのEtBr染色バンドはHCVプローブにハイブリダイズし、それらが濃縮工程の主要産物であることを示唆した。さらに、3つのEtBrバンドすべてが、ドライバー対照と比較してテスター/ドライバー差引きにユニークであり、プローブハイブリダイゼーションデータがない場合でも、HCV配列が容易に単離されるであろうことを示した。
【0064】
実施例6.複雑度の低いアンプリコンと再使用ドライバー対照を使用する非対合サンプルの差引きハイブリダイゼーション
病原菌を単離するための従来のRDAの主たる制限の1つは、テスターとドライバーアンプリコンの調製のために対合核酸サンプルを入手する必要があることである。ヒトに感染する病原体の場合、確立された動物モデルがなければこれらの対合サンプルはほとんど入手不能である。このように、従来のRDA法を実施するとき2つの個体からのサンプルを利用しようとするとき、同一アンプリコンを調製することは実質的に不可能である。それ故、単離された配列は2つの個体間の多型性相違を表わすであろう。実際に、RDAについての最初の記述は、2つの関連個体間での多型性相違の単離を明らかにした(Lisitsynら、前出(1993))。
【0065】
アンプリコンの複雑度を有意に低下させることにより、2つの別個の核酸ソースから実質的に同一のアンプリコンを調製することが可能になると考えられた。それ故、一連の差引きと増幅サイクルを実施したとき、単離される配列は、これまで従来のRDAを用いて得られると考えられたような多型性変異体ではなく、2つのソース間の真正の相違を表わすであろう。さらに、テスターとドライバーアンプリコン間のこれらのユニークな相違についての濃縮レベルを高めるために、実施例2で述べたようにドライバーを再使用した。
【0066】
A.アンプリコンのための二本鎖DNAの作製
上記の「実験材料及び方法」において述べた手順を用いて、5名の健常ドナーからの等容量の血漿を合わせて得たヒト血漿プール50μlからの全核酸を使用してドライバーアンプリコンを調製した。各々のドナーは、あらかじめPCR及び免疫測定法によりA、B、C、D、E肝炎、及びGBV−A、−B及び−C陰性であることが示されていた。2つの方法のいずれかで血漿全核酸からテスターアンプリコンを調製した。第一に、RT−PCRにより約1×107ゲノム/mlの濃度でHCV RNAを含むことが示された個人、患者LGから得たヒト血漿50μlより核酸を抽出した。第二に、LG血漿5μlを上述した正常ヒト血漿プール45μlに希釈することによって得たヒト血漿50μlより核酸を抽出した。この第二のテスターアンプリコンは、1×106HCVゲノム/mlの当量を表わすと理論付けられた。第一及び第二の鎖のcDNA合成のために使用した抽出方法及び手順は実施例2で述べたとおりであった。
【0067】
B.アンプリコンのハイブリダイゼーションと選択増幅
アンプリコンのハイブリダイゼーションと選択増幅のために使用した方法と手順は、いくつかの例外を除いて実施例2に述べられている。例えば、テスターとドライバーの比率は2、3及び4回目のラウンドの差引きハイブリダイゼーション反応について同じであったが、使用したドライバー合計は40μgではなく35μgであった(12.5%少ない)。適切な比率を維持するために、使用するテスターの量も実施例2に比べて12.5%低下させた。また、ハイブリダイゼーションの長さを手順の各々の差引き要素について22時間に維持した。
【0068】
C.相違産物のクローニング
3回目のラウンドの差引き/増幅からの2つのDNAフラグメントが、テスター中には存在するがドライバー対照には存在しないと思われることが認められた。これらのフラグメントをpUC18のBamHI部位に連結し、次に、先に実施例2で述べたように、これを使用してコンピテントXL−1 Blue細胞を形質転換した。各々の形質転換の36コロニーを液体培養で増殖させ、そこから、実施例2において実施したようなミニプレップ分析によってプラスミドを単離した。2つのフラグメントの大きい方は、制限酵素EcoRIとXbaIの組合せでpUC18から遊離させたとき約475bpであり、分析した36クローンのうち22において存在した。2つのフラグメントの小さい方は、EcoRIとXbaIでpUC18から遊離させたとき約275bpであり、36クローンのうち18において存在した。
【0069】
D.HCVクローンの同定とDNA塩基配列分析
実施例3で述べたように、72のプラスミドDNAの各々を実施例3で述べたようにナイロン膜に写し、HCVゲノム全体を表わす32P−標識プローブとハイブリダイズさせた。実施例5(c)で上述した大きい方の挿入断片を含む22クローンのうちで、16がHCVプローブとハイブリダイズし、一方、実施例5(c)で述べた小さい方の挿入断片を含む18クローンのうち2つがハイブリダイゼーション陽性であった。ハイブリダイゼーション陽性であった大きい挿入断片クローンの6つ、ならびに小さい挿入断片クローンの2つを、実施例3で述べたような配列分析によって評価した。BLASTN検索(Wisconsin Sequence Analysis Package,Genetics Computer Group,Madison,WI;デフォールトパラメーター(すなわちワードサイズ=11、マッチ=1、ミスマッチ=−3、ギャップウエイト=10、レングスウエイト=1))は、大きいクローンが互いに同一であり、基本型ゲノム、HCV−1(GenBank番号M62321)の塩基6469−6912から誘導されることを明らかにした。2つのより小さなクローンも互いに同一であり、HCV−1基本型ゲノムの塩基6912−7103を表わした。この分析から、2つの非対合サンプルの複雑度を十分に低下させ、プールサンプルをドライバーとして使用することにより、差引きハイブリダイゼーションのために本質的に同一であるアンプリコンを調製できるであろうと結論された。このようにして、2つの核酸ソース間の真正の相違を表わす配列を単離することができる。
【0070】
実施例7.新規病感染の抗原性領域をコードするcDNAクローンの免疫単離
これらの実験の目的は2つあった:(i)適切なベクターにクローニングして発現ライブラリーを作製したとき、感染体の免疫反応性蛋白質ドメイン(エピトープ)をコードするRDA由来のアンプリコンを免疫スクリーニングによって単離することができるかどうかを判定すること、そして(ii)RDAが連続的なラウンドの工程においてこれらの配列を実際に濃縮したかどうかを判定すること。上記を調べるため、実施例2で述べたように、あらかじめ4回のラウンドのRDAの各々から作製したアンプリコンと、差引きしていないテスターアンプリコンをλgt11にクローニングした。HCVによってコードされる免疫反応性エピトープを単離する試みとして、生じたライブラリーをチンパンジーCH427からの回復期血清を用いて免疫スクリーニングした。
【0071】
λgt11において代表発現ライブラリーを構築するためには、RDA由来のアンプリコンが3つの正リーディングフレームの各々においてライブラリーに提示されねばならないと判定された。さらに、アンプリコンは酵素Sau3AIで制限エンドヌクレアーゼ消化され、λgt11内のクローニング部位はEcoRI消化したDNAフラグメントだけを受け入れるので、アンプリコンは、3つの正リーディングフレームの各々における発現を可能にし、且つEcoRI制限エンドヌクレアーゼ認識部位を提供するリンカー/アダプターの連結を必要とした。表2に示すリンカー/アダプターは、共にアニーリングして二本鎖アダプターを形成したとき、Sau3AI適合性5’突出(5’−GATC...)及びEcoRI制限エンドヌクレアーゼ認識部位を持つように設計した。
【0072】
【表2】
【0073】
3セットのアダプター(BE1F/R、BE2F/R、BE3F/R)を3つの別々の反応においてアンプリコンに連結した。リンカー適応アンプリコンを過剰のリンカーから精製して、次にλgt11アームに連結し、それによって各々が3つの可能な正(センス)リーディングフレームの1つを表わす3つの別個のライブラリーを作製した。各々のライブラリーから等しい数の組換えファージを組み合わせて最終的なライブラリーを作製した。
【0074】
A.cDNAライブラリーの構築
1.リンカー/アダプターの調製:表2に示す6個の合成一本鎖オリゴヌクレオチドの各々について100μMの保存溶液(水中)を調製した。対応する正及び逆プライマー対20μlを混合し、65℃で10分間加熱した。次に試験管を10分間37℃に移し、その後、使用前10分間にわたって室温(20−23℃)に冷却させた。
【0075】
2.アンプリコンの作製:4回のラウンドのRDAの各々からのアンプリコンを精製して、Sau3AI消化後に存在していた可能性のある残留RDA−アダプターを除去し、フェノール:クロロホルム抽出して、エタノール沈殿させた。テスター、D/T−1、D/T−2、D/T−3、D/T−4アンプリコン500ngを、GeneCleanキット(Bio−101,San Diego,CA)を用いて製造者の指示に従って精製した。約200bp未満の長さの二本鎖DNAフラグメントはキット中のガラスミルク樹脂(glass milk resin)に有効に結合しないので、アンプリコン内に存在する残留RDA−アダプターは除去されるはずである。DNAを水300μl中でガラスミルク樹脂から溶出した。各サンプルを3つの等しい部分(100μl)に分け、標準的な方法を用いて酢酸ナトリウムと100%エタノールで沈殿させた。この段階での収率はほぼ100%と推定されたので、各々の試験管は約166ngのDNAを含んでいた。
【0076】
3.3つのリーディングフレームリンカー/アダプターの連結:精製したRDAアンプリコンの各々(166ng)を3つのリーディングフレームアダプターの各々に連結した。従って、15の別個の反応物を調製した。沈殿したDNAを水2.5μlに懸濁し、その後次の成分を加えた:1μlの10×リガーゼ緩衝液(200mM Tris−HCl pH7.6、50mM MgCl2)、0.5μlの100mM DTT、0.5μlの10mM ATP、0.5μlのT4 DNAリガーゼ(2−3ワイス単位)、5μlの100μMアニーリングしたリーディングフレーム1、2又は3リンカーアダプター。最終容量は10μlであった。反応物を4℃で約16時間インキュベートした。次に反応物を65℃でインキュベートしてリガーゼを不活性化した。その後サンプルをフェノール:クロロホルム抽出し、エタノール沈殿させた。
【0077】
4.EcoRI消化:上記の段階4からのドライペレットを水85μlに再懸濁し、次に最終容量100μl中37℃で3−4時間、制限エンドヌクレアーゼEcoRI(100単位)で消化した。適応アンプリコンをλgt11アームに連結する前に、消化の際に放出されたEcoRIフラグメントを除去しなければならなかった。それ故、上述したようなGeneClean法によってサンプルを精製した。DNAを水10μl中で溶出した。
【0078】
5.λgt11アームへの連結:リンカー適応させ、精製したアンプリコンを、最終容量15μl中、λgt11 EcoRI−CIAP処理ベクターキット(Stratagene,San Diego,CA)を用いて製造者が指示するようにλgt11アームに連結した。連結反応物を16℃で約16時間インキュベートした。反応混合物中に挿入断片が含まれない陰性対照の連結及び製造者によって提供された挿入断片を含む陽性対照の反応も実施した。
【0079】
6.パッケージングとライブラリーの力価測定:GigaPack III Goldパッケージングエクストラクト(Stratagene,San Diego,CA)を使用して製造者が指示するように組換えファージをλファージにパッケージングした。各々の連結4μlをパッケージングのために使用した。生じたライブラリー(0.5ml)を、X−GAL及びIPTGの存在下に大腸菌Y1090r−細胞(Stratagene,La Jolla,CA)を用いて力価測定し、感染と平板培養のための標準方法を使用して組換えファージの青色−白色選択を可能にした。例えば、J.Sambrookら、前出参照。力価測定の結果と適切なプールを作製するために使用した各ライブラリーの容量を表3に示す。プールライブラリーを創造するために使用した各々の対応するリーディングフレームライブラリー(例えばテスター、D/T−1、等々からの)の容量は次のようにして算定した:185,000の組換え体(すなわち挿入断片を含むファージ)を生じるためには、組換え効率を次のように補正しなければならない:
【0080】
【数1】
【0081】
D/T−1に関しては、各フレームライブラリーについてプールする挿入断片を持つクローンの総数は、任意に171,000に設定した。テスター−フレーム1ライブラリーに必要な容量は2.42mlであり、0.5mlしか使用可能ではなかったので、さらなるパッケージング反応を実施して185,000の組換え体を入手した(データは示していない)。
【0082】
【表3】
【0083】
フレーム1、2及び3ライブラリーをプールした後、最終的なライブラリーを再度力価測定し、上述したように平板培養した。これらの結果を表4に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
B.λgt11ライブラリーの免疫スクリーニング
組換えファージの免疫スクリーニングのために使用した手順は、YoungとDavisが述べた方法に基づいて(R.A.YoungとR.W.Davis,PNAS 80:1194−1198(1983))、下記に述べるような修正を加えた。使用した一次抗血清はチンパンジーCH427からの回復期血清(接種後28週目)であった(実施例1参照)。抗体と大腸菌蛋白質の非特異的相互作用を低減するため、抗血清を使用前に大腸菌抽出物に前吸着させ、その後、1%BSA、1%ゼラチン、及び3%Tween−20(登録商標)を含むTris緩衝食塩水(TBS)、pH7.5(「遮断緩衝液」)中で1:500に希釈した。表3で述べた5つのライブラリーの各々からの75,000組換えファージを大腸菌株Y1090r−(Stratagene,La Jolla,CA)のローンに接種し、37℃で3時間半増殖させた。次にIPTG(10mM)で飽和させたナイロンフィルターを平板に重ね、平板を42℃で3時間半インキュベートした。フィルターを遮断緩衝液中22℃で1時間遮断し、その後一次抗血清(1:500希釈)中4℃で16時間インキュベートした。一次抗血清を取り出し、その後のラウンドのプラーク精製のために保存した。0.1%Tween−20(登録商標)を含むTris食塩水(TBS−Tween)中でフィルターを4回洗った。次にアルカリホスファターゼヤギ抗ヒトIgGコンジュゲート(0.1g/ml)(Kirkegaard and Perry,Gaithersburg,MDより入手可能)を含む遮断緩衝液中、22℃で60−120分間インキュベートし、TBS−Tweenで3回、次いでTBSで1回洗った。BCIP/NBT Color Developmentキット(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)を使用して製造者が指示するように免疫反応性クローンを視覚化した。
【0086】
免疫反応性クローンをもとの平板から単離し、その後上述した方法を用いて2回目のラウンドの免疫スクリーニングに供した。2回目のラウンドの免疫スクリーニング後も免疫反応性のままであるクローンの挿入断片を、λgt11正及び逆プライマーを使用した挿入断片のPCR増幅によって単離した。2%アガロースゲルを通しての電気泳動によってPCR産物を分離し、その後QIAGEN Gel Extraction Kit(Qiagen,Chatsworth,CA)を用いて切り出して精製した。精製PCR産物を、ABI Sequencing Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer,Norwalk,CT)とλgt11正及び逆プライマーを使用してABI Model 373 DNA Sequencerで直接配列決定した。配列が、チンパンジーCH427に感染するHCV菌株の配列に由来することが示されたクローンの数を表5に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
配列決定した36クローンについて、それらすべてがCH427−HCVゲノムの6680−6867位からのNS5遺伝子のセグメント(GenBankアクセス番号AF290978)と同一の配列を含むことが分析で明らかになった。Sau3AI制限フラグメントエンドヌクレアーゼ部位がこれらの2つのフランキング位置で認められること、そしてこの同じフラグメントがD/T−4差引き産物の配列分析において同定されたこと(実施例3参照)は注目すべきである。さらに、表5に示すデータより、このフラグメントが1回目又は2回目のラウンド由来のライブラリーに比べて3回目のラウンドの選択増幅/差引き(D/T−3)からのライブラリーにおいてより高いコピー数で提示されたことから、RDA手順がこのフラグメントを濃縮したことが明らかである。残念ながら、最初のテスターアンプリコンからはHCV由来の免疫反応性クローンが得られなかったので、このフラグメントに関して何倍の濃縮が達成されたかを正確に測定することは不可能であった。しかし、RDA由来のアンプリコンからλgt11において発現ライブラリーを作製する可能性が確立された。また、そのような発現ライブラリーから感染体に由来するエピトープをコードする配列を単離できることが確立された。
【0089】
実施例8.修正RDAによって達成されるテスター特異的配列の濃縮の度合の測定
テスター特異的配列に関して得られる濃縮の度合を正確に測定にするため、λgt11において調製したライブラリー(実施例7参照)を、次のようにして、HCV−colonelゲノム全体を含む3個のcDNAプローブを用いるサザンハイブリダイゼーションによってスクリーニングした。
【0090】
修正RDAの各々のラウンドについて得られたアンプリコンの各々から作製したλgt11ライブラリー(表4参照)を使用して、確立された周知の方法に従って大腸菌細胞を感染させた。テスターならびにD/T−1、D/T−2及びD/T−3ライブラリーについては25,000pfuを塗布した。D/T−4ライブラリーに関しては、予備実験で、ハイブリダイズ可能なプラークの密度があまりに高いため正確な計数が不可能であることが明らかになったため、ライブラリーを平板当り200及び1000pfuで再接種した。各々のライブラリー(すなわちD/T−1、2、3及び4)のデュープリケートフィルターからデュープリケートフィルターリフトを調製し、フィルターを、標準的な方法を用いてHCVゲノム全体を含む3つの32P−放射性標識cDNAとハイブリダイズした。高ストリンジェンシーでフィルターを洗い、x線フィルムに暴露したあと、デュープリケートフィルター上のハイブリダイズしたプラークの数を計数した。結果を表6に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
表6に示す結果は、修正RDA手順が各々の連続するラウンドの増幅/差引きでHCV特異的配列を濃縮したことを明らかにしている。4回目のラウンドで、HCV配列は、テスター(濃縮していない)ライブラリーでの554クローンごとに1個に比べて、ライブラリー内の3クローンにつき1個において存在した。これは276倍のHCV配列の濃縮を表わす。それ故、これらのデータは、修正RDA手順がテスター由来の配列の極めて有意の濃縮をもたらすことの定量的証拠を提供している。
【0093】
実施例9.ディファレンシャルハイブリダイゼーションを用いたテスター由来配列の単離
上記の実施例7で明らかにしたように、感染体から誘導される配列を単離するために、RDA及びそれに続くテスター由来のアンプリコンを含む発現ライブラリーの免疫スクリーニングを利用することが可能である。そのような配列を単離するためのもう1つの方法は、ディファレンシャルハイブリダイゼーションとして知られる方法を利用する(図4参照)。(例えば、J.Sambrookら、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”、第2版、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)参照)。このシステムは、RDA濃縮したテスターアンプリコンからのライブラリーの作製、及びそれに続いて、テスター及びドライバー対照由来のアンプリコンをプローブとして使用する、同じテスターライブラリー平板から得たデュープリケートフィルターのサザンハイブリダイゼーションを含む。テスターにおいてのみ認められる、ライブラリー内に存在する配列は、テスターアンプリコンプローブとハイブリダイズするが、ドライバーアンプリコンプローブとはハイブリダイズしない;テスターとドライバーに共通する配列は両方のプローブとハイブリダイズする。従って、テスター特異的であり、潜在的に新規感染体に由来する、あるいはおそらく感染及び/又は疾患の際に上方調節される遺伝子に由来する配列を単離することができる。
【0094】
3回目のラウンドの修正RDAから誘導されるλgt11ライブラリー(D/T−3;表4)を次のようにしてディファレンシャルハイブリダイゼーションのために使用した。5,000プラークを上述したように4つの大きなNZY寒天平板の各々に塗布した。次にファージDNAをナイロンフィルターに固定し、変性して、中和し、UV架橋して、80℃の真空乾燥器で30分間乾燥した。ファージDNAのデュープリケート「リフト」を各々の平板から作製した。その後フィルターを放射性標識プローブテスター及びドライバーアンプリコンとハイブリダイズさせた。プローブは、Sau3AIで消化してリンカー/プライマー配列を除去し、次いでG50セファローススピンカラムを用いてリンカー/プライマーDNAフラグメントを除去しておいたDC−3又はD/T−3 DNA 25ngから調製した。プローブはランダムプライマーを使用して放射性標識し、その後標準的な方法を用いて組み込まれていない32P−dATPを除去した。一組のデュープリケートフィルターをストリンジェント条件下でテスタープローブとハイブリダイズして洗い、他方のセットはドライバープローブとハイブリダイズした。フィルターをx線フィルムに暴露し、デュープリケートフィルターからのオートラジオグラフを比較した。テスタープローブとハイブリダイズしたがドライバープローブとはハイブリダイズしなかったプラークをその後の試験のために採取した。合計12個のプラークを単離し、2回目のラウンドのディファレンシャルハイブリダイゼーションスクリーニングに供した。
【0095】
2回目のラウンドのスクリーニングから、合計4個のプラークがテスタープローブとハイブリダイズすることが示された。これら4個のプラーク(クローン)を平板から単離し、λgt11正及び逆プライマー(Stratagene,La Jolla,CA)を用いて挿入配列を増幅した。2%アガロースゲルを通しての電気泳動によってPCR産物を分離し、その後QIAEX Gel Extraction Kit(Qiagen,Chatsworth,CA)を用いて切り出し、精製した。精製PCR産物を、ABI Sequencing Ready Reaction Kit(Perkin−Elmer)とλgt11正及び逆プライマーを使用してABI Model 373 DNA Sequencer(PE Applied Biosystems,Foster City,CA)で直接配列決定した。生じた配列の分析は、4個のクローンすべてがHCV−CH427の437塩基対Sau3AIフラグメント(ヌクレオチド3514−3951より)に対応する挿入DNA配列を持つことを明らかにした。従って、修正RDA濃縮λgt11ライブラリーのディファレンシャルハイブリダイゼーションを通して、HCV由来のクローンが単離された。
【0096】
実施例10.SPAD−RDAを使用した非対合サンプルの差引きハイブリダイゼーションによる新規ウイルスの単離
非対合サンプルを使用したSPAD−RDA手順の有用性を実施例6において明らかにした。この戦略を、HCVに感染しているが、同時に、同定されていないさらなるウイルスを有することが疑われるチンパンジー(CH19)から誘導したサンプルに適用した。あらかじめ、ウイルス様粒子を含むヒトドナーからの血清を連続的に6頭のチンパンジーに通した。これらのチンパンジーの血漿プールをCH19に接種し、急性消散性肝炎を生じさせた。
【0097】
アンプリコンのための二本鎖DNAの作製:上記の「実験材料及び方法」で述べた手順を用いて、6頭の正常チンパンジーから等しい容量の血漿を合わせて得た血漿プール100μlからの全核酸を使用してドライバーアンプリコンを調製した。CH19テスターアンプリコンは血漿全核酸の2つのプール(感染後0−30日及び感染後36−83日)から調製した。各々のテスタープール100μlを個々に小規模アンプリコン段階を通して処理し、その時点で各々の等容量を合わせて、単一の大規模テスターアンプリコンを作製するために使用した。第一及び第二の鎖のcDNA合成のために使用した抽出の方法と手順は実施例2で述べたとおりであった。
【0098】
アンプリコンのハイブリダイゼーションと選択増幅:アンプリコンのハイブリダイゼーションと選択増幅のための方法と手順は、次の例外を除いて実施例2に述べられている:1)CH427 HCVゲノム全体を表わすSau3AI切断cDNA0.5−1.0μgを、各々のラウンドの差引きの前にドライバー40μgに加えた。これは、CH19サンプル中に存在することがわかっているHCVがSPAD−RDAによって濃縮される可能性を低下させ、それによって、おそらくサンプル中に存在するであろう他のウイルスが検出される可能性を高めるために実施した。2)ハイブリダイゼーションの長さを手順の各々の差引き成分について21−22時間に維持した。3)3ラウンドだけの差引きを実施した。
【0099】
相違産物のクローニング:3回目のラウンドの差引き/増幅からの多数のDNAフラグメントがテスター中には存在するがドライバー対照には存在しないと思われた。これらのフラグメントをpT7Blueクローニングベクターに連結し、次にそれを使用して実施例2で述べたようにコンピテントXL−1 Blue細胞を形質転換した。各々の形質転換の12−18コロニー(合計72)を液体培養中で増殖させ、そこからプラスミドを単離して、実施例2で述べたようにミニプレップ分析した。挿入断片のサイズは約350塩基対から900塩基対までの範囲であった。
【0100】
HCVクローンの同定とDNA塩基配列分析:実施例3で述べたように、72個のプラスミドDNAのうち65個を配列分析によって評価した。これらの配列は13のコンセンサス群に分けられた。BLASTN検索(Wisconsin Sequence Analysis Package,Genetics Computer Group,Madison,WI;デフォールトパラメーター(すなわちワードサイズ=11、マッチ=1、ミスマッチ=−3、ギャップウエイト=10、レングスウエイト=1))は、コンセンサス群の7つがGBウイルスファミリー、特にGBV−Cと相同であり、他の6つのコンセンサス群は非ウイルス配列と相同であるか又はデータベースでは認められなかった。クローンの80%以上(65個のうち54個)が新しいウイルスからの配列を含んでいたが、HCV配列は認められなかった。この分析から、2つの非対合サンプルのSPAD−RDAは、既知のウイルスがテスター中に存在する場合であっても、未知の配列のウイルスの単離に成功裏に適用しうると結論することができる。
【0101】
実施例11.再使用ドライバー対照と標的濃縮分画の両方のソースとして複雑度の低いアンプリコンと単一ハイブリダイゼーション反応を使用する、対合又は非対合サンプルの差引きハイブリダイゼーション
上記の実施例において、伝統的なRDA法の単一ドライバーと比較した再使用ドライバー対照の利点を明らかにした。しかしこれは、ドライバー対照の差引きをドライバー/テスター差引きと平行して実施することを必要とする。それらの別個の性質ゆえに、一方の差引きにおいて生じるが他方では生じない相違が、産物の所望する「対合(paired)」局面の喪失をもたらすことがある。そのような相違はランダムに又は非対合ドライバーとテスターサンプル間の配列変異性の結果として起こりうる。各々のラウンドの差引きと共にそのような相違の数と重要度が増大し、ドライバー効率の低下とテスターにユニークでない配列の単離を導く可能性がある(一般的事象(a common occurrence))。これらの相違を最小限に抑えるようにドライバー対照の作製とドライバー/テスター差引き産物を結び付ける方法を開発することが有益であることは明白であろう。下記の実施例はこの目標を達成するための1つの方法として提示するものである。
【0102】
A.アンプリコンのための二本鎖DNAの作製
D及びTのための二本鎖DNAを実施例2(パートA)において上述したように調製する。
【0103】
B.アンプリコンの作製
D及びTアンプリコンを実施例2(パートB)において上述したように調製する。
【0104】
C.アンプリコンのハイブリダイゼーションと選択増幅
下記に述べる点と図5に示す事柄を除いて、実施例2(パートC)において上述したように所望するラウンド数の差引きハイブリダイゼーションを実施する。
【0105】
DCに連結するオリゴヌクレオチドは5−プライムビオチン標識を含む(例えば5’−Bio J−Bam 24、配列番号:5)。ビオチンなしの同じオリゴヌクレオチド(例えばJ−Bam 24、配列番号:5)をテスターに連結する。次に、それぞれ5−プライムビオチン標識を含む又は含まないJ−Bamアダプターセットに連結した、Dアンプリコン(40μg)、プラスDC(0.5μg)及びT(0.5μg)アンプリコンから成る、単一ハイブリダイゼーション混合物(Hyb−1)を作製する(80/1/1比)。67℃でハイブリダイズし、TE緩衝液で希釈した後、連結していないオリゴヌクレオチドを排除するように、ハイブリダイゼーション反応物50μl(20μg)を精製する(例えばQIAquick(登録商標) PCR Purification Kit,QIAGEN,Chatsworth,CAを用いて製造者の指示に従って、最終容量60μlとして)。この精製は、残留する5’−Bio J−Bam 24(配列番号:5)がその後のストレプトアビジン精製段階に干渉するのを防ぐために含める。
【0106】
精製ハイブリダイゼーション反応物の一部(12μl、4μg DNA)を標的濃縮分画の増幅のために別に取り分ける。もう1つの部分は、D.J.Laveryら、Proc.Natl.Aca.Sci.USA 94:6831−6836(1997)によって記述され、修正されているように、ストレプトアビジン被覆常磁性粒子(SA−PMP、例えばPromegaからのMagneSpheres(登録商標))を用いたDC分画(すなわちビオチン含有分子)の精製のために保存する。特に、SA−PMP(80μl)を、ハイブリダイゼーション産物のSA−PMPへの非特異的結合を防ぐのを助けるために加える、20ng/μlの合成ポリA DNAを含む1M TENT緩衝液300μl(10mM Tris、1mM EDTA、0.1% Triton X−100、1M NaCl、pH8.0)に再懸濁して、室温(RT)で3回洗う。洗ったSA−PMPを1M TENT/ポリA緩衝液200μlに再懸濁する。精製ハイブリダイゼーション反応物の残りの48μl(16μg)に5Mストック1μlを加えて0.1M NaClに調整し、洗ったSA−PMPと一緒にする。ビオチン標識ハイブリダイゼーション産物のSA−PMPへの結合を、時々混合しながらRTで30分から2時間まで進行させる。1M TENT緩衝液300μlによりRTで3回洗い、次に50mM TENT緩衝液300μl(10mM Tris、1mM EDTA、0.1% Triton X−100、1M NaCl、pH8.0)により60℃で2回の高ストリンジェンシー洗浄を実施して、非結合DNAを排除する。最後に、SA−PMPを10mM Tris(pH8.5)300μlによりRTで2回洗い、最終容量48μlの同溶液に再懸濁する。
【0107】
その後のPCR増幅及びヌクレアーゼ消化のすべての段階は、DC−1及びD/T−1 PCRのための出発鋳型がそれぞれ12μlのSA−PMP結合DNA又は12μlの精製ハイブリダイゼーション反応物DNAであることを除いて、実施例2(パートC)で述べたように実施する。
D.その後のハイブリダイゼーション/増幅段階と相違産物のクローニング/分析
さらなるラウンドの差引きを、実施例10(パートC)で述べた例外を除いて実施例2(パートD)で述べたように実施する。挿入断片のクローニングと配列の分析は、それぞれ実施例2(パートE)と実施例3で述べたように実施する。
【0108】
上記の実施例は、本発明のSPAD−RDA法の有用性及び従来のRDA法に比べてSPAD−RDA法が有する利点を明らかにしている。Simonsら及びHubankらの既知の修正法(上記で引用)に対する改善も明白である。本発明のSPAD−RDA法を使用することにより、同時にすべての配列のより詳細なサンプリングを達成しながら、アンプリコンの複雑度を低下させることができる。さらに、ドライバー組成物はいかなる特定段階でも至適であるものに匹敵し、非対合ドライバーに関しても、ドライバー組成物を差引きしたテスターの組成物に結びつける実施例を提供している。最後に、それらの対象とする差引き産物を同定するために視覚的比較が使用できる。
【0109】
視覚的同定のほかに、SPAD−RDA産物から調製した組換えライブラリーを免疫スクリーニングによって、及びテスターユニーク配列を同定するためのディファレンシャルハイブリダイゼーションによって分析することができる。これらすべてを結合することにより、複雑なゲノムバックグラウンド内に含まれるもの及び/又は低いコピー数で存在するもののような、さもなければ単離することが難しい又は不可能である多くの標的配列を同定し、単離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 Lisitsynら(Science 259:946−951(1993))の伝統的方法と本発明において述べるような選択プライミングによるRDAアンプリコン作製の比較を示し、それぞれ5’から3’までと3’から5’までの配列番号1及び19を示す。
【図1B】 Lisitsynら(Science 259:946−951(1993))の伝統的方法と本発明において述べるような選択プライミングによるRDAアンプリコン作製の比較を示し、それぞれ5’から3’までと3’から5’までの配列番号20及び21を示す。
【図2】 本発明のSPAD−RDA手順の概要図を示す。
【図3A】 Lisitsynら(Science 259:946−951(1993))の伝統的なRDA法と本発明のSPAD−RDA法によるHCV配列についての濃縮を実証するサザンブロットを示す。
【図3B】 Lisitsynら(Science 259:946−951(1993))の伝統的なRDA法と本発明のSPAD−RDA法によるHCV配列についての濃縮を実証するサザンブロットを示す。
【図4】 実施例9で述べたようなディファレンシャルハイブリダイゼーションによる標的配列の同定に含まれる段階の概要図を示す。
【図5】 提案する「単一ハイブリダイゼーション」RDA修正法に含まれる段階の概要図を示す。
【配列表】
Claims (8)
- テスターサンプルとドライバーサンプルとの間に核酸配列の相違が存在するかどうかを調べるために、テスターサンプルとドライバーサンプルを使用して差引きハイブリダイゼーションを実施するための方法であって、
(a)テスターサンプルとドライバーサンプルから別々に全核酸を単離し、該テスターサンプルと該ドライバーサンプルからの該全核酸から二本鎖cDNA/DNAを調製する段階、
(b)段階(a)のテスターサンプルとドライバーサンプルから調製した該二本鎖cDNA/DNAを制限エンドヌクレアーゼで消化し、各サンプルについての制限フラグメントのセットを作製する段階、
(c)段階(b)の各セットの該ドライバー及びテスター制限フラグメントをオリゴヌクレオチドアダプターセット1に連結し、生じた産物を段階(b)の該制限フラグメントのサブセットが増幅されるように選択プライマーを用いて増幅する段階、
(d)該選択プライマー配列を制限エンドヌクレアーゼ消化によって除去し、テスター及びドライバーアンプリコンを作製し、該ドライバー及びテスターアンプリコンの5’末端をオリゴヌクレオチドアダプターセット2に連結してドライバー対照とテスターを形成し、ドライバー対照とテスターを別々に各々過剰の連結していないドライバーアンプリコンと混合し、生じた混合物を変性し、各々の混合物内の変性核酸鎖をハイブリダイズさせる段階、
(e)アニーリングしたドライバー/テスター及びアニーリングしたドライバー/ドライバー対照の3’末端を熱安定なDNAポリメラーゼを使用して充填し、生じた配列を増幅する段階、および
(f)一本鎖DNAヌクレアーゼで消化することにより残存する一本鎖DNAを除去し、該ヌクレアーゼ消化後に残存する二本鎖DNAを増幅し、段階(d)から(f)までを反復する段階、を含み、
段階(d)から(f)では、RDAのそれまでのラウンドにおいて使用していないオリゴヌクレオチドアダプターセットを使用し、ここにおいて1つのラウンドは、段階(d)から(f)のRDAの実施から成り、および、RDAの各々の新ラウンドについて、直前の段階(d)から(f)からのドライバー/ドライバー対照差引き産物の制限エンドヌクレアーゼ開裂産物をドライバーとして使用する、
前記方法。 - 段階(b)の制限エンドヌクレアーゼが4−6塩基対認識部位を持つ、請求項1に記載の方法。
- 段階(b)の該制限エンドヌクレアーゼが4塩基対認識部位を持つ、請求項1に記載の方法。
- 該制限エンドヌクレアーゼがSau3AIである、請求項3に記載の方法。
- 段階(d)の該制限酵素が4−6塩基対認識部位を持つ、請求項1に記載の方法。
- 段階(d)の該制限酵素が4塩基対認識部位を持つ、請求項5に記載の方法。
- 該制限酵素がSau3AIである、請求項6に記載の方法。
- ユニークテスター配列の同定のための方法であって、
(a)テスターサンプルとドライバーサンプルから別々に全核酸を単離し、該テスターサンプルと該ドライバーサンプルからの該全核酸から二本鎖cDNA/DNAを調製する段階、
(b)段階(a)のテスターサンプルとドライバーサンプルから調製した該二本鎖cDNA/DNAを制限エンドヌクレアーゼで消化し、各サンプルについての制限フラグメントのセットを作製する段階、
(c)段階(b)の該ドライバー及びテスター制限フラグメントをオリゴヌクレオチドアダプターセット1に連結し、生じた産物を段階(b)の該制限フラグメントサブセットが増幅されるように選択プライマーを用いて増幅する段階、
(d)該選択プライマー配列を制限エンドヌクレアーゼ消化によって除去し、テスター及びドライバーアンプリコンを作製し、該ドライバー及びテスターアンプリコンの5’末端をオリゴヌクレオチドアダプターセット2に連結してドライバー対照とテスターを形成し、ドライバー対照とテスターを別々に各々過剰の連結していないドライバーアンプリコンと混合し、生じた混合物を変性し、各々の混合物内の変性核酸鎖をハイブリダイズさせる段階、
(e)アニーリングしたドライバー/テスター及びアニーリングしたドライバー/ドライバー対照の3’末端を熱安定なDNAポリメラーゼを使用して充填し、生じた配列を増幅する段階、および
(f)一本鎖DNAヌクレアーゼで消化することにより残存する一本鎖DNAを除去し、該ヌクレアーゼ消化後に残存する二本鎖DNAを増幅し、段階(d)から(f)までを反復する段階、
但し、段階(d)から(f)では、RDAのそれまでのラウンドにおいて使用していないオリゴヌクレオチドアダプターセットを使用し、ここにおいて1つのラウンドは、段階(d)から(f)のRDAの実施から成り、および、RDAの各々の新ラウンドについて、直前の段階(d)から(f)からのドライバー/ドライバー対照差引き産物の制限エンドヌクレアーゼ開裂産物をドライバーとして使用する、
(g)該ドライバー−テスター及びドライバー対照産物を固体基質上に置く段階、および
(h)該ドライバー対照バンドに存在しないドライバーテスターバンドを視覚的に同定する段階、
を含む、前記方法。
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