JP4856301B2 - 孔版印刷システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は孔版印刷に関し、詳しくは裏移りがなく白抜けが少なく、定着性に優れた画像を提供するための孔版印刷システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
孔版印刷方法は、周知のように孔版印刷原紙(マスター)を用い、この原紙の穿孔部を介して原紙の一方の側より他方の側ヘインキを移動させることにより、紙などの被印刷物面に印刷を行なうものである。従来から用いられているインキは油中水型のエマルションインキであるが、揮発性溶剤、不揮発性溶剤、樹脂、着色剤、界面活性剤、水、凍結防止剤、電解質、防腐剤より構成されている。
近年、輪転孔版印刷機もマイクロコンピューター等による自動化が進み、操作も簡単になり、これに伴って孔版印刷の利用が増加している。しかし、孔版印刷の乾燥は浸透乾燥と蒸発乾燥のみであり、また機上でインキが固化しないように反応性の樹脂がいれられなく、また、環境問題から両面印刷の要求も高まってきており、孔版印刷の問題の一つである画像の裏移りに対して、高い品質が求められてきている。
【0003】
これまで裏移りに対して、特開平10−24667号公報では、熱可塑性樹脂フィルムの面上に多孔性樹脂膜を設け通気度が1.0〜50cm3/cm2・秒のマスターを用いることにより、少量のインキ転移量で濃度ムラが少ないために裏移りが優れる、と言う方法が提案されている。しかしながらこの方法では粘度150poise(=15Pa・s)以上のインキが用いられており、インキ自体の浸透性があまり良好ではなく、システムとして裏移りや印刷物の定着性に対する効果としては不十分である。
また、裏移りや定着性に対して、特開平9−52423号公報では、熱可塑性樹脂フィルムと表面粗さが5〜45μmRzの多孔性支持体とを貼り合わせ、粘度が0.5〜5Pa・sのエマルションインキを用いる方法が提案されている。しかしながらこの方法では、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせていることから、貼り合わせに用いる接着剤の影響で穿孔感度が低下し、結果的に画像上のムラや白抜け(マスターが開口せずにインキが通過できなくなることによる)を発生させる結果となってしまうと言う問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、輪転孔版印刷機において、前記従来技術の欠点を解消し、裏移りがなく白抜けがすくなく、定着性に優れた画像を容易に提供することにあり、且つそれによって生じる不具合をも改善することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため種々研究を行った結果、孔版印刷装置において、樹脂フィルムを開口面積20%以上に穿孔した場合に通気度が1.0〜50cm3/cm2・秒である多孔性樹脂膜を有した孔版印刷原紙(マスター)を用い、且つ粘度(23℃、せん断速度20 l/sの見かけ粘度)が1〜10Pa・sのインキを用いることによって裏移りがなく白抜けが少なく、定着性に優れた画像が得られること、そしてその理由として、使用するインキ粘度は低粘度(10Pa・s以下)であることがインキ浸透速度、紙上でのインキの広がり、浸透深さに対して効果的で、その作用によって裏移り、白抜け性、定着率が向上するが、インキ粘度が1.0以下であると、にじみが大きくなるという不具合あるため、インキ粘度は1〜10Pa・sの範囲である必要があること、さらには、前記物性のインキを既存の印刷システムで使用すると、インキ転移量が過剰で裏移りに対る効果が相殺されてしまうので、インキ転移量をコントロールするマスターが必要で、通気度が1.0〜50cm3/cm2・秒である多孔性樹脂膜を有したマスター、好ましくは10〜30cm3/cm2・秒であるマスターを用いることが必要である、ことを見出し、本発明に到達することができた。
【0006】
すなわち、本発明の第1は、熱可塑性樹脂フィルムを有する孔版印刷用原紙を用い、この原紙をサーマルヘッドにより開口させ、その開口部を介して原紙の一方の側より他方の側ヘインキを移動させ孔版印刷を行う孔版印刷システムにおいて、前記樹脂フィルムを開口面積20%以上に穿孔した場合に通気度が1.0〜50cm3/cm2・秒である多孔性樹脂膜を有した孔版印刷原紙(マスター)を用い、且つ粘度(23℃、せん断速度20 l/sの見かけ粘度)が1〜10Pa・sのインキを用いることを特徴とする孔版印刷システムにある。
ただ、前記通気度のマスターを用いても、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体を貼り合わせた構造では、接着剤の影響で穿孔感度が低下し、画像上のムラや白抜けが発生し均一性が低下してしまうので、用いるマスターとしては貼り合わせのない方法で製造される多孔性樹脂膜を用いることが好ましい。
【0007】
本発明の孔版印刷システムに用いるインキとしては、降伏値が50Pa以下であるインキを用いることによりさらに浸透速度が向上し、前記裏移りに対する効果もさらに向上するので、50Pa以下の降伏値を有するインキが好ましい。
すなわち、本発明の第2は、インキが、降伏値が50Pa以下のもであることを特徴とする前記第1の孔版印刷システムに関する。
前記降伏値は23℃で、フローカーブからCASSON近似により求めるものである。
【0008】
本発明の孔版印刷システムに用いるインキの着色剤として、着色剤の平均粒子径が0.5μm以上の比較的大きな粒子系の着色剤を用いると、初期画像としては問題ないものの、大量部数の印刷を行うと徐々にインキ転移量が減少するという現象が見られた。これは本発明におけるマスターのインキ通過路が狭いことによって生じる現象と考えられ、それに対して平均粒子径が0−5μm以下に分散されたインキを用いることにより、この現象を抑えることが可能となる。
すなわち、本発明の第3は、インキが、平均粒子径0.5μm以下に分散された着色剤を含有するものであることを特徴とする前記第1又は2の孔版印刷システムに関する。
【0009】
本発明の孔版印刷システムに用いるインキの着色剤として、環分析による炭素分布におけるナフテン成分の炭素の含有量が35%CN以上、且つパラフィン成分の炭素の含有量が50%CP以下である不揮発性の鉱物油を、単独又は他のオイルと併用して含有させたインキを用いることにより、効果的且つ安価に物性調整ができ、特に降伏値を低下させるのに適した特性のオイルであり、その作用により裏移りを更に向上させることが可能となる。
すなわち、本発明の第4は、インキが、環分析による炭素分布におけるナフテン成分の炭素の含有量が35%CN以上、且つパラフィン成分の炭素の含有量が50%CP以下である不揮発性の鉱物油を、単独又は他のオイルと併用して含有するものであることを特徴とする前記第1〜3の孔版印刷システムに関する。
【0010】
本発明の孔版印刷システムに用いるインキに、粘度(23℃)が0.2Pa・s以下である不揮発性の鉱物油を、単独又は他のオイルと併用して含有させたインキを用いることにより、比較的高粘度の樹脂や体質顔料を添加した場合に本発明の物性を容易に作り出せるほか、両面印刷時のコロ跡汚れに対して有効である。
すなわち、本発明の第5は、インキが0.2Pa・s以下の粘度(23℃)である不揮発性の鉱物油を、単独又は他のオイルと併用して含有させたものであることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の孔版印刷システムに関する。
【0011】
本発明の孔版印刷システムに用いるインキの着色剤の分散剤として、前記化1で表されるアルミニウムキレート化合物を、単独又は他の分散剤と併用し、着色剤に対して0.5〜100重量%含有させたインキを用いることにより、容易に着色剤を微細化分散でき、その作用として定着性が向上するほか、経時でもその初期分散性を維持することが可能となる。
すなわち、本発明の第6は、前記一般式(1)で表されるアルミニウムキレート化合物を、着色剤の分散剤として、単独又は他の分散剤と併用し、着色剤に対して0.5〜100重量%含有させたインキを用いることを特徴とする前記第1〜5の孔版印刷システムに関する。前記式中、R1はイソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等を表し、好ましくはイソプロピル基、sec−ブチル基又はイソブチル基である。R2はオレイル基又はオクタデシル基を表す。nは1又は2を表す。
前記アルミニウムキレート化合物の添加量は、顔料に対し0.5重量%未満では分散が不十分であり、又、100重量%を超えると効果が変わらずコストが高くなるので、添加量としては顔料に対して0.5重量%〜100重量%が望ましい。
【0012】
本発明の孔版印刷システムに用いるインキの着色剤の分散剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は他の分散剤と併用し、着色剤に対して0.5〜100重量%含有させたインキを用いることにより、低粘度領域のインキで起こりやすくなる印刷機内油分離を効果的に抑えることができる。
すなわち、本発明の第7は、着色剤の分散剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は他の分散剤と併用し、着色剤に対して0.5〜100重量%含有させたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の孔版印刷システムに関する。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量が顔料に対し0.5重量%未満では油分離抑制効果が十分ではなく、100重量%を超えるとインキ粘度が高くなりすぎるなどの問題があるため、添加量としては顔料に対して0.5重量%〜100重量%が望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の態様を説明する。
熱可塑性樹脂フィルム
本発明で用いられる熱可塑性樹脂フィルムとしては従来感熱孔版印刷用原紙に用いられているものが使用でき、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン共重合体フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。本発明で用いられる多孔性樹脂膜を構成する材料としては、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー等のようなビニル系樹脂、ポリブチレンナイロン等のポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、アセチルプロピルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。各樹脂は単独でも2種類以上混合して用いても良い。
なお、多孔性樹脂膜の形成、強度、孔径の大きさ、コシ等を調節するために、多孔性樹脂膜中に必要に応じてフィラー等の添加剤を添加することができる。具体的な例としては、ケイ酸マグネシウム、セピオライト、チタン酸カリウム、ウオラストナイト、ゾノトライト、石膏繊維、等の鉱物系針状フィラー、非酸化物系針状ウィスカ、酸化物系ウィスカ、複酸化物系ウィスカ等の人工鉱物系針状フィラー、マイカ、ガラスフレーク、タルク等の板状フィラー、カーボンファイバー、ポリエステル繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の天然又は合成の繊維状フィラー、また、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸メチル等の有機ポリマー粒子、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられる。
多孔性樹脂膜の塗布方法としては、ワイヤーバーコーター、ブレードコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、その他従来公知の方法が使用可能である。
【0014】
以下、本発明で使用するインキの各成分を説明する。なお、インキに関してはW/O型エマルションインキの形態が好ましいが、インキ形態もエマルションタイプに限定されるものではなく、従来より公知の製造方法にて作成することができる。
着色剤
本発明のインキに用いられる着色剤は各種色調の公知の顔料、分散染料等が用いることができ、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック類、アルミニウム粉、ブロンズ粉などの金属粉、弁柄、黄鉛、群青、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料などのアゾ系顔料、無金属フタロシアニン顔料や銅フタロシアニン顔料などのフタロシアニン系顔料、アントラキノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサンジン系、スレン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キノフタロン系、金属錯体、などの縮合多環系顔料、酸性又は塩基性染料のレーキ等の有機顔料、ジアゾ染料、アントラキノン系染料等の油溶性染料、蛍光顔料;等が挙げられる。
また、蛍光顔料としては、合成樹脂を塊状重合する際又は重合した後に、様々な色相を発色する蛍光染料を溶解又は染着し、得られた着色塊状樹脂を粉砕して微細化した、所謂、合成樹脂固溶体タイプのもので、染料を坦持する合成樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、アルキド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を染料に坦持する蛍光顔料等が挙げられる。
これらの染顔料は、単独でも2種以上混合して添加しても良い。
インキ中に分散された不溶性着色剤の平均粒径は0.5μm以下であることが望ましい。また、その使用量は必要量に応じて添加することが可能であるが、通常2〜15重量%である。
【0015】
カーボンブラックに関しては油中に分散する場合にはpH5未満の酸性のカーボンブラックが、水中に分散する場合にはpH5以上、好ましくはpH6〜10、より好ましくはpH7〜9のアルカリ性のカーボンブラックを使用することが望ましい。代表的なカーボンブラックとしてはMA−100、MA−7、MA−77、MA−11、#40、#44(三菱化学社製)Raven1100、Raven1080、Raven1255、Raven760、Raven410(コロンビヤンカーボン社製)などが挙げられる。
【0016】
本発明のインキに使用される油としては、例えば、石油系溶剤、流動パラフィン、スピンドル油、マシン油、潤滑油、鉱物油;あまに油、トール油、とうもろこし油、オリーブ油、ナタネ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、やし油等の植物油等が使用される。また、安全性、保存安定性阻害しない範囲で合成油も併用できる。
本発明で使用されるナフテン系オイルは、環分析によるナフテン成分の炭素含有量(CN)が30%以上、かつ芳香族成分の炭素の含有量(CA)が20%以下かつパラフィン成分の炭素含有量(CP)が55%以下である鉱物油であり、
モービル石油社のガーゴオイルアークティックオイル155及び300ID、ガーゴオイルアークティックオイルライト及びカーゴオイルアークティックオイルCヘビー、出光興産社のダイアナプロセスオイル(NP−24、NR−26、NR−68、NS−90S、NM−280など)、ダイアナフレシアシリーズ(G−6、F−9、N−28、N−90、N−150、U−46、U−56、U−68、U−130、U−170、U−260)、日本サン石油社のサンセンオイルシリーズ(410、420、450、480、3125、4240等)等が挙げられる。中でもナフテン成分の炭素の含有量が35%CN以上、且つパラフィン成分の炭素の含有量が50%CP以下である不揮発性の鉱物油を用いることが望ましく、粘度(23℃)が、0.2Pa・s以下である不揮発性の鉱物油を用いることが更に望ましい。
【0017】
本発明で使用されるパラフィン系オイルはモービル石油社のガーゴオイルアークティックシリーズ(1010、1022、1032、1046、1068、1100、3032、3046、3068など)、日本三菱社の日石スパーオイルシリーズ(B、C、D、Eなど)、出光興産社のダイアナプロセスオイル(PX−32、PX−90、PW−32、PW−90、PW−380、PS−32、PS−90、PS−430など)、ダイアナフレシアシリーズ(S−32、S−90、P−32、P−90、P−150、P−180、P−430など)、等あげられる。
安全性の高い石油系溶剤としてはエクソン化学社のアイソバーシリーズ(C、E、G、H、L、Mなど)及びエクソール(D30、D40、D80、D110、D130など)日石三菱社のAFソルベントシリーズ(4号、5号、6号、7号)等があげられる。
これらの油成分は安定性を考慮した場合、3環以上の縮合芳香族環を含む芳香族炭化水素である多環芳香族成分が3質量%未満のものを使用することが望ましい。さらに、変異原性指数MIが1.0未満、アロマ分(%CA)が20〜55%、アニリン点が100℃以下であって、かつオイル全重量基準でベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[a]ピレン、ジベンゾ[a,j]アクリジン等の多環芳香族の含有量がそれぞれ個々に10重量ppm以下であり、含有量の合計量が50重量ppm以下である、安全性の高いアロマー系オイル(特開平11−80640)も必要であれば使用しても良い。
【0018】
界面活性剤
本発明のインキに用いられる乳化剤は、油中水型のエマルションを形成する目的で使用され、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤のいずれでも良く、安定性に効果が有れば低分子でも高分子でもまた併用しても良い。この中でも好ましくは非イオン系界面活性剤であり、たとえば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリルモノステアレート、デカグリセリルトリオレエート、ヘキサグリセリンポリリシノレートなどの(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン植物油脂肪酸エステルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油及び高級アルコール等があげられ、単独あるいは2種類以上あわせて保存安定性の高いエマルションを調製する。添加量は通常インキ重量の0.5〜15重量%、好ましくは1〜3重量%とすれば良い。
【0019】
油中に添加される樹脂
前記油中に添加される樹脂としては、例えば以下のものが挙げられる、
ロジン;重合ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、ロジンポリエステル樹脂、水素化ロジンエステル等のロジン系樹脂;ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂;ロジン変性フェノール樹脂、等のロジン変性樹脂;マレイン酸樹脂;フェノール樹脂;石油樹脂;環化ゴムなどのゴム誘導体樹脂;テルペン樹脂;アルキド樹脂;重合ひまし油;等を1種又は2種以上を混合して添加して良い。これらの代表的な樹脂としては荒川化学社製のタマノル353、タマノル403、タマノル361、タマノル387、タマノル340、タマノル400、タマノル396、タマノル354、KG836、KG846、KG1834、KG1801等のロジン変性フェノール樹脂などがあげられる。
樹脂の重量平均分子量は定着性及び印刷適性から3万〜15万が好ましく、より好ましくは5.5万〜15万であり、さらにこれらの樹脂は日石0号ソルベントに対し溶解性を有するトレランスが1g/g以上(1gの樹脂に1g以上の0号ソルベントが相溶可能である)の樹脂が好ましい。また、油中に樹脂を添加する場合の樹脂使用量は、インキのコスト及び印刷適正から油中の2〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
【0020】
本発明に使用されるアルキド樹脂は油脂と多塩基酸と多価アルコールから構成される。油脂としてはヤシ油、パーム油、オリーブ油、ひまし油、米糠油、綿実油等のヨウ素か80以下の不乾性油あるいは半乾性油及びこれらの脂肪酸が挙げられるが、大豆油、アマニ油、キリ油等の乾性油もアルキド樹脂のヨウ素価が80以下の範曙では一部使用しても良い。
多塩基酸としては無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸等の飽和多塩基酸、及びマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和多塩基酸が使用できる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、マンニット、ソルビット等が使用できる。
アルキド樹脂の油長は油脂中の脂肪酸がトリグリセライドで存在したときの樹脂中の重量%で示される。アルキド樹脂は分散安定性、及び皮膜形成による版銅スクリーンの目詰まり等の問題から、油長60〜90、ヨウ素価80以下であることが好ましい。アルキド樹脂の重量平均分子量は好ましくは3万未満、より好ましくは1万以下のものが好ましい。
【0021】
油中に分散させる着色剤の着色剤分散剤
油中に分散させる着色剤の着色剤分散剤としては、前記の乳化剤用非イオン性界面活性剤及び水溶性高分子も使用することができる。
分散剤としてはソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル、ヘキサグリセリンポリリシノレートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、などの非イオン性界面活性剤、アルキルアミン系高分子化合物、アルミニウムキレート系化合物、スチレン−無水マレイン酸系共重合高分子化合物、ポリカルボン酸エステル型高分子化合物、脂肪族系多価カルボン酸、高分子ポリエステルのアミン塩類、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩類、長鎖ポリアミノアミドと高分子酸ポリエステルの塩、ポリアミド系化合物、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸塩類、ポリエチレンイミン、アルキロールアミン塩、及びアルキド樹脂などの不溶性着色剤分散能を有する樹脂などもあげられる。この他にもインキの保存安定性を阻害しない範囲であればイオン性界面活性剤、両性界面活性剤なども挙げられる。これらの分散剤は単独又は2種類以上混合して添加すれば良く、上記着色剤分散剤の中でもアルミニウムキレート系化合物やポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが望ましく、使用量としては着色剤に対して0.5〜100重量%とするのが望ましい。
【0022】
ゲル化剤
ゲル化剤は、油中に含まれる樹脂をゲル化してインキの保存安定性、定着性、流動性を向上させる役割をもち、本発明のインキに添加されるゲル化剤としては油中の樹脂と配位結合する化合物が好ましい。このような化合物を例示すると、Li、Na、K、Al、Ca、Co、Fe、Mn、Mg、Pb、Zn、Zr等の金属を含む有機酸塩、有機キレート化合物、金属石鹸オリゴマー等であり、具体的にはオクチル酸アルミニウム等のオクチル酸金属塩、ナフテン酸マンガン等のナフテン酸金属塩、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等の有機キレート化合物等が挙げられる。
これらのゲル化剤は、1種又は2種類以上を油中に添加すれば良く、その添加量は油中の樹脂の15%以下、好ましくは5〜10重量%である。
【0023】
油中に添加される酸化防止剤は、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール等であり、これらの添加によって油中のバインダー樹脂等の酸化を防ぎ、これによってインキの粘度の上昇等が防止される。
また、その添加量はインキ中の油の2重量%以下、好ましくは0.1〜1.0重量%である。なお酸化防止剤は単独でも2種類以上を混合して使っても良い。
またインキ中には粘度調整のために体質顔料も添加できる。インキ中に添加される体質顔料としては白土、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナホワイト、ケイソウ土、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウム等の無機微粒子及びポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリシロキサン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、等の有機微粒子又はこれらの共重合体からなる微粒子が挙げられる。具体的な例としてはアエロジル200、アエロジルR972等(日本アエロジル社)、NEW DORBEN(白石工業社)、BEN−GEL、S−BEN、ORGANITEなど(豊順洋行社)、TIXOGELシリーズ(VP、DS、GB、VG、EZ−100など)、OPTIGEL(日産ガードラー触媒社)などが挙げられる。
これらは油中、水中、またエマルションの場合両相に添加しても良く、添加量はインキに対して0.1〜50重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
【0024】
本発明で使用するインキが、水性又はエマルションインキの形態を取る場合の水相に使用される水溶性高分子としては、具体的には下記の天然又は合成高分子が添加される。
例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、ブルラン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン等の天然高分子;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等の半合成高分子;アクリル酸樹脂及びポリアクリル酸ナトリウムなどの中和物、ポリビニルイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリN−アクリロイルピロリジンやポリN−イソプロピルアクリルアミドなどのポリN−アルキル置換アクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体及びこれらをアルキル基で部分的に疎水した高分子、またアクリルアミド系ポリマー及びアクリル系のポリマーに関しては置換基を部分的にアルキル基で疎水化した共重合タイプのポリマーでも良い。またポリエチレンとポリプロピレン又はポリブチレンのブロックコポリマー用いることができる。これらの水溶性高分子は輌虫でも2種類以上混合しても良く、インキに含まれる水の25重量%以下、好ましくは0.5〜15重量%が添加される。
【0025】
O/W樹脂エマルションとする場合は、合成高分子でも天然高分子でも使用することができる。高分子としては酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン等が挙げられる。天然のものとしては油中に添加できる高分子等が挙げられる。これらはインキの安定性を阻害しない範囲であれば2種類以上を併用してもよく、また分散方法も分散剤、保護コロイド、界面活性剤を添加していてもよく、またソープフリー乳化重合によって合成した物でも良い。これらのO/W樹脂エマルションの最低造膜温度は40℃以下であることが望ましい。
【0026】
水中に添加される防腐・防かひ剤は、細菌やかびが繁殖するのを防ぐために添加され、インキを長期保存する場合は防腐防かび剤を添加するのが望ましい。その添加量は、インキ中に含まれる水の3重量%以下、好ましくは0.1〜1.2重量%とするのが良い。また防腐・防かび剤としてはサリチル酸、フェノール類、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチル等の芳香族ヒドロキシ化合物及びその塩素化合物のほか、ソルビン酸やデヒドロ酢酸等が使用され、これらは単独でも2種類以上混合して使っても良い。
水の蒸発防止剤と凍結防止剤は兼用可能であり、これらの目的で添加される薬品はエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブイタノール、イソブタノール等の低級飽和一価アルコール;グリセリンやソルビトール等の多価アルコール;等である。
これらの薬品は1種又は2種以上を添加すれば良く、その添加量はインキ中の水重量の15重量%以下、好ましくは4〜12重量%である。
【0027】
水中に添加されるpH調整剤は、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、トリアミルアミン等であり、必要時にはこれらのpH調整剤を添加してpHを6〜8に保つことができる。pHが前記範囲からはずれると、増枯剤用水溶性高分子が添加されている場合にはその効果が損なわれる等の問題がある。
エマルション構造の場合水相に添加される電解質は、エマルションの保存安定性を高めるために添加されるものである。従って、電解質により影響を受ける材料が水相に存在しない場合に使用するのが望ましい。
電解質はクエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等の陰イオンあるいはアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンなどを含む電解質であることが好ましい。従ってここで添加される電解質としては、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、等が好ましく、その添加量は水相の0.1から2重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%である。
上記のほか、印刷時に印刷用紙と印刷ドラムとの分離を良くするため、或いは印刷用紙の巻き上がり防止のためにワックスを添加することができる。また、水中に防錆剤や消泡剤を添加して印刷の際に印届磯がインキによって錆びたり、インキが泡立つことを防止することができる。これらの添加剤は、孔版印刷用インキに添加されている公知品を必要に応じて添加すれば良く、その添加量は従来品の場合と同程度でよい。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に記す部は重量部であり、以下の実施例6〜7が本願発明の実施例に該当し、実施例1〜5は参考例である。
【0029】
1.インキの調製
油性及びエマルションの油相に不溶性着色剤を含有するインキを作成する場合、不溶性着色剤、オイル、不溶性着色剤分散剤、を3本ロールミルで練肉することで不溶性着色剤分散体の詣製を行い、この不溶性着色剤分散体に、オイルや樹脂等のワニス、また乳化する場合は界面活性剤と水相も加え、撹拌することによってインキを得た。必要に応じ体質顔料等の他の成分を加えても良い。
水性又はエマルションの水相に不溶性着色剤を含有するインキを作成する場合、不溶性着色剤、水溶性高分子、水、を加えボールミルを用いて24時間撹拌し、不溶性着色剤分散液を作成し、この不溶性着色剤分散液に凍結防止剤、抗菌剤等、また乳化する場合は界面活性剤と油相も加え、撹拌することによってインキを得た。必要に応じ体質顔料等の他の成分を加えても良い。
【0030】
2.多孔性樹脂膜を有するマスター
多孔性樹脂膜を有するマスターの作成として、ポリビニルアセタール、タルク、酢酸エチル、ソルビタンモノオレートを混合した油相に、水とヒドロキシエチルセルロースを混合した水相をホモミキサーで高速撹拌しながら乳化してW/Oエマルションを作成し、その液を25℃50%の雰囲気中で、厚さ2μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上にダイコーターにて塗布乾燥し、マスターを得た。必要に応じ、帯電防止剤等を塗布しても良い。
【0031】
3.前記インキ及び多孔性樹脂膜を有するマスターの物性の測定及びその評価
<通気度>
プリポートVT−3920(リコー社製)で10cm×10cmのベタチャートを読み込ませ、同ベタ部と対応する穿孔をマスターに施す。この穿孔状態は、後に通気度を測定するために熱可塑性樹脂フィルムの多孔性樹脂膜を形成した反対面の開口面積率が20%以上であることが必要である。なお、開口面積率はサーマルヘッドに印加するエネルギー及び/又はサーマルヘッドの発熱体サイズ等を任意に変えることによって調整可能である。
前記方法により穿孔したマスター(20%以上で任意でよいが、比較するものは±5%以内に入るようにして穿孔)を準備する。次にこのマスターについて、permeameter(通気度試験器:東洋精機製作所社製)を用いて通気度を測定した。
これらの結果を表−2−1にまとめて示した。
【0032】
<粘度>
インキやオイルの粘度をストレスレオメータ(ボーリン社製CSR−10)により測定した。測定に関しては、23℃、2cm2度のコーンで応力12.5Pa〜150Paまでの流動曲線を測定し、Cassonの近似式にて、Casson塑性粘度、Casson降伏値を計算により求めた。
Cassonの近似式:√τ−√τ0=√Eta×D
τ:せん断応力 D:せん断速度 τ0:降伏値 Eta:塑性粘度
これらの結果を表−2−1にまとめて示した。
【0033】
<着色剤の粒子系>
油性及びエマルションの油相に着色剤を含有するインキは、油性インキやエマルションインキの油相をAF−5号ソルベント(日石三菱社製)にて希釈し、レーザー式粒度分布計LA−700(堀場製作所社製)にて粒子径を測定した。
水性及びエマルションの水相に着色剤を含有するインキは、水性インキやエマルションインキの水相を水で希釈し、上記と同様の方法にて粒子径を測定した。
【0034】
<画像評価>
これらのインキ、マスターを用い、市販のリコー製孔版印届磯(VT3920)で十分印刷を行ってインキを印届機内にいきわたらせた後、23℃環境で10%画像面積を有するテストチャートを原稿として用いて上質紙に連続50枚印刷した。
画像濃度は、同上条件で印刷したサンプルの画像濃度を反射式濃度測定器(マクベス社製RD914)にて測定してランク付けを行う。
(◎:ID1.20以上 ○:ID1.20〜1.10 △:ID1.10〜1.00 ×:1.00〜0.90 ××:0.90以下)
裏移りは、同上条件で印刷したサンプルの裏移り状態を目視で評価した。裏移りが全く発生しない程よく、良い順に、(◎:非常に良い ○:やや良い △:普通 ×:やや悪い ××:悪い)とした。
印刷白抜けは、同上条件で印刷したサンプルの印刷面を肉眼で観察し、白抜けがほとんど無い状態(均一にべた画像である状態)程よく、良い順に、(◎:非常に良い ○:やや良い △:普通 ×:やや悪い ××:悪い)とした。
定着性は、同上条件で印刷したサンプルを印刷後、24時間乾燥放置した印刷物を市販の消しゴムで消したときの消す前と消した後の画像の濃度差で評価し濃度差が多きいものを××、濃度差の少ないもの◎とし、××、×、△、○、◎の5段階で評価した。
ランニング濃度変化は、同上条件で2000枚印刷し、100枚目と2000枚目の画像濃度を反射瑚震度測定器(マクベス社製RD914)にて測定して、100枚目と2000枚目の濃度差をランク付した。(◎:ID差0.05以下○:ID差0.05〜0.10 △:ID差0.10〜0.15 ×:0.15〜0.20 ××:0.2以下)両面印刷時のコロ跡汚れは、同条件で表面を印刷後、1分後に裏面を印刷した時の給紙コロによる汚れを評価し、汚れのひどいものを××、汚れの少ないものを◎、とし××、×、△、○、◎の5段階で評価した。
【0035】
放置時の油分離
印刷終了後、印刷ドラムを1週間放置、肉眼で観察し、マスター全面に油が浸透している物を×、インクが付いている部分から5cm程度油が広がっているものを△、インクが付いている部分から3cm程度油が広がっているものを○、インクが付いている部分から1cm以内の広がりの物を◎として4段階で評価した。
にじみは、同上条件で印刷したサンプルを、顕微鏡(100倍)を用いて、印刷された部分と印刷していない部分の境界上を観察し、にじみの多いものを××、にじみの少ないものを○、にじみがほとんど無いものを◎とし、××、○、◎、の3段階で評価した。
【0036】
なお、本発明における環分析の測定方法に関しては、環分析(ringanalysis)は潤滑ハンドブックp.344(日本潤滑学会編、養賢堂版)に説明があり、試験方法はn−d−M法による。また、環分析(ringanalysis)は構造グループ分析(structural group analysis)により、化学大辞典にも記載されている。
また、環分析の単位に関して、%はオイル全体(パラフィン、ナフテン、アロマー)の炭素に対するパラフィン成分に由来する炭素の割合である。環分析の単位%CA、%CN、%CPの意味は下記のとおりである(潤滑油ハンドブックから)。
%CA=芳香族炭素数の全炭素数に対する100分率
%CN=ナフテン炭素数の全炭素数に対する100分率
%CP=パラフィン炭素数の全炭素数に対する100分率
また、クロマト分析は、JISの試験法「石油製品一炭化水素タイフ試験方法(JISK2536)」に準拠して実施した。
本実施例で使用するオイルの環分析結果も含めた特性表を表−2−2に示す。
【0037】
3.サンプルの作成
(1)マスター
A.ポリビニルアセタール、タルク、酢酸エチル、ソルビタンモノオレートを混合した油相に、水とヒドロキシエチルセルロースを混合した水相をホモミキサーで高速撹拌しながら乳化してW/Oエマルションを作成し、その液を25℃50%の雰囲気中で、厚さ2μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上にダイコーターにて、多孔層の乾燥後付着量が6.0g/m2となるように塗布乾燥し、「マスターA」を得た。
B.上記A同様の作製手順にて、多孔層の乾燥後付着量が20.0g/m2となるように塗布乾燥し、「マスターB」を得た。
C.上記A同様の作製手順にて、多孔層の乾燥後付着量が1.0g/m2となるように塗布乾燥し、「マスターC」を得た。
D.天然麻(アパカ)繊維と合成繊維とを混抄したものを「インキ支持体」とし、これと厚さ2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムとを貼り合わせ、「マスターD」を得た。
【0038】
(2)インキ
前記1のインキ作成方法にて、以下「表1」の処方でインキを作成した。
【表1】
【0039】
(3)各種特性値一覧
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
(4)結果一覧
【表4】
【0042】
表4から、例えば以下の効果が確認できる。
実施例1と比較例1、2、3、4、5から請求項1、熱可塑性樹脂フィルムを有する孔版印刷用原紙(マスター)を用い、この原紙をサーマルヘッドにより開口させ、その開口部を介して原紙の一方の側より他方の側ヘインキを移動させる孔版印刷装置において、前記樹脂フィルムを開口面積20%以上に穿孔した場合に通気度が1.0〜50cm3/cm2・秒である多孔性樹脂膜を有した孔版印刷原紙を用い、且つ粘度(23℃、せん断速度20l/sの見かけ粘度)が1〜10Pa・sのインキを用いることを特徴とする孔版印刷システムにより、裏移りが少なく、白抜けが少ない効果があること、
実施例1と実施例2、5、6、7から請求項2、降伏値(23℃、フローカーブからCASSON近似により求める)が50Pa以下であることで、さらに裏移りが少ない効果が実施例1と実施例3から請求項3、着色剤の平均粒子径が0.5μm以下に分散されたインクを用いることで、連続印刷時の画像濃度が安定する効果があること、
実施例1と実施例2から請求項4、環分析による炭素分布におけるナフテン成分の炭素の含有量が35%CN以上、且つパラフィン成分の炭素の含有量が50%CP以下である不揮発性の鉱物油を、単独又は他のオイルと併用して含有させたインキを用いることで、効果的且つ安価に物性調整が可能であり、特に降伏値を低下させる作用があり、その作用によって裏移りに対して効果あること、
実施例1、4、6と実施例7、比較例6から請求項5、粘度(23℃)が、0.2Pa・s以下である不揮発性の鉱物油を、単独又は他のオイルと併用して含有させたインキを用いることでコロ跡よごれに優れる効果があること、
実施例2と実施例3、6から請求項6、着色剤の分散剤として、下記一般式で表されるアルミニウムキレート化合物を、単独又は他の分散剤と併用し着色剤に対して0.5〜100重量%含有させたインキを用いることで、定着性に優れる効果があること、及び
実施例1と実施例5、6から請求項7、着色剤の分散剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は他の分散剤と併用し、着色剤に対して0.5〜100重量%含有させたインキを用いることで、印刷機内油分離が良い効果が、
それぞれ明らかになった。
【0043】
【発明の効果】
請求項1
裏移りが少なく、白抜けが少ない孔版印刷システムが提供された。
請求項2
さらに裏移りが少ない孔版印刷システムが提供された。
請求項3
連続印刷時の画像濃度が安定した孔版印刷システムが提供された。
請求項4
効果的且つ安価に物性調整が可能である孔版印刷システムが提供された。
請求項5
コロ跡が少ない孔版印刷システムが提供された。
請求項6
定着性に優れた孔版印刷システムが提供された。
請求項7
印刷機内油分離が良い効果が付加された孔版印刷システムが提供された。
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂フィルムを有する孔版印刷用原紙を用い、この原紙をサーマルヘッドにより開口させ、その開口部を介して原紙の一方の側より他方の側ヘインキを移動させ孔版印刷を行う孔版印刷システムにおいて、
前記樹脂フィルムを開口面積20%以上に穿孔した場合に通気度が1.0〜50cm3/cm2・秒である多孔性樹脂膜を有した孔版印刷原紙を用い、かつ、
平均粒子径0.5μm以下に分散された着色剤を含有し、粘度(23℃、せん断速度20 l/sの見かけ粘度)が1〜10Pa・sであり、降伏値が35Pa以下であるインキを用い、
前記インキが、環分析による炭素分布におけるナフテン成分の炭素の含有量が35%C N 以上、かつパラフィン成分の炭素の含有量が50%C P 以下である不揮発性の鉱物油を、単独又は他のオイルと併用して含有するものであることを特徴とする孔版印刷システム。 - インキが、0.2Pa・s以下の粘度(23℃)である不揮発性の鉱物油を、単独又は他のオイルと併用して含有させたものである請求項1に記載の孔版印刷システム。
- 下記一般式(1)で表されるアルミニウムキレート化合物を、着色剤の分散剤として、単独又は他の分散剤と併用し、着色剤に対して0.5〜100重量%含有させたインキを用いる請求項1から2のいずれかに記載の孔版印刷システム。
- インキが、着色剤の分散剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は他の分散剤と併用し、着色剤に対して0.5〜100重量%含有させたものである請求項1から3のいずれかに記載の孔版印刷システム。
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