JP4855712B2 - 角形電池用容器 - Google Patents

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Description

本発明は、耐電解液腐食性に優れた角形電池用容器に関し、より詳しくは、電池内容物が高腐食性の電解液である場合にも優れた耐食性を示す、少なくとも内面に二軸延伸したポリエステルフィルムをラミネートしたアルミニウム板からなる角形電池用容器に関する。
従来、特許文献1に示すように、二次蓄電池や電解コンデンサなどに用いられている角形の金属容器は、一般にアルミニウム板を円盤状に打ち抜きブランクとし、DI成形等の加工法により缶胴部を形成し、さらに、缶胴部の上部の開口部に天蓋を重ねて巻き締めて封止している。
このような角形缶における封止方法は、缶詰や飲料缶などにおいて使用されている二重巻き締め法が用いられており、この二重巻き締め法による封止手段は、長期間にわたる信頼性が蓄積されていて、安価でしかも高速かつ生産性に優れているという特徴を有する。
このような金属容器としての素材に、予め金属板に樹脂をラミネートした樹脂被覆アルミニウム板が用いられているが、車載される電池用容器は多数の小型金属容器を直列に接続し、所定の電圧を得る特殊な構造になっている。
また、電池の積載効率を上げるために、容器の形状は角形状となっており、コーナー部のR値(半径)は10mm以下と小さく成形され、特にコーナー部において、缶胴部と共に蓋についても加工量が大きい。
一方、上記のような金属容器には、電池内容物として高腐食性のプロピレンカーボネート塩を主成分とする電解液などが封入されているが、このような高腐食性の容器材として、一般に用いられている樹脂被覆アルミニウム板で形成された容器を用いると、電解液の浸食により、加工量の大きい部分の被覆樹脂が剥離されやすいという問題があった。
さらに、二重巻き締めにより缶胴の開口部に蓋を取り付ける場合は、開口部を外側に折り曲げてフランジを形成しなければならず、しかも、角形缶の場合においては四隅のコーナー部の変形量が特に大きくなり、コーナー部が腐食されやすいという問題もあった。
特開2002−343310号公報
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、高腐食性のプロピレンカーボネート塩を主成分とする電解液などに対する耐食性に優れた角形電池用容器を提供することを目的とするものである。
特に側面無継目の角形胴部の両端開口部にネッキング・フランジング加工を施して、天蓋及び底蓋を二重巻き締めして取り付けた場合において、角形電池用容器の四隅コーナー部に対しても優れた耐食性を有する角形電池用容器を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、電池内容物に対する耐食性に優れた電池用容器を開発すべく種々の実験研究を行い、本発明の角形電池用容器が前記目的を達成し得ることを見出した。
すなわち、本発明の請求項1の角形電池用容器は、側面無継目の角形胴部の両端開口部にネッキング・フランジング加工を施してネック部及びフランジを形成し、該角形胴部の両端開口部に天蓋と底蓋を二重巻き締めした電池用容器であって、該角形胴部、該天蓋および該底蓋の少なくとも内面に、以下の二軸延伸したポリエステルフィルムをラミネートしたアルミニウム板からなることを特徴とする。
二軸延伸したポリエステルフィルム:
5≧I/I≧1
を満足するX線回折強度比を有し、I はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.34nm(CuKαX線回折角が24°から28°)の回折面によるX線回折強度であり、I はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.39nm(CuKαX線回折角が21.5°から24°)の回折面によるX線回折強度を示す。
請求項2の角形電池用容器は、請求項1において、前記側面無継目の角形胴部は、円形ブランクを深絞り成形した有底円形缶の底部を切断した側面無継目の円筒を角形に変形して、両端開口部をネッキング・フランジング加工を施した後、該角形胴部を周回するように複数本のビードを形成したものであることを特徴とする。
請求項3の角形電池用容器は、請求項1又は2において、前記側面無継目の角形胴部の両端開口部に二重巻き締めした天蓋及び底蓋の中央部に貫通孔を設け、該貫通孔に絶縁体を介して電極が取り付けられていることを特徴とする。
本発明の請求項1の角形電池用容器は、ポリエステルフィルムを二軸延伸したポリエステルフィルムとし、この二軸延伸フィルムを、所定条件で測定した場合のX線回折強度比I/Iを5≧I/I≧1を満足する範囲内に規定したことで、腐食性液体(電解液)に対し容器内面のポリエステル樹脂フィルムの劣化防止に優れ、電池用容器として優れている。
請求項2の角形電池用容器は、角形胴部を周回するように複数本のビードが形成されているので、ビードにより容器の剛性が増し、容器強度(内圧や外圧による変形に対する強度、落下強度など)が向上しているばかりでなく、ビードは容器の表面積を増大し熱放散性を高め、電池寿命、樹脂フィルムの容器への密着力劣化を抑制することができる。
また、電池用容器を多数配置した場合、隣接するビードの谷の部位では非接触の空隙が出来、空気の対流が可能となるので熱放散が効率的に行われる。
請求項3の角形電池用容器は、角形胴部の両端開口部に、二重巻締めした天蓋及び底蓋の双方への電極の取り付けにおいて、中央部に貫通孔に絶縁体を介しているから、電極を容器と確実に絶縁することができる。
以下、本発明の角形電池用容器について詳細に説明する。
図1は、本発明の角形電池容器の斜視図である。図1において、角形電池容器は、側面無継目の角形胴部1の両端開口部に、天蓋2及び底蓋3を、天蓋二重巻締め部2a及び底蓋二重巻締め部3aで取り付けられている。図2は、本発明の角形電池用容器を形成する素材を説明する断面図である。本発明の角形電池用容器は、電解液に対する耐食性を増すために、角形胴部1、天蓋2および底蓋3の少なくとも内面に、特定のX線回折強度比を有する二軸延伸したポリエステルフィルム12をラミネートしたアルミニウム板から形成されてなる。
樹脂被覆アルミニウム板は、図2(a)に示すように、基材であるアルミニウム板10の両面は、ポリエステルフィルムをラミネートしたときの密着性を向上させるために後述する表面処理層11が施されていることが望ましく、その表面処理層11の上に図2(b)に示すように後述する樹脂フィルム12がラミネートされている。
以下、基材となるアルミニウム板10、表面処理層11、樹脂フィルム12及びフィルムラミネート法について詳しく説明する。
(アルミニウム板)
本発明の角形電池用容器の角形胴部1や天蓋2、底蓋3の基材となるアルミニウム板10としては、各種アルミ材、例えばJIS4000に記載されている3000番台、5000番台、6000番台の合金が挙げられるが、中でも3000番台のものが好ましく用いられる。
以下、アルミニウム板の組成について説明する。
Mnは、アルミニウムの再結晶温度を高め、化合物として晶出状態を変化させて缶の強度や耐食性などを向上させることから、1.0〜1.5%(%は重量(wt)基準、以下同様)添加することが好ましい。Mnの添加量が1.0%未満であると缶の強度や耐食性が十分に得られず、一方、Mnの添加量が1.5%を超えると前記効果が飽和する上に、Al−Mn系、Al−Mn−Fe系晶出物が粗大化し、ネッキング加工及びフランジ成形性が低下する。
Cuは、缶の強度向上や結晶微細化に効果があることから、0.05〜0.20%添加することが好ましい。Cuの添加量が0.05%未満であると容器の強度が十分に得られず、一方、Cuの添加量が0.20%を超えると粗大な晶出物が生成し、ネッキング加工及びフランジ成形性が低下する。
なお、Mgは本発明においては特に規定するものではないが、角形胴部や蓋の強度、成形性、耐食性などを向上させることから、0.8〜5.0%の範囲で添加することが好ましい。Mgの添加量が0.8%未満であると角形胴部や蓋の強度が十分に得られず、一方、Mgの添加量が5.0%を超えるとネッキング加工及びフランジ成形性が低下し、フランジ割れ、しわなどが発生しやすくなる。
その他の成分として、本発明において特に規定するものとして以下の元素がある。
Siは、Mgとの中間相を析出により缶体の強度、耐摩耗性などを向上させる効果があるが、0.6%以下とすることが好ましい。Siの添加量が0.6%を超えるとネッキング加工及びフランジ成形性が低下し、フランジ割れ、しわなどが発生しやすくなる。しかし、Siは地金や缶スクラップに含まれており、これを低減するには多大なコストを必要とし、一定量は許容せざるを得ない。
Feは、アルミニウム中のMnを化合物として晶出状態を変化させて缶の耐食性などを向上させるなどの効果があるが、0.7%以下とすることが好ましい。Feの添加量が0.7%を超えるとネッキング加工及びフランジ成形性が低下し、フランジ割れ、しわなどが発生しやすくなる。しかし、FeもSiと同様、地金や缶スクラップに含まれており、これを低減するには多大なコストを必要とし、一定量は許容せざるを得ない。
Znは、缶の強度向上や晶出物微細化に効果があることから、一定量添加することが好ましい。しかし、Znの添加量が0.10%を超えると粗大な晶出物が生成し、ネッキング加工及びフランジ成形性が低下する。
成形後の角形電池用容器としてのアルミニウム板の厚みは、容器強度、成形性の観点から、一般に0.1〜1.0mmの範囲内にあるのがよいが、成形後の角形胴部側壁部の板厚(角形胴部側壁部の被覆樹脂を除いたアルミニウム最小板厚)は0.3mm以上であることが好ましい。角形胴部側壁部のアルミニウム最小板厚が0.3mm以下であると角形電池用容器の耐圧性が不足するからである。なお、角形電池用容器の耐圧性を増すために、図3に示すような角形胴部を周回するようにビードを形成することも好ましい。
(表面処理層)
アルミニウム板には、被覆樹脂との加工密着性を高めるため、その表面に表面処理を施すことが望ましい。このような表面処理としては、アルミニウム板を冷間圧延し、リン酸クロム処理、その他の有機・無機系の表面処理を浸漬またはスプレー処理で施すことができる。また、塗布型の表面処理も用いることができる。
アルミニウム板にリン酸クロム酸処理により処理皮膜を形成させる場合、ラミネートされる樹脂フィルムの加工密着性の観点から、クロム量は、トータルクロムとして5〜40mg/mが好ましく、15〜30mg/mの範囲がより好ましい。
リン酸クロム処理等の表面処理を行わなかった場合には、樹脂フィルムの加工後の密着性が低下し、成形・洗浄後に剥離を生じることがある。金属及び酸化物を含んだトータルクロムの量が5mg/m未満の場合にも、樹脂フィルムの加工密着性が低下し、剥離を生じる場合があり好ましくない。また、トータルクロムの量が40mg/mを超える場合には、経済的観点、凝集破壊発生による密着性低下などの観点から好ましくない。
一方、樹脂フィルムをラミネートしない側にリン酸クロム酸処理を行う場合にはトータルクロム量は、8mg/m以下とする。外面トータルクロム量が8mg/mを超えると色ムラを生じたり金属光沢色調が失われたりする。缶の外観色調として金属光沢は重要であるからである。
表面処理層11の形成方法として一例を挙げると、リン酸クロム酸処理皮膜の形成は、それ自体公知の手段、例えば、アルミニウム板を、苛性ソーダで脱脂と若干のエッチングを行なった後、CrO:4g/L、HPO:12g/L、F:0.65g/L、残りは水のような処理液に浸漬する化学処理により行われる。
(ラミネート樹脂フィルム)
本発明の角形電池用容器の少なくとも缶内面側には、表面処理を施したアルミニウム板上に樹脂フィルム12が形成されている。樹脂フィルム12としては、二軸延伸ポリエステルフィルムが挙げられ、二軸延伸ポリエステルフィムとしては、エチレンテレフタレート単位を主体とし、且つ他のエステル単位の少量を含む融点が210〜252℃の共重合ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムが好適である。この樹脂フィルムは、エチレンテレフタレート単位を主体とする共重合ポリエステルを、T−ダイ法やインフレーション製膜法でフィルムに成形し、このフィルムを延伸温度で、逐次或いは同時二軸延伸し、延伸後のフィルムを熱固定することにより製造され、次いでアルミニウム板にラミネートされるが、延伸フィルムの作成及びラミネートに際し、前記特性が下記の範囲となるように諸条件をコントロールする。
すなわち、本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムは、X線回折強度比I/Iが、5≧I/I≧1を満足するようにする。
ここで、I はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.34nm(CuKαX線回折角が24°から28°)の回折面によるX線回折強度であり、I はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.39nm(CuKαX線回折角が21.5°から24°)の回折面によるX線回折強度である。
(I/Iの測定)
本発明において、二軸延伸ポリエステルフィルムのI/Iは、X線ディフラクトメータを用い、下記のようにして測定する。測定条件として、X線管球(ターゲット)は銅(波長λ=0.1542nm)を使用し、管電圧、管電流は30kV−100mA程度で、面間隔約0.39nm(2θが22.5゜付近)の回折ピークと面間隔約0.34nm(2θが26゜付近)の回折ピークが分離できるようにスリット幅が角度にして0.1゜以下の受光スリットを選択し、回折角2θに対しX線の入射角と反射角がそれぞれθであり、かつ、入射X線と回折X線がフィルム面法線に対して対称になるように試料を取り付け、入射角θと反射角θが常に等しくなるように保ちながら、回折角2θを20〜30゜間走査し、X線回折スペクトルを測定する。
図4に、上記のように測定したX線回折スペクトルを示す。Iは、ポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.34nm(CuKαX線回折角2θが24゜から28°)の回折面によるX線回折の強度(ピーク値)であり、Iは、ポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.39nm(CuKαX線回折角2θが21.5゜から24°)の回折面によるX線回折の強度(ピーク値)である。そして、IとIの強度比を求めるが、図4のように、それぞれ2θ=24゜と28゜、2θ=21.5゜と24゜の各々の強度のところを直線(Ua,Ub)で結びバックグラウンドとし、このバックグラウンドを引いた縦軸長さの比を、強度比I/Iの値とする。
本発明において、ポリエステルフィルムの強度比I/Iが、耐食性と密接に関連することは多くの実験による試行錯誤の結果見出されたものであり、I/Iが一定の基準を超えて高くなると、一種のポリエステルのフィブリル化による解裂が生じやくなり、加工後の容器や蓋面の耐食性を悪くすると考えられる。またI/Iが一定の基準を超えて小さくなると、ポリエステルフィルムの配向結晶の熱安定性が低下し、加熱後の張り出し加工や折曲げ加工となる容器内面や蓋でポリエステル被膜にクラックが入り、耐食性が悪くなる。従って、本発明の電池用容器は、I/Iが一定の基準内にあることにより、容器の耐食性を向上させる。
/Iのコントロールは以下のようにして行う。I/Iは、ポリエステルフィルムの樹脂組成及び融点、ポリエステルフィルムをアルミニウム板にラミネートする際のラミネート温度によってコントロールすることができる。例えば、I/Iは、ポリエステルフィルムの融点を高くすると大きくなり、また、ポリエステルフィルムをアルミニウム板にラミネートする際にラミネート温度を高くすると小さくすることができる。また、共重合ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムを使用することによって、X線回折強度比をより低くすることが可能である。
なお、ポリエステルフィルムの延伸においては、80〜110℃の温度で、面積延伸倍率が2.5〜16.0、特に4.0〜14.0となる範囲から、ポリエステルの樹脂組成や他の条件との関連で、I/Iが、5≧I/I≧1の範囲となる延伸倍率を選ぶ。
また、フィルムの熱固定は、130〜240℃、特に150〜230℃の範囲から、やはり他の条件との関連で、I/Iが、5≧I/I≧1の範囲となる熱固定温度を選ぶ。
(ポリエチレンテレフタレートフィルム)
本発明のポリエステルフィルムとして好適に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムは、共重合ポリエステル中の二塩基酸成分の70モル%以上、特に75モル%以上がテレフタル酸成分から成り、ジオール成分の70モル%以上、特に75モル%以上がエチレングリコールから成り、二塩基酸成分及び/又はジオール成分の1〜30モル%、特に5〜25モル%がテレフタル酸以外の二塩基酸成分及び/又はエチレングリコール以外のジオール成分から成ることが好ましい。
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸:シロクヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸:の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらのコモノマーの組合せは、共重合ポリエステルの融点を前記範囲とするものでなければならない。
用いるコポリエステルは、フィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、このためには固有粘度(I.V.)が0.55〜1.9dl/g、特に0.65〜1.4dl/gの範囲にあるものが望ましい。
コポリエステルフィルムは、二軸延伸されていることが重要である。二軸延伸の程度は、偏光蛍光法、複屈折法、密度勾配管法密度等でも確認することができる。
(フィルム厚み)
ポリエステルフィルムの厚みは、腐食成分に体するバリヤー性と加工性との兼ね合いから、8〜50μm、特に12〜40μmの厚みを有することが望ましい。この二軸延伸ポリエステルフィルムには、それ自体公知のフィルム用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、カーボンブラック(黒色)等の顔料、各種帯電防止剤、滑剤等を公知の処方に従って配合することができる。
(ラミネート)
ラミネートに際してはラミネートされるフィルムが結晶化温度域を通過する時間を可及的に短かくし、好ましくはこの温度域を10秒以内、特に5秒以内で通過するようにする。このために、ラミネートに際してアルミ素材のみを加熱し、フィルムラミネート後直ちに樹脂被覆アルミニウム板を強制冷却するようにする。冷却には、冷風、冷水との直接的な接触や強制冷却された冷却ローラの圧接が用いられる。このラミネートに際してフィルムを融点近傍の温度に加熱し、ラミネート後急冷を行えば、結晶配向度を緩和させることが可能となる。
(接着プライマー)
ポリエステルフィルムとアルミニウム板との間に、接着プライマーを介在させることができるが、アルミニウム板とフィルムとの両方に優れた接着性を示すものが好ましい。密着性と耐食性とに優れたプライマーの代表的なものは、種々のフェノール類とホルムアルデヒドから誘導されるレゾール型フェノールアルデヒド樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂とから成るフェノール−エポキシ系プライマーであり、特にフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを50:50〜5:95重量比、特に40:60〜10:90の重量比で含有するプライマーである。接着プライマー層は、一般に0.3〜5μmの厚みに設けるのがよい。
(樹脂被覆アルミニウム板の製造)
以下、樹脂被覆アルミニウム板の製造方法を説明する。アルミニウム板への樹脂フィルムのラミネートは、前記二軸延伸ポリエステルフィルムとアルミニウム板とを、フィルムのアルミニウム板に接する表層部のみが溶融される条件で圧着してラミネートを行う。例えば、アルミニウム板を二軸延伸ポリエステルフィルムの融点以上の温度に予じめ加熱しておき、ラミネート後直ちに樹脂被覆アルミニウム板を急冷する。また、二軸延伸ポリエステルフィルムとアルミニウム板とを、これらの何れかに設けられた接着プライマー層を介して圧着しラミネートを行うこともできる。
(角形電池用容器の製造)
次に、前述した樹脂被覆アルミニウム板を本発明の角形電池用容器へ成形する工程を説明する。なお、図5〜図6に説明する各工程図には、上側に平面図、下側に縦断面図を示す。
(角形胴部の製造)
電池用容器の側面に継目のない側面無継目の角形胴部は、樹脂被覆アルミニウム板を円形に打ち抜いてブランクとして、以下のような方法により製造される。
(カッピング−絞り缶)
第1工程は、円形のブランクを深絞りする工程であり、缶底1a、缶胴D1を有する有底円形缶Kに成形する。有底円形缶Kの上端開口部には、円形ブランク外縁が開口周縁1cとして残っている。本工程での深絞りは、1回で絞る方法のみでなく、絞り−再絞り法など連続して絞り成形を行う方法も適用できる。
第2工程は、トリミング工程であり、有底円形缶Kの上端の開口部周縁1cと缶底1aとを切断し、缶胴D1から切り離す。缶胴D1は両端が完全に開口した側面無継目の円筒D2となる。
第3工程は、リフォーム工程であり、側面無継目の円筒D2を、円筒状の胴断面から角形状の胴断面に変形する工程である。角形へのリフォームする機構の原理を図7に示す。図7(a)は、円筒D2の内面周囲に等間隔に接触するように配設された4本のリフォーム用丸ロッド20を、図7(b)に示すように対角線方向(矢印Aの4方向)に拡大移動させて、側面無継目の円筒D2を角形をした角形胴部1にリフォームする。
なお、図7に示したリフォーム機構は4本の丸ロッドを用いて拡大する一例であるが、その他の方法として、円筒D2内に分割金型を配置し拡大する機構とすることもでき、本発明ではその方式を限定するものではない。
第4工程は、ネッキング工程であり、角形胴部1の両端外部に金型を押し当て両端開口部の周囲を狭めて角形胴部1の内側に変形させたネック部1nを形成する。
このように角形胴部1の開口部を狭める目的は、最終工程で天蓋、底蓋を二重巻締めしたときの二重巻締め部外寸法を、角形胴部1の外寸法と同一か、やや小さめにするためである。二重巻締め部の外寸法を角形胴部1の外寸法と同一かやや小さめにすることにより、角形電池用容器を多数個並置したときに、隣り合う容器の間で無駄な空隙を作らないで済み配置における体積効率を高めることができる。
次に、図6に示す第5工程は、フランジング工程であり、ネッキング工程で狭められた両端ネック部1nを、開口部全周にわたり外方に広げてフランジ1fを形成する。このフランジ1fは、天蓋及び底蓋を取り付ける二重巻締めにおいて角形胴部1の端部巻締め代となる。
第6工程は、所望により形成するビード加工工程であり、角形胴部1を周回するように凹凸のあるビード1bを形成する。ビード1bは角形胴部1の変形強度を著しく高め、さらに胴部外表面積を広くする効果があり角形電池用容器内で発生する熱を外部に放散しやすくする効果もある。
また、角形電池用容器として水平方向に多数個並置したときに、隣り合う容器の間でビード1bの凹凸により空隙ができるため空気の対流が生じ、熱の放散を促進する効果がある。
電池は、クリーンエネルギー車の回生/加速アシスト駆動用として、パワー増大化(大電流)が進んでおり、適用される容器に対しても放熱に対する要求が高まっている。
容器の温度の上昇は、アルミニウム板に積層した樹脂フィルムの軟化および密着性劣化を促進する。
したがって、このように放熱効率を高めることは、電池容器に限らず各種の電気機器用ケースとしての要求を満たすものである。
第7工程は、角形胴部1に天蓋2及び底蓋3を取り付ける工程であり、底蓋3を二重巻締めして発電要素を充填した後に、天蓋2を二重巻締めして封口して本発明の角形電池用容器を完成する。
図8に二重巻締め前後の二重巻締め部の断面構造を拡大して示す。まず、図8(a)のように角形胴部1の開口部フランジ1fに天蓋2のカーリング部2cを合致させて配置する。なお、カーリング部2cの内面全周には、封口部の密封性及び絶縁性を確保するため有機コンパウンド2bが塗布されている。図8(b)に示す二重巻締め工程では、角形胴部1に天蓋2を被せた状態で、回転ロール40aで缶体を回転させながらカーリング部2cの外周から巻締めロール40bにより加圧して、天蓋カーリング部2cとフランジ1fを重ねた状態で内方に巻締めて二重巻締め部2a,3aを形成する。
有機コンパウンド2bは、ゴム状の弾力を有する絶縁性の材料で、従来から二重巻締め部などの密封性を向上させるために使用されている公知の材料が用いられる。例えば、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリイソプレンゴムやポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の一種あるいは所要の希釈剤、硬化剤などをブレンドしたものが用いられる。
図9、図10は、上記のようにして形成された角形電池用容器に絶縁体及びリード線を取り付けたそれぞれ斜視図及び概略断面図である。角形電池用容器内部に充填された発電要素30の上下部からリード線(30a、30b)が、天蓋及び底蓋に設けられた上下の電極5a、5bにそれぞれ導かれている。上下の電極5a、5bは、天蓋2及び底蓋3の中央部に貫通孔を設け、容器と電気絶縁するためその貫通孔に嵌入された環状の絶縁体4を介して天蓋2及び底蓋3に取り付けられている。
なお、図10の波線で示すように、容器を縦方向に直列させて連結できるように、上部の電極5aの外形は雌型、下部の電極bの外形は雄型としている。
(蓋の製造)
なお、上記した天蓋及び底蓋は以下のようにして製造する。先ず、樹脂被覆アルミニウム板を矩形板の形にプレスで打抜き、所望の蓋形状に成形すると共に、金型を用いて、中央部に凹部と貫通孔を形成して天蓋及び底蓋とする。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの説明は実施例の説明のためのものであり、いかなる意味においても以下の例に限定されるものではない。
(実施例1)
板厚0.5mmのアルミニウム板(3003−H14)を用いた。組成は、Mn:1.1重量%、Cu:0.19重量%、Si:0.30重量%、Fe:0.43重量%、残部がAlであった。
このアルミニウム板の表面に、金属クロム換算で、クロム量が20mg/mとなるリン酸クロム酸処理を施して基板とした。この基板の片面に、共重合成分としてイソフタル酸量が10モル%を含むポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(PET/I)共重合樹脂の二軸延伸フィルム(30μm厚)を、245℃の温度でラミネートし、樹脂被覆アルミニウム板を製造した。このフィルムは、融点が240℃で、I/IのX線回折強度比は5.0であった。
上記のようにして得た樹脂被覆アルミニウム板を円形ブランクに打ち抜き、その後、絞り成形を行い、開口端耳部及び底のトリミングの後、内部にエキスパンダーを挿入してエクスパンド加工を行って拡径、缶側壁にビード加工、ネッキング・フランジ加工して、角形電池用の角形胴部に変形させて、両端開口部に天蓋及び底蓋を二重巻き締めして取り付け、樹脂を容器内面に被覆した電池用容器を製造した。
(実施例2)
実施例1で用いた基板表面に、融点の異なる二軸延伸フィルム(30μm厚)を230℃の温度でラミネートした以外は、実施例1と同様である。このフィルムは、融点が230℃で、I/IのX線回折強度比は4.0であった。
(実施例3)
実施例1で用いた基板表面に、融点の異なる二軸延伸フィルム(30μm厚)を235℃の温度でラミネートした以外は、実施例1と同様である。このフィルムは、融点が230℃で、I/IのX線回折強度比は3.5であった。
(実施例4)
実施例1で用いた基板表面に、融点の異なる二軸延伸フィルム(30μm厚)を240℃の温度でラミネートした以外は、実施例1と同様である。このフィルムは、融点が230℃で、I/IのX線回折強度比は2.0であった。
(実施例5)
実施例1で用いた基板表面に、融点の異なる二軸延伸フィルム(30μm厚)を250℃の温度でラミネートした以外は、実施例1と同様である。このフィルムは、融点が230℃で、I/IのX線回折強度比は1.0であった。
(比較例1)
実施例1と同様の基板の片面に、共重合成分としてイソフタル酸量が10モル%を含むポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(PET/I)共重合樹脂の無配向フィルム(30μm厚)を、210℃の温度でラミネートし、樹脂被覆アルミニウム板を製造した。このフィルムは、融点が210で、I及びIのピークは検出できなかった。上記のようにして得た樹脂被覆アルミニウム板を実施例1と同様の成形加工を行い、実施例1と同様の電池用容器を製造した。
(比較例2)
比較例1で用いた基板表面に、融点の異なる二軸延伸フィルム(30μm厚)を240℃の温度でラミネートした以外は、比較例1と同様である。このフィルムは、融点が240℃で、I/IのX線回折強度比は6.0であった。
(比較例3)
比較例1で用いた基板表面に、ポリエチレンテレフタレート(PET)の二軸延伸フィルム(30μm厚)を260℃の温度でラミネートした以外は、比較例1と同様である。このフィルムは、融点が255℃で、I/IのX線回折強度比は10.0であった。
(比較例4)
比較例1で用いた基板表面に、融点の異なる二軸延伸フィルム(30μm厚)を260℃の温度でラミネートした以外は、比較例1と同様である。このフィルムは、融点が230℃で、I/IのX線回折強度比は0.5であった。
(評価方法)
上記のようにして製造した実施例及び比較例の角形電池用容器の内部にプロピレンカーボネート塩を主成分とした腐食性の電解液を充填し、80℃で30日間放置して耐食性の評価を行った(製品長期保存テストに相当する促進テスト)。なお、評価のための電池用容器は、天蓋及び底蓋に貫通孔を設けずに密封した。評価は各n=10個実施した。
(評価結果)
これらの結果によると、実施例1〜5の角形電池用容器は、I/Iを1.0〜5.0の範囲としたことで、長期間の保存でも、容器内面の変色やフィルム浮きも見られず、耐食性評価で優れていた。また、容器の加工時においても、フィルム浮き(剥離)や白化は見られず、成形性においても優れていた。
一方、比較例1の無配向樹脂フィルムを用いた容器は、内面にフィルム浮きが見られ、いずれ内面フィルムが剥離するものと推測される。その他、比較例2〜4の容器も、容器加工時において、フィルム浮きや白化が見られ、耐食性が劣った。
なお、変色やフィルム浮きの評価は、製品長期保存テスト後、電解液を廃棄して容器内面を目視で観察した。それらの結果を表1に示す。
Figure 0004855712
以上説明したように、本発明によれば、耐食性の高い角形電池用容器を安価なコストで提供することができる。また、角形胴部の両端開口部に二重巻き締めされた天蓋又は/及び下蓋に貫通孔を設け、該貫通孔に絶縁体を介して電極を取り付け、電池用容器とすることができる。
本発明の角形電池用容器の斜視図である。 本発明の角形電池用容器を形成する素材を説明する断面図である。 角形胴部を周回するビードが加工された側面無継目の胴部の両開口端に、天蓋及び底蓋を二重巻締めして取り付けた角形電池用容器の斜視図である。 X線ディフラクトメータを用いて測定した二軸延伸ポリエステルフィルムのX線回折スペクトルを示すグラフである。 本発明の角形電池用容器の製造工程を示す説明図である(第1〜4工程)。 本発明の角形電池用容器の製造工程を示す説明図である(第5〜7工程)。 角形胴部へのリフォーム機構の原理を示す説明図である。 二重巻締め前後の二重巻締め部の断面構造の拡大図である。 角形電池用容器に絶縁体及びリード線を取り付けた斜視図である。 角形電池用容器に絶縁体及びリード線を取り付けた概略断面図である。
符号の説明
1 ・・・ 角形胴部
1a ・・・ 缶底
1c ・・・ 開口部周縁
1f ・・・ フランジ
1fc ・・・ フランジコーナー部
1k ・・・ ネック部の基部
1n ・・・ ネック部
2 ・・・ 天蓋
2a ・・・ 二重巻締め部(天蓋)
2b ・・・ 有機コンパウンド
2c ・・・ カーリング部
3 ・・・ 底蓋
3a ・・・ 二重巻締め部(底蓋)
10 ・・・ アルミニウム板
11 ・・・ 表面処理層
12 ・・・ 樹脂フィルム
20 ・・・ リフォーム用丸ロッド
40a ・・・ 回転ロール
40b ・・・ 巻締めロール
D1 ・・・ 缶胴
D2 ・・・ 側面無継目の円筒
K ・・・ 有底円形缶

Claims (3)

  1. 側面無継目の角形胴部の両端開口部にネッキング・フランジング加工を施してネック部及びフランジを形成し、該角形胴部の両端開口部に天蓋と底蓋を二重巻き締めした電池用容器であって、該角形胴部、該天蓋および該底蓋の少なくとも内面に、以下の二軸延伸したポリエステルフィルムをラミネートしたアルミニウム板からなることを特徴とする角形電池用容器。
    二軸延伸したポリエステルフィルム:
    5≧I/I≧1
    を満足するX線回折強度比を有し、I はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.34nm(CuKαX線回折角が24°から28°)の回折面によるX線回折強度であり、I はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.39nm(CuKαX線回折角が21.5°から24°)の回折面によるX線回折強度を示す。
  2. 前記側面無継目の角形胴部は、円形ブランクを深絞り成形した有底円形缶の底部を切断した側面無継目の円筒を角形に変形して、両端開口部をネッキング・フランジング加工を施した後、該角形胴部を周回するように複数本のビードを形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の角形電池用容器。
  3. 前記側面無継目の角形胴部の両端開口部に二重巻き締めした天蓋及び底蓋の中央部に貫通孔を設け、該貫通孔に絶縁体を介して電極が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の角形電池用容器。
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