JP4855550B2 - 塩素化炭化水素の製造方法 - Google Patents
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Description
このような塩素化炭化水素の製造方法としては、例えば炭素数2の不飽和化合物に四塩化炭素を付加して炭素数3の塩素化飽和炭化水素を得る第一反応と、
該塩素化飽和炭化水素を脱塩化水素して炭素数3の塩素化不飽和炭化水素を得る第二反応と、
該塩素化不飽和炭化水素にさらに塩素を付加して炭素数3の塩素化飽和炭化水素を得る第三反応と
からなる三段階反応が知られている。例えば特公平2−47969号公報には、エチレンと四塩化炭素との付加反応を、金属鉄とホスホリル化合物とからなる相間移動触媒の存在下で行って1,1,1,3−テトラクロロプロパンとし(第一反応)、
次いでこれを第4級アンモニウム塩又は第4級ホスホニウム塩の存在下に水酸化ナトリウム水溶液中、40〜80℃の温度で処理して脱塩化水素することによって1,1,3−トリクロロプロペン及び3,3,3−トリクロロプロペンからなるトリクロロプロペン混合物を得て(第二反応)、
さらに該トリクロロプロペン混合物に、塩素の存在下で紫外光を照射して塩素化することによって1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンとする(第三反応)方法が記載されている。
当業者は、適当な原料化合物を選択したうえで、上記三段階反応の一部又は全部を行うことにより、所望の炭素数及び塩素数を有する塩素化された飽和又は不飽和の炭化水素を得ることができる。
しかしながら上記の如き公知の塩素化炭化水素製造方法は、その各段階においてそれぞれ以下のような改善すべき問題点を有している。
第一反応においては、使用される鉄−ホスホリル化合物触媒が、調製直後こそ高い活性を示すものの、その後の活性は経時的に急激に落ちる問題があるため、所望の高転化率を得るためには多量の触媒を使用する必要がある。しかし、触媒を多量に使用すると、反応初期における反応の立ち上がりが急激となって反応の制御が困難となり、目的物の反応収率が損なわれる場合がある。また、多量の触媒を使用すると、廃触媒の処理に労力及びコストがかかり、製造コストの削減の障害ともなっている。さらに、鉄−ホスホリル化合物触媒の調製に使用される金属鉄は、保存中に表面が徐々に酸化され、その酸化状態によって反応の初期速度が大きく変わるとの問題がある。
次に第二反応においては、多量に消費される水酸化ナトリウムのコストの問題があるほか、廃棄されることとなる水相中に溶解している有機塩素化合物の処理に多大の労力を要する。
第三反応の光塩素化反応において十分に高い反応転化率を実現するためには、反応時間(滞留時間)を長くすることを要する。
さらに、塩素化炭化水素として例えば1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを高純度で得たいときには、第三反応の後に生成物の蒸留精製を行う方法によることが一般的である。しかしながらこのような塩素数の多い塩素化炭化水素を蒸留精製する場合、不純物との分離性が極めて悪い。そのため、高純度品を得るための蒸留塔としては極めて高性能のものが必要となるほか、精密蒸留を行うには長時間を要することとなり、コスト上の問題がある。
上記のように、塩素化炭化水素を製造するための三段階反応において、
第一反応においては、触媒の使用量を削減しつつ、高い転化率で目的生成物を安定した反応速度で効率的に付加反応を行う方法が;
第二反応においては、高価なアルカリ源を使用せず、また処理すべき副生成物の生成が抑制された脱塩化水素反応を行う方法が;
第三反応においては、より効率性の高い塩素化反応を行う方法が、それぞれ熱望されている。
本発明によれば、上記目的は、
下記一般式(1)で表される飽和化合物を熱分解して下記一般式(2)で表される不飽和化合物を得る熱脱塩化水素工程を経ることを特徴とする、塩素化炭化水素を製造するための方法によって達成される。この脱塩化水素工程の後、さらに下記一般式(2)で表される不飽和化合物と塩素とを反応させて下記一般式(3)で表される飽和化合物を得る塩素化工程を行うことができる。
CCl3−CCl2−mHm−CCl3−nHn (1)
CCl2=CCl2−mHm−1−CCl3−nHn (2)
CCl3−CCl3−mHm−1−CCl3−nHn (3)
(式中、mは1又は2であり、nは0〜3の整数である。)
上記一般式(1)で表される飽和化合物は、好ましくは四塩化炭素と下記一般式(0)で表される不飽和化合物とを、液相の反応系中で鉄−リン酸エステル触媒の存在下に付加させる付加反応工程によって得られた下記一般式(1’)で表される飽和化合物である。
CCl2−mHm=CCl2−pHP (0)
CCl3−CCl2−mHm−CCl3−pHp (1’)
(式中、mは1又は2であり、pは0〜2の整数であり、ただしm≧pである。)
以下、本発明について、反応の各段階ごとに分けて順次に詳説する。
<第一反応>
本発明における第一反応は、四塩化炭素と上記一般式(0)で表される不飽和化合物との付加反応によって、上記一般式(1’)で表される飽和化合物を得る、付加反応である。本反応は、好ましくは液相の反応系中で、触媒の存在下に行われる。
上記一般式(0)で表される不飽和化合物としては、エチレン、塩化ビニル、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、1,1,2−トリクロロエチレン等を挙げることができ、これらのうち、エチレン又は塩化ビニルを用いることが好ましい。
本反応により得られる上記一般式(1’)で表される飽和化合物であるクロロプロパンの種類は、原料として使用する上記一般式(0)で表される不飽和化合物の種類に依存する。例えば原料としてエチレンを使用した場合には上記一般式(1’)で表される飽和化合物として1,1,1,3−テトラクロロプロパンが得られる。また原料として塩化ビニルを使用した場合には上記一般式(1’)で表される飽和化合物として1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンが得られる。上記一般式(0)で表される不飽和化合物としてその他の化合物を用いた場合に、上記一般式(1’)で表される飽和化合物としていかなる生成物が得られるかは、当業者には自明であろう。
使用される触媒としては、例えば鉄−リン酸エステル触媒、鉄−非プロトン極性溶媒触媒、銅−アミン触媒等を挙げることができるが、これらのうち鉄−リン酸エステル触媒が好ましい。
本反応は、液相に鉄−リン酸エステル触媒が存在する状態で行われる。この鉄−リン酸エステル触媒は、液相の反応系中(すなわち液体状の四塩化炭素中)で、所定量の鉄及び所定量のリン酸エステルを接触させることにより調製される。鉄とリン酸エステルとの接触は、反応開始前に鉄及びリン酸エステルの各全量を反応系中に一度に投入して行う方法によるか、
あるいは鉄の全量及びリン酸エステルの一部を反応開始前に添加し、残余のリン酸エステルは付加反応の進行中に追加添加することにより行うことができる。ここで、「反応開始前」とは、四塩化炭素中に上記一般式(0)で表される不飽和化合物を導入する前の時点をいう。
ここで使用される鉄としては、例えば金属鉄、純鉄、軟鉄、炭素鋼、フェロシリコン鋼、鉄を含む合金(例えばステンレス鋼等)等を挙げることができる。鉄の形状としては、例えば粉末状、粒状、塊状、棒状、球状、板状、繊維状等の任意の形状であることができるほか、これらを用いてさらに任意の加工をした金属片、蒸留充填物等であってもよい。前記加工金属片としては、例えばコイル、網、スチールウール、その他の不定形片状を;前記蒸留充填物としては、例えばラシヒリング、ヘリックス等を、それぞれ挙げることができる。これらのいずれの形態であっても使用することができるが、リン酸エステル及び反応物との接触面積を十分に確保する観点から、粉末状又は繊維状であることが好ましい。同様の観点から、窒素を吸着質としてBET法により測定した鉄の比表面積は0.001〜5m2/gであることが好ましい。
反応開始前にリン酸エステルを一括して添加する場合における鉄の使用量としては、高い反応転化率及び高い選択率を両立するとの観点から、使用する四塩化炭素の1モルに対して、0.001モル以上とすることが好ましく、0.005モル以上とすることがより好ましく、0.01モル以上とすることがさらに好ましく、特に0.05モル以上とすることが好ましい。鉄の使用量の上限は特に限定されない。鉄の使用量を多くしても、活性及び選択性にはほとんど影響しないが、反応に関与せずに無駄となる鉄が多くなる点で、経済上不利益となる。かかる観点から、鉄の使用量は使用する四塩化炭素の1モルに対して、10モル以下とすることが好ましく、5モル以下とすることがより好ましく、1モル以下とすることがさらに好ましく、特に0.1モル以下とすることが好ましい。
上記リン酸エステルとしては、例えば下記一般式(4)
(式(4)中、R1はフェニル基又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子、フェニル基又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表される化合物を挙げることができ、その具体例として例えばリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸ジエチル、リン酸ジブチル、リン酸モノフェニル、リン酸モノブチル、リン酸ジメチルフェニル、リン酸ジエチルフェニル、リン酸ジメチルエチル、リン酸フェニルエチルメチル等を挙げることができる。これらのうち、上記一般式(4)において、R1,R2及びR3のすべてが炭素数1〜4のアルキル基であるリン酸トリアルキルエステルが好ましく、特にリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル又はリン酸トリブチルが好ましい。
リン酸エステルの使用量は、高い転化率及び高い選択率を担保するとの観点から、使用する四塩化炭素の1モルに対して、0.001モル以上とすることが好ましく、特に0.002以上とすることが好ましい。リン酸エステルの使用量の上限は特に限定されないが、使用量を過度に多くすると、反応に関与せずに無駄となるリン酸エステルが多くなる点で、経済上不利益となる。かかる観点から、リン酸エステルの使用量は、四塩化炭素の1モルに対して、5モル以下とすることが好ましく、1モル以下とすることがより好ましく、0.5モル以下であってもよい。
第一反応の反応温度は、高い転化率と高い選択率とを両立するために、70〜180℃とすることが好ましく、90〜150℃とすることが更に好ましい。反応圧力は、上記反応温度において反応系が液相を維持し得る圧力であればよく、一般には0.05〜3MPaGとすることができ、好ましくは0.1〜2MPaGである。反応圧力を0.05MPa未満とすると、液相中における原料(上記式(0)で表される不飽和化合物)の濃度が過小となって反応添加率が不足する場合があり、一方、3MPaを超える圧力では多量体が生成する割合が高くなって選択率が損なわれる場合があり、いずれも好ましくない。
第一反応の反応時間は、2〜24時間とすることが好ましく、2〜10時間とすることがより好ましい。ここで、反応時間を2時間よりも短くすると反応転化率が不十分となる場合があり、一方、24時間を超えて長く反応を行う実益はない。
本発明においては、上記の如き第一反応において、鉄の全量及びリン酸エステルの一部を反応開始前に添加し、残余のリン酸エステルは付加反応の進行中に追加添加することが、反応の制御性を良好とし、選択率を高くし、そして使用する鉄の量を低減しうる点で好ましい。
反応開始前に一括添加される鉄の量は、反応開始前にリン酸エステルを一括して添加する場合における鉄の使用量の下限として上記した値よりも少なくすることができる。この場合における鉄の使用量は、使用する四塩化炭素の1モルに対して、0.0001モル以上とすることが好ましく、0.0005モル以上とすることがより好ましく、0.001モル以上とすることがさらに好ましく、特に0.005モル以上とすることが好ましい。鉄の使用量の上限は、経済上の観点から設定される。この場合における鉄の使用量は、使用する四塩化炭素の1モルに対して、1モル以下とすることが好ましく、0.5モル以下とすることがより好ましく、0.1モル以下とすることがさらに好ましい。
本反応においては、リン酸エステルは反応開始前にその一部を添加し、残余のリン酸エステルは付加反応進行中に追加添加することが好ましい。リン酸エステルの追加添加は、1回だけ行ってもよく、数回に分割して行ってもよく、あるいは連続的に行ってもよい。数回に分割して行う場合における追加添加の回数としては、2〜10回とすることが好ましく、2〜6回とすることが好ましい。
リン酸エステルの全使用量(反応開始前添加分及び追加添加分の全部の合計量)は、使用する四塩化炭素の1モルに対して、0.001モル以上とすることが好ましく、特に0.002モル以上とすることが好ましい。追加添加する場合のリン酸エステルの総添加量は特に限定されない。しかしながらこの場合もリン酸エステルの総添加量を過度に多くすると、反応に関与せずに無駄となるリン酸エステルが多くなる点で、経済上不利益となる。かかる観点から、追加添加する場合のリン酸エステルの総添加量は、四塩化炭素の1モルに対して、5モル以下とすることが好ましく、1モル以下とすることがより好ましく、0.5モル以下であってもよい。
リン酸エステルを追加添加する方法においては、リン酸エステルの使用量を、従来技術、例えば上記特公平2−47969号公報に記載された方法よりも少ない量としても、目的の化合物を、より高い転化率及び安定した反応速度にて効率的に製造することができる利点を有する。
本反応の好ましい態様においては、リン酸エステルは、その一部が反応開始前に添加される。反応開始前におけるリン酸エステルの添加量としては、使用する四塩化炭素の1モルに対して0.0005モル以上とすることが好ましく、0.001モル以上とすることがより好ましい。反応開始前に添加されるリン酸エステルの上限値は、追加添加の態様(追加添加を1回だけ行うか、数回に分割して行うか、あるいは連続的に行うか)によらず、また数回に分割して追加添加する場合にはその添加回数によらず、リン酸エステルの全使用量の80%以下とすることが好ましく、70%以下とすることがより好ましい。反応開始前におけるリン酸エステルの添加量を上記の如き範囲とすることにより、反応を安定して立ち上げることができ、反応のコントロールが容易となり、結果として高い転化率を達成することができることとなる。
かくして開始された付加反応は、上記一般式(0)で表される不飽和化合物の消費速度を連続的にモニターしながら行うことが好ましい。この不飽和化合物の消費速度の連続的モニターは、例えば気相流通下における液相バッチ反応において、気体状で連続的に供給される不飽和化合物の量と、適当な反応圧力を維持するために気相から排出される不飽和化合物の量とを随時比較することにより行うことができる。そして、該消費速度が初期値から所定の程度に低下したときに、リン酸エステルの追加添加が行われ、あるいは開始される。
リン酸エステルの追加添加を1回だけ行う場合には、不飽和化合物の消費速度が反応開始後60分間における平均消費速度の好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜40%となったときに、リン酸エステルの残りの全量が追加添加される。この追加添加により、一旦減少した不飽和化合物の消費速度が回復し、以後、該消費速度が再び漸減しながら残余の付加反応が進行していくこととなる。
リン酸エステルの追加添加を数回に分割して行う場合には、消費速度が反応開始後60分間における平均消費速度の好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜40%となったときに、第1回目のリン酸エステルの追加添加が行われる。この第1回目の追加添加により、一旦減少した不飽和化合物の消費速度が回復し、以後、該消費速度が再び漸減して行く。そして、不飽和化合物の消費速度が再度反応開始後60分間における平均消費速度の好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜40%となったときに、第2回目以降のリン酸エステルの追加添加が行われる。この追加添加により、不飽和化合物の消費速度は再度回復する。以降、さらに継続して上記一般式(0)で表される不飽和化合物の消費速度をモニターし、所定の回数だけリン酸エステルの追加添加を行うことができる。
リン酸エステルの追加添加を数回に分割して行う場合の各分割添加量は、各回毎の添加量を等しく設定するか、あるいは回数を重ねるごとに徐々に少ない添加量とすることが好ましい。
リン酸エステルの追加添加を連続的に行う場合には、消費速度が反応開始後60分間における平均消費速度の好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜40%となったときに、リン酸エステルの追加添加が開始される。このリン酸の連続的な追加添加は、リン酸エステルの残りの全量を前記の時点から好ましくは1〜400分、より好ましくは2〜360分かけて連続的に行われる。
リン酸エステルの追加添加の態様としては、1回のみ又は連続的に行うことが好ましい。ここで、リン酸エステルの追加添加を1回のみ行う場合には操作が簡便となる利点があり、これを連続的に行う場合には反応のコントロールが容易になる利点がある。
上記のようにして行われる付加反応は、その合計の反応時間を2〜12時間とすることが好ましく、2〜10時間とすることがより好ましい。
かくして得られる反応混合物は、高い転化率及び高い選択率で目的物に転化した目的物を含むものである。従って、リン酸エステルを追加添加する方法によって得られた反応混合物は、これに含有される未反応の四塩化炭素(その含有率はわずかである。)、鉄−リン酸エステル触媒残滓及び過剰の上記一般式(0)で表される不飽和化合物を分離すれば、多くの場合においてこれをそのまま製品として用いることができ、あるいはそのまま次工程の反応に供することができる。所望により第一反応後に精製を行うことができるが、該精製方法はごく簡単なものでよく、例えば理論段数2〜10段程度の簡易な精製により高純度の製品とすることができる。
<第二反応>
本発明における第二反応は、上記一般式(1)で表される飽和化合物を熱分解して上記一般式(2)で表される不飽和化合物を得る熱脱塩化水素工程である。
本発明者らは、上記一般式(1)で表される飽和化合物が加熱によって容易に脱塩化水素化反応を起こす特性を有するものであることを見出した。かかる特性は、上記一般式(1)で表される飽和化合物中のCCl3基によるものと推察される。即ち本発明者らは、上記CCl3基中のClが熱による脱離を起こし易く、従って1〜10秒程度の短い加熱時間で容易に熱分解による脱塩化水素反応を起こすことが可能であることを見出すことにより、極めて簡易な第二反応を実現したのである。
一方、上記一般式(1)で表される飽和化合物以外の、CCl3基を持たない塩素化飽和炭化水素に対して熱分解による脱塩化水素化反応を行おうすると、長い滞在時間が必要となり、その結果として反応中に生成する副生成物の割合が増え、また過度に熱分解して生成した炭素が配管中に析出するという問題も発生する。
上記式(1)で表される飽和化合物の具体例としては、例えば1,1,1−トリクロロプロパン、1,1,1,2−テトラクロロプロパン、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、1,1,1,2,3−ヘプタクロロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,2,3,3−ヘキサクロロプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタクロロプロパン等を挙げることができる。これらのうち、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを使用すると、第二反応によって上記一般式(2)で表される不飽和化合物として種々の化合物の中間体として有用である1,1,3−トリクロロプロペンが得られる点で好ましい。
また、ここで使用される上記一般式(1)で表される飽和化合物は、上記の如き第一反応によって製造された上記一般式(1’)で表される飽和化合物であることが好ましい。
第二反応によって得られる上記一般式(2)で表される不飽和化合物の具体例を、上記式(1)で表される飽和化合物の具体例として上記に列記した化合物の順番に対応させて列記すると、1,1−ジクロロプロペン、1,1,2−トリクロロプロペン、1,1,3−トリクロロプロペン、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、1,1,2,3,3−ペンタクロロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタクロロプロペン及び1,1,2,3,3,3−ヘキサクロロプロペンが例示される。
本発明における第二反応は、上記一般式(1)で表される飽和化合物を、その熱分解温度以上の温度において加熱する方法によることができる。
この熱分解反応は気相で行われることが好ましく、その反応方式は、流通方式及びバッチ方式のいずれによってもよい。しかしながら、本発明における第二反応の熱分解反応は短い反応時間で高い反応転化率を達成することができるので、流通方式によることが、反応の効率性の面から好ましい。
上記加熱温度としては好ましくは300〜600℃であり、より好ましくは350〜550℃である。加熱時間(滞在時間)は、例えば1〜10秒とすることが好ましく、1〜5秒とすることがより好ましく、さらに1〜3秒とすることが好ましい。ここで、加熱温度が300℃未満であるかあるいは加熱時間が1秒未満であると熱分解が困難となり、一方、加熱温度600℃を超えるかあるいは加熱時間が10秒を超えると反応の選択率が低くなる場合があり、いずれも好ましくない。
本発明の第二反応における加熱は、公知の方法により行うことができる。反応器としては、外壁に加熱装置を備えた反応管(分解炉)が好適である。反応器を構成する材質としては、例えば石英、セラミック、金属等を例示することができる。加熱装置としては、例えばバーナー、電気ヒーター、高周波加熱装置等を使用することができる。
第二反応において、上記式(1)で表される飽和化合物を反応器に供給する方法としては、例えば気化器によって化合物を気化し、ガスとして反応器に導入する方法、あるいは液状の化合物を噴霧して反応器に導入する方法等を採用することができる。このとき反応器には、上記式(1)で表される飽和化合物のみを供給してもよく、あるいは上記式(1)で表される飽和化合物と適当な希釈ガスとの混合物を導入してもよい。ここで使用される希釈ガスとしては、不活性ガスを使用することが好ましく、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等を好ましく使用することができるが、希釈ガスに要するコストの観点から特に窒素を用いることが好ましい。希釈ガス中の酸素濃度は1重量%以下に調整することが好ましい。また、第二反応の脱塩化水素工程によって得られる生成物が水を含んでいると、その除去のために余分の精製工程が必要となり、経済上の不利益となる。これを避けるため、希釈ガス中の水分濃度は1,000重量ppm以下に調整することが好ましい。
上記式(1)で表される飽和化合物を希釈することによって、急激な反応の発生を抑えることが可能となるが、希釈しすぎると反応効率が低下する。これらのバランスをとる観点から、希釈する場合の希釈倍率は1.1〜2倍程度とすることが好ましい。
第二反応における反応圧力は特に限定されず、減圧下でも加圧下でも実施することが可能である。加圧下の方が反応器を小さくすることが可能であるが、反応圧を高くするほど配管への炭素の析出が起こりやすい傾向にある。本発明においては、第二反応を常圧で行うことにより、熱分解による脱塩化水素化を極めて効率的に行うことが可能であるから、加圧条件下の反応をあえて選択する実益は少ない。
第二反応における熱分解は、無触媒条件下で十分迅速に進行するが、前記反応器内に固定床方式又は流動床方式の触媒床を設け、熱分解反応を触媒の存在下に加熱する態様によって行ってもよい。このことにより、前記の好ましい温度範囲のうちの比較的に低い温度においても高い転化率を達成することができ、好ましい。ここで使用される触媒としては、例えばシリカ、アルミナ、チタニア等の酸化物、活性炭等を挙げることができる。
第二反応後のガスは、速やかに冷却することが、副生成物を減らす観点から好ましい。ここで、熱分解反応器から上記の熱分解温度で排出されるガスを、好ましくは300℃未満、より好ましくは200℃未満、特に好ましくは100℃未満の温度に、好ましくは2秒以内に冷却することが有利である。この冷却は公知の方法、例えば供給ガスとの熱交換法、脱塩化水素体の液滴を噴霧してその気化潜熱により冷却する方法等、により行うことができる。
上記の如くして得られた第二反応の反応混合物(反応器からの排出ガス)は、これをそのまま第三反応に供してもよく、あるいは第二反応で生成(副生)した塩化水素を何らかの方法(例えば蒸留)によって除去した後に第三反応に供してもよい。ここで、反応混合物である排出ガスから特に塩化水素(HCl)を除く必要のないことが本発明の方法の特徴の一つである。このことにより、脱塩化水素反応の反応器と塩素化反応の反応器との間に蒸留塔や中間タンクの如き、塩化水素を分離するための設備を設ける必要がなくなり、塩素化炭化水素の製造設備をコンパクトに設計することが可能となる。
なお上記において、「反応混合物(排出ガス)をそのまま第三反応に供する」とは、第二反応の反応器からの排出ガスについて特段の精製(特に塩化水素の除去)を行わない出口組成のまま第三反応の反応器に移送することをいうのであって、決して排出後のガス温度の調整や第三反応に必要な塩素ガスの追加までを除外するものではない。
<第三反応>
本発明における第三反応は、上記一般式(2)で表される不飽和化合物と塩素とを反応させて上記一般式(3)で表される飽和化合物を得る、塩素化工程である。本第三反応は、上記一般式(2)で表される不飽和化合物を塩素を接触させるだけで迅速に進行する。
上記一般式(3)で示される飽和化合物を具体的に例示すると、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,2,3,3−ヘキサクロロプロパン,1,1,1,2,3,3,3−ヘプタクロロプロパン、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタクロロプロパン、1,1,1,2,2,3,3,3−オクタクロロプロパン等を挙げることができる。これらのうち1,1,1,2,3−テトラクロロプロパンは、種々の化合物の中間体として有用であり、好ましい。使用する上記一般式(2)で表される不飽和化合物に応じて、上記一般式(3)で表される飽和化合物としていかなる生成物が得られるかは、当業者には自明であろう。
本発明における第三反応を、上記第二反応に引き続いて行うことにより、以下のようなメリットを享受することができる。
第一に、本発明における第二反応の生成物が水をほとんど含有しないことによるメリットである。本発明では、上記第二反応である脱塩化水素工程を、好ましくは気相における熱分解反応によって行うため、第二反応の排出ガスはほとんど水を含まない。従って本発明は、第三反応の前又は後において大規模な脱水設備を必要としないメリットがある。
第二に、第二反応の生成物が鉄をほとんど含有しないことによるメリットである。一般に、塩素化不飽和炭化水素の塩素化工程においては、鉄が存在しない方が好ましいとされる。これは、塩素化反応の生成物である塩素化飽和炭化水素の分解ないし逆反応が、鉄の存在によって促進されるからである。本発明においては、第二反応を好ましくは気相中で行うため、好都合なことに第二反応の生成物中に鉄がほとんど混入しないことも、メリットの一つである。
本発明における第三反応は、上記一般式(2)で表される不飽和化合物を凝縮せずに気相の状態で行ってもよく、あるいはこれを凝縮して液相において行ってもよい。
本発明における第三反応を気相で行う場合、流通方式及びバッチ方式のいずれによってもよいが、本発明における方法は短い反応時間で高い反応転化率を達成することができるので、流通方式によることが、反応の効率性の面から好ましい。
本発明の方法における第三反応を気相で行うには、第二反応の排出ガスと塩素ガスとの混合ガスを、所定温度で所定時間加熱することによって行うことができる。塩素ガスの使用割合としては、第二反応の反応混合物中に含まれる脱塩化水素体(上記一般式(2)で表される不飽和化合物)の1モルに対して、好ましくは0.9〜2.0モルであり、より好ましくは1.0〜1.5モルである。この値が0.9モル未満であると第三反応の反応転化率が損なわれる場合があり、一方2.0モルを超えると副生物の生成が増大するとの不都合が生じる場合があり、いずれも好ましくない。
気相における塩素化反応の反応温度としては、気相状態を維持し、且つ副生物の生成を抑制するとの観点から、上記式(2)で表される不飽和化合物の沸点以上且つ300℃以下とすることが好ましく、沸点〜280℃とすることがより好ましい。反応時間は、好ましくは1〜60秒であり、より好ましくは1〜40秒である。
一方、本発明における第三反応を液相で行う場合、その反応温度としては、原料として使用する上記一般式(2)で表される不飽和化合物が気化しない温度領域であれば特に限定されないが、副生物を少なくするために120℃以下とすることが好ましい。供給する塩素量は,転化率及び選択率を高くするとの観点から、上記一般式(2)で表される不飽和化合物の1モルに対して0.9〜2.0とすることが好ましい。第三反応を液相で行う場合の反応時間は、好ましくは1〜10時間である。液相反応を促進するために、塩素の吹き込み方法を微細気泡とする方法、紫外光を照射すること等も好適な態様である。
上記のようにして得られる第三反応の排出ガス又は排出液は、目的物である上記一般式(3)で表される飽和化合物を高濃度で含有する粗生成物である。この粗生成物は、必要に応じて公知の方法によって精製した後に、製品とされる。任意的に行われる精製方法としては、例えば蒸留精製を挙げることができる。蒸留を行う際には、上記一般式(3)で表される化合物の熱分解を防止するため、粗生成物にp−メトキシフェノール、o−t−ブチルフェノール、オイゲノール、o−アリルフェノール等のフェノール誘導体、特にアリル基を有するフェノール誘導体を添加した後、蒸留を行うことが好ましい。
第二反応で得られた排出ガスから副生した塩化水素を分離せずに、上記式(2)で表される不飽和化合物と塩化水素との混合物を第三反応に供給して塩素化した場合、該第三反応によって得られる粗生成物は、塩化水素、及び場合によって未反応の塩素を含有している。このような場合は、粗生成物について、下記の工程(A)〜(C)を実施し、粗生成物中の塩化水素を回収して再利用することが好ましい。
(A)上記第三反応から得られた粗生成物から塩化水素(未反応の塩素を含む場合もある)を分離する、塩化水素分離工程、
(B)上記塩化水素分離工程から得られた塩化水素を酸化処理する酸化工程、及び
(C)上記酸化工程より得られた塩素を、前記塩素化工程の塩素源として循環使用する塩素循環工程。
上記(A)塩化水素分離工程は、粗生成物から塩化水素、場合によって塩化水素及び塩素を分離し得る公知の方法によって行うことができる。かかる方法としては、例えば粗生成物中の上記式(3)で表される飽和化合物を凝縮して、塩化水素、又は塩化水素と塩素とを、ガスとして分離する方法を挙げることができる。
上記(B)酸化工程における塩化水素の酸化条件としては、公知の方法が特に制限なく採用される。かかる方法としては、例えば触媒酸化法等を挙げることができる。具体的には、塩化水素又は塩化水素と塩素とを、ガス状態で、例えばクロミア又はルテニウムを担持したチタニア触媒層を通過させる方法等を挙げることができる。このときの反応温度は例えば200〜450℃とすることができる。
<高純度の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの製造>
以上述べてきたように、本発明の方法に従って三段階反応又はそのうちの任意の段階の反応を行えば、純度の高い塩素化炭化水素を効率的に製造することができる。
しかしながら、上記の如き三段階反応によって特に高純度の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを迅速、安価に製造する場合には、上記第一反応後且つ第二反応前に1,1,1,3−テトラクロロプロパンの蒸留精製を行うことが有利である。
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは、上記一般式(0)で表される不飽和化合物としてエチレンを用い、これに四塩化炭素を付加して1,1,1,3−テトラクロロプロパンを得る第一反応と、
該1,1,1,3−テトラクロロプロパンを脱塩化水素して3,3,3−トリクロロプロペン及び1,1,3−トリクロロプロペンよりなる群から選択される少なくとも1種の塩素化飽和炭化水素を得る第二反応と、
該トリクロロプロペンに塩素を付加して1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを得る第三反応と
からなる三段階反応によって製造することができる。
ここで、第一反応によって得られる反応混合物は、主成分として1,1,1,3−テトラクロロプロパンを含有するが、これ以外に不純物として四塩化炭素、ヘキサクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,3−トリクロロプロペン、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン等を含有する。本発明においては、第一反応後の精製において、上記不純物のうち特にヘキサクロロエタン、テトラクロロエチレン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの濃度を可及的に低くしておくことが好ましい。具体的には、ヘキサクロロエタン、テトラクロロエチレン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの合計の重量を、これらと1,1,1,3−テトラクロロプロパンとの合計重量に対して、1重量%以下とすることが好ましく、0.9重量%以下とすることがより好ましい。第一反応の反応混合物について、第一反応後かつ第二反応前に、上記の程度に精製することによって、第三反応後に目的物として得られる1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは、分離困難な不純物を実質的に含まないこととなる。このことにより、本発明の方法で得られた1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは、これをそのまま製品とすることができ、あるいはその後に簡易な精製方法を行うことによって極めて高純度の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンとすることができるのである。
本願発明者らは、本願発明の目的を達成するために、第一、第二及び第三反応の各反応において生成する不純物の動向を詳細に検討した。その結果、第一反応において不純物として生成するヘキサクロロエタン、テトラクロロエチレン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンが、第三反応後の精製において問題となることを突き止めた。
即ち、ヘキサクロロエタンは第二反応及び第三反応を経由しても反応せずにそのまま第三反応後まで残存し;
テトラクロロエチレンは第二反応においては反応しないが第三反応の塩素化反応においてヘキサクロロエタンに変換し;
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンは、そのうちの一部が第二反応及び第三反応を経由してもそのまま反応せずに第三反応後まで残存することが分かった。
ここで説明のために、第一反応における目的物及び不純物の常圧における沸点を第1表に、第三反応における目的物及び不純物の常圧における沸点を第2表に、それぞれ示す。
第一反応後では目的物と不純物との沸点差が大きく(第1表)、従って簡易な蒸留装置で精製の目的を達することができる。
そして、第一反応後に不純物のうちのヘキサクロロエタン、テトラクロロエチレン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを除去すれば、第三反応後の反応混合物中に、ヘキサクロロエタン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンは存在しえないこととなるから、第一反応後に精製を行った場合には、第三反応後に精製を行わずとも目的物を得ることができ、あるいは簡易な精製によって極めて高純度の目的物を得ることができるのである。
このような発想に基づいて高純度のペンタクロロプロパンを製造しようとする試みは、今まで知られていない。
第一反応後の精製を蒸留精製による場合、使用する蒸留塔としては、常温常圧下で液体状の物質の精留に使用されるものとして当業界において知られているものを制限なく使用することができ、段塔又は充填塔を好ましいものとして挙げることができる。段塔の段数又は段塔に換算した充填塔の相当段数は、2〜20段であることが好ましい。
蒸留塔は一塔で行ってもよいし、数塔で行ってもよい。これらのうち、蒸留塔を数塔で行う態様は、反応混合物中に溶解した塩化鉄等の除去効率がよくなるため、好ましい態様である。
上記段塔としては、十字流トレイ、シャワートレイ等を用いることができる。これらの具体例としては、十字流トレイとして、例えば多孔板トレイ、泡鐘トレイ、バルブトレイ、ターボグリッドトレイ等を;
シャワートレイとして、例えばターボグリッドトレイ、リップルトレイ等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち、十字流トレイを用いることが好ましい。
上記充填塔としては、規則充填物又は不規則充填物を充填した蒸留塔を使用することができる。上記不規則充填物としては、例えばラシヒリング、ベルサドル、マクマホン、ナッターリング、ポーリング、カスケードミニリング、ヘリパック等を挙げることができる。これらのうち、規則充填物又はカスケードミニリングを充填した蒸留塔を使用することが、蒸留効率を高くすることができる点で好ましい。
蒸留温度は、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの分解を抑制することができ、且つ蒸留圧力の制御が容易である等の観点から、60〜140℃とすることが好ましく、80〜130℃とすることがより好ましい。蒸留圧力は、前記の好ましい温度における蒸留操作を維持しうる圧力に設定することが好ましいが、例えば1〜20kPaとすることができる。
第一反応の反応混合物(粗1,1,1,3−テトラクロロプロパン、以下、「粗TCP」という。)は、蒸留塔の下部の適当な位置、好ましくは中間段から蒸留塔に導入される。粗TCP中の重質分は導入位置から下降して缶出液として除去される。他方、粗TCP中の目的物及び酸分は蒸留塔内を上昇し、不純物の濃度が所望の程度まで減じた段において、目的物を蒸留塔の塔側流として抜き出すことが好ましい。ここで、「塔側流として抜き出す」とは、蒸留塔の最上段よりも少なくとも1段下の段、好ましくは3〜10段下であって、かつ不純物を除去するのに十分な段における液相から精製物を抜き出すことをいう。
抜き出し段よりも上の段においては酸分が濃縮されるから、塔頂流出物は、凝縮器を通して凝縮液と非凝縮気体とに分離したうえ、非凝縮気体(酸分を高濃度で含む)は抽気排除し、凝縮液の全部又は一部は精製物の抜き出し段よりも上の段に還流させることが好ましい。ここで、凝縮液の抜き出し量を留出液量、還流液を還流液量とした場合、還流液量/留出液量で定義される還流比は、0.1〜50とすることが好ましく、1〜40とすることがより好ましい。
さらに、蒸留塔の粗TCPを導入する段よりも下の段から不活性ガスを導入して塔内液中の酸分のストリッピング効果を促進することも好適に採用することができる。ここで使用される不活性ガスとしては、例えば窒素、ヘリウム等を挙げることができる。不活性ガスの導入量としては、塔内の上昇気体容量全体に対する体積比として、1×10−5〜1×10−3とすることが好ましく、1×10−5〜1×10−4とすることがより好ましい。
かくして得られた精製1,1,1,3−テトラクロロプロパン(以下、「精製TCP」という。)は、不純物としてヘキサクロロエタン、テトラクロロエチレン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを実質的に含有せず、従ってかかる精製TCPを使用して第二反応及び第三反応を経由して得られる1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは、不純物としてヘキサクロロエタン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを含有しないことになる。従って、第三反応後の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは、これをそのまま製品とすることができ、あるいは簡易な精製を行うことのみで極めて高純度の製品とすることができる。
ここで、実施される簡易な精製としては、例えば蒸留精製、脱酸剤処理等を挙げることができる。
蒸留精製は、上記第一反応後に好ましく行われる蒸留精製として上記したところに準じて実施することができるが、本発明の方法によって得られる1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは、これと沸点の近い不純物を含有しないため、精製に使用する蒸留塔の段数又は相当段数は、2〜20程度で足りる。この蒸留は、粗1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンに上述のフェノール誘導体、特にアリル基を有するフェノール誘導体を添加した後に行うことが好ましい。
上記脱酸剤処理は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを適当な脱酸剤と接触させることにより行うことができる。ここで使用される脱酸剤としては、例えばシリカ、アルミナ、ケイ酸塩等を挙げることができる。
上記シリカとしては、例えば無定形シリカ、結晶性シリカ、シリカ水和物等を挙げることができ、その具体例として、例えばシリカゲル、ケイソウ土等を挙げることができる。
上記アルミナとしては、例えば無定形アルミナ、結晶性アルミナ、アルミナ水和物等を挙げることができる。
上記ケイ酸塩は、二酸化ケイ素と金属酸化物との塩であればその種類に特に制限なく用いることができる。具体的には、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸アルカリ土類金属塩;シリカアルミナゲル等のケイ酸アルミニウム等を挙げることができる。このようなケイ酸塩を含む鉱物としては、ゼオライト、合成ゼオライト、カオリナイト、活性白土、ハロイサイト、モンモリロナイト、アロフェン、ベントナイト等を用いることができる。
上記の如き脱酸剤としては、例えばセカードKW(品川化成(株)製)等の市販品を使用してもよい。
脱酸剤の形状としては、粉末状、顆粒状、粒状等の適宜のものを特に制限なく用いることができる。脱酸剤の粒径は、接触効率の点から小さいものを好ましく使用することができ、その平均粒径が9mm以下であることが好ましく、0.3〜5mmであることがより好ましい。
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを脱酸剤と接触させる際の空間速度としては、0.001〜20hr−1とすることが好ましく、0.005〜10hr−1とすることがより好ましい。接触温度は、5〜80℃とすることが好ましく、10〜70℃とすることがより好ましい。
<三段階反応の実施例>
実施例1−1
(1)第一反応
攪拌器を取り付けたSUS製のオートクレーブに、四塩化炭素769g、リン酸トリエチル4.5g及び鉄粉(和光純薬工業(株)製、還元鉄)14gを仕込み、温度を110℃に設定し、0.4MPaGの反応圧力を保つようにエチレンを導入して反応を開始した。6時間後、オートクレーブを冷却して、反応後の反応液を回収してガスクロマトグラフィーにより分析し、転化率及び選択率を求めた。その結果、四塩化炭素基準での転化率は80%、1,1,1,3−テトラクロロプロパンへの選択率は90%であった。
(2)第二反応(脱塩化水素工程)
上記工程で生成した1,1,1,3−テトラクロロプロパンを200℃の予熱器で気化し、入口ガス流量を基準として滞在時間が2.5秒になるように流量を調整し、電気炉によって500℃に加熱した反応管(材質SUS316、内径4.35mm、長さ300mm)中にガス状で導入し、常圧にて気相で熱分解反応を行った。
このとき、上記第二反応において得られた生成ガスの一部を0℃に冷却し、液化してガスクロマトグラフィーにより分析し、転化率及び選択率を求めた。その結果、転化率は99.7%、1,1,3−トリクロロプロペンへの選択率は99.0%であった。
(3)第三反応(塩素化工程)
上記第二反応で生成した生成ガスを150℃に冷却したうえで、そのまま(第二反応において副生した塩化水素を除去せずに)塩素化工程に供給し、気相で塩素化を以下の条件で行った。
上記生成ガスの供給ラインに塩素ガスを合流した混合ガス(1,1,3−トリクロロプロペン:塩素=100:110(モル比))を、内径4.35mm、長さ300mmの反応管中に通過させ、滞在時間1.24秒で塩素化反応を行なった後、反応管出口より得られる粗クロロプロパンを0℃に冷却することにより液化して、塩化水素と未反応塩素を除去した後、蒸留精製して、目的とする1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを得た。
このとき、上述の液化した粗クロロプロパンの一部を取出し、ガスクロマトグラフィーで分析し、転化率及び選択率を求めた。その結果、1,1,3−トリクロロプロペン基準の転化率は99%、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンへの選択率は95%であった。
実施例1−2
(1)第一反応
攪拌器を取り付けたSUS製のオートクレーブに四塩化炭素769g、リン酸トリエチル4.5g及び鉄粉(和光純薬工業(株)製、還元鉄)14gを仕込み、温度を110℃に設定し、0.4MPaGの反応圧力を保つように塩化ビニルを導入して反応を開始した。6時間後、オートクレーブを冷却して、反応後の反応液を回収してガスクロマトグラフィーにより分析し、転化率及び選択率を求めた。その結果、塩化ビニル基準での転化率は81%、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンへの選択率は91%であった。
(2)第二反応(脱塩化水素工程)
上記工程で生成した1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを200℃の予熱器で気化し、入口ガス流量を基準として滞在時間が2.5秒になるように流量を調整し、電気炉によって500℃に加熱した反応管(材質SUS316、内径4.35mm、長さ300mm)中にガス状で導入し、常圧にて気相で熱分解反応を行った。
このとき、上記第二反応において得られた生成ガスの一部を0℃に冷却し、液化してガスクロマトグラフィーにより分析し、転化率及び選択率を求めた。その結果、転化率は99.1%、1,1,3,3−テトラクロロプロペンへの選択率は98.0%であった。
(3)第三反応(塩素化工程)
上記第二反応で生成した生成ガスを180℃に冷却したうえで、そのまま(第二反応において副生した塩化水素を除去せずに)塩素化工程に供給し、気相で塩素化を以下の条件で行った。
上記生成ガスの供給ラインに塩素ガスを合流した混合ガス(1,1,3,3−テトラクロロプロペン:塩素=100:110(モル比))を、内径4.35mm、長さ300mmの反応管中に通過させ、滞在時間1.24秒で塩素化反応を行なった後、反応管出口より得られる粗クロロプロパンを0℃に冷却することにより液化して、塩化水素と未反応塩素を除去した後、蒸留精製して、目的とする1,1,1,2,3,3−ヘキサクロロプロパンを得た。
このとき、上述の液化した粗クロロプロパンの一部を取出し、ガスクロマトグラフィーで分析し、転化率及び選択率を求めた。その結果、1,1,3,3−テトラクロロプロペン基準の転化率は99%、1,1,1,2,3,3−ヘキサクロロプロパンへの選択率は90%であった。
実施例1−3
上記実施例1−1において、第三反応(塩素化工程)を以下の通り実施した以外は実施例1−1と同様に実施して、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを得た。
即ち、第二反応(脱塩化水素工程)により生成したトリクロロプロペンを液化して塩化水素を分離した後、第三反応に供給し、塩素360NmL/minで供給しつつ、温度80℃で塩素化反応を行った(1,1,3−トリクロロプロペン:塩素=100:120(モル比))。なお、上記塩素供給量は標準状態(SATP)換算値である。
反応開始から270分後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析して転化率及び選択率を求めた。その結果、1,1,3−トリクロロプロペン基準の転化率は99%、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンへの選択率は96%であった。
本発明の方法における三段階反応の効果を考察するに際しては、後述の実施例4−3、4−4及び4−6の結果も参照されたい。
<第一反応においてリン酸エステルを追加点添加する態様の実施例>
以下の比較例、実施例及び参考例では、エチレンと四塩化炭素との付加反応を、気相流通下における液相バッチ反応により試験した。
反応装置としては、撹拌機、エチレン用ガス導入口及びガス排出口並びにリン酸エステルの追加添加口を有するSUS製のオートクレーブ(内容積1,500mL)を用いた。エチレンは、上記ガス導入口を介して気相に導入した。反応中は、ガス導入口から導入されるエチレン量とガス排出口から排出されるエチレン量との差分からエチレンの消費速度を連続的にモニターした。反応中、反応圧力は0.4MPaG±0.02MPa(5%)となるように制御した。
反応終了後の反応混合物はガスクロマトグラフィーにより分析し、使用した四塩化炭素基準の反応転化率及び目的生成物である1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率を求めた。
なお、以下におけるエチレン消費速度の単位は、すべて標準状態(SATP)換算値である。
比較例2−1
オートクレーブ中に四塩化炭素1,560g、リン酸トリエチル12g及び化学反応用純鉄粉(JFEスチール(株)製、K−100T)4gを仕込み、温度を110℃に設定し、反応圧力が0.4MPaGとなるようにエチレンを導入し、付加反応を開始した。
エチレン導入開始後しばらくするとエチレンの消費量が急激に上昇した。エチレン導入開始から60分間のエチレン平均消費速度は1,000NmL/分であり、エチレン導入開始から60分後のエチレン消費速度は400NmL/分を下回った。
エチレン導入開始から6時間後、オートクレーブを冷却し、反応終了後の反応混合物を回収してガスクロマトグラフィーにより分析したところ、使用した四塩化炭素基準の反応転化率は27%であり、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率は86%であった。
実施例2−1
オートクレーブ中に四塩化炭素1,560g、リン酸トリエチル8g及び化学反応用純鉄粉4gを仕込み、温度を110℃に設定し、反応圧力が0.4MPaGとなるようにエチレンを導入し、付加反応を開始した。
エチレン導入開始後しばらくするとエチレンの消費量が急激に上昇した。エチレン導入開始から60分間のエチレン平均消費速度は950NmL/分であった。エチレン導入開始から60分後にエチレン消費速度は400NmL/分を下回ったので、リン酸トリエチル4gを1回で追加添加した。
エチレン導入開始から6時間後、オートクレーブを冷却し、反応終了後の反応混合物を回収してガスクロマトグラフィーにより分析したところ、使用した四塩化炭素基準の反応転化率は85%であり、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率は90%であった。
実施例2−2
オートクレーブ中に四塩化炭素1,560g、リン酸トリエチル8g及び化学反応用純鉄粉4gを仕込み、温度を110℃に設定し、反応圧力が0.4MPaGとなるようにエチレンを導入し、付加反応を開始した。
エチレン導入開始後しばらくするとエチレンの消費量が急激に上昇した。エチレン導入開始から60分間のエチレン平均消費速度は950NmL/分であった。
エチレン導入開始から60分後にエチレン消費速度は400NmL/分を下回った。そこでリン酸トリエチルを、エチレン導入開始から60分後から0.016g/分の添加速度で250分間連続的に追加添加した(リン酸トリエチルの追加添加量は合計4gである。)。
エチレン導入開始から6時間後、オートクレーブを冷却し、反応終了後の反応混合物を回収してガスクロマトグラフィーにより分析したところ、使用した四塩化炭素基準の反応転化率は93%であり、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率は90%であった。
参考例2−1
オートクレーブ中に四塩化炭素1,560g、リン酸トリエチル12g及び化学反応用純鉄粉60gを仕込み、温度を110℃に設定し、反応圧力が0.4MPaGとなるようにエチレンを導入し、付加反応を開始した。
エチレン導入開始から6時間後、オートクレーブを冷却し、反応終了後の反応混合物を回収してガスクロマトグラフィーにより分析したところ、使用した四塩化炭素基準の反応転化率は85%であり、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率は86%であった。
参考例2−2
オートクレーブ中に四塩化炭素1,560g、リン酸ジブチル14g及び化学反応用純鉄粉60gを仕込み、温度を100℃に設定し、反応圧力が0.4MPaGとなるようにエチレンを導入し、付加反応を開始した。
エチレン導入開始から6時間後、オートクレーブを冷却し、反応終了後の反応混合物を回収してガスクロマトグラフィーにより分析したところ、使用した四塩化炭素基準の反応転化率は21%であり、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率は85%であった。
以上の結果から、鉄及びリン酸エステルを同じ量だけ用いた場合、これらの全量を反応開始前に一括添加する従来技術の方法(比較例2−1)よりも、反応開始前に鉄の全量及びリン酸エステルの一部を添加し、残余のリン酸エステルは上記付加反応進行中に追加添加する本発明の方法(実施例2−1及び2−2)の方が、反応転化率及び選択率の双方において優れていることが理解される。
<第一反応後且つ第二反応前に生成物の蒸留精製を行う、三段階反応の実施例>
実施例3−1
(1)第一反応
オートクレーブ中に四塩化炭素1,560g、リン酸トリエチル8g及び化学反応用純鉄粉4gを仕込み、温度を110℃に設定し、反応圧力が0.4MPaGとなるようにエチレンを導入し、第一反応(付加反応)を開始した。エチレン導入開始から1時間後、リン酸トリエチル4gを追加添加した。
エチレン導入開始から6時間後にオートクレーブを冷却し、反応終了後の反応混合物を回収してガスクロマトグラフィーにより分析したところ、使用した四塩化炭素基準の反応転化率は85%であり、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率は90%であった。
(2)第一反応後の精製
上記第一反応によって得られた反応混合物につき、以下のようにして二段階の蒸留精製を行った。
一回目蒸留として、内部に柴田科学(株)製ガラスパッキンを高さ500mmに充填した塔径30mmφの蒸留塔において、還流をかけずに、蒸留圧力10kPa、蒸留温度95℃にてバッチ蒸留を行った。ここで得られた精製留分中の1,1,1,3−テトラクロロプロパンの純度は、98.5%であった。
上記で得られた精製留分について、二回目の蒸留として、内部に柴田科学(株)製ガラスパッキンを高さ1,000mmに充填した塔径30mmφの蒸留塔において、還流比3、蒸留圧力10kPa、蒸留温度95℃にてバッチ蒸留を行った。このとき、低沸留分を4重量%、ボトム高沸残渣を6重量%除いて得られた留出成分である精製1,1,1,3−テトラクロロプロパンの純度はほぼ100%であった。
(3)第二反応
上記で得た精製1,1,1,3−テトラクロロプロパンを用いて、滞在時間2.5秒、反応温度500℃の条件で第二反応(脱塩化水素反応)を行った。この脱塩化水素反応における反応の転化率は99.7%、目的物である1,1,3−トリクロロプロペンの選択率は99.0%であった。なお、上記転化率及び選択率は、それぞれ、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを基準として算出した。
(4)第三反応
第三反応(塩素化反応)では、上記第二反応の排出ガスを150℃に冷却し、流量調整した塩素ガスと混合したうえで反応器に供給し、滞在時間1.24秒の条件で塩素化反応を行い、粗1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを得た。ここで、塩素ガスの流量は、第二反応の排出ガスの1m3(0℃、98kPa)に対して1.1m3(0℃、98kPa)とした。この塩素化反応における反応転化率は99.0%、目的物である1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの選択率は95.0%であった。なお、上記転化率及び選択率は、それぞれ、1,1,3−トリクロロプロペンを基準として算出した。
(5)第三反応後の精製
上記第三反応で得られた粗1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを、内部に柴田科学(株)製ガラスパッキンを高さ1,000mm充填した塔径30mmφの蒸留塔において、還流比3、蒸留圧力10kPa、蒸留温度135℃にてバッチ蒸留を行った。このとき、低沸留分を3重量%、ボトム高沸残渣を7重量%除いて得られた留出成分である精製1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの純度はほぼ100%であった。また、この時点における酸分は210重量ppmであった。別途、この蒸留塔の塔頂より100mm下部(塔頂から0.2段下に相当する。)から、留出成分をサンプリングしたところ、精製1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの純度はほぼ100%であり、酸分は40重量ppmであった。
(6)各成分の動向
上記の各反応及び各精製における各成分の動向を第3表に示した。
実施例3−2
上記実施例3−1において、粗1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの蒸留塔の留出口(塔頂)にセカードKW(商品名、品川化成(株)製)を充填したカラムを設置したほかは、実施例1と同様に行い、精製1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの流出成分を得た。ここで、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン留分とセカードKWとの接触における空間速度は1hr−1とした。
本実施例における各成分の動向は、実施例3−1におけるのと同様であった。上記精製1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンにおける酸分は20重量ppm以下であった。
実施例3−3
上記実施例3−1において、第三反応後の精製に使用した蒸留塔の蒸留圧力5kPaとし、蒸留温度を110℃としたほかは、実施例1と同様に行い、留出口(塔頂)から精製1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの流出成分を得た。
本実施例における各成分の動向は、実施例3−1におけるのと同様であった。上記精製1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンにおける酸分は90重量ppmであった。
比較例3−1
上記実施例1において、第一反応後の蒸留精製を行わなかったほかは、実施例1と同様に行い、塔頂の留出口から精製1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの流出成分を得た。この精製1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンにおける酸分は210重量ppmであった。
本比較例における各成分の動向を第4表に示した。
<第二反応を熱分解で行う態様の実施例>
実施例4−1
200℃の予熱器で気化させた1,1,1,3−テトラクロロプロパンを、入口ガス流量を基準として滞在時間が2.5秒になるように流量を調整して、電気炉により500℃に加熱した反応管(材質SUS316、内径4.35mm、長さ300mm)中にガス状で導入し、常圧にて気相で熱分解反応を行った。
出口ガスを0℃に冷却し、液化してガスクロマトグラフィーにより分析し、転化率及び1,1,3−トリクロロプロペンへの選択率を求めた。
結果は第5表に示した。
実施例4−2
反応管の温度を450℃とした以外は、実施例4−1と同様に熱分解を行った。
転化率及び選択率の分析結果を第5表に示した。
実施例4−3
反応管の温度を550℃とした以外は、実施例4−1と同様に熱分解を行った。
転化率及び選択率の分析結果を第5表に示した。
実施例4−4
滞在時間を1.25秒とした以外は、実施例4−1と同様に熱分解を行った。
転化率及び選択率の分析結果を第5表に示した。
実施例4−5
上記実施例4−1において、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの代わりに1,1,1,2−テトラクロロプロパンを原料として使用し、反応管の温度を450℃とした以外は、実施例4−1と同様に熱分解を行った。
1,1,1,2−テトラクロロプロパンの転化率及び1,1,2−トリクロロプロペンへの選択率の分析結果を第5表に示した。
実施例4−6
上記実施例4−1において、原料である1,1,1,3−テトラクロロプロパンを75%の濃度となるように窒素ガスで希釈して反応管中に供給した以外は、実施例4−1と同様に熱分解を行った。
転化率及び選択率の分析結果を第5表に示した。
実施例4−7
200℃の予熱器で気化させた1,1,1,3−テトラクロロプロパンを、入口ガス流量を基準として滞在時間が9.0秒になるように流量を調整して、電気炉により450℃に加熱した反応管(材質SUS316、内径7.3mm、長さ600mm)中にガス状で導入し、常圧にて気相で熱分解反応を行った。
転化率及び選択率の分析結果を第5表に示した。
本発明によると、塩素化炭化水素を製造するための三段階工程のそれぞれにおいて、以下のような利点を伴う方法が提供される。
第一反応においては、触媒の使用量を削減しつつ、高い転化率で目的生成物を安定した反応速度で効率的に付加反応を行う方法が;
第二反応においては、高価なアルカリ源を使用せず、また処理すべき副生成物の発生が抑制された脱塩化水素反応を行う方法が;
第三反応においては、より効率性の高い塩素化反応を行う方法が、それぞれ提供される。
本発明によると、簡易な操作によって効率的に高純度の塩素化炭化水素を製造することができる。
Claims (8)
- 下記一般式(1)で表される飽和化合物を、気相において無触媒条件下で熱分解して下記一般式(2)で表される不飽和化合物を得る熱脱塩化水素工程を経ることを特徴とする、塩素化炭化水素を製造するための方法。
CCl3−CCl2−mHm−CCl3−nHn (1)
CCl2=CCl2−mHm−1−CCl3−nHn (2)
(式中、mは1又は2であり、nは0〜3の整数である。) - 熱分解温度が350〜550℃である、請求項1に記載の方法。
- 上記熱脱塩化水素工程の後、さらに上記一般式(2)で表される不飽和化合物と塩素とを反応させて下記一般式(3)で表される飽和化合物を得る塩素化工程を行う、請求項1又は2に記載の方法。
CCl3−CCl3−mHm−1−CCl3−nHn (3)
(式中、mは1又は2であり、nは0〜3の整数である。) - 上記熱脱塩化水素工程の後、得られた反応混合物から塩化水素を分離せずに該反応混合物を上記塩素化工程に供する、請求項3に記載の方法。
- 上記熱脱塩化水素工程の後、生成した反応混合物から塩化水素を分離し、該分離した塩化水素を酸化して塩素へ変換し、該塩素を上記塩素化工程の塩素源として用いる、請求項3に記載の方法。
- 上記一般式(1)で表される飽和化合物が、四塩化炭素と下記一般式(0)で表される不飽和化合物とを、液相の反応系中で鉄−リン酸エステル触媒の存在下に付加させる付加反応工程によって得られた下記一般式(1’)で表される飽和化合物である、請求項3に記載の方法。
CCl2−mHm=CCl2−pHP (0)
CCl3−CCl2−mHm−CCl3−pHp (1’)
(式中、mは1又は2であり、pは0〜2の整数であり、ただしm≧pである。) - 上記付加反応工程における鉄−リン酸エステル触媒が、反応系に鉄とリン酸エステルとを添加して反応系中で調製されるものであり、
反応開始前に鉄の全量及びリン酸エステルの一部を添加し、残余のリン酸エステルを上記付加反応進行中に追加添加する、請求項6に記載の方法。 - 上記付加反応工程後、且つ上記熱脱塩化水素工程前に、上記一般式(1’)で表される飽和化合物の蒸留精製を行う、請求項6に記載の方法。
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