JP2017149689A - クロロプロパン類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、鉄錯体が溶存する四塩化炭素の液相中で、不飽和化合物を付加反応させて得られる反応液を次なる反応工程や蒸留工程に供した際に、重合反応や脱塩化水素化反応等の副反応による、目的物であるクロロプロパン類の収量低下を抑制し、さらに、装置の腐食や配管の閉塞の問題が生じることも防止するクロロプロパン類の製造方法を提供することである。【解決手段】本発明は、鉄錯体が溶存する四塩化炭素の液相中で、一般式(1)C2HaCl4−a(1)(式(1)において、aは0〜4の整数である)で表される不飽和化合物を付加反応させて、得られた反応液を助剤濾過することを特徴とする、クロロプロパン類の製造方法である。【選択図】 なし

Description

本発明は、クロロプロパン類の製造方法に関する。より詳しくは、鉄を触媒として、四塩化炭素と炭素数2の不飽和化合物(非置換又は塩素で置換されたエチレン)を反応させてクロロプロパン類を得た後、濾過を行い、続いて蒸留を行って、クロロプロパン類を製造する方法である。
クロロアルカン類は、農薬、医薬品、フロン代替材料、フッ素化合物等の各種製品を製造するための原料ないし中間体として重要である。たとえば、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは1,1,2,3−テトラクロロプロペンや2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの原料となる。1,1,2,3−テトラクロロプロペンは除草剤として有用なトリクロロアリルジイソプロピルチオカルバメートを製造する際の原料や、2−クロロ−3,3,3―トリフルオロプロペンの原料として用いられる。
このようなクロロプロパン類の製造方法としては、例えば炭素数2の不飽和化合物(非置換又は塩素で置換されたエチレン)に四塩化炭素を付加してクロロプロパン、該クロロプロパンを脱塩化水素してクロロプロペンを得、該クロロプロペンを塩素化して塩素の置換数が増した高次クロロプロパンを得る三段階の反応が知られている。
具体的には、特許文献1に、エチレンと四塩化炭素とを、金属鉄とリン酸トリアルキルを配合して形成された鉄−リン酸エステル錯体触媒(鉄錯体とも略する)の溶存下に付加反応させて1,1,1,3−テトラクロロプロパンとした後、脱塩化水素して1,1,3−トリクロロプロペンもしくは3,3,3−トリクロロプロペンとし、該トリクロロプロペンを塩素と反応させて塩素化し、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンとする方法が開示されている。
一般に、上記付加反応より得られるクロロプロパン類は、前述の農薬、医薬品、フロン代替材料、フッ素化合物等の各種製品を製造するための原料若しくは中間体であって、次なる反応工程として、脱塩化水素化反応工程やフッ素化工程に供給される、若しくは、該次なる反応工程に供給するに際し予め純度向上のために蒸留工程に供されることが一般的である。
ところが、上記付加反応により得られた反応液を、斯様に次なる反応工程、や蒸留工程に供した際に、重合反応や脱塩化水素化反応等の副反応が進行し、クロロプロパン類の収率や含有量を低下させる問題が生じていた。さらには装置腐食や付着物の増加によって装置配管の閉塞を招く等の問題も発生し、プロセスの安定的な継続を難しくしていた。
他方、特許文献2には、鉄−アミド系錯体の存在下、四塩化炭素と塩化ビニルを反応させて、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを得、得られたクロロプロパンをフッ化水素と反応させて、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンを得る製造方法が開示されており、更には、上記1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの製造後、用いた前記鉄−アミド系錯体を一定濃度以下に制限することにより、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロパンの製造工程における、触媒寿命の短縮、反応抑制、装置スケーリングや腐食等の問題が改善することが記載されている。
そして、上記鉄錯体からなる触媒成分を一定濃度以下に制限する手段として、水洗法、吸着法、膜分離法、蒸留法等に供することが記載されている。しかしながら、上記水洗法を行うと反応液中に水が残存することとなり、装置の腐食やクロロプロパン類の分解が起こりやすくなる。そのため、脱水工程が必要となり、多額の費用がかかる。また、吸着により触媒成分を除去するためには、活性アルミナ、シリカゲル等の吸着剤を多量に消費することになり、ランニングコストがかかる問題があった。さらに、膜分離法も、上記鉄錯体を形成するために配合する金属鉄の余剰分除去には有効であるものの、処理流束が小さく処理コストが多大になり、さらには膜の汚れ、閉塞による洗浄、交換等の対応も必要になる不便さがあった。
特公平2−47969号公報 特開2013−139414
このように四塩化炭素と炭素数2の不飽和化合物の前記鉄錯体存在下での付加反応では、反応液を次なる反応工程や蒸留工程に供した際に、重合反応や脱塩化水素化反応等の副反応により、目的物であるクロロプロパン類の収量低下が生じ、これを抑制することが大きな課題であった。さらに、装置の腐食や配管の閉塞の問題が生じることも防止し、効率的且つ安定的にプロセスを運転できる方法を開発することが求められていた。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、上記付加反応において、得られた反応液には触媒の鉄錯体が一部溶解せずに、付着性の高い粘性のある液体を生成して微分散している知見を得た。即ち、この鉄錯体由来の不溶物(以下、「鉄錯体不溶物」と称する)は、粘着性が高いだけでなく極性も大きいために装置表面に付着しやすく、これが反応液を次反応工程や蒸留工程に供した際に、クロロプロパン類の分解や装置腐食等の問題を引き起こす原因物質になっていた。そして、この鉄錯体不溶物の除去方法として、反応液の助剤濾過が効果に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、鉄錯体が溶存する四塩化炭素の液相中で、一般式(1)
Cl4−a (1)
(式(1)において、aは0〜4の整数である)
で表される不飽和化合物を付加反応させて、得られた反応液を助剤濾過することを特徴とする、クロロプロパン類の製造方法である。
本発明の方法によれば、前記四塩化炭素と炭素数2の不飽和化合物との付加反応において、得られた反応液に微分散する、前記鉄錯体不溶物や余剰分の金属鉄を良好に除去できる。従って、反応液を、次なる反応工程や蒸留工程に供しても、係る鉄錯体不溶物や金属鉄の混存による副反応(重合反応や脱塩化水素化反応等)を抑制でき、クロロプロパン類の収量低下を高度に防止できる。さらに、この鉄錯体不溶物に起因する装置の腐食や閉塞の問題も防止でき、プロセスを効率的且つ安定的に運転することが可能になる。
以下、本発明のクロロプロパン類の製造方法について詳細に説明する。
本発明では、鉄錯体が溶存する四塩化炭素の液相中で、一般式(1)
Cl4−a (1)
(式(1)において、aは0〜4の整数である)
で表される不飽和化合物を付加反応させる。この付加反応より得られるクロロプロパン類は、下記式(2)
Cl8−a (2)
(式(2)において、aは式(1)のaと同じ整数である)
で表される。こうしたクロロプロパン類は、一般に、各種製品を製造するための原料若しくは中間体として有用であり、次なる反応工程として、脱塩化水素化反応工程やフッ素化工程、若しくは、予め純度向上のために蒸留工程に供される。
式(1)で表される炭素数2の不飽和化合物として、具体的には、エチレン、塩化ビニル、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンが挙げられる。
上記付加反応は、式(1)での炭素数2の不飽和化合物(非置換又は塩素で置換されたエチレン)の相対的に塩素数が少ない炭素に、四塩化炭素の炭素が結合し、生成物が生じる。例えば、原料化合物としてエチレンを使用した場合には1,1,1,3−テトラクロロプロパンが、塩化ビニルを使用した場合には1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンが、それぞれ得られる。
本発明において上記付加反応は、鉄錯体が溶存する四塩化炭素の液相中で進行させる。鉄錯体としては、四塩化炭素の液相中に溶解可能なものであれば特に制限されないが、触媒活性の高さを考慮すれば、鉄−アミド類錯体または鉄−リン酸エステル類錯体が好ましい。好適な鉄−アミド類錯体としては、鉄と下記一般式(3)
C(=О)NR (3)
(式(3)において、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基である。)
で示されるアミド類との反応生成物である。一般式(3)のアミド類の具体例としては、N、N―ジメチルアセトアミド、N、N―ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。これらのうち付加反応の反応性が高く、本発明の効果が高いN、N―ジメチルアセトアミドが、特に好ましく使用できる。
他方、鉄−リン酸エステル類錯体としては、鉄と一般式(4)
Figure 2017149689
(式(4)中、Rはフェニル基又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、フェニル基又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表されるリン酸エステル類との反応生成物である。反応性、入手の容易さから上記一般式(1)において、R,R及びRのすべてが炭素数1〜4のアルキル基である、リン酸トリアルキルエステルが好ましく使用でき、具体的には、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル又はリン酸トリブチルが好ましく使用でき、なかでもリン酸トリエチルが好ましい。
四塩化炭素の液相中にこれら鉄錯体を溶解させる方法は、如何なる方法により実施しても良いが、通常は、四塩化炭素の液相に、鉄、および当該鉄と錯体を形成可能な化合物(助触媒)を各配合することにより、該反応液相中で直接生成・溶解させる態様で実施するのが好ましい。この鉄及び助触媒の四塩化炭素の液相への配合は、反応開始前にこれらの各全量を一度に投入して行っても良く、あるいは鉄及び助触媒の一部を反応開始前に投入し、付加反応の進行中に残りの各成分を追加投入することで行っても良い。
ここで、使用される鉄としては、金属鉄、純鉄、軟鉄、炭素鋼、フェロシリコン鋼、鉄を含む合金等を挙げることができる。鉄の形状としては、粉末状、粒状、塊状、棒状、球状、板状、繊維状等の任意の形状であることができるが、助触媒との接触面積を十分に確保する観点から、粉末状であることが好ましい。
鉄錯体の使用量としては、高い反応転化率及び高い選択率を両立するとの観点から、四塩化炭素の1モルに対して、錯体を構成する鉄量で示して0.001モル以上とすることが好ましく、0.002モル以上とすることがより好ましく、0.003モル以上とすることがさらに好ましい。鉄錯体の使用量の上限は特に限定されないが、使用量を余り多くしても、触媒活性及び選択性にはほとんど影響しない。他方で、前記四塩化炭素の液相に鉄と助触媒を各配合してこれを形成させ溶解させる態様の場合には、投入した鉄の体積相当量分、反応器に導入できる原料の絶対量が少なくなり、また反応に関与せずに無駄となる鉄が多くなるため、経済上不利益となる(なお、反応後、反応容器内に、適度な量の鉄を残存させることは、再度、付加反応を実施してクロロプロパン類を製造する際に、無駄となる鉄を減らすことができるため好ましい)。
これらの観点から、鉄錯体の使用量は、四塩化炭素の1モルに対して、錯体を構成する鉄量で示して1モル以下とすることが好ましく、0.1モル以下とすることがさらに好ましく、0.01モル以下とすることが特に好ましい。
四塩化炭素の液相に鉄と助触媒を各配合して鉄錯体を形成させる態様において、助触媒の使用量は、高い転化率および高い選択率を担保するとの観点から、前記鉄錯体の好適な使用量となるよう配合した鉄の1モルに対して、対応する鉄錯体を形成するに必要な理論配位モル数の等倍以上、より好ましくは1.1倍以上とするのが良好である。この助触媒の使用量は、通常は、四塩化炭素の1モルに対して、0.001モル以上、さらには、0.002モル以上の範囲において、前記関係を満足するように採択される。
付加反応の反応温度は、高い転化率と高い選択率とを両立するために、90〜160℃とすることが好ましく、105〜140℃とすることが更に好ましい。
反応圧力は、上記反応温度において反応系が液相を維持し得る圧力であればよいが、高い転化率と高い選択率とを両立するためには、炭素数2の不飽和化合物分圧を一定の範囲内とすることが好ましい。25℃に換算した式(1)で示される炭素数2の不飽和化合物の原料分圧としては、0.11〜0.52MPa(abs)であることが好ましく、0.15〜0.35MPa(abs)であることがより好ましい。反応圧力としては、炭素数2の不飽和化合物の分圧とその他の気体の分圧を足せばよい。なお、上記圧力はいずれも、設定した反応温度における絶対圧である。
上記付加反応より得られた反応液は、前記式(2)で表されるクロロプロパン類を主成分とし、不純物として、未反応原料である四塩化炭素及び式(1)で表される炭素数2の不飽和化合物、触媒である鉄錯体、塩化第二鉄、反応副生成物等を含んでいる。また、該鉄錯体を、前記四塩化炭素の液相に鉄と助触媒を各配合して形成させた場合には、未反応の鉄や助触媒成分(具体的には、前記式(3)で表されるアミド類や式(4)で表されるリン酸エステル類)も含んでいる。
反応副生物としてはヘキサクロロエタン、テトラクロロエチレン等が挙げられ、原料として用いた式(1)で表される炭素数2の不飽和化合物の種類によって異なるが、他にトリクロロプロパン、テトラクロロプロパン、ペンタクロロプロパンなどのポリクロロプロパン類が挙げられる。
<濾過工程>
付加反応により得られた反応液には、上記したように触媒である鉄錯体が含まれるが、これは液相に溶解しているだけでなく、前述のとおりその一部は溶解せずに、鉄錯体不溶物を生成し微分散している。しかして、これが次反応工程や蒸留工程に供した際に、クロロプロパン類の分解や装置腐食等の問題を引き起こす原因物質になるため、本発明では、反応液を助剤濾過に供してこれを除去する。
なお、この微分散する鉄錯体不溶物は、目的物であるクロロプロパン類に比べ、比重が小さいため、反応液をこれらは静置すれば、これらはやがては反応液の上層に相分離する。しかしながら、長時間を要し、また、形成された上層を、分液操作や濾過等の分離手段で高度に除去することは困難である。
これに対して、濾過助剤によれば、係る鉄錯体不溶物を簡便且つ高度に除去できる。その理由は明らかではないが、前記したとおり鉄錯体不溶物は粘性なため、助剤層に留まり易いためではないかと考えている。
また、前述の付加反応において、先にも述べたとおり、高い転化率と反応速度を維持するため、鉄を必要量以上多く入れる場合があって、反応後反応器内に未反応の鉄が残る。該未反応の鉄は、反応器より反応液を排出する際に、反応液と供に一部若しくは全部が排出される。ところで鉄は、最初は少量の溶存であっても、クロロプロパン類の脱塩化水素触媒として働き塩化水素を生成するため、徐々に鉄の溶解がすすみ、結果として目的物である前記式(2)で表されるクロロプロパン類を分解し回収率の低下を招く。例えば、高温となる蒸留時に鉄が存在すると、上記クロロプロパン類の分解により回収率の低下が顕著となる。
本発明において、上記助剤濾過を行うことにより、前記触媒相だけでなく、上記未反応の鉄も効率よく除去することができる。
ここで用いられる助剤は特に制限なく使用することができる。具体的には、活性白土、酸性白土、珪藻土、粉末シリカ、粉末セルロースなどが挙げられる。その中でも濾過性がよく、価格の安い珪藻土が好ましい。珪藻土はラヂオライト、セライトなどの名称で一般に販売されているものを用いればよい。また、乾燥品、焼成品、融剤焼成品いずれのものも制限なく使用することができる。天然製品の場合、産地によって物性の差があることが知られているが、本発明においては、特に産地に制限なく用いることができる。
濾過助剤の透過率(Darcy)は特に制限されないが、透過率(Darcy)が小さいと濾過に余分な時間がかかることから透過率(Darcy)の大きい濾過助剤を用いることが好ましい。具体的には、0.05m以上であることが好ましく、0.5m以上であることがより好ましく、1m以上であることがさらに好ましく、2m以上であることが特に好ましい。透過率が大きすぎると触媒相を除去しきれないことから、30m以下であることが好ましく、10m以下であることがより好ましい。
本発明において、上記触媒相を除去するのに必要な濾過助剤の量は、発明者らの検討の結果、触媒相の体積とほぼ同体積であることがわかった。従って、濾過助剤の量は、触媒相の体積の1倍以上であることが好ましく、1.5倍以上とすることがさらに好ましく、1.8倍以上とすることが特に好ましい。該濾過助剤の量は、多すぎても触媒相を除去する効果が頭うちとなり、助剤の使用量が増大する分費用がかかるだけでなく、濾過性が悪く濾過時間が長くなるため、2.5倍以下とすることが好ましく、2倍以下とすることがさらに好ましい。触媒相の体積より少ないと触媒相を全量除去できない。
ところで、付加反応後に得られた反応液中の触媒相の組成を分析したところ、鉄触媒由来の組成物が約50〜70wt%、反応生成物であるクロロプロパン類や原料由来の四塩化炭素が約30〜50wt%の割合で含まれていることがわかった。このことは、前述の通り、付加反応直後の触媒相は反応液中に微細に分散しているのであるが、相が安定していないために、該触媒相の中にもクロロプロパン類や原料由来の四塩化炭素等が微細な相を形成して含有されているものと思われる。
従って、該触媒相の重量は、付加反応に使用した助触媒の重量の約1〜4倍に相当する。また、該触媒相の体積は、助触媒を前記範囲で使用した場合に、付加反応後に得られる反応液のおよそ0.2〜2v%に相当する。
したがって、使用する濾過助剤の体積は、反応で使用した助触媒の体積の1倍以上とすることが好ましく、1.5倍以上とすることがさらに好ましく、2倍以上とすることが特に好ましい。また、濾過の操作性、経済的な観点より、16倍以下とすることが好ましく、8倍以下とすることがさらに好ましい。この濾過助剤の量は、反応液の0.2v%以上、さらには、0.5v%以上の範囲において、前記関係を満足するように採択される。
なお、助剤の使用量は、後に述べるプレコートやボディフィードなどで使用される濾過助剤の総量であり、濾過工程で使用される濾過助剤の全量となる。
前述の通り、濾過助剤の量が触媒相と同体積以上あればよいので、濾過助剤のケーク嵩密度は小さい方が好ましい。具体的には、1.0g/cm以下であることが好ましく、0.5g/cm以下であることがより好ましく、0.4g/cm以下であることが特に好ましい。一方で、小さすぎると操作性が悪いことから、0.01g/cm以上であることが好ましく、0.03g/cm以上であることがより好ましく、0.05g/cm以上であることが特に好ましい。
本発明において、助剤濾過の方式は特に制限されない。例えば、ドラムフィルター、遠心濾過、ヌッチェ型濾過などが挙げられる。なかでも、助剤の使用量、運転効率の面でドラムフィルターや遠心濾過が好ましい。また、それぞれにおいて加圧濾過、減圧濾過いずれの方式をも取り得ることができる。
濾過助剤の使用方法は特に制限されず、プレコート、ボディフィードなどを挙げることができる。なかでも、プレコートによる濾過を行うと、触媒相の除去効率がよいため好ましい。さらに、プレコートとボディフィードとを組み合わせた濾過を行うことも可能であり、長期間連続運転が可能となることから、もっとも好ましい態様である。
以下、プレコートを用いる場合について詳細に説明する。初期のプレコート層の厚みが厚いほど濾過時間が長くなり、薄い程プレコート層のコーティング頻度が増加する。そのため前述の濾過助剤の使用量に関係なく、助剤層の初期厚みは2〜100cmとすることが好ましく、5〜50cmとすることがより好ましく、10〜30cmとすることがさらに好ましい。本願発明が除去仕様とする触媒相は粘度が高く、助剤層に浸透していくと目詰まりを起こすため、該プレコート層の表面を削ることにより、濾過効率を向上させて、繰り返し濾過を行うことができる。プレコート層の表面を削るタイミングとしては、助剤層への触媒相の浸透が0.1〜2cmになったときに、浸透した量に加えて5〜20%程度多く助剤を削るのが濾過効率を維持する上で好ましい。
触媒相の浸透厚が1〜20mmの範囲となるよう、より具体的には、プレコート層の単位面積(1m)当たりの、処理する反応液量が100〜5000L毎に削ることが好ましく、300〜4000L毎に削るのがより好ましく、500〜2000L毎に削ることがさらに好ましく、削る厚みは、1〜40mmとすることが好ましく、2〜30mmとすることがより好ましい。
上記操作を繰り返し、プレコートされた助剤層が、好ましくは1cm以下、より好ましくは3cm以下、さらに好ましくは5cm以下となったとき、助剤を全部取り外し、新たにプレコート処理を行うことが好ましい。
濾過機の材質は濾過前の液が触れる工程と濾過後の液が触れる工程で異なる。濾過前の工程では触媒相、および、クロロプロパン類に対して腐食しない材質とし、濾過の運転方式に耐えられる材質構造にすることが好ましい。加圧、減圧で行うかによっても異なるが、好ましくはフッ素樹脂(PFA、PTFE、PVF、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ガラス、ニッケルにモリブデン・クロム・鉄などを加えた合金(ハステロイ、インコネルなど)などが挙げられる。濾過後は触媒相に触れないため、式(2)で表されるクロロプロパン相に対して腐食しない材質であればよく、ステレンス鋼、フッ素樹脂(PFA、PTFE、PVF、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ガラス、ニッケルにモリブデン・クロム・鉄などを加えた合金(ハステロイ、インコネルなど)、チタンなどが挙げられる。濾材の材質は上記濾過後の材質と同様である。
濾材の通気度は特に制限されないが、小さいと濾過時間がかかることから、5cm/cm・s以上とすることが好ましく、10cm/cm・s以上とすることがより好ましい。しかしながら、濾過助剤に対して通気度が大きすぎると、助剤が通過してしまう虞があるため、用いた濾過助剤に応じて適宜採択すればよい。
ところで、反応生成物には、未反応の四塩化炭素も含まれる。式(2)で表されるクロロプロパン類を得る付加反応は高温高圧であるため、得られる反応液は高温であるが、濾過時の圧力下、四塩化炭素の沸点に対し、反応液の温度が高いとと四塩化炭素が気化する。従って、四塩化炭素が気化しない温度まで冷却することが好ましい。具体的には、濾過時の圧力と勘案し調整すればよいのであって、特に限定されないが、100℃以下とすることが好ましく、80℃以下とすることがより好ましく、70℃以下とすることが特に好ましい。
また、反応液の冷却や加熱には費用がかかることから、濾過後の反応液を供給する次工程での設定温度を考慮して、反応液の温度を決定すればよく特に限定されないが、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。
ところで、濾過前後で圧力差を付けた方が、濾過効率がよいことから、加圧濾過、減圧濾過をそれぞれ単独、若しくは組み合わせて行うことが好ましい。濾過前後の圧力差は好ましくは0.01〜1MPaであり、より好ましくは0.03〜0.5MPaであり、特に好ましくは0.05〜0.2MPaである。ところで、付加反応時の圧力は、前述のとおり、反応温度において反応系が液相を維持し得る圧力下、即ち加圧下で行われるため、反応後の反応液を上記温度範囲まで冷却した後でも、0.05〜0.5MPa程度の圧力が残存している。従って、得られた反応液の圧力を常圧まで脱圧せず、一部脱圧し、上記温度範囲に冷却後に上記範囲の圧力を維持することが好ましく、効率的である。
また、加圧濾過と減圧濾過を組み合わせる場合には、濾過前後の圧力が上記範囲となるよう調整すればよい。通常の加圧濾過と同様に窒素等の不活性ガスで加圧、反応後の液を送液するポンプで加圧などの方法をとってもよい。
ところで、式(1)で表される炭素数2の不飽和化合物が濾過時の温度で気体である場合、または、濾過前後の圧力差により、式(2)で表されるクロロプロパン類に溶解した式(1)で表される炭素数2の不飽和化合物が発泡し、即ち、助剤層において気泡が生じた場合、濾過効率が低下する。従って、付加反応より得られる反応液中の炭素数2の不飽和化合物の含有量を低減させる操作を行うことが好ましい。
具体的には、未反応のまま反応液中に残留する式(1)で表される炭素数2の不飽和化合物(非置換又は塩素で置換されたエチレン)を低減するため、前述の付加反応において、式(1)で表される炭素数2の不飽和化合物の供給を停止してから、好ましくは10〜120分、より好ましくは30〜60分反応温度を維持することができる。
別の方法として、付加反応後の液に窒素、アルゴンなどの不活性ガスを供給し、式(1)で表される炭素数2の不飽和化合物(非置換又は塩素で置換されたエチレン)を除去してもよい。またその他の、公知のガス除去方法を利用することができる。
遠心濾過による濾過操作を行う場合、除去する触媒相がクロロプロパン類に対して比重が軽いため、触媒相が助剤を通過せず、助剤層に留まり易い。そのため、遠心力は100〜10000Gとすることが好ましく、500〜7000Gとすることがより好ましく、1000〜5000Gとすることがさらに好ましい。この遠心力で濾過できる量の式(2)で表されるクロロプロパン類を供給すればよい。
遠心濾過以外の濾過操作を行う場合、反応液の供給量が多すぎると触媒相(軽液)を通過し、少なすぎると効率が悪い。そのため、時間・濾過面積当たりの供給量を0.5〜50t/m・hrとすることが好ましく、1〜10t/m・hrとすることがより好ましく、2〜5t/m・hrとすることが特に好ましい。
先で述べたとおり、付加反応後の反応液中において鉄触媒由来の組成物は、一部は触媒相として、一部は反応液中に溶解した状態で存在しているのであるが、上記の如き濾過工程を行うことにより、前者は効率よく除去されるものの、後者についてはその限りではない。従って、濾過工程より得られる反応液中には、後者に由来する鉄、および助触媒が溶存しているが、通常、鉄の濃度で1000ppm以下、助触媒の濃度は1000ppm以下となる。
濾過工程より得られる反応液中の鉄濃度、及び助触媒の濃度は、小さければ小さい程好ましいが、先でも述べたとおり反応液中に溶解した状態で存在している鉄触媒由来の組成物は、本発明の課題に大きく影響するものではなく、また、これらを精度よく除去するとなると、濾過助剤の消費量が多くなりコストがかかる上、濾過時間も長くなるため効率的ではない。
したがって、かかる観点から、鉄濃度は、50ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがより好ましく、200ppm以上であることがさらに好ましい。同様に、式(3)もしくは式(4)で表される助触媒濃度は100ppm以上であることが好ましく200ppm以上であることがより好ましく、300ppm以上であることがさらに好ましい。
本発明において得られるクロロプロパン類は、農薬、医薬品、フロン代替材料、フッ素化合物等の各種製品を製造するための原料若しくは中間体であって、上述の濾過工程より得られた反応液は、次なる反応工程に供給される。次なる反応工程は特に限定されないが、具体的には、脱塩化水素化反応工程やフッ素化工程等が挙げられる。また、斯様な次なる反応工程に供給するに際し予め純度向上のために蒸留工程に供給されるのが一般的であり、特に蒸留工程において釜残液が高温となることから、本発明の効果が顕著となる。以下、特に限定されないが、次工程の例として蒸留工程について簡単に説明する。
<蒸留工程>
蒸留工程では、前記濾過工程より得られた反応液を蒸留に供し、未反応の四塩化炭素や副生成物を分離除去し、高純度の式(2)で表されるクロロプロパン類を得る。 本発明の濾過工程を事前に行うため、未反応の鉄が蒸留工程に混入することはなく、式(2)で表されるクロロプロパン類分解はほとんどなく、腐食性の塩化水素ガスの発生が少ない。また、本発明においては鉄と助触媒が高濃度に濃縮した触媒相を含んでいないため、安定して長期間、高温で高濃縮した状態で蒸留を行うことができるのが特徴である。
前記式(1)がエチレン、前記式(2)で表されるクロロプロパンが1,1,1,3−テトラクロロプロパンの場合を例に説明する。第一反応後の反応液には目的とする1,1,1,3−テトラクロロプロパン以外に不純物として未反応原料である四塩化炭素、エチレン、使用した式(3)もしくは式(4)で表される助触媒、使用した助触媒と鉄の錯体、鉄、塩化第二鉄、及び反応副生成物として、ヘキサクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,1−トリクロロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,5−テトラクロロペンタンなどが含まれる。
当該蒸留工程において、反応副生物、四塩化炭素のそれぞれの濃度を1,1,1,3−テトラクロロプロパンに対し重量で、5000ppmw以下より好ましくは1000ppmw以下さらに好ましくは500ppmw以下とすることが好ましく、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの純度を重量で99%以上にすることが好ましく、99.5%以上にすることがより好ましい。
蒸留に使用する蒸留塔は、当業界で知られているものを制限無く使用することができ、段塔または充填塔を好ましいものとしてあげることができる。蒸留塔は一塔で行ってもよいし、数塔で行ってもよい。上記段塔としては、十字流トレイ、シャワートレイ等を用いることができる。
充填式蒸留装置を用いる場合における充填物としては、ラシヒリング、レッシングリングなどの公知の充填物を用いればよく、その材質にも制限はなく、各種金属、ガラス、樹脂などを用いることができる。
蒸留の行う際の条件は特に制限されず、常圧で行い(101kPa)、蒸留塔上部の温度を式(2)で表されるクロロプロパンの沸点付近でも行うことができるが、蒸留塔上部の温度が高いと塔底部の温度も高くなるため、式(2)のクロロプロパンが分解しやすくなり、また蒸留塔上部の温度を低くしすぎると蒸留時、蒸留塔上部を冷やすエネルギーが増大し、また圧力を非常に低くしないとならないため、設備の費用、運転費用が高額になる。そのため、蒸留時に塔底の温度の範囲としては、50℃〜200℃とすることが好ましく、70℃〜170℃とすることがより好ましく、100℃〜150℃の範囲で行うことがより好ましい。
蒸留時の圧力に関しては、上記温度で式(2)で表されるクロロプロパンが気化し、蒸留塔上部まで到達する圧力で行うことができる。式(2)で表されるクロロプロパンの種類、蒸留塔上部の温度によって異なるが、圧力は1kPa(abs)〜100kPa(abs)とすることが好ましく、5kPa(abs)〜50kPa(abs)とすることがより好ましい。例えば、式(2)で表されるクロロプロパンが1,1,1,3−テトラクロロプロパンの場合、10kPaにおいて、塔底部の温度は90〜130℃、塔頂部の温度を約87℃、蒸留時の圧力を10kPa(abs)とすることにより、殆ど分解なく高収率で回収することができる。ここでの圧力は絶対圧力である。
蒸留の際には特に添加物を加えなくてもよいが、分解を抑制するため、安定剤を加えることもできる。安定剤としては各種フェノール類、例えば、アルコキシ基で置換されたフェノール類やアリル基で置換されたフェノール類が挙げられる。アリル基で置換されたフェノール類を具体的に例示すると、o−アリルフェノール、m−アリルフェノール、p−アリルフェノール、4−アリル−2−メトキシフェノール(オイゲノール)、2−メトキシ−4−(1−プロペニル)フェノール(イソオイゲノール)等が挙げられる。これらアリル置換フェノールは単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
前記蒸留により得られたクロロプロパン類に式(3)もしくは式(4)で表される助触媒が残存しており、除去する必要がある場合は吸着剤と接触させて、さらに助触媒の濃度を減らすことができる。助触媒にN、N−ジメチルアセトアミドを用いた場合、100ppmw〜500ppmw程度残る場合がある。吸着剤としては、シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブ、活性アルミナ等が挙げられる。この中でシリカゲル、ゼオライトが好ましく、シリカゲルがより好ましい。
式(2)で表されるクロロプロパン類は様々な反応の原料に用いることができる。例えば、式(2)で表されるクロロプロパン類が1,1,1,3−テトラクロロプロパンである場合、脱塩化水素して、1,1,3−トリクロロプロペンとすることができる。脱塩化水素の方法としては、熱分解、アルカリ分解、ルイス酸触媒を用いた方法を取ることができる。ルイス酸としては、塩化鉄、塩化アルミニウムが挙げられる。さらに塩素化反応を行ない、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンとすることができる。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
参考例1
撹拌機、エチレン用ガス導入口及びガス排出口並びにN、N−ジメチルアセトアミドの追加添加口並びに液体排出口を有するSUS製のオートクレーブ(内容積1,500mL)をエチレンで満たした。オートクレーブ中に四塩化炭素1,560g、N、N−ジメチルアセトアミド2.0g及びK100(JFEスチール(株)製コークス還元鉄粉)4.0gを仕込み、温度を130℃に設定し、気相の全圧が0.5MPa(abs)となるようにエチレンを供給して付加反応を開始した。110℃、気相の全圧が0.5MPa(abs)になった時点から、N、N−ジメチルアセトアミドを0.02ml/分で反応終了まで連続的に添加を行った。反応中は、気相における全圧が0.5MPa(abs)を維持するようにエチレンを供給しつつ行い、エチレンの消費速度(追加供給速度)が四塩化炭素の初期量に対して0.1モル%/分と(200ml/分)なった時点で反応が完了したものと判断して第1バッチ目の付加反応を終了した。反応時間600分、N、N−ジメチルアセトアミドの使用量11g、四塩化炭素の転化率96%、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率93%であった。
触媒相の組成を分析するため、反応液を12時間静置し、2相に分離させた。触媒相(軽液)の組成は、燃焼法による元素分析の結果、炭素24.9wt%、水素4.5wt%、窒素6.8wt%、塩素41.7wt%、ICPの分析により鉄は10wt%であった。
参考例2
撹拌機、エチレン用ガス導入口及びガス排出口並びにリン酸エステルの追加添加口並びに液体排出口を有するSUS製のオートクレーブ(内容積1,500mL)をエチレンで満たした。オートクレーブ中に四塩化炭素1,560g、リン酸トリエチル2.0g及びK100(JFEスチール(株)製コークス還元鉄粉)4.0gを仕込み、温度を110℃に設定し、気相の全圧が0.5MPa(abs)となるようにエチレンを供給して付加反応を開始した。110℃、気相の全圧が0.5MPa(abs)になった時点から、リン酸トリエチルを0.02ml/分で反応終了まで連続的に添加を行った。反応中は、気相における全圧が0.5MPa(abs)を維持するようにエチレンを供給しつつ行い、エチレンの消費速度(追加供給速度)が四塩化炭素の初期量に対して0.1モル%/分と(200ml/分)なった時点で反応が完了したものと判断して第1バッチ目の付加反応を終了した。反応時間600分、リン酸トリエチルの使用量14.5g、四塩化炭素の転化率95%、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率97%だった。
実施例1
白色粉末であるラヂオライト#600(昭和化学)40gと蒸留精製した1,1,1,3−テトラクロロプロパン200g混合し、直径4cmの下部にガラスフィルターが付いたガラス管に流し込み、プレコート層を形成した。このときのラヂオライト層の厚みは約10cmでラジオライト層の体積は約125mlだった。
参考例1と同様の方法で、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを得た。得られた反応液を約3000g上記プレコート層を形成したガラス管に流し込み、減圧濾過を行った。助剤に触媒相が浸透し、約1.6cmの助剤が黒色となった。濾過後得られた液は黄色で、触媒相は見られず、1日静置後も2相に分離しなかった。該液中のN、N−ジメチルアセトアミドは220ppm、鉄は110ppmであった。
触媒相が浸透し、黒色となったプレコート層を約2cm削り取った。参考例1と同様の方法で、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを得た。得られた反応液を約3000g上記プレコート層を形成したガラス管に流し込み、減圧濾過を行った。助剤に触媒相が浸透し、約1.6cmの助剤が黒色となった。濾過後得られた液は黄色で、触媒相は見られず、1日静置後も2相に分離しなかった。該液中のN、N−ジメチルアセトアミドは220ppm、鉄は110ppmであった。
続いて、上記濾過後の1,1,1,3−テトラクロロプロパン2000gの蒸留を行った。塔底温度95℃以下、塔頂圧力10kPaの減圧で低沸点物を除去した後、塔底の最高温度を110℃で塔頂圧力10kPaの減圧で蒸留を行い、塔頂部より流出液として純度99%以上の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを1580g得た。1,1,1,3−テトラクロロプロパンの分解は0.1%以下であった。蒸留後の塔底は特に付着物もなくきれいであった。
長期間連続的に蒸留を行った際の塔底の状態を模擬的に作り出すために、以下の実験を行い、評価した。蒸留後の塔底に残った釜残液のうち50gを取り出し、表面積約16cmのSUSの板とともに100mlのフラスコに入れた。温度110℃、約15kPaの条件下で24時間攪拌した後、SUSの板を取り出して真空乾燥させた。その結果、SUSの板の重さが付着物により0.9mg増加したことを確認した。
比較例1
参考例1と同様の方法で付加反応を行い、得られた反応液2000gの蒸留を行った。塔底温度90℃以下、塔頂圧力10kPaの減圧で低沸点物を除去した後、塔底の最高温度を110℃以下で塔頂圧力10kPaの減圧で蒸留を行い、塔頂部より流出液として純度99%以上の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを1560g得た。1,1,1,3−テトラクロロプロパンの分解は0.5%程度であった。蒸留後の塔底には黒い付着物が見られた。
長期間連続的に蒸留を行った際の塔底の状態を模擬的に作り出すために、以下の実験を行い、評価した。上記蒸留後の塔底に残った釜残液のうち50gを取り出し、表面積約16cmのSUSの板とともに100mlのフラスコに入れた。温度110℃、約15kPaの条件下で24時間攪拌した後、SUSの板を取り出して真空乾燥させた。その結果、SUSの板の重さが付着物により480mg増加したことを確認した。
参考例3
参考例1と同様の方法で付加反応を行い、得られた反応液を12時間静置して2相に相分離させた後、触媒相(軽液)約20gを採取した。触媒相を採取した後の反応液を実施例1と同様の方法で助剤濾過を行った。濾過後に得られた反応液2000gを蒸留に供し、塔底温度90℃以下、塔頂圧力10kPaの減圧で低沸点物を除去した後、塔底の最高温度を110℃以下で塔頂圧力10kPaの減圧で蒸留を行い、塔頂部より流出液として純度99%以上の1,1,1,3−テトラクロロプロパン約1580gを得た。このとき、蒸留後の塔底に残った釜残液は約200gであった。
触媒相が10%残留した場合の、長期間連続的に蒸留を行った際の塔底の状態を模擬的に作り出すために、以下の実験を行い、評価した。上記蒸留後の塔底に残った釜残液のうち50gと触媒相0.5gを混合し、表面積約16cmのSUSの板とともに100mlのフラスコに入れた。温度110℃、約15kPaの条件下で24時間攪拌した後、SUSの板を取り出して真空乾燥させた。その結果、SUSの板の重さが付着物により54mg増加したことを確認した。
実施例2
活性白土(和光純薬)100gを用いた以外は、実施例1と同様に減圧濾過を行った。(このときの活性白土層は約10cmであり、活性白土層の体積は約125mlであった。)濾過後得られた液は黄色で、触媒相は見られず、1日静置後も2相に分離しなかった。続いて、実施例1と同様に蒸留操作を行い、塔頂部より流出液として純度99%以上の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを得た。1,1,1,3−テトラクロロプロパンの分解は0.1%以下であった。蒸留後の塔底は特に付着物もなくきれいであった。
実施例3
直径6cmの樹脂製の、高さ半分の位置にポリフェニレンサルファイド製のろ布(通気度12cm/cm・s)が付いた遠沈管を用い遠心濾過を行った。該遠心濾過に際し、予めラヂオライト#600(昭和化学)19gと精製した1,1,1,3−テトラクロロプロパン100gを混合し、容器のろ布の上に入れ、2000Gで予備の遠心濾過を行い、ろ布上にラヂオライト層を形成した。ラヂオライト層は約2cm、その体積は60mlだった。参考例1と同様に付加反応を行い、得られた反応液約200gを上記形成したラヂオライト層の上から入れて、2000Gで遠心濾過を行った。得られた液は黄色で、触媒相は見られず、1日後も2相に分離することはなかった。この操作を複数回繰り返し、遠心濾過後の反応液約2000g得た。
上記得られた濾過後の反応液2000gを蒸留に供し、塔底温度95℃以下、塔頂圧力10kPaの減圧で低沸点物を除去した後、塔底の最高温度を110℃で塔頂圧力10kPaの減圧で蒸留を行い、塔頂部より流出液として純度99%以上の1,1,1,3−テトラクロロプロパン約1590gを得た。1,1,1,3−テトラクロロプロパンの分解は0.1%以下であった。蒸留後の塔底は特に付着物もなくきれいであった。
実施例4
参考例2と同様の方法で、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを得た。ラヂオライト#600(昭和化学)40gと精製した1,1,1,3−テトラクロロプロパン200g混合し、下部にガラスフィルターが付いた直径4cmにガラス管に入れ減圧濾過し、ガラスフィルターの上にラヂオライト相を形成した。ラヂオライト層は約10cmでラジオライト層の体積は125mlであった。反応後の1,1,1,3−テトラクロロプロパン約4000gをガラス管から溢れないように入れながら減圧濾過を行った。得られた液は黄色で、触媒相は見られず、1日後も2相に分離しなかった。
濾過後の反応液2000gを蒸留に供し、塔底温度95℃以下、塔頂圧力10kPaの減圧で低沸点物を除去した後、塔底の最高温度を110℃で塔頂圧力10kPaの減圧で蒸留を行い、塔頂部より流出液として純度99%以上の1,1,1,3−テトラクロロプロパン約1580gを得た。1,1,1,3−テトラクロロプロパンの分解は0.1%以下だった。蒸留後の塔底は特に付着物もなくきれいであった。

Claims (12)

  1. 鉄錯体が溶存する四塩化炭素の液相中で、一般式(1)
    Cl4−a (1)
    (式(1)において、aは0〜4の整数である)
    で表される不飽和化合物を付加反応させて、得られた反応液を助剤濾過することを特徴とする、クロロプロパン類の製造方法。
  2. 鉄錯体が、鉄−アミド類錯体または鉄−リン酸エステル類錯体である、請求項1記載のクロロプロパン類の製造方法。
  3. 鉄−アミド類錯体が、鉄と下記一般式(3)
    C(=О)NR (3)
    (式(3)において、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基である。)
    で示されるアミド類との反応生成物である、請求項記載のクロロプロパン類の製造方法。
  4. 一般式(3)で示されるアミド類が、N、N―ジメチルアセトアミドである請求項3に記載のクロロプロパン類の製造方法。
  5. 鉄−リン酸エステル類錯体が、鉄と一般式(4)
    Figure 2017149689
    (式(4)中、Rはフェニル基又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、フェニル基又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
    で表されるリン酸エステル類との反応生成物である、請求項2記載のクロロプロパン類の製造方法。
  6. 一般式(4)で示されるリン酸エステル類がリン酸トリエチルである、請求項5に記載のクロロプロパン類の製造方法。
  7. 四塩化炭素の液相中への鉄錯体の溶解が、四塩化炭素の液相に、鉄、および当該鉄と錯体を形成可能な化合物を各配合することにより実施される、請求項2〜6のいずれか一項に記載のクロロプロパン類の製造方法。
  8. 濾過助剤の使用量が、四塩化炭素の液相に配合する、鉄と錯体を形成可能な化合物の体積に対して1.5〜16倍量である、請求項7記載のクロロプロパン類の製造方法。
  9. 上記助剤濾過に用いる濾過助剤のケーク嵩密度が0.03g/cm以上0.5g/cm以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のクロロプロパン類の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により、助剤濾過して得られた反応液を、さらに蒸留するクロロプロパン類の製造方法。
  11. 蒸留時の塔底の温度が70℃〜170℃である、請求項9に記載のクロロプロパン類の製造方法。
  12. 一般式(1)で示される不飽和化合物がエチレンであり、製造されるクロロプロパン類が1,1,1,3−テトラクロロプロパンである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のクロロプロパン類の製造方法。
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