JP4854378B2 - 無線伝送システムおよび無線伝送方法 - Google Patents

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Description

本発明は、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)に代表される次世代無線通信(高度無線技術)に用いられる無線伝送システムおよび無線伝送方法に関する。
無線通信において占有周波数帯域幅を広げることなく、さらなる伝送容量の拡大を図る技術として送信と受信の両方に複数のアンテナ素子を用いる多入力多出力(MIMO:Multiple Input Multiple Output)伝送方式の検討が活発に行われている。
なお、MIMO伝送方式に用いるこれらの複数のアンテナ素子としては、個々のアンテナを空間的に離す方法、互いに異なる偏波の組合せ(例えば、垂直偏波と水平偏波)を用いる方法等、無線伝送における多入力多出力の条件が成り立つ方法であればどのような方法であってもよい。
図5はMIMO伝送方式を用いる無線通信システムの概要、図6はMIMO伝送方式における受信機の概要をそれぞれ示している。図5のようにMIMO伝送方式では、複数(Nt本)の送信アンテナから別々の信号が同一時刻・同一周波数で送信することができる。これら複数の送信アンテナから送信された複数の送信信号は複数(Nr本)の受信アンテナにて受信される。
また、受信機では図6のように、複数の送信信号を分離するため、チャネル推定部において、既知のパイロット信号が送信されているパイロット信号区間における受信信号等から、各送信アンテナから各受信アンテナ間のチャネルインパルス応答値あるいはチャネル推定値を求めることで、チャネル推定を行う。そして、信号検出部22では、チャネル推定部21におけるチャネル推定結果に基づいて、各送信信号を検出・分離する。
このMIMO伝送方式を用いた複数信号(マルチストリーム)の伝送法は、図5の送信機内で行われる送信方法によって主に2つのタイプに分類される。第1の方法は、送信側でチャネル情報を必要としない空間分割多重(SDM:Space Division Multiplexing)であり、第2の方法は、送信側でチャネル情報(伝搬路情報)を必要とする固有モード伝送(Eigenmode Transmission、文献によっては、SVD-MIMO、E-SDM等の名称で呼ばれている場合もある)である。
MIMO伝送方式の受信機における受信方法としては、簡易な線形信号処理を用いるZero-Forcing(ZF)法やMinimum Mean Square Error(MMSE)法等の方法が知られているが、特にSDMを用いる場合に良好な伝送特性を得られる方法として、非線形信号処理を用いた手法に分類される最尤判定(MLD:Maximum Likelihood Detection)法がある(以下では、特に断りがない限りSDMを用いる場合の例で説明する)。
この方法は、複数の送信アンテナから送信された複数の送信信号と受信信号とのすべての可能な組合せについてメトリック(通常、メトリックとしては二乗ユークリッド距離を用いる)を算出し、最小メトリックを与える送信信号の組合せを選択するものである。この手法によれば、複数の信号を高精度に分離することができるが、二乗ユークリッド距離の計算量に起因して信号分離に要する計算負荷が大きくなる問題点がある。
例えば、4つの送信信号(s1,s2,s3,s4)が、変調方式16QAM(変調多値数Mary=16)で4本の送信アンテナ(Nt=4)からそれぞれ送信されたとする。この場合に、1つの送信信号はMary個の信号点のいずれかにマッピングされるので、受信信号に含まれる送信信号の候補の組合せ総数は、Mary Nt=164=65536通りにもなる(すなわち、MLD法では変調多値数や送信ストリーム数の増大に伴って、信号分離における計算量が指数関数的に増大する)。
従って、MLD法で最も確からしい送信信号の組合せを選択するには、これらすべての組合せについて二乗ユークリッド距離を計算する必要があり、非常に大きな計算能力を必要とする。そのため、無線端末(特に移動端末)にMLD法を用いることは、その非常に大きな計算負担のため、電力消費量が大きくなることや無線端末の小型化を妨げるため、現実的ではない。
そこで、近年、MLD法を改善した信号分離法として、QRM-MLD法と呼ばれる方法が提案されている。QRM-MLD法では、MIMOチャネル行列のQR分解とMアルゴリズムを用いてMLD法における二乗ユークリッド距離を計算する送信信号候補の組合せを絞ることで、MLD法に対して計算量を大幅に削減しつつ、特性劣化を最小限に抑えることができることが報告されている(QRM-MLD法については非特許文献1を参照)。
H. Kawai, K. Higuchi, N. Maeda, M. Sawahashi, T. Ito, Y. Kakura, A. Ushirokawa, and H. Seki, "Likelihood function for QRM-MLD suitable for soft-decision turbo decoding and its performance for OFCDM MIMO Multiplexing in multipath fading channel," IEICE Trans. Commun. vol.E88-B, no.1, pp.47-57, Jan. 2005.さらに、QRM-MLD法において、通常の計算負荷の大きな二乗ユークリッド距離とは異なる計算負荷の小さなメトリックを用い、一層の計算量を削減する方法も検討されている(非特許文献2)。 樋口健一,川合裕之,前田則行,佐和橋衛,"QRM-MLDを用いるOFCDM MIMO多重における信頼度情報を用いる適応生き残りシンボルレプリカ候補選択法,"電子情報通信学会技術報告(信学技報), RCS2004-69, May 2005. 大鐘武雄,「MIMOシステムの基礎と要素技術」大鐘武雄,電子情報通信学会 アンテナ・伝搬における設計・解析ワークショップ(第29/30回)テキスト,Nov./Dec. 2004. 関 征永,小池俊昭,村田英一,吉田 進,荒木純道,"改良メトリックを用いた実時間処理MIMO-MLDのFPGA実装および性能評価,"信学技報,RCS2004-292, Jan. 2005. 川合裕之,樋口健一,佐和橋衛,伊藤匠,鹿倉義一,後川彰久,関宏之,"OFCDM MIMO多重におけるパイロットチャネル推定・ランキングを用いるシンボルレプリカ候補削減型QR分解-MLDの構成,"信学技報,RCS2003-312, Mar. 2004. G. D. Golden, G. J. Foschini, R. A. Valenzuela, and P.W. Wolniansky, "Detection algorithm and initial laboratory results using V-BLAST space-time communication architecture," IEE Electronics Letters, vol.35, no.1, pp.14-16, Jan. 1999. H. Matsuda, K. Hojyo, T. Ohtsuki, and T. Kaneko, "Signal Detection Scheme Combining MMSE V-BLAST and Variable K-best Algorithms Based on Minimum Branch Metric," Proc. IEEE VTC2005-Fall, vol.1, pp.19-23, Dallas, Texas, USA, Sept. 2005. 特開2005-328311,「雑音電力推定装置、雑音電力推定及び信号検出装置」
しかしながら、上述した従来のQRM-MLD法におけるQR分解を用いたMIMOチャネルの直交化は、Zero-Forcing(ZF)規範により実現されるため、送信信号候補の探索範囲を狭めるに従って、MIMOチャネル行列が悪条件になる場合に起因する雑音強調や判定誤り伝搬の影響により特性が劣化する。
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するものであり、MIMO伝送方式において信号検出精度の劣化を抑えつつ計算量を低減するQRM-MLD法において、QR分解を用いたMIMOチャネルの直交化に際し、後述するMinimum Mean Square Error(MMSE)規範のQR分解を適用した拡張QRM-MLD法を用いて、従来のQRM-MLD法の特性を改善することのできる無線伝送システムおよび無線伝送方法を提供することをその課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、複数の送信アンテナを有する送信装置と、複数の受信アンテナを有する受信装置との間で、複数の信号を複数の送信アンテナから同一時刻に同一搬送波周波数で伝送する無線伝送システムであり、送信装置は、受信装置で既知のパイロット信号を含む複数の信号を送信し、受信装置は、無線伝搬路を経由し、送信された複数の信号を成分とする信号を受信し、個々の送信された信号を推定し分離する信号分離手段を有する。
そして、本発明において、前記信号分離手段は、
・各受信アンテナに対する受信機の雑音電力を取得する雑音電力取得手段と、
・送信装置および受信装置との間で決定した変調方式に基づいて、変調多値数に応じた複数の送信信号の候補を生成する送信信号候補生成手段と、
・既知のパイロット信号を含む受信信号に基づいて、各送受信アンテナ間のチャネル情報によって構成されるチャネル行列を推定するチャネル情報推定手段と、
・チャネル情報推定手段により推定されたチャネル行列を、雑音電力取得手段により取得された雑音電力の情報および送信装置の送信アンテナ数に基づき拡張された拡張チャネル行列を構成する拡張チャネル行列構成手段と、
・拡張チャネル行列に基づいて、拡張チャネル行列をユニタリ行列と上三角行列とに分解し、取得するチャネル行列分解手段と、
・各受信アンテナの受信信号に基づき構成される受信信号ベクトルに対し、ユニタリ行列の複素共役転置を乗算して仮想受信信号ベクトルを算出する仮想受信信号算出手段と、
・送信信号候補生成手段から送信信号の候補に対し上三角行列の要素を乗算することにより、複数の受信信号候補を仮想受信ベクトルの各要素についてそれぞれ生成する受信信号候補生成手段と、
・仮想受信ベクトルと複数の受信信号候補とから算出される受信アンテナ毎のユークリッド距離の情報に基づいて生成される各送信信号候補に対するメトリックを用いて、送信信号を判定し、分離する判定分離手段と
を備える。
特に、上記判定分離手段は、送信アンテナ数に対応する複数のステージからなり、第1のステージに対応する送信信号について、送信信号における変調多値数に相当する数の複数の候補に対して絞り込みを行うため、これらの候補についてメトリックの情報を比較することにより複数の生き残り送信信号候補を選択し、第2のステージにおいては、前ステージで選択された複数の生き残り送信信号候補と第2ステージに対応する送信信号における変調多値数に相当する数の候補との複数の組合せに対して絞り込みを行うため、メトリックの情報を比較することにより単数または複数の生き残り送信信号候補の組合せを選択し、第3のステージ以降においては、前ステージで選択された単数または複数の生き残り送信信号候補と各ステージに対応する送信信号における変調多値数に相当する数の候補との複数の組合せに対して絞り込みを行うため、メトリックの情報を比較することにより単数または複数の生き残り送信信号候補の組合せを選択する操作を、繰り返す。
また、本発明の無線伝送方法は、送信装置から、送信装置から、受信装置で既知のパイロット信号を含む複数の信号を送信し、受信装置において、無線伝搬路を経由し、送信された複数の信号を成分とする信号を受信するステップ(1)と、
送信装置において、受信機雑音電力推定手段によって各受信アンテナに対する受信機の雑音電力を推定するとともに、送信信号候補生成手段によって、送信装置および受信装置との間で決定した変調方式に基づいて、変調多値数に応じた複数の送信信号の候補を生成するステップ(2)と、
送信装置において、チャネル情報推定手段によって既知のパイロット信号を含む受信信号に基づいて、各送受信アンテナ間のチャネル情報によって構成されるチャネル行列を推定するステップ(3)と、
送信装置において、チャネル情報推定手段により推定されたチャネル行列を、雑音電力取得手段により取得された雑音電力の情報および送信装置の送信アンテナ数に基づき、拡張チャネル行列構成手段によって拡張された拡張チャネル行列を構成するステップ(4)と、
送信装置において、拡張チャネル行列に基づいて、チャネル行列分解手段によって該拡張チャネル行列をユニタリ行列と上三角行列とに分解し、取得するステップ(5)と、
送信装置において、各受信アンテナの受信信号に基づき構成される受信信号ベクトルに対し、仮想受信信号算出手段によってユニタリ行列の複素共役転置を乗算して仮想受信信号ベクトルを算出するステップ(6)と、
送信装置において、送信信号候補生成手段によって生成された送信信号の候補に対し、受信信号候補生成手段によって上三角行列の要素を乗算することにより、複数の受信信号候補を仮想受信信号ベクトルの各要素についてそれぞれ生成するステップ(7)と、
送信装置において、送信アンテナ数に対応する複数のステージからなる判定分離手段によって、仮想受信ベクトルと複数の受信信号候補とから算出される各受信信号候補に対応する送信信号候補の信頼度に基づいて生成される各送信信号候補に対するメトリックを用い、第1のステージに対応する送信信号について、送信信号における変調多値数に相当する数の候補の絞り込みを行うため、これらの候補についてメトリックの情報を比較することにより複数の生き残り送信信号候補を選択し、第2のステージにおいては、第2ステージに対応する送信信号における変調多値数に相当する数の候補と前ステージで選択された複数の生き残り送信信号候補との組合せについて、メトリックの情報を比較することにより単数または複数の生き残り送信信号候補を選択し、
第3のステージ以降においては、各ステージに対応する送信信号における変調多値数に相当する数の候補と前ステージで選択された単数または複数の生き残り送信信号候補との組合せについて、メトリックの情報を比較することにより単数または複数の生き残り送信信号候補を選択する操作を、繰り返す
ことにより、送信された複数の信号を判定して分離するステップ(8)と
を有する。
このような本発明によれば、受信装置において、MIMOチャネルをMMSE規範で直交化することにより、最尤判定における同時推定問題を送信信号数分のステージ数で階層化された推定問題に変換し、受信された信号を推定し分離する際に、判定分離手段の各ステージにおいて送信信号候補に対するメトリックに基づいて、送信信号候補の絞り込み選択を行い、絞り込まれ生き残った候補を次ステージ以降においてさらに絞り込むようにして処理を進めるため、雑音強調や判定誤り伝搬の影響を最低限に抑制し、受信特性の劣化を最小限に抑制しつつ、送信信号候補の探索範囲を狭め、演算処理量を大幅に低減して処理速度を向上させることができる。
なお、上記発明において、判定分離手段は、初期累積メトリックを0とし、各ステージにおいて、前ステージにおいて選択された送信信号候補の各組合せに対する累積メトリックである前ステージ累積メトリックに対し、実行したステージ数番目に対応する送信信号について、変調多値数分の送信信号候補に対応するメトリックを計算し、前ステージ累積メトリックに対しそれぞれ加算することにより累積メトリックを算出し、累積メトリックの情報から実行したステージ分の送信信号に対する送信信号候補の組合せを複数選択し、絞り込み、最終ステージまで連続して選択され、絞り込まれた生き残り送信信号候補の組合せに対する累積メトリックの情報から、送信信号を判定し、分離することが好ましい。
上記発明では、既知のパイロット信号を含む受信信号に基づいて、当該受信装置における各送信信号の受信品質を推定する受信品質推定手段と、受信品質取得手段により取得された受信品質に応じて、チャネル行列の並べ替えを行い、ソート後のチャネル行列を算出するソート手段とをさらに備え、前記チャネル行列分解手段は、前記雑音電力取得手段により取得された雑音電力の情報および前記送信アンテナ数に基づき前記ソート後のチャネル行列を前記チャネル行列と見なして拡張することにより拡張チャネル行列を構成し、拡張チャネル行列をユニタリ行列および上三角行列とに分解、取得するチャネル行列分解を行うことが好ましい。
また、上記発明において、ソート手段は、前記複数の送信信号の受信品質を表す指標として、受信側の希望波電力対干渉波電力および雑音電力比(受信SINR)を用い、前記チャネル行列の各列を各送信信号の受信SINRが小さい順に並び替えを行うことにより、前記ソート後のチャネル行列を算出することが好ましい。
以上述べたように、この発明によれば、QR分解を用いたMIMOチャネルの直交化をMMSE(Minimum Mean Square Error)規範で行う拡張QRM-MLD法により、従来のQRM-MLD法に比べて伝送特性を改善することができる。
(無線伝送方法の概要)
本発明の実施形態について説明する。先ず、本発明の無線伝送方法の概要について説明する。本実施形態では、シングルユーザ(ユーザ数は1)、遅延波の影響が無視できるフラットフェージング、各送信アンテナからの平均送信電力がPsですべて等しく、各受信アンテナにおける受信機雑音電力がPnですべて等しい場合を例に説明する。
図1にMIMO伝送を用いる無線伝送システムのシステムモデルを示す。送信アンテナ数をNtとし、受信アンテナ数をNrとし、MIMO送信機1からMIMO受信機2に対するチャネル行列をH、送信信号ベクトルをs(t)とし、受信機雑音ベクトルをn(t)とする。このとき、等価低域系表現における受信信号ベクトルx(t)は次式で表される。
ただし、E{・}をアンサンブル平均とすると、次式が成立する。
ここで、本発明の実施形態における改良されたQRM-MLD法である拡張QRM-MLD法について説明するに先立ち、本発明と関連性が深い従来の空間フィルタリング技術を用いたMIMO伝送法の概要について説明する(空間フィルタリングを用いたMIMO伝送法については、例えば非特許文献3を参照されたい)。
ZF規範に基づく空間フィルタリング(ZF法)により検出した場合の出力信号ベクトルSZF(t)は、ZF規範の空間フィルタ(ZFアンテナウェイト)WZFを用いて次式で表される(非特許文献3参照) 。
ただし、行列の上付き添え字+は行列のMoore-Penroseの一般逆行列を表す。
また、一般的な行列はQR分解により、ユニタリ行列と上三角行列の積で表される。すなわち、チャネル行列Hに対し、前述のQR分解を行うと、ユニタリ行列Qおよび上三角行列Rを用いて次式で表される。
式(5)の関係式を用いるとWZFは前述のユニタリ行列Qおよび上三角行列Rを用いて次式の関係が成り立つ。
ところで、ZF法ではチャネル行列が悪条件となる場合、H+のノルムが大きくなるため、受信信号に含まれる雑音を強調する雑音強調の問題がある。そこで、この雑音強調の影響を抑えるため、MMSE規範に基づく空間フィルタリング(MMSE法)がある。MMSE法により検出した場合の出力信号ベクトルSMMSE(t)はMMSE規範の空間フィルタ(MMSEアンテナウェイト)WMMSEを用いて次式で表される(非特許文献3参照)。
なお、チャネル行列の各要素の平均利得がいずれも1となる場合、Pn/Psの逆数Ps/Pnは平均受信SNR(Signal-to-Noise-power-Ratio)を表す。従って、雑音電力の代わりに伝搬路の平均利得がわかれば、雑音電力を直接推定する必要はなく、平均受信SNRがわかれば、MMSEウェイトWMMSEを算出することができる。
ここで、次元拡張された仮想的なチャネル行列H'および次元拡張された仮想的な受信信号ベクトルx'(t)をそれぞれ次式のように定義する。
ただし、IN×NはN行N列の単位行列、0K×LはK行L列の零行列(K、Lどちらか一方が1の場合は零ベクトル)を表す。式(8)より、以下の2つの式が得られる。
式(7)、式(9)および式(10)より次式が得られる。
式(4)および式(11)より、式(1)のシステムモデルで表されるMIMO伝送におけるMMSE法は、チャネル行列が式(8)の次元拡張されたチャネル行列H'、受信信号ベクトルが式(8)の次元拡張された受信信号ベクトルx'(t)である仮想的なシステムモデル(仮想システムモデル)で表されるMIMO伝送におけるZF法を用いて検出することと等価であることを示す。
また、次元拡張されたチャネル行列に対し、QR分解を行い、ユニタリ行列Q'および上三角行列R'を用いると、次式で表される。
この関係より、MMSEアンテナウェイトWMMSEは、上述のユニタリ行列Q'および上三角行列R'を用いると次式の関係式が成り立つ。
式(14)より、式(1)でモデル化されるシステムにおけるMMSE規範に基づく信号処理は、式(12)の仮想システムモデルを考慮してZF規範に基づいて信号処理を行うことと等価であることがわかる。そこで、ここでは説明の簡略化のため、式(5)のようにチャネル行列の拡張を行わないQR分解を「ZF規範のQR分解」、式(13)のようにチャネル行列を拡張したQR分解を「MMSE規範のQR分解」と呼ぶこととする。
従来のQRM-MLD法では、先ず、既知のパイロット信号を含む受信信号を用いたチャネル行列の推定結果より、各送信信号の受信SINR (Signal-to-Interference-and-Noise-power-Ratio) の情報を元に送信信号のランキングを行い、チャネル行列の各列をソートする。ソート後のチャネル行列に対し、QR分解を行い、ユニタリ行列Qの複素共役転置QHを受信信号のベクトルに乗算することにより、MLDにおける同時推定問題を送信信号数分のステージ数で階層化された推定問題に変換する。そして、送信アンテナ数分のステージからなるMアルゴリズムを適用し、各ステージにおいて計算するメトリックに基づき送信信号候補数を削減することで、MLDにおける復号演算量の低減を図っていた(非特許文献2参照)。
しかし、従来のQRM-MLD法におけるQR分解を用いたMIMOチャネルの直交化は、前述の「ZF規範のQR分解」を用いているため、Mアルゴリズムの各ステージにおいて生き残り送信信号候補数を減らすに従い、伝送特性が大きく劣化する問題があった。
そこで、本実施形態では、QR分解を用いてMIMOチャネルの直交化を行う際、従来のQRM-MLD法で用いていた「ZF規範のQR分解」の代わりに、前述の「MMSE規範のQR分解」を用いる。これにより、従来のQRM-MLD法において発生していたMアルゴリズムの各ステージにおける生き残り送信信号候補数を減らした場合の伝送特性劣化の問題を抑えることが可能となる。
以下に本発明における具体的な実施形態を説明する。図2に拡張QRM-MLD法で用いる受信機における信号検出アルゴリズムの概要を示す。
(拡張QRM-MLD法で用いる仮想システムモデル)
先ず、従来のQRM-MLD法と同様、チャネル推定部231において既知のパイロット信号等を用いたチャネル推定の結果より、受信品質推定部232において各送信信号に対する受信SINRを推定する(受信SINRの具体的な推定方法については、例えば、非特許文献5を参照)。拡張チャネル行列構成部242における前半処理部分において、チャネル行列Hの各列を平均受信SINRの大きさに基づき(通常、平均受信SINRの小さな順に)ソートする(並び替える)。
このとき、次式が成り立つ。
式(15)に示すように、チャネル行列の各列が各送信信号の平均受信SINRの大きさに基づきソートされたため、送信信号ベクトルについても同様に平均受信SINRの大きさに基づいて各要素をソートして考える必要がある。
本実施形態では、「MMSE規範のQR分解」によりMIMOチャネルの直交化を行うため、拡張チャネル行列構成部242の後半処理部において、ソート後のチャネル行列を拡張するとともに、仮想受信信号ベクトル生成部25の前半処理部において受信信号ベクトルx(t)を拡張する。具体的には、受信側で送信電力Psおよび受信機雑音電力Pnを既知とし、式(15)におけるソート後のチャネル行列および受信信号ベクトルx(t)を次式に従ってそれぞれ置き換える。
従って、本発明を実施するための仮想システムモデルは次式で与えられる。
以下では、x'(t)を仮想受信信号ベクトル、n'(t)を仮想受信機雑音ベクトルと呼ぶことする。ただし、仮想受信機雑音ベクトルn'(t)は、次式で表される。
なお、ソート後のチャネル行列の各要素の平均利得がいずれも1となる場合、 Pn/Psの逆数Ps/Pnは平均受信SNRを表す。従って、受信機雑音電力の代わりに無線伝搬路(チャネル)の平均利得がわかれば、受信機雑音電力Pnを直接推定、1素子あたりの平均送信電力Psを使用する必要はなく、平均受信SNRがわかれば、同様の処理を行うことができる。
(MMSE規範によるQR分解を用いたMIMOチャネルの直交化)
次に、行列分解部243において拡張チャネル行列をQR分解することにより、MMSE規範のQR分解を行う。
ここで、仮想受信信号ベクトル生成部25においてユニタリ行列の複素共役転置を仮想受信信号ベクトルx'(t)に乗算し、x'(t)をヌリングすると、ヌリング後の受信信号y'(t)が得られる。
これにより、式(20)は、次式で表される。
式(21)の上三角行列の成分がすべて0となる行は無視することができるので、結局次式を考慮すればよい。
(Mアルゴリズムを用いた信号点候補削減型MLD)
これ以降の処理については、従来のQRM-MLD法と全く同様に考えることができる。すなわち、Mアルゴリズムに基づく信号点候補削減型MLD部26において、式(22)に基づき送信アンテナ数(Nt個)分のステージからなるMアルゴリズムにより、各ステージにおいて計算されたメトリックに応じて送信信号候補を削減しながら、送信信号を判定する。
用いられるメトリックとしては、受信信号と受信信号候補との二乗ユークリッド距離をメトリックとする二乗メトリックを用いることが一般的であるため、ここではこの方法をメトリック生成法の一例として用いることとするが、その他のメトリック生成法も使用することが可能である。なお、二乗メトリック以外のメトリックの代表例として乗算を不要とするマンハンタンメトリックなどが挙げられる(例えば、非特許文献4)。
ここで、信号点候補削減型MLD部26における処理について説明する。ただし、この処理に関するアルゴリズムは、従来のQRM-MLD法と同じになるため、ここでは概要のみ説明し、詳細については非特許文献5を参照されたい。
Mアルゴリズムの第1ステージでは、受信信号候補生成部261において、式(15)におけるソート後の送信信号ベクトルのNt番目要素の候補選択を行うため、送受信間で決定された変調方式によって決定される送信信号の全候補 c(m)(1≦m≦Mary、Maryは変調多値数) に対応するMary個の受信信号候補を生成する。そして、累積メトリック計算部271において、仮想受信信号ベクトルの第Nt行目要素であるy'Nt(t)と各受信信号候補に対する二乗ユークリッド距離に基づくメトリックをそれぞれ計算し、累積メトリック(初期累積メトリックは0)に対し、加算し、累積メトリックの値をそれぞれ更新する。次に、生き残り信号候補選択部281において、Mary個の受信信号候補について得られた累積メトリックe1(m) (1≦m≦Mary)を比較し、e1(m)の小さい順にS1(≦Mary)個の対応する送信信号候補を第1ステージでの生き残り送信信号候補として選択し、各生き残り送信信号候補に対するS1個の累積メトリックを保持する。
第2ステージでは、受信信号候補生成部262において、2つの送信信号の候補の全組合せ(すなわち、第1ステージで選択された式(15)におけるソート後の送信ベクトルのNt行目要素に対するS1個の生き残り送信信号候補と第2ステージにおける式(15)におけるソート後の送信信号ベクトルのNt-1行目要素に対するMary個の送信候補の全組合せ(全部でS1Mary個の組合せ))により、受信信号候補のベクトルを生成する。そして、累積メトリック計算部272において、仮想受信信号ベクトルの第Nt-1行目要素であるy'Nt-1(t)とソート後の送信信号ベクトルのNt-1行目要素に対するMary個の送信候補に対する受信信号候補との二乗ユークリッド距離に基づくメトリックをそれぞれ計算し、前ステージ(第1ステージ)の累積メトリックに対し加算することにより累積メトリックの値をそれぞれ更新する。さらに、生き残り信号候補選択部282において、得られた累積メトリックが小さなS2 (≦S1Mary)個に対応する2つの送信信号の候補に対する組合せを第2ステージにおける生き残り送信信号候補として選択し、対応するS2個の累積メトリックを保持する。
第3ステージ以降でも同様の動作を繰り返すことにより、最終的第NtステージにおいてS3Mary個の生き残り送信信号候補の組合せと対応する累積メトリックが出力される。ただし、ここで出力される生き残り送信信号候補の組合せで表されるベクトルは受信品質推定部232において推定された各送信信号の受信SINRに基づきソートされた状態で出力されるので、送信信号判定部29の前半処理部において本来の送信信号ベクトル
に対応するように元の順番への並び戻し(デソーティング)が行われる。
最後に送信信号判定部29の後半処理部において、並び戻しされた生き残り送信信号候補の組合せに対する累積メトリックを基に各送信信号を検出する。誤り訂正を行わない場合や誤り訂正において硬判定復号を行う場合には、最終(第Nt)ステージにおける累積メトリックの最も小さくなる生き残り送信信号候補の組合せを最も確からしい送信信号の組合せとして選択すればよい。
一方、誤り訂正において軟判定復号を行う場合には、軟判定復号による特性改善効果を生かすため、最終ステージにおける累積メトリックが最小となる生き残り送信信号候補以外のある程度広い範囲の候補についても合わせて探索した上で、最も確からしい送信信号の組合せを選択することが望ましい(非特許文献3参照)。
(無線伝送システムの構成)
次いで、本実施形態に係る無線伝送システムの構成について説明する。この無線伝送システムを動作させることによって、上述した本発明の無線伝送方法を実施することができる。
図1に示すように、本実施形態に係る無線伝送システムは、Nt本のアンテナ#1〜#Ntを有するMIMO送信機1と、Nr本のアンテナ#1〜#Nrを有するMIMO受信機2との間で、複数の送信信号から構成される信号を、Nt本のアンテナ#1〜#Ntから同一時刻に同一搬送波周波数で相互に送受信するMIMOによる無線伝送方式を用いる。
MIMO送信機1は、例えば無線基地局等に設置され、MIMO受信機2は、移動局等に設けられる。本実施形態では単方向の通信を例に説明しているが、本発明は、無線基地局および移動局いずれもMIMO送信機1およびMIMO受信機2の両方を設置する双方向通信の場合についても当然利用可能である。
同図において、送信アンテナ数をNtとし、MIMO送信機1からMIMO受信機2に対するチャネル行列をH、送信信号ベクトルをs(t)とし、受信装置の受信機雑音ベクトルをn(t)とする。MIMO送信機1は、単数又は複数の送信信号から構成される信号を複数の送信アンテナを用いて送信する。
これらの送信信号には、ユーザが伝送したい情報であるユーザデータ信号以外に、送受信装置間のチャネル行列を推定するため、送受信装置間で既知のパイロット信号をユーザデータ信号に対し、時分割多重あるいは符号分割多重等の多重法を用いて送信する。また、送受信間で制御情報のやりとりが必要な場合には、さらに送受信間の制御情報をやりとりする制御信号等をこれらの信号に対して多重して送信すればよい。なお、各送信アンテナには、ベースバンド信号をRF帯の信号に変換するアップコンバータである周波数変換装置や(図示せず)が設けられている。
他方、MIMO受信機2は、Nr本の受信アンテナ#1〜#Nrを備えており、各受信アンテナには、RF帯の信号をベースバンド信号に変換するダウンコンバータ等の周波数変換器(図示せず)が設けられている。なお、本実施形態ではベースバンドレベルでの処理を基本とするが、等価な処理をIF帯やRF帯で処理を行ってもよい。
MIMO受信機2における送信信号検出アルゴリズムの概要を図2に示す。図2では、簡単のため、送信アンテナ数Ntおよび受信アンテナ数がいずれも4の場合について例示しているが、いずれも4以外の値でもよいし、互いに異なる値であってもよい。
MIMO受信機2は、図2に示すように、パイロット信号区間における受信信号を用いて、チャネル行列Hを推定するチャネル推定部231と、チャネル推定結果を用いて各送信信号の受信品質を推定する受信品質推定部232と、受信機雑音電力を取得する受信機雑音電力取得部233と、チャネル推定結果および受信品質推定結果を用いてチャネル行列の並び替え(ソート)を行うチャネルソート部241と、ソートされたチャネル行列、受信機雑音電力および送信アンテナ数Ntから拡張チャネル行列を構成する拡張チャネル行列構成部242と、拡張チャネル行列をユニタリ行列と上三角行列に分解する行列分解部243と、受信信号ベクトルx(t)と送信アンテナ数Ntから拡張受信信号ベクトルx'(t)を生成し、ユニタリ行列の複素共役転置を乗算することにより仮想受信信号ベクトルy'(t)を生成する仮想受信信号ベクトル生成部25と、仮想受信信号ベクトルy'(t)、上三角行列および受信品質推定結果から、Mアルゴリズムに基づいて送信信号候補を削減しながらMLDの計算量削減を行い、送信信号を準最適に検出する信号点候補削減型MLD部26を備えている。
信号点候補削減型MLD部26は、仮想受信信号ベクトルと複数の受信信号候補の組合せとから算出される受信アンテナ毎のユークリッド距離の情報に基づいて生成される各送信信号候補に対するメトリックを用いて、複数の送信信号を判定して分離するモジュールであり、MIMO送信機1より送信された送信信号の数(すなわち、送信アンテナ数Nt)に対応する複数のステージからなり、各ステージにおいて、個々の送信信号に対し前記メトリックの情報を用いて順次候補の絞り込みにより、生き残り送信信号候補の組合せを複数選択しながら、最終ステージにおいて複数の送信信号を判定して分離する。
具体的に、この信号点候補削減型MLD部26は、送信アンテナ数分のステージからなるMアルゴリズムにより、MLDで用いる送信信号候補を削減するモジュールであり、仮想受信信号ベクトルy'(t)の各要素に対して、上三角行列および送受信間で決定した変調方式の情報を元に生成される送信信号の候補に基づき各ステージにおける複数の受信信号候補をそれぞれ生成する受信信号候補生成部261〜26Ntと、各ステージでの受信信号候補と仮想受信信号ベクトルy'(t)に基づいて、各ステージにおける各送信信号候補の信頼度を表すメトリックに前ステージにおける累積メトリック(ただし、初期累積メトリックは0)を加算することにより、各受信信号候補の組合せの信頼度に対応する当該ステージの累積メトリックを計算する累積メトリック計算部271〜27Ntと、最終ステージを除く各ステージにおいて累積メトリックの小さな(すなわち、信頼度の高い)送信信号候補の組合せを生き残り送信信号候補として、複数選択する生き残り信号候補選択部281〜283と、最終ステージにおける累積メトリック、対応する送信信号候補の組合せおよび各送信信号の受信品質の情報に基づいて準最適な送信信号を最終的に検出する送信信号判定部29とを備えている。
上記チャネル推定部231は、既知のパイロット信号を含む受信信号に基づいて、各送受信アンテナ間のチャネル情報によって構成されるチャネル行列を推定するモジュールであり、パイロット信号区間における受信信号を用いてチャネル行列Hを推定し、この推定されたチャネル行列Hは、チャネルソート部241および受信品質推定部232に出力される。
受信品質推定部232は、既知のパイロット信号を含む受信信号に基づいて、上記複数の送信信号の当該受信装置における受信品質をそれぞれ推定するモジュールであり、チャネル推定部231から入力されたチャネル推定結果を用いて各送信信号の受信品質を推定し、推定結果をチャネルソート部241および送信信号判定部29に出力する。
受信機雑音電力取得部233は、各受信アンテナに対する受信機の雑音電力を取得するモジュールであり、取得された受信機雑音は、拡張チャネル行列構成部242に入力される。
チャネルソート部241は、チャネル推定部231によるチャネル推定結果、および受信品質推定部232による受信品質推定結果を用い、チャネル推定部231が推定したチャネル行列の列毎の並び替え(ソート)を行い、ソート後のチャネル行列を算出するモジュールであり、ソート後のチャネル行列は、拡張チャネル行列構成部242に入力される。
拡張チャネル行列構成部242は、チャネルソート部241でソートされたソート後のチャネル行列を、受信機雑音電力取得部233により取得された受信機雑音電力Pnの情報、送信機の送信電力のPs(受信機側で既知とし、図示せず)および送信装置のアンテナ数に基づき拡張した拡張チャネル行列を構成するモジュールであり、この構成された拡張チャネル行列は、行列分解部243に入力される。
なお、(ソート後の)チャネル行列の各要素の平均利得がいずれも1となる場合、雑音電力Pn/Psの逆数Ps/Pnは平均受信SNRを表すので、無線伝搬路(チャネル)の平均利得は一般的にチャネル推定部231のチャネル推定結果により取得することができるので、受信機雑音電力Pnを直接推定、1素子あたりの平均送信電力Psを使用する必要はなく、平均受信SNRを推定することにより、拡張チャネル行列を構成することも可能である。
行列分解部243は、拡張チャネル構成部242から入力された拡張チャネル行列を分解、ユニタリ行列と上三角行列を取得するモジュールである。分解されたユニタリ行列は、仮想受信信号ベクトル生成部25に入力され、上三角行列は、信号点候補削減型MLD部26の各ステージの受信信号候補生成部261〜26Ntに入力される。
仮想受信信号ベクトル生成部25は、各受信アンテナの受信信号に基づき構成される受信信号ベクトルに対し、前記ユニタリ行列の複素共役転置を乗算して仮想受信信号ベクトルy'(t)を算出するモジュールであり、この仮想受信信号ベクトル生成部25において、受信信号ベクトルx(t)と送信アンテナ数Ntから拡張受信信号ベクトルx'(t)を生成し、これに行列分解部243から入力されたユニタリ行列の複素共役転置を乗算することにより仮想受信信号ベクトルy'(t)を生成し、信号点候補削減型MLD部26の各ステージの累積メトリック計算部271〜27Ntに出力する。
受信信号候補生成部261〜26Ntは、Mアルゴリズムの各ステージにおいて、送受信間で決定した変調方式の情報を元に生成される送信信号の候補に対し、前記上三角行列の要素を乗算することにより、複数の受信信号候補を仮想受信信号ベクトルの各要素についてそれぞれ生成するモジュールである。なお、本実施形態において受信信号候補生成部261〜26Ntは、MIMO送信機1およびMIMO受信機2との間で決定した変調方式に基づいて、送信信号の候補を生成する機能を有し、仮想受信信号ベクトル生成部25から入力された仮想受信信号ベクトルy'(t)の各要素に対して、行列分解部243から入力された上三角行列、および前記送信号の候補に基づき、各ステージにおいて複数の受信信号候補をそれぞれ生成する。この各ステージの受信信号候補は、各ステージに配置された累積メトリック計算部271〜27Ntに入力される。
累積メトリック計算部271〜27Ntは、本実施形態では、初期累積メトリックを0とし、各ステージにおいて、前ステージにおいて選択され、絞り込まれた生き残り送信信号候補の各組合せに対する累積メトリックである前ステージ累積メトリックに対し、実行したステージ数番目に対応する送信信号について、変調多値数分の送信信号候補に対応するメトリックを計算し、前ステージ累積メトリックに対しそれぞれ加算することにより累積メトリックを算出するモジュールである。
生き残り信号候補選択部281〜283は、各ステージにおいて、累積メトリック計算部271〜273が実行したステージ分の送信信号に対する送信信号候補の組合せを複数選択し、絞り込むモジュールである。なお、この生き残り信号候補選択部は、最終ステージの前のステージまで、ステージ数Nt -1個配置される。
送信信号判定部29は、最終ステージまで連続して選択され、絞り込まれた生き残り送信信号候補の組合せを、最終ステージの累積メトリック計算部27Ntから取得し、その最終的な組合せに対する累積メトリックの情報から、送信信号を判定し、分離するモジュールである。
図3に、本実施形態に係る送信信号の判定方法を模式的に示す。同図に示すように、送信信号数(すなわち送信アンテナ数)分のステージ(階層)からなり、各ステージにおいて任意数のパス(分岐)を有するトレリス(木構造)を仮想的に生成し、このトレリス上に、送信信号候補の組合せを配置し、トレリスに従ってステージ毎に送信信号候補を絞り込みつつ、探索を行う。
そして、生き残り信号候補選択部281〜283は、トレリスに従って、各ステージに配置された送信信号候補を用いて、各分岐毎のメトリックに応じて、各ステージにおけるパスのうち任意数のパス(例えば、累積メトリックが小さい2個のパスなど)を選択して絞りつつ、トレリスの上位から下位に向かって絞り込まれ生き残ったパスのメトリックを順次加算して累積メトリックを算出し、誤り訂正において硬判定復号を行う場合には、選択された分岐の範囲内において累積メトリックが最小値となる送信信号候補の組合せを送信信号として判定する。
ここで、各ステージにおける絞り込まれ、選択される送信信号候補の組合せ数の最大数は、変調多値数(ステージ数)である。すなわち、送信アンテナ数Ntを4とした場合、トレリスの第m(<Nt)ステージにおいて絞り込む送信シンボル候補数Smを(S1,S2,S3)と表現すると、例えば、変調多値数Maryが16のときに、絞り込むことなくすべての送信シンボル候補の探索(全探索)を行った場合、(S1,S2,S3)=(16,162,163)となり、送信シンボル候補を1つだけに絞り込む場合には、(S1,S2,S3)=(1,1,1)となる。なお、検出精度を確保するためには、通常各Smは1よりある程度大きな値にそれぞれ設定する必要がある。また、図3では、各ステージにおける分岐の量を少なくし、簡易に図示するため、送信アンテナ数Ntを4、変調多値数4 (Mary=4) で、送信シンボル候補を2つに絞り込む(S1,S2,S3)=(2,2,2)の場合のみを例示しているので注意する必要がある。
(無線伝送方法)
以上の構成を有する無線伝送システムを動作させることによって、本発明の無線伝送方法を実施することができる。
先ず、受信アンテナにより信号を受信すると、チャネル推定部231において、パイロット信号区間における受信信号等を用いて、送信アンテナ〜受信アンテナ間のチャネル行列が推定されるとともに、チャネルソート部241に入力される。受信品質推定部232では、チャネル推定部231におけるチャネル推定結果を基に各送信信号の受信SINRを推定し、その結果をチャネルソート部241および送信信号判定部29へ入力する(チャネル推定結果を用いた受信SINRの推定法については、例えば、非特許文献2を参照)。また、受信機雑音電力取得部では、各受信アンテナが接続されている受信機の雑音電力を取得し、拡張チャネル行列構成部242へ入力する(受信機雑音を推定する方法としては、例えば、特許文献1を参照)。
チャネルソート部241において、受信SINRに基づいて推定されたチャネル行列Hの各列を信号検出精度が上がるように並び替え、ソート後チャネル行列を生成し、拡張チャネル行列構成部242へ入力する。
拡張チャネル行列構成部242では、ソート後のチャネル行列をチャネル行列と見なし、受信機雑音電力Pn、送信電力Ps、送信アンテナ数Ntから式(17)の拡張チャネル行列を構成し、行列分解部243へ入力する。なお、ソート後のチャネル行列の各要素の平均利得がいずれも1となる場合、1素子あたりの送信電力対雑音電力比であるPs/Pnは平均受信SNR を表すため、無線伝搬路(チャネル)の平均利得は一般にチャネル推定部231のチャネル推定により取得することができるので、受信機雑音電力Pnを直接推定、1素子あたりの平均送信電力Psを使用する必要はなく、平均受信SNRを推定することにより、拡張チャネル行列を構成することも可能である。
行列分解部243では、拡張チャネル行列に対し、QR分解を行い、式(19)を満たすユニタリ行列および上三角行列を算出し、ユニタリ行列の各要素を仮想受信信号ベクトル生成部25へ入力し、上三角行列の要素を信号点候補削減型MLD部26へ入力する。
仮想受信信号ベクトル生成部25では、受信信号ベクトルと送信アンテナ数Ntから、拡張受信信号ベクトルx'(t)を算出するとともに、拡張受信信号ベクトルx'(t)に対し、ユニタリ行列の複素共役転置を乗算して仮想受信信号ベクトルy'(t)を算出し、算出された仮想受信信号ベクトルy'(t)の第1行目からNt(送信アンテナ数)行目までの要素を後段の信号点候補削減型MLD部26へ出力する。
信号点候補削減型MLD部26では、送信アンテナ数Nt分のステージからなるMアルゴリズムにより、MLDの計算量を削減する。
先ず、信号点候補削減型MLD部26の各ステージに配置された受信信号候補生成部261〜26Ntにおいて、送受信間の変調方式の情報を元に生成される送信信号の候補に対し、前記上三角行列の要素を乗算することにより、仮想受信ベクトルy'(t)の各要素について複数の受信信号候補をそれぞれ生成する。具体的には、受信信号候補生成部261〜26Ntが、MIMO送信機1およびMIMO受信機2との間で決定した変調方式に基づいて、送信信号の候補を生成し、仮想受信信号ベクトル生成部25から入力された仮想受信信号ベクトルy'(t)に対して、行列分解部243から入力された上三角行列、および前記送信信号の候補に基づき、各ステージにおける複数の受信信号候補を生成する。この各ステージの受信信号候補は、各ステージに配置された累積メトリック計算部271〜27Ntに入力される。
累積メトリック計算部271〜27Ntでは、前ステージ累積メトリックに対し、実行したステージ数番目に対応する送信信号について、変調多値数分の送信信号候補に対応するメトリックを計算し、前ステージ累積メトリックに対しそれぞれ加算することにより累積メトリックを算出する。
各ステージの生き残り信号候補選択部281〜283において、累積メトリック計算部271〜273が実行したステージ数分の送信信号に対する送信信号候補の組合せを選択し、順次絞り込みを行う。そして、送信信号判定部29において、最終ステージまで連続して選択され、絞り込まれた生き残り送信信号候補の組合せを、最終ステージの累積メトリック計算部27Ntから取得し、その最終的な組合せに対する累積メトリックの情報から、送信信号を判定し、分離する。
(作用・効果)
次いで、以上説明した本実施形態に係る無線伝送システムおよび無線伝送方法に関する作用効果についてのシミュレーションについて説明する。主なシミュレーション諸元を表1に示す。
本シミュレーションでは、シングルユーザの場合について評価する。送信アンテナ数Ntを4、受信アンテナ数Nrを4に固定している。また、チャネルモデルは簡単のため、準静的フラットレイリーチャネルとし、フェージングの空間相関は送受共に無相関となるI.I.D.チャネルを仮定している。また、前提として、各送信アンテナへ割り当てられる送信電力はすべて等しく、変調方式は平均受信SNRに係らず16QAM×4ストリームで固定している。
従って、本シミュレーションでは、送信装置全体の送信伝送レートは、平均受信SNRに依存せず常に等しくなる。また、受信側ではチャネル推定およびタイミング検出は理想的に行われるものとし、受信機雑音電力が理想的に推定できるものとして、本発明である拡張QRM-MLD法を従来のQRM-MLD法と比較し評価する。
図4(a)および(b)は、従来のQRM-MLD法と、本実施形態に係る無線伝送方法(拡張QRM-MLD法)の誤り訂正符号化なしにおける平均ビット誤り率特性をそれぞれ示す。
なお、ここでは、比較のため、送信信号候補の全探索を行い、計算量削減を行わない理想的なMLD(以下、Full MLD法)と、平均受信SINRの高い信号から順にZFおよびMMSE規範の空間フィルタリングにより受信SINRの高いストリームから順次繰り返し干渉除去を行うV-BLAST(ZF)法(非特許文献6参照)と、V-BLAST(MMSE)法(例えば、非特許文献7参照)を用いた場合の特性もそれぞれ合わせて示す(V-BLAST : Vertical Bell Laboratories Layered Space-Time)。
以下では従来のQRM-MLD法および拡張QRM-MLD法におけるMアルゴリズムの第m(<Nt)ステージにおいて選択される生き残り送信信号候補数Smを各ステージで異なる値を選択する場合を想定して(S1,S2,S3)と表現することにする。例えばすべての送信信号候補の探索(全探索)を行った場合、(S1,S2,S3)=(16,162,163)と表され、この場合Full MLD法と同じ特性となる。
図4(a)および(b)に示すように、各シミュレーションの結果を比較してみると、各ステージにおいて選択される生き残り送信信号候補を1つだけに絞り込む(S1,S2,S3)=(1,1,1)では、従来のQRM-MLD法はV-BLAST(ZF)法とほぼ同じ特性、拡張QRM-MLD法はV-BLAST(MMSE)法に対し、やや特性が劣化するものの、従来のQRM-MLD法に比べ、平均ビット誤り率10-3となる平均受信SNRで約2dB特性が改善していることがわかる。
さらに、各ステージで送信信号候補を4つに絞り込む(S1,S2,S3)=(4,4,4)の場合、平均ビット誤り率が10-3となる平均受信SNRで比較すると、従来のQRM-MLD法ではFull MLD法に比べ約4dB劣化しているが、拡張QRM-MLD法ではFull MLD法に比べ約1dBの劣化に収まっている。
また、Mアルゴリズムの各ステージにおいて送信信号候補を8つに絞り込む(S1,S2,S3)=(8,8,8)とした場合、平均ビット誤り率が10-3となる平均受信SNRを比較すると、従来のQRM-MLD法ではFull MLD法に対し約2dB劣化するが、拡張QRM-MLD法ではFull MLD法に対する劣化はほとんどなく、従来のQRM-MLD法に比べ伝送特性が大きく改善されることがわかる。このことから、拡張QRM-MLD法は、従来のQRM-MLD法に比べて少ない範囲の送信信号候補探索で、理想的なFull MLD法の特性に近づくことができ、本手法の有効性が確認できる。なお、本シミュレーションでは送信機から送信された複数(Nt本)の信号はすべて同じユーザに対して伝送するシングルユーザMIMOでの評価であったが、これらの複数の信号を複数の異なるユーザに対して割り当て伝送するマルチユーザMIMOにおいても、拡張QRM-MLD法を用いて受信側で自ユーザに対する送信信号を取り出すことで、同様に検出することができる。
実施形態に係るMIMO伝送方式を用いる無線伝送システムのシステムモデルを示すブロック図である。 実施形態に係る無線伝送方法における送信信号検出アルゴリズムの概要を示す説明図である。 実施形態に係る送信信号候補の絞り込み方法の概要を示す説明図である。 実施形態に係る無線伝送システムおよび方法に関するシミュレーションの結果を示すグラフ図である。 MIMO伝送方式を用いる無線伝送システムの構成の概要を示すブロック図である。 MIMO伝送方式の受信機構成の概要を模式的に示すブロック図である。
符号の説明
1…MIMO送信機
2…MIMO受信機
22…信号検出部
25…仮想受信信号ベクトル生成部
26…信号点候補削減型MLD部
27Nt…累積メトリック計算部
29…送信信号判定部
231…チャネル推定部
232…受信品質推定部
233…受信機雑音電力取得部
241…チャネルソート部
242…拡張チャネル行列構成部
243…行列分解部
261〜26Nt…受信信号候補生成部
271〜27Nt…累積メトリック計算部
281〜283…生き残り信号候補選択部

Claims (8)

  1. 複数の送信アンテナを有する送信装置と、複数の受信アンテナを有する受信装置との間で、複数の信号を前記複数の送信アンテナから同一時刻に同一搬送波周波数で伝送する無線伝送システムであって、
    前記送信装置は、受信装置で既知のパイロット信号を含む前記複数の信号を送信し、前記受信装置は、無線伝搬路を経由し、前記送信された複数の信号を成分とする信号を受信し、個々の送信された信号を推定し分離する信号分離手段を有し、
    前記信号分離手段は、
    前記各受信アンテナに対する受信機の雑音電力を取得する受信機雑音電力取得手段と、
    前記送信装置および受信装置との間で決定した変調方式に基づいて、変調多値数に応じた複数の送信信号の候補を生成する送信信号候補生成手段と、
    前記既知のパイロット信号を含む受信信号に基づいて、各送受信アンテナ間のチャネル情報によって構成されるチャネル行列を推定するチャネル情報推定手段と、
    前記チャネル情報推定手段により推定されたチャネル行列を、前記雑音電力取得手段により取得された雑音電力の情報および前記送信装置の送信アンテナ数に基づき拡張された拡張チャネル行列を構成する拡張チャネル行列構成手段と、
    前記拡張チャネル行列に基づいて、該拡張チャネル行列をユニタリ行列と上三角行列とに分解し、取得するチャネル行列分解手段と、
    前記各受信アンテナの受信信号に基づき構成される受信信号ベクトルに対し、前記ユニタリ行列の複素共役転置を乗算して仮想受信信号ベクトルを算出する仮想受信信号算出手段と、
    前記送信信号候補生成手段から前記送信信号の候補に対し前記上三角行列の要素を乗算することにより、複数の受信信号候補を前記仮想受信信号ベクトルの各要素についてそれぞれ生成する受信信号候補生成手段と、
    前記仮想受信ベクトルと前記複数の受信信号候補とから算出される各受信信号候補に対応する送信信号候補の信頼度の情報に基づいて生成される各送信信号候補に対するメトリックを用いて、送信信号を判定して分離する判定分離手段と
    を備え、
    前記判定分離手段は、
    前記送信アンテナ数に対応する複数のステージからなり、
    第1のステージに対応する送信信号について、当該送信信号における変調多値数に相当する数の複数の候補に対して絞り込みを行うため、これらの候補について前記メトリックの情報を比較することにより複数の生き残り送信信号候補を選択し、
    第2のステージにおいては、前ステージで選択された複数の生き残り送信信号候補と当該第2ステージに対応する送信信号における変調多値数に相当する数の候補との複数の組合せに対して絞り込みを行うため、前記メトリックの情報を比較することにより単数または複数の生き残り送信信号候補の組合せを選択し、
    第3のステージ以降においては、前ステージで選択された単数または複数の生き残り送信信号候補と各ステージに対応する送信信号における変調多値数に相当する数の候補との複数の組合せに対して絞り込みを行うため、前記メトリックの情報を比較することにより単数または複数の生き残り送信信号候補の組合せを選択する操作を、繰り返す
    ことにより、前記送信された複数の信号を判定して分離する
    ことを特徴とする無線伝送システム。
  2. 前記判定分離手段は、
    初期累積メトリックを0とし、各ステージにおいて、前ステージにおいて選択された送信信号候補の各組合せに対する累積メトリックである前ステージ累積メトリックに対し、実行したステージ数番目に対応する送信信号について、変調多値数分の送信信号候補に対応するメトリックを計算し、前記前ステージ累積メトリックに対しそれぞれ加算することにより累積メトリックを算出し、
    前記累積メトリックの情報から、実行したステージ分の送信信号に対する送信信号候補の組合せを複数選択し、絞り込み、
    最終ステージまで連続して選択され、絞り込まれた生き残り送信信号候補の組合せに対する累積メトリックの情報から、送信信号を判定し、分離する
    ことを特徴とする請求項1に記載の無線伝送システム。
  3. 前記既知のパイロット信号を含む受信信号に基づいて、上記複数の送信信号の当該受信装置における受信品質をそれぞれ推定する受信品質推定手段と、
    受信品質取得手段により取得された受信品質に応じて、前記チャネル行列の並べ替えを行い、ソート後のチャネル行列を算出するソート手段と、
    を備え、
    前記チャネル行列分解手段は、前記雑音電力取得手段により取得された雑音電力の情報および前記送信アンテナ数に基づき、前記ソート後のチャネル行列を前記チャネル行列と見なして拡張することにより前記拡張チャネル行列を構成し、前記拡張チャネル行列をユニタリ行列および上三角行列とに分解、取得する前記チャネル行列分解を行う
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線伝送システム。
  4. 前記ソート手段は、前記複数の送信信号の受信品質を表す指標として、受信側の希望波電力対干渉波電力および雑音電力比(受信SINR)を用い、前記チャネル行列の各列を各送信信号の受信SINRが小さい順に並び替えを行うことにより、前記ソート後のチャネル行列を算出する
    ことを特徴とする請求項3に記載の無線伝送システム。
  5. 複数の送信アンテナを有する送信装置と、複数の受信アンテナを有する受信装置との間で、複数の信号を前記複数の送信アンテナから同一時刻に同一搬送波周波数で伝送する無線伝送方法であって、
    前記送信装置から、受信装置で既知のパイロット信号を含む前記複数の信号を送信し、前記受信装置において、無線伝搬路を経由し、前記送信された複数の信号を成分とする信号を受信するステップ(1)と、
    前記送信装置において、受信機雑音電力推定手段によって前記各受信アンテナに対する受信機の雑音電力を推定するとともに、送信信号候補生成手段によって、前記送信装置および受信装置との間で決定した変調方式に基づいて、変調多値数に応じた複数の送信信号の候補を生成するステップ(2)と、
    前記送信装置において、チャネル情報推定手段によって前記既知のパイロット信号を含む受信信号に基づいて、各送受信アンテナ間のチャネル情報によって構成されるチャネル行列を推定するステップ(3)と、
    前記送信装置において、前記チャネル情報推定手段により推定されたチャネル行列を、雑音電力取得手段により取得された雑音電力の情報および前記送信装置の送信アンテナ数に基づき、拡張チャネル行列構成手段によって拡張された拡張チャネル行列を構成するステップ(4)と、
    前記送信装置において、前記拡張チャネル行列に基づいて、チャネル行列分解手段によって該拡張チャネル行列をユニタリ行列と上三角行列とに分解し、取得するステップ(5)と、
    前記送信装置において、前記各受信アンテナの受信信号に基づき構成される受信信号ベクトルに対し、仮想受信信号算出手段によって前記ユニタリ行列の複素共役転置を乗算して仮想受信信号ベクトルを算出するステップ(6)と、
    前記送信装置において、前記送信信号候補生成手段によって生成された前記送信信号の候補に対し、受信信号候補生成手段によって前記上三角行列の要素を乗算することにより、複数の受信信号候補を前記仮想受信信号ベクトルの各要素についてそれぞれ生成するステップ(7)と、
    前記送信装置において、前記送信アンテナ数に対応する複数のステージからなる判定分離手段によって、前記仮想受信ベクトルと前記複数の受信信号候補とから算出される各受信信号候補に対応する送信信号候補の信頼度に基づいて生成される各送信信号候補に対するメトリックを用い、第1のステージに対応する送信信号について、当該送信信号における変調多値数に相当する数の候補の絞り込みを行うため、これらの候補について前記メトリックの情報を比較することにより複数の生き残り送信信号候補を選択し、第2のステージにおいては、当該第2ステージに対応する送信信号における変調多値数に相当する数の候補と前ステージで選択された複数の生き残り送信信号候補との組合せについて、前記メトリックの情報を比較することにより単数または複数の生き残り送信信号候補を選択し、
    第3のステージ以降においては、各ステージに対応する送信信号における変調多値数に相当する数の候補と前ステージで選択された単数または複数の生き残り送信信号候補との組合せについて、前記メトリックの情報を比較することにより単数または複数の生き残り送信信号候補を選択する操作を、繰り返す
    ことにより、前記送信された複数の信号を判定して分離するステップ(8)と
    を有することを特徴とする無線伝送方法。
  6. 前記ステップ(8)において判定分離手段は、
    初期累積メトリックを0とし、各ステージにおいて、前ステージにおいて選択された送信信号候補の各組合せに対する累積メトリックである前ステージ累積メトリックに対し、実行したステージ数番目に対応する送信信号について、変調多値数分の送信信号候補に対応するメトリックを計算し、前記前ステージ累積メトリックに対しそれぞれ加算することにより累積メトリックを算出し、
    前記累積メトリックの情報から、実行したステージ分の送信信号に対する送信信号候補の組合せを複数選択し、絞り込み、
    最終ステージまで連続して選択され、絞り込まれた生き残り送信信号候補の組合せに対する累積メトリックの情報から、送信信号を判定し、分離する
    ことを特徴とする請求項5に記載の無線伝送方法。
  7. 前記ステップ(4)では、受信品質推定手段によって前記既知のパイロット信号を含む受信信号に基づいて、上記複数の送信信号の当該受信装置における受信品質をそれぞれ推定するとともに、ソート手段よって、受信品質取得手段により取得された受信品質に応じて、前記チャネル行列の並べ替えを行い、ソート後のチャネル行列を算出し、
    前記ステップ(5)においてチャネル行列分解手段は、前記雑音電力取得手段により取得された雑音電力の情報および前記送信アンテナ数に基づき、前記ソート後のチャネル行列を前記チャネル行列と見なして拡張することにより、前記拡張チャネル行列を構成し、前記拡張チャネル行列をユニタリ行列および上三角行列とに分解、取得する前記チャネル行列分解を行う
    ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の無線伝送方法。
  8. 前記ステップ(4)において前記ソート手段は、前記複数の送信信号の受信品質を表す指標として、受信側の希望波電力対干渉波電力および雑音電力比(受信SINR)を用い、前記チャネル行列の各列を各送信信号の受信SINRが小さい順に並び替えを行うことにより、前記ソート後のチャネル行列を算出する
    ことを特徴とする請求項7に記載の無線伝送方法。
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