JP4853777B2 - 塑性結合部材及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、例えば軸部材とその軸部材に外挿される外挿部材とを塑性結合してなる塑性結合部材に関する。
従来、軸部材とその軸部材に外挿される外挿部材とを結合する方法としては、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1及び2では、硬度の高いものに対して硬度の低いものを塑性変形させて食い込ませ、両者を強固に結合する、いわゆる塑性結合の方法が開示されている。
上記文献では、特許請求の範囲において明確な限定がなされているわけではないが、その実施例には軸部材の硬度が外挿部材よりも高い場合の例が示されているだけであり、外挿部材の硬度が軸部材よりも高い場合の例は示されていない。しかし、通常、硬度が高くなるほど引張応力による破壊の可能性が高くなるため、軸部材の硬度が外挿部材よりも高い場合には、塑性結合するに当たって問題が生じることはないが、外挿部材の硬度が軸部材よりも高い場合には、両者を塑性結合する際に外挿部材側に発生する引張応力に高硬度の外挿部材が耐えることができず、これによって結合後に外挿部材に遅れ破壊等の不具合が起こる可能性が非常に高くなる。したがって、構造上、外挿部材の硬度を軸部材よりも高くしなければならない部材には、この遅れ破壊の問題を解決しない限り塑性結合を用いることができない。
外挿部材の硬度が軸部材よりも高い場合において、上述したような塑性結合以外に両者を結合する方法としては、スプライン嵌合や圧入等による結合方法がある。しかしながら、スプライン嵌合による結合の場合には、軸部材及び外挿部材の両方に精密な加工を施す必要があり、コストの増大につながる。また、圧入による結合の場合には、軸部材と外挿部材との接触面は、その面圧によって互いの間にズレが起きるのを抑制されているだけであり、ズレが生じないような構造で強固に固定されているわけではないため、使用中に微小なズレが繰り返し生じる。その結果、フレッティング疲労が起こり、これに伴って亀裂、損傷が発生する可能性がある。一方、上記の不具合を防止するために外挿部材にボス部を付与する等で圧入部の軸方向長さを大きくすると、部材が大きくなり、軽量化が困難となると共に、生産性の低下、コストの増大となる。また、スプライン嵌合や圧入による結合は、軸部材と外挿部材とが接触面において強固に固定された塑性結合に比べると、充分な強度を得ることができない。
このようなことから、外挿部材の硬度が軸部材よりも高い場合において、遅れ破壊等の不具合を発生させることなく、塑性結合によって強度上問題のない一体部品を製造することができる塑性結合部材及びその製造方法が望まれている。
特開2004−195475号公報 特開2005−111490号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、外挿部材の硬度が軸部材よりも高い場合において、遅れ破壊等の不具合を発生させることなく、塑性結合によって強度上問題のない一体部品を製造することができ、寸法精度や耐久性に優れ、さらには生産性の向上、コストの低減を図ることができる塑性結合部材及びその製造方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、軸部材と該軸部材を挿入させる挿入穴を設けた外挿部材とを有し、
該外挿部材の上記挿入穴の内周面は、軸方向に歯筋を有すると共に内方に突出する複数の歯部を有し、かつ、上記軸部材との係合の前に、少なくとも上記歯部の表面を硬化する硬化処理を施してあり、
上記歯部は、上記軸部材の軸線を含む軸平面となす角度がαである受圧面と、上記軸平面となす角度がβ(β>α)である傾斜面とにより鋭角状を呈していると共に、上記受圧面を周方向における第1の方向に位置させた第1締結歯と、その反対側の第2の方向に上記受圧面を位置させた第2締結歯とを構成し、
上記第1締結歯を並べた第1領域と、上記第2締結歯を並べた第2領域とは、上記挿入穴の周方向に交互に配列されており、
上記第1締結歯の上記傾斜面と上記第2締結歯の上記傾斜面とが対面する部位には、上記受圧面と上記傾斜面とにより形成された谷部の外接円よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する上記傾斜面を滑らかに繋いだ第1控え部を設けてあり、
上記軸部材は、上記歯部の内接円の径よりも大きい外径の結合外面部を有しており、
該結合外面部に上記歯部を食い込ませて上記結合外面部の一部を塑性流動させた塑性結合部を形成することにより、上記軸部材と上記外挿部材とを一体的に結合していることを特徴とする塑性結合部材にある(請求項1)。
本発明の塑性結合部材は、上記軸部材と該軸部材を挿入させる挿入穴を設けた上記外挿部材とを有し、該外挿部材の上記挿入穴の内周面は、軸方向に歯筋を有すると共に内方に突出する複数の歯部を有する。そして、上記軸部材と上記外挿部材とは、上記軸部材の上記結合外面部に上記外挿部材の上記歯部を食い込ませ、上記結合外面部の一部を上記歯部の谷部に塑性流動(塑性変形)させた塑性結合部を形成し、いわゆる塑性結合によって一体的に結合している。
ここで、本発明において注目すべき点は、上記第1締結歯の上記傾斜面と上記第2締結歯の上記傾斜面とが対面する部位に、上記谷部の外接円よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する上記傾斜面を滑らかに繋いだ第1控え部が設けてあることにある。
すなわち、上記外挿部材の硬度が上記軸部材よりも高い場合において、両者を塑性結合する際に、上記歯部における上記傾斜面が対面する部位には、最も大きな引張応力が発生する。この応力が集中する部位に、滑らかな形状の上記第1控え部を設けたのである。
これにより、上記傾斜面が対面する部位に発生する引張応力を分散、緩和することができると共に、上記歯部を有する上記外挿部材に発生する引張応力を低減することができる。それ故、上述した特許文献の実施例に記載されている内容とは異なり、上記外挿部材の硬度が上記軸部材よりも高い場合においても、塑性結合後における上記外挿部材の破裂、遅れ破壊、置き狂い等の不具合を抑制することができる。また、上記塑性結合部材は、上記軸部材と上記外挿部材とが塑性結合によって充分かつ強固に結合したものとなる。
また、上記軸部材と上記外挿部材とは、上述のとおり、塑性結合によって一体的に結合している。そのため、スプライン嵌合や圧入等によって結合した場合に比べて、互いの接触面が強固に固定された状態となり、結合力、密着性の高いものとなる。これにより、上記塑性結合部材は、使用中において上記軸部材と上記外挿部材との接触面に繰り返し起きる微小なズレ、ガタ等を抑制することができ、寸法精度のよいものとなると共に、長時間の使用においてもフレッティング疲労やこれに伴う亀裂、損傷の発生を防止することができ、耐久性が高いものとなる。
また、上記塑性結合部材は、上述したスプライン嵌合による結合を用いた場合のように、上記軸部材及び上記外挿部材の両方の結合部分に精密な加工を施す必要がないため、生産性の向上、コストの低減を図ることができる。また、上述した圧入による結合を用いた場合には、圧入部分の軸方向長さを長くする必要があったが、本発明の場合には、結合部分の軸方向長さを圧入に比べて短くしても充分な強度を容易に確保することができるため、部材の小型化を図ることができる。
また、上記塑性結合部材をカウンタシャフト等の高速回転する部品に適用した場合には、ノイズを低減することができる。これは、上記軸部材と上記外挿部材との接触面におけるズレ、ガタ等が小さいこと、塑性結合によって上記塑性結合部における上記軸部材と上記外挿部材との間に微小隙間が形成され、その微小隙間がアブソーバ(吸収材)の役割を果たすこと等の理由により、制振性が高まり、ノイズを低減することができると考えられる。
このように、本発明によれば、外挿部材の硬度が軸部材よりも高い場合において、遅れ破壊等の不具合を発生させることなく、塑性結合によって強度上問題のない一体部品を製造することができ、寸法精度や耐久性に優れ、さらには生産性の向上、コストの低減を図ることができる塑性結合部材及びその製造方法を提供することができる。
第2の発明は、軸部材と該軸部材を挿入させる挿入穴を設けた外挿部材とを塑性結合してなる塑性結合部材の製造方法において、
中央に上記挿入穴を有する上記外挿部材を準備する外挿部材準備工程と、
上記挿入穴の内周面に、軸方向に歯筋を有すると共に内方に突出する複数の歯部を設ける歯部形成工程と、
少なくとも上記歯部の表面を硬化する外挿部材硬化処理工程と、
上記歯部の内接円の径よりも大きい外径の結合外面部を有する棒状の軸部材を準備する軸部材準備工程と、
上記軸部材を上記外挿部材の上記挿入穴に挿入すると共に、上記結合外面部に上記歯部を食い込ませて上記結合外面部の一部を塑性流動させた塑性結合部を形成することにより、上記軸部材と上記外挿部材とを一体的に結合する塑性結合工程とを有し、
上記歯部形成工程では、上記軸部材の軸線を含む軸平面となす角度がαである受圧面と、上記軸平面となす角度がβ(β>α)である傾斜面とにより鋭角状に構成されていると共に、上記受圧面を周方向における第1の方向に位置させた第1締結歯と、その反対側の第2の方向に上記受圧面を位置させた第2締結歯とを形成し、
上記第1締結歯を並べた第1領域と、上記第2締結歯を並べた第2領域とは、上記挿入穴の周方向に交互に配列し、
上記第1締結歯の上記傾斜面と上記第2締結歯の上記傾斜面とが対面する部位には、上記受圧面と上記傾斜面とにより形成された谷部の外接円よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する上記傾斜面を滑らかに繋いだ第1控え部を設けることを特徴とする塑性結合部材の製造方法にある(請求項11)。
本発明の塑性結合部材の製造方法は、外挿部材準備工程、歯部形成工程、外挿部材硬化処理工程、軸部材準備工程を順に行う。そしてその後、塑性結合工程において、上記軸部材の上記結合外面部に上記外挿部材の上記歯部を食い込ませ、上記結合外面部の一部を上記歯部の谷部に塑性流動(塑性変形)させた塑性結合部を形成し、上記軸部材と上記外挿部材とをいわゆる塑性結合によって一体的に結合する。
ここで、本発明において注目すべき点は、上記歯部形成工程において、上記第1締結歯の上記傾斜面と上記第2締結歯の上記傾斜面とが対面する部位に、上記谷部の外接円よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する上記傾斜面を滑らかに繋いだ第1控え部を設けることにある。
すなわち、上記外挿部材の硬度が上記軸部材よりも高い場合において、両者を塑性結合する際に、上記歯部における上記傾斜面が対面する部位には、最も大きな引張応力が発生する。この応力が集中する部位に、滑らかな形状の上記第1控え部を設けるのである。
これにより、上記傾斜面が対面する部位に発生する引張応力を分散、緩和することができると共に、上記歯部を有する上記外挿部材に発生する引張応力を低減することができる。それ故に、上記外挿部材の硬度が上記軸部材よりも高い場合においても、上記塑性結合工程後における上記外挿部材の破裂、遅れ破壊、置き狂い等の不具合を抑制することができる。また、得られる塑性結合部材は、上記軸部材と上記外挿部材とが塑性結合によって充分かつ強固に結合したものとなる。
また、上記軸部材と上記外挿部材とは、上述のとおり、塑性結合によって一体的に結合する。そのため、スプライン嵌合や圧入等によって結合した場合に比べて、互いの接触面を強固に固定することができ、結合力、密着性を向上させることができる。これにより、上記塑性結合部材は、上記軸部材と上記外挿部材との接触面における使用中に繰り返し起きる微小なズレ、ガタ等を抑制することができ、寸法精度を向上させることができると共に、長時間の使用においてもフレッティング疲労やこれに伴う亀裂、損傷の発生を防止することができ、耐久性を高めることができる。
また、上記製造方法においては、上述したスプライン嵌合による結合を用いた場合のように、上記軸部材及び上記外挿部材の両方の部材の結合部分に精密な加工を施す必要がないため、生産性の向上、コストの低減を図ることができる。また、上述した圧入による結合を用いた場合のように、圧入部分の軸方向長さを長くする必要がなく、結合部分の軸方向長さを圧入に比べて短くしても充分な強度を容易に確保することができるため、部材の小型化を図ることができる。
また、上記製造方法により得られる塑性結合部材をカウンタシャフト等の高速回転する部品に適用した場合には、ノイズを低減することができる。これは、上記軸部材と上記外挿部材との接触面におけるズレ、ガタ等が小さいこと、塑性結合によって上記塑性結合部における上記軸部材と上記外挿部材との間に微小隙間が形成され、その微小隙間がアブソーバ(吸収材)の役割を果たすこと等の理由により、制振性が高まり、ノイズを低減することができると考えられる。
このように、本発明の製造方法によれば、外挿部材の硬度が軸部材よりも高い場合において、遅れ破壊等の不具合を発生させることなく、塑性結合によって強度上問題のない一体部品を製造することができ、寸法精度や耐久性に優れ、さらには生産性の向上、コストの低減を図ることができる塑性結合部材を得ることができる。
上記第1及び第2の発明においては、上記外挿部材の硬化処理としては、浸炭、浸炭窒化、高周波焼入のような表面及びその周辺部を集中して硬化させるいわゆる表面硬化処理や、部品全体をズブ焼入れ焼戻しすることにより、内部まで同時に硬化させる調質処理等を適用することができる。
また、上記第1の発明においては、上記第1控え部は、上記結合外面部との間に間隙を設けて配置されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記軸部材と上記外挿部材との塑性結合の際に、応力が集中する部位である上記第1控え部周辺に発生する引張応力を、上記間隙によってさらに効果的に低減することができる。
また、上記第1締結歯の上記受圧面と上記第2締結歯の上記受圧面とが対面する部位には、上記歯部の内接円よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する上記受圧面を滑らかに繋いだ第2控え部を設けてあり、
該第2控え部は、上記結合外面部に当接して配置されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記軸部材と上記外挿部材との同軸度のズレが抑制され、位置精度を向上させることができる。なお、ここでいう当接とは、塑性結合を行った結果として当接されているという意味であり、結合時の塑性変形を考慮して上記第2控え部の寸法を適切に調整しておくことが望ましい。
また、上記谷部は、滑らかな曲線状に形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記軸部材と上記外挿部材との塑性結合の際に、上記各谷部に発生する引張応力を低減することができる。
また、上記軸部材の上記結合外面部は、その外周角部に傾斜した接触面を有しており、
上記歯部は、上記結合外面部を内周側に収容可能な大径先端部を有すると共に、その後端側に徐々に縮径する位置決め傾斜部を有しており、
上記塑性結合部は、上記歯部の上記大径先端部内に上記結合外面部を収容すると共に上記接触面と上記位置決め傾斜部とを当接した後に、上記歯部を上記結合外面部に食い込ませて形成してあることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記軸部材と上記外挿部材との同軸度のズレが抑制され、位置精度を向上させることができる。
また、上記軸部材は、上記結合外面部よりも外径が大きい外鍔部を有しており、
上記歯部の軸方向端面には、上記外鍔部に当接可能な先端当接面を有しており、上記塑性結合部形成状態において、上記外鍔部と上記先端当接面とが当接していることが好ましい(請求項6)。
この場合には、塑性結合後の上記軸部材と上記外挿部材とを充分に固定させることができる。これにより、両者の同軸度のズレ、両者間のガタを抑制することができる。
また、上記外挿部材の上記歯部は、表面硬さがHv600以上であることが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記歯部の優れた強度特性によって、上記軸部材と上記外挿部材との上記塑性結合部がより安定した結合部となり、寸法精度の安定性も高くすることができる。
なお、本発明においては、上記歯部の少なくとも表面の硬さがHv600以上であればよく、内部まで深く高硬度であっても良いし、そうでなくても良い。したがって、浸炭、浸炭窒化等の表面硬化処理だけでなく、ズブ焼入れ焼戻しのような調質処理によって表面硬さをHv600以上としても良い。
また、上記外挿部材の上記歯部は、上記軸部材の上記結合外面部の表面硬さよりHv300以上大きいことが好ましい(請求項8)。
すなわち、硬度差が小さい場合には、塑性結合時における上記軸部材表面の塑性流動がスムーズに進まなくなり、結合後の寸法精度が低下する。したがって、硬度差をHv300以上としておくことにより、上記歯部と上記結合外面部との硬度差によって、塑性変形した上記結合外面部が上記歯部間に塑性流動し易くなり、より一層安定して、精度のよい上記塑性結合部を得ることができる。
また、上記軸部材は、下記式により示される炭素当量Ceqが0.4以上の素材よりなり、上記外挿部材との結合前又は結合後に、上記結合外面部以外の少なくとも一部に、高周波焼入処理によって表面硬化処理を施してあることが好ましい(請求項9)。
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4、(各元素記号はそれぞれの質量%を意味する。)
この場合には、上記軸部材の表面硬さを高周波焼入処理によって向上させることができる。なお、上記軸部材の炭素当量Ceqが0.4未満の場合には、高周波焼入後の硬さ不足、強度不足等の不具合を生じる場合がある。
また、上記外挿部材の上記歯部は、上記硬化処理を施した後に、ショットピーニング処理を施してあることが好ましい(請求項10)。
この場合には、ショットピーニング処理を施すことによって、上記歯部に圧縮の残留応力を発生させることができる。そのため、上記軸部材と上記外挿部材との塑性結合の際に、上記歯部に生じる引張応力を低減し、塑性結合後に発生するおそれのある上記外挿部材の破壊(遅れ破壊を含む)を効果的に防止することができる。
上記第2の発明においては、上記塑性結合工程では、上記第1控え部は、上記結合外面部との間に間隙を設けて配置することが好ましい(請求項12)。
この場合には、上記塑性結合工程における塑性結合の際に、応力が集中する部位である上記第1控え部周辺に発生する引張応力を、上記間隙によってさらに効果的に低減することができる。
また、上記歯部形成工程では、上記第1締結歯の上記受圧面と上記第2締結歯の上記受圧面とが対面する部位には、上記歯部の内接円よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する上記受圧面を滑らかに繋いだ第2控え部を設け、
上記塑性結合工程では、上記第2控え部は、上記結合外面部に当接させて配置することが好ましい(請求項13)。
この場合には、上記軸部材と上記外挿部材との同軸度のズレが抑制され、位置精度を向上させることができる。なお、ここでいう当接とは、塑性結合を行った結果として当接された状態になるという意味であり、結合時の塑性変形を考慮して上記第2控え部の寸法を適切に調整しておくことが望ましい。
また、上記歯部形成工程では、上記谷部は、滑らかな曲線状に形成することが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記塑性結合工程における塑性結合の際に、上記各谷部に発生する引張応力を低減することができる。
また、上記軸部材準備工程では、上記軸部材の上記結合外面部に、その外周角部に傾斜した接触面を設け、
上記歯部形成工程では、上記歯部に、上記結合外面部を内周側に収容可能な大径先端部を有すると共に、その後端側に徐々に縮径する位置決め傾斜部を設け、
上記塑性結合工程では、上記歯部の上記大径先端部内に上記結合外面部を収容すると共に上記接触面と上記位置決め傾斜部とを当接した後に、上記歯部を上記結合外面部に食い込ませて上記塑性結合部を形成することが好ましい(請求項15)。
この場合には、上記塑性結合工程において、上記軸部材と上記外挿部材との軸方向の位置決めを容易に行うことができる。そのため、両者の同軸度のズレが抑制され、位置精度を向上させることができる。
また、上記軸部材準備工程では、上記軸部材に、上記結合外面部よりも外径が大きい外鍔部を設け、
上記歯部形成工程では、上記歯部の軸方向端面に、上記外鍔部に当接可能な先端当接面を設け、
上記塑性結合工程では、上記外鍔部と上記先端当接面とを当接させることが好ましい(請求項16)。
この場合には、上記塑性結合工程後の上記軸部材と上記外挿部材とを充分に固定させることができる。これにより、両者の同軸度のズレ、両者間のガタを抑制することができる。
なお、上記塑性結合工程では、上記外鍔部と上記先端当接面とを当接させた後、上記軸部材と上記外挿部材との塑性結合に必要な荷重以上の荷重を軸方向に加えておくことが好ましい。これにより、得られる塑性結合部材の寸法精度を向上させることができる。
また、上記外挿部材硬化処理工程では、上記外挿部材の上記歯部の表面硬さをHv600以上とすることが好ましい(請求項17)。
この場合には、上記塑性結合工程において、上記歯部の優れた強度特性によって、上記軸部材と上記外挿部材との上記塑性結合部をより安定して形成することができ、寸法精度の安定性も高くすることができる。
なお、本発明においては、上記歯部の少なくとも表面の硬さがHv600以上であればよく、内部まで深く高硬度であっても良いし、そうでなくても良い。したがって、浸炭等の表面硬化処理だけでなく、ズブ焼入れ焼戻しのような調質処理によって表面硬さをHv600以上としても良い。
また、上記外挿部材硬化処理工程では、上記外挿部材の上記歯部の表面硬さを、上記軸部材の上記結合外面部の表面硬さよりHv300以上大きくすることが好ましい(請求項18)。
この場合には。上記塑性結合工程において、上記歯部と上記結合外面部との硬度差によって、塑性変形した上記結合外面部が上記歯部間に塑性流動し易くなり、より一層安定して、精度のよい上記塑性結合部を形成することができる。
また、上記軸部材は、下記式により示される炭素当量Ceqが0.4以上の素材よりなり、上記塑性結合工程の前又は後に、上記結合外面部以外の少なくとも一部に、高周波焼入処理によって表面硬化処理を施す軸部材表面硬化処理工程をさらに有することが好ましい(請求項19)。
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4、(各元素記号はそれぞれの質量%を意味する。)
この場合には、上記軸部材の表面硬さを高周波焼入処理によって向上させることができる。なお、上記軸部材の炭素当量Ceqが0.4未満の場合には、高周波焼入後の硬さ不足、強度不足等の不具合を生じる場合がある。
また、上記外挿部材硬化処理工程の後に、上記外挿部材の上記歯部に、ショットピーニング処理を施すショットピーニング処理工程をさらに有することが好ましい(請求項20)。
この場合には、上記ショットピーニング処理工程を行うことによって、上記歯部に圧縮の残留応力を発生させることができる。そのため、上記塑性結合工程における塑性結合の際に、上記歯部に生じる引張応力を低減し、塑性結合後に発生するおそれのある上記外挿部材の破壊(遅れ破壊を含む)を効果的に防止することができる。
なお、上記塑性結合部材としては、後述するカウンタシャフトに限らず、上記軸部材と上記外挿部材とを組み合わせる部材であれば、様々な部材に適用することができる。
(実施例1)
本発明の実施例にかかる塑性結合部材及びその製造方法について、図を用いて説明する。
本例では、本発明の塑性結合部材として、図1に示すごとく、自動車等の変速機に用いられ、シャフト2(軸部材)とそのシャフト2に外挿された複数のギヤ3(外挿部材)とを塑性結合してなるカウンタシャフト1を例に説明する。
図3、図6に示すごとく、ギヤ3は、シャフト2を挿入する挿入穴31を有しており、挿入穴31の内周面311には、軸方向に歯筋を有すると共に内方に突出する複数の歯部4を有している。歯部4は、結合外面部21を内周側に収容可能な大径先端部33を有すると共に、その後端側に徐々に縮径する位置決め傾斜部32を有している。また、歯部4の軸方向端面には、後述するシャフト2の外鍔部22に当接可能な先端当接面34を有している。また、ギヤ3の外周面35には、螺旋状に歯筋を有すると共に外方に突出する複数のギヤ歯部351(図1、図3のみ図示)が形成されている。
また、図7〜図9に示すごとく、ギヤ3の内周面311に設けた各歯部4は、シャフト部2の軸線を含む軸平面200となす角度がαである受圧面431と、軸平面200となす角度がβ(β>α)である傾斜面432とにより鋭角状を呈している。なお、本例では、α=0°であり、図示を省略した。
また、歯部4は、受圧面431を周方向における第1の方向D1(時計回りの方向)に位置させた第1締結歯41と、その反対側の第2の方向D2(反時計回りの方向)に受圧面431を位置させた第2締結歯42とで構成されている。また、歯部4において、第1締結歯41を並べた第1領域51と、第2締結歯42を並べた第2領域52とが、挿入穴31の周方向に交互に配列されている。
また、図8に示すごとく、第1締結歯41の傾斜面432と第2締結歯42の傾斜面432とが対面する傾斜面対面部位46には、受圧面431と傾斜面432とにより形成された谷部433の外接円430よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する傾斜面432を滑らかに繋いだ第1控え部441を設けてある。第1控え部441は、結合外面部21との間に間隙45を設けた状態で配置されている。なお、谷部433は、滑らかな曲線状に形成されている。
一方、図9に示すごとく、第1締結歯41の受圧面431と第2締結歯42の受圧面431とが対面する受圧面対面部位47には、歯部4の内接円400よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する受圧面431を滑らかに繋いだ第2控え部442を設けてある。第2控え部442は、塑性流動(塑性変形)した結合外面部21に当接した状態で配置されている。
また、図2、図6に示すごとく、シャフト2は、ギヤ3の歯部4の内接円400の径よりも大きい外径の結合外面部21と、結合外面部21よりも外径が大きい外鍔部22とを有している。また、結合外面部21は、その外周角部に傾斜した接触面211を有している。
また、図6〜図9に示すごとく、シャフト2とギヤ3とは、結合外面部21の一部を歯部4の谷部433に塑性流動(塑性変形)させた塑性結合部6を形成し、この塑性結合部6によって一体的に結合している。すなわち、シャフト2とギヤ3とは、いわゆる塑性結合によって結合している。
なお、図8、図9においては、結合前(塑性変形前)の結合外面部21の外周面210を示してある。
また、シャフト部2及びギヤ3の素材としては、いずれも機械構造用鋼を用いている。
シャフト2の素材としては、炭素当量Ceq(Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4、各元素記号はそれぞれの質量%を意味する。以下同様。)が0.4以上のS45C(炭素鋼)を用いた。シャフト2の結合外面部21は、表面硬さ、内部硬さ共にHv220である。
ギヤ3の素材としては、SCr20(クロム鋼)を用いた。ギヤ3の歯部4は、表面硬さがHv750(JIS G0557による有効硬化深さ0.5mm)である。
次に、カウンタシャフト1の製造方法について、図を用いて説明する。
本例のカウンタシャフト1の製造方法は、図4〜図6に示すごとく、少なくとも、中央に挿入穴31を有するギヤ3を準備する外挿部材準備工程と、挿入穴31の内周面311に、軸方向に歯筋を有すると共に内方に突出する複数の歯部4を設ける歯部形成工程と、少なくとも歯部4の表面を硬化する外挿部材硬化処理工程と、歯部4の内接円400の径よりも大きい外径の結合外面部21を有する棒状のシャフト2を準備する軸部材準備工程と、シャフト2をギヤ3の挿入穴31に挿入すると共に、結合外面部21に歯部4を食い込ませて結合外面部21の一部を塑性流動させた塑性結合部6を形成することにより、シャフト2とギヤ3とを一体的に結合する塑性結合工程とを有する。
以下、これを詳説する。
<外挿部材準備工程>
ギヤ3の素材として用いるSCr20(クロム鋼)を所定長さに切断する。その後、熱間鍛造によって成形し、加熱処理(焼きならし)を行い、中央に挿入穴31を有する円筒形状のギヤ3(図3)を準備する。
<歯部形成工程>
次に、ギヤ3の挿入穴31の内周面311に、冷間鍛造又は切削加工を行い、軸方向に歯筋を有すると共に内方に突出する複数の歯部4を形成する。
このとき、図7〜図9を参照のごとく、各歯部4を、受圧面431と傾斜面432とにより鋭角状に構成すると共に、第1締結歯41と第2締結歯42とを形成する。また、第1締結歯41を並べた第1領域51と、第2締結歯42を並べた第2領域52とを、挿入穴31の周方向に交互に配列する。
また、この歯部形成工程では、図3、図4参照のごとく、歯部4に、大径先端部33及び位置決め傾斜部32を形成しておくと共に、歯部4の軸方向端面に、先端当接面34を形成しておく。また、ギヤ3の外周面35に、螺旋状に歯筋を有すると共に内方に突出するギヤ歯部351を形成しておく。
<外挿部材硬化処理工程>
次に、ギヤ3に対して、表面硬化処理としての浸炭処理(焼入れ、焼戻し)を行い、ギヤ3の表面を硬化する。このとき、ギヤ3の歯部4の表面硬さをHv600以上とする。本例では、歯部4の表面硬さをHv750(硬化深さ0.5mm)とした。
<ショットピーニング処理工程>
次に、本例では、外挿部材表面硬化処理工程後、ギヤ3の歯部4にショットピーニング処理を行う。これにより、ギヤ3の歯部4に圧縮の残留応力を発生させる。
<軸部材準備工程>
次に、シャフト2の素材として用いる炭素当量Ceqが0.4以上のS45C(炭素鋼)を所定長さに切断する。その後、加熱処理(焼きならし)、冷間加工(塑性加工、切削加工)を行い、ギヤ3における歯部4の内接円400の径よりも大きい外径の結合外面部21を有する棒状のシャフト2(図2)を準備する。このとき、シャフト2の結合外面部21の表面硬さ、内部硬さは共にHv220である。
なお、本工程における加熱処理(焼きならし)は、必要がなければ省略することもできる。
<塑性結合工程>
次に、シャフト2をギヤ3の挿入穴31に挿入し、シャフト2とギヤ3とを塑性結合により一体的に結合する。以下、これについて詳しく説明する。
まず、図4に示すごとく、受け型8にギヤ3をセットし、シャフト2をギヤ3の挿入穴31に押し込んでいく。そして、図5に示すごとく、ギヤ3の歯部4の大径先端部33内にシャフト2の結合外面部21を収容すると共に、シャフト2の接触面211とギヤ3の位置決め傾斜部32とを当接させる。これにより、シャフト2及びギヤ3の軸方向の位置決めを行う。
その後、図6に示すごとく、ギヤ3の歯部4をシャフト2の結合外面部21に食い込ませながら、すなわち結合外面部21を歯部4の谷部433に塑性流動させながら、シャフト2の外鍔部22とギヤ3の先端当接面34とが当接するまで、シャフト2をギヤ3の挿入穴31に押し込む。これにより、結合外面部21の一部を歯部4の谷部433に塑性流動させた塑性結合部6が形成され、シャフト2とギヤ3とは、塑性結合により一体的に結合される。
このとき、傾斜面対面部位46においては、第1控え部441と結合外面部21との間に間隙45を設けた状態となるようにする。一方、受圧面対面部位47においては、第2控え部442が塑性変形した結合外面部21と当接した状態となるようにする。
<軸部材表面硬化処理工程>
次に、本例では、塑性結合工程後、シャフト2の結合外面部21以外の部分において表面硬さが必要な部分に、高周波焼入処理を行う。
なお、この軸部材表面硬化処理工程は、塑性結合工程前に行ってもよい。
<仕上げ加工>
最後に、シャフト2及びギヤ3の寸法を調整するための仕上げ加工(切削加工)を行う。
以上により、カウンタシャフト1(図1)を得る。
次に、本例のカウンタシャフト(塑性結合部材)1における作用効果について説明する。
本例のカウンタシャフト1は、シャフト2とシャフト2を挿入させる挿入穴31を設けたギヤ3とを有し、ギヤ3の挿入穴31の内周面311は、軸方向に歯筋を有すると共に内方に突出する複数の歯部4を有する。そして、シャフト2とギヤ3とは、シャフト2の結合外面部21にギヤ3の歯部4を食い込ませ、結合外面部21の一部を歯部4の谷部433に塑性流動(塑性変形)させた塑性結合部6を形成し、いわゆる塑性結合によって一体的に結合している。
ここで、本例において注目すべき点は、第1締結歯41の傾斜面432と第2締結歯42の傾斜面432とが対面する傾斜面対面部位46に、谷部433の外接円430よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する傾斜面432を滑らかに繋いだ第1控え部441が設けてあることにある。
すなわち、ギヤ3の硬度がシャフト2よりも高い場合において、両者を塑性結合する際に、ギヤ3における傾斜面対面部位46には、最も大きな引張応力が発生する。この応力が集中する部位に、上述した特許文献2に記載されているような応力調整歯を形成せず、滑らかな形状の第1控え部441を設けたのである。
これにより、傾斜面対面部位46に発生する引張応力を分散、緩和することができると共に、歯部4を有するギヤ3に発生する引張応力を低減することができる。それ故、ギヤ3の硬度がシャフト2よりも高い場合においても、ギヤ3の破裂、遅れ破壊、置き狂い等の不具合を抑制することができる。また、カウンタシャフト1は、シャフト2とギヤ3とが塑性結合によって充分かつ強固に結合したものとなる。
また、シャフト2とギヤ3とは、上述のとおり、塑性結合によって一体的に結合している。そのため、スプライン嵌合や圧入等によって結合した場合に比べて、塑性結合部6によって互いの接触面が強固に固定された状態となり、結合力、密着性の高いものとなる。これにより、カウンタシャフト1は、使用中においてシャフト2とギヤ3との接触面に繰り返し起きる微小なズレ、ガタ等を抑制することができ、寸法精度のよいものとなると共に、長時間の使用においてもフレッティング疲労やこれに伴う亀裂、損傷の発生を防止することができ、耐久性が高いものとなる。
また、本例のカウンタシャフト1は、スプライン嵌合による結合を用いた場合のように、シャフト2及びギヤ3の両方の結合部分に精密な加工を施す必要がないため、生産性の向上、コストの低減を図ることができる。また、圧入による結合を用いた場合のように、
シャフト2とギヤ3との結合部分を強化するために、圧入部の軸方向の長さを長くする必要がないため、部材の小型化を図ることができる。
また、カウンタシャフト1は、ノイズを低減することができる。これは、シャフト2とギヤ3との接触面におけるズレ、ガタ等が小さいこと、塑性結合によって塑性結合部6におけるシャフト2とギヤ3との間に微小隙間が形成され、その微小隙間がアブソーバ(吸収材)の役割を果たすこと等の理由により、制振性が高まり、ノイズを低減することができると考えられる。
また、本例では、第1控え部441は、結合外面部21との間に間隙45を設けて配置されている。そのため、シャフト2とギヤ3との塑性結合の際に、応力が集中する部位である第1控え部441周辺(傾斜面対面部位46)に発生する引張応力を、間隙45によってさらに効果的に低減することができる。
また、谷部433は、滑らかな曲線状に形成されている。そのため、シャフト2とギヤ3との塑性結合の際に、各谷部433に発生する引張応力を低減することができる。
また、ギヤ3の歯部4は、シャフト2の結合外面部21の表面硬さよりHv300以上大きい。そのため、歯部4と結合外面部21との硬度差によって、塑性変形した結合外面部21が歯部4の谷部433に塑性流動し易くなり、より一層安定して、寸法精度のよい塑性結合部6を得ることができる。
また、ギヤ3の歯部4は、浸炭処理を施した後に、ショットピーニング処理を施してある。そのため、歯部4に圧縮の残留応力を発生させることができる。これにより、シャフト2とギヤ3との塑性結合の際に、歯部4に生じる引張応力を低減することができる。すなわち、ギヤ3に生じる引張応力を低減することができる。
このように、本例によれば、外挿部材の硬度が軸部材よりも高い場合において、遅れ破壊等の不具合を発生させることなく、塑性結合によって強度上問題のない一体部品を製造することができ、寸法精度や耐久性に優れ、さらには生産性の向上、コストの低減を図ることができる塑性結合部材及びその製造方法を提供することができる。
(実施例2)
本例は、本発明の塑性結合部材について、遅れ破壊の評価を行った例である。
本発明品としては、実施例1のカウンタシャフト1においてショットピーニング処理を施さなかったことのみが異なる試料E1と、実施例1のカウンタシャフト1である試料E2を準備し、遅れ破壊の評価を行った。各試料の条件は、実施例1と同様であり、シャフト2の素材がS45C、表面硬さがHv220、ギヤ3の素材がSCr20、表面硬さがHv750である。シャフト2には焼きならし処理、ギヤ3には浸炭処理が施されている。
また、比較品としては、図10に示すごとく、上述した特許文献2に示されているような応力調整歯49を本発明品の試料E1、E2の第1控え部441に相当する位置に有していることのみが本発明品と異なるカウンタシャフト1である試料C1(図10参照)を作製し、さらにこれにショットピーニング処理を施した試料C2を準備し、同様に評価した。なお、試料C1、C2で使用した素材の条件は、試料E1、E2と同様である。
次に、遅れ破壊の評価について説明する。
遅れ破壊は、水素の侵入によって起きると考えられているため、大気中と大気中よりも水素が侵入しやすく、非常に厳しい条件である酸浸漬させた状態とにおいて一定時間放置し、遅れ破壊の発生の有無を調べた。なお、各試料について5個の試験体を評価した。
大気中における評価は、塑性結合が終了してから10日間そのまま放置し、割れ発生の有無を観察することにより行った。また、酸浸漬中における評価は、塑性結合が終了した試料を室温の状態で15%塩酸中に24時間浸漬させ、浸漬終了後の割れ発生の有無を確認することにより行った。
次に、遅れ破壊の評価結果について表1に示す。
表1から知られるように、比較品である試料C1は、大気中において遅れ破壊を起こした(試験体5個中4個)。また、試料C1にショットピーニング処理工程を施した試料C2は、大気中において非破壊であったが、酸浸漬中においてすべての試験体で遅れ破壊を起こした。したがって、ショットピーニング処理によって明確な効果が得られることが確認できたものの、酸浸漬中においては、遅れ破壊を防止するまでには至らなかった。
一方、本発明品である試料E1、E2は、大気中及び酸浸漬中においても、すべての試験体で遅れ破壊は見られなかった。なお、本発明品では、ショットピーニング処理を施したことによる差異はみられなかったものの、比較品の結果より、本発明品についてもショットピーニング処理による遅れ破壊の抑制効果があると考えられる。
Figure 0004853777
実施例1における、カウンタシャフトを示す説明図。 実施例1における、シャフトを示す説明図。 実施例1における、ギヤを示す説明図。 実施例1における、シャフト及びギヤの結合前の状態を示す説明図。 実施例1における、シャフト及びギヤの結合途中の状態を示す説明図。 実施例1における、シャフト及びギヤの結合後の状態を示す説明図。 図1のS−S矢視断面図。 図7のA部の拡大図。 図7のB部の拡大図。 実施例2における、比較品の歯部の形状を示す説明図。
符号の説明
1 カウンタシャフト
2 シャフト
21 結合外面部
3 ギヤ
31 挿入穴
311 内周面
4 歯部
41 第1締結歯
42 第2締結歯
430 外接円
432 傾斜面
433 谷部
6 塑性結合部

Claims (20)

  1. 軸部材と該軸部材を挿入させる挿入穴を設けた外挿部材とを有し、
    該外挿部材の上記挿入穴の内周面は、軸方向に歯筋を有すると共に内方に突出する複数の歯部を有し、かつ、上記軸部材との係合の前に、少なくとも上記歯部の表面を硬化する硬化処理を施してあり、
    上記歯部は、上記軸部材の軸線を含む軸平面となす角度がαである受圧面と、上記軸平面となす角度がβ(β>α)である傾斜面とにより鋭角状を呈していると共に、上記受圧面を周方向における第1の方向に位置させた第1締結歯と、その反対側の第2の方向に上記受圧面を位置させた第2締結歯とを構成し、
    上記第1締結歯を並べた第1領域と、上記第2締結歯を並べた第2領域とは、上記挿入穴の周方向に交互に配列されており、
    上記第1締結歯の上記傾斜面と上記第2締結歯の上記傾斜面とが対面する部位には、上記受圧面と上記傾斜面とにより形成された谷部の外接円よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する上記傾斜面を滑らかに繋いだ第1控え部を設けてあり、
    上記軸部材は、上記歯部の内接円の径よりも大きい外径の結合外面部を有しており、
    該結合外面部に上記歯部を食い込ませて上記結合外面部の一部を塑性流動させた塑性結合部を形成することにより、上記軸部材と上記外挿部材とを一体的に結合していることを特徴とする塑性結合部材。
  2. 請求項1において、上記第1控え部は、上記結合外面部との間に間隙を設けて配置されていることを特徴とする塑性結合部材。
  3. 請求項1又は2において、上記第1締結歯の上記受圧面と上記第2締結歯の上記受圧面とが対面する部位には、上記歯部の内接円よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する上記受圧面を滑らかに繋いだ第2控え部を設けてあり、
    該第2控え部は、上記結合外面部に当接して配置されていることを特徴とする塑性結合部材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、上記谷部は、滑らかな曲線状に形成されていることを特徴とする塑性結合部材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、上記軸部材の上記結合外面部は、その外周角部に傾斜した接触面を有しており、
    上記歯部は、上記結合外面部を内周側に収容可能な大径先端部を有すると共に、その後端側に徐々に縮径する位置決め傾斜部を有しており、
    上記塑性結合部は、上記歯部の上記大径先端部内に上記結合外面部を収容すると共に上記接触面と上記位置決め傾斜部とを当接した後に、上記歯部を上記結合外面部に食い込ませて形成してあることを特徴とする塑性結合部材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において、上記軸部材は、上記結合外面部よりも外径が大きい外鍔部を有しており、
    上記歯部の軸方向端面には、上記外鍔部に当接可能な先端当接面を有しており、上記塑性結合部形成状態において、上記外鍔部と上記先端当接面とが当接していることを特徴とする塑性結合部材。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項において、上記外挿部材の上記歯部は、表面硬さがHv600以上であることを特徴とする塑性結合部材
  8. 請求項1〜7のいずれか1項において、上記外挿部材の上記歯部は、上記軸部材の上記結合外面部の表面硬さよりHv300以上大きいことを特徴とする塑性結合部材。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項において、上記軸部材は、下記式により示される炭素当量Ceqが0.4以上の素材よりなり、上記外挿部材との結合前又は結合後に、上記結合外面部以外の少なくとも一部に、高周波焼入処理によって表面硬化処理を施してあることを特徴とする塑性結合部材。
    Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4、(各元素記号はそれぞれの質量%を意味する。)
  10. 請求項1〜9のいずれか1項において、上記外挿部材の上記歯部は、上記硬化処理を施した後に、ショットピーニング処理を施してあることを特徴とする塑性結合部材。
  11. 軸部材と該軸部材を挿入させる挿入穴を設けた外挿部材とを塑性結合してなる塑性結合部材の製造方法において、
    中央に上記挿入穴を有する上記外挿部材を準備する外挿部材準備工程と、
    上記挿入穴の内周面に、軸方向に歯筋を有すると共に内方に突出する複数の歯部を設ける歯部形成工程と、
    少なくとも上記歯部の表面を硬化する外挿部材硬化処理工程と、
    上記歯部の内接円の径よりも大きい外径の結合外面部を有する棒状の軸部材を準備する軸部材準備工程と、
    上記軸部材を上記外挿部材の上記挿入穴に挿入すると共に、上記結合外面部に上記歯部を食い込ませて上記結合外面部の一部を塑性流動させた塑性結合部を形成することにより、上記軸部材と上記外挿部材とを一体的に結合する塑性結合工程とを有し、
    上記歯部形成工程では、上記歯部は、上記軸部材の軸線を含む軸平面となす角度がαである受圧面と、上記軸平面となす角度がβ(β>α)である傾斜面とにより鋭角状に構成すると共に、上記受圧面を周方向における第1の方向に位置させた第1締結歯と、その反対側の第2の方向に上記受圧面を位置させた第2締結歯とを形成し、
    上記第1締結歯を並べた第1領域と、上記第2締結歯を並べた第2領域とを、上記挿入穴の周方向に交互に配列し、
    上記第1締結歯の上記傾斜面と上記第2締結歯の上記傾斜面とが対面する部位には、上記受圧面と上記傾斜面とにより形成された谷部の外接円よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する上記傾斜面を滑らかに繋いだ第1控え部を設けることを特徴とする塑性結合部材の製造方法。
  12. 請求項11において、上記塑性結合工程では、上記第1控え部は、上記結合外面部との間に間隙を設けて配置することを特徴とする塑性結合部材の製造方法。
  13. 請求項11又は12において、上記歯部形成工程では、上記第1締結歯の上記受圧面と上記第2締結歯の上記受圧面とが対面する部位には、上記歯部の内接円よりも内側に出ないように外方に位置し、対面する上記受圧面を滑らかに繋いだ第2控え部を設け、
    上記塑性結合工程では、上記第2控え部は、上記結合外面部に当接させて配置することを特徴とする塑性結合部材の製造方法。
  14. 請求項11〜13のいずれか1項において、上記歯部形成工程では、上記谷部は、滑らかな曲線状に形成することを特徴とする塑性結合部材の製造方法。
  15. 請求項11〜14のいずれか1項において、上記軸部材準備工程では、上記軸部材の上記結合外面部に、その外周角部に傾斜した接触面を設け、
    上記歯部形成工程では、上記歯部に、上記結合外面部を内周側に収容可能な大径先端部を有すると共に、その後端側に徐々に縮径する位置決め傾斜部を設け、
    上記塑性結合工程では、上記歯部の上記大径先端部内に上記結合外面部を収容すると共に上記接触面と上記位置決め傾斜部とを当接した後に、上記歯部を上記結合外面部に食い込ませて上記塑性結合部を形成することを特徴とする塑性結合部材の製造方法。
  16. 請求項11〜15のいずれか1項において、上記軸部材準備工程では、上記軸部材に、上記結合外面部よりも外径が大きい外鍔部を設け、
    上記歯部形成工程では、上記歯部の軸方向端面に、上記外鍔部に当接可能な先端当接面を設け、
    上記塑性結合工程では、上記外鍔部と上記先端当接面とを当接させることを特徴とする塑性結合部材の製造方法。
  17. 請求項11〜16のいずれか1項において、上記外挿部材硬化処理工程では、上記外挿部材の上記歯部の表面硬さをHv600以上とすることを特徴とする塑性結合部材の製造方法。
  18. 請求項11〜17のいずれか1項において、上記外挿部材硬化処理工程では、上記外挿部材の上記歯部の表面硬さを、上記軸部材の上記結合外面部の表面硬さよりHv300以上大きくすることを特徴とする塑性結合部材の製造方法。
  19. 請求項11〜18のいずれか1項において、上記軸部材は、下記式により示される炭素当量Ceqが0.4以上の素材よりなり、上記塑性結合工程の前又は後に、上記結合外面部以外の少なくとも一部に、高周波焼入処理によって表面硬化処理を施す軸部材表面硬化処理工程をさらに有することを特徴とする塑性結合部材の製造方法。
    Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4、(各元素記号はそれぞれの質量%を意味する。)
  20. 請求項11〜19のいずれか1項において、上記外挿部材硬化処理工程の後に、上記外挿部材の上記歯部に、ショットピーニング処理を施すショットピーニング処理工程をさらに有することを特徴とする塑性結合部材の製造方法。
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