JP2888106B2 - 熱処理後の歯形寸法の矯正方法 - Google Patents
熱処理後の歯形寸法の矯正方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱処理後の歯形寸法の矯
正方法に関する。本発明方法は浸炭焼入層を備えた歯面
の寸法矯正に適用できる。
正方法に関する。本発明方法は浸炭焼入層を備えた歯面
の寸法矯正に適用できる。
【0002】
【従来の技術】産業界では、歯部を有する歯付部材が広
く利用されている。このものでは歯面の寸法精度を高め
るべく、しごき加工等により歯面の寸法を矯正する。ま
た産業界では、歯面にHv513以上の表面硬化層を形
成した歯付部材も提供されている。このものでは、表面
硬化層が形成されているため、歯面が強化され歯面の損
耗等が防止される。このものでは歯面の寸法精度を高め
るにあたり、表面硬化層を形成する前の段階で、しごき
加工等により歯面の寸法を矯正している。その理由は、
表面硬化層を形成した後にしごき加工を行えば、表面硬
化層にクラックが生成され易くなり、品質確保の面で不
利であり、事実上製品とならないからである。
く利用されている。このものでは歯面の寸法精度を高め
るべく、しごき加工等により歯面の寸法を矯正する。ま
た産業界では、歯面にHv513以上の表面硬化層を形
成した歯付部材も提供されている。このものでは、表面
硬化層が形成されているため、歯面が強化され歯面の損
耗等が防止される。このものでは歯面の寸法精度を高め
るにあたり、表面硬化層を形成する前の段階で、しごき
加工等により歯面の寸法を矯正している。その理由は、
表面硬化層を形成した後にしごき加工を行えば、表面硬
化層にクラックが生成され易くなり、品質確保の面で不
利であり、事実上製品とならないからである。
【0003】しかしながらこのものでは歯面をせっかく
高精度に加工しても、表面硬化層を歯面に形成する熱処
理を行なえば、歯面の寸法が微小量ながら変動する。こ
のことは、歯面の設計要求精度がますます高精度、超高
精度になりつつある近年の歯付部材にとって好ましくな
い。例えば、表面硬化層として焼入浸炭層を形成する場
合には、焼入熱処理に伴い、歯面の内部組織がマルテン
サイト変態するので体積膨張を伴い、歯面の寸法が変動
するため、歯面の寸法精度の向上には限界がある。また
マルテンサイト変態に伴う膨張量を加味して歯面の加工
寸法を設定するにしても、寸法のばらつきを回避するに
は限界がある。
高精度に加工しても、表面硬化層を歯面に形成する熱処
理を行なえば、歯面の寸法が微小量ながら変動する。こ
のことは、歯面の設計要求精度がますます高精度、超高
精度になりつつある近年の歯付部材にとって好ましくな
い。例えば、表面硬化層として焼入浸炭層を形成する場
合には、焼入熱処理に伴い、歯面の内部組織がマルテン
サイト変態するので体積膨張を伴い、歯面の寸法が変動
するため、歯面の寸法精度の向上には限界がある。また
マルテンサイト変態に伴う膨張量を加味して歯面の加工
寸法を設定するにしても、寸法のばらつきを回避するに
は限界がある。
【0004】また歯車の歯部の寸法矯正方法として、特
開昭60−115342号公報に開示されている様に、
下部に歯車成形用歯型を上部にサイジング用歯型を配置
したダイスと、ダイス型に押入されるポンチとを用い、
素材をセットしたダイスにポンチを押入することによ
り、歯車成形用の歯型で素材に歯部を成形して歯車を形
成する工程と、ノックアウトピンでその歯車を持ち上げ
て歯車を歯車成形用歯型からサイジング用歯型に移行さ
せて、歯部の寸法をサイジング用歯型で矯正する方法が
知られている。
開昭60−115342号公報に開示されている様に、
下部に歯車成形用歯型を上部にサイジング用歯型を配置
したダイスと、ダイス型に押入されるポンチとを用い、
素材をセットしたダイスにポンチを押入することによ
り、歯車成形用の歯型で素材に歯部を成形して歯車を形
成する工程と、ノックアウトピンでその歯車を持ち上げ
て歯車を歯車成形用歯型からサイジング用歯型に移行さ
せて、歯部の寸法をサイジング用歯型で矯正する方法が
知られている。
【0005】しかしこの公報の矯正方法も、その歯車を
熱処理して歯面に浸炭焼入層等の表面硬化層を形成した
場合には、前述同様に熱処理に起因して歯部の歯面に寸
法変動が生じる。
熱処理して歯面に浸炭焼入層等の表面硬化層を形成した
場合には、前述同様に熱処理に起因して歯部の歯面に寸
法変動が生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した実情
に鑑みなされたものであり、その目的は、熱処理により
形成した表面硬化層を備えた歯面を矯正するにあたり、
表面硬化層の損傷を防止しつつ歯面を矯正し、これによ
り表面硬化層を備えた歯面のしごき加工して寸法精度を
向上させ得る、熱処理後の歯形寸法の矯正方法を提供す
ることにある。
に鑑みなされたものであり、その目的は、熱処理により
形成した表面硬化層を備えた歯面を矯正するにあたり、
表面硬化層の損傷を防止しつつ歯面を矯正し、これによ
り表面硬化層を備えた歯面のしごき加工して寸法精度を
向上させ得る、熱処理後の歯形寸法の矯正方法を提供す
ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記した目的
のもとに、表面硬化層を備えた歯面の寸法矯正を行う形
態について鋭意開発を進めた。そして、歯面に表面硬化
層を形成した後の寸法矯正においては、歯部の軸長方向
に沿う材料流動が生じる様にしごき加工して寸法矯正す
ると、表面硬化層に引張応力が作用して表面硬化層にク
ラックが生成され易いこと、よって、歯部の軸長方向に
沿う材料流動を伴わない形態でしごき加工して矯正する
ことが望ましいこと、また、歯部の互いに背向する一対
の歯面を歯部の周方向において挟圧する様にしごき加工
すれば、軸長方向に沿う材料流動を回避し易いことを知
見した。本発明方法はこの知見に基づくものである。
のもとに、表面硬化層を備えた歯面の寸法矯正を行う形
態について鋭意開発を進めた。そして、歯面に表面硬化
層を形成した後の寸法矯正においては、歯部の軸長方向
に沿う材料流動が生じる様にしごき加工して寸法矯正す
ると、表面硬化層に引張応力が作用して表面硬化層にク
ラックが生成され易いこと、よって、歯部の軸長方向に
沿う材料流動を伴わない形態でしごき加工して矯正する
ことが望ましいこと、また、歯部の互いに背向する一対
の歯面を歯部の周方向において挟圧する様にしごき加工
すれば、軸長方向に沿う材料流動を回避し易いことを知
見した。本発明方法はこの知見に基づくものである。
【0008】即ち、本発明の熱処理後の歯形寸法の矯正
方法は、本体部と本体部の内周面及び外周面の少なくと
も一方に突設され歯先面をもつ少なくとも2個の歯部と
歯部の根元同士を連設する歯底面とを有すると共に、本
体部の周方向において歯部の歯面が所定のしごき代をも
ち、かつ、しごき代を備えた歯面に硬度Hv513以上
の熱処理による表面硬化層を形成すると共に、歯部のう
ち表面硬化層よりも内側の母材部分を硬度Hv500以
下とした歯付部材を用い、更に、本体部の歯部の形成さ
れていない側の内周面または外周面を拘束する第1拘束
面と、歯部の互いに背向する一対の歯面に対面して歯面
のしごき代をしごき加工するしごき加工面と、歯部の歯
先面との間に微小クリアランスを形成するクリアランス
形成面とをもつしごき型を用い、表面硬化層を備えかつ
しごき代を備えた歯部の互いに背向する一対の歯面をし
ごき型のしごき加工面で周方向において挟圧することに
より、歯面をしごき加工してしごき代を消失し、歯面の
寸法の矯正を行うことを特徴とするものである。
方法は、本体部と本体部の内周面及び外周面の少なくと
も一方に突設され歯先面をもつ少なくとも2個の歯部と
歯部の根元同士を連設する歯底面とを有すると共に、本
体部の周方向において歯部の歯面が所定のしごき代をも
ち、かつ、しごき代を備えた歯面に硬度Hv513以上
の熱処理による表面硬化層を形成すると共に、歯部のう
ち表面硬化層よりも内側の母材部分を硬度Hv500以
下とした歯付部材を用い、更に、本体部の歯部の形成さ
れていない側の内周面または外周面を拘束する第1拘束
面と、歯部の互いに背向する一対の歯面に対面して歯面
のしごき代をしごき加工するしごき加工面と、歯部の歯
先面との間に微小クリアランスを形成するクリアランス
形成面とをもつしごき型を用い、表面硬化層を備えかつ
しごき代を備えた歯部の互いに背向する一対の歯面をし
ごき型のしごき加工面で周方向において挟圧することに
より、歯面をしごき加工してしごき代を消失し、歯面の
寸法の矯正を行うことを特徴とするものである。
【0009】本発明方法で用いる歯付部材の歯部として
は、歯車の歯、軸状部材のスプラインがある。歯付部材
の用途としては特に限定されず、例えば車両部品におい
てはインターミディエイトシャフト、デフサイドギヤが
代表的なものである。本発明方法の表面硬化層としては
浸炭焼入層が代表的なものである。表面硬化層の硬度は
Hv513〜900程度が好ましい。表面硬化層の厚み
(深さ:Hv513以上の厚み)は0.2〜1.5mm
程度が好ましい。1.5mmよりも厚いと、表面硬化層
よりも内側の母材部分の材料流動が阻害され、表面硬化
層にクラックが生成され易い。0.2mm未満では、し
ごき加工の加圧力に表面硬化層が耐えるのが困難とな
り、同様に表面硬化層にクラックが生成され易い。
は、歯車の歯、軸状部材のスプラインがある。歯付部材
の用途としては特に限定されず、例えば車両部品におい
てはインターミディエイトシャフト、デフサイドギヤが
代表的なものである。本発明方法の表面硬化層としては
浸炭焼入層が代表的なものである。表面硬化層の硬度は
Hv513〜900程度が好ましい。表面硬化層の厚み
(深さ:Hv513以上の厚み)は0.2〜1.5mm
程度が好ましい。1.5mmよりも厚いと、表面硬化層
よりも内側の母材部分の材料流動が阻害され、表面硬化
層にクラックが生成され易い。0.2mm未満では、し
ごき加工の加圧力に表面硬化層が耐えるのが困難とな
り、同様に表面硬化層にクラックが生成され易い。
【0010】しごき代はBBD寸法に換算して0.1〜
0.3mm程度が好ましい。0.1mm未満であると、
しごき加工量が弾性変形で吸収され易くなり、満足でき
る寸法矯正効果が得られない。0.3mmを越えると、
加工変形量が多くなり、表面硬化層にクラックが生成さ
れ易い。ここでBBD寸法は歯部の精度検出のために通
常使用されるものであり、(Between Ball
Diameter)の略記であり、隣設する歯部の歯
面と歯部の歯面との空間にそれぞれ硬球を配置した状態
において、隣設する硬球の芯間の距離を意味する。
0.3mm程度が好ましい。0.1mm未満であると、
しごき加工量が弾性変形で吸収され易くなり、満足でき
る寸法矯正効果が得られない。0.3mmを越えると、
加工変形量が多くなり、表面硬化層にクラックが生成さ
れ易い。ここでBBD寸法は歯部の精度検出のために通
常使用されるものであり、(Between Ball
Diameter)の略記であり、隣設する歯部の歯
面と歯部の歯面との空間にそれぞれ硬球を配置した状態
において、隣設する硬球の芯間の距離を意味する。
【0011】
【作用】表面硬化層を備えかつしごき代を備えた互いに
背向する一対の歯面は、しごき型のしごき加工面により
しごき加工され、従って、歯部は本体部の周方向に挟圧
される。よって、しごき代は消失して歯面は寸法矯正さ
れる。この際には、歯部のうち表面硬化層よりも内側の
母材部分の材料は、実質的には軸長方向には流動せず、
クリアランス形成面で規定されたクリアランスに向け
て、即ち半径方向に流動する。
背向する一対の歯面は、しごき型のしごき加工面により
しごき加工され、従って、歯部は本体部の周方向に挟圧
される。よって、しごき代は消失して歯面は寸法矯正さ
れる。この際には、歯部のうち表面硬化層よりも内側の
母材部分の材料は、実質的には軸長方向には流動せず、
クリアランス形成面で規定されたクリアランスに向け
て、即ち半径方向に流動する。
【0012】
【実施例】以下、本発明方法の実施例を説明する。図1
及び図2に歯付部材1をしごき加工する際の断面が模式
的に示されている。歯付部材1は冷間鍛造により成形さ
れたものである。歯付部材1は、軸状の本体部10と、
本体部10に連設され中央孔11aを備えた筒部11
と、筒部11の内周面に突設された歯部12とを有す
る。
及び図2に歯付部材1をしごき加工する際の断面が模式
的に示されている。歯付部材1は冷間鍛造により成形さ
れたものである。歯付部材1は、軸状の本体部10と、
本体部10に連設され中央孔11aを備えた筒部11
と、筒部11の内周面に突設された歯部12とを有す
る。
【0013】歯部12は、筒部11の周方向つまり矢印
P1方向にそって所定間隔を隔てて多数個突設されてお
り、インボリュートスプラインを構成するものである。
なお歯付部材1の材質はクロムモリブデン鋼(SCM4
20)である。図3に熱処理前の1個の歯部12の拡大
図を示す。図3に示す様に歯部12は、インボリュート
曲線で規定された互いに背向する一対の歯面15と、歯
面15同士の内先端を連設する歯先面16と、隣設する
歯部12の根元同士を連設する歯底面17とを備えてい
る。図3に×印で規定されているしごき代19が歯面1
5に設けられている。従って、しごき代19を備えた歯
部12の周方向つまり矢印P1方向における厚みは、し
ごき代19に相当するぶん、最終製品よりも寸法が大き
く設定されている。
P1方向にそって所定間隔を隔てて多数個突設されてお
り、インボリュートスプラインを構成するものである。
なお歯付部材1の材質はクロムモリブデン鋼(SCM4
20)である。図3に熱処理前の1個の歯部12の拡大
図を示す。図3に示す様に歯部12は、インボリュート
曲線で規定された互いに背向する一対の歯面15と、歯
面15同士の内先端を連設する歯先面16と、隣設する
歯部12の根元同士を連設する歯底面17とを備えてい
る。図3に×印で規定されているしごき代19が歯面1
5に設けられている。従って、しごき代19を備えた歯
部12の周方向つまり矢印P1方向における厚みは、し
ごき代19に相当するぶん、最終製品よりも寸法が大き
く設定されている。
【0014】しごき代19は、BBD寸法(球の直径2
mm)に換算して0.1〜0.3mm程度とされてい
る。ここでしごき代19の厚みが0.1mm未満である
と、しごき加工量が弾性変形で吸収され易くなり、満足
できる寸法矯正効果が得られない。しごき代19の厚み
が0.3mmを越えると、加工変形量が多くなり、表面
硬化層にクラックが生成され易い。
mm)に換算して0.1〜0.3mm程度とされてい
る。ここでしごき代19の厚みが0.1mm未満である
と、しごき加工量が弾性変形で吸収され易くなり、満足
できる寸法矯正効果が得られない。しごき代19の厚み
が0.3mmを越えると、加工変形量が多くなり、表面
硬化層にクラックが生成され易い。
【0015】本実施例では、表面硬化熱処理としての浸
炭焼入処理を行い、表面硬化層としての浸炭焼入層20
(図4に太線で示す)を歯付部材1の全表面に形成す
る。浸炭焼入層20は、その厚みが0.2〜1.5mm
程度であり、硬度がHv513〜900程度である。な
お浸炭焼入層20の厚みはHv513の硬度をもつ領域
により決定した。浸炭焼入層20よりも内側の母材部分
の硬度はHv500以下、具体的にはHv430〜45
0程度である。
炭焼入処理を行い、表面硬化層としての浸炭焼入層20
(図4に太線で示す)を歯付部材1の全表面に形成す
る。浸炭焼入層20は、その厚みが0.2〜1.5mm
程度であり、硬度がHv513〜900程度である。な
お浸炭焼入層20の厚みはHv513の硬度をもつ領域
により決定した。浸炭焼入層20よりも内側の母材部分
の硬度はHv500以下、具体的にはHv430〜45
0程度である。
【0016】図1及び図2は、本実施例で用いるしごき
型3を示す。しごき型3は、ダイス30とガイド部31
xをもつマンドレル31とノックアウト32とを備えて
いる。図4に示す様にダイス30は、歯付部材1の外周
面1cに密接して外周面1cを拘束するリング状の第1
拘束面35を有する。マンドレル31は、歯部12の歯
面15に対面して歯面15のしごき代19をしごき加工
するしごき加工面36を有する。しごき加工面36は、
歯面15のしごき加工を可能にしている。即ち、しごき
加工面36のうち上部側は図4に示すしごき加工面36
Aとされ、しごき加工面36A間の間隔は広い。またし
ごき加工面36のうち下部側は図5に示すしごき加工面
36Bとされ、しごき加工面36Bの間隔は狭い。なお
図4及び図5において間隔差は、理解を容易にするため
誇張されて描かれている。
型3を示す。しごき型3は、ダイス30とガイド部31
xをもつマンドレル31とノックアウト32とを備えて
いる。図4に示す様にダイス30は、歯付部材1の外周
面1cに密接して外周面1cを拘束するリング状の第1
拘束面35を有する。マンドレル31は、歯部12の歯
面15に対面して歯面15のしごき代19をしごき加工
するしごき加工面36を有する。しごき加工面36は、
歯面15のしごき加工を可能にしている。即ち、しごき
加工面36のうち上部側は図4に示すしごき加工面36
Aとされ、しごき加工面36A間の間隔は広い。またし
ごき加工面36のうち下部側は図5に示すしごき加工面
36Bとされ、しごき加工面36Bの間隔は狭い。なお
図4及び図5において間隔差は、理解を容易にするため
誇張されて描かれている。
【0017】図4に示す様にマンドレル31は、第1ク
リアランス形成面42及び第2クリアランス形成面46
を有する。第1クリアランス形成面42は、歯付部材1
の歯部12の歯先面16との間に微小クリアランス40
を形成する。第2クリアランス形成面46は、歯付部材
1の歯底面17との間に微小クリアランス44を形成す
る。既述した微小クリアランス40、44は具体的には
0.05mm〜0.10mm程度にされている。クリア
ランス40、44は微小のため、図4ではクリアランス
40、44の隙間の大きさは図面上記載されていない。
リアランス形成面42及び第2クリアランス形成面46
を有する。第1クリアランス形成面42は、歯付部材1
の歯部12の歯先面16との間に微小クリアランス40
を形成する。第2クリアランス形成面46は、歯付部材
1の歯底面17との間に微小クリアランス44を形成す
る。既述した微小クリアランス40、44は具体的には
0.05mm〜0.10mm程度にされている。クリア
ランス40、44は微小のため、図4ではクリアランス
40、44の隙間の大きさは図面上記載されていない。
【0018】さて本実施例では寸法矯正の際には図1に
示す様に歯付部材1の中央孔11aをマンドレル31の
上端部のガイド部31xに嵌合すると共に、ダイス30
の第1拘束面35で歯付部材1の外周面1cを拘束す
る。この状態は図4に対応している。次にメカニカルプ
レス機で歯付部材1を図2に示す矢印Y1方向に強圧し
て下降させる。この結果、図4から理解できる様に互い
に背向する一対の歯面15は、マンドレル31のしごき
加工面36で矢印E1方向に強圧され、その結果周方向
つまり矢印P1方向において挟圧される。従って図4と
図5との比較から理解できる様に、しごき代19が消失
する様に歯面15はしごき加工され、これにより歯面1
5の寸法の矯正が行われる。
示す様に歯付部材1の中央孔11aをマンドレル31の
上端部のガイド部31xに嵌合すると共に、ダイス30
の第1拘束面35で歯付部材1の外周面1cを拘束す
る。この状態は図4に対応している。次にメカニカルプ
レス機で歯付部材1を図2に示す矢印Y1方向に強圧し
て下降させる。この結果、図4から理解できる様に互い
に背向する一対の歯面15は、マンドレル31のしごき
加工面36で矢印E1方向に強圧され、その結果周方向
つまり矢印P1方向において挟圧される。従って図4と
図5との比較から理解できる様に、しごき代19が消失
する様に歯面15はしごき加工され、これにより歯面1
5の寸法の矯正が行われる。
【0019】この様に矯正される際には、浸炭焼入層2
0にはこれの厚み方向に圧縮力が作用する。更に、歯部
12のうち浸炭焼入層20よりも内側の硬度の低い母材
部分がクリアランス40を埋める方向につまり半径方向
(矢印K1方向)に流動する。従って、図4に模式的に
示す様に矯正前の歯部12の仮想円N1は、矯正した後
においては、図5に示す様に本体部10の半径方向(矢
印K1方向)にのびて仮想長円N2となる。
0にはこれの厚み方向に圧縮力が作用する。更に、歯部
12のうち浸炭焼入層20よりも内側の硬度の低い母材
部分がクリアランス40を埋める方向につまり半径方向
(矢印K1方向)に流動する。従って、図4に模式的に
示す様に矯正前の歯部12の仮想円N1は、矯正した後
においては、図5に示す様に本体部10の半径方向(矢
印K1方向)にのびて仮想長円N2となる。
【0020】更に互いに背向する一対の歯面15が狭圧
されると、硬度の低い母材部分は周方向(矢印P1方
向)にそって、換言すれば、クリアランス44を埋める
方向にも流動すると考えられる。従って本実施例ではし
ごき加工に伴う材料移動はクリアランス40、44で吸
収されるので、筒部11の軸長方向に沿う流動は基本的
には発生しないし、仮に発生しても極微量であり、浸炭
焼入層20にクラックを形成する程の引張応力が作用す
ることはない。
されると、硬度の低い母材部分は周方向(矢印P1方
向)にそって、換言すれば、クリアランス44を埋める
方向にも流動すると考えられる。従って本実施例ではし
ごき加工に伴う材料移動はクリアランス40、44で吸
収されるので、筒部11の軸長方向に沿う流動は基本的
には発生しないし、仮に発生しても極微量であり、浸炭
焼入層20にクラックを形成する程の引張応力が作用す
ることはない。
【0021】上記の様にしてしごき加工を行ったら、ノ
ックアウト32を上昇させて歯付部材1を外す。なお、
歯面15以外の部位、例えば外周面1cや歯底面17に
もしごき代を与えた場合には、そのしごき代の量にもよ
るが、一般的にはしごかれた材料の行き場が半径方向や
周方向にないため、筒部11の軸長方向にそって流動せ
ざるを得ず、従って引張応力が作用して浸炭焼入層20
にクラックが形成されてしまう。
ックアウト32を上昇させて歯付部材1を外す。なお、
歯面15以外の部位、例えば外周面1cや歯底面17に
もしごき代を与えた場合には、そのしごき代の量にもよ
るが、一般的にはしごかれた材料の行き場が半径方向や
周方向にないため、筒部11の軸長方向にそって流動せ
ざるを得ず、従って引張応力が作用して浸炭焼入層20
にクラックが形成されてしまう。
【0022】ここで本実施例では、インボリュートスプ
ラインを構成する歯部12は、最終製品の目標寸法とし
ては、歯底面17の径である大径が28.35mm、歯
先面16の径である小径が26.40mm、基準ピッチ
円直径が27.00mm、基準円直径が19.09m
m、BBD寸法が23.85mmであり、モジュールが
1.0、圧力角45°、歯数27に設定されている。
ラインを構成する歯部12は、最終製品の目標寸法とし
ては、歯底面17の径である大径が28.35mm、歯
先面16の径である小径が26.40mm、基準ピッチ
円直径が27.00mm、基準円直径が19.09m
m、BBD寸法が23.85mmであり、モジュールが
1.0、圧力角45°、歯数27に設定されている。
【0023】次に、上記した様に歯面15が寸法矯正さ
れた歯付部材1の使用状態の要部を図6に示す。図6か
ら理解できる様に、歯付部材1の歯部12の歯面15は
相手部材7の歯部71の歯面72に密着してトルク伝達
に供せられる。上記した様に本実施例では歯面15間の
寸法は矯正されるので高精度に維持される。しかしその
反面、材料流動をクリアランス40、44で吸収するた
め歯先面16や歯底面17の寸法の精度が高精度に維持
されないおそれがある。この点本実施例では図6から理
解できる様に、歯付部材1の使用状態においては歯付部
材1の歯先面16と相手部材7の面73との間には微小
隙間73cが形成され、同様に歯付部材1の歯底面17
と相手部材7の面75との間には微小隙間75cが形成
されるので、万一、歯先面16及び歯底面17の寸法が
高精度に維持されない場合であっても、支障はない。
れた歯付部材1の使用状態の要部を図6に示す。図6か
ら理解できる様に、歯付部材1の歯部12の歯面15は
相手部材7の歯部71の歯面72に密着してトルク伝達
に供せられる。上記した様に本実施例では歯面15間の
寸法は矯正されるので高精度に維持される。しかしその
反面、材料流動をクリアランス40、44で吸収するた
め歯先面16や歯底面17の寸法の精度が高精度に維持
されないおそれがある。この点本実施例では図6から理
解できる様に、歯付部材1の使用状態においては歯付部
材1の歯先面16と相手部材7の面73との間には微小
隙間73cが形成され、同様に歯付部材1の歯底面17
と相手部材7の面75との間には微小隙間75cが形成
されるので、万一、歯先面16及び歯底面17の寸法が
高精度に維持されない場合であっても、支障はない。
【0024】(試験)上記した実施例において寸法矯正
した効果を図7に示す。図7に示す様に冷間鍛造後のB
BD寸法のばらつき(6σ)は0.07mm程度であ
る。そして熱処理により浸炭焼入層20を形成した後に
は、BBD寸法のばらつき(6σ)は0.15mmとか
なり増大した。しかし寸法矯正した後ではBBD寸法の
ばらつき(6σ)は0.10mmと減少していた。即
ち、寸法矯正により寸法精度が0.05mm程度向上し
ているのが確認された。なお、測定個数は5である。
した効果を図7に示す。図7に示す様に冷間鍛造後のB
BD寸法のばらつき(6σ)は0.07mm程度であ
る。そして熱処理により浸炭焼入層20を形成した後に
は、BBD寸法のばらつき(6σ)は0.15mmとか
なり増大した。しかし寸法矯正した後ではBBD寸法の
ばらつき(6σ)は0.10mmと減少していた。即
ち、寸法矯正により寸法精度が0.05mm程度向上し
ているのが確認された。なお、測定個数は5である。
【0025】(他の例)上記した例では歯付部材1の内
周面に形成されている歯部12の歯面15の矯正につい
て説明したが、これに限らず、歯付部材の外周面に形成
されている歯部の歯面の矯正についても適用することも
できる。
周面に形成されている歯部12の歯面15の矯正につい
て説明したが、これに限らず、歯付部材の外周面に形成
されている歯部の歯面の矯正についても適用することも
できる。
【0026】
【発明の効果】本発明方法によれば、熱処理により表面
硬化層を歯面に形成した後に歯面の寸法矯正を行うに際
して、表面硬化層におけるクラック発生を抑えつつ、歯
面の寸法を矯正できる。従って表面硬化層を良好に維持
しつつ歯面の寸法精度を向上させ得る。従って歯面の高
精度化、超高精度化に有利である。よって、表面硬化層
を備えた歯付部品の駆動の際における振動抑制、騒音抑
制等の面から、歯面の設計要求精度がますます要請され
るニーズに適応できる。
硬化層を歯面に形成した後に歯面の寸法矯正を行うに際
して、表面硬化層におけるクラック発生を抑えつつ、歯
面の寸法を矯正できる。従って表面硬化層を良好に維持
しつつ歯面の寸法精度を向上させ得る。従って歯面の高
精度化、超高精度化に有利である。よって、表面硬化層
を備えた歯付部品の駆動の際における振動抑制、騒音抑
制等の面から、歯面の設計要求精度がますます要請され
るニーズに適応できる。
【図1】しごき型に歯付部材をセットした状態を示す縦
断面図である。
断面図である。
【図2】しごき型で歯付部材をしごき加工した後の状態
を示す縦断面図である。
を示す縦断面図である。
【図3】しごき加工する前のしごき代を有する歯部付近
の拡大平面図である。
の拡大平面図である。
【図4】しごき型で歯付部材をしごき加工を開始する前
の状態を示す拡大横断面図である。
の状態を示す拡大横断面図である。
【図5】しごき型で歯付部材をしごき加工した後の状態
を示す拡大横断面図である。
を示す拡大横断面図である。
【図6】矯正後の歯付部材の歯部が相手部材と噛み合っ
ている状態の要部を示す拡大横断面図である。
ている状態の要部を示す拡大横断面図である。
【図7】矯正の効果を示すグラフである。
図中、1は歯付部材、10は本体部、11は筒部、12
は歯部、15は歯面、16は歯先面、17は歯底面、2
0は浸炭焼入層、35は第1拘束面、31はマンドレ
ル、36はしごき加工面、42及び46はクリアランス
形成面を示す。
は歯部、15は歯面、16は歯先面、17は歯底面、2
0は浸炭焼入層、35は第1拘束面、31はマンドレ
ル、36はしごき加工面、42及び46はクリアランス
形成面を示す。
Claims (1)
- 【請求項1】本体部と本体部の内周面及び外周面の少な
くとも一方に突設され歯先面をもつ少なくとも2個の歯
部と該歯部の根元同士を連設する歯底面とを有すると共
に、該本体部の周方向において該歯部の歯面が所定のし
ごき代をもち、かつ、該しごき代を備えた該歯面に硬度
Hv513以上の熱処理による表面硬化層を形成すると
共に、該歯部のうち該表面硬化層よりも内側の母材部分
を硬度Hv500以下とした歯付部材を用い、更に、 該本体部の歯部の形成されていない側の内周面または外
周面を拘束する第1拘束面と、該歯部の互いに背向する
一対の歯面に対面して該歯面の該しごき代をしごき加工
するしごき加工面と、該歯部の歯先面との間に微小クリ
アランスを形成するクリアランス形成面とをもつしごき
型を用い、 該表面硬化層を備えかつ該しごき代を備えた該歯部の互
いに背向する一対の歯面をしごき型のしごき加工面で該
周方向において挟圧することにより、該歯面をしごき加
工してしごき代を消失し、該歯面の寸法の矯正を行うこ
とを特徴とする熱処理後の歯形寸法の矯正方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22478993A JP2888106B2 (ja) | 1993-09-09 | 1993-09-09 | 熱処理後の歯形寸法の矯正方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22478993A JP2888106B2 (ja) | 1993-09-09 | 1993-09-09 | 熱処理後の歯形寸法の矯正方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0780549A JPH0780549A (ja) | 1995-03-28 |
JP2888106B2 true JP2888106B2 (ja) | 1999-05-10 |
Family
ID=16819230
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP22478993A Expired - Fee Related JP2888106B2 (ja) | 1993-09-09 | 1993-09-09 | 熱処理後の歯形寸法の矯正方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2888106B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4913295B2 (ja) * | 2001-09-07 | 2012-04-11 | 大岡技研株式会社 | 歯車の製造方法 |
-
1993
- 1993-09-09 JP JP22478993A patent/JP2888106B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0780549A (ja) | 1995-03-28 |
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